(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の実施の形態における電力変換装置(DC/DCコンバータ)100の基本構成を示す。電力変換装置100は、直流電源10、リアクトル12、第1スイッチング素子14、第2スイッチング素子16及びコンデンサ18を含んで構成される。
【0018】
直流電源10の正極にリアクトル12の一端が接続され、リアクトル12の他端には第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16の接続点Cが接続される。第1スイッチング素子14の他端は負荷102への出力端(OUT+)に接続され、第2スイッチング素子16の他端は直流電源10の負極(OUT−)に接続される。また、出力端と直流電源10の負極との間には電圧を平滑化させるためにコンデンサ18が接続される。
【0019】
なお、本実施の形態では、第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16はNPNトランジスタとする。第1スイッチング素子14は、出力端側がコレクタ、リアクトル12側がエミッタとされる。第2スイッチング素子16は、リアクトル12側がコレクタ、直流電源10の負極側がエミッタとされる。また、第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のそれぞれに並列に環流ダイオードが接続される。
【0020】
電力変換装置100において、第1スイッチング素子14をオフ状態及び第2スイッチング素子16をオン状態とすることで、リアクトル12を介して直流電源10の正極から負極に向けたリアクトル電流i
Lが流れる。これによって、リアクトル12にエネルギーが蓄積される。次に、ノズルボディ第2スイッチング素子16をオフ状態とすることで、リアクトル電流i
Lが遮断され、リアクトル12の端部に直流電源10の電圧(電池電圧v
b)よりも高い電圧が生じ、これに応じた電流が出力端に向けて流れてコンデンサ18が充電されてコンデンサ電圧v
cが上昇する。このコンデンサ電圧v
cが負荷102に印加される。電力変換装置100の出力電圧、すなわちコンデンサ電圧v
cは、第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のオン期間(オン時間)の比であるデューティ比によって決定される。
【0021】
電力変換装置100は、制御装置104によって制御される。本実施の形態では、電力変換装置100の現在の状態値が制御装置104へ入力され、制御装置104は入力された状態値に応じて電力変換装置100を制御する。状態値として、直流電源10の電圧v
b、リアクトル12を流れるリアクトル電流i
L、コンデンサ18の両端のコンデンサ電圧v
c、負荷であるモータの電流i
u,i
w及びモータの回転角θが制御装置104へ入力される。制御装置104は、モータの電流i
u,i
w及びモータの回転角θから電力変換装置100の出力電流i
mを算出する。
【0022】
図2は、制御装置104の構成を示す図である。制御装置104は、演算器20、オブザーバ22、モデル予測制御器(MPC)24及びリミッタ26を含んで構成される。
【0023】
演算器20は、電力変換装置100の制御の目標となるコンデンサ電圧指令値v
c*及びコンデンサ18の現在の電圧値であるコンデンサ電圧v
cを受けて、リアクトル12を流れる電流の制御の目標値であるリアクトル電流指令値i
L*を生成して出力する。リアクトル電流指令値i
L*は、MPC24に入力される。
【0024】
オブザーバ22は、コンデンサ電圧指令値v
c*、コンデンサ電圧v
c、リアクトル電流i
L、電源電圧v
b及び出力電流i
mを受けて、これらの値から現在の誤差デューティ比Δd(=Δd(k))の推定値を算出して出力する。なお、以下において、図中の推定値には上付の波線(チルダ)付して示す。
【0025】
ここで、電力変換装置100の状態方程式は数式(1)にて表される。ここで、コンデンサ電圧v
c、リアクトル電流i
L、電源電圧v
b、出力電流(負荷電流)i
m、リアクトル12の値(インダクタンス)L、コンデンサ18の値(キャパシタンス)C、リアクトル12の抵抗値R
L及びデューティ比dである。
【数3】
【0026】
数式(1)にデッドタイムを考慮した誤差デューティ比Δdを組み込むと数式(2)に示す状態方程式となる。
【数4】
【0027】
数式(2)を双1次変換を用いて離散化させると数式(3)のように示される。
【数5】
【0028】
数式(3)に基づいて、コンデンサ18の電圧の予測値であるコンデンサ電圧予測値(チルダ)v
c〜(k)、リアクトル12の電流の予測値であるリアクトル電流予測値(チルダ)i
L〜(k)及び誤差デューティ比の予測値である誤差デューティ比予測値(チルダ)Δd
〜(k)は数式(4)のように表すことができる。ここで、制御周期Tであり、h
1〜h
3は比例定数である。
【数6】
【0029】
オブザーバ22は、入力されたコンデンサ電圧指令値v
c*、コンデンサ電圧v
c、リアクトル電流i
L、電源電圧v
b及び出力電流i
mを数式(4)の代入することによって、現在の誤差デューティ比Δd(=Δd(k))の推定値を算出する。なお、推定される誤差デューティ比推定値Δd
〜(=Δd
〜(k)(チルダ))は、数式(4)におけるkをk−1に読み替えて処理することによって算出することができる。算出された誤差デューティ比推定値Δd
〜(=Δd
〜(k)(チルダ))は、MPC24に入力される。
【0030】
なお、kは、制御回数を示す。例えば、d(k)は、k回目の制御におけるデューティ比dを表し、d(k+1)は、k+1回目の制御におけるデューティ比dを表す。他の状態量についても同様である。
【0031】
MPC24は、電力変換装置100の状態方程式を用いて、第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のデューティ比dを複数の異なる値に変化させたときの電力変換装置100における所定の状態値(状態量)に対する予測値を算出し、状態値(状態量)の目標を示す指令値と予測値との差に応じて電力変換装置100を制御する。
【0032】
本実施の形態では、MPC24は、所定の状態値としてリアクトル12を流れる電流の予測値であるリアクトル電流予測値i
L^(ハット)を算出する。そして、MPC24は、リアクトル電流指令値i
L*に近づくようなリアクトル電流予測値i
L^(ハット)となるデューティ比dを求める処理を行う。
【0033】
MPC24は、
図3に示すように、加算器30(30−2〜30−129)、予測演算器32(32−1〜32−129)、評価関数演算器34(34−1〜34−129)、最小値選択器36を含んで構成される。
【0034】
加算器30(30−2〜30−129)は、現在のデューティ比d(k)に所定値を加算することによりデューティ比d(k)に変化を与えて出力する。本実施の形態では、デューティ比d(k)は、0〜1023の値の範囲で表されるものとする。すなわち、下アームである第2スイッチング素子16が常時オンであり、上アームである第1スイッチング素子14が常時オフである状態のときのデューティ比dが0で表されるものとする。また、下アームである第2スイッチング素子16が常時オフであり、上アームである第1スイッチング素子14が常時オンである状態のときのデューティ比dが1023で表されるものとする。加算器30は、現在のデューティ比d(k)を中心値として、d(k)±64の範囲で変化を与えて出力する。変化の範囲は、電力変換装置100のデッドタイムの期間及びPWM周期に基づいて設定することが好適である。例えば、デッドタイム/PWM周期×デューティ比dの数値範囲で算出される値よりも大きな変換の範囲とすることが好適である。具体的には、デッドタイムが5μs、PWM周期が100μsである場合、デューティ比dを0〜1023の範囲で表した場合には5/100×1023=51よりも大きい数値範囲を変化の範囲とすることが好適である。一方、演算負荷をできるだけ小さくするために、変化の範囲はできるだけ狭い方が好適である。そこで、本実施の形態では、変化の範囲を±64とした例を示している。
【0035】
加算器30−2は、現在のデューティ比d(k)に1を加算してd(k)+1を出力する。加算器30−3は、現在のデューティ比d(k)に2を加算してd(k)+2を出力する。同様に、加算器30−4〜加算器30−65は、現在のデューティ比d(k)にそれぞれ3〜64を加算して出力する。また、加算器30−66は、現在のデューティ比d(k)から1を減算してd(k)−1を出力する。加算器30−67は、現在のデューティ比d(k)から2を減算してd(k)−2を出力する。同様に、加算器30−68〜加算器30−129は、現在のデューティ比d(k)からそれぞれ3〜64を減算して出力する。加算器30−2〜30−129からの出力は、それぞれ予測演算器32−2〜32−129へ入力される。
【0036】
予測演算器32は、加算器30からの出力、コンデンサ電圧v
c、リアクトル電流i
L、電源電圧v
b、出力電流(負荷電流)i
m及び誤差デューティ比Δd
〜(=Δd
〜(k)(チルダ))を用いてリアクトル12を流れる電流の予測値であるリアクトル電流予測値i
L^(ハット)を算出して出力する。
【0037】
リアクトル電流予測値i
L^(ハット)は、数式(3)において、左辺の2行目i
L(k+1)をi
L^[d(k)+a](ハット)、右辺のΔd(k)をΔd
〜(k)(チルダ)に置き換えて展開した数式(5)を用いて算出される。
【数7】
【0038】
予測演算器32−1は、数式(5)のaを0としてi
L^[d(k)](ハット)を算出して出力する。予測演算器32−2は、数式(5)のaを1としてi
L^[d(k)+1](ハット)を算出して出力する。同様に、予測演算器32−3〜予測演算器32−65は、それぞれaを2〜64としてi
L^[d(k)+a](ハット)を算出して出力する。予測演算器32−66は、数式(5)のaを−1としてi
L^[d(k)−1](ハット)を算出して出力する。予測演算器32−67は、数式(5)のaを−2としてi
L^[d(k)−2](ハット)を算出して出力する。同様に、予測演算器32−68〜予測演算器32−129は、それぞれaを−3〜−64としてi
L^[d(k)+a](ハット)を算出して出力する。予測演算器32−1〜32−129の出力は、それぞれ評価関数演算器34−1〜34−129へ入力される。
【0039】
評価関数演算器34は、コンデンサ電圧指令値v
c*、予測演算器32から入力されたリアクトル電流予測値i
L^(ハット)、演算器20から入力されたリアクトル電流指令値i
L*に基づいて評価関数Jの演算を行い、演算結果を出力する。評価関数Jは、数式(6)にて表される。
【数8】
【0040】
評価関数演算器34−1は、数式(6)のaを0としてJ[d(k)]を算出して出力する。評価関数演算器34−2は、数式(6)のaを1としてJ[d(k)+1]を算出して出力する。同様に、評価関数演算器34−3〜評価関数演算器34−65は、それぞれaを2〜64としてJ[d(k)+a]を算出して出力する。評価関数演算器34−66は、数式(6)のaを−1としてJ[d(k)−1]を算出して出力する。評価関数演算器34−67は、数式(6)のaを−2としてJ[d(k)−2]を算出して出力する。同様に、評価関数演算器34−68〜評価関数演算器34−129は、それぞれaを−3〜−64としてJ[d(k)+a]を算出して出力する。評価関数演算器34−1〜34−129の出力は、最小値選択器36へ入力される。
【0041】
なお、評価関数Jは、数式(7)としてもよい。この場合も、評価関数演算器34−1〜評価関数演算器34−129にてそれぞれJ[d(k)],J[d(k)+1]・・・J[d(k)−64]を算出して出力する。
【数9】
【0042】
最小値選択器36は、評価関数演算器34−1〜評価関数演算器34−129にて算出されたJ[d(k)],J[d(k)+1]・・・J[d(k)−64]のうち最小値を選択し、評価関数Jを最小値とするd(k)+aを次の制御の際のデューティ比d(k+1)として出力する。
【0043】
リミッタ26は、MPC24から出力されたデューティ比d(k+1)の入力をうけ、入力されたデューティ比d(k+1)が最適デューティ比範囲DR内になるように制限する。
【0044】
図4は、電力変換装置100からの出力Pとデューティ比dとの関係を示す。
図4に示すように、出力Pを最大出力Pmaxとするためにはデューティ比dを電源電圧v
b/(2×コンデンサ電圧v
c)となるように電力変換装置100を制御すればよい。一方、デューティ比dが電源電圧v
b/(2×コンデンサ電圧v
c)を下回るように電力変換装置100を制御すると、出力Pが低下してしまう。そこで、デューティ比dを電源電圧v
b/(2×コンデンサ電圧v
c)を下限とした範囲となるように電力変換装置100を制御することが好適である。なお、最適デューティ比範囲DRは、必ずしも電源電圧v
b/(2×コンデンサ電圧v
c)を下限とした範囲に設定する必要はなく、例えば、
図5に示すように、最大出力Pmaxよりも小さい出力値Paを出力上限としたときのデューティ比d
Lをその下限に設定してもよい。さらに、出力値Pbを回生上限としたときのデューティ比d
Hを最適デューティ比範囲DRの上限に設定してもよい。
【0045】
リミッタ26は、MPC24からのデューティ比d(k+1)が設定された最適デューティ比範囲DR内の値であれば、MPC24から出力されたデューティ比d(k+1)をそのまま出力する。また、リミッタ26は、MPC24からのデューティ比d(k+1)が設定された最適デューティ比範囲DR外の値であれば、MPC24から出力されたデューティ比d(k+1)が最適デューティ比範囲DR内に収まるように制限して出力する。
【0046】
制御装置104は、リミッタ26から出力されたデューティ比dとなるように第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のオン期間を制御する。これにより、電力変換装置100は、目標とされるコンデンサ電圧指令値v
c*及びリアクトル電流指令値i
L*となるようにコンデンサ電圧v
c及びリアクトル電流i
Lが制御される。
【0047】
なお、オブザーバ22において、誤差デューティ比推定値Δd
〜(=Δd
〜(k)(チルダ))に加えて、コンデンサ18の電圧の推定値であるコンデンサ電圧推定値v
c〜(v
c〜(k))(チルダ)を算出するようにしてもよい。この場合、予測演算器32では、コンデンサ電圧推定値v
c〜(v
c〜(k))(チルダ)を用いてi
L^[d(k)](ハット)を算出して出力する。リアクトル電流予測値i
L^(ハット)は、数式(3)において、左辺の2行目i
L(k+1)をi
L^[d(k)+a](ハット)、右辺のΔd(k)をΔd
〜(k)(チルダ)、v
c(k)をv
c〜(k)(チルダ)に置き換えて展開した数式(8)を用いて算出される。
【数10】
【0048】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態では、リアクトル12を実際に流れるリアクトル電流i
Lを計測し、そのリアクトル電流i
Lに基づいてデューティ比dを制御する制御装置104の構成について説明した。第2の実施の形態では、電力変換装置200は、
図6に示すように、リアクトル12を流れるリアクトル電流i
Lを計測するためのセンサを備えない。その代わりに、
図7に示すように、制御装置104aに含まれるオブザーバ22aでは、誤差デューティ比推定値Δd
〜(=Δd
〜(k)(チルダ))に加えて、リアクトル12を流れる電流の推定値であるリアクトル電流推定値i
L〜(チルダ)を算出して出力する。
【0049】
オブザーバ22aは、コンデンサ電圧指令値v
c*、コンデンサ電圧v
c、電源電圧v
b及び出力電流i
mを数式(4)に代入することによって、現在の誤差デューティ比推定値Δd
〜(=Δd
〜(k)(チルダ))及びリアクトル電流推定値i
L〜(=i
L〜(k)(チルダ))を算出する。なお、推定される誤差デューティ比推定値Δd
〜(=Δd
〜(k)(チルダ))及びリアクトル電流推定値i
L〜(=i
L〜(k)(チルダ))は、数式(4)におけるkをk−1に読み替えて処理することによって算出することができる。算出された誤差デューティ比推定値Δd
〜(=Δd
〜(k)(チルダ))及びリアクトル電流推定値i
L〜(=i
L〜(k)(チルダ))は、MPC24aに入力される。
【0050】
MPC24aは、電力変換装置200の状態方程式を用いて、第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のデューティ比dを複数の異なる値に変化させたときの電力変換装置200における所定の状態値(状態量)に対する予測値を算出し、状態値(状態量)の目標を示す指令値と予測値との差に応じて電力変換装置200を制御する。MPC24aでの処理は、第1の実施の形態におけるMPC24とほぼ同様であるが、実際のリアクトル電流i
Lの代わりに、オブザーバ22aで求められたリアクトル電流推定値i
L〜(=i
L〜(k)(チルダ))を用いる点で異なる。
【0051】
MPC24aは、
図8に示すように、加算器30(30−2〜30−129)、予測演算器32a(32a−1〜32a−129)、評価関数演算器34(34−1〜34−129)、最小値選択器36を含んで構成される。MPC24とMPC24aとの相違点は、予測演算器32と予測演算器32aとの相違にある。すなわち、予測演算器32aでは、実測されたリアクトル電流i
Lの代わりにオブザーバ22aで求められたリアクトル電流推定値i
L〜(=i
L〜(k)(チルダ))を用いてリアクトル12を流れる電流の予測値であるリアクトル電流予測値i
L^(ハット)を算出して出力する。
【0052】
リアクトル電流予測値i
L^(ハット)は、数式(3)において、左辺の2行目i
L(k+1)をi
L^[d(k)+a](ハット)、右辺のΔd(k)をΔd
〜(k)(チルダ)、右辺のi
L(k)をi
L〜(k)(チルダ)に置き換えて展開した数式(9)を用いて算出される。
【数11】
【0053】
以下、MPC24aの評価関数演算器34及び最小値選択器36では、予測演算器32aで算出されたリアクトル電流予測値i
L^(ハット)を用いて、MPC24と同様に処理が行われる。
【0054】
このようにして、第2の実施の形態における制御装置104aによって、リミッタ26から出力されたデューティ比dとなるように第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のオン期間が制御される。これにより、電力変換装置200は、目標とされるコンデンサ電圧指令値v
c*及びリアクトル電流指令値i
L*となるようにコンデンサ電圧v
c及びリアクトル電流i
Lが制御される。
【0055】
図9(a)〜
図9(c)は、それぞれ第2の実施の形態における制御装置104aによって電力変換装置200を制御したときのコンデンサ電圧指令値v
c*、コンデンサ電圧v
c及び電源電圧v
bを示す。
図10(a)〜
図10(c)は、それぞれ第2の実施の形態における制御装置104aによって電力変換装置200を制御したときのリアクトル電流指令値i
L*、リアクトル電流i
Lが及び出力電流i
mを示す。また、
図11は、デューティ比dの時間変化を示す。
【0056】
なお、
図9、
図10及び
図11では、横軸の時間は同じ時間範囲を示している。また、
図9(a)〜
図9(c)では、縦軸の電流値は同じ電圧範囲を示している。
図10(a)〜
図10(c)では、縦軸の電流値は同じ電流範囲を示している。
【0057】
本実施の形態における制御装置104aによって、
図9〜
図11に示すように、電力変換装置200は目標とされるコンデンサ電圧指令値v
c*及びリアクトル電流指令値i
L*にコンデンサ電圧v
c及びリアクトル電流i
Lが追従するように制御できる。
【0058】
[第3の実施の形態]
第1及び第2の実施の形態では、リアクトル12を流れる電流の予測値であるリアクトル電流予測値i
L^(ハット)に基づいてデューティ比dを制御する構成について説明した。第3の実施の形態では、コンデンサ18の電圧の予測値であるコンデンサ電圧予測値v
c^(ハット)に基づいてデューティ比dを制御する構成について説明する。
【0059】
第3の実施の形態では、
図6と同様に、電力変換装置200は、制御装置104aにより制御される。ただし、制御装置104aは、
図12に示すように、リアクトル電流予測値i
L^(ハット)に基づいて処理を行うMPC24aの代わりに、コンデンサ電圧予測値v
c^(ハット)に基づいて処理を行うMPC24bを備える。MPC24bは、
図13に示すように、リアクトル電流予測値i
L^(ハット)を算出する予測演算器32,32aの代わりに、コンデンサ電圧予測値v
c^(ハット)を算出する予測演算器32bを備える。
【0060】
MPC24bは、電力変換装置200の状態方程式を用いて、第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のデューティ比dを複数の異なる値に変化させたときの電力変換装置200における所定の状態値(状態量)に対する予測値を算出し、状態値(状態量)の目標を示す指令値と予測値との差に応じて電力変換装置200を制御する。MPC24bは、オブザーバ22aで求められたリアクトル電流推定値i
L〜(=i
L〜(k)(チルダ))を用いてコンデンサ電圧予測値v
c^(ハット)を算出し、コンデンサ電圧予測値v
c^(ハット)に基づいてデューティ比dを制御する。
【0061】
MPC24aは、
図13に示すように、加算器30(30−2〜30−129)、予測演算器32b(32b−1〜32b−129)、評価関数演算器34b(34b−1〜34b−129)、最小値選択器36bを含んで構成される。
【0062】
予測演算器32bでは、リアクトル電流推定値i
L〜(=i
L〜(k)(チルダ))を用いてコンデンサ18の電圧の予測値であるコンデンサ電圧予測値v
c^(ハット)を算出して出力する。
【0063】
コンデンサ電圧予測値v
c^(ハット)は、数式(3)において、左辺の1行目v
c(k+1)をv
c^[d(k)+a](ハット)、右辺のΔd(k)をΔd
〜(k)(チルダ)、右辺のi
L(k)をi
L〜(k)(チルダ)に置き換えて展開した数式(10)を用いて算出される。
【数12】
【0064】
評価関数演算器34bは、コンデンサ電圧指令値v
c*、予測演算器32bから入力されたコンデンサ電圧予測値v
c^(ハット)に基づいて評価関数Jの演算を行い、演算結果を出力する。評価関数Jは、数式(11)にて表される。
【数13】
【0065】
評価関数演算器34b−1は、数式(11)のaを0としてJ[d(k)]を算出して出力する。評価関数演算器34b−2は、数式(11)のaを1としてJ[d(k)+1]を算出して出力する。同様に、評価関数演算器34b−3〜評価関数演算器34b−65は、それぞれaを2〜64としてJ[d(k)+a]を算出して出力する。評価関数演算器34b−66は、数式(11)のaを−1としてJ[d(k)−1]を算出して出力する。評価関数演算器34b−67は、数式(11)のaを−2としてJ[d(k)−2]を算出して出力する。同様に、評価関数演算器34b−68〜評価関数演算器34b−129は、それぞれaを−3〜−64としてJ[d(k)+a]を算出して出力する。評価関数演算器34b−1〜34b−129の出力は、最小値選択器36bへ入力される。
【0066】
なお、評価関数Jは、数式(12)としてもよい。この場合も、評価関数演算器34b−1〜評価関数演算器34b−129にてそれぞれJ[d(k)],J[d(k)+1]・・・J[d(k)−64]を算出して出力する。
【数14】
【0067】
最小値選択器36bは、評価関数演算器34b−1〜評価関数演算器34b−129にて算出されたJ[d(k)],J[d(k)+1]・・・J[d(k)−64]のうち最小値を選択し、評価関数Jを最小値とするd(k)+aを次の制御の際のデューティ比d(k+1)として出力する。
【0068】
このようにして、第3の実施の形態における制御装置104aによって、リミッタ26から出力されたデューティ比dとなるように第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のオン期間が制御される。これにより、電力変換装置200は、目標とされるコンデンサ電圧指令値v
c*となるようにコンデンサ電圧v
cが制御される。
【0069】
図14(a)〜
図14(c)は、それぞれ第3の実施の形態における制御装置104aによって電力変換装置200を制御したときのコンデンサ電圧指令値v
c*、コンデンサ電圧v
c及び電源電圧v
bを示す。
図15(a)〜
図15(b)は、それぞれ第3の実施の形態における制御装置104aによって電力変換装置200を制御したときのリアクトル電流i
Lが及び出力電流i
mを示す。また、
図16は、デューティ比dの時間変化を示す。
【0070】
なお、
図14、
図15及び
図16では、横軸の時間は同じ時間範囲を示している。また、
図14(a)〜
図14(c)では、縦軸の電流値は同じ電圧範囲を示している。
図15(a)〜
図15(b)では、縦軸の電流値は同じ電流範囲を示している。
【0071】
本実施の形態における制御装置104aによって、
図14〜
図16に示すように、電力変換装置200は目標とされるコンデンサ電圧指令値v
c*にコンデンサ電圧v
cが追従するように制御できる。
【0072】
なお、
図1に示すように、リアクトル電流i
Lを実測する構成とし、評価関数演算器34bにおいて、リアクトル電流推定値i
L〜(チルダ)の代わりにリアクトル電流i
Lを用いてコンデンサ電圧予測値v
c^(ハット)を算出してもよい。
【0073】
この場合、コンデンサ電圧予測値v
c^(ハット)は、数式(3)において、左辺の1行目v
c(k+1)をv
c^[d(k)+a](ハット)、右辺のΔd(k)をΔd
〜(k)(チルダ)に置き換えて展開した数式(13)を用いて算出される。
【数15】
【0074】
[変形例1]
電力変換装置100,200において、リアクトル電流に応じてリアクトル12の値L(インダクタンス)は変化する。そこで、第1〜第3の実施の形態における制御において、リアクトル12に流れるリアクトル電流i
L又はその予測値であるリアクトル電流推定値i
L〜に応じてリアクトル12の値L(インダクタンス)を変更することが好適である。
【0075】
図17は、電流値に対するリアクトル12の値L(インダクタンス)の変化を示す図である。
図17において、横軸の電流値は最大電流を1として正規化し、縦軸のリアクトル12の値L(インダクタンス)は電流値が0のときを1として正規化して示している。
【0076】
第1〜第3の実施の形態において、制御に用いられるリアクトル電流i
L又はリアクトル電流推定値i
L〜に応じたリアクトル12の値L(インダクタンス)を各数式に適用することによって、電力変換装置100,200に対してより適切な制御を行うことができる。
【0077】
[変形例2]
上記実施の形態では、数式(1)にデッドタイムを考慮した誤差デューティ比Δdを組み込んだ数式(2)を元に制御を行ったが、数式(1)に基づいて状態方程式を離散化させた数式(14)を用いて状態値を予測する処理を行ってもよい。
【数16】
【0078】
このとき、数式(14)の左辺の2行目i
L(k+1)をi
L^[d(k)+a](ハット)に置き換えて展開した数式(15)を用いてリアクトル電流予測値i
L^[d(k)+a](ハット)を算出すればよい。他の実施の形態に対応する変形も同様に行えばよい。
【数17】
【0079】
なお、上記実施の形態及び変形例では、同一次元オブザーバとしたが、最小次元オブザーバを適用してもよい。また、双1次変換を利用して状態方程式を離散化したが、これに限定されるものではなく、0次ホールド、前進差分、後退差分を利用して離散化させてもよい。