特許第6669423号(P6669423)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6669423
(24)【登録日】2020年3月2日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】伝動ベルトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29D 29/00 20060101AFI20200309BHJP
   B29D 29/10 20060101ALI20200309BHJP
   F16G 1/08 20060101ALI20200309BHJP
   F16G 5/06 20060101ALI20200309BHJP
   F16G 5/20 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   B29D29/00
   B29D29/10
   F16G1/08 A
   F16G5/06 A
   F16G5/20 A
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2019-554715(P2019-554715)
(86)(22)【出願日】2019年10月1日
(86)【国際出願番号】JP2019038733
【審査請求日】2019年10月3日
(31)【優先権主張番号】特願2018-219201(P2018-219201)
(32)【優先日】2018年11月22日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 敏郎
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−196135(JP,A)
【文献】 特開2016−124160(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/169360(WO,A1)
【文献】 特開2017−007283(JP,A)
【文献】 特開平08−132546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 29/00
B29D 29/00
B29D 29/10
B29C 33/02
B29C 35/02
F16G 1/08
F16G 5/06
F16G 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のベルト型の内側に、ベルト製造用の筒状の未架橋ゴム成形体を、前記未架橋ゴム成形体が内向きに撓んだ撓み部を有する状態で配置するとともに、前記未架橋ゴム成形体の内側の空間を、前記未架橋ゴム成形体における前記撓み部を含む第1成形体部分に対応する第1空間と、前記第1成形体部分以外の第2成形体部分に対応する第2空間とに仕切る第1ステップと、
前記第1ステップで仕切った前記第2空間内において膨張部材を膨張させ、前記膨張部材で前記第2成形体部分を前記ベルト型側に押圧する第2ステップと、
を備え
前記第1ステップにおける前記未架橋ゴム成形体の内側の空間の前記第1空間と前記第2空間とへの仕切りを、前記ベルト型に挿入した仕切部材により行う伝動ベルトの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載された伝動ベルトの製造方法において、
前記第1成形体部分の長さが前記第2成形体部分の長さ以下となるように、前記未架橋ゴム成形体の内側の空間を前記第1空間と前記第2空間とに仕切る伝動ベルトの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された伝動ベルトの製造方法において、
前記仕切部材が平板状部材で構成されている伝動ベルトの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された伝動ベルトの製造方法において、
前記ベルト型の内側に前記未架橋ゴム成形体を配置した後に、前記ベルト型に前記仕切部材を挿入する伝動ベルトの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された伝動ベルトの製造方法において、
前記仕切部材を、前記未架橋ゴム成形体に非接触となるように設ける伝動ベルトの製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された伝動ベルトの製造方法において、
前記仕切部材が平板状であり、前記平板状の仕切部材の側端と前記未架橋ゴム成形体との間のクリアランスが1mm以上5mm以下である伝動ベルトの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれかに記載された伝動ベルトの製造方法において、
前記膨張部材がゴム製の風船部材で構成されている伝動ベルトの製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれかに記載された伝動ベルトの製造方法において、
前記ベルト型の内周長と前記未架橋ゴム成形体の外周長との周長差が、前記未架橋ゴム成形体の外周長の0.5%以下である伝動ベルトの製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれかに記載された伝動ベルトの製造方法において、
前記未架橋ゴム成形体が、未架橋ゴム組成物で形成された円筒状の成形体本体に、アラミド繊維の心線が軸方向にピッチを有する螺旋を形成して延びるように配されて埋設された未架橋スラブである伝動ベルトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動ベルトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
伝動ベルトの製造方法において、筒状のベルト型の内側に筒状の未架橋スラブを配置し、そして、その未架橋スラブを加熱するとともに内側からベルト型に対して押圧し、それによりゴム成分を架橋させてベルトスラブを成型する方法が知られている(例えば、特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6246420号公報
【特許文献2】特許第6230756号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明は、筒状のベルト型の内側に、ベルト製造用の筒状の未架橋ゴム成形体を、前記未架橋ゴム成形体が内向きに撓んだ撓み部を有する状態で配置するとともに、前記未架橋ゴム成形体の内側の空間を、前記未架橋ゴム成形体における前記撓み部を含む第1成形体部分に対応する第1空間と、前記第1成形体部分以外の第2成形体部分に対応する第2空間とに仕切る第1ステップと、前記第1ステップで仕切った前記第2空間内において膨張部材を膨張させ、前記膨張部材で前記第2成形体部分を前記ベルト型側に押圧する第2ステップとを備え、前記第1ステップにおける前記未架橋ゴム成形体の内側の空間の前記第1空間と前記第2空間とへの仕切りを、前記ベルト型に挿入した仕切部材により行う伝動ベルトの製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1A】実施形態に係る伝動ベルトの製造方法における第1ステップの説明図である。
図1B図1AにおけるIB-IB断面図である。
図2A】未架橋ゴム成形体への撓み部の形成を示す斜視図である。
図2B】ベルト型に未架橋ゴム成形体を挿入した状態を示す斜視図である。
図2C】ベルト型に挿入した直後の未架橋ゴム成形体の弾性復帰を示す説明図である。
図3】実施形態に係る伝動ベルトの製造方法における第1ステップの変形例の説明図である。
図4A】実施形態に係る伝動ベルトの製造方法における第2ステップの第1の説明図である。
図4B図4AにおけるIVB-IVB断面図である。
図5A】実施形態に係る伝動ベルトの製造方法における第2ステップの第2の説明図である。
図5B図5AにおけるVB-VB断面図である。
図6】平ベルトの一片の斜視図である。
図7A】平ベルトの製造方法における成形工程の第1の説明図である。
図7B】平ベルトの製造方法における成形工程の第2の説明図である。
図7C】平ベルトの製造方法における成形工程の第3の説明図である。
図8A】架橋装置の断面図である。
図8B】架橋装置の一部分の拡大断面図である。
図9A】平ベルトの製造方法における架橋工程の第1の説明図である。
図9B】平ベルトの製造方法における架橋工程の第2の説明図である。
図9C】平ベルトの製造方法における架橋工程の第3の説明図である。
図10】Vリブドベルトの一片の斜視図である。
図11】Vリブドベルトの製造方法における成形工程の説明図である。
図12A】Vリブドベルトの製造方法における架橋工程の第1の説明図である。
図12B】Vリブドベルトの製造方法における架橋工程の第2の説明図である。
図12C】Vリブドベルトの製造方法における架橋工程の第3の説明図である。
図13A】変形例のVリブドベルトの製造方法における成形工程の説明図である。
図13B】変形例のVリブドベルトの一片の斜視図である。
図14A】別の変形例のVリブドベルトの製造方法における成形工程の説明図である。
図14B】別の変形例のVリブドベルトの一片の斜視図である。
図15A】Vリブドベルトの製造方法における成形工程の変形例の第1の説明図である。
図15B】Vリブドベルトの製造方法における成形工程の変形例の第2の説明図である。
図16A】ローエッジVベルトの一片の斜視図である。
図16B】プーリ接触表面が補強布で被覆されたVベルトの一片の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0007】
実施形態に係る伝動ベルトの製造方法は、次の第1及び第2ステップを備える。
【0008】
第1ステップでは、図1A及びBに示すように、円筒状のベルト型10の内側に、ベルト製造用の筒状の未架橋ゴム成形体20を、未架橋ゴム成形体20が内向きに撓んだ撓み部21を有する状態で配置するとともに、未架橋ゴム成形体20の内側の空間を、未架橋ゴム成形体20における撓み部21を含む第1成形体部分20aに対応する第1空間22aと、第1成形体部分20a以外の第2成形体部分20bに対応する第2空間22bとに仕切る。
【0009】
ベルト型10は、特に限定されるものではないが、円筒金型で構成されていることが好ましい。ベルト型10は、製造する伝動ベルトの種類に応じて選択する。具体的には、平ベルトを製造する場合、内周面が平滑面のベルト型10を用いる。VベルトやVリブドベルトを製造する場合、内周面に周方向に延びる溝が軸方向に連設されたベルト型10を用いる。歯付ベルトを製造する場合、内周面に軸方向に延びる溝が周方向に間隔をおいて設けられたベルト型10を用いる。ベルト型10の内周長は、製造する伝動ベルトのサイズに対応するが、例えば500mm以上3000mm以下である。ここで、本出願において、ベルト型10の内周長とは、ベルト型10の最大内径を直径とする円周長をいう。
【0010】
未架橋ゴム成形体20は、未架橋ゴム組成物で形成された円筒状の成形体本体に、その軸方向にピッチを有する螺旋を形成して延びるように配された心線が埋設され、必要に応じて成形体本体の外周面及び/又は内周面に補強布が積層された未架橋スラブであってもよい。また、未架橋ゴム成形体20は、その未架橋スラブの一部分を構成するスラブ構成部材であってもよい。未架橋ゴム成形体20の外周長は、ベルト型10の内周長よりも若干短い。ここで、本出願において、未架橋ゴム成形体20の外周長とは、未架橋ゴム成形体20を軸方向視で円形に形成したときにおける最大外径を直径とする円周長をいう。
【0011】
未架橋ゴム成形体20は、製造する伝動ベルトの種類に応じて成形する。具体的には、平ベルトを製造する場合、外周面が平滑面の未架橋ゴム成形体20を成形する。VベルトやVリブドベルトを製造する場合、外周面に周方向に延び且つベルト型10の溝に対応する突条が軸方向に連設された未架橋ゴム成形体20を成形する。歯付ベルトを製造する場合、外周面に軸方向に延び且つベルト型10の溝に対応する突条が周方向に間隔をおいて設けられた未架橋ゴム成形体20を成形する。
【0012】
ベルト型10の内側に未架橋ゴム成形体20を配置するとき、まず、図2Aに示すように、円筒状の未架橋ゴム成形体20を、長さ方向に沿って内向きに撓んだ撓み部21を有するように断面ハート形に形成する。次いで、図2Bに示すように、ベルト型10に、その断面ハート形に形成した未架橋ゴム成形体20を、そのままの状態で挿入する。ベルト型10への挿入直後には、撓み部21は、図2Cに示すように、弾性復帰によりその撓み量が縮小する。ベルト型10に挿入された未架橋ゴム成形体20における撓み部21以外の部分は、ベルト型10の内周に沿いつつ、ベルト型10の内周面に接触する部分と、ベルト型10の内周面との間にクリアランスを有する部分とを含むこととなる。
【0013】
未架橋ゴム成形体20の内側の空間の第1空間22aと第2空間22bとへの仕切りは、ベルト型10に挿入した仕切部材31により行うことが好ましい。仕切部材31は、特に限定されるものではないが、平板状部材で構成されていることが好ましい。ベルト型10への未架橋ゴム成形体20の挿入作業性を良好にする観点からは、ベルト型10に未架橋ゴム成形体20を挿入して配置した後に、ベルト型10に仕切部材31を挿入することが好ましい。なお、未架橋ゴム成形体20を挿入する前のベルト型10に予め仕切部材31を挿入しておいてもよい。この場合、仕切部材31を配置したベルト型10に、未架橋ゴム成形体20を挿入することとなる。また、ベルト型10に未架橋ゴム成形体20とともに仕切部材31を同時に挿入してもよい。
【0014】
仕切部材31は、後述するようにベルト型10の内周の全周に沿って未架橋ゴム成形体20を配置させる観点から、未架橋ゴム成形体20における第1成形体部分20aの長さが第2成形体部分20bの長さ以下となるように、未架橋ゴム成形体20の内側の空間を第1空間22aと第2空間22bとに仕切ることが好ましい。つまり、仕切部材31は、図1A及びBに示すように、第1空間22aに対応する第1成形体部分20aの長さが第2空間22bに対応する第2成形体部分20bの長さが等しくなるように、又は、図3に示すように、第1成形体部分20aの長さが第2成形体部分20bの長さよりも短くなるように設けることが好ましい。また、仕切部材31は、未架橋ゴム成形体20に損傷を与えないようにする観点から、未架橋ゴム成形体20に非接触となるように、したがって、第1空間22aと第2空間22bとが連通するように設けることが好ましい。仕切部材31が平板状である場合、その平板状の仕切部材31の側端と未架橋ゴム成形体20との間のクリアランスは、例えば1mm以上5mm以下である。
【0015】
第2ステップでは、図4A及びBに示すように、第2空間22b内に膨張部材32を配置し、図5A及びBに示すように、その膨張部材32を膨張させ、膨張部材32で第2成形体部分20bをベルト型10側に押圧する。
【0016】
膨張部材32は、特に限定されるものではないが、ゴム製の風船部材で構成されていることが好ましい。ベルト型10への膨張部材32の挿入は、ベルト型10に未架橋ゴム成形体20及び仕切部材31を挿入した後、ベルト型10の内側に配置された未架橋ゴム成形体20の内側の空間における仕切部材31で仕切られた第2空間22bに挿入することにより行うことが好ましい。
【0017】
膨張部材32は、第2空間22b内で膨張すると、第2空間22bを占め、第2成形体部分20bの内側に接触してベルト型10側に押圧する。これにより、第2成形体部分20bは、ベルト型10に密接し、それらの間のクリアランスが縮小乃至消失する。一方、第1空間22aでは、ベルト型10と第1成形体部分20aとの間のクリアランスが拡大するとともに、撓み部21が両側から引っ張られて外向きに膨出して弾性復帰する。その結果、撓み部21であった部分が、ベルト型10の内周に沿うように設けられることとなり、ベルト型10の内周の全周に沿って未架橋ゴム成形体20が配置される。
【0018】
ところで、筒状のベルト型の内側に筒状の未架橋スラブを配置するとき、ベルト型の内周長が未架橋スラブの外周長よりも十分に長い場合には、ベルト型に未架橋スラブを挿入するとき、未架橋スラブを内向きに撓ませて断面ハート形に形成すれば、その撓みが弾性復帰して未架橋スラブがベルト型の内周の全周に沿って配置される。このとき、ベルト型の内周長と未架橋スラブの外周長との周長差が小さい場合には、未架橋スラブを断面ハート形に形成してベルト型に挿入しても、その撓みが十分に弾性復帰せず、未架橋スラブがベルト型の内周に沿って配置されない部分が生じるという問題がある。
【0019】
しかしながら、このように実施形態に係る伝動ベルトの製造方法によれば、筒状のベルト型10の内側に、ベルト製造用の筒状の未架橋ゴム成形体20を、内向きに撓んだ撓み部21を有する状態で配置し、そして、その未架橋ゴム成形体20の内側の空間を、撓み部21を含む第1成形体部分20aに対応する第1空間22aと、それ以外の第2成形体部分20bに対応する第2空間22bとに仕切り、第2空間22b内において膨張部材32を膨張させ、その膨張部材32で第2成形体部分20bをベルト型10側に押圧することにより、ベルト型10の内周長と未架橋ゴム成形体20の外周長との周長差が小さい場合でも、撓み部21を弾性復帰させ、ベルト型10の内周の全周に沿って未架橋ゴム成形体20を配置させることができる。
【0020】
また、ベルト型10の内周長と未架橋ゴム成形体20の外周長との周長差が小さい場合に、撓み部21の弾性復帰が阻害されることから、このような作用効果は、ベルト型10の内周長と未架橋ゴム成形体20の外周長との周長差が、未架橋ゴム成形体20の外周長の0.5%以下の場合に特に顕著に得ることができる。
【0021】
さらに、未架橋ゴム成形体20の剛性が高い場合に、撓み部21の弾性復帰が阻害されることから、このような作用効果は、未架橋ゴム成形体20が、未架橋ゴム組成物で形成された円筒状の成形体本体に、アラミド繊維の心線が軸方向にピッチを有する螺旋を形成して延びるように配されて埋設された未架橋スラブである場合に特に顕著に得ることができる。
【0022】
なお、実施形態に係る伝動ベルトの製造方法では、続いて、膨張部材32を収縮させて仕切部材31とともにベルト型10から抜き取った後、ベルト型10の内側に設けた未架橋ゴム成形体20を含む未架橋スラブに対し、加熱及びベルト型10側への押圧を行うことにより、未架橋ゴム組成物を架橋させるとともに、それと心線や補強布とを複合化させて円筒状のベルトスラブを成型し、それを所定幅に輪切りすることにより伝動ベルトを得る。
【0023】
以下、実施形態に係る伝動ベルトの製造方法による平ベルト及びVリブドベルトのそれぞれの製造方法について具体的に説明する。
【0024】
(平ベルトの製造方法)
図6は、平ベルトBを示す。平ベルトBは、厚さ方向の内周側に設けられた圧縮ゴム層41と、外周側に設けられた伸張ゴム層42と、それらの圧縮ゴム層41及び伸張ゴム層42間に設けられた接着ゴム層43とを含むゴム製のベルト本体40を備える。接着ゴム層43の厚さ方向の中間部には心線44が埋設されている。心線44は、接着ゴム層43内において、その幅方向にピッチを有する螺旋を形成して延びるように配されている。
【0025】
圧縮ゴム層41、伸張ゴム層42、及び接着ゴム層43は、ゴム成分に各種の配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物が加熱及び加圧されて架橋したゴム組成物で形成されている。
【0026】
ゴム成分としては、例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマー(EPDMやEPR)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられる。ゴム成分は、これらのうち1種又は2種以上をブレンドしたものを含むことが好ましい。配合剤としては、カーボンブラックなどの補強材、充填材、可塑剤、加工助剤、架橋剤、共架橋剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤等が挙げられる。心線44は、例えば、ポリエステル繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維等の撚糸で構成されている。心線44には、ベルト本体40の接着ゴム層43への接着性を付与するために接着処理が施されている。
【0027】
平ベルトBの製造工程は、部材準備工程、成形工程、架橋工程、及び仕上工程で構成されている。
【0028】
<部材準備工程>
部材準備工程では、圧縮ゴム層41となる圧縮ゴムシート41’、伸張ゴム層42となる伸張ゴムシート42’、接着ゴム層43となる接着ゴムシート43’、及び心線44’を作製する。
【0029】
ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を用い、ゴム成分と配合剤とを混練した後、得られた未架橋ゴム組成物をカレンダー成形等によってシート状に成形して圧縮ゴムシート41’、伸張ゴムシート42’、及び接着ゴムシート43’を作製する。
【0030】
また、心線44を構成する撚糸に、RFL水溶液に浸漬して加熱する接着処理、及び/又は、ゴム糊に浸漬して乾燥させる接着処理を施す。なお、これらの接着処理の前に、エポキシ樹脂溶液又はイソシアネート樹脂溶液に浸漬して加熱する下地処理を施してもよい。
【0031】
<成形工程>
成形工程では、まず、成形機(不図示)に、軸方向が水平方向となるように円筒状の成形マンドレル51を回転可能に軸支し、図7Aに示すように、成形マンドレル51上に伸張ゴムシート42’及び接着ゴムシート43’を順に巻き付けて積層する。
【0032】
次いで、図7Bに示すように、接着ゴムシート43’上に心線44’を螺旋状に巻き付け、その上に更に別の接着ゴムシート43’を巻き付けて積層し、その上からローラー52で押圧する。このとき、心線44’間にゴムが流動して心線44’が一対の接着ゴムシート43’間に埋設されることとなる。
【0033】
そして、図7Cに示すように、接着ゴムシート43’上に、圧縮ゴムシート41’を巻き付けて未架橋スラブS’を成形する。このようにして得られる未架橋スラブS’は、外周面が平滑面である。
【0034】
なお、圧縮ゴムシート41’、伸張ゴムシート42’、及び接着ゴムシート43’は、超音波カッターやエアはさみ等でカットした後に両端部をラップジョイントで接合する。
【0035】
<架橋工程>
図8A及びBは、架橋工程において用いる架橋装置60を示す。架橋装置60は、基台61と、その上に立設された円柱状の膨張ドラム62と、その外側に設けられた円筒状のベルト型10とを備える。
【0036】
膨張ドラム62は、中空円柱状に形成されたドラム本体62aと、その外周に外嵌めされた円筒状のゴム製の膨張スリーブ62bとを有する。ドラム本体62aの外周部には、各々、内部に連通した多数の通気孔62cが形成されている。膨張スリーブ62bの両端部は、それぞれドラム本体62aとの間で固定リング63,64によって封止されている。架橋装置60には、ドラム本体62aの内部に高圧空気を導入して加圧する加圧手段(不図示)が設けられており、この加圧手段によりドラム本体62aの内部に高圧空気が導入されると、高圧空気が通気孔62cを通ってドラム本体62aと膨張スリーブ62bとの間に入って膨張スリーブ62bを径方向外向きに膨張させるように構成されている。
【0037】
ベルト型10は基台61に脱着可能に構成されている。基台61に取り付けられたベルト型10は、膨張ドラム62との間に間隔をおいて同心状に設けられる。ベルト型10は、内周面が平滑面に形成されている。架橋装置60には、ベルト型10の加熱手段及び冷却手段(いずれも不図示)が設けられており、これらの加熱手段及び冷却手段によりベルト型10の温度制御が可能となるように構成されている。
【0038】
架橋工程では、成形マンドレル51から未架橋スラブS’を抜き取り、この未架橋スラブS’を、架橋装置60における基台61から取り外したベルト型10の内周の全周に沿うように配置する。このとき、未架橋スラブS’を未架橋ゴム成形体20として、図1A及びB〜図5A及びBに示すように、ベルト型10の内側に、未架橋ゴム成形体20を、内向きに撓んだ撓み部21を有する状態で配置するとともに、未架橋ゴム成形体20の内側の空間を、未架橋ゴム成形体20における撓み部21を含む第1成形体部分20aに対応する第1空間22aと、第1成形体部分20a以外の第2成形体部分20bに対応する第2空間22bとに仕切り、第2空間22b内において膨張部材32を膨張させ、膨張部材32で第2成形体部分20bをベルト型10側に押圧し、ベルト型10の内周の全周に沿って未架橋ゴム成形体20を配置させる。
【0039】
次いで、膨張部材32を収縮させて仕切部材31とともにベルト型10から抜き取った後、図9Aに示すように、未架橋スラブS’を設けたベルト型10を、膨張ドラム62を覆うように配置して基台61に取り付ける。
【0040】
そして、図9Bに示すように、加熱手段によりベルト型10を昇温させるとともに、加圧手段により膨張ドラム62のドラム本体62aの内部に高圧空気を導入して膨張スリーブ62bを径方向外向きに膨張させ、その状態を所定時間保持する。このとき、未架橋スラブS’は、ベルト型10で加熱されるとともに、膨張スリーブ62bでベルト型10側に押圧される。未架橋スラブS’に含まれる圧縮ゴムシート41’、伸張ゴムシート42’、及び接着ゴムシート43’は、それらのゴム成分が架橋して一体化し、それにより、複数の平ベルトBのベルト本体40の連結体を形成し、また、それらのゴム成分が心線44’と接着して複合化し、最終的に、図9Cに示すように、円筒状のベルトスラブSが成型される。
【0041】
<仕上工程>
仕上工程では、加圧手段によるドラム本体62aの内部の加圧を解除するとともに、冷却手段によりベルト型10を冷却した後、基台61からベルト型10を取り外し、ベルト型10から、その内側に成型されたベルトスラブSを取り出す。そして、ベルト型10から取り出したベルトスラブSを、所定幅に輪切りし、表裏を裏返すことにより平ベルトBを得る。
【0042】
(Vリブドベルトの製造方法)
図10は、VリブドベルトBを示す。VリブドベルトBは、平ベルトBと同様、圧縮ゴム層41、伸張ゴム層42、及び接着ゴム層43を含むゴム製のベルト本体40を備える。ベルト本体40の接着ゴム層43の厚さ方向の中間部に心線44が埋設されている。圧縮ゴム層41には、各々、長さ方向に延びる突条で構成された複数のVリブ45が設けられている。圧縮ゴム層41、伸張ゴム層42、及び接着ゴム層43を形成するゴム組成物は、平ベルトBと同様であるが、圧縮ゴム層41を形成するゴム組成物には、短繊維、フッ素樹脂粉、ポリエチレン樹脂粉、中空粒子、発泡剤等の表面性状改質材が配合されていてもよい。心線44を構成する撚糸は、平ベルトBと同様である。
【0043】
VリブドベルトBの製造工程は、部材準備工程、成形工程、架橋工程、及び仕上工程で構成されている。
【0044】
<部材準備工程>
部材準備工程では、圧縮ゴム層41となる圧縮ゴムシート41’、伸張ゴム層42となる伸張ゴムシート42’、接着ゴム層43となる接着ゴムシート43’、及び心線44’を作製する。
【0045】
押出成形機を用い、ゴム成分と配合剤とを混練するとともに、一方側の面に、各々、押出方向に直線状に延びる突条で構成された複数のVリブ形成部45’が並行に連設された圧縮ゴムシート41’を押出成形で作製する。なお、このような構成の圧縮ゴムシート41’の作製方法は、特許文献1及び2にも開示されている。
【0046】
また、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を用い、ゴム成分と配合剤とを混練した後、得られた未架橋ゴム組成物をカレンダー成形等によってシート状に成形して伸張ゴムシート42’及び接着ゴムシート43’を作製する。
【0047】
さらに、心線44を構成する撚糸に、RFL水溶液に浸漬して加熱する接着処理、及び/又は、ゴム糊に浸漬して乾燥させる接着処理を施す。なお、これらの接着処理の前に、エポキシ樹脂溶液又はイソシアネート樹脂溶液に浸漬して加熱する下地処理を施してもよい。
【0048】
<成形工程>
成形工程では、まず、成形機(不図示)に、軸方向が水平方向となるように円筒状の成形マンドレル51を回転可能に軸支し、平ベルトBの場合と同様、成形マンドレル51上に伸張ゴムシート42’及び接着ゴムシート43’を順に巻き付けて積層する。
【0049】
次いで、接着ゴムシート43’上に心線44’を螺旋状に巻き付け、その上に更に別の接着ゴムシート43’を巻き付けて積層し、その上からローラーで押圧する。このとき、心線44’間にゴムが流動して心線44’が一対の接着ゴムシート43’間に埋設されることとなる。
【0050】
そして、図11に示すように、接着ゴムシート43’上に、Vリブ形成部45’が外側となって周方向に延びるように圧縮ゴムシート41’を巻き付けて未架橋スラブS’を成形する。このようにして得られる未架橋スラブS’は、外周面に、各々、周方向に延びる突条で構成された複数のVリブ形成部45’が並行に連設されている。
【0051】
なお、圧縮ゴムシート41’、伸張ゴムシート42’、及び接着ゴムシート43’は、超音波カッターやエアはさみ等でカットした後に両端部をラップジョイントで接合する。
【0052】
<架橋工程>
VリブドベルトBの製造で用いる架橋装置60は、ベルト型10の内周面に、各々、周方向に延びる複数のVリブ形成溝11が軸方向に連設されており、この点を除いて、平ベルトBの製造で用いるものと同様の構成を有する。
【0053】
架橋工程では、成形マンドレル51から未架橋スラブS’を抜き取り、この未架橋スラブS’を、架橋装置60における基台61から取り外したベルト型10の内周の全周に沿うように配置する。このとき、未架橋スラブS’を未架橋ゴム成形体20として、図1A及びB〜図5A及びBに示すように、ベルト型10の内側に、未架橋ゴム成形体20を、内向きに撓んだ撓み部21を有する状態で配置するとともに、未架橋ゴム成形体20の内側の空間を、未架橋ゴム成形体20における撓み部21を含む第1成形体部分20aに対応する第1空間22aと、第1成形体部分20a以外の第2成形体部分20bに対応する第2空間22bとに仕切り、第2空間22b内において膨張部材32を膨張させ、膨張部材32で第2成形体部分20bをベルト型10側に押圧し、ベルト型10の内周の全周に沿って未架橋ゴム成形体20を配置させる。また、未架橋スラブS’の外周面の複数のVリブ形成部45’のそれぞれを、ベルト型10の内周面の対応するVリブ形成溝11に進入乃至嵌入させる。
【0054】
次いで、膨張部材32を収縮させて仕切部材31とともにベルト型10から抜き取った後、図12Aに示すように、未架橋スラブS’を設けたベルト型10を、膨張ドラム62を覆うように配置して基台61に取り付ける。
【0055】
そして、図12Bに示すように、加熱手段によりベルト型10を昇温させるとともに、加圧手段により膨張ドラム62のドラム本体62aの内部に高圧空気を導入して膨張スリーブ62bを径方向外向きに膨張させ、その状態を所定時間保持する。このとき、未架橋スラブS’は、ベルト型10で加熱されるとともに、膨張スリーブ62bでベルト型10側に押圧される。未架橋スラブS’に含まれる圧縮ゴムシート41’、伸張ゴムシート42’、及び接着ゴムシート43’は、それらのゴム成分が架橋して一体化し、それにより、複数のVリブドベルトBのベルト本体40の連結体を形成し、また、それらのゴム成分が心線44’と接着して複合化し、最終的に、図12Cに示すように、円筒状のベルトスラブSが成型される。
【0056】
<仕上工程>
仕上工程では、加圧手段によるドラム本体62aの内部の加圧を解除するとともに、冷却手段によりベルト型10を冷却した後、基台61からベルト型10を取り外し、ベルト型10から、その内側に成型されたベルトスラブSを取り出す。そして、ベルト型10から取り出したベルトスラブSを、所定数のVリブ形成部45’を単位に輪切りし、表裏を裏返すことによりVリブドベルトBを得る。
【0057】
なお、図13Aに示すように、圧縮ゴムシート41’上に、Vリブ形成部45’の表面に沿うように、接着処理を施した補強布46’を巻き付けて未架橋スラブS’を成形すれば、図13Bに示すように、Vリブ45表面が補強布46で被覆されたVリブドベルトBを製造することができる。
【0058】
また、図14Aに示すように、圧縮ゴムシート41’上に、Vリブ形成部45’の表面に沿うように、圧縮ゴムシート41’とは異なる未架橋ゴム組成物で形成された表面ゴムシート47’を巻き付けて未架橋スラブS’を成形すれば、図14Bに示すように、Vリブ45表面が表面ゴム層47で被覆されたVリブドベルトBを製造することができる。
【0059】
また、次のようにベルト型10の内側において未架橋スラブS’を成形してもよい。まず、圧縮ゴムシート41’から、外周面に、各々、周方向に延びる突条で構成された複数のVリブ形成部45’が並行に連設されたスラブ構成部材としてのリブ付き円筒ゴム71を作製する。また、それとは別に、伸張ゴムシート42’、接着ゴムシート43’、心線44’、及び別の接着ゴムシート43’を順に積層して一体化させた抗張体円筒ゴム72を作製する。そして、図15Aに示すように、ベルト型10の内側に、まずリブ付き円筒ゴム71を配置し、その後、図15Bに示すように、そのリブ付き円筒ゴム71の内側に、抗張体円筒ゴム72を配置して未架橋スラブS’を成形する。
【0060】
このとき、ベルト型10の内側にリブ付き円筒ゴム71を配置する際、リブ付き円筒ゴム71を未架橋ゴム成形体20として、図1A及びB〜図5A及びBに示すように、ベルト型10の内側に、未架橋ゴム成形体20を、内向きに撓んだ撓み部21を有する状態で配置するとともに、未架橋ゴム成形体20の内側の空間を、未架橋ゴム成形体20における撓み部21を含む第1成形体部分20aに対応する第1空間22aと、第1成形体部分20a以外の第2成形体部分20bに対応する第2空間22bとに仕切り、第2空間22b内において膨張部材32を膨張させ、膨張部材32で第2成形体部分20bをベルト型10側に押圧し、ベルト型10の内周の全周に沿って未架橋ゴム成形体20を配置させる。
【0061】
また、この実施形態に係る伝動ベルトの製造方法を用いたVリブドベルトBの製造方法と同様の方法により、図16Aに示すようなローエッジVベルトBや図16Bに示すようなプーリ接触表面が補強布46で被覆されたVベルトBを製造することもできる。さらに、この実施形態に係る伝動ベルトの製造方法を用いて歯付ベルトを製造することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、伝動ベルトの製造方法の技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0063】
10 ベルト型
20 未架橋ゴム成形体
20a 第1成形体部分
20b 第2成形体部分
21 撓み部
22a 第1空間
22b 第2空間
31 仕切部材
32 膨張部材
44,44’ 心線
71 リブ付き円筒ゴム(未架橋ゴム成形体)
B 平ベルト,Vリブドベルト,ローエッジVベルト,Vベルト(伝動ベルト)
S’ 未架橋スラブ(未架橋ゴム成形体)
S ベルトスラブ
【要約】
ベルト型10の内側に、ベルト製造用の未架橋ゴム成形体20を内向きに撓んだ撓み部21を有する状態で配置するとともに、その内側の空間を撓み部を含む第1成形体部分20aに対応する第1空間22aと、それ以外の第2成形体部分20bに対応する第2空間22bとに仕切り、第2空間22b内において膨張部材32を膨張させ、膨張部材32で第2成形体部分20bをベルト型10側に押圧する。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B