(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コネクタハウジングの内部に収容されてランスにより係止された端子を抜き取るために、前記コネクタハウジングの前方から前記ランスに向けて挿入され、先端で前記ランスによる端子の係止を解除する解除ピンと、前記解除ピンの長さ方向の途中に、該解除ピンの前記コネクタハウジングへの挿入時に前記コネクタハウジングに当たることで前記解除ピンの先端の前記コネクタハウジング内への挿入深さを規制する挿入規制部と、を有する治具本体と、
前記治具本体に着脱可能に且つ前記治具本体における第1位置と該第1位置より前記治具本体の先端側に位置する第2位置との間で移動可能に装着され、前記第1位置にあるとき前端が前記解除ピンの挿入規制部と同位置かそれより後方に位置し、前記第2位置にあるとき前端が前記治具本体の挿入規制部より前方に位置し、前記第2位置にある状態で前記解除ピンの先端が前記コネクタハウジングに挿入されたとき、前記前端が前記コネクタハウジングに当たることで前記解除ピンの先端のコネクタハウジング内への挿入深さを規制するアタッチメントと、
前記アタッチメントと前記治具本体との間に設けられ、前記アタッチメントが前記第1位置にあるときおよび前記第2位置にあるとき、該アタッチメントを前記治具本体にそれぞれ係止可能な第1係止手段および第2係止手段と、
を備えることを特徴とする端子抜き取り治具。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1(a)、(b)は、本発明の第1実施形態の端子抜き取り治具の説明図で、
図1(a)は、アタッチメントを治具本体に装着する前の状態を示す斜視図、
図1(b)は、アタッチメントを治具本体に装着した後の状態を示す斜視図である。
【
図2】
図2(a)〜(c)は、第1実施形態におけるアタッチメントの構成図で、
図2(a)は斜視図、
図2(b)は正面図、
図2(c)は、
図2(b)のA−A矢視断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の端子抜き取り治具による端子抜き取り対象のコネクタの前方から見た斜視図である。
【
図4】
図4(a)〜(c)は、第1実施形態の端子抜き取り治具による端子抜き取り対象のコネクタの構成図で、
図4(a)は正面図、
図4(b)は
図4(a)のショート端子のある部分の拡大図、
図4(c)は
図4(a)のショート端子のない部分の拡大図である。
【
図5】
図5(a)、(b)は、第1実施形態の端子抜き取り治具による端子抜き取り対象のコネクタと端子抜き取り治具の説明図で、
図5(a)は、
図4(a)のB−B矢視断面図(ショート端子のある位置での断面図)、
図5(b)は、
図5(a)の断面の中にある端子(ショート端子の上側に位置する端子)を抜き取るためにアタッチメントの位置を第1位置(後方位置)にセットした状態を示す実施形態の端子抜き取り治具の斜視図である。
【
図6】
図6(a)、(b)は、第1実施形態の端子抜き取り治具による端子抜き取り対象のコネクタと端子抜き取り治具の説明図で、
図6(a)は、
図4(a)のC−C矢視断面図(ショート端子のある位置での断面図)、
図6(b)は、
図6(a)の断面の中にある端子(ショート端子の上側に位置する端子)を抜き取るためにアタッチメントの位置を第2位置(前方位置)にセットした状態を示す実施形態の端子抜き取り治具の斜視図である。
【
図7】
図7(a)、(b)は、治具本体のみでランスの係止を解除する場合の説明図で、
図7(a)は、フロントホルダの凸部のある位置で端子の係止を解除しようとしている状態を示す側面図、
図7(b)は、フロントホルダの凸部のない位置で端子の係止を解除しようとしている状態を示す側面図である。
【
図8】
図8(a)〜(c)は、本発明の第1実施形態の端子抜き取り治具の第1の使用例を説明するための図で、
図8(a)は、アタッチメントを第1位置(後方位置)に保持した状態を示す側面図、
図8(b)は側断面図、
図8(c)は、そのとき治具本体の係止孔と係合するのが第1係止凸部であることを示す図である。
【
図9】
図9(a)〜(d)は、本発明の第1実施形態の端子抜き取り治具の第1の使用例を説明するための図で、
図9(a)は、アタッチメントを第1位置(後方位置)に保持した状態の端子抜き取り治具の斜視図、
図9(b)〜(d)は、アタッチメントを第1位置(後方位置)に保持した端子抜き取り治具によって、フロントホルダの凸部のある位置で端子の係止を解除する場合の手順を順に示す側断面図である。
【
図10】
図10(a)〜(c)は、
図9(b)〜(d)の説明の補助として、第1実施形態の端子抜き取り治具のアタッチメントを第1位置(後方位置)に保持した上でコネクタハウジング内に解除ピンを挿入した状態を示す図で、
図10(a)は要部拡大図、
図10(b)は側面図、
図10(c)は上から見た断面図である。
【
図11】
図11(a)〜(c)は、本発明の第1実施形態の端子抜き取り治具の第2の使用例を説明するための図で、
図11(a)は、アタッチメントを第2位置(前方位置)に保持した状態を示す側面図、
図11(b)は側断面図、
図11(c)は、そのとき治具本体の係止孔と係合するのが第2係止凸部であることを示す図である。
【
図12】
図12(a)〜(d)は、本発明の第1実施形態の端子抜き取り治具の第2の使用例を説明するための図で、
図12(a)は、アタッチメントを第2位置(前方位置)に保持した状態の端子抜き取り治具の斜視図、
図12(b)〜(d)は、アタッチメントを第2位置(前方位置)に保持した端子抜き取り治具によって、フロントホルダの凸部のない位置で端子の係止を解除する場合の手順を順に示す側断面図である。
【
図13】
図13(a)、(b)は、
図12(b)〜(d)の説明の補助として、第1実施形態の端子抜き取り治具のアタッチメントを第2位置(後方位置)に保持した上でコネクタハウジング内に解除ピンを挿入した状態を示す図で、
図13(a)は側面図、
図13(b)は上から見た断面図である。
【
図14】
図14(a)、(b)は、本発明の第2実施形態の端子抜き取り治具の説明図で、
図14(a)は、アタッチメントを治具本体に装着する前の状態を示す斜視図、
図14(b)は、アタッチメントを治具本体に装着した後の状態を示す斜視図である。
【
図16】
図16(a)〜(d)は、本発明の第2実施形態の端子抜き取り治具のアタッチメントを第1位置(後方位置)に保持した状態を示す図で、
図16(a)は斜視図、
図16(b)は側面図、
図16(c)は側断面図、
図16(d)は、そのとき治具本体の係止孔と係合するのが第1係止凸部であることを示す図である。
【
図17】
図17(a)〜(d)は、本発明の第2実施形態の端子抜き取り治具のアタッチメントを第2位置(前方位置)に保持した状態を示す図で、
図17(a)は斜視図、
図17(b)は側面図、
図17(c)は側断面図、
図17(d)は、そのとき治具本体の係止孔と係合するのが第2係止凸部であることを示す図である。
【
図18】
図18(a)〜(d)は、本発明の第2実施形態の端子抜き取り治具のアタッチメントを第3位置(最前方位置)に保持した状態を示す図で、
図18(a)は斜視図、
図18(b)は側面図、
図18(c)は側断面図、
図18(d)は、そのとき治具本体の係止孔と係合するのが第3係止凸部であることを示す図である。
【
図19】
図19(a)、(b)は、本発明の第2実施形態の端子抜き取り治具のアタッチメントの位置を作業箇所に応じて切り換えた場合の作用説明図で、
図19(a)は、アタッチメントを第1位置に保持した上でコネクタハウジング内に解除ピンを挿入した状態を示す側面図、
図19(b)は、アタッチメントを第2位置に保持した上でコネクタハウジング内に解除ピンを挿入した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0014】
<第1実施形態>
第1実施形態の端子抜き取り治具について、
図1〜
図7を参照して説明する。
図1(a)、(b)は、本発明の第1実施形態の端子抜き取り治具の説明図で、
図1(a)は、アタッチメントを治具本体に装着する前の状態を示す斜視図、
図1(b)は、アタッチメントを治具本体に装着した後の状態を示す斜視図である。また、
図2(a)〜(c)は、アタッチメントの構成図で、
図2(a)は斜視図、
図2(b)は正面図、
図2(c)は、
図2(b)のA−A矢視断面図である。
【0015】
図1(a)、(b)に示すように、第1実施形態の端子抜き取り治具1は、治具本体10と、樹脂製のアタッチメント30と、を備えている。
【0016】
治具本体10は、樹脂等で構成された角柱状の保持部11と、保持部11の長手方向の一端面(以下、この面を「前端面19」という)から前方に突き出した解除ピン12と、を備えている。解除ピン12は、金属製で、基端部が保持部11に埋設固定されている。
【0017】
本実施形態の治具本体10の解除ピン12は、1本の棒状体ではなく、2本の帯板状のピン12A、12Bと、2本のピン12A、12Bの根元側を繋ぐ横バー13と、を備えている。そのため、解除ピン12は、断面略H形をなしている。2本のピン12A、12Bは、幅方向を縦に向けて横に並置され、長手方向に沿って互いに平行に延在する。横バー13は、2本のピン12A、12Bの根元側の所定長さの範囲を横に繋いでいる。以下においては、2本のピン12A、12Bも便宜上「解除ピン」という。
【0018】
2本の解除ピン12A、12Bは、コネクタハウジング内の1個のランスの両脇に挿入されることで、当該ランスの両側部に設けられた被操作片に解除用の押圧力を付与するものである。このランスを備えた端子抜き取り対象のコネクタについては後述する。
【0019】
図1(a)、(b)に戻ると、帯板状の2本の解除ピン12A、12Bは、根元側が横バー13で互いに繋がっているが、先端側は2本に分かれている。各解除ピン12A、12Bは、根元側の所定長さの範囲が縦幅の大きいピン本体14として構成され、先端側が、ピン本体14よりも縦幅の小さい挿入部15として構成されている。
【0020】
先端側の挿入部15の後端と後端側のピン本体14の前端との境界部には、コネクタハウジング内への解除ピン12の挿入時に、挿入規制部としてコネクタハウジングの前端に突き当たる段部16が設けられている。また、挿入部15の先端15aには、例えば、解除ピン12A、12Bの挿入方向の力を係止解除方向の力としてランス(図示略)に効率良く伝えるための傾斜面が設けられている。
【0021】
ここで、保持部11の前端面19から解除ピン12A、12Bの先端15aまでの長さをP1(以下、保持部11に埋設された部分の長さを無視して、このP1を解除ピン12A、12Bの全長という)とする。また、挿入部15の長さをP2、ピン本体14の長さをP3とする。そうすると、
P1=P2+P3
の関係が成立している。
【0022】
また、保持部11の前端に近い位置の両側面には、アタッチメント20の位置決め用の係止孔18(孔でなく係止凹部であってもよい)が係止手段として設けられている。係止孔18と保持部11の前端面19との間の距離をP4とすると、係止孔18から解除ピン12A、12Bの段部16までの長さP5は、
P5=P3+P4
である。また、係止孔18から解除ピン12A、12Bの先端15aまでの長さP6は、
P6=P1+P4
である。
【0023】
一方、アタッチメント30は、樹脂の一体成形品で構成されている。このアタッチメント30は、
図2(a)〜(c)に示すように、四角ボックス型のアタッチメント本体31を有している。アタッチメント本体31は、上板31aと下板31bと左右側板31cとを有する四角筒形をなしており、後端面が開放している。アタッチメント本体31の前部の上面側と下面側には窓部32が開口している。また、アタッチメント本体31の前端には、四角柱状のガイド部33が一体に突設されている。
【0024】
四角柱状のガイド部33の断面サイズは、四角筒状のアタッチメント本体31よりも小さく、ガイド部33の後端とアタッチメント本体31の前端との境界には、段部34が設けられている。アタッチメント本体31の前部上面側と下面側には窓部32が開口しているので、段部34は、左右両側板31cとの境界だけに設けられている。
【0025】
四角柱状のガイド部33の内部には、長手方向に沿ってガイド溝36が形成されている。このガイド溝36は、ガイド部33の前端面35Aから後端面35Bまで貫通しており、後端がアタッチメント本体31の内部に連通している。このガイド溝36には、治具本体10の解除ピン12が挿通される。
【0026】
ガイド溝36は、断面H形をなしており、2本の解除ピン12A、12Bが挿通する縦溝部37A、37Bと、横バー13が挿通する横溝部37Cと、を有している。なお、ガイド部33の前端面35Aは、アタッチメント30の前端面に相当し、単にアタッチメント30の前端35Aということもある。段部34から前端面35Aまでの距離はQ1に設定されている。また、段部34からアタッチメント本体31の後端までの距離はQ2に設定されている。従って、Q1+Q2の寸法がアタッチメント30の全長である。
【0027】
アタッチメント本体31の内部空間は、後端開口から、治具本体10の四角柱状の保持部11を収容できる大きさの四角断面に形成されている。また、ガイド部33の内部のガイド溝36は、アタッチメント本体31の内部に治具本体10の保持部11を収容した際に、解除ピン12を挿通できるように形成されている。
【0028】
アタッチメント本体31の両側板31cの内面には、軸線方向に間隔をあけて第1および第2の2つの係止凸部38A、38Bが設けられている。2つの係止凸部38A、38Bは、長手方向に沿った同一直線上に並んでいる。2つの係止凸部38A、38Bは、治具本体10の保持部11の側面に設けられた係止孔18に選択的に係合する部分であり、係止手段に相当する。
【0029】
前側の第1の係止凸部38Aは、段部34から距離Q5の位置に配置されている。従って、第1の係止凸部38Aは、前端面35Aから距離Q11=Q1+Q5の位置にある。後側の第2の係止凸部38Bは、前側の第1の係止凸部38Aから距離Q6の位置に配置されている。従って、第2の係止凸部38Bは、前端面35Aから距離Q12=Q11+Q6の位置にある。
【0030】
治具本体10側の各寸法とアタッチメント30側の各寸法を整理すると、次のようになる。
(1)治具本体10の係止孔18から解除ピン12の段部16までの距離はP5である。
(2)治具本体10の係止孔18から解除ピン12の先端15aまでの距離はP6である。
(3)治具本体10の解除ピン12の段部16から先端15aまでの距離はP2である。
(4)アタッチメント30の第1の係止凸部38Aから前端面35Aまでの距離はQ11である。
(5)アタッチメント30の第2の係止凸部38Bから前端面35Aまでの距離はQ12である。
(6)アタッチメント30の第1の係止凸部38Aと第2の係止凸部38Bとの間の距離はQ6である。
【0031】
そこで、Q11、Q12、P5が次の関係を満たすように設定されている。
Q11<P5<Q12 … (A)
なお、Q11とP5の関係は、Q11<P5であるのが望ましいが、Q11=P5であってもよい。
【0032】
上記(A)の条件が満たされていることにより、アタッチメント30が前方に位置して、治具本体10の係止孔18にアタッチメント30の第1の係止凸部38Aが係合しているとき、解除ピン12A、12Bの段部16は、アタッチメント30の前端面35Aより前側に位置する。つまり、解除ピン12A、12Bの段部16が、アタッチメント30から露出する。
【0033】
また、アタッチメント30が後方に位置して、治具本体10の係止孔18にアタッチメント30の第2の係止凸部38Bが係合しているとき、解除ピン12A、12Bの段部16は、アタッチメント30の前端面35Aより後側に位置する。つまり、解除ピン12A、12Bの段部16が、アタッチメント30の内部に隠れる。これらの点の詳細については、作用の説明の中で述べる。
【0034】
次に、実施形態の端子抜き取り治具1による端子抜き取り対象のコネクタについて説明する。
図3は、そのコネクタの前方から見た斜視図である。
図4(a)〜(c)は、同コネクタの構成図で、
図4(a)は正面図、
図4(b)は
図4(a)のショート端子のある部分の拡大図、
図4(c)は
図4(a)のショート端子のない部分の拡大図である。また、
図5(a)、(b)は、同コネクタと端子抜き取り治具の説明図で、
図5(a)は、
図4(a)のB−B矢視断面図(ショート端子のある位置での断面図)、
図5(b)は、
図5(a)の断面の中にある端子(ショート端子の上側に位置する端子)を抜き取るためにアタッチメントの位置を第1位置(後方位置)にセットした状態を示す端子抜き取り治具の斜視図である。また、
図6(a)、(b)は、同コネクタと端子抜き取り治具の説明図で、
図6(a)は、
図4(a)のC−C矢視断面図(ショート端子のある位置での断面図)、
図6(b)は、
図6(a)の断面の中にある端子(ショート端子の上側に位置する端子)を抜き取るためにアタッチメントの位置を第2位置(前方位置)にセットした状態を示す実施形態の端子抜き取り治具の斜視図である。
【0035】
図3、
図4、
図5(a)、
図6(a)に示すように、このコネクタ201は、コネクタハウジング200の内部に複数の端子250を収容固定したものである。コネクタハウジング200は、コネクタハウジング本体210とフロントホルダ220とを備える。コネクタハウジング本体210には、端子収容室212が設けられている。コネクタハウジング210には、端子収容室212に臨ませてそれぞれランス214が設けられている。
【0036】
端子250は、コネクタハウジング本体210の後方から端子収容室212に挿入され、ランス214により後方へ抜け止めされている。フロントホルダ220は、前方からコネクタハウジング本体210の前部に装着されることで、ランス214の撓みを規制する機能を果たす。これにより、端子250は、ランス214により一次係止され、フロントホルダ220により二次係止されることになる。フロントホルダ220は、コネクタハウジング本体210に装着された際に、ランス214の撓みを規制する本係止位置と、その手前でランス214の撓みを許容する仮係止位置とに保持可能とされている。
【0037】
図5(a)、
図6(a)は、フロントホルダ220が、ランス214の撓みを許容する仮係止位置に保持された状態を示している。この位置から、寸法Eだけフロントホルダ220をコネクタハウジング本体210側に押し込むことで、フロントホルダ220はランス214の撓みを係止する本係止位置に到達する。
【0038】
いま、このコネクタ201は、特定の2つの端子250を短絡させる仕様に設定されており、それを実現するためのショート端子230を備えている。ショート端子230は、2つの特定の端子250に接触することで端子250間を短絡しているが、相手コネクタが適正に接続された際に、端子250との接触が断たれることで、短絡状態を解除するように設けられている。
【0039】
図3および
図5(a)に示すように、フロントホルダ220の前部には、このショート端子230が設けられた部分に凸部222が設けられている。この凸部222は、ランス214による端子250の係止を解除する際に、解除ピン12の挿入を規制する壁として作用する。つまり、凸部222は特定の位置にだけあるので、この凸部222のある位置とない位置とで、解除ピン12の挿入を規制する壁の位置が異なることになる。
【0040】
そこで、
図5(a)に示すように、凸部222のある位置で端子250(ショート端子230の上側の端子)の抜き取りを行う場合は、凸部222の前面が解除ピン12の挿入規制壁となるので、凸部222の前面の位置を基準に端子抜き取り治具1の形態を整える。つまり、
図5(b)に示すように、アタッチメント30の位置の調整により、解除ピン12の挿入規制深さをP2に設定する。また、
図6(a)に示すように、凸部222のない位置で端子250(ショート端子230の上側の端子以外の端子)の抜き取りを行う場合は、フロントホルダ220の凸部222のない位置の前面が解除ピン12の挿入規制壁となるので、その凸部222のない位置のフロントホルダ220の前面の位置を基準に端子抜き取り治具1の形態を整える。つまり、
図6(b)に示すように、アタッチメント30の位置の調整により、解除ピン12の挿入規制深さをP7(但しP7<P2)に設定する。
【0041】
なお、フロントホルダ220やコネクタハウジング210には、端子の抜き取り時に、解除ピン12を挿入するための経路が予め設けられている。
図4の拡大図中のAで示す位置が、2本の解除ピン12A、12Bの挿入経路の位置である。1個のランス214は、両側部に被解除部(図示略)を持つものとして形成されており、これら被解除部に向けて2本の解除ピン12A、12Bの先端を挿入して、被解除部を押圧変位させることにより、ランス214を係止解除位置に変位させることができるようになっている。
【0042】
<作用の説明>
次に本実施形態の端子抜き取り治具1の作用を説明する。
その前にまず、アタッチメントが装着されていない場合の課題について説明する。
図7(a)、(b)は、第1実施形態の端子抜き取り治具の比較例の説明図で、
図7(a)はフロントホルダの凸部のある位置で端子の係止を解除しようとしている状態を示す側面図、
図7(b)はフロントホルダの凸部のない位置で端子の係止を解除しようとしている状態を示す側面図である。
【0043】
<比較例:アタッチメントを装着していない場合の課題>
図7に概略構成を示すように、ここで対象とするコネクタ200のコネクタハウジング本体210の前部には、上述したようにフロントホルダ220が付いている。フロントホルダ220の前面には、所定箇所に凸部222が設けられている。いま、この凸部222のある位置で端子の係止を解除する場合と、凸部222のない位置で端子の係止を解除する場合とで、ランスの係止解除の条件が異なる。
【0044】
即ち、凸部222のある位置で端子の係止を解除する場合は、凸部222があるために、端子抜き取り治具の解除ピン12の挿入深さが、凸部222によって規制される。例えば、
図7(a)に示すように、挿入深さが凸部222の前面からT2の距離に規制されているとする。その場合は、挿入規制部として機能する解除ピン12の段部16から解除ピン12の先端15aまでの距離P2を、P2=T2と設定する。
【0045】
こうすることで、解除ピン12の先端15aをコネクタ200に挿入したとき、解除ピン12の段部16がフロントホルダ220(コネクタハウジング)の凸部222の前面に突き当たる。それにより、解除ピン12の先端15aの挿入深さをT2(=P2)に規制することができる。そのため、過度に奥側に解除ピン12の先端15aが挿入してしまい、その結果、ランス等を傷めたり、解除ピン12の先端側を変形させたりするおそれがない。
【0046】
一方、フロントホルダ220の凸部222のない位置で端子の係止を解除しようとした場合について説明する。その場合、
図7(b)に示すように、フロントホルダ220の凸部222のない位置の前面からの解除ピン12の挿入深さが、T2より小さいT1に規制されているものとする。しかし、解除ピン12を挿入した際に、段部16の突き当たる部分(凸部222)がない。そのために、解除ピン12の先端15aがランスに到達していても、段部16とフロントホルダ220との間に隙間Dがあいてしまい、解除ピン12の先端15aを過度に奥側に挿入してしまう可能性がある。その結果、解除ピン12の先端15aでランス等を傷めたり、解除ピン12の先端側を変形させたりするおそれがある。
【0047】
<第1実施形態:アタッチメントを装着した場合の作用>
この点、治具本体10にアタッチメント30を装着することで、前述した両方の場合(即ち、フロントホルダ220の凸部222のある位置で端子の係止を外す場合と、フロントホルダ220の凸部222のない位置で端子の係止を外す場合)に容易に対応することができる。
【0048】
第1実施形態の端子抜き取り治具1を用いて端子抜き取り作業を行う場合は、まず、
図1(b)に示すように、治具本体10にアタッチメント30を装着する。即ち、アタッチメント30のガイド部33のガイド溝36に解除ピン12を挿通させながら、治具本体10の保持部11をアタッチメント本体31の内部に収容する。
【0049】
この状態で、アタッチメント30は治具本体10に対して長手方向に相対移動可能に装着されている。
そこで、まず、フロントホルダ220の凸部222のある位置で端子の係止を外す場合に備えて、アタッチメント30を後側の第1位置に移動して保持する。
図1(b)は、その状態を示している。
【0050】
図8(a)〜(c)は、端子抜き取り治具1のアタッチメント30を第1位置(後方位置)に保持した状態を示す側面図、(b)は側断面図、(c)はそのとき治具本体10の係止孔18と係合するのが第1係止凸部38Aであることを示す図である。
【0051】
アタッチメント30を治具本体10に対して後側の第1位置に移動(矢印S1方向への移動)すると、
図8(a)〜(c)に示すように、アタッチメント30の前側の第1の係止凸部38Aが治具本体10の係止孔18に係合する。これにより、治具本体10とアタッチメント30が第1位置に保持される。
【0052】
この第1位置に保持されているとき、上述した(A)の条件(Q11<P5)が満たされていることにより、解除ピン12A、12Bの段部16が、アタッチメント30の前端面35Aより前側に位置する。つまり、解除ピン12A、12Bの段部16が、アタッチメント30から露出する。
【0053】
図9(a)〜(d)は、端子抜き取り治具1の第1の使用例を説明するための図で、
図9(a)は、アタッチメント30を第1位置(後方位置)に保持した状態の端子抜き取り治具1の斜視図、
図9(b)〜(d)は、アタッチメント30を第1位置(後方位置)に保持した端子抜き取り治具1によって、フロントホルダ220の凸部222のある位置で端子250の係止を解除する場合の手順を順に示す側断面図である。
図10(a)〜(c)は、
図9(b)〜(d)の説明の補助として、端子抜き取り治具1のアタッチメント30を第1位置(後方位置)に保持した上でコネクタハウジング200内に解除ピン12を挿入した状態を示す図で、
図10(a)は要部拡大図、
図10(b)は側面図、
図10(c)は上から見た断面図である。
【0054】
フロントホルダ220の凸部222のある位置での端子の係止解除を行う場合は、
図9(a)に示すように、アタッチメント30を第1位置(後方位置)に保持した端子抜き取り治具1を用いて行う。即ち、
図9(b)〜(d)および
図10(a)〜(c)に示すように、解除ピン12(12A、12B)の先端15aを、コネクタハウジング(フロントホルダを通してハウジング本体)の内部に挿入する。そうすると、解除ピン12の段部16が、フロントホルダ220の凸部222の前面に突き当たることで、解除ピン12A、12Bの先端15aの挿入深さがP2に規制される。そして、挿入深さがP2に規制されながら、その挿入深さP2に挿入された解除ピン12A、12Bの先端15aによって、ランス214〔
図5(a)参照〕による端子250の係止解除が行われる。
【0055】
次に、フロントホルダ220の凸部222のない位置で端子の係止を外す場合は、アタッチメント30を前側の第2位置に移動して保持する。
【0056】
図11(a)〜(c)は、端子抜き取り治具1のアタッチメント30を第2位置(前方位置)に保持した状態を示す側面図、(b)は側断面図、(c)はそのとき治具本体10の係止孔18と係合するのが第2係止凸部28Bであることを示す図である。
【0057】
アタッチメント30を治具本体10に対して前側の第2位置に移動(矢印S2方向への移動)すると、
図11(a)〜(c)に示すように、アタッチメント30の後側の第2の係止凸部38Bが治具本体10の係止孔18に係合する。これにより、治具本体10とアタッチメント30は第2位置に保持される。
【0058】
この第2位置に保持されているとき、上述した(A)の条件(P5<Q12)が満たされていることにより、解除ピン12A、12Bの段部16が、アタッチメント30の前端面35Aより後側に位置する。つまり、解除ピン12A、12Bの段部16が、アタッチメント30の内部に収容されて隠れる。
【0059】
図12(a)〜(d)は、端子抜き取り治具1の第2の使用例を説明するための図で、
図12(a)は、アタッチメント30を第2位置(前方位置)に保持した状態の端子抜き取り治具1の斜視図、
図12(b)〜(d)は、アタッチメント30を第2位置(前方位置)に保持した端子抜き取り治具1によって、フロントホルダ220の凸部222のない位置で端子250の係止を解除する場合の手順を順に示す側断面図である。
図13(a)、(b)は、
図12(b)〜(d)の説明の補助として、端子抜き取り治具1のアタッチメント30を第2位置(後方位置)に保持した上でコネクタハウジング200内に解除ピン12を挿入した状態を示す図で、
図13(a)は側面図、
図13(b)は上から見た断面図である。
【0060】
フロントホルダ220の凸部222のない位置での端子の係止解除を行う場合は、
図12(a)に示すように、アタッチメント30を第2位置に保持した端子抜き取り治具1を用いて行う。即ち、
図12(b)〜(d)および
図13(a)、(b)に示すように、解除ピン12A、12Bの先端15aを、コネクタハウジング200(フロントホルダ220を通してコネクタハウジング本体210)の内部に挿入する。そうすると、アタッチメント30の前端面35Aが、フロントホルダ220の凸部222のない位置の前面に突き当たることで、解除ピン12A、12Bの先端15aの挿入深さがP7に規制される。
【0061】
ここで、寸法P7は、アタッチメント30の前端面35Aからの解除ピン12A、12Bの突き出し長さである。この突き出し長さP7は、当然P2より小さく、P7=P6−Q12である。そして、挿入深さがP7に規制されながら、その挿入深さP7に挿入された解除ピン12A、12Bの先端15aによって、ランス214による端子の係止解除が行われる。
【0062】
このように、治具本体10に装着したアタッチメント30の位置を切り換えることによって、解除ピン12(12A、12B)の先端の有効長さ(つまりコネクタハウジング内へ挿入できる長さ)を変えることができる。例えば、アタッチメント30を後側の第1位置に移動すれば、解除ピン12A、12Bの挿入規制部(段部16)をコネクタハウジングの前端(フロントホルダ220の凸部222の前面)に当てることで、解除ピン12A、12Bの挿入深さを大きくすることができる(挿入深さ=P2)。
【0063】
また、アタッチメント30を前側の第2位置に移動すれば、アタッチメント30の前端面35Aをコネクタハウジングの前端(フロントホルダ220の凸部222のない位置の前面)に当てることで、解除ピン12A、12Bの挿入深さを小さくすることができる(挿入深さ=P7<P2)。
【0064】
従って、コネクタハウジングの前端からランスまでの距離が異なる場合でも、アタッチメント30の位置の切り換えにより、解除ピン12(12A、12B)の先端のコネクタハウジング内への挿入深さを適正値に管理することができる。その結果、専用治具を用意しなくても、解除ピン12を変形させたりランスを傷めたりすることなく、ランスによる端子の係止を解除することができる。
【0065】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の端子抜き取り治具について、
図14〜
図19を参照して説明する。
図14(a)、(b)は、本発明の第2実施形態の端子抜き取り治具の説明図で、
図14(a)はアタッチメントを治具本体に装着する前の状態を示す斜視図、
図14(b)はアタッチメントを治具本体に装着した後の状態を示す斜視図である。また、
図15(a)〜(c)は、第2実施形態におけるアタッチメントの構成図で、
図15(a)は斜視図、
図15(b)は正面図、
図15(c)は
図15(b)のB−B矢視断面図である。
【0066】
図14および
図15に示すように、この第2実施形態の端子抜き取り治具2と第1実施形態の端子抜き取り治具1との違いは、次の点にある。即ち、アタッチメント50(アタッチメント本体31)の長さを延ばして、アタッチメント50を治具本体10に対して、第1位置、第2位置、第3位置の3つの位置に移動して保持できるようにした点にある。その他の構成上の違いはないので、違う点のみ説明し、同じ点の説明は省略する。
【0067】
このアタッチメント50では、アタッチメント本体31の長さを第1実施形態のものよりも後側に適当な寸法だけ延ばしている。段部34からアタッチメント本体31の後端までの距離はQ3であり、第1実施形態のアタッチメント30の寸法Q2をQ3に延ばした分だけ、アタッチメント50の全長も延びている。そして、その延長した部分の両側板31cの内面に、前から順番に並んだ第1の係止凸部38A、第2の係止凸部38Bに加えて、第3の係止凸部38Cを設けている。第3の係止凸部38Cも、前側の2つの係止凸部38A、38Bと同じ直線上に配置されている。また、第3の係止凸部38Cは、第2の係止凸部38Bから距離Q7の位置に配置されている。従って、第3の係止凸部38Cは、アタッチメント50の前端面35Aから距離Q13=Q12+Q7の位置にある。
【0068】
繰り返しになるが、治具本体10側の各寸法とアタッチメント50側の各寸法を整理すると、次のようになる。
(1)治具本体10の係止孔18から解除ピン12の段部16までの距離はP5である。
(2)治具本体10の係止孔18から解除ピン12の先端15aまでの距離はP6である。
(3)治具本体10の解除ピン12の段部16から先端15aまでの距離はP2である。
(4)アタッチメント50の第1の係止凸部38Aから前端面35Aまでの距離はQ11である。
(5)アタッチメント50の第2の係止凸部38Bから前端面35Aまでの距離はQ12である。
(6)アタッチメント50の第3の係止凸部38Bから前端面35Aまでの距離はQ13である。
(7)アタッチメント30の第1の係止凸部38Aと第2の係止凸部38Bとの間の距離はQ6である。
(8)アタッチメント30の第2の係止凸部38Bと第3の係止凸部38Cとの間の距離はQ7である。
【0069】
ここでは、Q11、Q12、Q13、P5、P6が次の関係を満たすように設定されている。
Q11<P5<Q12 … (A)
Q13>P6 … (B)
なお、Q11とP5の関係は、Q11<P5であるのが望ましいが、Q11=P5であってもよい。同様に、Q13とP6の関係は、Q13>P6であるのが望ましいが、Q13=P6であってもよい。
【0070】
第1実施形態の同様に、上記(A)の条件が満たされていることにより、アタッチメント30が前方に位置して、治具本体10の係止孔18にアタッチメント30の第1の係止凸部38Aが係合しているとき、解除ピン12A、12Bの段部16は、アタッチメント30の前端面35Aより前側に位置する。つまり、解除ピン12A、12Bの段部16が、アタッチメント30から露出する。
【0071】
また、第1実施形態と同様に、アタッチメント30が後方に位置して、治具本体10の係止孔18にアタッチメント30の第2の係止凸部38Bが係合しているとき、解除ピン12A、12Bの段部16は、アタッチメント30の前端面35Aより後側に位置する。つまり、解除ピン12A、12Bの段部16が、アタッチメント30の内部に隠れる。
【0072】
また、上記(B)の条件が満たされていることにより、アタッチメント30が更に後方に位置して、治具本体10の係止孔18にアタッチメント30の第3の係止凸部38Cが係合しているとき、解除ピン12の先端15aがアタッチメント30の前端面35Aより後側に位置する。つまり、解除ピン12の先端15aがアタッチメント30の内部に隠れる。これらの点の詳細については、作用の説明の中で述べる。
【0073】
<作用の説明>
第2実施形態の端子抜き取り治具2を用いて端子抜き取り作業を行う場合も、第1実施形態の端子抜き取り治具1と全く同様の使い方をすることができる。
【0074】
図16(a)〜(d)は、本発明の第2実施形態の端子抜き取り治具のアタッチメントを第1位置(後方位置)に保持した状態を示す図で、
図16(a)は斜視図、
図16(b)は側面図、
図16(c)は側断面図、
図16(d)はそのとき治具本体の係止孔と係合するのが第1係止凸部であることを示す図である。また、
図17(a)〜(d)は、本発明の第2実施形態の端子抜き取り治具のアタッチメントを第2位置(前方位置)に保持した状態を示す図で、
図17(a)は斜視図、
図17(b)は側面図、
図17(c)は側断面図、
図17(d)はそのとき治具本体の係止孔と係合するのが第2係止凸部であることを示す図である。また、
図19(a)、(b)は、本発明の第2実施形態の端子抜き取り治具のアタッチメントの位置を作業箇所に応じて切り換えた場合の作用説明図で、
図19(a)はアタッチメントを第1位置に保持した上でコネクタハウジング内に解除ピンを挿入した状態を示す側面図、
図19(b)はアタッチメントを第2位置に保持した上でコネクタハウジング内に解除ピンを挿入した状態を示す側面図である。
【0075】
まず、フロントホルダ220の凸部222のある位置で端子の係止を外す場合は、
図16(a)〜(d)に示すように、アタッチメント50を後側の第1位置に移動して保持する。アタッチメント50を治具本体10に対して後側の第1位置に移動(矢印S1方向への移動)すると、アタッチメント50の前側の第1の係止凸部38Aが治具本体10の係止孔18に係合する。これにより、治具本体10とアタッチメント50は第1位置に保持される。
【0076】
この第1位置に保持されているとき、上述した(A)の条件(Q11<P5)が満たされていることにより、解除ピン12A、12Bの段部16が、アタッチメント50の前端面35Aより前側に位置する。つまり、解除ピン12A、12Bの段部16が、アタッチメント50から露出する。
【0077】
この第1位置のアタッチメント50を保持した状態で、
図19(a)に示すように、解除ピン12A、12Bの先端15aを、コネクタハウジング(フロントホルダを通してハウジング本体)の内部に挿入する。そうすると、解除ピン12の段部16が、フロントホルダ220の凸部222に突き当たることで、解除ピン12A、12Bの先端15aの挿入深さがP2に規制される。そして、挿入深さがP2に規制されながら、その挿入深さP2に挿入された解除ピン12A、12Bの先端15aによって、ランスによる端子の係止解除が行われる。
【0078】
次に、フロントホルダ220の凸部222のない位置で端子の係止を外す場合は、
図17(a)〜(d)に示すように、アタッチメント50を前側の第2位置に移動して保持する。アタッチメント50を治具本体10に対して前側の第2位置に移動(矢印S2方向への移動)すると、アタッチメント50の後側の第2の係止凸部38Bが治具本体10の係止孔18に係合する。これにより、治具本体10とアタッチメント50は第2位置に保持される。
【0079】
この第2位置に保持されているとき、上述した(A)の条件(P5<Q12)が満たされていることにより、解除ピン12A、12Bの段部16が、アタッチメント50の前端面35Aより後側に位置する。つまり、解除ピン12A、12Bの段部16が、アタッチメント50の内部に収容されて隠れる。
【0080】
この第2の位置にアタッチメント50を保持した状態で、
図19(b)に示すように、解除ピン12A、12Bの先端15aを、コネクタハウジング(フロントホルダを通してハウジング本体)の内部に挿入する。そうすると、アタッチメント50の前端面35Aが、フロントホルダ220の凸部222のない位置に突き当たることで、解除ピン12A、12Bの先端15aの挿入深さがP7に規制される。
【0081】
ここで、寸法P7は、アタッチメント50の前端面35Aからの解除ピン12A、12Bの突き出し長さである。この突き出し長さP7は、当然P2より小さく、P7=P6−Q12である。そして、挿入深さがP7に規制されながら、その挿入深さP7に挿入された解除ピン12A、12Bの先端15aによって、ランスによる端子の係止解除が行われる。
【0082】
このように、治具本体10に装着したアタッチメント50の位置を切り換えることによって、解除ピン12(12A、12B)の先端の有効長さ(つまりコネクタハウジング内へ挿入できる長さ)を変えることができる。例えば、アタッチメント50を後側の第1位置に移動すれば、解除ピン12A、12Bの挿入規制部(段部16)をコネクタハウジングの前端(フロントホルダ220の凸部222の前面)に当てることで、解除ピン12A、12Bの挿入深さを大きくすることができる(挿入深さ=P2)。
【0083】
また、アタッチメント50を前側の第2位置に移動すれば、アタッチメント50の前端面35Aをコネクタハウジングの前端(フロントホルダ220の凸部222のない位置の前面)に当てることで、解除ピン12A、12Bの挿入深さを小さくすることができる(挿入深さ=P7<P2)。
【0084】
従って、コネクタハウジングの前端からランスまでの距離が異なる場合でも、アタッチメント50の位置の切り換えにより、解除ピン12(12A、12B)の先端のコネクタハウジング内への挿入深さを適正値に管理することができる。その結果、専用治具を用意しなくても、解除ピン12を変形させたりランスを傷めたりすることなく、ランスによる端子の係止を解除することができる。
【0085】
次に端子抜き取り作業が終了したら、アタッチメント50を第3位置に移動して保持する。
図18(a)〜(d)は、本発明の第2実施形態の端子抜き取り治具のアタッチメントを第3位置(最前方位置)に保持した状態を示す図で、
図18(a)は斜視図、
図18(b)は側面図、
図18(c)は側断面図、
図18(d)はそのとき治具本体の係止孔と係合するのが第3係止凸部であることを示す図である。
【0086】
図18(a)〜(d)に示すように、アタッチメント50を治具本体10に対して、第2位置よりも更に前側の第3位置に移動(矢印S3方向への移動)すると、アタッチメント50の最も後側の第3の係止凸部38Cが治具本体10の係止孔18に係合する。これにより、治具本体10とアタッチメント50は第3位置に保持される。
【0087】
この第3位置に保持されているとき、上述した(B)の条件(Q13<P6)が満たされていることにより、解除ピン12A、12Bの先端15aが、アタッチメント50の前端面35Aより後側に位置する。つまり、解除ピン12A、12Bの先端15aが、アタッチメント50の内部に収容されて隠れる。
【0088】
このように、アタッチメント50を第3位置に位置させることで、解除ピン12A、12Bの先端15aをアタッチメント50の内部に収容することができる。しかも、その位置にアタッチメント50を保持しておくことができる。従って、解除ピン12A、12Bの先端15aを保護キャップなどで覆わなくても、アタッチメント50で保護キャップの代わりをすることができ、安全確保が図れる。
【0089】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0090】
例えば、上記実施形態では、アタッチメント30、50に係止凸部38A、38B、38Cが設けられ、治具本体10に係止孔18が設けられている場合を示したが、アタッチメント30、50側に係止凹部または係止孔が設けられ、治具本体10側に係止凸部が設けられていてもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、第2位置を1箇所に定めているが、第2位置を複数設けることで、解除ピンの挿入深さの規制値を多段階に設定することができる。
【0092】
ここで、上述した本発明に係る端子抜き取り治具の実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]、[2]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
コネクタハウジング(コネクタ200)の内部に収容されてランスにより係止された端子を抜き取るために、前記コネクタハウジング(コネクタ200)の前方から前記ランスに向けて挿入され、先端(15a)で前記ランスによる端子の係止を解除する解除ピン(12、12A、12B)と、前記解除ピン(12、12A、12B)の長さ方向の途中に、該解除ピン(12、12A、12B)の前記コネクタハウジング(コネクタ200)への挿入時に前記コネクタハウジング(コネクタ200)に当たることで前記解除ピン(12、12A、12B)の先端(15a)の前記コネクタハウジング(コネクタ200)内への挿入深さを規制する挿入規制部(段部16)と、を有する治具本体(10)と、
前記治具本体(10)に着脱可能に且つ前記治具本体(10)における第1位置と該第1位置より前記治具本体(10)の先端側に位置する第2位置との間で移動可能に装着され、前記第1位置にあるとき前端(35A)が前記解除ピン(12、12A、12B)の挿入規制部(段部16)と同位置かそれより後方に位置し、前記第2位置にあるとき前端(35A)が前記治具本体(10)の挿入規制部(段部16)より前方に位置し、前記第2位置にある状態で前記解除ピン(12、12A、12B)の先端(15a)が前記コネクタハウジング(コネクタ200)に挿入されたとき、前記前端(35A)が前記コネクタハウジング(コネクタ200)に当たることで前記解除ピン(12、12A、12B)の先端(15a)のコネクタハウジング(コネクタ200)内への挿入深さを規制するアタッチメント(30、50)と、
前記アタッチメント(30、50)と前記治具本体(10)との間に設けられ、前記アタッチメント(30、50)が前記第1位置にあるときおよび前記第2位置にあるとき、該アタッチメント(30、50)を前記治具本体(10)にそれぞれ係止可能な第1係止手段(第1の係止凸部38A、係止孔18)および第2係止手段(第2の係止凸部38B、係止孔18)と、
を備えることを特徴とする端子抜き取り治具(1、2)。
[2]
上記[1]に記載の端子抜き取り治具であって、
前記アタッチメント(50)が、前記治具本体(10)における前記第2位置よりも前方の第3位置へ移動可能に設けられ、
前記第3位置は、前記アタッチメント(50)が該第3位置にあるときに、該アタッチメント(50)の内部に前記解除ピン(12、12A、12B)の先端(15a)を収容する位置として設定され、
さらに前記アタッチメント(50)と前記治具本体(10)の間に、前記アタッチメント(50)が前記第3位置にあるとき、該アタッチメント(50)を前記治具本体(10)に係止可能な第3係止手段(第3の係止凸部38C、係止孔18)が設けられている、
ことを特徴とする端子抜き取り治具(2)。