【実施例】
【0095】
以下に、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
【0096】
【化3】
シアヌル酸クロリド(5.00g, 27.1mmol)をテトラヒドロフラン50mLに混合し、氷冷後、フェニルマグネシウムブロミド(16%テトラヒドロフラン溶液)(30.75g, 27.1mmol)を30分かけて滴下した後、1時間室温で反応した。反応終了後、トルエンを加えて水洗を行い、溶媒を留去して得られた固体を洗浄することにより中間体1を固体で得た。
【0097】
3−ヒドロキシベンゼンチオール(15.00g, 118.8mmol)、ブロモオクタン(21.79g, 112.8mmol)、炭酸カリウム(24.60g, 178.0mmol)をアセトニトリル150mL中で6時間加熱還流した。反応終了後、トルエンを加えて、水洗、溶媒留去、カラム精製を行うことにより、中間体2を液体で得た。
中間体1(5.00g, 22.1mmol)と塩化アルミニウム(9.73g, 73.0mmol)をO−キシレン100mL中で、25℃、30分反応させた後、中間体2(17.40g, 73.0mmol)を加え、80℃、8時間反応した。反応終了後、トルエンを加えて水洗、溶媒留去、カラム精製、再結晶を行うことにより、化合物1を得た。
【0098】
FT−IR(KBr):3064cm
−1:O−H伸縮振動 1568, 845cm
−1:トリアジン環伸縮振動 602cm
−1:C-S伸縮振動
1H−NMR (CDCl
3 400MHz): δ 0.90 (t, 6H, C
H3(CH
2)
7S), 1.30 (m, 16H, CH
3(C
H2)
4(CH
2)
3S), 1.48 (m, 4H, CH
3(CH
2)
4C
H2(CH
2)
2S), 1.76 (m, 4H, CH
3(CH
2)
5C
H2CH
2S), 3.02 (t, 4H, CH
3(CH
2)
6C
H2S), 6.70 (d, 4H), 7.60 (t, 2H), 7.67 (d, 1H), 8.41 (d, 4H), (insg.13arom. C
H), 13.27 (s, 2H, Ph-O
H)
13C−NMR (CDCl
3 400MHz): δ 14.1 (
CH
3(CH
2)
7S), 22.6 (CH
3CH
2(CH
2)
6S), 29.0 (CH
3CH
2CH
2(CH
2)
5S), 29.1 (CH
3(CH
2)
2(
CH
2)
3(CH
2)
2S), 31.5 (CH
3(CH
2)
5CH
2CH
2S), 31.8 (CH
3(CH
2)
6CH
2S), 114.3 ((HO-)C
aromCaromC(-N)=N), 117.9, 128.8, 129.2, 129.8 (
CH
arom), 148.5 (
Carom-S), 162.6 (
Carom-OH), 178.5 (N-(C
arom)-
C=N)
【0099】
<実施例2>
【0100】
【化4】
シアヌル酸クロリド(5.00g, 27.1mmol)をテトラヒドロフラン50mLに混合し、氷冷後、p−トリルマグネシウムブロミド(19%テトラヒドロフラン溶液)(27.87g, 27.1mmol)を30分かけて滴下した後、1時間室温で反応した。反応終了後、トルエンを加えて水洗を行い、溶媒を留去して得られた固体を洗浄することにより中間体3を固体で得た。
【0101】
中間体3(5.00g, 20.8mmol)と塩化アルミニウム(9.15g, 68.6mmol)をO−キシレン100mL中で、25℃、30分反応させた後、中間体2(16.35g, 68.6mmol)を加え、80℃、8時間反応した。反応終了後、トルエンを加えて水洗、溶媒留去、カラム精製、再結晶を行うことにより、化合物2を得た。
【0102】
FT−IR(KBr):3065cm
−1:O−H伸縮振動 1570, 845cm
−1:トリアジン環伸縮振動 600cm
−1:C-S伸縮振動
1H−NMR (CDCl
3 400MHz): δ 0.90 (t, 6H, C
H3(CH
2)
7S), 1.32 (m, 16H, CH
3(C
H2)
4(CH
2)
3S), 1.48 (m, 4H, CH
3(CH
2)
4C
H2(CH
2)
2S), 1.77 (m, 4H, CH
3(CH
2)
5C
H2CH
2S), 2.48 (s, 3H, C
H3), 3.03 (t, 4H, CH
3(CH
2)
6C
H2S), 6.86 (d, 4H), 7.38 (t, 2H), 8.29 (d, 4H), (insg.13arom. C
H), 13.33 (s, 2H, Ph-O
H)
13C−NMR (CDCl
3 400MHz): δ 14.1 (
CH
3(CH
2)
7S), 21.8 (
CH
3), 22.7 (CH
3CH
2(CH
2)
6S), 28.7 (CH
3CH
2CH
2(CH
2)
5S), 29.2 (CH
3(CH
2)
2(
CH
2)
3(CH
2)
2S), 31.6 (CH
3(CH
2)
5CH
2CH
2S), 31.8 (CH
3(CH
2)
6CH
2S), 114.2 ((HO-)C
aromCaromC(-N)=N), 117.8, 128.8, 129.9, 148.3 (
CH
arom), 144.6 (
Carom-S), 162.5 (
Carom-OH), 178.5 (N-(C
arom)-
C=N)
【0103】
<実施例3>
【0104】
【化5】
シアヌル酸クロリド(5.00g, 27.1mmol)をテトラヒドロフラン50mLに混合し、氷冷後、4−クロロマグネシウムブロミド(1.0Mジエチルエーテル溶液)(19.34g, 27.1mmol)を30分かけて滴下した後、1時間室温で反応した。反応終了後、トルエンを加えて水洗を行い、溶媒を留去して得られた固体を洗浄することにより中間体4を固体で得た。
【0105】
中間体4(5.00g, 19.2mmol)と塩化アルミニウム(8.45g, 63.4mmol)をO−キシレン100mL中で、25℃、30分反応させた後、中間体2(15.11g, 63.4mmol)を加え、80℃、8時間反応した。反応終了後、トルエンを加えて水洗、溶媒留去、カラム精製、再結晶を行うことにより、化合物3を得た。
【0106】
FT−IR(KBr):3060cm
−1:O−H伸縮振動 1560, 840cm
−1:トリアジン環伸縮振動 600cm
−1:C-S伸縮振動
1H−NMR (CDCl
3 400MHz): δ 0.90 (t, 6H, C
H3(CH
2)
7S), 1.32 (m, 16H, CH
3(C
H2)
4(CH
2)
3S), 1.48 (m, 4H, CH
3(CH
2)
4C
H2(CH
2)
2S), 1.75 (m, 4H, CH
3(CH
2)
5C
H2CH
2S), 3.03 (t, 4H, CH
3(CH
2)
6C
H2S), 6.85 (d, 4H), 7.56 (t, 2H), 8.33 (d, 4H), (insg.13arom. C
H), 13.12 (s, 2H, Ph-O
H)
13C−NMR (CDCl
3 400MHz): δ 14.1 (
CH
3(CH
2)
7S), 22.6 (CH
3CH
2(CH
2)
6S), 29.0 (CH
3CH
2CH
2(CH
2)
5S), 29.1 (CH
3(CH
2)
2(
CH
2)
3(CH
2)
2S), 31.6 (CH
3(CH
2)
5CH
2CH
2S), 31.8 (CH
3(CH
2)
6CH
2S), 114.4 ((HO-)C
aromCaromC(-N)=N), 118.1, 128.8, 129.2, 129.8 (
CH
arom), 149.1 (
Carom-S), 162.5 (
Carom-OH), 179.4 (N-(C
arom)-
C=N)
【0107】
<実施例4>
【0108】
【化6】
3−ヒドロキシベンゼンチオール(15.00g, 118.8mmol)、炭酸カリウム(24.60g, 178.0mmol)をアセトニトリル150mLに混合し、氷冷後、ヨウ化メチル(17.70g, 124.7mmol)を30分かけて滴下した後、1時間室温で反応した。反応終了後、トルエンを加えて、水洗、溶媒留去、カラム精製を行うことにより、中間体5を液体で得た。
【0109】
中間体1(5.00g, 22.1mmol)と塩化アルミニウム(9.73g, 73.0mmol)をO−キシレン100mL中で、25℃、30分反応させた後、中間体5(10.24g, 73.0mmol)を加え、80℃、8時間反応した。反応終了後、トルエンを加えて水洗、溶媒留去、カラム精製、再結晶を行うことにより、化合物4を得た。
【0110】
FT−IR(KBr):3060cm
−1:O−H伸縮振動 1565, 840cm
−1:トリアジン環伸縮振動 600cm
−1:C-S伸縮振動
1H−NMR (CDCl
3 400MHz): δ 2.53 (s, 6H, C
H3), 6.83 (d, 4H), 7.56 (t, 2H), 7.64 (d, 1H), 8.38 (d, 4H), (insg.13arom. C
H), 13.25 (s, 2H, Ph-O
H)
13C−NMR (CDCl
3 400MHz): δ 14.6 (
CH
3), 113.3 ((HO-)C
aromCaromC(-N)=N), 117.1, 128.7, 129.2, 133.5 (
CH
arom), 149.2 (
Carom-S), 162.6 (
Carom-OH), 178.5 (N-(C
arom)-
C=N)
【0111】
<実施例5>
【0112】
【化7】
3−ヒドロキシベンゼンチオール(15.00g, 118.8mmol)、ブロモオクタデカン(37.61g, 112.8mmol)、炭酸カリウム(24.60g, 178.0mmol)をアセトニトリル150mL中で6時間加熱還流した。反応終了後、トルエンを加えて、水洗、溶媒留去、カラム精製を行うことにより、中間体6を液体で得た。
【0113】
中間体1(5.00g, 22.1mmol)と塩化アルミニウム(9.73g, 73.0mmol)をO−キシレン100mL中で、25℃、30分反応させた後、中間体6(27.64g, 73.0mmol)を加え、80℃、8時間反応した。反応終了後、トルエンを加えて水洗、溶媒留去、カラム精製、再結晶を行うことにより、化合物5を得た。
【0114】
FT−IR(KBr):3055cm
−1:O−H伸縮振動 1572, 850cm
−1:トリアジン環伸縮振動 602cm
−1:C-S伸縮振動
1H−NMR (CDCl
3 400MHz): δ 0.88 (t, 6H, C
H3(CH
2)
17S), 1.25 (m, 28H, CH
3(C
H2)
14(CH
2)
3S), 1.48 (m, 4H, CH
3(CH
2)
14C
H2(CH
2)
2S), 1.77 (m, 4H, CH
3(CH
2)
15C
H2CH
2S), 3.02 (t, 4H, CH
3(CH
2)
16C
H2S), 6.90 (d, 4H), 7.57 (t, 2H), 7.65 (d, 1H), 8.43 (d, 4H), (insg.13arom. C
H), 13.28 (s, 2H, Ph-O
H)
13C−NMR (CDCl
3 400MHz): δ 14.1 (
CH
3(CH
2)
17S), 22.7 (CH
3CH
2(CH
2)
16S), 29.2 (CH
3CH
2CH
2(CH
2)
15S), 29.6 (CH
3(CH
2)
2(
CH
2)
13(CH
2)
2S), 31.5 (CH
3(CH
2)
15CH
2CH
2S), 31.9 (CH
3(CH
2)
16CH
2S), 114.3 ((HO-)C
aromCaromC(-N)=N), 117.9, 128.8, 129.2, 129.8 (
CH
arom), 148.5 (
Carom-S), 162.6 (
Carom-OH), 178.5 (N-(C
arom)-
C=N)
【0115】
<比較例1>
【0116】
【化8】
ヒドロキシベンゼンチオール(15.0g, 118.8mmol)、ブロモヘキサン(18.63g, 112.8mmol)及び炭酸カリウム(24.6g, 178.2mmol)をアセトニトリル150mL中で6時間加熱還流した。反応終了後、トルエンを加えて、水洗、溶媒留去、カラム精製を行うことにより、中間体7を液体で得た。
【0117】
2−クロロ−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン(1.92g, 7.14mmol)と塩化アルミニウム(2.37g, 17.85mmol)をO−キシレン50mL中で、25℃、30分反応させた後、中間体7(2.00g, 14.25mmol)を加え、80℃、8時間反応した。反応終了後、トルエンを加えて水洗、溶媒留去、カラム精製、再結晶を行うことにより、化合物6を得た。
【0118】
FT−IR(KBr):3064cm
−1:O−H伸縮振動 1568, 846cm
−1:トリアジン環伸縮振動 602cm
−1:C-S伸縮振動
1H−NMR (CDCl
3 400MHz): δ 0.90 (t, 3H, C
H3(CH
2)
5-S), 1.34 (m, 2H, CH
3(C
H2)
2(CH
2)
3S), 1.47 (quin, 2H, CH
3(CH
2)
2C
H2(CH
2)
2S), 1.75 (quin, 2H, CH
3(CH
2)
3C
H2CH
2S), 3.03 (t, 2H, CH
3(CH
2)
3CH
2C
H2S), 6.89 (d, 2H) , 7.62 (m, 6H), 8.58 (d, 1H) , 8.63 (m, 4H) (insg.13arom. C
H), 13.43 (s, 1H, Ph-O
H)
13C−NMR (CDCl
3 400MHz): δ 14.0 (
CH
3(CH
2)
5S), 22.5(CH
3CH
2(CH
2)
4S), 28.7 (CH
3CH
2CH
2 (CH
2)
3S), 28.8 (CH
3(CH
2)
2CH
2(CH
2)
2S), 31.4 (CH
3(CH
2)
3CH
2CH
2S), 31.8(CH
3(CH
2)
4CH
2S), 114.3 ((HO-)C
CaromC(-N)=N),117.9, 129.0, 129.9, 133.0 (
CH
arom), 135.3 (
Carom-C=N), 147.4 (
Carom-S), 162.3 (
Carom-OH), 171.4 (C
arom-
C=N)
【0119】
<比較例2>
【0120】
【化9】
シアヌル酸クロリド(1.92g, 7.14mmol)と中間体2(7.66g, 32.13mmol)を1,2−ジクロロエタン50mL中で、加熱溶解させた後氷冷し、塩化アルミニウム(0.95g,7.14mmol)を30分かけて加えた後、70℃、54時間反応した。反応終了後、トルエンを加えて水洗、溶媒留去、カラム精製、再結晶を行うことにより、化合物7を得た。
【0121】
FT−IR(KBr):2951cm
−1:O−H伸縮振動 1570, 843cm
−1:トリアジン環伸縮振動 606cm
−1:C-S伸縮振動
1H−NMR (CDCl
3 400MHz): δ 0.90 (t, 3H, C
H3(CH
2)
7S), 1.32 (m, 8H, CH
3(C
H2)
4(CH
2)
3S), 1.47 (quin, 2H, CH
3(CH
2)
4C
H2(CH
2)
2S), 1.72 (quin, 2H, CH
3(CH
2)
5C
H2CH
2S), 2.92 (t, 2H, CH
3(CH
2)
6C
H2S), 6.70 (d, 2H) , 7.72 (d, 1H), (insg.13arom. C
H), 12.99 (s, 1H, Ph-O
H)
13C−NMR (CDCl
3 400MHz): δ 14.1 (
CH
3(CH
2)
7S), 22.7 (CH
3CH
2(CH
2)
6S), 28.6 (CH
3CH
2CH
2(CH
2)
5S), 29.2 (CH
3(CH
2)
2(
CH
2)
3(CH
2)
2S), 31.5 (CH
3(CH
2)
5CH
2CH
2S), 31.9 (CH
3(CH
2)
6CH
2S), 111.8 (
CaromC=N), 113.9, 117.7, 128.4 (
CH
arom), 149.6 (
Carom-S), 162.7 (
Carom-OH), 168.2 (C
arom-
C=N)
【0122】
<比較例3>
【0123】
【化10】
【0124】
<比較例4>
【0125】
【化11】
2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(5.00g, 15.8mmol)、オクタンチオール(7.63g, 52.1mmol)、炭酸カリウム(7.20g, 52.1mmol)及びヨウ化カリウム(0.18g, 1.1mmol)を、DMF50mL中で、150℃、20時間反応した。反応終了後、トルエンを加えて、水洗、溶媒留去、カラム精製を行うことにより、化合物9を得た。
【0126】
FT−IR(KBr):3125cm
−1:O−H伸縮振動 1438, 1391cm
−1:トリアゾール環伸縮振動 661cm
−1:C-S伸縮振動
1H−NMR (CDCl
3 400MHz): δ 0.88 (t, 3H, C
H3(CH
2)
7S) , 1.27 (m, 8H, CH
3(C
H2)
4(CH
2)
3S), 1.49 (m, 11H, -Ph-OH-CH
3-C(C
H3)
3, CH
3(CH
2)
4C
H2(CH
2)
2S), 1.75 (quin, 2H, CH
3(CH
2)
5 C
H2CH
2S), 2.38 (s, 3H, -Ph-OH-C
H3-C(CH
3)
3) , 3.03 (t, 2H, CH
3(CH
2)
5CH
2C
H2S), 7.16 (s, 1H), 7.37 (d, 1H), 7.70 (s, 1H), 7.81 (d, 1H), 8.05 (s, 1H), (insg.5arom. C
H), 11.61 (s, 1H, -Ph-O
H-CH
3-C(CH
3)
3)
13C−NMR (CDCl
3 400MHz): δ 14.0 (
CH
3(CH
2)
7S), 20.0 (-Ph-OH-
CH
3-C(CH
3)
3), 22.6 (-Ph-OH-CH
3-
C(CH
3)
3), 28.7 (CH
3(
CH
2)
5CH
2CH
2S), 31.9 (-Ph-OH-CH
3-C(
CH
3)
3) , 33.2 (CH
3(CH
2)
5CH
2CH
2S), 35.4 (CH
3(CH
2)
5CH
2CH
2S), 113.6, 117.5, 119.3, 128.7, 129.3 (
CH
arom), 141.2, 143.4 (
Carom), 125.4(
Carom-N), 128.3 (C
arom-
CH
3), 138.0(
Carom-S), 139.1(
Carom-C(CH
3)
3), 146.7(
Carom-OH)
【0127】
<比較例5>
【0128】
【化12】
化合物10は、東京化成(株)製の試薬を用いた。
【0129】
紫外線吸収剤の長波長領域の吸収効果は、“315〜400nm領域の吸収ピークの波長(最大吸収波長:λmax)”及び“長波長領域(360〜400nm)のピーク面積”、樹脂部材への添加の際の黄色抑制効果は “315〜400nm領域の吸収ピークの波長(最大吸収波長:λmax)”、“315〜400nmの領域にある吸収ピークの長波長側の傾きの絶対値”及び“400-450nmのピーク面積”、紫外線吸収効率は“モル吸光係数”と相関がある。
【0130】
長波長領域の吸収効果
(1)315〜400nm領域の吸収ピークの波長(最大吸収波長:λmax)
実施例及び比較例の化合物をクロロホルム5μMで希釈して10mm石英セルに収容し、紫外可視分光光度計(日本分光社製 V−550)を用いて紫外可視吸収スペクトルを測定し(
図1、2)、UV−A(315〜400nm)の領域の吸収ピークを読み取った(表1)。
【0131】
本発明の式(i)を導入した化合物1〜5(実施例1〜5)の吸収ピークは、化合物6,8,9,10(比較例1,3,4,5)の吸収ピークより長波長にシフトし、UV−A領域でも長波長領域370〜400nmにピークを持ち、良好に長波長の光を吸収することを確認した。
【0132】
(2)長波長領域(360〜400nm)のピーク面積
実施例及び比較例の化合物の吸収スペクトル(5μM)から、長波長領域(360〜400nm)の領域のピーク面積(例:
図1実施例2)を、紫外可視分光光度計(日本分光社製 V−550)を用いて算出した(表1)。 化合物1〜5(実施例1〜5)の長波長領域(360〜400nm)のピーク面積は、式(i)を含有するフェニルを1つ導入したトリアジン系の化合物6(比較例1)、式(i)の置換基をもたないトリアジン系の化合物8(比較例3)及びベンゾトリアゾール系の化合物9,10(比較例4,5)の面積より大きい。
【0133】
つまり、上記(1)、(2)の結果より、式(i)を含有するフェニルを2つ導入したトリアジン系の化合物1〜5(実施例1〜5)は、UV−Aでも特に長波長の360〜400nm付近の紫外線吸収効果に優れることを確認した。
【0134】
黄色抑制効果
(3)315〜400nm領域の吸収ピークの波長(最大吸収波長:λmax)
上記(1)で測定した吸収ピークについては、紫外線吸収剤を添加した樹脂部材の黄色抑制の観点からは、315〜400nm領域の吸収ピークは400nmに近接しすぎると、可視域の波長をより多く吸収するため、その吸収ピークは390nm以下が好ましい。化合物7(比較例2)の吸収ピーク(392.5nm)は、391nm以上であり、樹脂部材を黄色化する傾向があるのに対して、化合物1〜5(実施例1〜5)は、360〜400nm付近の紫外線吸収効果に優れていると同時に、それらの最大吸収ピークは390nm以下にあり、可視域の波長の吸収を抑制し、添加した樹脂部材の黄色化を抑制する。
【0135】
(4)315〜400nmの領域にある吸収ピークの長波長側の傾きの絶対値
実施例及び比較例の化合物の吸収スペクトル(5μM)から、315〜400nmにある吸収ピークにおける長波長側の吸収スペクトルとベースライン(400〜500nmの吸収スペクトルの傾きが0のライン)との交点をピークエンドとして(例:
図1実施例1)、下記式により、315〜400nmの波長領域にある吸収ピークの長波長側の傾きの絶対値を求めた(表1、3)。
|315〜400nmの波長領域にある吸収ピークの長波長側の傾き|=|(ピークエンドの吸光度−315〜400nmの波長領域にある吸収ピークの吸光度)/(ピークエンドの吸収波長−315〜400nmの波長領域にある吸収ピークの波長)|
【0136】
360〜400nmの領域の波長を吸収すると同時に、黄変色を抑制する場合、上記(3)に加えて、より大きな傾きの(シャープな)吸収ピークを持つ紫外線吸収剤は、可視域(400nm〜)の波長の吸収を抑制し、黄変色を抑えることを可能とする。化合物1〜5(実施例1〜5の)の315〜400nmにある吸収ピークの傾きは、式(i)を含有するフェニルを1つ導入したトリアジン系の化合物6(比較例1)、式(i)の置換基をもたないトリアジン系の化合物8(比較例3)及びベンゾトリアゾール系の化合物9,10(比較例4,5)の傾きより大きく(シャープである)、0.003以上であり、黄変色の抑制効果が高いことを確認した。
【0137】
(5)400〜450nmのピーク面積
上記の(2)と同様に、実施例及び比較例の化合物の吸収スペクトル(5μM)から、可視光領域(400〜450nm)の領域のピーク面積を、紫外可視分光光度計(日本分光社製 V−550)を用いて算出した(表1)。
【0138】
上記(3)、(4)の光学特性を合わせ持つ化合物1〜5(実施例1〜5)の400〜450nmのピーク面積は、式(i)を含有するフェニルを3つ導入したトリアジン系の化合物7(比較例2)と比べて、黄色の要因となる400〜450nmのピーク面積が小さく(可視光領域の波長の吸収が少なく)、樹脂部材に使用した際の黄色化を抑制することが示唆された。
【0139】
(6)モル吸光係数
実施例及び比較例の化合物の吸収スペクトルから、315〜400nmの波長領域の最大吸収ピーク(最大吸収波長:λ
mx)の吸光度を読み取り、そのピークのモル吸光係数(最大モル吸光係数:ε
mx)を下記式によって求めた(表1、2)。
モル吸光係数:ε
mx(L/(mol・cm)=:吸光度/[c:モル濃度(mol/L)×l:セルの光路長(cm)]
【0140】
化合物1〜5(実施例1〜5の)は、式(i)を含有するフェニルを1つ導入したトリアジン系の化合物6(比較例1)、式(i)の置換基をもたないトリアジン系の化合物8(比較例3)及びベンゾトリアゾール系の化合物9,10(比較例4,5)に比べてモル吸光係数が高く、少量の添加で効率よく紫外線を吸収することを確認した。
【0141】
つまり、これらの紫外線吸収剤を部材に添加して360〜400nm領域の紫外線を同程度吸収する場合、化合物1〜5は、上記のモル吸光係数及び長波長領域(360〜400nm)のピーク面積が大きく、化合物6,8,9,10の添加量より少なくてもよい。また、その際、そのピークの波長(390nm以下)及び化合物1〜5の傾きは大きく、可視域400nm〜450nmのピーク面積をより少なくすること(可視光の吸収を抑制すること)が可能となり、樹脂部材の黄色化を抑制することができる。
【0142】
また、R
1〜R
15の位置にハロゲン原子を結合させた化合物3(実施例3)は、化合物1〜5の中でも315〜400nmの最大吸収ピークが390nm以下の範囲で、より長波長にシフトし、長波長領域(360〜400nm)のピーク面積(9.5以上)およびモル吸光係数(55000以上)が大きく長波長領域(360〜400nm)の吸収効率がより高いことを確認した。
【0143】
さらに、R
1〜R
15の位置に式(i)または水素原子を結合した化合物1、4、5は、400〜450nmのピーク面積が0.5以下であり、化合物1〜5の中でも小さく、黄色抑制効果がより大きいことを確認した。
【0144】
一方、式(i)を含有するフェニルを3つ導入したトリアジン系の化合物7(比較例2)は、化合物1〜5より、360〜400nmのピーク面積並びに上記の傾きが大きいが、370〜400nm領域のピークが、化合物1〜5より長波長の392.5nm(391nm以上)であるため、400nm〜450nmの光を多く吸収し(400〜450nmのピーク面積が大きく)、黄色抑制効果は低い。
【0145】
上記の測定結果を、以下の基準で評価し、表1にまとめた。
[1] 長波長領域の吸収効果
315〜400nm領域の吸収ピークの波長(最大吸収波長:λmax)
○:370〜400nm
△:365〜369nm
×:365nm未満
長波長領域(360〜400nm)のピーク面積
○:7以上
△:3以上
×:3未満
[2] 黄色抑制効果
315〜400nm領域の吸収ピークの波長(最大吸収波長:λmax)
○:390nm以下
×:391nm以上
315〜400nmの領域にある吸収ピークの長波長側の傾きの絶対値
○:0.003以上
△:0.002以上
×:0.002未満
400-450nmのピーク面積
○:1以下
△:3以下
×:4以上
[3] 紫外線吸収効率
モル吸光係数
○:40000以上
△:20000以上
×:20000未満
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
【表3】
表1から、化合物1〜5(実施例1〜5)及び化合物7(比較例2)は、類似する式(i)を含有するフェニルを導入したトリアジン系化合物の化合物6と比較して、UV−Aでも長波長の360〜400nmの長波長領域の吸収効果は高い。しかしながら、化合物7は黄色抑制効果が低く、化合物1〜5と比較して樹脂部材に添加した場合、黄色化すると示唆された。つまり、化合物1〜5は、樹脂部材に添加した場合、黄色化を抑制し、長波長領域の波長光を効率良くに吸収することができる。
【0149】
つまり、化合物1〜5(実施例1〜5)は、上記の全項目において良好であり、315〜400nm領域の光の吸収ピークが最大吸収波長(λ
max)で370〜390nmにあり、上記の傾きが0.003以上、モル吸光係数が40000以上で、360〜400nmのピーク面積が7以上、400〜450nmのピーク面積が1以下であり、化合物6〜10(比較例1〜5)と比較して、少量の添加量で、360〜400nmの長波長の領域の波長光を効率良く吸収し、かつ黄変着色が抑制された樹脂部材を得ることができる。
【0150】
5%重量減少温度
実施例及び比較例の化合物について、示差熱熱重量同時測定装置(SII社製、TG/T6200)を用いて、昇温温度:10℃/min、測定範囲:25〜550℃で測定を行い、重量変化(TG)が5重量%減少した温度を読み取った。
【0151】
測定結果を表4に示す。
【表4】
実施例1〜5の化合物は、式(i)の置換基を2つ導入することにより、式(i)の置換基のない比較例3の化合物8、ベンゾトリアゾール骨格の比較例4、5の化合物9,10や、更には式(i)の置換基を1つ導入した比較例1の化合物6よりも5%重量減少温度が高く、耐熱性(紫外線吸収剤の熱分解による樹脂部材の紫外線吸収能、透明樹脂の透明性の低下を抑制)が向上し、200〜250℃より高い成形加工温度が求められる熱可塑性樹脂に対して適用性があることを確認した。
【0152】
フィルムの評価
本発明の化合物のフィルム、樹脂部材に対する相溶性(透明性)の効果を下記方法で確認した(表5)。
【0153】
実施例1〜5、比較例2の化合物0.1g、アクリル樹脂0.1g、クロロホルム4gを均一に混合した後、クロロホルムを2〜3g程度濃縮させ、これをスライドグラスに滴下し、その後45℃のオーブン中で2時間溶媒を除去することにより、膜厚10〜100μmのアクリルフィルムを作製した。また、添加物を添加せず、アクリル樹脂0.1g、クロロホルム4gを均一に混合し、上記同様な操作を行い、フィルムを作製した。
【0154】
(1)外観
フィルムの外観を目視で観察し、次の基準で評価した。
○:白濁なく透明
×:白濁が見られ透明性が悪い
【0155】
(2)膜厚
膜厚は、フィルムを切断した断面を、卓上顕微鏡((株)日立ハイテク製Miniscope TM3000)を用いて計測した。
【0156】
【表5】
本発明の式(i)を含有するフェニルを2つ導入した化合物1〜5(実施例1〜5)は、式(i)を含有するフェニルを3つ導入したトリアジン系の化合物7(比較例2)と比べて、樹脂との相溶性が良好となり、黄変色がない透明なアクリルフィルムを作製することが可能であった。