特許第6668628号(P6668628)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6668628
(24)【登録日】2020年3月2日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】コンデンサおよびコンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/70 20130101AFI20200309BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20200309BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20200309BHJP
【FI】
   H01G11/70
   H01G11/84
   H01G11/74
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-147394(P2015-147394)
(22)【出願日】2015年7月27日
(65)【公開番号】特開2017-28186(P2017-28186A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000228578
【氏名又は名称】日本ケミコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】森 正行
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 勝
(72)【発明者】
【氏名】星野 晃司
(72)【発明者】
【氏名】黒木 隆史
【審査官】 田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−226625(JP,A)
【文献】 特開2012−160658(JP,A)
【文献】 特開2010−272513(JP,A)
【文献】 特表2011−502360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/70
H01G 11/74
H01G 11/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータを介して積層された正極体と負極体とが巻回され、湾曲部と、偏平形状のコンデンサ素子中心部を介して対向する平坦部とを備える偏平形状に形成されたコンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子の一端面上に前記正極体から引き出されて形成された正極部と、
前記正極部と同一の端面上に、前記正極部との間に絶縁間隔を設け、前記負極体から引き出されて形成された負極部と、
積層された前記正極体および前記負極体に対して交差方向への溶接により、前記正極部上に溶接された正極側の集電板および前記負極部上に溶接された負極側の集電板と
を備え、
前記正極側の集電板は偏平形状の前記コンデンサ素子中心部を跨ぎ、前記コンデンサ素子中心部を挟んで両側に配置された両側の前記平坦部上で前記正極部に溶接され
前記負極側の集電板は、前記コンデンサ素子中心部を跨ぎ、前記両側の前記平坦部上で前記負極部に溶接されたことを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
前記正極側および前記負極側の前記集電板は、それぞれ前記平坦部とともに前記湾曲部上に配置され、前記湾曲部上を溶接して接続されることを特徴とする請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記集電板上に対し、前記コンデンサ素子中心部を介して対向する前記平坦部側を一連の連続した溶接処理により接続したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記コンデンサ素子中心部にスペーサを配置したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のコンデンサ。
【請求項5】
セパレータを介して積層された正極体と負極体とが巻回され、湾曲部と、偏平形状のコンデンサ素子中心部を介して対向する平坦部とを備える偏平形状のコンデンサ素子を形成する工程と、
前記コンデンサ素子の一端面上に、前記正極体から引き出された正極部と、該正極部との間に絶縁間隔を設け、前記負極体から引き出された負極部を形成する工程と、
前記コンデンサ素子を収納するケースを封口する封口板に設置された正極端子と前記正極部とを正極側の集電板を介して接続させ、該封口板の負極端子と前記負極部とを負極側の集電板を介して接続させる工程と、
を備え、
積層された前記正極体および前記負極体に対して交差方向への溶接により、前記正極側の集電板を前記正極部上に溶接させ、前記負極側の集電板を前記負極部上に溶接させる工程と、
を含み、
前記正極側の集電板は偏平形状の前記コンデンサ素子中心部を跨ぎ、前記コンデンサ素子中心部を挟んで両側に配置された両側の前記平坦部上で前記正極部に溶接され
前記負極側の集電板は、前記コンデンサ素子中心部を跨ぎ、前記両側の前記平坦部上で前記負極部に溶接されることを特徴とするコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層コンデンサや電解コンデンサなど巻回素子を用いたコンデンサの製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気二重層コンデンサや電解コンデンサなどのコンデンサでは、電極体の面積が静電容量の大小に繋がる。コンデンサを製造するには、面積の大きな電極体を素子中心に対して巻回することで、小型化および大容量化を実現している。
【0003】
このようなコンデンサに関し、正極体と負極体とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子を用いるコンデンサがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−068379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、搭載させる機器や装置などの設置スペースなどに応じて円柱形状以外の形状のコンデンサとして、たとえば偏平形状のコンデンサ素子を用いるものがある。このようコンデンサ素子では、たとえば巻回した電極体に作用する力が均一でないため、その一部に復元力が生じてコンデンサ素子の外形が変形してしまうおそれがある。またコンデンサ素子は、外部から付加される振動や、電解液の含浸による膨張などの影響を受けることによっても広がるように変形するおそれがある。
【0006】
このように変形として、たとえばコンデンサ素子が広がってしまうと、電極体同士の密着性が低下し、内部抵抗の増加や電気的機能の低下を招くおそれがあるなどの課題がある。また、コンデンサ素子の広がり変形に対抗するためにケース内に封入するなどの手段をとった場合、コンデンサ素子の一部に過大な応力がかかってしまうことで、コンデンサの内部抵抗の増加、電気的な特性の低下などが生じるおそれがある。そのほか、コンデンサ素子が変形すると、電極部と集電板や端子部品との接続位置がずれるほか、接続部分に過大な負荷がかかり、コンデンサ素子の破損や電気的特性の低下などの影響が生じるおそれがある。
【0007】
斯かる課題の開示や示唆はなく、特許文献1に開示された構成では斯かる課題を解決することができない。
【0008】
そこで、本発明のコンデンサの製造方法およびコンデンサの目的は、コンデンサ素子の形状を安定化させることにある。
【0009】
また本発明のコンデンサの製造方法およびコンデンサの目的は、電極部と端子部品との接続状態を安定化させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のコンデンサの一側面は、セパレータを介して積層された正極体と負極体とが巻回され、湾曲部と、偏平形状のコンデンサ素子中心部を介して対向する平坦部とを備える偏平形状に形成されたコンデンサ素子と、前記コンデンサ素子の一端面上に前記正極体から引き出されて形成された正極部と、前記正極部と同一の端面上に、前記正極部との間に絶縁間隔を設け、前記負極体から引き出されて形成された負極部と、積層された前記正極体および前記負極体に対して交差方向への溶接により、前記正極部上に溶接された正極側の集電板および前記負極部上に溶接された負極側の集電板とを備え、前記正極側の集電板は偏平形状の前記コンデンサ素子中心部を跨ぎ、前記コンデンサ素子中心部を挟んで両側に配置された両側の前記平坦部上で前記正極部に溶接され
前記負極側の集電板は、前記コンデンサ素子中心部を跨ぎ、前記両側の前記平坦部上で前記負極部に溶接されてもよい。
【0011】
上記コンデンサにおいて、好ましくは、前記正極側および前記負極側の前記集電板が前記平坦部とともに前記湾曲部上に配置され、前記湾曲部上を溶接により接続されてもよい。
【0012】
上記コンデンサにおいて、好ましくは、前記集電板上に対し、前記コンデンサ素子中心部を介して対向する前記平坦部側を一連の連続した溶接処理により接続してもよい。
【0013】
上記コンデンサにおいて、好ましくは、前記コンデンサ素子中心部にスペーサを配置してもよい。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明のコンデンサの製造方法の一側面は、セパレータを介して積層された正極体と負極体とが巻回され、湾曲部と、偏平形状のコンデンサ素子中心部を介して対向する平坦部とを備える偏平形状のコンデンサ素子を形成する工程と、前記コンデンサ素子の一端面上に、前記正極体から引き出された正極部と、該正極部との間に絶縁間隔を設け、前記負極体から引き出された負極部を形成する工程と、前記コンデンサ素子を収納するケースを封口する封口板に設置された正極端子と前記正極部とを正極側の集電板を介して接続させ、該封口板の負極端子と前記負極部とを負極側の集電板を介して接続させる工程とを備え、積層された前記正極体および前記負極体に対して交差方向への溶接により、前記正極側の集電板を前記正極部上に溶接させ、前記負極側の集電板を前記負極部上に溶接させる工程とを含み、前記正極側の集電板は偏平形状の前記コンデンサ素子中心部を跨ぎ、前記コンデンサ素子中心部を挟んで両側に配置された両側の前記平坦部上で前記正極部に溶接され、前記負極側の集電板は、前記コンデンサ素子中心部を跨ぎ、前記両側の前記平坦部上で前記負極部に溶接されてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、次のいずれかの効果が得られる。
【0016】
(1) コンデンサ素子の平坦部分同士を、コンデンサ素子中心部分を跨いで配置した集電板に接続させることで、電極体に生じる復元力に対抗でき、コンデンサ素子の形状を維持させることができる。
【0017】
(2) 集電板の接続により偏平部を変形させないので、積層された電極体の密着状態を維持でき、コンデンサ素子の内部抵抗の低下が図れる。
【0018】
(3)集電板に対し、積層された正極体および負極体に対して交差方向に溶接することで、
正極部および負極部に対する接続強度の向上、および電気的な接続性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施の形態に係るコンデンサ素子および集電板の構成例を示す図である。
図2】コンデンサ素子の構成例を示す図である。
図3】集電板に対する溶接処理の一例を示す図である。
図4】第2の実施の形態に係るコンデンサ素子および集電板の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1の実施形態〕
【0021】
図1は、第1の実施の形態に係るコンデンサ素子および集電板の構成例を示している。図1に示す構成は一例であり、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。
【0022】
このコンデンサ素子2は、本発明のコンデンサの構成部品の一例であり、たとえば図1に示すように、コンデンサ素子2を形成する電極体やセパレータなどが直線、またはそれに近い状態で積層された平坦部4と、この平坦部4の両端側に形成され、電極体を屈曲させて形成された湾曲部6を含む偏平形状の柱状である。また、このコンデンサ素子2は、たとえば素子端面側からみて、平坦部4が湾曲部6の幅よりも長辺となるように形成されている。コンデンサ素子2は、電気二重層コンデンサ、電解コンデンサまたはハイブリッドキャパシタなどの素子の一例である。このコンデンサ素子2の製造処理は、本発明のコンデンサの製造方法の一例である。
【0023】
コンデンサ素子2の一端面には、たとえば平坦部4の長辺方向の中心部分を境界として、左右の平坦部4の一部および湾曲部6側に、正極部8と負極部10とが形成される。また平坦部4の長辺方向の中心部分には、正極部8と負極部10とを絶縁させる絶縁間隔12を設ける。コンデンサ素子2には、素子中心部として、偏平形状の中空部16を形成する。この中空部16の開口幅や開口長さは、コンデンサ素子2の成形処理時に設定すればよい。コンデンサ素子2は、たとえば予め偏平形状になるように電極体などを積層または巻回する場合、中心軸として長さや厚さが設定される。また、筒状に形成されたコンデンサ素子2を押圧するなどして成形した場合には、たとえば押圧力や押圧範囲により中空部16の長さや幅が設定される。
【0024】
正極部8と負極部10には、それぞれ集電板18、19が接続され、コンデンサを他の電子機器などに電気的に接続するための端子部品が接続される。この集電板18、19は、金属などの導電性の材料で形成され、中空部16を挟んで平坦部4上に形成された正極部8、負極部10に接続する平坦面部を備える。すなわちこの集電板18、19の平坦面部は、中空部16を跨いで正極部8または負極部10の端面上に配置されて、接続される。
【0025】
正極部8または負極部10と集電板18、19とは、たとえばレーザ溶接によって接続部を形成すればよい。この接続部の位置は、集電板18、19の平坦面部上に対し、少なくとも正極部8または負極部10の平坦部4上に配置される接続範囲20A、20Bを溶接すればよい。また接続部は、たとえば接続範囲20A、20B内に対し、所定の距離を1回の溶接工程で形成してもよく、または接続範囲20A、20B内の複数箇所を溶接して形成してもよい。
【0026】
<コンデンサ素子2の構成について>
【0027】
図2は、コンデンサ素子の構成例を示している。
【0028】
コンデンサ素子2は、たとえば図2のAに示すように、分極性の電極体として箔状の正極体22および負極体24があり、この正極体22と負極体24との間に、これらよりも幅広なセパレータ26を積層した上で、巻回して形成されている。またセパレータ26は、たとえば正極体22と負極体24との間のみならず、巻回した状態でコンデンサ素子2の内層側および外層側に配置されればよい。
【0029】
正極体22および負極体24は、たとえばアルミニウム箔を集電極とし、そのアルミニウム箔の両面に活性炭層を形成して分極性の電極体としたものが用いられている。セパレータ26はたとえば、電解紙である。
【0030】
またコンデンサ素子2は、たとえば図2のBに示すように、偏平形状の柱状に形成されており、一端面側に、絶縁間隔12をもたせて正極体22および負極体24の縁部30、32を露出させ、この縁部30、32の端面を中空部16側に折り曲げて平坦に成形することで正極部8と負極部10が形成されている。
【0031】
<集電板と電極体との接続処理について>
【0032】
図3は、コンデンサ素子と集電板との接続処理の一例を示している。
【0033】
この接続処理では、たとえば図3のAに示すように、集電板18、19の平面上に対しそれぞれ1箇所ずつ溶接して接続部34A、34Bを形成している。溶接方向は、たとえば図3のAに示すように、積層された正極体22、負極体24およびセパレータ26に対して交差方向に溶接される。溶接の手順は、たとえばコンデンサ素子外周側から中空部16方向に向けて溶接してもよく、または中空部16からコンデンサ素子2の外周側に向けて溶接してもよい。または溶接の手順は、平坦部4の一端側から中空部16側に向けて溶接し、中空部16上に入ると溶接を中断させ、中空部16を越えたタイミングで溶接を開始し、中空部16からコンデンサ素子2の外周側に向けて溶接してもよい。すなわち、コンデンサ素子2の平坦部4の両端に対し、中空部16を回避させながら溶接を行なえばよい。
【0034】
溶接位置は、たとえば集電板18、19上に接続される図示しない端子部品の接続位置を避けて、いずれを溶接してもよく、また、複数箇所を溶接してもよい。端子部品の接続位置は、たとえば集電板18、19の平面上であって、湾曲部6側の端部側に設定すればよい。これにより、集電板18、19と端子部品とをそれぞれの側面側を溶接して接続させることができる。
【0035】
さらに溶接方向は、たとえば電極体やセパレータ26に対して交差方向に設定されればよく、直交させる場合に限られない。溶接処理では、たとえば集電板18、19の平面上において、積層された電極体やセパレータ26に対して斜め方向に溶接してもよい。このように斜め方向に溶接することで、接続部34A、34Bを長くとることができる。
【0036】
そのほか接続処理として、たとえば図3のBに示すように、コンデンサ素子2の一端側の平坦部4から他端側の平坦部4に向けて一連の処理で連続して溶接し、単一の接続部36を形成してもよい。この接続部36は、少なくとも、正極部8または負極部10に対し、中空部16を跨いで両側の平坦部4側を溶接するように溶接長さを設定すればよい。
【0037】
接続部36は、たとえばコンデンサ素子4の平坦部4から中空部16側に向けて直線状に溶接することで、積層された電極体及びセパレータ26に対して交差方向への溶接を実現している。また接続部36は、たとえば電極体およびセパレータ26に対して直線状に形成される場合に限られず、斜め方向に角度を変化させて溶接してもよい。
【0038】
<コンデンサの製造工程について>
【0039】
次に、コンデンサ素子2の形成処理および集電板18、19の接続処理を含むコンデンサの製造処理について説明する。このコンデンサの製造工程は、本発明のコンデンサの製造方法の一例である。
【0040】
(A) コンデンサの製造処理では、たとえば正極体22、負極体24、セパレータ26を積層し、巻回処理を行なう。
【0041】
(B) 巻回後、コンデンサ素子2は、一端面側に正極体22および負極体24の縁部30、32を引出し、電極部として正極部8、負極部10を形成する。
【0042】
(C) コンデンサ素子2の成形処理として、たとえば外部側から所定方向に押圧し、押しつぶして平坦部4と湾曲部6を備える偏平形状に成形してもよい。このとき、コンデンサ素子2の中心である中空部16内に図示しない絶縁性で板状のスペーサを挿入してもよい。
【0043】
(D) 成形工程の後、コンデンサ素子2の正極部8に正極側の集電板18を接続させ、かつ負極部10に負極側の集電板19をレーザ溶接によって接続させる。
【0044】
(E) コンデンサ素子2は、集電板18、19を介して図示しない封口体が設置され、集電板18、19と封口体の端子部品とをレーザ溶接する。
【0045】
(F) そして、コンデンサ素子2は、図示しないケース部材内に電解液とともに収納されると、封口体によってケース部材の開口部が封止される。封口体は、たとえばケース部材外装側から溶接、または押圧による加締め処理が施される。
【0046】
<第1の実施の形態の効果>
【0047】
斯かる構成によれば、次の効果が得られる。
【0048】
(1) 電極部と封口体に設置された端子部品とが集電板18、19を介して接続されるので、端子接続のシンプル化が図られている。しかも、接続を容易化することができる。また、電極部の広い範囲で集電板と接続しているため、引出し部分を多く確保でき、抵抗の低減化が図れる。
【0049】
(2) コンデンサ素子2の平坦部4同士を、中空部16を跨いで配置した集電板18、19に接続させることで、電極体に生じる復元力に対でき、コンデンサ素子2の形状を維持させることができる。
【0050】
(3) 集電板18、19により偏平部を変形させないので、積層された電極体の密着状態を維持でき、コンデンサ素子2の内部抵抗の低下が図れる。
【0051】
(4) 中空部16を跨いで配置した集電板18、19の端面上を溶接することで、対向する平坦部4間でコンデンサ素子2と集電板18、19との接続を堅牢化でき、コンデンサ素子2の形状を安定化できる。
【0052】
(5) 溶接方向を積層された電極体やセパレータ26に対して交差方向に設定することで、コンデンサ素子2の平坦部4が中空部16から離間する方向に変形するのを阻止することができる。すなわち、コンデンサ素子2は、電極体やセパレータ26を巻回していることから、たとえば巻回部分である湾曲部6側に張力が作用している。これにより湾曲部6には、電極体やセパレータ26の復元力が生じており、巻回状態を解除するように、広がる力が作用している。湾曲部6が広がると、その両側の平坦部4が中空部16から離間する方向に変位するとともに、平坦部4の両側から復元力を受けるので、直線形状が維持できなくなる。従って、コンデンサ素子2は、偏平形状が解除され、円形または楕円形状になり、幅広になってしまう。集電板18、19の溶接による素子の支持強度を高めることで、コンデンサ素子2の形状を維持させることができる。
【0053】
(6) 集電板18、19上の中空部16を跨ぐ部分を避けて溶接することで、溶接時に発生するスパッタ(Spatter)が中空部16内に飛散し、コンデンサ素子2内部に飛散した粒子が残留する可能性を減らすことができる。もしくは、集電板18、19の中空部16に相当する部分をレーザ光が走査する際にレーザの出力を溶接箇所よりも弱くしてもよい。このようにすることで、中空部16上に載置された集電板18、19からのスパッタ(Spatter)の発生を抑制するとともに、溶接部に突入する際の再出力時に発生するスパッタ(Spatter)を抑制でき、スパッタ(Spatter)が中空部16内に飛散し、コンデンサ素子2内部に飛散した粒子が残留する可能性を減らすことができる。
【0054】
(7) 中空部16を跨いで、集電板18、19上を一連の処理で溶接すれば、接続処理の容易化や製造の手間を減らすことができる。
【0055】
(8) 積層された電極体やセパレータ26に対して斜め方向に溶接することで、集電板と電極体との接続強度が増加するほか、集電範囲を広く取ることができる。
【0056】
(9) コンデンサ素子2の中心側に近い位置で集電板18、19を溶接することで、電極体からの引出し距離が短くなり、内部抵抗の低減や低ESR(等価直列抵抗:Equivalent Series Resistance)化が図れる。
【0057】
(10) 中空部16にスペーサを挿入した場合、中空部16がスペーサで埋まるため、スパッタが中空部16内に飛散することを抑制できる。また、スペーサの突出高さを縁部30、32の折り曲げ部に合せて設定することで、スペーサの端面に縁部30、32の端面を接触させて折り曲げ処理を行える。このようにすることで、縁部30、32の中空部16側の接続面が安定し、正極部8、負極部10と集電板18、19とを確実に接続させることができる。
【0058】
(11) コンデンサ素子2の平坦部4側を溶接してコンデンサ素子2が膨らむのを阻止することで、コンデンサ素子2をケース部材に封入にしたときに、コンデンサ素子2の外周部分がケース内壁に密着状態となるのを防止できる。これにより、ケース内においてガスが発生した場合でも、ケース内壁とコンデンサ素子2との間に隙間が維持できるので、ガスの排出を疎外せず、コンデンサの安定化および信頼性を維持することができる。
【0059】
〔第2の実施の形態〕
【0060】
図4は、第2の実施の形態に係るコンデンサ素子および集電板の構成例を示している。図4に示す構成は一例であり、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。
【0061】
この実施の形態のコンデンサ素子2では、たとえば図4に示すように、正極部8または負極部10が形成された電極体の平坦部4側とともに、湾曲部6側にも集電板40、42接続させる。この集電板40、42は、既述のように中空部16を跨いで平坦部4上を覆う平坦面部と、この平坦面部と一体に形成され、湾曲部6上を覆う湾曲面部とを備える。湾曲面部は、たとえば湾曲部6の形状に合わせて湾曲形状に形成すればよい。
【0062】
集電板40、42と電極部との接続には、レーザ溶接を利用する。溶接位置は、たとえば集電板40、42の平坦面部上に対し、少なくとも正極部8または負極部10の平坦部4上に配置される接続範囲20A、20Bを溶接し、さらに、湾曲面部上に対し、湾曲部6上の接続範囲20Cを溶接すればよい。溶接により形成される接続部は、たとえば接続範囲20A、20B、20C内に対し、それぞれ所定の距離を1回の溶接工程で形成してもよく、または接続範囲20A、20B、20C内の複数箇所を溶接して形成してもよい。
【0063】
斯かる構成によれば、上記実施の形態の効果に加え、さらに、集電板40、42によるコンデンサ素子2に対する支持強度を高めることができ、コンデンサ素子2の形状の安定化を図ることができる。つまり、電極部は、コンデンサ素子2の一端面側に露出させた正極体22および負極体24の縁部30、32を平坦面になるように中空部16側に折り曲げて表面を平坦に成形する。このとき、湾曲部6は折り曲げた縁部30、32が重なりあって成形されるので、表面は硬く、集電板1819との接続面が安定している。そのため、集電板18、19が載置しても安定がよく、接続性が安定する。一方で、平坦部4は、コンデンサ素子2の中心側であるため、引出し距離が短く、内部抵抗の低減や低ESR化が図れる。
【0064】
〔他の実施の形態〕
【0065】
(1) 上記実施の形態では、コンデンサ素子2は、積層された分極性の電極体およびセパレータ26を巻回して偏平形状にする場合を示したがこれに限られない。コンデンサ素子2は、たとえば一対の分極性電極体の間にセパレータ26を介して形成した積層素子であってもよい。
【0066】
(2) 上記実施の形態では、中空部16が空洞、または対向する平坦部4側の電極体を密着させる場合を示したがこれに限られない。中空部16には、たとえばスペーサを挿入してもよい。スペーサは、たとえば電極体の巻回時やコンデンサ素子2の成形時、または成形処理後に中空部16に挿入すればよい。このスペーサは、たとえば厚紙やフッ素樹脂の板材など、硬質で絶縁性があり、かつ高強度で軽量な材料で形成されればよい。スペーサは、電極体の内壁側に側面を密着させており、この幅がコンデンサ素子2の中空部16の間隔となればよい。このように中空部16にスペーサを介在させることで、コンデンサ素子2の形状維持が図れるほか、電極体同士密着性が高まり、内部抵抗低下、スペーサが中空部16に面した電極体に接触するので、平坦部4側が中空部16から離間する方向に変形するのを阻止し、コンデンサ素子2の形状の安定化をより高めることができる。

【0067】
(3) 上記第1の実施の形態では、集電板18、19は平坦部4側のみを覆う形状としたがこれに限らない。第2の実施の形態の集電板18、19の形状のように湾曲部6を覆うような形状としてもよい。集電板18、19に載置するように封口体の端子部材を配置し、この集電板18、19と端子部材との接触部をレーザ溶接により接続するが、平坦部4及び湾曲部6を覆うように集電板18、19を配置することで、溶接工程の際に生じるスパッタがコンデンサ素子2へ飛散することを抑制できる。
【0068】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施形態等について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は明細書に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、偏平形コンデンサ素子に対し、中空部に跨って配置した集電板の少なくとも平坦部側を溶接することで、コンデンサ素子が膨らむように変形するのを阻止でき、コンデンサの形状の安定化、内部抵抗の低下が図れるなど、有用である。
【符号の説明】
【0070】
2 コンデンサ素子
4 平坦部
6 湾曲部
8 正極部
10 負極部
12 絶縁間隔
16 中空部
18、19、40、42 集電板
20A、20B、20C 接続範囲
22 正極体
24 負極体
26 セパレータ
30、32 縁部
34A、34B、36 接続部
36 接続部

図1
図2
図3
図4