(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るバイパス路形成部品を説明する電線束に装着されたバイパス路形成部品の概略構成図である。
図2は、本実施形態に係るバイパス路形成部品の一部を破断視した斜視図である。
図3は、本実施形態に係るバイパス路形成部品の電線と直交する方向の断面図である。
図4は、本実施形態に係るバイパス路形成部品の電線に沿う方向の断面図である。
【0012】
図1から
図4に示すように、本実施形態に係るバイパス路形成部品51は、複数本の電線15からなる電線束1に装着される。電線束1を構成する電線15は、導体の周囲を絶縁樹脂で被覆した絶縁電線である。電線束1におけるバイパス路形成部品51が装着される箇所は、電線15における欠損箇所Fである。欠損箇所Fは、例えば、被覆が避けて導体が露出していたり、導体が損傷していたり、さらには、電線15が切断されている箇所であり、導通の信頼性が得られない箇所である。
【0013】
バイパス路形成部品51は、複数の接続部材52と、ケース53とを備えている。接続部材52は、例えば、銅を主材料とした導電性金属材料から形成されたバスバーからなるもので、長尺の平板状に形成された固定板部54と、固定板部54の両端に立設された一対の接続部55とを有している。それぞれの接続部55は、互いに対向する一対の圧接刃56を有している。
【0014】
ケース53は、下ケース(支持部材)62と、カバー63とから構成されている。これらの下ケース62及びカバー63は、それぞれ絶縁性を有する合成樹脂から形成されている。下ケース62は、矩形状の底面板部62aと、この底面板部62aの周縁に形成された周壁部62bとを有している。カバー63は、矩形状の上面板部63aと、この上面板部63aの周縁に形成された周壁部63bとを有している。接続部材52は、下ケース62の底面板部62aに固定されており、互いに間隔をあけて並列に支持されている。これにより、各接続部材52は、互いに絶縁状態に下ケース62に支持されている。下ケース62及びカバー63は、互いに係止する係止部(図示略)を有しており、カバー63は、下ケース62に被せられた状態で係止部によって下ケース62に係止されて固定される。
【0015】
上記構成のバイパス路形成部品51を電線束1に装着するには、まず、カバー63が外された状態の下ケース62の接続部材52に電線束1の各電線15を配置させる。このとき、各電線15の欠損箇所Fを各接続部材52の接続部55同士の間に配置させる。
【0016】
次に、各電線15を接続部材52側へ向かって押圧する。このようにすると、各電線15がそれぞれの接続部材52の接続部55において、一対の圧接刃56の間に押し込まれる。これにより、各電線15は、その被覆が圧接刃56で切り裂かれ、各電線15の導体が圧接刃56に導通する。したがって、各電線15には、欠損箇所Fを跨ぐように接続部材52が圧接接続され、欠損箇所Fを跨いだ接続部材52からなるバイパス路が形成される。これにより、電線15は、欠損箇所Fの両側部分の二箇所が接続部材52からなるバイパス路を介して確実に電気的に接続されることとなる。
【0017】
接続部材52に電線15を圧接接続させたら、下ケース62にカバー63を被せて互いに係止させる。このようにすると、カバー63が電線15を介して下ケース62に固定され、圧接刃56に圧接された電線15がカバー63によって下ケース62側へ押圧された状態に維持されて保持される。
【0018】
このように、本実施形態に係るバイパス路形成部品51によれば、電線束1における断線や損傷などの欠損を有する電線15の欠損箇所Fに装着することで、電線15の欠損箇所Fを跨いでバイパス路を形成することができる。これにより、電線束1の電線15が欠損したとしても、電線束1を交換することなく、容易に補修してそのまま使用することができる。
【0019】
また、電線15を介して下ケース62にカバー63を固定することで、カバー63によって電線15を下ケース62に保持させることができ、しかも、下ケース62に固定されたカバー63によって、圧接刃56への電線15の圧接状態を良好に維持させ、良好な導通状態を得ることができる。なお、接続部55は、圧接刃56による圧接接続に限らず、圧着接続等の種々の接続形態を採ることができる。
【0020】
次に、本実施形態に係るバイパス路形成部品51を用いた具体的な補修例について説明する。
図5は、車両用ハーネスの概略構成図である。
【0021】
図5に示すように、本実施形態に係るバイパス路形成部品51を用いて補修される車両用ハーネス10は、標準ハーネス11と、拡張用ハーネス(電線束)12とを備えている。標準ハーネス11及び拡張用ハーネス12は、その端部にコネクタ13が設けられている。コネクタ13は、例えば、ジャンクションボックス、標準電装機器あるいは終端装置に接続される。標準ハーネス11及び拡張用ハーネス12は、それぞれ通信線、電源線、GND(グランド線)、信号線などの複数の電線15を基本とする電線束である。なお、標準ハーネス11及び拡張用ハーネス12は、通信線、電源線、GND(グランド線)、信号線に限るものではなく、他の電線を含む形態を採り得る。
【0022】
拡張用ハーネス12には、取付対象車両に選択的に後付けされる電装機器(例えば、集中ドアロック・ユニットやシートヒータ・ユニットなど)20が接続される。電装機器20は、分岐接続コネクタ30A,30Bを介して拡張用ハーネス12に接続される。
【0023】
分岐接続コネクタ30Aは、電装機器20を制御する制御機能部を有する回路基板31と、拡張用ハーネス12の電線15が圧接接続される圧接刃33とを備えている。圧接刃33は、回路基板31に設けられ、電線15と回路基板31の導体パターンとを導通させる。電装機器20は、コネクタ34a同士を接合することで、分岐接続コネクタ30Aに対して追加ハーネス34を介して接続される。なお、電装機器20は、追加ハーネス34を介して分岐接続コネクタ30Aに対して直接接続されるものもある。
【0024】
分岐接続コネクタ30Bは、拡張用ハーネス12の電線15が接続される圧接刃33を備えた分岐コネクタ部35と、この分岐コネクタ部35に繋がる分岐ハーネス(電線束)36と、分岐ハーネス36が接続された制御コネクタ部37とを備えている。制御コネクタ部37は、電装機器20を制御する制御機能部を有する回路基板31を備えている。電装機器20は、分岐接続コネクタ30Bの制御コネクタ部37に対して追加ハーネス34を介して接続される。
【0025】
なお、回路基板31に設けられた制御機能部は、電装機器20を電子制御する電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)であり、例えば、マイコン、半導体ヒューズ、通信トランシーバ等から構成されている。
【0026】
上記の車両用ハーネス10において、例えば、分岐接続コネクタ30A,30Bの制御機能部を有する回路基板31や接続機構部分に故障が生じた場合、この故障した分岐接続コネクタ30A,30Bによる電装機器20の接続部分を修復する必要がある。本実施形態に係るバイパス路形成部品51は、車両用ハーネス10において、故障した分岐接続コネクタ30A,30Bによる電装機器20の接続部分を修復する際に用いることができる。
【0027】
次に、上記の車両用ハーネス10において、分岐接続コネクタ30Aの回路基板31に故障が生じたことで、分岐接続コネクタ30Aによる電装機器20の接続部分を修復する場合について説明する。
図6は、バイパス路形成部品を用いた車両用ハーネスの補修例を示す車両用ハーネスの補修箇所の概略構成図である。
【0028】
まず、回路基板31に不具合が生じた交換対象の分岐接続コネクタ30Aを拡張用ハーネス12から取り外す。具体的には、分岐接続コネクタ30Aの圧接刃33から拡張用ハーネス12の各電線15を外す。すると、分岐接続コネクタ30Aが取り外された拡張用ハーネス12の電線15は、圧接刃33との圧接接続箇所が圧接刃33によって被覆が引き裂かれて導体が露出した欠損箇所Fとなる。
【0029】
次に、
図6に示すように、本実施形態に係るバイパス路形成部品51を用いて、拡張用ハーネス12における分岐接続コネクタ30Aの装着跡を補修する。具体的には、バイパス路形成部品51のそれぞれの接続部材52に、拡張用ハーネス12の各電線15の欠損箇所Fが接続部55同士の間に位置するように配置させる。そして、各電線15を接続部材52側へ向かって押圧し、接続部55の一対の圧接刃56の間に押し込んで圧接接続させる。そして、下ケース62にカバー63を被せて固定し、電線15を保持させる。
【0030】
その後、拡張用ハーネス12の空いている部分に、回路基板31が正常な新たな分岐接続コネクタ30Aを装着する。具体的には、新たな分岐接続コネクタ30Aの圧接刃33に拡張用ハーネス12の各電線15を圧接接続させる。そして、分岐接続コネクタ30Aに電装機器20を接続する。
【0031】
上記作業を行うことで、分岐接続コネクタ30Aの装着跡における電線15の欠損箇所Fがバイパス路形成部品51によって補修され、さらに、新たな分岐接続コネクタ30Aによって電装機器20が拡張用ハーネス12に接続されて修復が完了となる。
【0032】
前述したように、車両用ハーネス10では、例えば、分岐接続コネクタ30Aの制御機能部を有する回路基板31に故障が生じた場合、この故障した分岐接続コネクタ30Aによる電装機器20の接続部分を修復する必要がある。このとき、車両用ハーネス10の拡張用ハーネス12における分岐接続コネクタ30Aが装着されていた装着跡には、分岐接続コネクタ30Aの圧接刃33によって電線15が損傷している場合がある。
【0033】
このように、拡張用ハーネス12の電線15が損傷した場合、拡張用ハーネス12を交換することとなる。特に、標準ハーネス11と拡張用ハーネス12とがコネクタ13に接続されて一体化された構造の車両用ハーネス10では、拡張用ハーネス12の電線15の損傷に伴って、標準ハーネス11及び拡張用ハーネス12の交換が必要となる。
【0034】
これに対して、本実施形態によれば、バイパス路形成部品51を用意し、分岐接続コネクタ30Aの装着跡にバイパス路形成部品51を装着することで、拡張用ハーネス12の電線15を交換することなく、容易に拡張用ハーネス12を補修してそのまま使用することができる。これにより、車両用ハーネス10に対するメンテナンス性を大幅に向上させることができる。
【0035】
また、バイパス路形成部品51で拡張用ハーネス12の補修が可能となることで、補修後の拡張用ハーネス12へ制御ユニットなどの電装機器20を容易に後付けすることができる。
【0036】
次に、上記の車両用ハーネス10において、分岐接続コネクタ30Bの制御コネクタ部37の回路基板31に故障が生じたことで、分岐接続コネクタ30Bによる電装機器20の接続部分を修復する場合について説明する。
図7は、バイパス路形成部品を用いた車両用ハーネスの他の補修例を示す車両用ハーネスの補修箇所の概略構成図である。
【0037】
まず、回路基板31に不具合が生じた交換対象の分岐接続コネクタ30Bの分岐ハーネス36を構成する電線15を切断し、分岐コネクタ部35から回路基板31を備えた制御コネクタ部37を分離させ、拡張用ハーネス12から制御コネクタ部37及び電装機器20を取り外す。
【0038】
図7に示すように、回路基板31が正常な新たな制御コネクタ部37を用意し、この制御コネクタ部37から延びる分岐ハーネス36となる電線15と、分岐コネクタ部35から延びる分岐ハーネス36の電線15とをバイパス路形成部品51で繋ぐ。具体的には、バイパス路形成部品51のそれぞれの接続部材52に、分岐コネクタ部35から延びる電線15と新たな制御コネクタ部37から延びる電線15の互いに対向する端部を欠損箇所Fとし、この欠損箇所Fが接続部55同士の間に位置するように配置させる。そして、各電線15を接続部材52側へ向かって押圧し、接続部55の一対の圧接刃56の間に押し込んで圧接接続させる。そして、下ケース62にカバー63を被せて固定し、電線15を保持させる。
【0039】
その後、バイパス路形成部品51で分岐ハーネス36に接続された新たな制御コネクタ部37に電装機器20を接続させる。
【0040】
上記作業を行うことで、バイパス路形成部品51によって新たな制御コネクタ部37が装着されて分岐接続コネクタ30Bが補修される。
【0041】
このように、分岐接続コネクタ30Bを補修する場合においても、本実施形態に係るバイパス路形成部品51を用いれば、拡張用ハーネス12を交換することなく、容易に補修してそのまま使用することができる。これにより、車両用ハーネス10に対するメンテナンス性を大幅に向上させることができる。
【0042】
なお、上記実施形態では、バスバーからなる接続部材52をバイパス路形成部品51に設けたが、接続部材52としては、バスバーに限らず、例えば、電線の両端に圧接刃や圧着部などの接続部を設けたものでも良い。
【0043】
また、本実施形態に係るバイパス路形成部品51を用いて補修される車両用ハーネスとしては、上記構成のものに限らない。
【0044】
図8は、他の構成の車両用ハーネスの概略構成図である。
図8に示すように、この車両用ハーネス10Aは、標準ハーネス11及び拡張用ハーネス12を備えている。標準ハーネス11は、その端部にコネクタ13Aが設けられている。コネクタ13Aは、例えば、ジャンクションボックス、標準電装機器あるいは終端装置に接続される。拡張用ハーネス12は、一端が標準ハーネス11に分岐接続されている。
【0045】
この車両用ハーネス10Aの場合、拡張用ハーネス12が標準ハーネス11に分岐接続されているので、拡張用ハーネス12の電線15が欠損した場合、標準ハーネス11及び拡張用ハーネス12の交換が必要となる。
【0046】
しかし、本実施形態に係るバイパス路形成部品51を用いれば、標準ハーネス11及び拡張用ハーネス12を交換することなく、容易に拡張用ハーネス12を補修してそのまま使用することができる。これにより、車両用ハーネス10Aに対するメンテナンス性を大幅に向上させることができる。
【0047】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0048】
ここで、上述した本発明に係るバイパス路形成部品の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]〜[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 複数本の電線(15)からなる電線束(1,拡張用ハーネス12,分岐ハーネス36)に装着され、前記電線(15)に対して、前記電線(15)の欠損箇所(F)を跨いでバイパス路を形成するバイパス路形成部品(51)であって、
前記電線(15)に対応する複数の接続部材(52)と、
該接続部材(52)を絶縁状態に支持する支持部材(下ケース62)と、
を備え、
前記接続部材(52)は、一対の接続部(55)を有し、
前記電線(15)は、前記欠損箇所(F)を跨いだ二箇所が前記接続部材(52)の前記接続部(55)に電気的に接続される
ことを特徴とするバイパス路形成部品(51)。
[2] 車両に搭載された電装機器(20)を前記電線束(拡張用ハーネス12)に接続するコネクタ(分岐接続コネクタ30A)の装着跡における前記電線(15)の欠損箇所に装着される
ことを特徴とする[1]に記載のバイパス路形成部品(51)。
[3] 前記電線(15)を介して前記支持部材(下ケース62)に固定され、前記接続部(55)に接続された前記電線(15)を保持するカバー(63)を有する
ことを特徴とする[1]または[2]に記載のバイパス路形成部品(51)。