(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記通水部の内周面から前記集水管までの径方向の距離d1と、前記スペーサー部材における前記出水口と反対側の端面から前記集水管における前記出水口と反対側の端面までの距離d2との比(d1/d2)が、0.8〜1.2である、請求項1に記載の浄水カートリッジ。
前記容器本体が、第1端部に前記入水口及び前記出水口が形成された筒状の外側容器と、前記外側容器内に配置され、内部に前記スペーサー部材及び前記集水管が設けられ、前記粒状活性炭層が形成された筒状の濾材容器とを備え、
前記外側容器の内周面と前記濾材容器の外周面との間に、前記入水口から第2端部まで延びる外側通水路が形成され、
前記外側通水路を流通してきた原水が、前記濾材容器内を前記第2端部側から前記第1端部側に通過して前記出水口に至る、請求項1〜4のいずれか一項に記載の浄水カートリッジ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の浄水カートリッジの一例を示して詳しく説明する。
本実施形態の浄水カートリッジ1は、
図1及び
図2に示すように、円筒状の容器本体10と、容器本体10内に配置された円筒状のスペーサー部材12と、容器本体10内に形成された粒状活性炭層14と、容器本体10内におけるスペーサー部材12の内部に設けられた集水管16とを備えている。
【0012】
容器本体10は、円筒状の外側容器18と、外側容器18内に配置され、内部にスペーサー部材12及び集水管16が設けられ、粒状活性炭層14が形成される円筒状の濾材容器20とを備えている。すなわち、容器本体10は、外側容器18と濾材容器20の二重構造になっている。
【0013】
外側容器18は、有底円筒状の本体部22と、本体部22の開口端側に被着され、円板状の平板部24aの周縁から円筒状の周壁部24bが突設された蓋部24とを備えている。蓋部24の内面には、強度を高くするためのリブ(図示せず)が中心部から放射状に設けられている。
【0014】
蓋部24には、外面から軸方向に突出するように入水ジョイント26と出水ジョイント28とが設けられている。入水ジョイント26は、IN用ホース(入水用カプラー)に液密に接続するように構成された管状の部材であり、その先端の開口が入水口26aとなっている。出水ジョイント28は、OUT用ホース(出水用カプラー)に液密に接続するように構成された管状の部材であり、その先端の開口が出水口28aとなっている。このように、浄水カートリッジ1では、容器本体10における第1端部10aに、入水口26aと出水口28aが形成されている。
【0015】
図1(b)に示すように、入水ジョイント26と出水ジョイント28の位置は、蓋部24を軸方向の外側から見た側面視において、蓋部24の外周縁から中心側に離間した位置で、かつ容器本体10の中心軸に対して対称な位置になっている。これにより、後述する超音波溶着によって蓋部24を本体部22の開口端側に溶着する場合、超音波装置のホーン(図示せず)を蓋部24側に配する際に入水ジョイント26と出水ジョイント28が邪魔になりにくい。
【0016】
蓋部24における周壁部24bの基端の肉厚t(
図2)、すなわち蓋部24における内側の肩部24dから蓋部24の側面の外壁までの肉厚tは、4〜6mmが好ましい。
入水ジョイント26と出水ジョイント28が設けられた蓋部24を本体部22に被着した外側容器18では、外径が小さくスリムな構造の場合、入水ジョイント26から圧力がかかると、蓋部24の内側の肩部24dに応力が集中し、破損の起点となるおそれがある。肉厚tが4mm以上であれば、充分な耐圧性能が得られやすい。また、肉厚tが6mm以下であれば、成形の際にひけが生じにくく、外観不良が生じることを抑制しやすい。
【0017】
本体部22と蓋部24とは、超音波溶着によって溶着されていることが好ましい。これにより、本体部22と蓋部24の間にOリング等を設ける必要がなくなるため、加工性がより良好になる。本体部22と蓋部24とを超音波溶着によって溶着する場合、それらの溶着ジョイントの形状としては、例えば、シェアジョイントやバットジョイントを採用できる。なかでも、シェアジョイントが好ましい。シェアジョイントは、ホーンの縦振動に対してジョイントの接触面と振動方向が同一方向に近づくため、溶着面に気泡が生じにくい。そのため、水密性及び気密性に優れた外側容器18を形成することができる。
【0018】
具体的には、蓋部24における入水ジョイント26及び出水ジョイント28側から超音波溶着のホーンを当て、本体部22の軸方向の振動(縦振動)を与えてジョイント部分を溶着する。このとき、外径が小さくスリムな外側容器では、超音波溶着の縦振動が本体部22の胴部分に伝わることで溶着強度が低下しやすい。この例の溶着ジョイントの形状は、本体部22の上端部に全周にわたって形成された突出片22aが、蓋部24の周壁部24bの先端に全周にわたって形成された凹部24cに嵌まり込むような、シェアジョイントの形状になっている。そのため、高い溶着強度で蓋部24が本体部22に被着され、より水密性及び気密性に優れた外側容器18となる。
【0019】
外側容器の水密性及び気密性の観点から、本体部と蓋部は振動溶着によって溶着されていることが好ましい。振動溶着は横振動のため、振動面とバットジョイントの接着面が同一方向となり、溶着面に気泡や不純物が混ざりにくく、より水密性及び気密性に優れた外側容器となる。ただし、振動溶着の装置は高価であり、また溶着に時間を要することから、生産効率の点からは超音波溶着を用いることが好ましい。
【0020】
外側容器18の第2端部18bは、第1端部18a側に向かって突き出るように、半球状に湾曲した形状になっている。また、外側容器18の第2端部18bの内面には、
図3に示すように、中心部から外周縁に向かって放射状に延びる、凸条からなるリブ48が複数形成されている。これにより、外側容器18内で濾材容器20がリブ48によって第1端部18a側に押し込まれるため、後述する濾材容器20の連結筒54と出水ジョイント28の内部孔との嵌合が外れることを抑制することができる。また、リブ48を設けることにより、外側容器18における第2端部18bの耐圧性が向上する。
【0021】
第2端部18bの内面からのリブ48の高さは、2〜5mmが好ましく、3〜4mmがより好ましい。リブ48の高さが下限値以上であれば、外側容器18における第2端部18bの耐圧性が充分に高くなりやすい。リブ48の高さが上限値以下であれば、目皿40と外側容器18の第2端部18bとの間で水がより流れやすくなる。
【0022】
容器本体10の全長、すなわち入水ジョイント26及び出水ジョイント28の先端から外側容器18の底面までの長さLは、設置場所に応じて適宜設定することができ、220〜300mmが好ましく、250mm〜280mmがより好ましい。長さLが上限値以下であれば、浄水カートリッジ1の取扱い性が良好になり、設置場所が限定されにくい。長さLが下限値以上であれば、充分な濾材量を確保しやすく、実用上充分な浄水性能が得られやすい。
【0023】
容器本体10の最大径d、すなわち外側容器18の最大径dは、設置場所に応じて適宜設定することができ、70〜90mmが好ましく、75mm〜80mmがより好ましい。最大径dが上限値以下であれば、取扱い性がより良好になり、狭小スペース等への設置も容易で汎用性が向上する。最大径dが下限値以上であれば、充分な濾材量を確保しやすく、実用上充分な浄水性能が得られやすい。
【0024】
容器本体10の長さLと最大径dとの比(L/d)は、2.4以上4.3以下が好ましく、3.0以上4.0以下がより好ましい。L/dが下限値以上であれば、充分な浄水性能が得られやすい。L/dが上限値以下であれば、スリムな構造となり、浄水カートリッジ1をアンダーシンク内の狭小スペース等に配置しやすくなる。
【0025】
外側容器18を形成する材料としては、充分な耐圧性能が得られるものであればよく、浄水カートリッジに用いられる公知の材料を採用することができる。外側容器18の本体部22を形成する材料の具体例としては、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、特に耐圧性や成形性に優れている点から、ABS樹脂が好ましい。蓋部24を形成する材料としては、例えば、本体部22で挙げたものと同じものが挙げられ、好ましい態様も同じである。本体部22と蓋部24との接着性の観点からは、本体部22と蓋部24とが同じ材料で形成されていることが好ましい。
外側容器18のバースト圧は、2.0MPa以上であることが好ましい。外側容器18を形成する材料としてABS樹脂を用いた場合、バースト圧を2.5MPa以上にすることができる。
【0026】
濾材容器20は、粒状活性炭が収納された円筒状の活性炭収納部32と、活性炭収納部32における第1端部10a側に設けられ、中空糸膜モジュール58が収納された円筒状の中空糸膜収納部34とを備えている。
【0027】
活性炭収納部32は、円筒状の胴部36と、胴部36における容器本体10の第1端部10a側に設けられた円板状の仕切板38と、胴部36における容器本体10の第2端部10b側に設けられた円板状の目皿40と、を備えている。胴部36と仕切板38、及び胴部36と目皿40は、例えば、超音波溶着により接合することができる。
【0028】
濾材容器20は、外側容器18の内周面と濾材容器20の外周面との間に、容器本体10の周方向において円環状で、容器本体10の軸方向に延びる隙間からなる外側通水路30が形成されるように配置されている。外側通水路30は入水ジョイント26の入水口26aと連通している。入水口26aから容器本体10内に流入してきた原水は、外側通水路30を通って第2端部10b側まで流通する。
【0029】
外側通水路30の流路断面積、すなわち外側通水路30における容器本体10の中心軸と直交する横断面の面積は、0.3〜8cm
2が好ましく、1.0〜5.5cm
2がより好ましい。外側通水路30の流路断面積が下限値以上であれば、圧力損出を小さくしやすく、充分な通水流量を確保しやすい。外側通水路30の流路断面積が上限値以下であれば、充分な濾材量を確保しやすく、充分な浄水性能が得られやすくなる。
【0030】
この例では、仕切板38と中空糸膜収納部34との間は、Oリングあるいは樹脂嵌合によって水密に封じられることが好ましい。
仕切板38には、その中心部に開口38aが形成されている。仕切板38に開口38aが形成されていることで、活性炭収納部32の内部と中空糸膜収納部34の内部は開口38aを介して通じている。
また、仕切板38の目皿40側には、開口38aの周囲から濾材容器20の活性炭収納部32内に突出するように、円筒状の集水管16が設けられている。仕切板38と集水管16は、一体に成形することができる。
【0031】
胴部36及び仕切板38を形成する材料としては、特に限定されず、例えば、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0032】
目皿40は、粒状活性炭を堰き止めつつ水を通過させることができる通水性の部材で形成されている。
目皿40を形成する通水性の部材としては、浄水カートリッジにおいて通常使用される公知の部材を使用でき、例えば、ポリエチレン製の不織布等の通水性を有するシートが挙げられる。
【0033】
目皿40の外周面には、外側容器18に向かって径方向に突出する3つの突起部46が中心軸周りに120度間隔で設けられている。これら突起部46によって目皿40の外周面と外側容器18の内周面との間に隙間ができているため、外側通水路30を流通してきた原水が目皿40の第2端部18b側まで流れるようになっている。
【0034】
目皿40の外周面からの突起部46の高さは、1.0mm〜2.0mmが好ましい。突起部46の高さが1.0mm以上であれば、目皿40と外側容器18との隙間がより広くなるため、目皿40の第2端部18b側まで水が流れやすい。また、浄水カートリッジ1を横置きにした場合でも濾材容器20が外側容器18内で偏りにくく、外側通水路30が周方向にわたって均一に確保されることで、目皿40の第2端部18b側まで水が流れやすい。突起部46の高さが2.0mm以下であれば、粒状活性炭量をより多くすることができるため、充分な浄水性能が得られやすい。
【0035】
濾材容器20では、入水口26aから外側通水路30を通じて出水口28aと反対側の目皿40側まで流通してきた原水が、目皿40から濾材容器20内に流入し、活性炭収納部32、中空糸膜収納部34の順に出水ジョイント28に向かって軸方向に流れるようになっている。すなわち、外側通水路30を流通してきた原水が、目皿40から濾材容器20内に流入して、出水口28aと反対側から出水口28aに向かって内部を軸方向に通過するようになっている。
【0036】
スペーサー部材12は、円筒状の部材である。スペーサー部材12は、濾材容器20内において、胴部36の内周面との間に間隙42が形成されるように、かつ、目皿40の内面から離間するように設けられている。スペーサー部材12における仕切板38側の端部と濾材容器20の間、及びスペーサー部材12における目皿40側の端部と濾材容器20の間には、それぞれOリング44,44が設けられている。間隙42は、濾材容器20の周方向において円環状で、濾材容器20の仕切板38から目皿40に向かって軸方向に途中まで延びるように形成されている。
【0037】
スペーサー部材12の外周壁には、粒状活性炭を堰き止めつつ水を通過させる矩形状の通水部12aが複数設けられている。このように、濾材容器20内に流入した原水は、スペーサー部材12が設けられた部分において、通水部12aを通じてスペーサー部材12の内部と間隙42の間で出入りできるようになっている。
通水部12aは、例えば、外周壁に形成した開口部に、水を通過させるが粒状活性炭を通過させないシートを接着あるいは融着することで形成することができる。
【0038】
容器本体10における濾材容器20の活性炭収納部32内においては、出水口28aと反対側の目皿40の内面とスペーサー部材12との間の空間と、スペーサー部材12の内部に粒状活性炭が充填されて粒状活性炭層14が形成されている。スペーサー部材12における目皿40側の端部と濾材容器20の間にはOリング44が設けられているため、間隙42には粒状活性炭が存在しないようになっている。
【0039】
粒状活性炭層14を形成する粒状活性炭としては、特に限定されず、浄水カートリッジに使用される公知の粒状活性炭を使用することができる。例えば、植物質(木材、セルロース、のこくず、木炭、椰子殻炭、素灰等)、石炭質(泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、タール等)、石油質(石油残渣、硫酸スラッジ、オイルカーボン等)、パルプ廃液、合成樹脂等の原料を炭化し、必要に応じてガス(水蒸気、二酸化炭素、空気等)や、薬品(塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、リン酸、硫酸、カセイソーダ、KOH等)で賦活した粒状活性炭等が挙げられる。なかでも、除去能力及び取扱い性の点から、ヤシガラを原料とし、抗菌性を付与するために銀が添着された粒状活性炭が好ましい。
【0040】
濾材容器20内における粒状活性炭層14よりも第2端部18b側には、通水性を有する部材をさらに充填することが好ましい。これにより、外側容器18の第2端部18bによって濾材容器20の目皿40側が押し込まれた際に、粒状活性炭層14が第1端部18a側に向かって充分に圧縮されやすくなる。そのため、濾材容器20内で粒状活性炭に偏りが生じ、粒状活性炭層14内にショートパスに繋がる隙間ができることが抑制されやすくなる。
【0041】
前記の通水性を有する部材としては、特に限定されず、不織布や、イオン交換繊維等が挙げられる。なかでも、原水中の溶解性鉛の除去が可能な点から、イオン交換繊維が好ましく、繊維状活性炭がより好ましい。
繊維状活性炭としては、例えば、レーヨン、アクリル繊維、フェノール樹脂、又はピッチを原料とした繊維を炭化し、さらに高温で水蒸気、二酸化炭素等で賦活させて得られる繊維状活性炭が挙げられる。
【0042】
集水管16は、側面から水が流入する部材である。集水管16は、濾材容器20の活性炭収納部32及びスペーサー部材12の中心軸上に、容器本体10の軸方向に延びるように配置されている。集水管16は、スペーサー部材12の内部において粒状活性炭層14に埋没している。集水管16における仕切板38側の開口端は、中空糸膜収納部34を介して出水口28aに通じている。
【0043】
集水管16は、浄水カートリッジに用いられる公知の態様を採用することができる。例えば、集水管16の側面部は、粒状活性炭を通過させずに水を通過させることができる公知のシートにより形成することができる。
集水管16の第2端部10b側の端面16bは、水が通過しないように封止されていてもよい。
【0044】
濾材容器20の活性炭収納部32においては、外側通水路30を流通してきた原水が目皿40から流入し、粒状活性炭層14内を通過し、集水管16内に流入して仕切板38の開口38aから中空糸膜収納部34へと流れる。
活性炭収納部32内では、スペーサー部材12が目皿40の内面から離間するように設けられ、目皿40の内面とスペーサー部材12との間の空間、及びスペーサー部材12の内部に粒状活性炭が充填されている。これにより、浄水カートリッジ1を第2端部10bを下にして縦置きした場合に粒状活性炭に偏りが生じ、活性炭収納部32内の仕切板38側に粒状活性炭が存在しない空隙が生じても、目皿40から流入してきた原水は、目皿40の内面とスペーサー部材12との間の空間に充填された粒状活性炭との接触が確保される。また、浄水カートリッジ1を横置きした場合に粒状活性炭に偏りが生じ、横置きの状態で活性炭収納部32内の上側となった部分に粒状活性炭が存在しない隙間が生じても、目皿40から流入して該隙間を通った原水は、集水管16に向かって径方向に流れる際に粒状活性炭との接触が確保される。このように、縦置き及び横置きのいずれの場合でも、たとえ容器内で粒状活性炭に偏りが生じて隙間が形成されても、原水が粒状活性炭と接触せずに通過するショートパスが発生することを抑制することができる。そのため、浄水カートリッジ1を用いることで、充分な浄水性能を得ることができる。
【0045】
また、活性炭収納部32内では、スペーサー部材12の外周面と胴部36の内周面との間に間隙42が形成されている。これにより、浄水カートリッジ1をスリム化しても、圧力損失が高くなりすぎることが抑制され、充分な濾過流量を得ることができる。
具体的には、活性炭収納部32内を流れる原水の一部は、粒状活性炭層14内を通過し、スペーサー部材12の通水部12aを通らず、間隙42に流入せずに集水管16内に流入する。また、活性炭収納部32内を流れる原水の残りは、粒状活性炭層14内を通って一旦スペーサー部材12の通水部12aから間隙42に入り、間隙42を仕切板38に向かって流通した後に再び通水部12aからスペーサー部材12内に流入し、粒状活性炭層14内を通過して集水管16内に流入する。このように、原水の一部が間隙42を通過することで、間隙42が形成されていない場合に比べて分流させることにより圧力損失が小さくなるため、スリム化しても充分な濾過流量を得ることができる。
【0046】
間隙42の間隔、すなわちスペーサー部材12の外周面と活性炭収納部32の内周面との径方向の距離は、0.5〜1.5mmが好ましく、0.8〜1.2mmがより好ましい。間隙42の間隔が下限値以上であれば、圧力損失の増大を抑制する効果がより高くなり、濾過流量をより多くしやすい。間隙42の間隔が上限値以下であれば、粒状活性炭量をより多くすることができるため、充分な浄水性能が得られやすい。
間隙42の軸方向の長さは、スペーサー部材12の軸方向の長さを調節することにより調節できる。
【0047】
この例では、集水管16における出水口28aと反対側、すなわち仕切板38の開口38aと反対側の端面16bは、濾材容器20から離間している。このように、本発明では、集水管における出水口と反対側の端面は、容器本体から離間していることが好ましい。集水管の長さを調節して、水が粒状活性炭層を通過して集水管内に流入するまでの最短距離を調節することで、充分な浄水性能を確保することが容易になる。
【0048】
スペーサー部材12における通水部12aの内周面から集水管16までの径方向の距離d1と、スペーサー部材12における出水口28aと反対側の端面12bから集水管16における出水口28aと反対側の端面16bまでの距離d2との比(d1/d2)は、0.5〜1.5が好ましく、0.8〜1.2がより好ましい。d1/d2が前記範囲内であれば、水が間隙42を通らずに集水管16に直接流入する際の圧力損失と、水が間隙42を通って集水管16内に流入する経路の圧力損失との差が充分に小さくなりやすい。そのため、活性炭収納部32内において水の偏流が生じにくく、原水が粒状活性炭層14内を均一に流れやすくなるため、粒状活性炭をより有効に活用することができる。
【0049】
中空糸膜収納部34は、円筒状の胴部50と、胴部50の蓋部24側に被着された内側蓋部52とを備えている。
内側蓋部52には、出水ジョイント28の内部孔に内挿され、出水ジョイント28と連通する円筒状の連結筒54が設けられている。内側蓋部52に設けられた連結筒54と出水ジョイント28の内部孔との間には、Oリング55が介装されており、これによって良好な水密性が確保されている。
この例では、出水ジョイント28の内部孔における連結筒54が内挿される部分の内径は、入水ジョイント26の内部孔において対応する部分の内径より大きくなっている。これにより、組み立て時において誤って連結筒54を入水ジョイント26の内部孔に連結しようとしても、連結筒54を入水ジョイント26の内部孔に内挿できない。そのため、組み立てを誤ることを防止することができる。
【0050】
内側蓋部52には、濾材容器20の中心軸上に、蓋部24に向かって突出する突出部56が設けられている。この突出部56は、蓋部24の内面の中心軸上に形成された嵌合凹部24eに嵌合するように配置されている。内側蓋部52の突出部56が蓋部24の嵌合凹部24eに嵌合していることにより、外側容器18内での濾材容器20のガタツキが抑制される。また、浄水カートリッジ1を横置きした場合等に、外側容器18内で濾材容器20が偏って位置することも抑制される。さらに、濾材容器20の中心軸と外側容器18の中心軸とを容易に一致させることができることで、容器本体10の周方向の全周にわたって均等な間隔の外側通水路30を形成しやすくなるため、入水ジョイント26から流入した原水の流れが均一になりやすくなる。
また、内側蓋部52に突出部56を設け、蓋部24に嵌合凹部24eを設けることで、突出部と嵌合凹部を逆に設ける場合に比べて、蓋部24の内面に設けるリブを充分に高くしやすく、該リブによる蓋部24の耐圧性の向上効果が充分に得られやすくなる。
【0051】
内側蓋部52に設けられた連結筒54が入水ジョイント26の内部孔に連結され、突出部56が蓋部24の嵌合凹部24eに嵌合された状態においては、入水ジョイント26の内部孔と出水ジョイント28の内部孔とが隔てられている。これにより、入水口26aから入水ジョイント26内部孔を通ってきた原水は、第1端部10a側では濾材容器20の中空糸膜収納部34には入らず、外側通水路30を通じて第2端部10b側へと導かれる。
中空糸膜収納部34を形成する材料としては、特に限定されず、例えば、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0052】
中空糸膜収納部34内には、中空糸膜モジュール58が収納されている。
中空糸膜モジュール58は、ループ状に折り返された複数の中空糸膜60がセンターチューブ62を中心に円筒状に束ねられ、それらの中空糸膜60の開口端側の部分が、ポッティング層64によって胴部50の内側蓋部52寄りの内周面に接着固定されることで形成されている。ポッティング層64は、中空糸膜収納部34内を中空糸膜60が存在する活性炭収納部32側と内側蓋部52側とを隔てるように形成されている。これにより、中空糸膜収納部34内で中空糸膜60内に透過した水だけが出水ジョイント28の出水口28aに到達する。
【0053】
中空糸膜60の有効膜面積、すなわち有効な濾過面積は、0.4〜0.8m
2が好ましい。なお、有効膜面積は、中空糸膜の外径と、中空糸膜におけるポッティング層に覆われていない部分の長さと、中空糸膜の本数との積によって算出される。
中空糸膜は、U字状のバンドルに束ねてもよく、ラッセル編にしてもよいが、中空糸膜の長さを短くしつつ有効膜面積をより広くしやすい点から、ラッセル編にすることが好ましい。
【0054】
中空糸膜60としては、浄水カートリッジに用いられる公知の中空糸膜を使用することができる。具体的には、例えば、セルロース系、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)系、ポリビニルアルコール系、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリエーテル系、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)系、ポリスルホン系、ポリアクリロニトリル系、ポリ四フッ化エチレン(テフロン(登録商標))系、ポリカーボネイト系、ポリエステル系、ポリアミド系、芳香族ポリアミド系等の各種材料からなる中空糸膜が挙げられる。なかでも、取扱い性、及び加工特性の点から、ポリオレフィン系、ポリスルホン系の材料からなる中空糸膜が好ましい。
【0055】
ポッティング層64を形成するポッティング材としては、特に限定されず、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0056】
浄水カートリッジ1の製造方法は、特に限定されない。
例えば、集水管16と仕切板38を一体に成形した後、仕切板38にスペーサー部材12と胴部36を溶着し、内部に粒状活性炭を充填して粒状活性炭層14を形成する。次いで、胴部36における仕切板38と反対側に目皿40を溶着して活性炭収納部32を形成する。
また、複数の中空糸膜60をループ状に折り返した状態でセンターチューブ62を中心にして円筒状に束ねる。それらの中空糸膜60の開口端側の部分に、ポッティング材を用いてポッティング層64を形成して、胴部50における端部の内周面に接着固定する。次いで、胴部50におけるポッティング層64を形成した側の端部に内側蓋部52を溶着し、中空糸膜モジュール58が収納された中空糸膜収納部34を形成する。活性炭収納部32と中空糸膜収納部34とを、Oリングもしくは樹脂嵌合によって水密に接続して濾材容器20を形成する。
次いで、濾材容器20を外側容器18の本体部22内に挿入し、本体部22の開口端に蓋部24を被せ、内側蓋部52に設けられた連結筒54を入水ジョイント26の内部孔に連結し、突出部56を蓋部24の嵌合凹部24eに嵌合させる。この状態で本体部22と蓋部24とを超音波溶着等で溶着することで、浄水カートリッジ1が得られる。
【0057】
以下、浄水カートリッジ1の使用方法について説明する。
浄水カートリッジ1を使用する際は、まず入水ジョイント26にIN用ホース(入水用カプラー)、出水ジョイント28にOUT用ホース(出水用カプラー)をそれぞれ接続して水栓に繋げ、アンダーシンク内等に設置する。浄水カートリッジ1は縦置きしてもよく、横置きしてもよい。
IN用ホースから供給された原水は、入水口26aから入水ジョイント26を通って容器本体10内に流入し、外側通水路30を通じて濾材容器20の外側を第2端部10b側まで流通する。外側通水路30を流通してきた原水は、濾材容器20における目皿40から活性炭収納部32内に流入する。
【0058】
活性炭収納部32内においては、出水口28aと反対側に位置する目皿40から流入した原水が、出水口28aに向かって軸方向に通過する。原水の一部は、粒状活性炭層14内を通過し、スペーサー部材12の通水部12aを通らず、間隙42に流入せずに集水管16内に流入する。また、原水の残りは、粒状活性炭層14内を通って一旦スペーサー部材12の通水部12aから間隙42に入り、間隙42を仕切板38に向かって流通した後に再び通水部12aからスペーサー部材12内に流入し、粒状活性炭層14内を通過して集水管16内に流入する。このように、活性炭収納部32内において原水が粒状活性炭層14により濾過される。
集水管16内に流入した水は、内部通水路16aを通って仕切板38の開口38aから中空糸膜収納部34内に入る。中空糸膜収納部34内においては、中空糸膜モジュール58によって水が二次濾過され、出水ジョイント28の出水口28aに至る。浄水カートリッジ1により浄化された水は、出水ジョイント28の出水口28aから吐出され、OUT用ホースを通って水栓へと流れる。
【0059】
以上説明した本発明の浄水カートリッジにおいては、容器本体における出水口と反対側の内面とスペーサー部材の間の空間と、スペーサー部材の内部に粒状活性炭が充填されて粒状活性炭層が形成されている。これにより、仮に容器本体内で粒状活性炭に偏りが生じて隙間ができたとしても、前記空間や、スペーサー部材の内部で粒状活性炭と原水との接触が確保される。このように、ショートパスの発生が抑制されることで、充分な浄水性能が得られる。また、スペーサー部材の外周面と容器本体の内周面との間に間隙が形成されていることで、粒状活性炭層によって濾過されている原水の一部が該間隙を通過する。これにより、間隙が形成されていない場合に比べて圧力損失が小さくなるため、スリム化しても充分な濾過流量を得ることができる。
また、本発明の浄水カートリッジは、圧力損失の過度な増大を抑制しつつ浄水カートリッジをスリム化できるため、アンダーシンク内の狭小スペース、具体的には収納キャビネット内の狭小スペース、引き出しの上下間、引き出し裏、最下段の引き出し内等に容易に設置できる。
【0060】
なお、本発明の浄水カートリッジは、前記した浄水カートリッジ1には限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変更を加えることが可能である。例えば、中空糸膜モジュールの具体的構成を適宜変更することができる。
【0061】
本発明の浄水カートリッジは、容器本体の第1端部に出水口が形成され、容器本体の第2端部に入水口が形成されているものであってもよい。例えば、
図4に例示した浄水カートリッジ2であってもよい。
図4における
図2と同じ部分には同符号を付して説明を省略する。
浄水カートリッジ2は、円筒状の容器本体10Aと、容器本体10A内に配置された円筒状のスペーサー部材12と、容器本体10A内に形成された粒状活性炭層14と、容器本体10A内におけるスペーサー部材12の内部に設けられた集水管16とを備えている。浄水カートリッジ2は、外側容器18及び濾材容器20を有する二重構造の容器本体10の代わりに、一重構造の容器本体10Aを備える以外は、浄水カートリッジ1と同様の態様である。
【0062】
容器本体10Aは、円筒状の胴部70、及び胴部70と一体に形成された円板部72を有する本体部74と、本体部74における開口端に被着された蓋部76とを備えている。容器本体10Aでは、本体部74の円板部72が第1端部10aであり、蓋部76が第2端部10bである。
本体部74と蓋部76とは、容器本体10の場合と同様に、超音波溶着や振動溶着によって溶着されていることが好ましい。
【0063】
容器本体10Aにおいては、円板部72に、その外面から突出するように出水ジョイント28が設けられている。また、蓋部76に、その上面から突出するように入水ジョイント26が設けられている。すなわち、容器本体10Aにおいては、第1端部10aに出水口28aが形成され、第2端部10bに入水口26aが形成されている。
【0064】
容器本体10Aは、粒状活性炭が収納された円筒状の活性炭収納部32Aと、活性炭収納部32Aにおける第1端部10a側に設けられ、胴部50内に中空糸膜モジュール58が収納された円筒状の中空糸膜収納部34Aとを備えている。
容器本体10Aにおける活性炭収納部32Aは、本体部74内を軸方向に区画するように設けられた円板状の仕切板38と、胴部70における蓋部76側の端部の内周面側に設けられた目皿40との間の部分である。容器本体10Aにおける中空糸膜収納部34Aは、仕切板38から第1端部10aまでの部分である。仕切板38にはその中心部に開口38aが形成されているため、活性炭収納部32Aの内部と中空糸膜収納部34Aの内部が開口38aを介して通じている。
【0065】
容器本体10Aでは、入水ジョイント26から流入してきた原水が、活性炭収納部32A、中空糸膜収納部34Aの順に出水ジョイント28に向かって軸方向に流れるようになっている。すなわち、入水口26aから容器本体10A内に流通してきた原水が、出水口28aと反対側から出水口28aに向かって内部を軸方向に通過するようになっている。
【0066】
活性炭収納部32Aには、スペーサー部材12の外周面と胴部70の内周面との間に間隙42Aが形成されるように、かつ、目皿40の内面から離間するようにスペーサー部材12が設けられている。スペーサー部材12における仕切板38側の端部と胴部70の間、及びスペーサー部材12における目皿40側の端部と胴部70の間には、それぞれOリング44,44が設けられている。間隙42Aは、容器本体10Aの周方向において円環状で、容器本体10Aの仕切板38から目皿40に向かって軸方向に途中まで延びるように形成されている。
【0067】
容器本体10Aにおける活性炭収納部32A内においては、出水口28aと反対側の目皿40の内面とスペーサー部材12との間の空間と、スペーサー部材12の内部に粒状活性炭が充填されて粒状活性炭層14が形成されている。間隙42Aには粒状活性炭が存在しないようになっている。
容器本体10A内における粒状活性炭層14よりも第2端部18b側には、容器本体10の場合と同様に、通水性を有する部材を充填することが好ましい。これにより、容器本体10A内で粒状活性炭に偏りが生じ、粒状活性炭層14内にショートパスに繋がる隙間ができることが抑制されやすくなる。
【0068】
集水管16は、浄水カートリッジ1と同様に、活性炭収納部32A及びスペーサー部材12の中心軸上で容器本体10Aの軸方向に延びるように、粒状活性炭層14に埋没して配置されている。
【0069】
容器本体10Aの中空糸膜収納部34Aの胴部50内には、浄水カートリッジ1の場合と同様に、中空糸膜モジュール58が収納されている。具体的には、ループ状に折り返された複数の中空糸膜60がセンターチューブ62を中心に円筒状に束ねられ、それらの中空糸膜60の開口端側の部分が、ポッティング層64によって胴部50の第1端部10a寄りの内周面に接着固定されている。胴部50の外周面と胴部70の内周面との間にはOリング51が配置されて水密性が確保されている。
【0070】
浄水カートリッジ2においては、浄水カートリッジ1と同様に、入水ジョイント26にIN用ホース(入水用カプラー)、出水ジョイント28にOUT用ホース(出水用カプラー)をそれぞれ接続して水栓に繋げ、アンダーシンク内等に設置する。
IN用ホースから供給された原水は、入水口26aから入水ジョイント26を通って容器本体10A内に流入し、目皿40から活性炭収納部32A内に流入する。活性炭収納部32A内においては、浄水カートリッジ1と同様に、原水の一部は、粒状活性炭層14内を通過し、間隙42Aに流入せずに集水管16内に流入する。また、原水の残りは、粒状活性炭層14内を通って一旦スペーサー部材12の通水部12aから間隙42Aに入り、間隙42Aを仕切板38に向かって流通した後に再び通水部12aからスペーサー部材12内に流入し、粒状活性炭層14内を通過して集水管16内に流入する。
集水管16内に流入した水は、内部通水路16aを通って仕切板38の開口38aから中空糸膜収納部34A内に入る。中空糸膜収納部34A内においては、中空糸膜モジュール58によって水が二次濾過され、出水ジョイント28の出水口28aに至る。浄水カートリッジ2により浄化された水は、出水ジョイント28の出水口28aから吐出され、OUT用ホースを通って水栓へと流れる。
【0071】
浄水カートリッジ2においても、容器本体10Aにおける出水口28aと反対側の内面とスペーサー部材12の間の空間と、スペーサー部材12の内部に粒状活性炭層14が形成されているため、浄水カートリッジ1と同様にショートパスの発生が抑制される。また、間隙42Aが形成されていることで圧力損失が小さくなるため、スリム化しても充分な濾過流量を得ることができる。
【0072】
容器本体の第1端部に出水口が形成され、第2端部に入水口が形成された態様の浄水カートリッジは、容器本体の第1端部に入水口と出水口が形成された態様の浄水カートリッジに比べて、容器本体内に外側通水路を設けず一重構造にできるため、よりスリム化できる点で有利である。一方、容器本体の第1端部に出水口が形成され、第2端部に入水口が形成された態様の浄水カートリッジは縦置きすることが困難になる。そのため、縦置きも横置きも可能で設置態様の自由度が高い点では、容器本体の第1端部に入水口と出水口が形成された態様の浄水カートリッジが有利である。
【0073】
前記した浄水カートリッジ1、2は円筒状であったが、本発明の浄水カートリッジは円筒状以外の形状であってもよい。例えば、本発明の浄水カートリッジは、
図5及び
図6に例示した浄水カートリッジ3であってもよい。
図5及び
図6における
図1(b)及び
図4と同じ部分には同符号を付して説明を省略する。
【0074】
浄水カートリッジ3は、円筒状の容器本体10Aの代わりに、容器本体10Bを備える以外は、浄水カートリッジ2と同じである。
容器本体10Bは、本体部84と、本体部84における第2端部10b側の開口端に被着された蓋部86とを備えている。本体部84は、円筒状の胴部80と、胴部80と一体に形成された円板部82と、第1端部10a側から見た側面視において胴部80から外側に半円形状で突き出すように設けられ、容器本体10Bの第1端部10aから軸方向に第2端部10bまで延びる張出筒部88と、を備える。
【0075】
容器本体10Bにおいては、円板部82に、その外面から突出するように出水ジョイント28が設けられている。また、張出筒部88における第1端部10a側に、軸方向の外側に突出するように入水ジョイント26が設けられている。すなわち、容器本体10Bにおいては、第1端部10aに入水口26aと出水口28aが形成されている。張出筒部88の内部は、入水ジョイント26の内部と連通し、第1端部10aから第2端部10bまで延びる外側通水路30Aとなっている。
このように、容器本体10Bは、張出筒部88内に外側通水路30Aが形成され、入水口26aから流入した原水が外側通水路30Aを通って第2端部10b側まで流れた後に、目皿40から活性炭収納部32A内に流入する以外は、容器本体10Aと同様の態様である。
【0076】
浄水カートリッジ3においても、容器本体10Bにおける出水口28aと反対側の内面とスペーサー部材12の間の空間と、スペーサー部材12の内部に粒状活性炭層14が形成されているため、浄水カートリッジ1と同様にショートパスの発生が抑制される。また、間隙42Aが形成されていることで圧力損失が小さくなるため、スリム化しても充分な濾過流量を得ることができる。
【0077】
浄水カートリッジ3における張出筒部88のように、容器本体の胴部から張り出した部分を有する浄水カートリッジは、横置きした際に当該部分によって転がることが抑制される点で有利である。
容器本体の第1端部に出水口が形成され、第2端部に入水口が形成され、浄水カートリッジ3のような外側通水路を設けない態様の浄水カートリッジにおいても、転がり防止のために容器本体の胴部から張り出す張出部を設けてもよい。
【0078】
浄水カートリッジ1〜3では、粒状活性炭層の下流側に中空糸膜モジュールが設けられていたが、本発明の浄水カートリッジにおいては、粒状活性炭層の上流側に中空糸膜モジュールが設けられていてもよい。出水口から得られる浄化された水に、細菌や粒状活性炭が含まれることを抑制しやすい点では、粒状活性炭層の下流側に中空糸膜モジュールが設けられる態様が好ましい。また、本発明の浄水カートリッジは、中空糸膜モジュールが設けられていないものであってもよい。
【0079】
本発明の浄水カートリッジは、容器本体における第1端部や第2端部に入水口及び出水口が形成される態様には限定されず、容器本体の胴部における第1端部寄りの部分や第2端部寄りの部分に入水口及び出水口が形成される態様であってもよい。
【実施例】
【0080】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[実施例1]
図1〜3に例示した浄水カートリッジ1を作製した。
濾材容器20には内径74mmのアクリルパイプを用いた。容器本体10における長さLを300mm、最大径dを100mm、比(L/d)を3.0、間隙42の間隔を1mm、d1/d2を0.99(d1=25mm、d2=25.25mm)とした。
粒状活性炭層14は、活性炭収納部32内において、出水口28aと反対側の目皿40の内面とスペーサー部材12との間の空間と、スペーサー部材12の内部に、粒状活性炭(クラレケミカル株式会社製 TSB48/100 THM Lot.No.310−01)を470cc充填して形成した。
中空糸膜60としては、三菱レイヨン株式会社製の製品名「EX270TH−25」を使用し、中空糸膜モジュール58における中空糸膜の有効膜面積は0.64m
2とした。
【0081】
[比較例1]
活性炭収納部32内にスペーサー部材12を設けなかった以外は、実施例1と同様の浄水カートリッジを作製した。
【0082】
[フラックス試験]
作製した浄水カートリッジについて、「JIS S 3201:2010 家庭用浄水器試験方法」に準拠し、水温20±0.2℃に調整したA2グレード水を原水として、3.0(リットル/分)の濾過流量にて10分間連続通水した後、瞬時流量(フラックス、単位時間単位面積あたりに流れる量)を測定した。注水圧力に対する瞬時流量の測定結果を
図7に示す。
【0083】
図7に示すように、実施例1では3.0(リットル/分)の瞬時流量(フラックス)を得るために約40kPaの注水圧力が必要であったのに対し、比較例1では約55kPaの注水圧力が必要であった。このように、実施例1の浄水カートリッジは、比較例1の浄水カートリッジよりも圧力損失を低下させることができた。
【0084】
[クロロホルム濾過能力試験]
実施例1で作製した浄水カートリッジ1を横置きに設置し、「JIS S 3201:2010 家庭用浄水器試験方法」に準拠して、濾過流量を3.0(リットル/分)に一定にしてクロロホルム濾過能力試験を行った。原水としては、TOC(全有機炭素)濃度を活性炭濾過によって0.5[mg/リットル]以下にし、さらに水温が20±0.2℃、クロロホルム濃度が0.060±0.012(mg/リットル)となるように調整した水を用いた。得られた結果を
図8に示す。
【0085】
図8に示すように、実施例1の浄水カートリッジでは、クロロホルム除去率が80%となるまでの積算流量(寿命)が約11000リットルとなった。
なお、使用した粒状活性炭(クラレケミカル株式会社製 TSB48/100 THM Lot.No.310−01)の単位体積あたりのクロロホルムろ過能力は23L/cc(SV380/時間)であり、シミュレーションでは積算流量(寿命)は10810Lと推測された。このように、積算流量(寿命)の測定結果がシミュレーション結果とほぼ同等であったことから、実施例1の浄水カートリッジにおいては、濾材効率を落とすことなく、濾過流量を底上げすることが可能であることがわかった。