特許第6668712号(P6668712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6668712
(24)【登録日】2020年3月2日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20200309BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20200309BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20200309BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20200309BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20200309BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20200309BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20200309BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20200309BHJP
   H01L 23/14 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   C08L63/00 C
   C08K3/013
   C08K7/00
   C08K9/06
   C08J5/00CFC
   H05K3/46 T
   B32B27/20 Z
   B32B27/38
   H01L23/14 R
【請求項の数】14
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2015-234850(P2015-234850)
(22)【出願日】2015年12月1日
(65)【公開番号】特開2017-101138(P2017-101138A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】鶴井 一彦
(72)【発明者】
【氏名】巽 志朗
【審査官】 山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−015608(JP,A)
【文献】 特開2015−059170(JP,A)
【文献】 特開2012−067223(JP,A)
【文献】 特開2015−038197(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/024391(WO,A1)
【文献】 株式会社アドマテックスホームページ 製品紹介 製品一覧/シリカ,[online],[令和1年6月14日検索], インターネット<URL:http://www.admatechs.co.jp/product-admafine-silica.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 − 101/16
C08K 3/00 − 13/08
C08G 59/00 − 59/72
B32B 1/00 − 43/00
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)無機充填材を含有する樹脂組成物であって、
(C)無機充填材の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、55質量%以上であり、
(C)無機充填材の平均粒径は、0.05〜0.35μmであり、
(C)無機充填材の比表面積(m/g)と、(C)無機充填材の真密度(g/cm)との積が、1〜77であり、
樹脂組成物を熱硬化させて得られる硬化物の透湿係数が、0.05〜2.8gmm・24hであり、
樹脂組成物がプリント配線板の絶縁層形成用であり、
プリント配線板が第1及び第2の導体層を含み、第1及び第2の導体層間の絶縁層の厚みが6μm以下である、樹脂組成物
(C)成分の平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置を使用して、回分セル方式で測定した体積基準の粒度分布から求められるメディアン径である。
【請求項2】
(C)成分の比表面積と、(C)成分の真密度との積が、26〜77である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
樹脂組成物を熱硬化させて得られる硬化物の透湿係数が、0.05〜2.5gmm・24hである、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
樹脂組成物を熱硬化させて得られる、厚みが40μmで4cm角の硬化物の1時間当たりの煮沸吸水率が、0.65質量%以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂組成物を熱硬化させて得られる硬化物の25℃〜150℃における平均線熱膨張係数が、26ppm/℃以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(C)成分が、シランカップリング剤、アルコキシシラン化合物、及びオルガノシラザン化合物の少なくとも1種の表面処理剤で表面処理されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(B)成分が、活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤から選択される1種以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物を熱硬化させて得られる硬化物。
【請求項9】
支持体と、該支持体上に設けられた、請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを備える、支持体付き樹脂シート。
【請求項10】
樹脂組成物層の厚みが12μm以下である、請求項に記載の支持体付き樹脂シート。
【請求項11】
樹脂組成物層の最低溶融粘度が、12000poise以下である、請求項又は1に記載の支持体付き樹脂シート。
【請求項12】
請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層、第1の導体層、及び第2の導体層を含む、プリント配線板。
【請求項13】
請求項12に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
【請求項14】
(I)請求項9〜のいずれか1に記載の支持体付き樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程、及び
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程を含む、プリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらには、当該樹脂組成物を含有する、硬化物、支持体付き樹脂シート、当該樹脂組成物の硬化物を備えた、プリント配線板、及び半導体装置、並びにプリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板(以下、「配線板」ともいう)の製造方法としては、回路形成された導体層と絶縁層を交互に積み上げていくビルドアップ方式が広く用いられており、絶縁層は樹脂組成物を硬化して形成されることが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−17301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子機器の小型化、薄型化に伴い、電子機器に用いられるプリント配線板のさらなる薄型化が進められている。プリント配線板のさらなる薄型化を実現するために、プリント配線板に用いられる内層基板及び絶縁層等を薄膜化することが望まれる。
【0005】
特許文献1に記載の絶縁樹脂シートは、薄膜絶縁性、ビア形状、表面平滑性、埋め込み性に優れるが、さらなる薄膜化が求められている。また、前記絶縁樹脂シートは、絶縁層を薄膜化するにつれてリフロー反り量が生じやすくなる傾向にある。
【0006】
本発明は、リフロー反り量が小さく、かつ部品埋め込み性、薄膜絶縁性に優れる樹脂組成物、当該樹脂組成物を含有する、支持体付き樹脂シート、当該樹脂組成物の硬化物を備えた、プリント配線板、及び半導体装置、並びにプリント配線板の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、絶縁層を薄膜化するにつれてリフロー反り量が生じやすくなることを抑制するために、無機充填材を多く含有した絶縁層を検討してきたが、無機充填材の含有量が多いと部品埋め込み性が低下し、さらに無機充填材粒子同士が付着した界面を伝って電流が流れやすくなり、薄膜絶縁性が劣ることを見出した。即ち、無機充填材の量の観点では、リフロー反り量と部品埋め込み性はトレードオフの関係にあり、リフロー反り量と薄膜絶縁性もトレードオフの関係にある。また、無機充填材の大きさの観点では、部品埋め込み性と薄膜絶縁性とはトレードオフの関係にあることも見出した。
【0008】
本発明者らは、さらなる検討をした結果、無機充填材の平均粒径、及び無機充填材の比表面積と無機充填材の真密度との積を所定の範囲とし、さらに樹脂組成物を熱硬化させて得られる硬化物の透湿係数を所定の範囲とすることでリフロー反り量、部品埋め込み性、及び薄膜絶縁性がより良好となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)無機充填材を含有する樹脂組成物であって、
(C)無機充填材の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、55質量%以上であり、
(C)無機充填材の平均粒径は、0.05〜0.35μmであり、
(C)無機充填材の比表面積(m/g)と、(C)無機充填材の真密度(g/cm)との積が、1〜77であり、
樹脂組成物を熱硬化させて得られる硬化物の透湿係数が、0.05〜2.8g・mm/m・24hである、樹脂組成物。
[2] (C)成分の比表面積と、(C)成分の真密度との積が、26〜77である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3] 樹脂組成物を熱硬化させて得られる硬化物の透湿係数が、0.05〜2.5g・mm/m・24hである、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] 樹脂組成物を熱硬化させて得られる、厚みが40μmで4cm角の硬化物の1時間当たりの煮沸吸水率が、0.65質量%以下である、[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] 樹脂組成物を熱硬化させて得られる硬化物の25℃〜150℃における平均線熱膨張係数が、26ppm/℃以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] (C)成分が、シランカップリング剤、アルコキシシラン化合物、及びオルガノシラザン化合物の少なくとも1種の表面処理剤で表面処理されている、[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] (B)成分が、活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤から選択される1種以上である、[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] プリント配線板の絶縁層形成用である、[1]〜[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9] プリント配線板が第1及び第2の導体層を含み、第1及び第2の導体層間の絶縁層の厚みが6μm以下である、[8]に記載の樹脂組成物。
[10] [1]〜[9]のいずれかに記載の樹脂組成物を熱硬化させて得られる硬化物。
[11] 支持体と、該支持体上に設けられた、[1]〜[9]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層とを備える、支持体付き樹脂シート。
[12] 樹脂組成物層の厚みが12μm以下である、[11]に記載の支持体付き樹脂シート。
[13] 樹脂組成物層の最低溶融粘度が、12000poise以下である、[11]又は[12]に記載の支持体付き樹脂シート。
[14] [1]〜[9]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層、第1の導体層、及び第2の導体層を含む、プリント配線板。
[15] 第1及び第2の導体層間の絶縁層の厚みが、6μm以下である、[14]に記載のプリント配線板。
[16] [14]又は[15]に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。
[17] (I)[11]〜[13]のいずれかに記載の支持体付き樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程、及び
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程を含む、プリント配線板の製造方法。
[18] プリント配線板が、第1の導体層、及び第2の導体層を含み、第1及び第2の導体層間の絶縁層の厚みが、6μm以下である、[17]に記載のプリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、リフロー反り量が小さく、かつ部品埋め込み性、薄膜絶縁性に優れる樹脂組成物、当該樹脂組成物を含有する、支持体付き樹脂シート、当該樹脂組成物の硬化物を備えた、プリント配線板、及び半導体装置、並びにプリント配線板の製造方法を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、導体層間の絶縁層の厚みを説明するための断面の一例を示した模式図である。
図2図2は、部品仮付け内層基板の断面の一例を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の樹脂組成物、当該樹脂組成物を含有する、支持体付き樹脂シート、当該樹脂組成物の硬化物を備えた、プリント配線板、及び半導体装置、並びにプリント配線板の製造方法について詳細に説明する。
【0013】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、及び(C)無機充填材を含有する樹脂組成物であって、(C)無機充填材の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、55質量%以上であり、(C)無機充填材の平均粒径は、0.05〜0.35μmであり、(C)無機充填材の比表面積(m/g)と、(C)無機充填材の真密度(g/cm)との積が、1〜77であり、樹脂組成物を熱硬化させて得られる硬化物の透湿係数が、0.05〜2.8g・mm/m・24hである。
【0014】
以下、本発明の樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0015】
<(A)エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert−ブチル−カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂等が挙げられる。エポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(A)成分は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂から選択される1種以上であることが好ましい。
【0016】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合に、少なくとも50質量%以上は1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であるのが好ましい。中でも、1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」という。)と、1分子中に3個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」という。)とを含むことが好ましい。エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用することで、優れた可撓性を有する樹脂組成物が得られる。また、樹脂組成物の硬化物の破断強度も向上する。
【0017】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「828US」、「jER828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER807」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、ナガセケムテックス(株)製の「EX−721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂)、(株)ダイセル製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB−3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)、新日鐵化学(株)製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4−グリシジルシクロヘキサン)、三菱化学(株)製の「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
固体状エポキシ樹脂としては、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC(株)製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP−4700」、「HP−4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N−690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N−695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP−7200」、「HP−7200HH」、「HP−7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA−7311」、「EXA−7311−G3」、「EXA−7311−G4」、「EXA−7311−G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、日本化薬(株)製の「EPPN−502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、新日鉄住金化学(株)製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂)、「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「YX4000H」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂)、大阪ガスケミカル(株)製の「PG−100」、「CG−500」、三菱化学(株)製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂)、三菱化学(株)製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。
【0019】
液状エポキシ樹脂としては1分子中に2個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で液状の芳香族系エポキシ樹脂が好ましく、固体状エポキシ樹脂としては1分子中に3個以上のエポキシ基を有し、温度20℃で固体状の芳香族系エポキシ樹脂が好ましい。なお、本発明でいう芳香族系エポキシ樹脂とは、その分子内に芳香環構造を有するエポキシ樹脂を意味する。
【0020】
エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを併用する場合、それらの量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.1〜1:15の範囲が好ましい。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比を斯かる範囲とすることにより、i)支持体付き樹脂シートの形態で使用する場合に適度な粘着性がもたらされる、ii)支持体付き樹脂シートの形態で使用する場合に十分な可撓性が得られ、取り扱い性が向上する、並びにiii)十分な破断強度を有する硬化物を得ることができる等の効果が得られる。上記i)〜iii)の効果の観点から、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂の量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、質量比で、1:0.3〜1:12の範囲がより好ましく、1:0.6〜1:10の範囲がさらに好ましい。
【0021】
樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは9質量%以上、さらに好ましくは13質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、本発明の効果が奏される限りにおいて特に限定されないが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
【0022】
なお、本発明において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、別途明示のない限り、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときの値である。
【0023】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50〜5000、より好ましくは50〜3000、さらに好ましくは80〜2000、さらにより好ましくは110〜1000である。この範囲となることで、硬化物の架橋密度が十分となり表面粗さの小さい絶縁層をもたらすことができる。なお、エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができ、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。
【0024】
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100〜5000、より好ましくは250〜3000、さらに好ましくは400〜1500である。ここで、エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0025】
<(B)硬化剤>
硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化する機能を有する限り特に限定されず、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、及びカルボジイミド系硬化剤などが挙げられる。硬化剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。(B)成分は、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤から選択される1種以上であることが好ましく、透湿係数を低くし薄膜絶縁性を向上させる観点から、活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤から選択される1種以上であることがより好ましく、活性エステル系硬化剤であることがさらに好ましい。
【0026】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性の観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層との密着性の観点から、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び導体層との密着性を高度に満足させる観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック硬化剤が好ましい。
【0027】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、例えば、明和化成(株)製の「MEH−7700」、「MEH−7810」、「MEH−7851」、日本化薬(株)製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金(株)製の「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN375」、「SN395」、DIC(株)製の「TD−2090」、「LA−7052」、「LA−7054」、「LA−1356」、「LA−3018−50P」、「EXB−9500」等が挙げられる。
【0028】
導体層との密着性に優れる絶縁層を得る観点から、活性エステル系硬化剤も好ましい。活性エステル系硬化剤としては、特に制限はないが、一般にフェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N−ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0029】
具体的には、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が好ましく、中でもナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン−ジシクロペンチレン−フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0030】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC−8000−65T」、「HPC−8000H−65TM」、「EXB−8000L−65TM」(DIC(株)製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416−70BK」(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱化学(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱化学(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱化学(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱化学(株)製)、「YLH1030」(三菱化学(株)製)、「YLH1048」(三菱化学(株)製)等が挙げられる。
【0031】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子(株)製の「HFB2006M」、四国化成工業(株)製の「P−d」、「F−a」が挙げられる。
【0032】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3−メチレン−1,5−フェニレンシアネート)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェニルシアネート)、4,4’−エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2−ビス(4−シアネート)フェニルプロパン、1,1−ビス(4−シアネートフェニルメタン)、ビス(4−シアネート−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアネートフェニル−1−(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4−シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4−シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーなどが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン(株)製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)等が挙げられる。
【0033】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル(株)製の「V−03」、「V−07」等が挙げられる。
【0034】
エポキシ樹脂と硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.01〜1:2の範囲が好ましく、1:0.015〜1:1.5がより好ましく、1:0.02〜1:1がさらに好ましい。ここで、硬化剤の反応基とは、活性水酸基、活性エステル基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、硬化剤の反応基の合計数とは、各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。エポキシ樹脂と硬化剤との量比を斯かる範囲とすることにより、樹脂組成物の硬化物の耐熱性がより向上する。
【0035】
一実施形態において、樹脂組成物は、先述の(A)エポキシ樹脂及び(B)硬化剤を含む。樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との混合物(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂の質量比は好ましくは1:0.1〜1:15、より好ましくは1:0.3〜1:12、さらに好ましくは1:0.6〜1:10)を、(B)硬化剤としてフェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤からなる群から選択される1種以上(好ましくは活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤からなる群から選択される1種以上)を、それぞれ含むことが好ましい。
【0036】
樹脂組成物中の硬化剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。また、下限は特に制限はないが2質量%以上が好ましい。
【0037】
<(C)無機充填材>
無機充填材の材料は特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でもシリカが特に好適である。またシリカとしては球形シリカが好ましい。無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
無機充填材の平均粒径は、無機充填材を高充填させ薄膜絶縁性を向上させる観点から、0.35μm以下、好ましくは0.32μm以下、より好ましくは0.3μm以下、さらに好ましくは0.29μm以下である。該平均粒径の下限は、樹脂組成物層中の分散性向上という観点から、0.05μm以上、好ましくは0.06μm以上、より好ましくは0.07μm以上である。このような平均粒径を有する無機充填材の市販品としては、例えば、電気化学工業(株)製「UFP−30」、新日鉄住金マテリアルズ(株)製「SPH516−05」等が挙げられる。
【0039】
無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波によりメチルエチルケトン中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、(株)島津製作所製「SALD−2200」等を使用することができる。
【0040】
無機充填材の比表面積は、後述する樹脂組成物層の最低溶融粘度を低くする観点から、好ましくは40m/g以下、より好ましくは37m/g以下、さらに好ましくは33m/g以下である。該比表面積の下限は、樹脂組成物層の適切な粘弾性維持という観点から、好ましくは1m/g以上、より好ましくは5m/g以上、さらに好ましくは10m/g、又は15m/g以上である。比表面積は、例えば、BET全自動比表面積測定装置((株)マウンテック製、Macsorb HM−1210)を使用して測定することができる。
【0041】
無機充填材の真密度は、樹脂組成物層中の分散性向上という観点から、好ましくは15g/cm以下、より好ましくは10g/cm以下、さらに好ましくは、5g/cm以下である。該真密度の下限は、好ましくは1g/cm以上、より好ましくは1.5g/cm以上、さらに好ましくは、2.0g/cm以上である。真密度は、例えば、マイクロ・ウルトラピクノメータ(カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン製、MUPY−21T)を使用して測定することができる。
【0042】
無機充填材の比表面積(m/g)と、無機充填材の真密度(g/cm)との積は、1〜77であり、26〜77が好ましく、30〜70がより好ましく、35〜70がさらに好ましい。該積が1〜77の範囲内であると、リフロー反り量、部品埋め込み性、及び薄膜絶縁性を向上させることができる。
【0043】
無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、シランカップリング剤、アルコキシシラン化合物、及びオルガノシラザン化合物の少なくとも1種の表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。これらは、オリゴマーであってもよい。表面処理剤の例としては、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業(株)製「KBM403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「SZ−31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業(株)製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM−4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)等が挙げられる。表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.2mg/m以上が更に好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m以下が好ましく、0.8mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下が更に好ましい。
【0045】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、(株)堀場製作所製「EMIA−320V」等を使用することができる。
【0046】
樹脂組成物中の無機充填材の含有量(充填量)は、平均線熱膨張係数の低い絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたとき、55質量%以上、好ましくは58質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。樹脂組成物中の無機充填材の含有量の上限は、埋め込み性及び薄膜絶縁性の向上、並びに絶縁層の機械強度、特に伸びの観点から、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0047】
<(D)熱可塑性樹脂>
本発明の樹脂組成物は、(A)〜(C)成分の他に(D)熱可塑性樹脂を含有していてもよい。
【0048】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられ、フェノキシ樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は8,000〜70,000の範囲が好ましく、10,000〜60,000の範囲がより好ましく、20,000〜60,000の範囲がさらに好ましい。熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される。具体的には、熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度を40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0050】
フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基でもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱化学(株)製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられ、その他にも、新日鉄住金化学(株)製の「FX280」及び「FX293」、三菱化学(株)製の「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YL7482」等が挙げられる。
【0051】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、電気化学工業(株)製の「電化ブチラール4000−2」、「電化ブチラール5000−A」、「電化ブチラール6000−C」、「電化ブチラール6000−EP」、積水化学工業(株)製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX−5Z)、KSシリーズ(例えばKS−1)、BLシリーズ、BMシリーズ等が挙げられる。
【0052】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化(株)製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」が挙げられる。ポリイミド樹脂の具体例としてはまた、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006−37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002−12667号公報及び特開2000−319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0053】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡績(株)製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂の具体例としてはまた、日立化成工業(株)製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0054】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学(株)製の「PES5003P」等が挙げられる。
【0055】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ(株)製のポリスルホン「P1700」、「P3500」等が挙げられる。
【0056】
中でも、熱可塑性樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。したがって好適な一実施形態において、熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂及びポリビニルアセタール樹脂からなる群から選択される1種以上を含む。
【0057】
樹脂組成物が熱可塑性樹脂を含有する場合、熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは0.5質量%〜10質量%、より好ましくは0.6質量%〜5質量%、さらに好ましくは0.7質量%〜3質量%である。
【0058】
<(E)硬化促進剤>
本発明の樹脂組成物は、(A)〜(D)成分の他に(E)硬化促進剤を含有していてもよい。
【0059】
硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられ、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が好ましく、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤がより好ましい。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられ、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0061】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン等が挙げられ、4−ジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセンが好ましい。
【0062】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられ、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾールが好ましい。
【0063】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱化学(株)製の「P200−H50」等が挙げられる。
【0064】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1−メチルグアニジン、1−エチルグアニジン、1−シクロヘキシルグアニジン、1−フェニルグアニジン、1−(o−トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1−メチルビグアニド、1−エチルビグアニド、1−n−ブチルビグアニド、1−n−オクタデシルビグアニド、1,1−ジメチルビグアニド、1,1−ジエチルビグアニド、1−シクロヘキシルビグアニド、1−アリルビグアニド、1−フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニド等が挙げられ、ジシアンジアミド、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エンが好ましい。
【0065】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0066】
樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は特に限定されないが、エポキシ樹脂と硬化剤の不揮発成分を100質量%としたとき、0.01質量%〜3質量%が好ましい。
【0067】
<(F)難燃剤>
本発明の樹脂組成物は、(F)難燃剤を含んでもよい。難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0068】
難燃剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三光(株)製の「HCA−HQ」、大八化学工業(株)製の「PX−200」等が挙げられる。
【0069】
樹脂組成物が難燃剤を含有する場合、難燃剤の含有量は特に限定されないが、好ましくは0.5質量%〜20質量%、より好ましくは0.5質量%〜15質量%、さらに好ましくは0.5質量%〜10質量%がさらに好ましい。
【0070】
<(G)有機充填材>
樹脂組成物は、伸びを向上させる観点から、(G)有機充填材を含んでもよい。有機充填材としては、プリント配線板の絶縁層を形成するに際し使用し得る任意の有機充填材を使用してよく、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子等が挙げられる。
【0071】
ゴム粒子としては、市販品を用いてもよく、例えば、ダウ・ケミカル日本(株)製の「EXL2655」、ガンツ化成(株)製の「AC3816N」等が挙げられる。
【0072】
樹脂組成物が有機充填材を含有する場合、有機充填材の含有量は、好ましくは0.1質量%〜20質量%、より好ましくは0.2質量%〜10質量%、さらに好ましくは0.3質量%〜5質量%、又は0.5質量%〜3質量%である。
【0073】
<(H)任意の添加剤>
樹脂組成物は、さらに必要に応じて、他の添加剤を含んでいてもよく、斯かる他の添加剤としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、及び着色剤等の樹脂添加剤等が挙げられる。
【0074】
本発明の樹脂組成物は、リフロー反り量、部品埋め込み性、及び薄膜絶縁性が良好な絶縁層をもたらす。したがって本発明の樹脂組成物は、プリント配線板の絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができ、プリント配線板の層間絶縁層を形成するための樹脂組成物(プリント配線板の層間絶縁層用樹脂組成物)としてより好適に使用することができる。また、本発明の樹脂組成物は薄膜絶縁性が良好である。よって、例えば第1の導体層と、第2の導体層と、第1の導体層及び第2の導体層との間に設けられた絶縁層とを備えるプリント配線板において、本発明の樹脂組成物から絶縁層を形成することにより、第1及び第2の導体層間の絶縁層の厚みを6μm以下(好ましくは5.5μm以下、より好ましくは5μm以下)とすることができる。また、本発明の樹脂組成物は、部品埋め込み性に良好な絶縁層をもたらすことから、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも好適に使用することができる。
【0075】
[硬化物]
本発明の硬化物は、本発明の樹脂組成物を熱硬化させて得られる。この硬化物は、[支持体付き樹脂シート]の項で後述するように、特定の透湿係数を有する。このような特定の透湿係数は、樹脂組成物における(C)成分の量を調整したり、(A)成分及び(D)成分等の樹脂成分として疎水性の高いものを選択したり、(B)成分として活性エステル系硬化剤及びシアネートエステル系硬化剤から選択される1以上を選択したりすることにより実現しうる。また、この硬化物は、[支持体付き樹脂シート]の項で後述するように、特定の煮沸吸水率、平均線熱膨張係数及び絶縁抵抗値を有することが好ましい。
【0076】
樹脂組成物の熱硬化条件は特に限定されず、例えば、後述するプリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。また、樹脂組成物を熱硬化させる前に予備加熱をしてもよく、熱硬化条件における加熱は予備加熱を含めて複数回行ってもよい。一例はまず樹脂組成物を100℃で30分間、次いで175℃で30分間、さらに190℃で90分間熱硬化させる。
【0077】
[支持体付き樹脂シート]
本発明の樹脂組成物は、ワニス状態で塗布して使用することもできるが、工業的には一般に、該樹脂組成物で形成された樹脂組成物層を含む支持体付き樹脂シートの形態で用いることが好適である。
【0078】
一実施形態において、支持体付き樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層とを備え、樹脂組成物層が本発明の樹脂組成物から形成される。
【0079】
樹脂組成物層の厚さは、プリント配線板の薄型化の観点から、好ましくは12μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは8μm以下、さらにより好ましくは6μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されないが、通常、1μm以上、1.5μm以上、2μm以上等とし得る。
【0080】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0081】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル、ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、環状ポリオレフィン、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエーテルサルファイド(PES)、ポリエーテルケトン、ポリイミド等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0082】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられ、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0083】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面にマット処理、コロナ処理を施してあってもよい。
【0084】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型層付き支持体は、市販品を用いてもよく、例えば、アルキド樹脂系離型剤を主成分とする離型層を有するPETフィルムである、リンテック(株)製の「SK−1」、「AL−5」、「AL−7」、東レ(株)製「ルミラーT6AM」、「ルミラーR80」等が挙げられる。
【0085】
支持体の厚みとしては、特に限定されないが、5μm〜75μmの範囲が好ましく、10μm〜60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0086】
支持体付き樹脂シートは、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体上に塗布し、更に乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0087】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN−メチルピロリドン等のアミド系溶剤等を挙げることができる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0088】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%〜60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃〜150℃で3分間〜10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0089】
支持体付き樹脂シートにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、1μm〜40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。支持体付き樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。支持体付き樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって使用可能となる。
【0090】
支持体付き樹脂シートにおける樹脂組成物層の最低溶融粘度は、良好な部品埋め込み性を得る観点から、好ましくは12000poise(1200Pa・s)以下、より好ましくは10000poise(1000Pa・s)以下、さらに好ましくは8000poise(800Pa・s)以下、5000poise(500Pa・s)以下、又は4000poise(400Pa・s)以下である。該最低溶融粘度の下限は、樹脂組成物層が薄くとも厚みを安定して維持するという観点から、100poise(10Pa・s)以上が好ましく、200poise(20Pa・s)以上がより好ましく、250poise(25Pa・s)以上がさらに好ましい。
【0091】
樹脂組成物層の最低溶融粘度とは、樹脂組成物層の樹脂が溶融した際に樹脂組成物層が呈する最低の粘度をいう。詳細には、一定の昇温速度で樹脂組成物層を加熱して樹脂を溶融させると、初期の段階は溶融粘度が温度上昇とともに低下し、その後、ある程度を超えると温度上昇とともに溶融粘度が上昇する。最低溶融粘度とは、斯かる極小点の溶融粘度をいう。樹脂組成物層の最低溶融粘度は、動的粘弾性法により測定することができ、例えば、後述する<最低溶融粘度の測定>に記載の方法に従って測定することができる。
【0092】
樹脂組成物(又は樹脂組成物層)を熱硬化させて得られる硬化物(例えば、樹脂組成物を100℃で30分間、次いで175℃で30分間、さらに190℃で90分間熱硬化させて得られる硬化物)の透湿係数は良好な結果を示す。即ち、良好な透湿係数を示す絶縁層をもたらす。該透過係数は、0.05g・mm/m・24h以上、好ましくは0.1g・mm/m・24h以上、より好ましくは、0.15g・mm/m・24h以上、さらに好ましくは、0.2g・mm/m・24h以上である。上限については、2.8g・mm/m・24h以下、好ましくは2.5g・mm/m・24h以下、さらに好ましくは2.4g・mm/m・24h以下、より好ましくは2.3g・mm/m・24h以下である。透湿係数を0.05g・mm/m・24h以上とすることにより、樹脂組成物を熱硬化させる際、溶剤の揮発が不十分で樹脂組成物層の界面にデラミネーション(層間剥離)が生じることを抑制することができ、その後の工程に影響を及ぼすことがなくなる。透湿係数を2.8g・mm/m・24h以下とすることにより、硬化物の薄膜絶縁性を向上させることができる。さらに、このような範囲の透湿係数が得られるように含有成分を調整された樹脂組成物が、(C)成分の含有量、(C)成分の平均粒径、及び(C)成分の比表面積と真密度の積を上述した範囲内とすることにより、薄膜絶縁性とはトレードオフの関係にあるリフロー反り量及び部品埋め込み性をも改善できる。透湿係数は、後述する<透湿係数の測定>に記載の方法に従って測定することができる。
【0093】
樹脂組成物(又は樹脂組成物層)を熱硬化させて得られる、厚みが40μmで4cm角の硬化物(例えば、樹脂組成物を100℃で30分間、次いで175℃で30分間、さらに190℃で90分間熱硬化させて得られる硬化物)の1時間当たりの煮沸吸水率は良好な結果を示す。即ち、良好な煮沸吸水率を示す絶縁層をもたらす。該煮沸吸水率は、好ましくは0.65質量%以下、より好ましくは0.6質量%以下、さらに好ましくは0.58質量%以下である。上限については特に限定されないが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。煮沸吸水率を0.65質量%以下とすることにより、硬化物の薄膜絶縁性を向上させることができる。煮沸吸水率は、後述する<煮沸吸水率の測定>に記載の方法に従って測定することができる。
【0094】
樹脂組成物(又は樹脂組成物層)を熱硬化させて得られる硬化物(例えば、樹脂組成物を100℃で30分間、次いで175℃で30分間、さらに190℃で90分間熱硬化させて得られる硬化物)の平均線熱膨張係数(CTE)は、25〜150℃において良好な平均線熱膨張係数を示す。即ち良好な平均線熱膨張係数を示す絶縁層をもたらす。25℃〜150℃における平均線熱膨張係数は、好ましくは26ppm/℃以下、より好ましくは25ppm/℃以下である。下限については特に限定されないが、0.1ppm/℃以上である。CTEを26ppm/℃以下とすることにより、硬化物のリフロー反り量を低減させることができる。平均線熱膨張係数の測定方法は、後述する<支持体付き樹脂シートの硬化物の平均線熱膨張係数(CTE)の測定>に記載の方法に従って測定することができる。
【0095】
樹脂組成物(又は樹脂組成物層)を熱硬化させて得られる硬化物(例えば、樹脂組成物を100℃で30分間、次いで175℃で30分間、さらに190℃で90分間熱硬化させて得られる硬化物)の、130℃、85RH%、3.3V印加環境下で100時間経過後の絶縁抵抗値は良好な結果を示す。即ち良好な絶縁抵抗値を示す絶縁層をもたらす。該絶縁抵抗値の上限は、好ましくは1012Ω以下、より好ましくは1011Ω以下、さらに好ましくは1010Ω以下である。下限については特に限定されないが、好ましくは10Ω以上、より好ましくは10Ω以上である。絶縁抵抗値の測定は、後述する<絶縁信頼性の評価、導体層間の絶縁層の厚みの測定>に記載の方法に従って測定することができる。
【0096】
[プリント配線板、プリント配線板の製造方法]
本発明のプリント配線板は、本発明の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層、第1の導体層、及び第2の導体層を含む。絶縁層は、第1の導体層と第2の導体層との間に設けられていて、第1の導体層と第2の導体層とを絶縁している(導体層は配線層ともいう)。本発明の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層は薄膜絶縁性に優れることから、第1及び第2の導体層間の絶縁層の厚みが6μm以下であっても絶縁性に優れる。
第1及び第2の導体層間の絶縁層の厚みは、好ましくは6μm以下、より好ましくは5.5μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。下限については特に限定されないが0.1μm以上とし得る。第1及び第2の導体層間の絶縁層の厚みとは、図1に一例を示したように、第1の導体層5の主面51と第2の導体層6の主面61間の絶縁層7の厚みt1のことをいう。第1及び第2の導体層は絶縁層を介して隣り合う導体層であり、主面51及び主面61は互いに向き合っている。第1及び第2の導体層間の絶縁層の厚みは、後述する<絶縁信頼性の評価、導体層間の絶縁層の厚みの測定>に記載の方法に従って測定することができる。
なお、絶縁層全体の厚みt2は、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは12μm以下である。下限については特に限定されないが1μm以上とし得る。
【0097】
本発明のプリント配線板は、上述の支持体付き樹脂シートを用いて、下記(I)及び(II)の工程を含む方法により製造することができる。
(I)内層基板上に、支持体付き樹脂シートの樹脂組成物層が内層基板と接合するように積層する工程
(II)樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する工程
【0098】
工程(I)で用いる「内層基板」とは、主として、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板、又は該基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成された回路基板をいう。またプリント配線板を製造する際に、さらに絶縁層及び/又は導体層が形成されるべき中間製造物の内層回路基板も本発明でいう「内層基板」に含まれる。プリント配線板が部品内蔵回路板である場合、部品を内蔵した内層基板を使用し得る。
【0099】
内層基板と支持体付き樹脂シートの積層は、例えば、支持体側から支持体付き樹脂シートを内層基板に加熱圧着することにより行うことができる。支持体付き樹脂シートを内層基板に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ともいう。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を支持体付き樹脂シートに直接プレスするのではなく、内層基板の表面凹凸に支持体付き樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0100】
内層基板と支持体付き樹脂シートの積層は、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃〜160℃、より好ましくは80℃〜140℃の範囲であり、加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa〜1.77MPa、より好ましくは0.29MPa〜1.47MPaの範囲であり、加熱圧着時間は、好ましくは20秒間〜400秒間、より好ましくは30秒間〜300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力26.7hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0101】
積層は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、(株)名機製作所製の真空加圧式ラミネーター、ニチゴー・モートン(株)製のバキュームアップリケーター等が挙げられる。
【0102】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された支持体付き樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販のラミネーターによって行うことができる。なお、積層と平滑化処理は、上記の市販の真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0103】
支持体は、工程(I)と工程(II)の間に除去してもよく、工程(II)の後に除去してもよい。
【0104】
工程(II)において、樹脂組成物層を熱硬化して絶縁層を形成する。
【0105】
樹脂組成物層の熱硬化条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常採用される条件を使用してよい。
【0106】
例えば、樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類等によっても異なるが、硬化温度は120℃〜240℃の範囲(好ましくは150℃〜220℃の範囲、より好ましくは170℃〜200℃の範囲)、硬化時間は5分間〜120分間の範囲(好ましくは10分間〜100分間、より好ましくは15分間〜90分間)とすることができる。
【0107】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層を硬化温度よりも低い温度にて予備加熱してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を5分間以上(好ましくは5分間〜150分間、より好ましくは15分間〜120分間)予備加熱してもよい。
【0108】
プリント配線板を製造するに際しては、(III)絶縁層に穴あけする工程、(IV)絶縁層を粗化処理する工程、(V)導体層を形成する工程をさらに実施してもよい。これらの工程(III)乃至(V)は、プリント配線板の製造に用いられる、当業者に公知の各種方法に従って実施してよい。なお、支持体を工程(II)の後に除去する場合、該支持体の除去は、工程(II)と工程(III)との間、工程(III)と工程(IV)の間、又は工程(IV)と工程(V)との間に実施してよい。また、必要に応じて、工程(II)〜(V)の絶縁層及び導体層の形成を繰り返して実施し、多層配線板を形成してもよい。この場合、それぞれの導体層間の絶縁層の厚み(図1のt1)は上記範囲内であることが好ましい。
【0109】
工程(III)は、絶縁層に穴あけする工程であり、これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。工程(III)は、絶縁層の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等を使用して実施してよい。ホールの寸法や形状は、プリント配線板のデザインに応じて適宜決定してよい。
【0110】
工程(IV)は、絶縁層を粗化処理する工程である。粗化処理の手順、条件は特に限定されず、プリント配線板の絶縁層を形成するに際して通常使用される公知の手順、条件を採用することができる。例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。膨潤液としては特に限定されないが、アルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液がより好ましい。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」等が挙げられる。膨潤液による膨潤処理は、特に限定されないが、例えば、30℃〜90℃の膨潤液に絶縁層を1分間〜20分間浸漬することにより行うことができる。絶縁層の樹脂の膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃〜80℃の膨潤液に硬化体を5分間〜15分間浸漬させることが好ましい。酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃〜80℃に加熱した酸化剤溶液に絶縁層を10分間〜30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%〜10質量%が好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。また、中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「リダクションソリューション・セキュリガントP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃〜80℃の中和液に5分間〜30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃〜70℃の中和液に5分間〜20分間浸漬する方法が好ましい。
【0111】
一実施形態において、粗化処理後の絶縁層表面の算術平均粗さRaは、好ましくは400nm以下、より好ましくは350nm以下、さらに好ましくは300nm以下、250nm以下、200nm以下、150nm以下、又は100nm以下である。絶縁層表面の算術平均粗さ(Ra)は、非接触型表面粗さ計を用いて測定することができる。非接触型表面粗さ計の具体例としては、ビーコインスツルメンツ社製の「WYKO NT3300」が挙げられる。
【0112】
工程(V)は、導体層を形成する工程である。内層基板に導体層が形成されていない場合、工程(V)は第1の導体層を形成する工程であり、内層基板に導体層が形成されている場合、該導体層が第1の導体層であり、工程(V)は第2の導体層を形成する工程である。
【0113】
導体層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、導体層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層が更に好ましい。
【0114】
導体層は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層した複層構造であってもよい。導体層が複層構造である場合、絶縁層と接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0115】
導体層の厚さは、所望のプリント配線板のデザインによるが、一般に3μm〜35μm、好ましくは5μm〜30μmである。
【0116】
一実施形態において、導体層は、めっきにより形成してよい。例えば、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の従来公知の技術により絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。以下、導体層をセミアディティブ法により形成する例を示す。
【0117】
まず、絶縁層の表面に、無電解めっきによりめっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応してめっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより金属層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。
【0118】
本発明の樹脂組成物は、部品埋め込み性に良好な絶縁層をもたらすことから、プリント配線板が部品内蔵回路板である場合にも好適に使用することができる。
【0119】
このような部品内蔵回路板の製造方法としては、
(i)対向する第1及び第2の主面を有し、該第1及び第2の主面間を貫通するキャビティが形成された内層基板と、内層基板の第2の主面と接合している仮付け材料と、内層基板のキャビティの内部において仮付け材料によって仮付けされた部品とを含む、部品仮付け内層基板を準備する工程、
(ii)本発明の支持体付き樹脂シートを、樹脂組成物層が内層基板の第1の主面と接合するように積層する工程、
(iii)内層基板の第2の主面から仮付け材料を剥離する工程、
(iv)支持体付き樹脂シートを、樹脂組成物層が内層基板の第2の主面と接合するように積層する工程、及び
(v)樹脂組成物層を熱硬化する工程、を含む。
【0120】
図2に一例を示すように、部品仮付け内層基板100(「キャビティ基板」ともいう)は、対向する第1及び第2の主面11、12を有し、該第1及び第2の主面間を貫通するキャビティ1aが形成された内層基板1と、内層基板1の第2の主面12と接合している仮付け材料2と、内層基板1のキャビティ1aの内部において仮付け材料2によって仮付けされた部品3とを含む。内層基板1は、ビア配線、表面配線等の回路配線4を備えていてもよい。
【0121】
内層基板に形成されるキャビティは、内層基板の特性を考慮して、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ、エッチング媒体等を用いる公知の方法により形成することができる。キャビティは、所定の間隔をあけて複数形成されていてもよく、キャビティの開口形状は特に限定されず、矩形、円形、略矩形、略円形等の任意の形状としてよい。
【0122】
仮付け材料としては、部品を仮付けするのに十分な粘着性を示す粘着面を有する限り特に制限されず、部品内蔵回路板の製造に際し従来公知の任意の仮付け材料を使用してよい。仮付け材料としては、例えば、(株)有沢製作所製のPFDKE−1525TT(粘着剤付ポリイミドフィルム)、古河電気工業(株)製のUCシリーズ(ウエハダイシング用UVテープ)が挙げられる。
【0123】
部品は、キャビティを介して露出した仮付け材料の粘着面に仮付けされる。部品としては、所望の特性に応じて適切な電気部品を選択してよく、例えば、コンデンサ、インダクタ、抵抗、積層セラミックコンデンサ等の受動部品、半導体ベアチップ等の能動部品を挙げることができる。全てのキャビティに同じ部品を用いてもよく、キャビティごとに異なる部品を用いてもよい。
【0124】
工程(ii)は、本発明の支持体付き樹脂シートを、樹脂組成物層が内層基板の第1の主面と接合するように積層する工程である。第1の主面と支持体付き樹脂シートとの積層条件は、上述した工程(I)の条件と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0125】
内層基板の第1の主面に樹脂組成物層を積層後、樹脂組成物層を熱硬化させてもよい。樹脂組成物層を熱硬化する条件は、上述した工程(II)の条件と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0126】
工程(iii)は、内層基板の第2の主面から仮付け材料を剥離する工程である。仮付け材料の剥離は、仮付け材料の種類に応じて、従来公知の方法に従って行ってよい。
【0127】
工程(iv)は、支持体付き樹脂シートを、樹脂組成物層が内層基板の第2の主面と接合するように積層する工程である。第2の主面と支持体付き樹脂シートとの積層条件は、上述した工程(I)の条件と同様であり、好ましい範囲も同様である。工程(iv)における樹脂組成物層は、工程(ii)における樹脂組成物層と同一の樹脂組成物層であってもよく、異なる樹脂組成物層であってもよい。本発明においては、工程(iv)における支持体付き樹脂シートが本発明の支持体付き樹脂シートであることが好ましい。
【0128】
工程(v)は、樹脂組成物層を熱硬化する工程である。樹脂組成物層を熱硬化する条件は、上述した工程(II)の条件と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0129】
部品内蔵回路板の製造方法としては、さらに、絶縁層に穴あけする工程(穴あけ工程)、絶縁層の表面を粗化処理する工程、粗化された絶縁層表面に導体層を形成する工程をさらに含んでもよい。これら工程は、上述したとおりである。
【0130】
本発明のプリント配線板は、本発明の支持体付き樹脂シートの樹脂組成物層の硬化物である絶縁層と、絶縁層に埋め込まれた埋め込み型配線層と、を備える態様であってもよい。
【0131】
このようなプリント配線板の製造方法としては、
(1)内層基板と、該基材の少なくとも一方の面に設けられた配線層とを有する配線層付き基材を準備する工程、
(2)本発明の支持体付き樹脂シートを、配線層が樹脂組成物層に埋め込まれるように、配線層付き基材上に積層し、熱硬化させて絶縁層を形成する工程、
(3)配線層を層間接続する工程、及び
(4)基材を除去する工程、を含む。
【0132】
この製造方法で用いる内層基板の両面には、銅箔等からなる金属層を有することが好ましく、金属層は2層以上の金属層が積層されている構成であることがより好ましい。工程(1)の詳細は、内層基板上にドライフィルム(感光性レジストフィルム)を積層し、フォトマスクを用いて所定の条件で露光、現像しパターンドライフィルムを形成する。現像したパターンドライフィルムをめっきマスクとして電界めっき法により配線層を形成した後、パターンドライフィルムを剥離する。
【0133】
内層基板とドライフィルムとの積層条件は、上述した工程(II)の条件と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0134】
ドライフィルムを内層基板上に積層後、ドライフィルムに対して所望のパターンを形成するためにフォトマスクを用いて所定の条件で露光、現像を行う。
【0135】
配線層のライン(回路幅)/スペース(回路間の幅)比は特に制限されないが、好ましくは20/20μm以下(即ちピッチが40μm以下)、より好ましくは18/18μm以下(ピッチ36μm以下)、さらに好ましくは15/15μm以下(ピッチ30μm以下)である。配線層のライン/スペース比の下限は特に制限されないが、好ましくは0.5/0.5μm以上、より好ましくは1/1μm以上である。ピッチは、配線層の全体にわたって同一である必要はない。
【0136】
ドライフィルムのパターンを形成後、配線層を形成し、ドライフィルムを剥離する。ここで、配線層の形成は、所望のパターンを形成したドライフィルムをめっきマスクとして使用し、めっき法により実施することができる。
【0137】
配線層に使用する導体材料は特に限定されない。好適な実施形態では、配線層は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。配線層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成されたものが挙げられる。
【0138】
配線層の厚みは、所望の配線板のデザインによるが、好ましくは3μm〜35μm、より好ましくは5μm〜30μm、さらに好ましくは10〜20μm、又は15μmである。
【0139】
配線層を形成後、ドライフィルムを剥離する。ドライフィルムの剥離は、公知の方法により実施することができる。必要に応じて、不要な配線パターンをエッチング等により除去して、所望の配線パターンを形成することもできる。
【0140】
工程(2)は、本発明の支持体付き樹脂シートを、配線層が樹脂組成物層に埋め込まれるように、配線層付き基材上に積層し、熱硬化させて絶縁層を形成する工程である。配線層付き基材と支持体付き樹脂シートとの積層条件は、上述した工程(II)の条件と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0141】
工程(3)は、配線層を層間接続することができれば特に限定されないが、絶縁層にビアホールを形成し、導体層を形成する工程、及び絶縁層を研磨又は研削し、配線層を露出させる工程の少なくともいずれかの工程であることが好ましい。絶縁層にビアホールを形成し、導体層を形成する工程は上述したとおりである。
【0142】
絶縁層の研磨方法又は研削方法としては、配線層を露出させることができ、研磨又は研削面が水平であれば特に限定されず、従来公知の研磨方法又は研削方法を適用することができ、例えば、化学機械研磨装置による化学機械研磨方法、バフ等の機械研磨方法、砥石回転による平面研削方法等が挙げられる。
【0143】
工程(4)は、内層基板を除去し、本発明の配線板を形成する工程である。内層基板の除去方法は特に限定されない。好適な一実施形態は、内層基板上に有する金属層の界面で配線板から内層基板を剥離し、金属層を例えば塩化銅水溶液などでエッチング除去する。
【0144】
本発明の樹脂組成物、支持体付き樹脂シートを用いて製造される配線板は、第1及び第2の導体層間の絶縁層の厚みが6μm以下であっても、絶縁信頼性に優れるという特性を示す。130℃、85RH%、3.3V印加環境下で100時間経過後の絶縁抵抗値の上限は、好ましくは1012Ω以下、より好ましくは1011Ω以下、さらに好ましくは1010Ω以下である。下限は特に限定されないが、好ましくは10Ω以上、より好ましくは10Ω以上である。絶縁抵抗値の測定は、後述する<絶縁信頼性の評価、導体層間の絶縁層の厚みの測定>に記載の方法に従って測定することができる。
【0145】
本発明の支持体付き樹脂シートを用いて製造される配線板は、部品埋め込み性に優れるという特性を示す。即ち本発明の支持体付き樹脂シートを用いて製造される部品内蔵回路板は、全てのキャビティにおいて、部品の外周部が樹脂組成物で覆われている構成とすることができる。部品埋め込み性の評価は、後述する<部品埋め込み性の評価>に記載の方法に従って測定することができる。
【0146】
本発明の支持体付き樹脂シートを用いて製造される配線板は、リフロー反り量に優れるという特性を示す。ピーク温度が260℃におけるリフロー反り量の上限は、好ましくは90μm、より好ましくは80μm、さらに好ましくは70μmである。下限については特に限定されないが、1μm以上とし得る。リフロー反り量の評価は、後述する<反り量の評価>に記載の方法に従って測定することができる。
【0147】
[半導体装置]
本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を含む。本発明の半導体装置は、本発明のプリント配線板を用いて製造することができる。
【0148】
半導体装置としては、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、デジタルカメラ及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【0149】
本発明の半導体装置は、プリント配線板の導通箇所に、部品(半導体チップ)を実装することにより製造することができる。「導通箇所」とは、「プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0150】
本発明の半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、等が挙げられる。ここで、「バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法」とは、「半導体チップをプリント配線板の凹部に直接埋め込み、半導体チップとプリント配線板上の配線とを接続させる実装方法」のことである。
【実施例】
【0151】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の記載において、「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0152】
まずは各種測定方法・評価方法について説明する。
【0153】
<平均粒径の測定>
無機充填材100mg、分散剤(サンノプコ(株)製「SN9228」)0.1g、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて20分間分散した。レーザ回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所製「SALD−2200」)を使用して、回分セル方式で粒度分布を測定し、メディアン径による平均粒径を算出した。
【0154】
<比表面積の測定>
BET全自動比表面積測定装置((株)マウンテック製Macsorb HM−1210)を使用して、無機充填材の比表面積を測定した。
【0155】
<真密度の測定>
マイクロ・ウルトラピクノメータ(カンタクローム・インスツルメンツ・ジャパン製MUPY−21T)を使用して、無機充填材の真密度を測定した。
【0156】
<支持体付き樹脂シートの作製(実施例1〜3、比較例1〜3)>
以下の手順により調製した樹脂ワニス(樹脂組成物)を用いて、実施例及び比較例の支持体付き樹脂シートを作製した。
【0157】
(樹脂ワニス1の調製)
ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)製「ZX1059」、エポキシ当量約169、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品)6部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)6部、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7760」、エポキシ当量約238)6部、ナフタレン型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)製「ESN475V」、エポキシ当量約330)15部、フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)10部、及び難燃剤(大八化学工業(株)製「PX−200」)2部を、ソルベントナフサ20部及びシクロヘキサノン10部の混合溶剤に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC−8000−65T」、活性基当量約225、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)30部、アミン系硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)2部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)及びフェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製「KBM103」)を重量比1:1で表面処理された球状シリカ(電気化学工業(株)製「UFP−30」、平均粒径0.078μm、比表面積30.7m/g、単位表面積当たりのカーボン量0.20mg/m)90部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO製「SHP020」)で濾過して、樹脂ワニス1を調製した。
【0158】
(樹脂ワニス2の調製)
グリシジルアミン型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「630LSD」、エポキシ当量約95)3部、ビキシレノール型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)6部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC(株)製「EXA−7311−G4」、エポキシ当量約213)6部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000L」、エポキシ当量約272)15部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)8部を、ソルベントナフサ15部及びシクロヘキサノン10部の混合溶剤に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、トリアジン骨格含有クレゾールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA3018−50P」、水酸基当量約151、固形分50%の2−メトキシプロパノール溶液)10部、活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC−8000−65T」、活性基当量約225、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)10部、アミン系硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)1部、ゴム粒子(ダウ・ケミカル日本(株)製「EXL2655」)2部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球状シリカ(新日鉄住金マテリアルズ(株)製「SPH516−05」、平均粒径0.29μm、比表面積16.3m/g、単位表面積当たりのカーボン量0.43mg/m)120部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO製「SHP020」)で濾過して、樹脂ワニス2を調製した。
【0159】
(樹脂ワニス3の調製)
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032SS」、エポキシ当量約144)4部、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂(DIC(株)製「EXA−7311−G4」、エポキシ当量約213)12部、ナフタレン型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)製「ESN475V」、エポキシ当量約330)15部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)5部を、ソルベントナフサ15部及びシクロヘキサノン10部の混合溶剤に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、ビスフェノールAジシアネートのプレポリマー(ロンザジャパン(株)製「BA230S75」、シアネート当量約232、不揮発分75質量%のMEK溶液)20部、多官能シアネートエステル樹脂(ロンザジャパン(株)製「PT30」、シアネート当量約133、不揮発分85質量%のソルベントナフサ溶液)6部、活性エステル系硬化剤(DIC(株)製「HPC−8000−65T」、活性基当量約225、不揮発成分65質量%のトルエン溶液)8部、アミン系硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)、固形分5質量%のMEK溶液)0.3部、硬化促進剤(東京化成(株)製、コバルト(III)アセチルアセトナート(CO(III)Ac)、固形分1質量%のMEK溶液)2.5部、難燃剤(三光(株)製「HCA−HQ」、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10−ヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイド、平均粒径1.2μm)2部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)及びフェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製「KBM103」)を重量比1:1で表面処理された球状シリカ(電気化学工業(株)製「UFP−30」、平均粒径0.078μm、比表面積30.7m/g、単位表面積当たりのカーボン量0.20mg/m)80部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球状シリカ(新日鉄住金マテリアルズ(株)製「SPH516−05」、平均粒径0.29μm、比表面積16.3m/g、単位表面積当たりのカーボン量0.43mg/m)30部(該2種の混合シリカの平均粒径0.13μm、比表面積26.1m/g)を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO製「SHP020」)で濾過して、樹脂ワニス3を調製した。
【0160】
(樹脂ワニス4の調製)
樹脂ワニス1の調製において、無機充填材を、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)及びフェニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製「KBM103」)を重量比1:1で表面処理された球状シリカ(電気化学工業(株)製「UFP−40」、平均粒径0.067μm、比表面積40.8m/g、単位表面積当たりのカーボン量0.22mg/m)に変更した。以上の事項以外は樹脂ワニス1の調製と同様にして樹脂ワニス4を調製した。
【0161】
(樹脂ワニス5の調製)
樹脂ワニス3の調製において、1)ソルベントナフサの添加量を15部から10部に変え、2)無機充填材を、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球状シリカ((株)アドマテックス製「アドマファインSO−C1」、平均粒径0.63μm、比表面積11.2m/g、単位表面積当たりのカーボン量0.35mg/m)に変え、3)カートリッジフィルター(ROKITECHNO製「SHP020」)を、カートリッジフィルター(ROKITECHNO製「SHP030」)と変えた。以上の事項以外は樹脂ワニス3の調製と同様にして樹脂ワニス5を調製した。
【0162】
(樹脂ワニス6の調製)
ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP4032SS」、エポキシ当量約144)4部、ビスフェノール型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)製「ZX1059」、エポキシ当量約169、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品)7部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000L」、エポキシ当量約272)15部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP−4710」、エポキシ当量約170)4部、及びフェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX7553BH30」、固形分30質量%のシクロヘキサノン:メチルエチルケトン(MEK)の1:1溶液)10部を、ソルベントナフサ10部及びシクロヘキサノン10部の混合溶剤に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却した後、そこへ、トリアジン骨格含有フェノールノボラック系硬化剤(DIC(株)製「LA7052」、水酸基当量約120、固形分60%のMEK溶液)20部、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業(株)製「1B2PZ」1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、固形分5%のMEK溶液)0.5部、難燃剤(三光(株)製「HCA−HQ」、10−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−10−ヒドロ−9−オキサ−10−フォスファフェナンスレン−10−オキサイド、平均粒径1.2μm)2部、アミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製「KBM573」)で表面処理された球状シリカ(新日鉄住金マテリアルズ(株)製「SPH516−05」、平均粒径0.29μm、比表面積16.3m/g、単位表面積当たりのカーボン量0.43mg/m)80部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散した後に、カートリッジフィルター(ROKITECHNO製「SHP020」)で濾過して、樹脂ワニス6を調製した。
【0163】
樹脂ワニス1〜6に用いた成分とその配合量(不揮発分の質量部)を下記表に示す。
【表1】
【0164】
(支持体付き樹脂シートの作製)
支持体として、アルキド樹脂系離型剤(リンテック(株)製「AL−5」)で離型処理したPETフィルム(東レ(株)製「ルミラーR80」、厚み38μm、軟化点130℃、「離型PET」)を用意した。
【0165】
各樹脂ワニスを離型PET上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが40μm(平均線熱膨張係数、煮沸吸水率、及び透湿係数の測定用)となるよう、ダイコーターにて均一に塗布した80℃から110℃で3.5分乾燥することにより、離型PET上に樹脂組成物層を得た。次いで、支持体付き樹脂シートの支持体と接合していない面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子エフテックス(株)製「アルファンMA−430」、厚み20μm)を、樹脂組成物層と接合するように積層した。これにより、支持体、樹脂組成物層、及び保護フィルムの順からなる支持体付き樹脂シート(平均線熱膨張係数、煮沸吸水率、及び透湿係数の測定用)を得た。
【0166】
各樹脂ワニスを離型PET上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが22μm(最低溶融粘度の測定、及び部品埋め込み性の評価用)となるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、80℃から110℃で2分間乾燥することにより、離型PET上に樹脂組成物層を得た。次いで、支持体付き樹脂シートの支持体と接合していない面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子エフテックス(株)製「アルファンMA−430」、厚み20μm)を、樹脂組成物層と接合するように積層した。これにより、支持体、樹脂組成物層、及び保護フィルムの順からなる支持体付き樹脂シート(最低溶融粘度の測定、及び部品埋め込み性の評価用)を得た。
【0167】
各樹脂ワニスを離型PET上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが10μm(薄膜絶縁評価用)となるよう、ダイコーターにて均一に塗布し、70℃から100℃で1.5分間乾燥することにより、離型PET上に樹脂組成物層を得た。次いで、支持体付き樹脂シートの支持体と接合していない面に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子エフテックス(株)製「アルファンMA−430」、厚み20μm)を、樹脂組成物層と接合するように積層した。これにより、支持体、樹脂組成物層、及び保護フィルムの順からなる支持体付き樹脂シート(薄膜絶縁評価用)を得た。
【0168】
<最低溶融粘度の測定>
離型PET(支持体)から樹脂組成物層(厚み22μm)のみを剥離し、金型で圧縮することにより測定用ペレット(直径18mm、1.2〜1.3g)を作製した。
【0169】
動的粘弾性測定装置((株)ユー・ビー・エム製「Rheosol−G3000」)を用い、試料樹脂組成物層1gについて、直径18mmのパラレルプレートを使用して、開始温度60℃から200℃まで昇温速度5℃/分にて昇温し、測定温度間隔2.5℃、振動数1Hz、ひずみ1degの測定条件にて動的粘弾性率を測定し、最低溶融粘度(poise)を算出した。
【0170】
<支持体付き樹脂シートの硬化物の平均線熱膨張係数(CTE)の測定>
離型PETフィルム(リンテック(株)製「501010」、厚み38μm、240mm角)の未処理面がガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(松下電工(株)製「R5715ES」、厚み0.7mm、255mm角)に接するように、ガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板上に設置し、該離型PETフィルムの四辺をポリイミド接着テープ(幅10mm)で固定した。
【0171】
実施例及び比較例で作製した各支持体付き樹脂シート(厚み40μm、200mm角)を、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニチゴー・モートン(株)製 2ステージビルドアップラミネーター、CVP700)を用いて、樹脂組成物層が離型PETフィルム(リンテック(株)製「501010」)の離型面と接するように、中央にラミネート処理した。ラミネート処理は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。
【0172】
次いで、100℃の温度条件で、100℃のオーブンに投入後30分間、次いで175℃の温度条件で、175℃のオーブンに移し替えた後30分間、熱硬化させた。その後、基板を室温雰囲気下に取り出し、支持体付き樹脂シートから離型PET(支持体)を剥離した後、さらに190℃のオーブンに投入後90分間の硬化条件で熱硬化させた。
【0173】
熱硬化後、ポリイミド接着テープを剥がし、硬化物をガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板から取り外した。更に樹脂組成物層が積層されていた離型PETフィルム(リンテック(株)製「501010」)を剥離して、シート状の硬化物を得た。得られた硬化物を「評価用硬化物」と称する。
【0174】
評価用硬化物を幅5mm、長さ15mmの試験片に切断し、熱機械分析装置((株)リガク製「Thermo Plus TMA8310」)を用いて、引張加重法にて熱機械分析を行った。詳細には、試験片を前記熱機械分析装置に装着した後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。そして2回の測定において、25℃から150℃までの範囲における平面方向の平均線熱膨張係数(ppm/℃)を算出した。
【0175】
<煮沸吸水率の測定>
評価用硬化物(厚み40μm)を40mm角の試験片に切断し、該試験片を130℃で30分乾燥した後に秤量した(この秤量した質量をA(g)とする)。煮沸させたイオン交換水中に試験片を1時間浸漬させた。その後、室温(25℃)のイオン交換水中に試験片を1分間浸漬させ、試験片をクリーンワイパー(クラレクラフレックス(株)製)にて試験片表面の水滴をふき取り、秤量した(この秤量した質量をB(g)とする)。5つの試験片の煮沸吸水率を下記式からそれぞれ求め、その平均値を下記表に示した。
煮沸吸水率(質量%)=((B−A)/A)×100
【0176】
<透湿係数の測定>
評価用硬化物(厚み40μm)を直径70mmの円状に切断し、JIS Z0208の透湿度試験方法(カップ法)に従って、透湿度の測定を行った。具体的には、60℃、85%RH、24時間でサンプルを透過した水分重量を測定することにより透湿度(g/m・24h)を求め、膜厚で除して透湿係数(g・mm/m・24h)を算出した。3つの試験片の平均値を下記表に示した。
【0177】
<部品埋め込み性の評価>
実施例及び比較例で作製した各支持体付き樹脂シート(厚み22μm)を用いて、以下の手順に沿って部品仮付内層基板を作製し部品埋め込み性を評価した。
【0178】
(1)部品仮付け内層基板(キャビティ基板)の準備
ガラス布基材BTレジン両面銅張積層板(銅箔の厚み18μm、基板厚み0.15mm、三菱ガス化学(株)製「HL832NSF LCA」)255×340mmサイズの全面に、0.7×1.1mmのキャビティを3mmピッチで形成した。次いで、両面をマイクロエッチング剤(メック(株)製「CZ8100」)にて1μmエッチングして銅表面の粗化処理を行い、さらに防錆処理(メック(株)製「CL8300」)を施し、180℃で30分間乾燥した。
【0179】
(2)部品仮付け内層基板の作製
(1)で得られた基板の片面に、25μm厚の粘着剤付ポリイミドフィルム(ポリイミド38μm厚、(株)有沢製作所製、「PFDKE−1525TT」)をバッチ式真空加圧ラミネーター(ニチゴー・モートン(株)製、2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、粘着剤が基板と接合するように配置し、片面に積層した。積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、80℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。次いで、積層セラミックコンデンサ部品(1005=1×0.5mmサイズ、厚み0.14mm)をキャビティ内に1つずつ仮付けし、部品仮付け内層基板(キャビティ基板)を作製した。
【0180】
(3)部品埋め込み性の評価試験
バッチ式真空加圧ラミネーター(ニチゴー・モートン(株)製、2ステージビルドアップラミネーター「CVP700」)を用いて、実施例及び比較例で作製した支持体付き樹脂シート(厚み22μm)から保護フィルムを剥離して露出した樹脂組成物層と、(2)で作製した部品仮付け内層基板の粘着剤付ポリイミドフィルム配置面とは反対側の面とを、接合するように積層した。積層は、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、120℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。次いで、積層された支持体付き樹脂シートを、大気圧下、120℃、圧力0.5MPaにて60秒間熱プレスして平滑化した。室温にまで冷却した部品仮付内層基板から粘着剤付ポリイミドフィルムを剥離することにより評価用基板Aを作製した。評価用基板Aのポリイミドフィルムを剥離した面から、キャビティ内の樹脂流れを光学顕微鏡(150倍)で観察し(10個のキャビティについて行った)、下記基準により部品埋め込み性を評価し、結果を下記表に示した。
(評価基準)
○:全てのキャビティにおいて、積層セラミックコンデンサ部品の外周部が樹脂で覆われている。
×:キャビティの1つでも、ボイドが発生しているか又は積層セラミックコンデンサ部品の外周部に樹脂が埋め込まれていないものがある。
【0181】
<反り量の評価>
(1)樹脂シートの硬化
上記「(3)部品埋め込み性の評価試験」で作製した評価用基板Aを、100℃の温度条件で、100℃のオーブンに投入後30分間熱処理を行い、室温まで冷却した後、粘着剤付ポリイミドフィルムを剥離した面に、同じ支持体付き樹脂シートを上記「(3)部品埋め込み性の評価試験」と同じ条件で貼り合わせた。その後、100℃の温度条件で、100℃のオーブンに投入後30分間、次いで175℃の温度条件で、175℃のオーブンに移し替えた後30分間、熱硬化し、基板の両面に絶縁層を形成した。その後、両面に絶縁層を形成した基板を室温雰囲気下に取り出し、両面の離型PETを剥離し、さらに190℃のオーブンに投入後90分間の硬化条件で絶縁層を熱硬化させることにより部品内蔵回路板を作製し、評価用基板Bとした。
【0182】
(2)反り量の評価試験
評価用基板Bを45mm角の個片に切り出した後(これを5つ用意した)、ピーク温度260℃の半田リフロー温度を再現するリフロー装置(日本アントム(株)製「HAS−6116」)に一回通した(リフロー温度プロファイルはIPC/JEDEC J−STD−020Cに準拠)。次いで、シャドウモアレ装置(Akrometrix製「TherMoire AXP」)を用いて、IPC/JEDEC J−STD−020C(ピーク温度260℃)に準拠したリフロー温度プロファイルにて、基板下面を加熱し、基板中央の10mm角部分の変位(μm)を測定し、結果を下記表に示した。
【0183】
<絶縁信頼性の評価、導体層間の絶縁層の厚みの測定>
(評価用基板の調製)
(1)内層回路基板の下地処理
内層回路基板として、1mm角格子の配線パターン(残銅率が70%)にて形成された回路導体(銅)を両面に有するガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板の厚さ0.3mm、Panasonic(株)製「R1515F」)を用意した。該内層回路基板の両面を、メック(株)製「CZ8100」に浸漬して銅表面の粗化処理(銅エッチング量0.7μm)を行った。
【0184】
(2)支持体付き樹脂シートのラミネート
実施例及び比較例で作製した各支持体付き樹脂シートを、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニチゴー・モートン(株)製、2ステージビルドアップラミネーター、CVP700)を用いて、樹脂組成物層が内層回路基板と接するように、内層回路基板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、120℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施した。次いで、120℃、圧力0.5MPaにて60秒間熱プレスを行った。
【0185】
(3)樹脂組成物層の熱硬化
支持体付き樹脂シートがラミネートされた内層回路基板を、100℃の温度条件で、100℃のオーブンに投入後30分間、次いで175℃の温度条件で、175℃のオーブンに移し替えた後30分間、熱硬化して絶縁層を形成した。
【0186】
(4)ビアホールの形成
絶縁層及び支持体の上方から、三菱電機(株)製COレーザー加工機「605GTWIII(−P)」を使用して、支持体の上方からレーザーを照射して、格子パターンの導体上の絶縁層にトップ径(70μm)のビアホールを形成した。レーザーの照射条件は、マスク径が2.5mmであり、パルス幅が16μsであり、エネルギーが0.39mJ/ショットであり、ショット数が2であり、バーストモード(10kHz)で行った。
【0187】
(5)粗化処理を行う工程
ビアホールが設けられた回路基板から支持体を剥離し、デスミア処理を行った。なお、デスミア処理としては、下記の湿式デスミア処理を実施した。
【0188】
湿式デスミア処理:
膨潤液(アトテックジャパン(株)製「スウェリングディップ・セキュリガントP」、ジエチレングリコールモノブチルエーテル及び水酸化ナトリウムの水溶液)に60℃で5分間、次いで酸化剤溶液(アトテックジャパン(株)製「コンセントレート・コンパクトCP」、過マンガン酸カリウム濃度約6%、水酸化ナトリウム濃度約4%の水溶液)に80℃で10分間、最後に中和液(アトテックジャパン(株)製「リダクションソリューション・セキュリガントP」、硫酸水溶液)に40℃で5分間、浸漬した後、80℃で15分間乾燥した。
【0189】
(6)導体層を形成する工程
(6−1)無電解めっき工程
上記回路基板の表面に導体層を形成するため、下記1〜6の工程を含むめっき工程(アトテックジャパン(株)製の薬液を使用した銅めっき工程)を行って導体層を形成した。
【0190】
1.アルカリクリーニング(ビアホールが設けられた絶縁層の表面の洗浄と電荷調整)
Cleaning Cleaner Securiganth 902(商品名)を用いて60℃で5分間洗浄した。
2.ソフトエッチング(ビアホール内の洗浄)
硫酸酸性ペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液を用いて、30℃で1分間処理した。
3.プレディップ(Pd付与のための絶縁層の表面の電荷の調整)
Pre. Dip Neoganth B(商品名)を用い、室温で1分間処理した。
4.アクティヴェーター付与(絶縁層の表面へのPdの付与)
Activator Neoganth 834(商品名)を用い、35℃で5分間処理した。
5.還元(絶縁層に付与されたPdを還元)
Reducer Neoganth WA(商品名)とReducer Acceralator 810 mod.(商品名)との混合液を用い、30℃で5分間処理した。
6.無電解銅めっき工程(Cuを絶縁層の表面(Pd表面)に析出)
Basic Solution Printganth MSK−DK(商品名)と、Copper solution Printganth MSK(商品名)と、Stabilizer Printganth MSK−DK(商品名)と、Reducer Cu(商品名)との混合液を用いて、35℃で20分間処理した。形成された無電解銅めっき層の厚さは0.8μmであった。
【0191】
(6−2)電解めっき工程
次いで、アトテックジャパン(株)製の薬液を使用して、ビアホール内に銅が充填される条件で電解銅めっき工程を行った。その後に、エッチングによるパターニングのためのレジストパターンとして、ビアホールに導通された直径1mmのランドパターン及び、下層導体とは接続されていない直径10mmの円形導体パターンを用いて絶縁層の表面に10μmの厚さでランド及び導体パターンを有する導体層を形成した。次に、アニール処理を190℃にて90分間行った。この基板を評価用基板Cとした。
【0192】
(導体層間の絶縁層の厚みの測定)
評価用基板CをFIB−SEM複合装置(SIIナノテクノロジー(株)製「SMI3050SE」)を用いて、断面観察を行った。詳細には、導体層の表面に垂直な方向における断面をFIB(集束イオンビーム)により削り出し、断面SEM画像から、導体層間の絶縁層厚を測定した。各サンプルにつき、無作為に選んだ5箇所の断面SEM画像を観察し、その平均値を導体層間の絶縁層の厚みとした。
【0193】
(絶縁層の絶縁信頼性の評価)
上記において得られた評価用基板Cの直径10mmの円形導体側を+電極とし、直径1mmのランドと接続された内層回路基板の格子導体(銅)側を−電極として、高度加速寿命試験装置(ETAC製「PM422」)を使用し、130℃、85%相対湿度、3.3V直流電圧印加の条件で200時間経過させた際の絶縁抵抗値を、エレクトロケミカルマイグレーションテスター(J−RAS(株)製「ECM−100」)にて測定した(n=6)。6点の試験ピース全てにおいてその抵抗値が10Ω以上の場合を「○」、1つでも10Ω未満の場合は「×」とした。
【0194】
【表2】
【0195】
上記表から、本発明の実施例1〜3は、導体層間の絶縁層の厚みが薄くてもリフロー反り量が小さく、かつ埋め込み性、薄膜絶縁性に優れることがわかる。一方、無機充填材の、比表面積と真密度の積が1〜77の範囲外である比較例1は、樹脂組成物層の表面凹凸(アンジュレーション)が発生してしまい、導体層間の絶縁層の厚み、絶縁信頼性、及びリフロー反り量を評価することができなかった。無機充填材の平均粒径が0.05〜0.35μmの範囲外である比較例2、及び透湿係数が0.05〜2.8g・mm/m・24hの範囲外である比較例3は、絶縁信頼性が実施例1〜3よりも劣ることがわかる。
【符号の説明】
【0196】
100 部品仮付け内層基板(キャビティ基板)
1 内層基板
1a キャビティ
11 第1の主面
12 第2の主面
2 仮付け材料
3 部品
4 回路配線
5 第1の導体層
51 第1の導体層の主面
6 第2の導体層
61 第2の導体層の主面
7 絶縁層
図1
図2