特許第6668525号(P6668525)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6668525
(24)【登録日】2020年2月28日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】警報システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20200309BHJP
   G08B 25/10 20060101ALI20200309BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   G08B17/00 C
   G08B25/10 A
   G08B25/00 520C
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-31115(P2019-31115)
(22)【出願日】2019年2月25日
(62)【分割の表示】特願2017-141443(P2017-141443)の分割
【原出願日】2013年5月15日
(65)【公開番号】特開2019-96353(P2019-96353A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2019年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】松熊 秀成
【審査官】 山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−014119(JP,A)
【文献】 特開2012−178653(JP,A)
【文献】 特開2010−009231(JP,A)
【文献】 特開2005−222319(JP,A)
【文献】 特開平03−081898(JP,A)
【文献】 特開2011−100247(JP,A)
【文献】 特開昭53−076796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 13/00−17/00
19/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
警戒エリアに配置した1または複数の警報器からなるグループを複数設け、各グループ内の警報器で連動警報を行うと共に、各グループ間で信号を中継する中継器を経由して異なるグループの警報器間でも連動警報を行う警報システムに於いて、
1のグループに配置された前記警報器で異状を検知した場合に、当該警報器は、異状警報を出力すると共に自己のグループを指定した異状連動信号を送信して当該1のグループ内の他の警報器に異状警報を出力させ、
前記1のグループの警報器から送信された異状連動信号を、当該グループと連動関係にある他のグループとの間で信号を中継する前記中継器で受信した場合に、当該中継器は、前記連動関係にある他のグループを指定して警報準備動作を指示する警報準備連動信号を送信し、
当該中継器から送信された警報準備連動信号を前記連動関係にある他のグループの警報器で受信した場合に、当該他のグループの警報器は、所定の警報準備動作を行うと共に自己のグループを指定した警報準備連動信号を送信して当該他のグループ内の他の警報器に所定の警報準備動作を行わせることを特徴とする警報システム。
【請求項2】
請求項1記載の警報システムに於いて、前記警報器は、前記警報準備動作として、前記異状警報とは異なる警報音及び又は警報表示による報知を行うことを特徴とする警報システム。
【請求項3】
請求項1記載の警報システムに於いて、
前記連動関係にある他のグループを指定した警報準備連動信号を送信した前記中継器は、その後に所定の判定条件の成立を検知した場合に、前記連動関係にある他のグループを指定した異状連動信号を送信し、当該他のグループ内の警報器の警報準備動作を異状警報の出力に切替えることを特徴とする警報システム。
【請求項4】
請求項3記載の警報システムに於いて、
前記1のグループの異状を検知した警報器は、異状の検知が継続している場合に異状連動信号を繰り返し送信し、
前記警報準備連動信号を送信した前記中継器は、前記1のグループの警報器から異状連動信号を所定期間内に所定回数受信した場合に、前記判定条件の成立を検知して、前記連動関係にある他のグループを指定した異状連動信号を送信することを特徴とする警報システム。
【請求項5】
請求項4記載の警報システムに於いて、
前記連動関係にある他のグループから送信された異状連動信号を、当該他のグループと連動関係にある第3のグループとの間で信号を中継する他の中継器で受信し、当該他の中継器は、当該異状連動信号を受信した場合に、前記連動関係にある第3のグループを指定した警報準備連動信号を送信し、当該第3のグループ内の警報器に所定の警報準備動作を行わせることを特徴とする警報システム。
【請求項6】
請求項5記載の警報システムに於いて、
前記警報準備連動信号を送信した前記他の中継器は、前記他のグループの警報器から異状連動信号を所定期間内に所定回数受信した場合に、前記連動関係にある第3のグループを指定した異状連動信号を送信することを特徴とする警報システム。
【請求項7】
請求項1記載の警報システムに於いて、
前記中継器を経由して連動する2つのグループの各警報器は、グループ毎に異なる通信周波数を使用して通信し、
前記中継器は、何れか一方のグループから受信した通信周波数の信号を、他方のグループで使用する通信周波数の信号に変換して送信することを特徴とする警報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災などの異状を検知して警報する警報器を複数のグループに分け、同じグループ内の警報器で連動警報を行うと共に、中継器を経由して異なるグループ間の警報器でも連動警報を行う警報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等における火災を検知して警報する警報器が普及している。このうち、住宅用火災警報器を住警器と言う。例えば、このような住警器にあっては、電池電源で動作し、住警器内に火災を検出するセンサ部と火災を警報する警報部を一体に備え、センサ部の検出信号に基づき火災を検知すると警報部から火災警報音を出力するようにしており、所謂自動火災報知設備のように受信機等を必要とせず住警器単体で火災監視と警報報知ができることから、設置が簡単でコスト的にも安価であり、一般住宅での設置義務化に伴い広く普及している。
【0003】
また、複数の住警器間で相互に無線通信を行うことによって、任意の住警器で火災警報音が出力されると、他の住警器でも連動して火災警報音を出力させる無線連動型の住警器を用いた警報システムも実用化され、普及している。
【0004】
このような連動型の警報システムでは、住警器で火災を検出した場合、当該火災を検出した連動元の住警器は、例えば「ウーウー火災警報器が作動しました 確認してください」といった火災警報音を出力すると共に警報表示用LEDを点灯し、一方、連動先の警報器では例えば「ウーウー 別の火災警報器が作動しました 確認してください」といった火災警報音を出力すると共に警報表示用LEDを点滅するようにしている。
【0005】
しかし、このような従来の無線連動型の警報システムにあっては、ある住警器が他の住警器からの無線信号を受信する際に、同じ通信周波数を使用する複数の無線信号が同時に到来して信号衝突を起こす場合があり、信号衝突の発生頻度は警戒エリアに設置する住警器の台数が増加するほど高くなり、そのため1つの警戒エリアに設置できる住警器の台数が制約される。
【0006】
この問題を解決するため、本願出願人にあっては、複数の警報器からなるグループを形成するにあたって、信号衝突の頻度が高くならないよう制限した警報器の最大台数を設定し、このように形成した複数のグループ間に中継器を配置して連動させ、更に、グループ毎に使用する通信周波数を異ならせた警報システムを提案している(特許文献3)。
【0007】
このグループ連動の警報システムにあっては、警戒エリア内で複数のグループを連動させることで全体の警報器連動台数を増やすことができ、グループが異なると警報器の通信周波数が異なるため、あるグループの警報器に当該グループ内の警報器からの信号と他のグループの警報器からの信号が同時に到来しても、信号衝突は発生せず、信号の送受信を確実に行うことができる。
【0008】
この信号衝突の問題は、無線信号を使用する場合には警報器の親機と子機を区別しないシステムでも親機に対し複数の子機を配置する親子方式のシステムでも同様であり、親子方式の場合例えば親機は子機の個別IDを用いて子機を順次呼出し処理しているが、子機の台数が多くなると、信号衝突に伴うリトライ回数増加に起因して全体の通信に時間がかかる。そこで、親機と信号衝突の発生頻度を低減すべく子機を所定の最大台数以下に制限してグループを形成し、各グループの親機に中継機能を持たせて連動し、更に、グループ毎に使用する通信周波数を異ならせた警報システムとする。
【0009】
このため、一般住宅よりも規模が大きく通常の無線連動型の住警器からなる警報システムでは警報器最大台数の制限により全体をカバーできないが、しかし火災報知設備の設置義務のない、床面積が3000平米未満の施設、例えば高齢者や知的障害者の家事支援などを行うグループホーム等に、グループ連動を行う警報システムを設置することで、信号衝突の問題を回避しつつグループホーム全体の警報器連動台数を必要にして十分な数に増やし、実質的に火災報知設備を設置したと同等の火災監視機能を低コストで提供可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−094719号公報
【特許文献2】特開2009−140236号公報
【特許文献3】特開2011−034373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、このような従来のグループ連動を行う警報システムにあっては、住警器が火災を検知して警報した場合、同じグループ内の住警器及び他の全てのグループに配置した住警器から火災警報を出力させることができるが、警報システムを設置しているグループホーム等の施設の形態によっては、全グループの警報器を連動させることが不適切な場合がある。
【0012】
例えば、複数の部屋割りをもつ平屋建ての家屋を廊下でつなげたような施設にあっては、家屋にグループを形成し、各家屋の各部屋に住警器を設置し、家屋間(異なるグループ間)は中継器で連動させるが、火災が発生した部屋の住警器(連動元住警器)が属する連動元グループ(家屋:当該グループの警戒エリア)から相当離れた場所に位置する連動先グループの住警器についても一斉に火災警報が出力され、火災に伴う危険度が比較的低く避難に時間的な余裕があるにも係らず、緊急の行動を促す結果となり、多くの人が避難路に殺到して不要な混乱を招く恐れがあるし、非火災報や誤報の場合には迷惑が拡大してしまう。
【0013】
このような場合として例えば、調理に伴う煙や浴室の湯気によって住警器が作動してしまった場合など、火災を検知した警報器が設置されている住居の居住者が自身で非火災報や誤報を判断でき、作動原因の除去や住警器の警報停止操作、或いは復旧操作をおこなえるような状況が考えられる。
【0014】
同様に、複数階に分かれた施設の場合、通常は階毎にグループを形成して連動させることになるが、ある階で火災が発生した場合に、階毎に分けた全てのグループの全住警器から火災警報が一斉に出力され、この場合も不要な混乱や迷惑を招く恐れがある。
【0015】
このような問題を解決するためには、例えば上述の平屋建ての場合は、火災を検知したグループに隣接するグループについて、また複数階に分かれた施設の場合は、火災発生階に対し直上階のグループについて連動警報を行えば、火災の危険度に応じた適切な初期警報となる。
【0016】
しかし、火災を検知しているグループとこれに隣接したグループの連動警報だけでは、それ以外の連動警報を行わないグループの部屋の居住者は、居住している施設内で火災が起きていることが分からず、火災が隣接するグループに拡大した場合の連動警報により、火災を初めて知ることととなり、避難行動が結果的に遅れてしまう可能性がある。
【0017】
本発明は、グループ連動により、住警器等の警報器の連動台数を拡張し、複数の警戒エリアの異状を監視する警報システムにおいて、火災等異状の発生状況に応じて避難行動を含む適切な対処行動を可能とする異状警報の報知形態を提案し実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(警報システム)
本発明は、警戒エリアに配置した1または複数の警報器からなるグループを複数設け、各グループ内の警報器で連動警報を行うと共に、グループ間で信号を中継する中継器を経由して異なるグループの警報器間でも連動警報を行う警報システムに於いて、
1のグループ(A)に配置された警報器で異状を検知した場合に、当該警報器は、異状警報を出力すると共に自己のグループ(A)を指定した異状連動信号を送信して当該1のグループ(A)内の他の警報器に異状警報を出力させ、
1のグループ(A)の警報器から送信された異状連動信号を、当該グループ(A)と連動関係にある他のグループ(B)との間で信号を中継する中継器(R1)で受信した場合に、当該中継器は、連動関係にある他のグループ(B)を指定して警報準備動作を指示する警報準備連動信号を送信し、
当該中継器から送信された警報準備連動信号を連動関係にある他のグループ(B)の警報器で受信した場合に、当該他のグループの警報器は、所定の警報準備動作を行うと共に自己のグループ(B)を指定した警報準備連動信号を送信して当該他のグループ(B)内の他の警報器に所定の警報準備動作を行わせることを特徴とする。
【0019】
(警報準備動作)
警報器の警報準備動作としては、異状警報とは異なる警報音及び又は警報表示による報知を行う。
【0020】
(警報準備動作から警報動作への移行)
連動関係にある他のグループ(B)を指定した警報準備連動信号を送信した中継器(R1)は、その後に所定の判定条件の成立を検知した場合に、連動関係にある他のグループ(B)を指定した異状連動信号を送信し、当該他のグループ(B)内の警報器の警報準備動作を異状警報の出力に切替える。
【0021】
(判定条件)
1のグループ(A)の、異状を検知した警報器は、異状の検知が継続している場合に異状連動信号を繰り返し送信し、
警報準備連動信号を送信した中継器(R1)は、1のグループ(A)の警報器から異状連動信号を所定期間内に所定回数受信した場合に、判定条件の成立を検知して、連動関係にある他のグループ(B)を指定した異状連動信号を送信する。所定期間は、具体的には例えば10秒間とする。所定回数は、具体的には例えば3回とする。
【0022】
(警報準備信号を受信した中継器(R2)の次の動作)
連動関係にある他のグループ(B)から送信された異状連動信号を、当該他のグループと連動関係にある第3のグループとの間で信号を中継する他の中継器(R2)で受信し、当該他の中継器(R2)は、当該異状連動信号を受信した場合に、連動関係にある第3のグループ(C)を指定した警報準備連動信号を送信し、当該第3のグループ(C)内の警報器に所定の警報準備動作を行わせる。
【0023】
(判定条件)
警報準備連動信号を送信した他の中継器(R2)は、他のグループ(B)の警報器から異状連動信号を所定期間内に所定回数受信した場合に、判定条件の成立を検知して、連動関係にある第3のグループ(C)を指定した異状連動信号を送信する。
【0024】
(グループ間の周波数変換)
中継器を経由して連動する2つのグループの各警報器は、グループ毎に異なる通信周波数を使用して通信し、
中継器は、何れか一方のグループから受信した通信周波数の信号を、他方のグループで使用する通信周波数の信号に変換して送信する。
【発明の効果】
【0025】
(基本的な効果)
本発明の警報システムによれば、異状として例えば火災を検知した警報器の属するグループ(A)内の全警報器から火災警報を出力し、これと連動関係にある例えば隣接するグループ(B)との間に配置した中継器(R1)から火災警報を出力し、また当該隣接するグループ(B)内の全警報器から警報準備動作による報知を行い、隣接するグループ(B)と更に隣接し連動関係にある第3のグループ(C)との間に配置した中継器(R2)から火災警報を出力するようにしたため、火災が検知されたグループの警戒エリアに近く火災に伴う危険度の最も高いグループの警報器は速やかに火災警報を行って居住者に迅速な避難行動を促し、次に危険度の高いグループは警報準備動作を促す報知を行うことで、居住者に火災の可能性を知らせて避難の準備行動を促し、更に、廊下などの共用部に設置した中継器(R1、R2)からは火災警報を出力することで、警報準備動作を促す報知を知った居住者や管理者が部屋の外の様子を伺ったような場合に、火災警報を聞いて状況を確認すること等を可能とし、火災の発生状況により危険度に応じたグループ間の警報器連動により、避難などの適切な火災対処を可能とする。
【0026】
(警報準備動作から警報動作への移行による効果)
警報準備連動信号を送信した中継器(R2)は、その後に所定の判定条件の成立を検知した場合、例えば火災を検知しているグループの警報器から火災連動信号を所定期間内に所定回数受信した場合に判定条件の成立を検知し、次のグループ(C)に火災連動信号を送信して、警報器の警報準備動作による報知を火災警報の出力に切替えるようにしたため、火災検知の継続による危険度の増加に応じて、火災警報を行うグループを拡大させ、火災危険度に対応した段階的な避難行動等を可能とする。
【0027】
(警報準備信号を受信した中継器の次の動作による効果)
連動関係にある一方の中継器(R1)から警報準備連動信号を受信して火災警報を出力した他方の中継器(R2)は、その後所定期間内に火災連動信号を受信した場合に、連動関係にある第3のグループ(C)へ警報準備連動信号を送信して警報器に警報準備動作を行わせるようにしたため、火災検知の継続による危険度の増加に応じて、火災準備動作を行うグループを、段階的に拡大する方向に移行させ、火災を検知したグループから離れているグループについても、火災の可能性を知らせて避難等の準備行動を促すことを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】平屋建ての施設に配置した警報システムの実施形態を示した説明図
図2】グループAの住警器A3で火災を検知した場合の動作を示した説明図
図3】グループA,B間に配置した中継器R1で火災連動信号の所定回数の受信を判定して連動グループを拡張する動作を示した説明図
図4】住警器の概略構成の実施形態を示したブロック図
図5】中継器の概略構成の実施形態を示したブロック図
図6】3階建ての施設に配置した警報システムの実施形態を示した説明図
図7】1階グループAの住警器A3で火災を検知した場合の動作を示した説明図
図8】2階グループBの住警器B3で火災を検知した場合の動作を示した説明図
図9】3階グループCの住警器C3で火災を検知した場合の動作を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0029】
[警報システムの概要]
図1は平屋建ての施設に配置した警報システムの実施形態を例示した説明図であり、異状として火災を検知して警報する警報器である住警器を使用した場合を例にとっており、図1(A)に平面を、図1(B)に立面を示す。
【0030】
(連動グループの構成)
図1に示すように、警報システムを設置する施設は、平屋建ての家屋1a,1b,1cを例えばコ字形に配置し、家屋1a〜1cは廊下2に沿って各5つの居室に別れている。
【0031】
警報システムは家屋1a〜1cを警戒エリアとして設置され、このうち家屋1aを警戒エリアとするグループA、家屋1bを警戒エリアとするグループB、家屋1cを警戒エリアとするグループCとし、グループAの各居室にグループAを形成する住警器A1〜A5をそれぞれ設置し、同様に、グループBの各居室にグループBを形成する住警器B1〜B5をそれぞれ設置し、グループCの各居室にはグループCを形成する住警器C1〜C5をそれぞれ設置している。
【0032】
住警器A1〜A5,B1〜B5,C1〜C5は警報器として機能し、火災を検知した場合には連動元の警報器として動作し、連動元を示す火災警報を出力すると共に自己のグループを指定したグループ符号を含む火災連動信号を所定の通信プロトコルに従って送信して、これを受信したグループ内の他の全ての警報器から連動先を示す火災警報を連動して出力させる。また、住警器A1〜A5,B1〜B5,C1〜C5は、同じグループ内の他の住警器が送信した火災連動信号を受信した場合、連動先の警報器として動作し、必要に応じて当該火災連動信号(或いはその内容)を中継送信する。
【0033】
なお、本説明の「中継する」或いは「中継送信する」とは、ある信号の受信に基づいて、少なくとも、受信した連動信号の内容の一部を示す信号を送信することを指す。
【0034】
火災を検知した連動元の警報器は、例えば「ウーウー火災警報器が作動しました 確認してください」といった火災警報音を出力すると共に警報表示用LEDを点灯し、一方、連動先の警報器は、例えば「ウーウー 別の火災警報器が作動しました 確認してください」といった火災警報音を出力すると共に警報表示用LEDを点滅するようにしている。
【0035】
ここで、住警器A1〜A5,B1〜B5,C1〜C5の通信プロトコルは、日本国内の場合、例えば400MHz帯の特定小電力無線局の標準規格として知られたSTD−30(小電力セキュリティシステム無線局の無線設備標準規格)またはSTD−T67(特定小電力無線局テレメータ用、テレコントロール用及びデータ伝送用無線設備の標準規格)に準拠する。
【0036】
また住警器A1〜A5,B1〜B5,C1〜C5が送受信する信号は、送信元を示す識別子である送信元符号、グループを示す識別子であるグループ符号、制御コマンド又は火災、復旧、警報停止等の検知結果を示す符号(事象符号)を含んだ形式とし、送信元符号としては、例えば住警器のシリアル番号を利用する。以下の説明では、グループA,B,Cのグループ符号をGa,Gb,Gcとして示す。
【0037】
また400MHz帯の特定小電力無線局の標準規格では、400MHz帯の4つのチャンネル周波数(通信周波数)を使用することができる。そこでグループA〜Cで使用するチャンネル周波数として、異なるチャンネル周波数fa,fb,fcを割り当てている。
【0038】
廊下2の、グループAとクループBの間の壁面などの所定位置に中継器R1を設置し、また同様にグループBとグループCの間の壁面などの所定位置に中継器R2を設置している。
【0039】
(グループA,B間の中継器R1)
中継器R1は、グループAの住警器A1〜A5の何れかで火災が検知された場合にチャンネル周波数faを使用して送信される火災連動信号を受信した場合、中継器R1自身で火災警報を出力すると共に、連動関係にあるグループBを指定して警報準備動作を指示する警報準備連動信号をグループBの住警器B1〜B5へチャンネル周波数fbを使用して送信する。この警報準備連動信号には、グループBを指定するグループ符号Gbと警報準備動作を示すコマンドが含まれる。
【0040】
また中継器R1は、グループBの住警器B1〜B5の何れかで火災が検知された場合にチャンネル周波数fbを使用して送信される火災連動信号を受信した場合、中継器R1自身で火災警報を出力すると共に、連動関係にあるグループAを指定して警報準備動作を指示する警報準備連動信号をグループAの住警器A1〜A5へチャンネル周波数faを使用して送信する。この警報準備連動信号には、グループAを指定するグループ符号Gaと警報準備動作を示すコマンドが含まれる。
【0041】
(住警器の警報準備動作)
グループBの住警器B1〜B5は、中継器R1からチャンネル周波数fbを使用して送信される警報準備連動信号を受信した場合、所定の警報準備動作を行うと共に、必要に応じチャンネル周波数fbを使用してこれを中継送信する。住警器B1〜B5の警報準備動作は、火災警報とは異なる警報音及び又は警報表示による報知を行もので、例えば次の報知を行う。
(1) 「ピッ」といった短い警報音を繰り返し出力する。
(2) 警報音を出さずに警報用LEDを点灯、点滅又は明滅する。
(3) 前記(1)と(2)を行う。
【0042】
警報器の警報準備動作による報知は、居住者に居室から離れた施設内の場所で火災が検知されていることを知らせ、火災が続いた場合には、そのうちに火災警報が出力されることから、そのための準備を促すことを意図している。
【0043】
なお、中継器R1の警報準備連動信号を送信する機能は、複数のグループの住警器から一斉に火災警報を出力する必要がある場合には、設定操作などにより解除することができる。警報準備連動信号の送信機能を解除した場合、中継器R1はグループAから受信したグループ符号Gaを含む通信周波数faの火災連動信号を、グループ符号Gbを含む火災連動信号に変換してチャンネル周波数fbを使用してグループBの住警器へ送信する。
【0044】
同様に、グループBからチャンネル周波数fbの火災連動信号を受信した場合には、グループ符号Gaを含む火災連動信号に変換してチャンネル周波数faを使用してグループAの住警器へ送信する。
【0045】
グループB,Cの間に配置した中継器R2は、中継器R1が送信した警報準備連動信号を直接または住警器B1〜B5を経由して受信した場合(チャンネル周波数fbで受信)、中継器R1がグループAから火災連動信号を受信した場合と同様、中継器R2自身で火災警報を出力する。
【0046】
しかし、中継器R2は、警報準備連動信号を受信しても、グループCを指定した警報準備連動信号の送信は行わず、保留する。
【0047】
このように警報システムを構成するグループA〜Cの何れかの住警器で火災を検知した場合、廊下2などの共用エリアに設置している中継器R1,R2からは火災警報の連動出力が必ず行われ、共用エリアにいる居住者や支援者に火災発生を確実に報知して避難等の対処行動を促すことを可能とする。
【0048】
(警報準備動作から警報動作への移行)
グループAからの火災連動信号を受信してグループBへ警報準備連動信号を送信した中継器R1は、その後に所定の判定条件の成立を検知した場合に、グループBを指定した火災連動信号を、チャンネル周波数fbを使用して送信し、これを受信したグループBの住警器B1〜B5は警報準備動作による報知を火災警報の連動出力に切替えて出力する。
【0049】
ここで、火災を検知したグループAの住警器は、火災が継続している場合に火災連動信号を繰り返し送信するようにしており、中継器R1は、所定期間内にグループAから火災連動信号を所定回数受信した場合に、即ち警報準備連動信号を送信した後も引き続き継続的にグループAから火災連動信号を受信した場合に、判定条件の成立を検知して、グループBを指定してチャンネル周波数fbを使用した火災連動信号を送信する。
【0050】
このためグループBの住警器B1〜B5は、グループAの住警器で火災が検知されると火災準備動作による報知を行い、その後もグループAの住警器で火災検知が継続していると、火災警報報知に切り替えることになる。このため、火災警報を行う範囲をグループ単位で段階的に拡大して行くことができる。
【0051】
また、中継器R1からチャンネル周波数fbを使用してグループBへ送信した火災連動信号は、グループB,Cの間に配置した中継器R2でも受信され、これに基づき中継器R2はグループCを指定し、チャンネル周波数fcを使用して警報準備連動信号を送信し、これを受信したグループCの住警器C1〜C5に警報準備動作による報知を行わせる。このため警報準備動作を行う範囲を、火災検知の継続に応じて、グループ単位で段階的に拡大方向に移行して行くことができる。
【0052】
(グループB,C間の中継器R2)
中継器R2の動作は、中継器R1の場合のグループAをグループBと読み替え、グループBをグループCと読み替えることで、前述した中継器R1の説明と同じになる。この点は、中継器R2に関連したグループCの警報準備動作及びその後の火災警報への切替えも同様となる。
【0053】
[警報システムの動作]
図2はグループAの住警器A3で火災を検知した場合の動作を示した説明図である。
【0054】
図2に示すように、例えばグループAの住警器A3を設置した居室で火災Fが発生したとすると、住警器A3が所定の火災検知処理を経て火災を検知し、連動元を示す火災警報を出力すると共に、グループ符号Gaを含むチャンネル周波数faの、実線矢印で示す火災連動信号を送信する。住警器A3が送信した火災連動信号は、住警器A1,A2,A4,A5で直接受信され、又は他の住警器の中継を経て受信され、住警器A1,A2,A4,A5は連動先を示す火災警報を出力する。
【0055】
また住警器A3が送信した火災連動信号は、直接又は住警器A1,A2を経由して中継器R1も受信し、これにより中継器R1は火災警報を出力すると共に、グループBを指定するグループ符号Gbを含む、破線矢印で示すチャンネル周波数fbの警報準備連動信号を送信する。
【0056】
中継器R1が送信した警報準備連動信号はグループBの住警器B1〜B5で受信され、これにより住警器B1〜B5は警報準備動作による報知を行う。また中継器R1が送信した警報準備連動信号は直接又は住警器B1〜B5を経由して中継器R2も受信し、中継器R2は火災警報を出力する。
【0057】
図3はグループA,B間に配置した中継器R1で、警報準備連動信号を送信後に引き続き火災連動信号を所定回数受信したことを判定して、これに伴い連動グループを拡張する動作を示した説明図である。
【0058】
図2に示したように、グループAの住警器からチャンネル周波数faの火災連動信号を受信してグループBにチャンネル周波数fbの警報準備連動信号を送信した中継器R1は、その後所定期間内に引き続いてグループAからの火災連動信号を受信し、この受信回数が所定回数に達すると判定条件の成立を検知する。これに基づき、図3に示すように、中継器R1はグループBを指定してチャンネル周波数fbの火災連動信号を送信し、これを受信した住警器B1〜B5は、それまでの警報準備動作による報知から火災警報の出力に切替えるようにして、火災警報出力を行なうグループがグループAからグループBまで拡大する。
【0059】
更に、中継器R1からチャンネル周波数fbの火災連動信号を受信した中継器R2は、グループCを指定したチャンネル周波数fcの警報準備連動信号を送信し、これを受信したグループCの住警器C1〜C5は警報準備動作による報知を行う。このようにして、警報準備動作による報知がグループBからグループCへ移行拡大する。
【0060】
なお、中継器専用のチャンネル周波数(例えばfd)を設けても良い。この場合中継器R1はチャンネル周波数fa、fbをそれぞれ使用してグループA、Bの住警器と通信し、チャンネル周波数fdを使用して他の中継器R2と通信する。中継器R2はチャンネル周波数fb、fcをそれぞれ使用してグループB、Cの住警器と通信し、チャンネル周波数fdを使用して他の中継器R1と通信するようにすれば良い。
【0061】
[住警器の構成]
図4は住警器A1の要部機能構成の概略を示したブロック図であり、他の住警器A2〜A4,B1〜B5,C1〜C5も同様となる。
【0062】
図4において、住警器A1は、制御部10、アンテナ16を接続した通信部14、センサ部12、報知部18、操作部20を備え、図示しない電池電源により動作する。
【0063】
制御部10は、例えばプログラムの実行により実現される機能である。ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0064】
センサ部12は例えば温度検出部や検煙部である。センサ部16として温度検出部を設けた場合、温度検出素子として例えばサーミスタを使用し、この場合、温度による抵抗値の変化に対応した電圧検出信号を制御部10へ出力する。またセンサ部16として検煙部を設けた場合、公知の散乱光式検煙構造をもち、制御部10の指示により、所定周期で赤外LEDを用いた発光部を間欠的に発光駆動し、発光に同期して、フォトダイオードなどの受光部で、発光光が煙粒子により散乱される散乱光を受光して得られる受光信号を増幅回路で増幅し、煙濃度検出信号として制御部10へ出力する。
【0065】
通信部14は、他の住警器A2〜A4との間で所定の無線通信プロトコルに従って火災監視に伴う連動信号(前述の警報準備連動信号、火災連動信号を含む)を送受信し、また必要に応じ中継する。通信プロトコルは、日本国内の場合には、例えば400MHz帯の特定小電力無線局の標準規格に準拠し、送信電力は1mW以下であり、1mWの場合、見通し通信距離は約100メートル程度となる。
【0066】
報知部18は、スピーカ、表示LED及びそれぞれの駆動回路を備え、必要に応じ制御部10の指示によりスピーカから警報音を出力すると共に表示LEDにより警報表示を行う。操作部20は警報音及び又は警報表示を停止するための操作を受け付ける警報停止スイッチを備える。
【0067】
制御部10は、次の火災警報制御、火災復旧制御、警報停止制御等を行う。
【0068】
(火災警報制御)
制御部10は、センサ部12から出力した温度又は煙濃度の検出信号をAD変換により読み込み、所定の閾値以上の場合に火災を検知し(火災検知処理)、報知部18から連動元を示す火災警報を出力させる制御を行う。
【0069】
また、制御部10は、火災を検知した場合、グループ符号Gaを含む火災連動信号を生成し、通信部14に指示し、他の住警器A2〜A4へチャンネル周波数faを使用する火災連動信号を送信させる制御を行い、当該火災連動信号の有効受信を検知した他の住警器A2〜A4から連動先を示す火災警報を出力させる。
【0070】
ここで、住警器B1〜B5では、制御部10はグループ符号Gbを含みチャンネル周波数fbを使用し、住警器C1〜C5ではグループ符号Gcを含みチャンネル周波数fcを使用した火災連動信号を送信させる制御を行うことになる。
【0071】
また、制御部10は、通信部14を介して他の住警器A2〜A4の何れか又は中継器R1が送信したチャンネル周波数faの火災連動信号の有効受信を検知した場合、報知部18から連動先を示す火災警報を出力させる制御を行う。
【0072】
また、制御部10は、通信部14を介して他の住警器A2〜A4の何れか又は中継器R1が送信したチャンネル周波数faの火災連動信号或いは警報準備連動信号の有効受信を検知した場合、通信部14に指示し、当該受信した連動信号をチャンネル周波数faで中継送信させる制御を行う。
【0073】
なお、前述した「信号の有効受信を検知」とは、受信可能なチャンネル周波数で受信した信号に含まれるグループ符号が、受信装置である自己のメモリに予め登録したグループ符号に一致して自己に宛てた信号と認識し、更に、信号内容としても異状が無いことを認識したことを意味する。以下、有効受信を検知することを単に「受信(する)」という。
【0074】
(火災復旧制御)
制御部10は、センサ部12の検出信号に基づき温度又は煙濃度が所定の閾値を下回る状態が例えば所定時間継続した場合或いは例えば所定回数連続した場合、火災の復旧(火災検知状態が解消したこと)を検知し、報知部18からの連動先を示す火災警報出力を停止させると共に、火災復旧連動信号を生成し、通信部14に指示し、当該火災復旧連動信号を他の住警器A2〜A4及び中継器R1へチャンネル周波数faで送信させる制御を行い、これを受信した他の住警器A2〜A4及び中継器R1に、連動先を示す火災警報出力を停止させる。
【0075】
また制御部10は、通信部14を介して他の住警器A2〜A4又は中継器R1の何れかが送信した火災復旧連動信号を受信した場合に、報知部18からの連動先を示す火災警報出力を停止させる制御を行うと共に、通信部14に指示し、当該火災復旧連動信号を中継送信させる制御を行う。
【0076】
(警報停止制御)
制御部10は、連動元としての火災警報の出力中に操作部20の警報停止スイッチで受け付けた警報停止操作を検知した場合、報知部18からの連動元を示す火災警報出力を停止させると共に、警報停止連動信号を生成し、通信部14に指示し、当該警報停止連動信号をチャンネル周波数faで他の住警器A2〜A4及び中継器R1へ送信させる制御を行い、これを受信した他の住警器A2〜A4及び中継器R1に、連動先を示す火災警報出力を停止させる。
【0077】
また制御部10は、通信部14を介して他の住警器A2〜A4の何れか又は中継器R1が送信したチャンネル周波数faの警報停止連動信号の受信を検知した場合に、報知部18からの連動先を示す火災警報出力を停止させる制御を行うと共に、通信部14に指示し、当該警報停止連動信号を中継送信させる制御を行う。
【0078】
[中継器の構成]
図5は中継器R1の要部機能構成の概略を示したブロック図であり、通信相手となる住警器(グループ)と取り扱うチャンネル周波数以外は他の中継器R2も同様となる。
【0079】
図5において、中継器R1は、中継制御部22、アンテナ26を接続した第1通信部24、アンテナ30を接続した第2通信部28、報知部32、操作部34を備え、図示しない電池電源により動作する。
【0080】
なお、中継器R1は、図示しない設定登録部の機能を実装しており、通信相手となるグループのグループ符号が予め設定登録されている。そして、中継器R1は各種連動信号の送受の際、設定登録されているグループ符号を適宜参照して送信する連動信号を生成し、また受信した連動信号の有効性(自己が取り扱うべき信号であるか否か)をチェックするようにしている。
【0081】
中継制御部22は、例えばプログラムの実行により実現される機能である。ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0082】
第1通信部24は、チャンネル周波数faを使用し、グループAの住警器A1〜A5との間で例えば400MHz帯の特定小電力無線局の標準規格に準拠した通信プロトコルに従って火災連動信号、火災復旧連動信号、警報停止連動信号、警報準備連動信号などを送受信する。
【0083】
第2通信部28は、チャンネル周波数fbを使用し、グループBの住警器B1〜B4との間で、第1通信部24の場合と同様、例えば400MHz帯の特定小電力無線局の標準規格に準拠した通信プロトコルに従って火災連動信号、火災復旧連動信号、警報停止連動信号、警報準備連動信号などを送受信する。
【0084】
ここで、第1通信部24、第2通信部28で取り扱うチャンネル周波数を、必要に応じそれぞれ独立に切り替えられるようにして良い。このようにすれば、中継器R1の構成を共通化して、全体のシステムに合わせて連動信号の送受信相手を変更することができる。即ち例えば、本実施形態の中継器R1とR2の構成を共通化して、それぞれの動作(異なるグループを通信相手とする)ことができる。
【0085】
また、中継器専用のチャンネル周波数fdを設けて他の中継器と通信する場合、第3通信部(図示せず)を設け、チャンネル周波数fdを使用し、他の中継器R2との間で、第1通信部24の場合と同様、例えば400MHz帯の特定小電力無線局の標準規格に準拠した通信プロトコルに従って火災連動信号、火災復旧連動信号、警報停止連動信号、警報準備連動信号などを送受信し、受信した連動信号の送信元符号により通信相手となる中継器R2を識別する。
【0086】
報知部32は、スピーカ、表示LED及びそれぞれの駆動回路を備え、必要に応じ中継制御部22の指示によりスピーカから警報音を出力すると共にLEDにより警報表示を行う。操作部34は警報音及び又は警報表示を停止するための操作を受け付ける警報停止スイッチを備える。
【0087】
中継制御部22は、次の火災警報制御、警報準備制御、警報準備解除制御、火災連動切替制御、火災復旧制御、警報停止制御等を行う。
【0088】
(火災警報制御)
中継制御部22は、第1通信部24を介してグループAの住警器A1〜A5の何れかが送信したチャンネル周波数faの火災連動信号のを受信した場合、報知部32から連動先を示す火災警報を出力させる制御を行う。
【0089】
また、中継制御部22は、第2通信部28を介してグループBの住警器B1〜B5の何れかが送信したチャンネル周波数fbの火災連動信号のを受信した場合、報知部32から連動先を示す火災警報を出力させる制御を行う。
【0090】
(警報準備制御)
中継制御部22は、第1通信部24を介してグループAの住警器A1〜A5の何れかが送信したチャンネル周波数faの火災連動信号のを受信した場合、グループ符号Gbを含む警報準備連動信号を生成し、第2通信部28に指示し、当該警報準備連動信号を、チャンネル周波数fbを使用してグループBの住警器B1〜B5へ送信させる制御を行い、当該警報準備連動信号を受信した住警器B1〜B5に所定の警報準備動作を行わせる。
【0091】
また、中継制御部22は、第2通信部28を介してグループBの住警器B1〜B5の何れかが送信したチャンネル周波数fbの火災連動信号のを受信した場合、グループ符号Gaを含む警報準備連動信号を生成し、第1通信部24に指示し、当該警報準備連動信号を、チャンネル周波数faを使用してグループAの住警器A1〜A5へ送信させる制御を行い、当該警報準備連動信号を受信した住警器A1〜A5に所定の警報準備動作を行わせる。
【0092】
(警報準備解除制御)
中継制御部22は、初期設定等を行う場合に、操作部34の警報停止スイッチの特殊操作、例えば長押操作で受け付けた警報準備解除操作を検知した場合、警報準備連動信号を送信する警報準備制御を解除する制御を行う。
【0093】
中継制御部22は、このように警報準備制御を解除した状態で、第1通信部24又は第2通信部28を介して火災連動信号を受信した場合、連動先のグループを指定した火災連動信号を送信する制御を行い、これにより火災を検知したグループと連動関係にあるグループに配置した住警器から一斉に火災警報が出力される警報連動が行われる。
【0094】
(火災連動切替制御)
中継制御部22は、警報準備連動信号をグループBの住警器B1〜B5へ送信させる制御を行った後所定期間に、第1通信部24を介してグループAからの火災連動信号の受信回数をカウントして所定回数に達するか否か判定しており、所定回数への到達を検知すると、グループ符号Gbを含む火災連動信号を生成し、第2通信部28に指示し、当該火災連動信号を、チャンネル周波数fbを使用してグループBの住警器B1〜B5へ送信させる制御を行い、当該火災連動信号を受信した住警器B1〜B5を、警報準備動作による報知から火災警報の出力動作に切替える。
【0095】
また、中継制御部22は、第1通信部24に対し、警報準備連動信号をグループAの住警器A1〜A5へ送信させる制御を行った後所定期間に、第2通信部28を介してグループBからの火災連動信号の受信回数をカウントして所定回数に達するか否か判定しており、所定回数への到達を検知すると、グループ符号Gaを含む火災連動信号を生成し、第1通信部24に指示し、当該火災連動信号を、チャンネル周波数faを使用してグループAの住警器A1〜A5へ送信させる制御を行い、当該火災連動信号を受信した住警器A1〜A5を、警報準備動作による報知から火災警報の出力動作に切替える。
【0096】
(火災復旧制御)
中継制御部22は、第1通信部24を介して、グループAの火災を検知した住警器A1〜A5の何れかが送信した火災復旧連動信号を受信した場合に、報知部32からの連動先を示す火災警報出力を停止させる制御を行うと共に、グループ符号Gbを含む火災復旧連動信号を生成し、第2通信部28に指示し、当該火災復旧連動信号を、チャンネル周波数fbを使用してグループBの住警器B1〜B5及び中継器R2へ送信させる制御を行い、当該火災連動信号を受信した住警器B1〜B5の警報準備動作による報知出力または火災警報の出力を停止させ、中継器R2に火災警報出力を停止させる。
【0097】
また、中継制御部22は、第2通信部28を介してグループBの火災を検知した住警器B1〜B5の何れかが送信した火災復旧連動信号を受信した場合に、報知部32からの連動先を示す火災警報出力を停止させる制御を行うと共に、グループ符号Gaを含む火災復旧連動信号を生成し、第1通信部24に指示し、当該火災復旧連動信号を、チャンネル周波数faを使用してグループAの住警器A1〜A5へ送信させる制御を行い、当該火災連動信号を受信した住警器A1〜A5の警報準備動作による報知、または火災警報の出力を停止させる。
【0098】
(警報停止制御)
中継制御部22は、火災警報の出力中に操作部34の警報停止スイッチを介し受け付けた警報停止操作を検知した場合、報知部32からの火災警報出力を停止させると共に、グループ符号Ga,Gbをそれぞれ含む警報停止連動信号を生成し、第1通信部24及び第2通信部24の各々に指示し、当該警報停止連動信号をグループAの住警器A1〜A5、グループBの住警器B1〜B5及び中継器R2へ送信させる制御を行い、これを受信した住警器A1〜A5,B1〜B5及び中継器R2に、火災警報出力を停止させる。
【0099】
また中継制御部22は、第1通信部24を介してグループAの住警器A1〜A5の何れかが送信した警報停止連動信号の有効受信を検知した場合に、報知部32からの火災警報出力を停止させる制御を行うと共に、グループ符号Gbを含む警報停止連動信号を生成し、第2通信部28に指示し、当該警報停止連動信号をグループBの住警器B1〜B5及び中継器R2へ送信させる制御を行い、これを受信した住警器B1〜B5及び中継器R2に、火災警報出力を停止させる。
【0100】
また中継制御部22は、第2通信部28を介してグループBの住警器B1〜B5の何れかが送信した警報停止連動信号の有効受信を検知した場合に、報知部32からの火災警報出力を停止させる制御を行うと共に、グループ符号Gaを含む警報停止連動信号を生成し、第1通信部24に指示し、当該警報停止連動信号をグループAの住警器A1〜A5へ送信させる制御を行い、これを受信した住警器A1〜A5に、火災警報出力を停止させる。
【0101】
[3階建て施設の警報システム]
(警報システムの概要)
図6は3階建ての施設に配置した警報システムの実施形態を例示した説明図であり、図6(A)は立面、図6(B)は1階の平面を示す。
【0102】
図6に示すように、警報システムを設置する施設3は、1F〜3Fの3階建てであり、各階は通路に沿って5つの居室に別れ、これら居室は通路を介しそれぞれ階段室4に繋がっている。
【0103】
警報システムは施設3を警戒エリアとして設置され、1階をグループA、2階をグループB、3階をグループCとし、グループAの居室に住警器A1〜A5を設置し、グループBの居室に住警器B1〜B5を設置し、グループCの居室に住警器C1〜C5を設置している。住警器A1〜C5の詳細は図1の実施形態と同じになる。
【0104】
階段室4の所定部分、例えば施設の1階と2階の間(即ち警報システムのグループAとクループBの間)に位置する部分の壁面などに中継器R1を設置し、また例えば施設の2階と3階の間(即ちグループBとグループCの間)に位置する部分の壁面などに中継器R2を設置している。
【0105】
中継器R1はグループAとグループBの間で送受信する信号の中継等を行い、中継器R1はグループAとグループBの間で送受信する信号の中継等を行う。中継器R1,R2の詳細は図1の実施形態と同様であり、火災警報制御、警報準備制御、警報準備解除制御、火災連動切替制御、火災復旧制御、警報停止制御等を行う。
【0106】
図1の実施形態と異なる中継器R1,R2の動作としては、火災発生階のグループから送信された火災連動信号を受信した場合、直上階のグループに対し警報準備連動信号を送信せず、火災連動信号を送信するように警報準備解除制御を行っている点である。
【0107】
例えば、中継器R1は1階のグループAの住警器A1〜A5の何れかから火災連動信号を受信した場合、直上階となるグループBの住警器B1〜B5に対し警報準備連動信号は送信せず、直上階は火災危険度が高いことから、火災連動信号を送信して火災警報を出力させるようにしている。
【0108】
(警報システムの動作)
図7はグループAの住警器A3で火災を検知した場合の動作を示した説明図である。図7に示すように、例えば1階のグループAの住警器A3を設置した居室で火災Fが発生したとすると、住警器A3が火災を検知し、連動元を示す火災警報を出力すると共に、グループ符号Gaを含む周波数faの、実線矢印で示す火災連動信号を送信する。住警器A3が送信した火災連動信号は、住警器A1,A2,A4,A5で直接又は他の住警器の中継を経て受信され、連動先を示す火災警報が出力される。
【0109】
また住警器A3が送信した火災連動信号は中継器R1も受信し、中継器R1は火災警報を出力すると共に、同中継器は直下階に位置するグループAからの火災連動信号の受信に対し警報準備制御の解除設定を行っていることから、グループBを指定するグループ符号Gbを含む火災連動信号を生成し、破線矢印で示ようにチャンネル周波数f2を使用して火災連動信号を送信する。
【0110】
中継器R1が送信した火災連動信号は直接または中継を介してグループBの住警器B1〜B5で受信され、これに基づき住警器B1〜B5は火災警報出力を行う。また中継器R1が送信した火災連動信号は中継器R2も受信する。中継器R2は直下階に位置するグループBからの火災連動信号の受信に対し警報準備制御の解除設定を行っているが、そうではない1階のグループAからの火災連動信号については、警報準備制御を有効としている。
【0111】
このため中継器R2は、中継器R1が送信した火災連動信号を受信すると、連動関係にあるもう一方のグループCを指定するグループ符号Gcを含む警報準備連動信号を生成し、当該警報準備連動信号を、チャンネル周波数fcを使用して送信し、これを受信した3階のグループCの住警器C1〜C4は警報準備動作による報知を行う。
【0112】
警報準備連動信号を送信した中継器R2は、その後所定期間内に、火災を検知している1階グループAの住警器A3から繰り返し送信する火災連動信号の受信回数が所定回数となる判定条件の成立を検知した場合、グループ符号Gcを含む火災連動信号を生成し、当該火災連動信号を、チャンネル周波数fcを使用して送信し、これを受信した3階のグループCの住警器C1〜C4は、それまでの警報準備動作による報知出力を、火災警報出力に切替える。
【0113】
図8は2階グループBの住警器B3で火災を検知した場合の動作を示した説明図である。この場合は、グループBで火災を検知した住警器B3が火災警報を出力し、住警器B3からの火災連動信号を住警器B1,B2,B4,B5で受信して火災警報を出力する。また住警器B3からの火災連動信号は中継器R1、R2も受信して火災警報を出力する。
【0114】
火災連動信号を受信した中継器R2は、火災発生階の直上階である3階グループCに対する警報準備制御については解除設定を行っているため、3階グループCを指定するグループ符号Gcを含む火災連動信号を生成して住警器C1〜C5へ送信し、これを受信した住警器C1〜C5からも火災警報出力が行われる。
【0115】
一方、1階グループAの住警器A1〜A5については、火災発生階に対し直上階ではないことから、火災連動信号を受信した中継器R1は、グループAを指定するグループ符号Gaを含む警報準備連動信号を生成して住警器A1〜A5へ送信し、住警器A1〜A5は警報準備動作による報知を行う。
【0116】
図9は3階グループCの住警器C3で火災を検知した場合の動作を示した説明図である。この場合は、グループCで火災を検知した住警器C3が火災警報を出力し、住警器C3からの火災連動信号を住警器C1,C2,C4,C5で受信して火災警報を出力する。また住警器C3からの火災連動信号は中継器R1、R2も受信して火災警報を出力する。
【0117】
火災連動信号を受信した中継器R2は、2階グループBを指定するグループ符号Gbを含む警報準備連動信号を生成して住警器B1〜B5へ送信し、これを受信した住警器B1〜B5は警報準備動作による報知出力を行う。
【0118】
警報準備連動信号を送信した中継器R2は、その後所定期間内に、火災を検知している3階グループCの住警器C3から繰り返し送信する火災連動信号の受信回数が所定回数に達する判定条件の成立を検知した場合、グループ符号Gbを含む火災連動信号を生成し、当該火災連動信号を、チャンネル周波数fbを使用して送信し、これを受信した2階グループBの住警器B1〜B5は、それまでの警報準備動作による報知出力を、火災警報出力に切替える。
【0119】
また中継器R2が送信した火災連動信号を受信した中継器R1は、1階グループAを指定するグループ符号Gaを含む警報準備連動信号を生成して住警器A1〜A5へ送信し、住警器A1〜A5は警報準備動作による報知出力を行う。
【0120】
[本発明の変形例]
(中継器)
上記の実施形態では中継器R1,R2で受信した連動信号のグループ符号を連動先のグループ符号に変換して送信しているが、他の実施形態として、中継器R1,R2でグループ符号を変換せず、連動信号の中に、更に連動先のグループを示すグループ符号を加えた連動信号を生成して送信し、連動関係にあるグループの住警器での連動信号を受信した場合に、連動信号に含まれているグループ符号が例えば自己のグループ符号に一致したら有効な信号として処理するようにしても良い。
【0121】
(親子方式)
また、上記の実施形態は親機/子機の区別が無くそれぞれの警報器が相互に通信するものであるが、グループ毎に親機と複数の子機を設け、親機に中継器の機能を持たせ、各グループの親機同士の間でグループ連動警報のための通信を行うようにしても良い。
【0122】
また、親機と子機で構成するグループと、親機と子機の別のないチャンネルグループとの間で、中継器を介して通信するようにしても良い。その際にも、少なくとも何れかの親機に本発明の中継器の機能を付加するようにしても良い。
【0123】
(警報器)
また上記の実施形態は異状を検知して警報する警報器として、火災を検知して警報する住警器を例にとるものであったが、住警器以外の火災警報器、ガス漏れ警報器、CO警報器、各種の防犯用警報器を配置した警報システムやそれら警報器を複合的に含むシステムについても同様に適用できる。
【0124】
(その他)
また、上記の実施形態は住宅用に限らずビルやオフィス用など各種用途の警報器にも適用できる。
【0125】
また、上記の実施形態は警報器にセンサ部と警報出力処理部を一体に設けた場合を例にとるが、他の実施形態として、センサ部と警報出力処理部を別体とした警報器であっても良い。
【0126】
また本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0127】
A1〜A5,B1〜B5,C1〜C5:住警器
R1,R2:中継器
10:制御部
12:センサ部
14:通信部
18,32:報知部
20,34:操作部
22:中継制御部
24:第1通信部
28:第2通信部
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