特許第6669473号(P6669473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6669473
(24)【登録日】2020年3月2日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20200309BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20200309BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20200309BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20200309BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20200309BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20200309BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20200309BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   A61K8/34
   A61K8/06
   A61K8/55
   A61K8/86
   A61K8/37
   A61K8/35
   A61Q17/04
   A61K8/49
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-223054(P2015-223054)
(22)【出願日】2015年11月13日
(65)【公開番号】特開2017-88568(P2017-88568A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】平田 説子
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−120492(JP,A)
【文献】 特開2011−088850(JP,A)
【文献】 特開2006−111620(JP,A)
【文献】 特開2004−269502(JP,A)
【文献】 特開2010−235479(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(F);
(A)リン脂質
(B)ポリオキシエチレンコレステロールエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロールエーテル、及びポリオキシエチレンフィトスタノールエーテルから選ばれる一種又は二種以上の非イオン性界面活性剤
(C)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、及びt−ブチルメトキシジベンゾイルメタンから選ばれる一種又は二種以上の紫外線吸収剤
(D)25℃で液状の極性油
(E)ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、セトステアリルアルコール、2−デシルテトラデシノール、コレステロール、及びフィトステロールから選ばれる一種又は二種以上の高級アルコール
(F)多価アルコール
を含有し、成分(A)及び成分(B)の総含有量と成分(C)及び成分(D)の総含有量比が、質量比で1:1〜1:7であり、更に乳化滴の平均粒子径が500nm以下である水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
更に、成分(G)としてエタノールを含有する、請求項1に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項3】
更に、成分(H)としてシリコーン油を含有する、請求項1または2に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項4】
30℃における粘度が1〜2,000mPa・sである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水中油型乳化化粧料。
【請求項5】
ミスト状に噴霧して使用する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水中油型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型乳化化粧料に関するものであり、さらに詳細には経時安定性に優れ、みずみずしくべたつきのない使用感にも優れた水中油型乳化化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日焼け止め化粧料は、太陽光線中の紫外線を遮断し、紫外線による悪影響から肌を守ることを目的とするものであり、酸化亜鉛や酸化チタン等の紫外線散乱剤や有機紫外線吸収剤を含有することにより、高い紫外線防御効果をもつ日焼け止め化粧料が開発されている。しかしながら、紫外線散乱剤を多量に含有すると、使用時に粉体のきしみ感が生じたり、仕上がりが白っぽく不自然になる等の問題があり、また有機紫外線吸収剤を多量に含有すると、べたつきを感じ感触が悪くなる等の問題があった。
【0003】
近年、UVA領域の紫外線防御効果が着目されているが、長波長のUVAを吸収し得る紫外線吸収剤は、UVB吸収剤に比べて分子量が大きくなるため、難溶性(水にも非極性油にも難溶)のものが多くなり、経時での結晶析出や排液等、安定性が悪くなる場合があった。そのため、難溶性紫外線吸収剤を安定に含有するため、極性油を多量に含有する必要があった(例えば特許文献1参照)が、極性油を多量に含有することで使用中にべたつきや重さが生じる場合があった。
【0004】
これらの使用感を改良するため、難溶性紫外線吸収剤と共に、シリコーン油やアルコールなどが含有されている。(例えば特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−520356号公報
【特許文献2】特開2007−145722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、シリコーン油はさらさらとした感触を与え、べたつきが低減する一方で、含有割合が多い場合には乳化安定性が悪く、それゆえ安定性の良い化粧料を得ることは困難であった。また、アルコールも肌にさっぱりとした感触を与え、べたつきを低減させる一方で、乳化物に対して多量に含有すると、一般的には系の粘度を低下させ、乳化安定性が悪くなる問題があった。そのため、難溶性の紫外線吸収剤を安定に含有しつつも、べたつきのないみずみずしい優れた使用感を有し、経時安定性に優れた化粧料の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる実情において本発明者は、特定の難溶性紫外線吸収剤を含有し、べたつきのない使用感と経時安定性に優れた化粧料を得ようと鋭意検討を重ねた。その際、油剤の種類を限定し、リン脂質及び特定の非イオン性界面活性剤の総含有量と難溶性の紫外線吸収剤及び油剤の総含有量比を限定することで、思いのほか、べたつきのないみすみずしい使用感を有し、さらに経時での結晶析出や排液がみられない安定性に優れた傾向があることを見出し、さらに検討を重ねた結果、質量比で1:1〜1:7が特に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A)〜(F);
(A)リン脂質
(B)ポリオキシエチレンコレステロールエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロールエーテル、及びポリオキシエチレンフィトスタノールエーテルから選ばれる一種又は二種以上の非イオン性界面活性剤
(C)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、及びt−ブチルメトキシジベンゾイルメタンから選ばれる一種又は二種以上の紫外線吸収剤
(D)25℃で液状の極性油
(E)ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、セトステアリルアルコール、2−デシルテトラデシノール、コレステロール、及びフィトステロールから選ばれる一種又は二種以上の高級アルコール
(F)多価アルコール
を含有し、成分(A)及び成分(B)の総含有量と成分(C)及び成分(D)の総含有量比が、質量比で1:1〜1:7であり、更に乳化滴の平均粒子径が500nm以下である水中油型乳化化粧料に関する。
【0009】
更に、成分(G)としてエタノールを含有する水中油型乳化化粧料に関する。
【0010】
更に、成分(H)としてシリコーン油を含有する水中油型乳化化粧料に関する。
【0011】
30℃における粘度が1〜2,000mPa・sである水中油型乳化化粧料に関する。
【0012】
更にミスト状に噴霧して使用する水中油型乳化化粧料に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水中油型乳化化粧料は、特定の難溶性紫外線吸収剤を安定に含有することが可能であり、そのため紫外線防御効果が高く、また、微細な乳化滴を調製することができるため、べたつきもなくみずみずしい使用感であり、経時安定性に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の構成について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明の水中油型乳化化粧料は、次の成分(A)〜(F);
(A)リン脂質
(B)ポリオキシエチレンコレステロールエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロールエーテル、及びポリオキシエチレンフィトスタノールエーテルから選ばれる一種又は二種以上の非イオン性界面活性剤
(C)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、及びt−ブチルメトキシジベンゾイルメタンから選ばれる一種又は二種以上の紫外線吸収剤
(D)25℃で液状の極性油
(E)ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、セトステアリルアルコール、2−デシルテトラデシノール、コレステロール、及びフィトステロールから選ばれる一種又は二種以上の高級アルコール
(F)多価アルコール
を含有し、成分(A)及び成分(B)の総含有量と成分(C)及び成分(D)の総含有量比が、質量比で1:1〜1:7であり、更に乳化滴の平均粒子径が500nm以下であるものである。
【0015】
本発明に用いられる成分(A)リン脂質は、化粧料一般に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、大豆由来リン脂質、大豆由来水素添加リン脂質、大豆由来リゾリン脂質、大豆由来水素添加リゾリン脂質、卵黄由来リン脂質、卵黄由来水素添加リン脂質、卵黄由来リゾリン脂質、卵黄由来水素添加リゾリン脂質等が挙げられ、これらのリン脂質は必要に応じて一種、又は二種以上用いることができる。
【0016】
本発明の水中油型乳化化粧料における成分(A)の含有量は特に限定されないが0.1〜10質量%(以下、単に「%」という)が好ましく、0.5〜5%がより好ましい。成分(A)の含有量がこの範囲であると、より乳化力と経時安定性に優れる水中油型乳化化粧料を得ることができる。
【0017】
本発明に用いられる成分(B)はポリオキシエチレンコレステロールエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロールエーテル及びポリオキシエチレンフィトスタノールエーテルから一種又は二種以上を用いることができる。また、これら成分(B)の平均ポリオキシエチレン付加モル数は、乳化滴の平均粒子径を細かくする観点より、5〜60モルであることが好ましく、さらに成分(B)の平均HLBは14〜19であることがより好ましい。
【0018】
本発明の水中油乳化化粧料における成分(B)の含有量は特に限定されないが、0.1〜10%が好ましく、より好ましくは0.5〜5%である。成分(B)の含有量がこの範囲であると、より乳化性が良好であり、より経時安定性に優れる水中油型乳化化粧料を得ることができる。
【0019】
本発明に用いられる成分(C)はビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、及びt−ブチルメトキシジベンゾイルメタンから一種又は二種以上を用いることができる。
【0020】
本発明の水中油乳化化粧料における成分(C)の含有量は特に限定されないが、好ましくは0.1〜5%であり、より好ましくは1〜3%である。成分(C)の含有量がこの範囲であると、より経時安定性に優れ、よりべたつきがなく使用感に優れる水中油型乳化化粧料を得ることができる。
【0021】
本発明に用いられる成分(D)25℃で液状の極性油は、化粧料一般に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、ミリスチン酸オクチルドデシル(IOB=0.09)、2−エチルヘキサン酸セチル(IOB=0.13)、ネオペンタン酸オクチルドデシル(IOB=0.13)、ネオペンタン酸イソステアリル(IOB=0.14)、イソノナン酸イソトリデシル(IOB=0.15)、イソステアリン酸イソプロピル(IOB=0.15)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB=0.16)、オリーブ油(IOB=0.16)、パルミチン酸イソプロピル(IOB=0.16)、ラウリン酸ヘキシル(IOB=0.17)、ミリスチン酸イソプロピル(IOB=0.18)、イソノナン酸イソデシル(IOB=0.19)、安息香酸アルキル(C12〜15)(IOB=0.19)、イソノナン酸イソノニル(IOB=0.20)、ネオペンタン酸イソデシル(IOB=0.22)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(IOB=0.25)、ジカプリン酸プロピレングリコール(IOB=0.26)、リンゴ酸ジイソステアリル(IOB=0.28)、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル(IOB値=0.28)、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール(IOB=0.32)、コハク酸ジエチルヘキシル(IOB=0.32)、ジカプリル酸プロピレングリコール(IOB=0.32)、ジ(カプリル/カプリン酸)プロピレングリコール(IOB=0.32)、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル(IOB=0.35)、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(IOB=0.35)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル−2(IOB=0.41)、ヒマシ油(IOB=0.42)、等が挙げられる。これら極性油の中でも、成分(C)の溶解性の観点から、特にIOB値が0.15〜0.35である液状油を含むことが好ましい。なお、IOB値とは、有機概念図における有機性値(OV)に対する無機性値(IV)の比、すなわち「無機性値(IV)/有機性値(OV)」をいう。これら極性油は1種または2種以上を用いることができる。
【0022】
本発明の水中油型乳化化粧料における成分(D)の含有量は特に限定されないが、成分(C)の溶解性の観点から1〜40%が好ましく、より好ましくは5〜20%である。成分(D)の含有量がこの範囲であると、より乳化滴の平均粒子径が小さくなり、経時安定性に優れるものとなる。
【0023】
本発明の水中油型乳化化粧料において、成分(A)と成分(B)の合計含有量と、成分(C)及び(D)の合計含有量との質量比(A)+(B):(C)+(D)は、1:1〜1:7であることが必須である。この範囲であれば、乳化滴の粒子径が非常に小さい、経時安定性に優れた化粧料が得られる。さらに、質量比(A)+(B):(C)+(D)は、1:1〜1:5であることが好ましい。
【0024】
本発明に用いられる成分(E)高級アルコールは、化粧料一般に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、セトステアリルアルコール、2−デシルテトラデシノール、コレステロール、フィトステロール等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。成分(E)の炭素数は16〜22であることが好ましく、より好ましくは、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ベヘニルアルコールの何れかを選択すると、より微細な乳化滴を得やすく、よりみずみずしく、経時安定性が特に良好な水中油型乳化化粧料を得ることができる。
【0025】
本発明の水中油型乳化化粧料における成分(E)の含有量は特に限定されないが、0.01〜10%が好ましく、0.1〜5%がより好ましい。成分(E)の含有量がこの範囲であると、より乳化性が良好であり、より経時安定性に優れる水中油型乳化化粧料を得ることができる。
【0026】
本発明に用いられる成分(F)多価アルコールは、化粧料一般に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、1,2−ペンタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられ、これらを一種又は二種以上用いることができる。成分(F)の炭素数は3〜6であることが好ましく、より好ましくは、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセリンの何れかを選択すると、より微細な乳化滴を得やすく、経時安定性が特に良好な水中油型乳化化粧料を得ることができる。
【0027】
本発明の水中油型乳化化粧料における成分(F)の含有量は特に限定されないが、1〜40%が好ましく、2〜20%がより好ましい。成分(F)の含有量がこの範囲であると、みずみずしい使用感で、より保湿効果に優れる水中油型乳化化粧料を得ることができる。
【0028】
本発明の水中油型乳化化粧料には、さらに成分(G)エタノールを含有することが可能である。成分(G)は本発明の水中油型乳化化粧料において、更にみずみずしい感触を与えるものであり、通常の化粧料に用いられるエタノールであれば何れのものも用いることができる。一般的に、エタノールは系の粘度を低下させ、乳化安定性を損なうため、できるだけ少量であることが好ましいが、本発明の水中油型乳化化粧料においては、水中油型乳化化粧料中に0.1〜15%、より好ましくは5〜10%含有した場合でも、乳化安定性に優れた水中油型乳化化粧料を得ることができる。
【0029】
本発明の水中油型乳化化粧料には、さらに成分(H)シリコーン油を含有することが可能である。成分(H)は本発明の水中油型乳化化粧料において、更にべたつきと低減させるものであり、通常の化粧料に用いられるシリコーン油であれば何れのものも用いることができる。成分(H)は、特に限定されないが、25℃で液状のものが好ましく、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルトリメチコン、カプルリルトリメチコン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられ、これらを一種または二種以上を用いることができる。日焼け止め化粧料としての使用感を考慮すると、水中油型乳化化粧料に1〜10%、含有することが好ましく、この範囲であれば、安定性が良く、べたつきのない使用感が得られる。
【0030】
本発明に用いられる水性成分としては、脱イオン水、蒸留水、精製水、温泉水や、ローズ水、ラベンダー水等の植物由来の水蒸気蒸留水等のいわゆる水が挙げられる。本発明の水中油型乳化化粧料における水性成分の含有量は特に限定されないが、40〜90%が好ましい。
【0031】
また本発明の水中油型乳化化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、通常の化粧料に含有される成分として、成分(D)、(E)、(H)以外の油性成分、成分(A)、(B)以外の界面活性剤、成分(C)以外の紫外線吸収剤、粉体、水溶性高分子、保湿剤、酸化防止剤、褪色防止剤、防腐剤、薬効成分、安定化剤、色素、香料等を各種の効果の付与のために適宜、含有することができる。
【0032】
油性成分としては、成分(D)、(E)、(H)以外に通常化粧料に使用されるものであれば特に限定されず、炭化水素油などの非極性液状油、動物油、植物油、合成油等を起源とする固形油、半固形油が挙げられる。
【0033】
界面活性剤としては、成分(A)、(B)以外に通常化粧料に用いられている界面活性剤であればいずれのものも使用でき、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0034】
粉体としては、化粧料一般に用いられている粉体であればいずれのものも使用でき、感触調整等を目的として、例えば、シリコーン粉体、タルク、セリサイト、シリカ、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロンパウダーなどの粉体を使用することができる。また、紫外線防御効果を付与するために金属酸化物粉体を使用することができ、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等が挙げられ、これらを一種または二種以上組み合わせて用いることができる。これらの粉体は、公知の表面処理方法、例えば、シリカ処理、アルミナ処理、水酸化アルミニウム処理、フッ素化合物処理、シリコーン処理、シリコーン樹脂処理、ペンダント処理、シランカップリング剤処理、チタンカップリング剤処理、シラン処理、油剤処理、N−アシル化リジン処理、ポリアクリル酸処理、金属石鹸処理、アクリル樹脂処理、金属酸化物処理等の方法で表面処理していてもよい。但し、本発明においては、金属酸化物粉体を多量に含有すると、きしみ感が強くなることがあるため、その含有量は水中油型乳化化粧料に5%以下、さらに好ましくは1%以下が好ましい。
【0035】
保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等、酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等、美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等、防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル、フェノキシエタノール、等が挙げられる。
【0036】
なお、本発明の水中油型乳化化粧料は、液状の他、使用目的に応じて粘度を付与し、乳液状、クリーム状等とすることができる。具体的には、美容液、化粧水、乳液、クリーム、シートマスク、日焼け止め料等の基礎化粧料、ボディ用化粧料、ファンデーション、下地料、コンシーラー等のメーキャップ化粧料に適用可能である。また顔や身体、手足等の皮膚のほか、毛髪に使用することが可能であり、ヘアミストやヘアミルク、ヘアジェルにも適用可能である。尚、本発明の効果が発揮されるのは、日焼け止め化粧水、日焼け止めミスト、日焼け止めシートなどの日焼け止め化粧料であり、更に本発明においては、みずみずしい使用感が得られることから、液状の形態が好ましい。
【0037】
液状の水中油型乳化化粧料をノンエアゾール型スプレー容器もしくはエアゾール型スプレー容器に充填してミスト状に噴霧して使用することや、不織布に含浸してシート状化粧料として使用することが可能である。本発明の水中油型乳化化粧料は、液状のものを直接手にとって使用してもよいが、ミスト状に噴霧して使用することがより好ましい。
【0038】
本発明の水中油型乳化化粧料の製造方法は、特に限定されるものではなく常法により調製されるが、例えば、成分(C)を成分(D)に加熱溶解させ、その他油性成分および界面活性剤と混合し、水系成分を乳化して得られる。また、得られた水中油型乳化化粧料をマイクロフルイダイザーやアルティマイザーなどにかけても良い。
【0039】
本発明の水中油型乳化化粧料における乳化滴の平均粒子径は、500nm以下であることが好ましく、300nm以下がより好ましい。乳化滴の平均粒子径が500nmを超えると、経時安定性が悪く、みずみずしい使用感を得ることができない。
【0040】
本発明において、乳化滴の平均粒子径はBeckman Coulter N5 Particle Analyzerを用い、動的散乱法により、調製した水中油型組成物を水で希釈して測定した。
【0041】
本発明の水中油型乳化化粧料の粘度は、調製した水中油型組成物を30℃に保管し、ブルックフィールド型回転粘度計によって測定した。本発明の水中油型乳化化粧料の粘度は特に限定されないが、30℃における粘度が1〜2000mPa・sであることが好ましい。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0043】
実施例1〜8及び比較例1〜3:
表1に示す組成および下記製法にてミスト状日焼け止め用化粧水を調製した。得られた化粧料に対して下記の方法により評価し、結果を併せて表1に示した。
【0044】
【表1】
【0045】
A:成分(1)〜(12)を70℃に加熱溶解する。
B:成分(13)を70℃に加熱する。
C:AにBを添加して70℃にて乳化する。
D:Cを40℃まで冷却し、(14)を添加し、均一に混合する。
E:Dを噴霧用のノンエアゾール型スプレー容器に充填し、ミスト状日焼け止め用化粧水を得た。
【0046】
(評価方法1:結晶の析出)
実施例1〜8及び比較例1〜3のミスト状日焼け止め用化粧水を、−20℃で2週間放置後、25℃に戻したサンプルの結晶析出の有無を目視で確認した。
[判定基準]
(判定):(評価)
○ :結晶析出が認められない。
× :結晶析出が認められる。
【0047】
(評価方法2:「みずみずしさ」、「べたつきのなさ」)
化粧品評価専門パネル20名に前記実施例及び比較例のミスト状日焼け止め用化粧水を使用してもらい、「みずみずしさ」、「べたつきのなさ」について各自が下記の評価基準に従って5段階評価し、サンプル毎に評点を付し、更に全パネルの評点の平均点を下記の判定基準に従って判定した。
[評価基準]
(評点):(結果)
5点 : 非常に良好
4点 : 良好
3点 : 普通
2点 : やや不良
1点 : 不良
[判定基準]
(判定):(評点の平均点)
◎ : 4.5〜5.0点
○ : 3.5〜4.5点未満
△ : 2.0〜3.5点未満
× : 1.0〜2.0点未満
【0048】
(評価方法3:乳化滴の平均粒子径)
前記実施例及び比較例のミスト状日焼け止め用化粧水の乳化滴の平均粒子径をコールターカウンターを用いて測定し、下記の判定基準に従って判定した。
[判定基準]
(判定):(平均粒子径)
◎ : 300nm未満
○ : 300nm以上500nm以下
× : 500nm超
【0049】
(評価方法4:経時安定性)
前記実施例及び比較例のミスト状日焼け止め用化粧水を50℃の恒温槽に1か月保管し、1か月後の状態を目視にて以下の判定基準により判定した。
[判定基準]
(判定):(評価)
○ :クリーミングが認められない。
× :クリーミングが認められる。
【0050】
表1の結果から明らかなように、実施例1〜8のミスト状日焼け止め用化粧水は、いずれもビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、もしくはt−ブチルメトキシジベンゾイルメタンの析出がみられず感触上もみずみずしくべたつきのない、乳化的の平均粒子径も500nm以下の経時安定性に優れたものであった。
これに対し、成分(A)と成分(B)の合計含有量と、成分(C)及び(D)の合計含有量との質量比(A)+(B):(C)+(D)が外れる場合は結晶の析出が認められ、安定性上問題のあるものであった。成分(A)もしくは(B)を含有しない比較例2、3は、乳化滴が大きくべたつきがあり感触上劣るもので、経時でクリーミングが確認された。
以上の結果より、本発明の各成分を組み合わせることにより、安定性に優れ、みすみずしくべたつきのない日焼け止め料を得られることが示された。
【0051】
実施例9:エアゾール型日焼け止めミスト
(%)
1.水素添加大豆リン脂質 1
2.ポリオキシエチレン(30)コレスタノールエーテル 1.5
3.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 1.5
4.ジ(カプリル/カプリン酸)プロピレングリコール 3
5.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 6
6.デカメチルシクロペンタシロキサン 3
7.セトステアリルアルコール 1.5
8.グリセリン 5
9.精製水 残量
10. 香料 0.1
11.ジプロピレングリコール 5
12.エタノール 10
【0052】
(製造方法)
A:成分(1)〜(8)を70℃に加熱溶解する。
B:成分(9)を70℃に加熱する。
C:AにBを添加して乳化する。
D:Cを40℃まで冷却し、(11)(12)を添加し、均一に混合する。
E:Dで得られた水中油型乳化化粧料9gを透明ガラス製およびアルミ製の耐圧容器に充填した後バルブを固着し、バルブを通じて液化石油ガス(LPG0.15MPa、20℃)21gを耐圧容器に充填し、エアゾール型日焼け止めミストを得た。
【0053】
実施例9は、乳化滴の平均粒子径が300nm以下の経時安定性に優れたものであった。また、ビジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの析出が認められず、感触上もみずみずしくべたつきのない日焼け止めミストであった。
【0054】
実施例10:シート型日焼け止め料
(%)
1.水素添加卵黄リン脂質 2
2.ポリオキシエチレン(25)フィトスタノールエーテル 1.5
3.t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン 1
4.スクワラン 3
5.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 7
6.ベヘニルアルコール 3
7.1,3−ブチレングリコール 8
8.精製水 残量
9.エタノール 5
10.防腐剤 適量
11.香料 0.1
【0055】
(製造方法)
A:成分(1)〜(7)を70℃に加熱溶解する。
B:成分(8)を70℃に加熱する。
C:AにBを添加して乳化する。
D:Cを40℃まで冷却し、(19)〜(11)を添加し、均一に混合する。
E:Dを不織布に含浸させ、シート型日焼け止め料を得た。
【0056】
実施例10は、乳化滴の平均粒子径が300nm以下のの経時安定性に優れたものであった。また、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタンの析出が認められず、感触上もみずみずしく、べたつきのないシート型日焼け止め料であった。
【0057】
実施例11:日中用乳液
(%)
1.水素添加大豆リン脂質 4
2.ポリオキシエチレン(30)コレスタノールエーテル 4
3.ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン 1.5
4. ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 1.5
5.流動パラフィン 4
6.パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル 7
7・ポリシリコーン−15 1
8.キャンデリラワックス 0.5
9.セトステアリルアルコール 2
10.グリセリン 5
11.精製水 残量
12. 香料 0.1
13.アルキル変性カルボキシビニルポリマー(注1) 0.1
14.トリエタノールアミン 0.1
(注1)CARBOPOL 1382(LUBRIZOL ADVANCED MATERIALS社製)
【0058】
(製造方法)
A:成分(1)〜(10)を70℃に加熱溶解する。
B:成分(11)を70℃に加熱する。
C:AにBを添加して乳化する。
D:Cを40℃まで冷却し、(12)〜(14)を添加し、均一に混合する。
E:Dを容器に充填し、日中用乳液を得た。
【0059】
実施例11は、乳化滴の平均粒子径が300nm以下の経時安定性に優れたものであった。また、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンやジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの析出が認められず、感触上もみずみずしくべたつきのない日中用乳液であった。