特許第6669434号(P6669434)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6669434
(24)【登録日】2020年3月2日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20200309BHJP
【FI】
   H02M7/48 E
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-27910(P2015-27910)
(22)【出願日】2015年2月16日
(65)【公開番号】特開2016-152657(P2016-152657A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2018年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100139066
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】村上 達也
(72)【発明者】
【氏名】林 裕二
(72)【発明者】
【氏名】吉川 覚
(72)【発明者】
【氏名】高田 智
(72)【発明者】
【氏名】深田 雅一
【審査官】 白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04608499(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M7/42〜7/5395
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給源(200)から供給される直流電力を、スイッチング素子(111、112、113、114)の動作によって交流電力に変換し、当該交流電力を負荷に向けて出力するインバータ(100)と、
前記インバータの出力電流を計測する電流計測部(120)と、
前記スイッチング素子の動作を制御することにより、前記インバータの出力電圧波形を変化させる制御部(130)と、を備え、
前記制御部は、計測された前記出力電流に基づいて、前記出力電圧波形を正弦波から台形波となるように変化させるものであり、
前記出力電流のピーク値について、第1閾値(ITH1)と、前記第1閾値よりも小さな第2閾値(ITH2)とが予め定められており、
前記制御部は、
前記ピーク値が前記第1閾値を超えた場合に、正弦波から台形波となるように前記出力電圧波形を変化させた後、
前記ピーク値が前記第2閾値以下である場合に、
前記ピーク値が前記第2閾値よりも大きく且つ前記第1閾値以下となるように、前記出力電圧波形の立ち上がり時における傾きを更に変化させることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
電力供給源(200)から供給される直流電力を、スイッチング素子(111、112、113、114)の動作によって交流電力に変換し、当該交流電力を負荷に向けて出力するインバータ(100)と、
前記インバータの出力電流を計測する電流計測部(120)と、
前記スイッチング素子の動作を制御することにより、前記インバータの出力電圧波形を変化させる制御部(130)と、を備え、
前記制御部は、計測された前記出力電流に基づいて、前記出力電圧波形を変化させるものであり、
前記制御部は、
前記出力電流のピーク値が予め定められた第1閾値(ITH1)を超えた場合に、前記ピーク値が前記第1閾値を超えないように前記出力電圧波形を変化させることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
前記第1閾値に加えて、前記第1閾値よりも小さな第2閾値(ITH2)が予め定められており、
前記制御部は、
前記出力電流のピーク値が、前記第2閾値よりも大きく且つ前記第1閾値以下となるように、前記出力電圧波形を変化させることを特徴とする、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記出力電流が前記スイッチング素子の最大定格電流を超えることのないように、前記第1閾値が定められていることを特徴とする、請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
電力供給源(200)から供給される直流電力を、スイッチング素子(111、112、113、114)の動作によって交流電力に変換し、当該交流電力を負荷に向けて出力するインバータ(100)と、
前記インバータの出力電流を計測する電流計測部(120)と、
前記スイッチング素子の動作を制御することにより、前記インバータの出力電圧波形を変化させる制御部(130)と、を備え、
前記制御部は、計測された前記出力電流に基づいて、前記出力電圧波形を変化させるものであり、
前記出力電流の、予め定められた目標電流波形(IDS)からの乖離量(ΔI)が、常に所定の第3閾値(ITH3)以下となるように、前記出力電圧波形を変化させることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給源から供給される直流電力を、交流電力に変換して負荷に供給する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池、燃料電池、蓄電池等の電力供給源から得られる電力は、そのまま負荷に対して直接供給されることは稀であり、必要に応じて昇圧され、直流から交流への電力変換がなされた後に負荷に供給される。
【0003】
このような電力変換を行うための電力変換装置としては、これまでに種々の態様のものが提案されている。下記特許文献1に記載の電力変換装置は、電力供給源(発電手段)から供給された直流電力を昇圧するためのコンバータと、直流電力を交流電力に変換するためのインバータとを備えている。
【0004】
インバータは、複数のスイッチング素子を備えており、当該スイッチング素子の開閉を所定のデューティで切り替えることにより、直流電力から交流電力への変換を行うものである。下記特許文献1に記載の電力変換装置では、交流電力として出力される電圧の波形が、正弦波ではなく台形波となるようにスイッチング素子を動作させている。これにより、スイッチング損失を低減し、電力変換装置における変換効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−82317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電力変換装置から交流電力が供給される負荷の種類によっては、当該負荷に供給される電圧と電流との関係が線形とはならない場合がある。例えば、負荷の電力入力部にコンデンサインプット型の整流回路が設けられているような場合には、電力変換装置からの出力電圧の波形が正弦波であったとしても、電力変換装置からの出力電流(つまり、負荷への入力電流)の波形は正弦波とならない。
【0007】
コンデンサインプット型の整流回路では、複数のダイオードからなるダイオードブリッジにより、入力された交流電力が直流電力に変換される。ダイオードブリッジに入力される電力の電圧波形が正弦波である場合には、ダイオードに順方向電圧がかかった場合にのみ電流が流れることに起因して、電力変換装置からの出力電流の波形のピークが大きくなってしまう傾向がある。このため、スイッチング素子を流れる電流が最大定格電流を超えてしまうことが懸念される。
【0008】
当該ピークを抑制することにのみ鑑みれば、電力変換装置からの出力電圧の波形を正弦波ではなく台形波とすることが望ましい。しかしながら、出力電圧の波形が台形波であるような交流電力には高周波の成分が含まれるので、電力変換装置からの出力電流において所謂リプルが発生しやすくなる。その結果、リプルによるノイズが負荷の動作に影響を及ぼしてしまう可能性がある。かかるノイズを低減することにのみ鑑みれば、電力変換装置からの出力電圧の波形は正弦波である方が望ましい。
【0009】
このように、非線形の負荷が接続される電力変換装置においては、出力電流の波形のピークを抑制することと、出力電流のノイズを抑制することとを両立させる必要がある。上記特許文献1は、出力電流を台形波にすることのみを提案するものであって、上記二つの課題を両立させることについては何ら考慮がなされていない。
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、出力電流の波形のピークを抑制しながら、更に出力電流のノイズをも抑制することのできる電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明に係る電力変換装置は、電力供給源から供給される直流電力を、スイッチング素子の動作によって交流電力に変換し、当該交流電力を負荷に向けて出力するインバータと、インバータの出力電流を計測する電流計測部と、スイッチング素子の動作を制御することにより、インバータの出力電圧波形を変化させる制御部と、を備え、制御部は、計測された出力電流に基づいて、出力電圧波形を正弦波から台形波となるように変化させるものであり、出力電流のピーク値について、第1閾値と、第1閾値よりも小さな第2閾値とが予め定められており、制御部は、ピーク値が第1閾値を超えた場合に、正弦波から台形波となるように出力電圧波形を変化させた後、ピーク値が第2閾値以下である場合に、ピーク値が第2閾値よりも大きく且つ第1閾値以下となるように、出力電圧波形の立ち上がり時における傾きを更に変化させることを特徴とする。
【0012】
このような構成の電力変換装置では、計測された出力電流に基づいて出力電圧波形を変化させるよう、制御部によるスイッチング素子の動作の制御が実行される。例えば、計測された出力電流のピークを所定値以下に抑制し得る範囲で、可能な限りノイズが抑制されるような出力電圧波形に適宜変更する制御(例えば、台形波である出力電圧波形をより正弦波に近づけるような制御)によって、出力電流の波形のピークの抑制と、出力電流のノイズの抑制とを両立させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、出力電流の波形のピークを抑制しながら、更に出力電流のノイズをも抑制することのできる電力変換装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る電力変換装置の構成を模式的に示す図である。
図2】電力変換装置の出力電流波形を示すグラフである。
図3】電力変換装置の出力電圧波形を示すグラフである。
図4】電力変換装置の出力電流波形を示すグラフである。
図5】電力変換装置の出力電流波形を示すグラフである。
図6】電力変換装置で行われる処理の流れを示すフローチャートである。
図7】電力変換装置の出力電圧波形を示すグラフである。
図8】電力変換装置の出力電圧波形を示すグラフである。
図9】出力電流の乖離量を説明するための図である。
図10】電力変換装置で行われる処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0016】
図1を参照しながら、本実施形態に係る電力変換装置10の構成について説明する。電力変換装置10は、電源装置200(電力供給源)から供給される直流電力を、交流電力に変換して負荷300に向けて出力するものである。
【0017】
電源装置200は、直流電力を発生させ外部に供給する発電装置であり、具体的には太陽電池装置である。ただし、本発明を実施するにあたっては、電源装置の具体的な態様は特に限定されない。電源装置200は、風力発電装置や燃料電池装置であってもよい。また、発電によって直流電力を発生させるものに換えて、例えば蓄電池のように、予め蓄えられた電力を外部に供給するような装置であってもよい。
【0018】
負荷300は、交流電力の供給を受けて動作する機器である。負荷300は、電力入力端子331、332と、ダイオード311、312、313、314と、コンデンサ316と、抵抗317とを備えている。
【0019】
電力入力端子331、332は、電力変換装置10からの交流電力が入力される一対の端子である。4つのダイオード311、312、313、314及びコンデンサ316は、コンデンサインプット型整流回路を形成している。電力入力端子331とコンデンサインプット型整流回路との間には、平滑リアクトル315が配置されている。
【0020】
電力入力端子331、332に交流電力が入力されると、当該交流電力はコンデンサインプット型整流回路によって直流電力に変換され、抵抗317に供給され消費される。尚、抵抗317は、当該整流回路によって直流電力に変換された電力により動作する部分の全体を、仮想的に単一の電気抵抗として示したものである。
【0021】
電源装置200と負荷300との間に配置された電力変換装置10は、インバータ100と、電圧計110と、電流計120と、制御部130とを備えている。
【0022】
インバータ100は、直流電力を交流電力に変換する部分である。インバータ100は、電力入力端子131、132と、スイッチング素子111、112、113、114と、電力出力端子141、142とを備えている。
【0023】
電力入力端子131、132は、電源装置200からの直流電力が入力される一対の端子である。電力入力端子131と電力入力端子132との間には、平滑用のコンデンサ115が接続されている。
【0024】
スイッチング素子111、112、113、114は、いずれも同一のIGBTであり、全体でフルブリッジインバータ回路を構成している。後述の制御部130から送信される制御信号に基づいて、スイッチング素子111、112、113、114の開閉動作が行われ、これにより直流電力から交流電力への変換がなされる。
【0025】
電力出力端子141、142は、上記のフルブリッジインバータ回路で生成された交流電力を、外部に(すなわち負荷300に)出力するための一対の端子である。フルブリッジインバータ回路と電力出力端子141、142との間には、平滑用のリアクトル116、117及びコンデンサ118が配置されている。
【0026】
電圧計110は、電力出力端子141と電力出力端子142との間の電圧、すなわち、電力変換装置10から出力される交流電力の電圧(以下、「出力電圧」とも称する)を計測するものである。電圧計110により計測された出力電圧の値は、常に制御部130に入力される。
【0027】
電流計120は、電力出力端子141から出力される電流、すなわち、電力変換装置10から出力される交流電力の電流(以下、「出力電流」とも称する)を計測するものである。電流計120により計測された出力電流の値は、常に制御部130に入力される。
【0028】
制御部130は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェース等を備えたコンピュータシステムであり、電力変換装置10の全体の動作を制御するものである。既に述べたように、制御部130は、スイッチング素子111、112、113、114のそれぞれの開閉動作を制御するための制御信号をインバータ100に送信する。これにより、インバータ100における電力変換動作が制御され、出力電圧の波形が調整される。
【0029】
ところで、負荷300が備えるコンデンサインプット型整流回路は、所謂「非線形」の回路として知られている。つまり、コンデンサインプット型整流回路においては、当該回路に入力される電圧と、それに伴い流れる電流との関係が線形とはならない。
【0030】
図2には、出力電圧(不図示)が正弦波となっているときにおける、出力電流の波形の一例が示されている。同図に示されるように、出力電流の波形は正弦波とはなっておらず、時刻t10までの期間、時刻t20から時刻t30までの期間、及び、時刻t40以降の期間において0となっている。これは、コンデンサ316の電圧に起因して、ダイオード311等において一時的に逆方向の電圧がかかってしまうことに起因する。
【0031】
正弦波である出力電圧が次第に大きくなって行くと、ダイオード311等にかかる電圧がコンデンサ316の電圧を超えた時点(時刻t10、t30)で出力電流の絶対値が増加し始める。
【0032】
尚、出力電流が流れていない期間においては、インバータ100から負荷300に供給された電力のエネルギーが蓄積されて行く。出力電流が流れ始めると、当該エネルギーが一気に解放され、出力電流は急激に増加する。その結果、出力電流のピーク値IPは比較的大きな値となってしまう。ピーク値IPの増加は、スイッチング素子111等やダイオード311等の破損を引き起こしてしまう可能性があるので好ましくない。特に、負荷300が最大定格電流の低い電子部品を備えているような場合には、そのような可能性が大きくなる。
【0033】
そこで、本実施形態に係る電力変換装置10では、電流計120による出力電流の計測値に基づいて、出力電圧の波形を適宜変更するように構成されている。具体的には、出力電圧の波形を予め複数用意しておき、これらのうちで適切な波形を選択するように構成されている。
【0034】
本実施形態では、図3に示される4つの波形が、出力電圧の波形として予め用意されている。図3(A)に示されるのは、通常入力される正弦波である。同図においては、正弦波の振幅、すなわち電圧の最大値が「電圧V0」として示されている。
【0035】
図3(B)に示される波形(以下、「第1波形」と表記する)、図3(C)に示される波形(以下、「第2波形」と表記する)、及び、図3(D)に示される波形(以下、「第3波形」と表記する)は、いずれも台形波である。
【0036】
ただし、図3(B)の第1波形は、電圧の立ち上がり時、及び立ち下がり時の傾斜角(横軸である時間軸に対する角度)がいずれも90度の波形、すなわち矩形波となっている。図3(C)の第2波形では、電圧の立ち上がり時、及び立ち下がり時の傾斜角が第1波形よりも緩やかとなっている。図3(D)の第3波形では、電圧の立ち上がり時、及び立ち下がり時の傾斜角が第2波形よりも更に緩やかとなっている。
【0037】
第1波形、第2波形、第3波形のそれぞれの周期は、いずれも第1波形の周期と同じである。また、第1波形、第2波形、第3波形のそれぞれの振幅は、互いに同一の電圧V1となっている。尚、電圧V1の値は電圧V0の値よりも小さいのであるが、第1波形、第2波形、第3波形のそれぞれにおける電圧の実効値は、いずれも第1波形における電圧の実効値と概ね等しい。
【0038】
出力電圧の波形を、これらの波形のいずれかに切り替えることの影響について、図4を参照しながら説明する。図4(A)は、出力電圧が図3(A)の正弦波となっているときにおける、出力電流の波形を示している。図4(B)は、出力電圧が図3(B)の第1波形となっているときにおける、出力電流の波形を示している。図4(C)は、出力電圧が図3(C)の第2波形となっているときにおける、出力電流の波形を示している。
【0039】
図4(A)に示されるように、出力電圧が正弦波であるときには、出力電流が0となっている期間(時刻t21から時刻t31までの期間)が最も長くなっており、出力電流のピーク値IPは最も大きな値(I0)となっている。
【0040】
図4(B)に示されるように、出力電圧が第1波形(矩形波)であるときには、出力電流が0となっている期間はほぼ存在しない。また、出力電流のピーク値IPは最も小さな値(I1)となっている。
【0041】
図4(C)に示されるように、出力電圧が第2波形であるときには、出力電流が0となっている期間(時刻t23から時刻t33までの期間)が図4(A)の場合よりも短くなっている。また、出力電流のピーク値IPは、図4(A)の場合(I0)よりも小さく、図4(B)の場合(I1)よりも大きくなっている。
【0042】
図4には示されていないが、出力電圧が図3(D)の第3波形であるときには、出力電流のピーク値IPはI2よりも大きく、且つI0よりも小さな値となる。
【0043】
このように、出力電流のピーク値IPは、出力電圧が正弦波であるときに最も大きくなる。また、出力電圧を台形波にすると、電圧の立ち上がり時における傾きを大きくするほどピーク値IPは小さくなって行く。このため、ピーク値IPを抑制することにのみ鑑みれば、出力電圧の波形を台形波とし、電圧の立ち上がり時における傾きを可能な限り大きくすることが望ましい。
【0044】
しかしながら、出力電圧の波形が台形波であるような交流電力には高周波の成分が含まれるので、出力電流において所謂リプル(脈動)が発生しやすくなる。図4(A)に示されるように、出力電圧が正弦波であるときには、リプルはほぼ発生しない。一方、出力電圧が台形波になると、リプルが発生するようになる。図4(B)に示されるように、出力電圧が矩形波であるときにはリプルの大きさが最大となっている。
【0045】
つまり、出力電圧の波形を適宜選択することにより、出力電流のピーク値IPとリプルを変化させることができるのであるが、両者はトレードオフの関係となっている。電力変換装置10ではこの点に鑑みながら、状況に応じて出力電圧の波形を切り替えることとしている。
【0046】
図5に示されるように、本実施形態においては、ピーク値IPについての2つの閾値(第1閾値ITH1、第2閾値ITH2)が設定されている。第1閾値ITH1は、ピーク値IPの上限値として設定された閾値であって、スイッチング素子111等の最大定格電流よりも小さな値として設定されている。また、第2閾値ITH2は、ピーク値IPの下限値として設定された閾値であって、第1閾値ITH1よりも小さな値として設定された閾値である。
【0047】
第1閾値ITH1及び第2閾値ITH2により定められているピーク値IPの範囲は、スイッチング素子111等の破損を引き起こすことを確実に防止し、且つ、リプルが大きくなり過ぎることの無い範囲として設定されている。以下、ピーク値IPについての当該範囲のことを「適正範囲」とも表記する。本実施形態では、ピーク値IPが可能な限り適正範囲内に収まるように、出力電圧の波形の切り替えが行われる。
【0048】
電力変換装置10により行われる制御の具体的な内容について、図6を参照しながら説明する。図6に示される一連の処理は、電力変換装置10から負荷300への電力の供給が開始された直後において実行される。
【0049】
最初のステップS01では、出力電圧の波形が正弦波とされる。つまり、図3(A)に示された波形の出力電圧が負荷300へと入力される。
【0050】
ステップS01に続くステップS02では、電流計120により計測されたピーク値IPが、第1閾値ITH1よりも大きいか否かが判定される。ピーク値IPが第1閾値ITH1以下である場合には、出力電圧の切り換えによるピーク値IPの抑制は不要であるから、図6に示される一連の処理を終了する。以降は、出力電圧の波形が正弦波である状態が継続される。
【0051】
ステップS02において、ピーク値IPが第1閾値ITH1よりも大きい場合には、ステップS03に移行する。ステップS03では、出力電圧の波形が、正弦波から第1波形と切り替えられる。つまり、出力電圧の波形が図3(B)の第1波形となるように、スイッチング素子111等の開閉動作が制御部130によって切り替えられる。
【0052】
ステップS03に続くステップS04では、ピーク値IPが第1閾値ITH1よりも大きいか否かが再度判定される。ピーク値IPが第1閾値ITH1よりも大きい場合には、ステップS05に移行する。
【0053】
出力電圧の波形が第1波形に切り替えられた後においても、ピーク値IPが第1閾値ITH1よりも大きいということは、ピーク値IPを更に抑制して第1閾値ITH1以下に収めるのは不可能であるということである。従って、ステップS05に移行すると、制御部130は電力変換装置10のシャットダウンを行い、図6に示される一連の処理を終了する。
【0054】
ステップS04において、ピーク値IPが第1閾値ITH1以下である場合には、ステップS06に移行する。ステップS06では、ピーク値IPが第2閾値ITH2よりも大きいか否かが判定される。ピーク値IPが第2閾値ITH2よりも大きい場合には、ピーク値IPは適正範囲に収まっている。このため、出力電圧の更なる切り換えは不要であるから、図6に示される一連の処理を終了する。以降は、出力電圧の波形が第1波形である状態が継続される。
【0055】
ステップS06において、ピーク値IPが第2閾値ITH2以下である場合には、ステップS07に移行する。ステップS07では、出力電圧の波形が、第1波形から第2波形と切り替えられる。つまり、出力電圧の波形が図3(C)の第2波形となるように、スイッチング素子111等の開閉動作が制御部130によって切り替えられる。
【0056】
ステップS07に続くステップS08では、ピーク値IPが第1閾値ITH1よりも大きいか否かが再度判定される。ピーク値IPが第1閾値ITH1よりも大きい場合には、ステップS15に移行する。
【0057】
ステップS15に移行したということは、第1波形から第2波形に切り替えたことにより、ピーク値IPが大きくなり過ぎてしまったということである。このため、ステップS15では出力電圧の波形が第1波形に戻される。その後、図6に示される一連の処理を終了する。以降は、出力電圧の波形が第1波形である状態が継続される。
【0058】
ステップS08において、ピーク値IPが第1閾値ITH1以下である場合には、ステップS09に移行する。ステップS09では、ピーク値IPが第2閾値ITH2よりも大きいか否かが判定される。ピーク値IPが第2閾値ITH2よりも大きい場合には、ピーク値IPは適正範囲に収まっている。このため、出力電圧の更なる切り換えは不要であるから、図6に示される一連の処理を終了する。以降は、出力電圧の波形が第2波形である状態が継続される。
【0059】
ステップS09において、ピーク値IPが第2閾値ITH2以下である場合には、ステップS10に移行する。ステップS10では、出力電圧の波形が、第2波形から第3波形と切り替えられる。つまり、出力電圧の波形が図3(D)の第3波形となるように、スイッチング素子111等の開閉動作が制御部130によって切り替えられる。
【0060】
ステップS10に続くステップS11では、ピーク値IPが第1閾値ITH1よりも大きいか否かが再度判定される。ピーク値IPが第1閾値ITH1よりも大きい場合には、ステップS14に移行する。
【0061】
ステップS14に移行したということは、第2波形から第3波形に切り替えたことにより、ピーク値IPが大きくなり過ぎてしまったということである。このため、ステップS14では出力電圧の波形が第2波形に戻される。その後、図6に示される一連の処理を終了する。以降は、出力電圧の波形が第2波形である状態が継続される。
【0062】
ステップS11において、ピーク値IPが第1閾値ITH1以下である場合には、ステップS12に移行する。ステップS12では、ピーク値IPが第2閾値ITH2よりも大きいか否かが判定される。ピーク値IPが第2閾値ITH2よりも大きい場合には、ピーク値IPは適正範囲に収まっている。このため、出力電圧の更なる切り換えは不要であるから、図6に示される一連の処理を終了する。以降は、出力電圧の波形が第3波形である状態が継続される。
【0063】
ステップS12において、ピーク値IPが第2閾値ITH2以下である場合には、ステップS13に移行する。ステップS13に移行したということは、出力電圧の波形を図3に示されるいずれの波形に切り替えた場合でも、ピーク値IPが適正範囲とはならなかった(ただし、第1閾値ITH1より小さい)ということである。そこで、ステップS13では、出力電圧の波形が、第3波形から正弦波に戻される。つまり、出力電圧の波形が図3(A)の正弦波となるように、スイッチング素子111等の開閉動作が制御部130によって切り替えられる。その後、図6に示される一連の処理を終了する。以降は、出力電圧の波形が当初の正弦波である状態が継続される。
【0064】
以上のように、本実施形態に係る電力変換装置10では、電流計120により計測された出力電流に基づいて出力電圧の波形が切り換えられ、出力電流のピーク値IPを可能な限り適正範囲に収めるような制御が実行される。これにより、出力電流のピーク値IPを抑制することと、出力電流のノイズ(リプル)を抑制することとの両立が図られている。
【0065】
予め用意されている出力電圧の波形の種類としては、図3に示されたようなものに限られない。例えば、図7に示されているような出力電圧の波形が予め用意されており、これらの波形が適宜選択されるような態様であってもよい。
【0066】
図7の例では、図7(A)の正弦波、及び、図7(B)の第1波形は、図3(A)の正弦波、及び図3(B)の第1波形とそれぞれ同じである。
【0067】
一方、図7の例における第2波形は、図7(C)に示されているように、立ち上がり時においては、傾斜角90度で電圧V01まで電圧が上昇し、その後は電圧V1まで緩やかな傾斜角で上昇するような波形となっている。また、電圧V1からの立ち下り時においては、傾斜角90度で電圧(−V01)まで減少するような波形となっている。
【0068】
また、図7の例における第3波形は、図7(D)に示されているように、立ち上がり時においては、傾斜角90度で電圧V01まで電圧が上昇し、その後は電圧V1まで(第2波形よりも)更に緩やかな傾斜角で上昇するような波形となっている。また、電圧V1からの立ち下り時においては、傾斜角90度で電圧(−V01)まで減少するような波形となっている。
【0069】
このように、第1波形、第2波形、第3波形として、立ち上がり時の傾斜角(傾き)のみが互いに異なるような波形が用意されていた場合であっても、本発明の効果を奏することができる。尚、図7に示された正弦波、第1波形、第2波形、及び第3波形の中から適切なものを選択し、出力電圧の波形を切り替えるための処理については、図6を参照して説明した処理と同一である。従って、その具体的な説明を省略する。
【0070】
また、予め用意されている出力電圧の波形の形状としては、台形波に限られない。例えば、図8に示されているような出力電圧の波形が予め用意されており、これらの波形が適宜選択されるような態様であってもよい。
【0071】
図8の例では、図8(A)の正弦波は、図3(A)の正弦波と同じである。一方、図8の例における第1波形は、図8(B)に示されているように、図8(A)と同じ正弦波の波形の頂部を平坦とし、これにより出力電圧を電圧V10以下に制限したような波形となっている。尚、電圧V10は、正弦波の振幅である電圧V0よりも小さな電圧として予め設定されたものである。
【0072】
また、図8の例における第2波形は、図8(C)に示されているように、図8(A)と同じ正弦波の波形の頂部を平坦とし、これにより出力電圧を電圧V20以下に制限したような波形となっている。尚、電圧V20は、正弦波の振幅である電圧V0よりも小さく、且つ電圧V10よりも大きな電圧として予め設定されたものである。
【0073】
更に、図8の例における第3波形は、図8(D)に示されているように、図8(A)と同じ正弦波の波形の頂部を平坦とし、これにより出力電圧を電圧V30以下に制限したような波形となっている。尚、電圧V30は、正弦波の振幅である電圧V0よりも小さく、且つ電圧V20よりも大きな電圧として予め設定されたものである。
【0074】
このように、第1波形、第2波形、第3波形として、最大時における電圧(つまり振幅)が互いに異なるような波形が用意されていた場合であっても、本発明の効果を奏することができる。尚、図8に示された正弦波、第1波形、第2波形、及び第3波形の中から適切なものを選択し、出力電圧の波形を切り替えるための処理については、図6を参照して説明した処理と同一である。従って、その具体的な説明を省略する。
【0075】
以上の例では、計測された出力電流のピーク値IPに応じて出力電圧の波形を切り替えるような制御について説明した。しかしながら、本発明の実施態様としてはこのようなものに限られない。例えば、予め定められた目標電流波形からの乖離量に応じて、出力電圧の波形を切り替えるような態様であってもよい。
【0076】
目標電流波形、及び乖離量について、図9を参照しながら説明する。目標電流波形IDSは、仮に負荷300が線形の負荷であり、且つ当該負荷に正弦波の出力電圧が入力された場合における、出力電流の波形である。従って、目標電流波形IDSは正弦波となっている。このような目標電流波形IDSは、負荷300に本来供給されるべき理想的な出力電流の波形、ということができる。目標電流波形IDSは、スイッチング素子111の最大定格電流を超えない範囲において、可能な限り大きな振幅の波形として設定されることが望ましい。
【0077】
図9には、図5に示された出力電流の波形と同一の波形が、線G1として示されている。乖離量ΔIは、各時刻における実際の出力電流と、同時刻における目標電流波形IDSの値との差、の絶対値として定義されるものである。
【0078】
図9に示されるように、出力電流の波形と、目標電流波形IDSとは一致しない。このため、乖離量ΔIは時間の経過とともに変化する。仮に、出力電流の波形と、目標電流波形IDSとが一致している場合には、乖離量ΔIは常に0となる。
【0079】
乖離量ΔIに基づいて出力電圧の波形を切り替える制御の具体的な内容について、図10を参照しながら説明する。図10に示される一連の処理は、図6に示される処理と同様、電力変換装置10から負荷300への電力の供給が開始された直後において実行される。
【0080】
最初のステップS21では、出力電圧の波形が正弦波とされる。つまり、図3(A)に示された波形の出力電圧が負荷300へと入力される。
【0081】
ステップS21に続くステップS22では、電流計120の計測値に基づき算出された乖離量ΔI(以下、単に「乖離量ΔI」と表記する)が、第3閾値ITH3よりも大きいか否かが判定される。第3閾値ITH3とは、目標電流波形IDSにおける電流の最大値(振幅)である電流IMAXの、20%の値として設定された閾値である(ITH3=IMAX×0.2)。乖離量ΔIが常に第3閾値ITH3以下である場合には、出力電圧の切り換えによるピーク値IP(及び乖離量ΔI)の抑制は不要であるから、図10に示される一連の処理を終了する。以降は、出力電圧の波形が正弦波である状態が継続される。
【0082】
ステップS22において、乖離量ΔIが第3閾値ITH3よりも一時的に(又は常に)大きくなる場合には、ステップS23に移行する。ステップS23では、出力電圧の波形が、正弦波から第1波形と切り替えられる。つまり、出力電圧の波形が図3(B)の第1波形となるように、スイッチング素子111等の開閉動作が制御部130によって切り替えられる。
【0083】
ステップS23に続くステップS24では、ピーク値IPが第1閾値ITH1よりも大きいか否かが判定される。ピーク値IPが第1閾値ITH1よりも大きい場合には、ステップS25に移行する。
【0084】
出力電圧の波形が第1波形に切り替えられた後においても、ピーク値IPが第1閾値ITH1よりも大きいということは、ピーク値IPを更に抑制して第1閾値ITH1以下に収めるのは不可能であるということである。従って、ステップS25に移行すると、制御部130は電力変換装置10のシャットダウンを行い、図10に示される一連の処理を終了する。
【0085】
尚、ステップS24においては、上記のように、相対的な電流値である乖離量ΔIではなく、絶対的な電流値であるピーク値IPに基づいて、シャットダウンの必要性が判定される。このため、出力電流が大きくなり過ぎること(例えば、スイッチング素子111等の最大定格電流よりも大きくなること)は確実に防止される。
【0086】
ステップS24において、ピーク値IPが第1閾値ITH1以下である場合には、ステップS26に移行する。ステップS26では、乖離量ΔIが常に第3閾値ITH3よりも小さく、且つ常に第4閾値ITH4よりも大きいか否かが判定される。第4閾値ITH4とは、目標電流波形IDSにおける電流の最大値(振幅)である電流IMAXの、10%の値として設定された閾値である(ITH4=IMAX×0.1)。
【0087】
乖離量ΔIが常に第3閾値ITH3よりも小さく、且つ常に第4閾値ITH4よりも大きい場合には、図10に示される一連の処理を終了する。以降は、出力電圧の波形が第1波形である状態が継続される。
【0088】
ステップS26において、乖離量ΔIが一時的に(又は常に)第3閾値ITH3以上、又は一時的に(又は常に)第4閾値ITH4以下となる場合には、ステップS27に移行する。ステップS27では、出力電圧の波形が、第1波形から第2波形と切り替えられる。つまり、出力電圧の波形が図3(C)の第2波形となるように、スイッチング素子111等の開閉動作が制御部130によって切り替えられる。
【0089】
ステップS27に続くステップS28では、乖離量ΔIが第3閾値ITH3よりも大きいか否かが再度判定される。乖離量ΔIが一時的に(又は常に)第3閾値ITH3よりも大きくなる場合には、ステップS35に移行する。
【0090】
ステップS35に移行したということは、第1波形から第2波形に切り替えたことにより、乖離量ΔIが大きくなり過ぎてしまったということである。このため、ステップS35では出力電圧の波形が第1波形に戻される。その後、図10に示される一連の処理を終了する。以降は、出力電圧の波形が第1波形である状態が継続される。
【0091】
ステップS28において、乖離量ΔIが常に第3閾値ITH3以下である場合には、ステップS29に移行する。ステップS29では、乖離量ΔIが常に第4閾値ITH4よりも大きいか否かが判定される。乖離量ΔIが常に第4閾値ITH4よりも大きい場合には、図10に示される一連の処理を終了する。以降は、出力電圧の波形が第2波形である状態が継続される。
【0092】
ステップS29において、乖離量ΔIが一時的に(又は常に)第4閾値ITH4以下となる場合には、ステップS30に移行する。ステップS30では、出力電圧の波形が、第2波形から第3波形と切り替えられる。つまり、出力電圧の波形が図3(D)の第3波形となるように、スイッチング素子111等の開閉動作が制御部130によって切り替えられる。
【0093】
ステップS30に続くステップS31では、乖離量ΔIが第3閾値ITH3よりも大きいか否かが再度判定される。乖離量ΔIが一時的に(又は常に)第3閾値ITH3よりも大きくなる場合には、ステップS34に移行する。
【0094】
ステップS34に移行したということは、第2波形から第3波形に切り替えたことにより、乖離量ΔIが大きくなり過ぎてしまったということである。このため、ステップS34では出力電圧の波形が第2波形に戻される。その後、図10に示される一連の処理を終了する。以降は、出力電圧の波形が第2波形である状態が継続される。
【0095】
ステップS31において、乖離量ΔIが常に第3閾値ITH3以下である場合には、ステップS32に移行する。ステップS32では、乖離量ΔIが常に第4閾値ITH4よりも大きいか否かが判定される。乖離量ΔIが常に第4閾値ITH4よりも大きい場合には、図10に示される一連の処理を終了する。以降は、出力電圧の波形が第3波形である状態が継続される。
【0096】
ステップS32において、乖離量ΔIが一時的に(又は常に)第4閾値ITH4以下となる場合には、ステップS33に移行する。ステップS33では、出力電圧の波形が、第3波形から正弦波に戻される。つまり、出力電圧の波形が図3(A)の正弦波となるように、スイッチング素子111等の開閉動作が制御部130によって切り替えられる。その後、図10に示される一連の処理を終了する。以降は、出力電圧の波形が当初の正弦波である状態が継続される。
【0097】
以上のように、電力変換装置10では、電流計120により計測された出力電流の乖離量ΔIに基づいて出力電圧の波形が切り換えられ、乖離量ΔIが常に小さくなっている状態が維持される。その結果、出力電流のピーク値IPが大きくなり過ぎること、及び小さくなり過ぎることが防止される。このような制御によっても、出力電流のピーク値IPを抑制することと、出力電流のノイズ(リプル)を抑制することとの両立を図ることができる。
【0098】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0099】
10:電力変換装置
100:インバータ
111:スイッチング素子
120:電流計
130:制御部
200:電源装置
300:負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10