特許第6669631号(P6669631)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6669631
(24)【登録日】2020年3月2日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】DC/DCコンバータの制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20200309BHJP
【FI】
   H02M3/155 H
   H02M3/155 F
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-211875(P2016-211875)
(22)【出願日】2016年10月28日
(65)【公開番号】特開2018-74747(P2018-74747A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 堅滋
【審査官】 柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−013301(JP,A)
【文献】 特開2008−182839(JP,A)
【文献】 特開2008−017677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC/DCコンバータを制御する制御装置であって、
前記DC/DCコンバータの現在の状態値に応じて、前記DC/DCコンバータに含まれるスイッチング素子のオン時間の比であるデューティ比dに対する誤差デューティ比Δdを推定するオブザーバと、
前記DC/DCコンバータの状態方程式を前記デューティ比dの二次方程式に変形し、前記誤差デューティ比Δdを前記二次方程式に導入することによって前記デューティ比dを定めるモデル予測制御器と、
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記DC/DCコンバータは、電源に接続されるリアクトルと、前記リアクトルに流れる電流を制御する第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子と、前記リアクトルからの出力電圧を平滑化させるコンデンサと、を備え、
前記モデル予測制御器は、前記電源の電源電圧v、前記コンデンサの両端のコンデンサ電圧v、前記DC/DCコンバータの出力電流i及び前記リアクトルに流れる電流の測定値であるリアクトル電流iを前記二次方程式に適用することにより前記デューティ比dを定めることを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記DC/DCコンバータは、電源に接続されるリアクトルと、前記リアクトルに流れる電流を制御する第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子と、前記リアクトルからの出力電圧を平滑化させるコンデンサと、を備え、
前記リアクトルに流れるリアクトル電流推定値iを推定するオブザーバを更に備え、
前記モデル予測制御器は、前記電源の電源電圧v、前記コンデンサの両端のコンデンサ電圧v、前記DC/DCコンバータの出力電流i及び前記リアクトル電流推定値iを前記二次方程式に適用することにより前記デューティ比dを定めることを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記DC/DCコンバータは、電源に接続されるリアクトルと、前記リアクトルに流れる電流を制御する第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子と、前記リアクトルからの出力電圧を平滑化させるコンデンサと、を備え、
前記コンデンサの両端のコンデンサ電圧推定値v及び前記リアクトルに流れるリアクトル電流推定値iを推定するオブザーバを更に備え、
前記モデル予測制御器は、前記電源の電源電圧v、前記コンデンサの両端のコンデンサ電圧推定値v、前記DC/DCコンバータの出力電流i及び前記リアクトル電流推定値iを前記二次方程式に適用することにより前記デューティ比dを定めることを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の制御装置であって、
前記リアクトルに流れる電流に応じて前記リアクトルの値を設定し、当該リアクトルの値を前記二次方程式に適用することを特徴とする制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC/DCコンバータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図15は、従来の昇圧型のDC/DCコンバータの構成を示す図である。昇圧型のDC/DCコンバータでは、FET等のスイッチング素子をスイッチング制御することによって、電源Eの電圧を昇圧して負荷Rに出力電圧vとして出力させる。
【0003】
このような昇圧型のDC/DCコンバータに対して、図16に示すようにモデル予測制御器MPCを適用した制御装置が開示されている(非特許文献1)。出力電圧に対する目標値vと出力電圧vの誤差から指令値v’を生成し、その指令値v’及びDC/DCコンバータの現在の状態値xに応じてモデル予測制御器MPCにおいてDC/DCコンバータの状態を予測し、その予測値に基づいてDC/DCコンバータを制御する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「昇圧型DC−DCコンバータのモデル予測制御とその実装」、劉康志、片根保、平成25年電気学会全国大会4−003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の制御技術では、デューティ比毎にリアクトル電流予測値及び評価関数を算出し、評価関数が最少となるデューティ比を選択する探索方式を採用しているが、制御周期が短くなると演算負荷が膨大となり現実的な使用が困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様は、DC/DCコンバータを制御する制御装置であって、前記DC/DCコンバータの現在の状態値に応じて、前記DC/DCコンバータに含まれるスイッチング素子のオン時間の比であるデューティ比dに対する誤差デューティ比Δdを推定するオブザーバと、前記DC/DCコンバータの状態方程式を前記デューティ比dの二次方程式に変形し、前記誤差デューティ比Δdを前記二次方程式に導入することによって前記デューティ比dを定めるモデル予測制御器と、を備えることを特徴とする制御装置である。
【0007】
ここで、前記DC/DCコンバータは、電源に接続されるリアクトルと、前記リアクトルに流れる電流を制御する第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子と、前記リアクトルからの出力電圧を平滑化させるコンデンサと、を備え、前記モデル予測制御器は、前記電源の電源電圧v、前記コンデンサの両端のコンデンサ電圧v、前記DC/DCコンバータの出力電流i及び前記リアクトルに流れる電流の測定値であるリアクトル電流iを前記二次方程式に適用することにより前記デューティ比dを定めることが好適である。
【0008】
また、前記DC/DCコンバータは、電源に接続されるリアクトルと、前記リアクトルに流れる電流を制御する第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子と、前記リアクトルからの出力電圧を平滑化させるコンデンサと、を備え、前記リアクトルに流れるリアクトル電流推定値(チルダ)iを推定するオブザーバを更に備え、前記モデル予測制御器は、前記電源の電源電圧v、前記コンデンサの両端のコンデンサ電圧v、前記DC/DCコンバータの出力電流i及び前記リアクトル電流推定値(チルダ)iを前記二次方程式に適用するこにより前記デューティ比dを定めることが好適である。
【0009】
また、前記DC/DCコンバータは、電源に接続されるリアクトルと、前記リアクトルに流れる電流を制御する第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子と、前記リアクトルからの出力電圧を平滑化させるコンデンサと、を備え、前記コンデンサの両端のコンデンサ電圧推定値(チルダ)v及び前記リアクトルに流れるリアクトル電流推定値(チルダ)iを推定するオブザーバを更に備え、前記モデル予測制御器は、前記電源の電源電圧v、前記コンデンサの両端のコンデンサ電圧推定値(チルダ)v、前記DC/DCコンバータの出力電流i及び前記リアクトル電流推定値(チルダ)iを前記二次方程式に適用することにより前記デューティ比dを定めることが好適である。
【0010】
また、前記リアクトルに流れる電流に応じて前記リアクトルの値を設定し、当該リアクトルの値を前記二次方程式に適用することが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、デッドタイムを考慮して電力変換装置を適切制御できる制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施の形態における電力変換装置の基本構成を示す図である。
図2】第1の実施の形態における制御装置の構成を示す図である。
図3】電力変換装置の出力特性を示す図である。
図4】電力変換装置の出力特性を示す図である。
図5】第2の実施の形態における電力変換装置の基本構成を示す図である。
図6】第2の実施の形態における制御装置の構成を示す図である。
図7】第2の実施の形態における電圧制御の例を示すグラフである。
図8】第2の実施の形態における電流制御の例を示すグラフである。
図9】第2の実施の形態におけるデューティ比制御の例を示すグラフである。
図10】第3の実施の形態における制御装置の構成を示す図である。
図11】第3の実施の形態における電圧制御の例を示すグラフである。
図12】第3の実施の形態における電流制御の例を示すグラフである。
図13】第3の実施の形態におけるデューティ比制御の例を示すグラフである。
図14】リアクトル電流とリアクトルの値(インダクタンス)との関係を示す図である。
図15】従来の電力変換装置の構成を示す図である。
図16】従来技術による電力変換装置の制御装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施の形態>
図1は、本発明の実施の形態における電力変換装置(DC/DCコンバータ)100の基本構成を示す。電力変換装置100は、直流電源10、リアクトル12、第1スイッチング素子14、第2スイッチング素子16及びコンデンサ18を含んで構成される。
【0014】
直流電源10の正極にリアクトル12の一端が接続され、リアクトル12の他端には第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16の接続点Cが接続される。第1スイッチング素子14の他端は負荷102への出力端(OUT+)に接続され、第2スイッチング素子16の他端は直流電源10の負極(OUT−)に接続される。また、出力端と直流電源10の負極との間には電圧を平滑化させるためにコンデンサ18が接続される。
【0015】
なお、本実施の形態では、第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16はNPNトランジスタとする。第1スイッチング素子14は、出力端側がコレクタ、リアクトル12側がエミッタとされる。第2スイッチング素子16は、リアクトル12側がコレクタ、直流電源10の負極側がエミッタとされる。また、第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のそれぞれに並列に環流ダイオードが接続される。
【0016】
電力変換装置100において、第1スイッチング素子14をオフ状態及び第2スイッチング素子16をオン状態とすることで、リアクトル12を介して直流電源10の正極から負極に向けたリアクトル電流iが流れる。これによって、リアクトル12にエネルギーが蓄積される。次に、第1スイッチング素子14をオン状態及び第2スイッチング素子16をオフ状態とすることで、リアクトル電流iが遮断され、リアクトル12の端部に直流電源10の電圧(電池電圧v)よりも高い電圧が生じ、これに応じた電流が出力端に向けて流れてコンデンサ18が充電されてコンデンサ電圧vが上昇する。このコンデンサ電圧vが負荷102に印加される。電力変換装置100の出力電圧、すなわちコンデンサ電圧vは、第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のオン期間(オン時間)の比であるデューティ比によって決定される。
【0017】
電力変換装置100は、制御装置104によって制御される。本実施の形態では、電力変換装置100の現在の状態値が制御装置104へ入力され、制御装置104は入力された状態値に応じて電力変換装置100を制御する。状態値として、直流電源10の電圧v、リアクトル12を流れるリアクトル電流i、コンデンサ18の両端のコンデンサ電圧v、負荷であるモータの電流i,i及びモータの回転角θが制御装置104へ入力される。制御装置104は、モータの電流i,i及びモータの回転角θから電力変換装置100の出力電流iを算出する。
【0018】
図2は、制御装置104の構成を示す図である。制御装置104は、演算器20、オブザーバ22、モデル予測制御器(MPC)24及びリミッタ26を含んで構成される。
【0019】
演算器20は、電力変換装置100の制御の目標となるコンデンサ電圧指令値v及びコンデンサ18の現在の電圧値であるコンデンサ電圧vを受けて、リアクトル12を流れる電流の制御の目標値であるリアクトル電流指令値iを生成して出力する。リアクトル電流指令値iは、MPC24に入力される。
【0020】
オブザーバ22は、コンデンサ電圧指令値v、コンデンサ電圧v、リアクトル電流i、電源電圧v及び出力電流iを受けて、これらの値から現在の誤差デューティ比Δd(=Δd(k))の推定値を算出して出力する。なお、以下において、図中の推定値には上付の波線(チルダ)付して示す。
【0021】
ここで、電力変換装置100の状態方程式は数式(1)にて表される。ここで、コンデンサ電圧v、リアクトル電流i、電源電圧v、出力電流(負荷電流)i、リアクトル12の値(インダクタンス)L、コンデンサ18の値(キャパシタンス)C、リアクトル12の抵抗値R及びデューティ比dである。
【数1】
【0022】
数式(1)にデッドタイムを考慮した誤差デューティ比Δdを組み込むと数式(2)に示す状態方程式となる。
【数2】
【0023】
数式(2)を双1次変換を用いて離散化させると数式(3)のように示される。
【数3】
【0024】
数式(3)に基づいて、コンデンサ18の電圧の予測値であるコンデンサ電圧予測値(チルダ)v(k)、リアクトル12の電流の予測値であるリアクトル電流予測値(チルダ)i(k)及び誤差デューティ比の予測値である誤差デューティ比予測値(チルダ)Δd(k)は数式(4)のように表すことができる。ここで、制御周期Tであり、h〜hは比例定数である。
【数4】
【0025】
オブザーバ22は、入力されたコンデンサ電圧指令値v、コンデンサ電圧v、リアクトル電流i、電源電圧v及び出力電流iを数式(4)の代入することによって、現在の誤差デューティ比Δd(=Δd(k))の推定値を算出する。なお、推定される誤差デューティ比推定値Δd(=Δd(k)(チルダ))は、数式(4)におけるkをk−1に読み替えて処理することによって算出することができる。算出された誤差デューティ比推定値Δd(=Δd(k)(チルダ))は、MPC24に入力される。
【0026】
なお、kは、制御回数を示す。例えば、d(k)は、k回目の制御におけるデューティ比dを表し、d(k+1)は、k+1回目の制御におけるデューティ比dを表す。他の状態量についても同様である。
【0027】
MPC24は、電力変換装置100の状態方程式を第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のデューティ比dに対する二次方程式に変形し、当該二次方程式にオブザーバ22で算出された誤差デューティ比推定値Δd(=Δd(k)(チルダ))を適用することでデューティ比dを算出する。制御装置104は、算出されたデューティ比dを用いて電力変換装置100を制御する。
【0028】
数式(3)の左辺の2行目i(k+1)をi^*(k)、右辺のΔd(k)をΔd(k)(チルダ)に置き換えて、デューティ比d(k)に対する二次方程式に変更すると数式(5)となる。
【数5】
【0029】
数式(5)の二次方程式をデューティ比d(k+1)に対して解くと、数式(6)で表される。
【数6】
【0030】
MPC24は、数式(6)に、電力変換装置100の各状態量及びオブザーバ22で算出された誤差デューティ比推定値Δd(=Δd(k)(チルダ))を代入することによって制御に用いるデューティ比d(k+1)を算出する。
【0031】
リミッタ26は、MPC24から出力されたデューティ比d(k+1)の入力をうけ、入力されたデューティ比d(k+1)が最適デューティ比範囲DR内になるように制限する。
【0032】
図3は、電力変換装置100からの出力Pとデューティ比dとの関係を示す。図3に示すように、出力Pを最大出力Pmaxとするためにはデューティ比dを電源電圧v/(2×コンデンサ電圧v)となるように電力変換装置100を制御すればよい。一方、デューティ比dが電源電圧v/(2×コンデンサ電圧v)を下回るように電力変換装置100を制御すると、出力Pが低下してしまう。そこで、デューティ比dを電源電圧v/(2×コンデンサ電圧v)を下限とした範囲となるように電力変換装置100を制御することが好適である。なお、最適デューティ比範囲DRは、必ずしも電源電圧v/(2×コンデンサ電圧v)を下限とした範囲に設定する必要はなく、例えば、図4に示すように、最大出力Pmaxよりも小さい出力値Paを出力上限としたときのデューティ比dをその下限に設定してもよい。さらに、出力値Pbを回生上限としたときのデューティ比dを最適デューティ比範囲DRの上限に設定してもよい。
【0033】
リミッタ26は、MPC24からのデューティ比d(k+1)が設定された最適デューティ比範囲DR内の値であれば、MPC24から出力されたデューティ比d(k+1)をそのまま出力する。また、リミッタ26は、MPC24からのデューティ比d(k+1)が設定された最適デューティ比範囲DR外の値であれば、MPC24から出力されたデューティ比d(k+1)が最適デューティ比範囲DR内に収まるように制限して出力する。
【0034】
制御装置104は、リミッタ26から出力されたデューティ比dとなるように第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のオン期間を制御する。これにより、電力変換装置100は、目標とされるコンデンサ電圧指令値v及びリアクトル電流指令値iとなるようにコンデンサ電圧v及びリアクトル電流iが制御される。
【0035】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態では、リアクトル12を実際に流れるリアクトル電流iを計測し、そのリアクトル電流iに基づいてデューティ比dを制御する制御装置104の構成について説明した。第2の実施の形態では、電力変換装置200は、図6に示すように、リアクトル12を流れるリアクトル電流iを計測するためのセンサを備えない。その代わりに、図6に示すように、制御装置104aに含まれるオブザーバ22aでは、誤差デューティ比推定値Δd(=Δd(k)(チルダ))に加えて、リアクトル12を流れる電流の推定値であるリアクトル電流推定値i(チルダ)及びコンデンサ18の電圧の推定値であるコンデンサ電圧推定値v(チルダ)を算出して出力する。
【0036】
オブザーバ22aは、コンデンサ電圧指令値v、コンデンサ電圧v、電源電圧v及び出力電流iを数式(4)の代入することによって、現在の誤差デューティ比推定値Δd(=Δd(k)(チルダ))、リアクトル電流推定値i(=i(k)(チルダ))及びコンデンサ電圧推定値v(=v(k)(チルダ))を算出する。なお、誤差デューティ比推定値Δd(=Δd(k)(チルダ))、リアクトル電流推定値i(=i(k)(チルダ))及びコンデンサ電圧推定値v(=v(k)(チルダ))は、数式(4)におけるkをk−1に読み替えて処理することによって算出することができる。算出された誤差デューティ比推定値Δd(=Δd(k)(チルダ))、リアクトル電流推定値i(=i(k)(チルダ))及びコンデンサ電圧推定値v(=v(k)(チルダ))は、MPC24aに入力される。
【0037】
MPC24aは、電力変換装置200の状態方程式を第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のデューティ比dに対する二次方程式に変形し、当該二次方程式にオブザーバ22aで算出された誤差デューティ比推定値Δd(=Δd(k)(チルダ))、リアクトル電流推定値i(=i(k)(チルダ))及びコンデンサ電圧推定値v(=v(k)(チルダ))を適用することでデューティ比dを算出する。制御装置104aは、算出されたデューティ比dを用いて電力変換装置200を制御する。MPC24aでの処理は、第1の実施の形態におけるMPC24とほぼ同様であるが、実際のリアクトル電流i及びコンデンサ電圧vの代わりに、オブザーバ22aで求められたリアクトル電流推定値i(=i(k)(チルダ))及びコンデンサ電圧推定値v(=v(k)(チルダ))を用いる点で異なる。
【0038】
数式(3)の左辺の2行目i(k+1)をi^*(k)、右辺のΔd(k)をΔd(k)(チルダ)、i(k)をi(k)(チルダ)、v(k)をv(k)(チルダ)に置き換えて、デューティ比d(k)に対する二次方程式に変更すると数式(7)となる。
【数7】
【0039】
数式(7)の二次方程式をデューティ比d(k+1)に対して解くと、数式(8)で表される。
【数8】
【0040】
MPC24aは、数式(8)に、電力変換装置200の各状態量及びオブザーバ22aで算出された誤差デューティ比推定値Δd(=Δd(k)(チルダ))、リアクトル電流推定値i(=i(k)(チルダ))及びコンデンサ電圧推定値v(=v(k)(チルダ))を代入することによって制御に用いるデューティ比d(k+1)を算出する。
【0041】
このようにして、第2の実施の形態における制御装置104aによって、リミッタ26から出力されたデューティ比dとなるように第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のオン期間が制御される。これにより、電力変換装置200は、目標とされるリアクトル電流指令値iとなるように制御される。
【0042】
図7(a)〜図7(c)は、それぞれ第2の実施の形態における制御装置104aによって電力変換装置200を制御したときのコンデンサ電圧指令値v、コンデンサ電圧v及び電源電圧vを示す。図8(a)〜図8(c)は、それぞれ第2の実施の形態における制御装置104aによって電力変換装置200を制御したときのリアクトル電流指令値i、リアクトル電流i及び出力電流iを示す。また、図9は、デューティ比dの時間変化を示す。
【0043】
なお、図7図8及び図9では、横軸の時間は同じ時間範囲を示している。また、図7(a)〜図7(c)では、縦軸の電流値は同じ電圧範囲を示している。図8(a)〜図8(c)では、縦軸の電流値は同じ電流範囲を示している。
【0044】
本実施の形態における制御装置104aによって、図7図9に示すように、電力変換装置200は目標とされるコンデンサ電圧指令値v及びリアクトル電流指令値iにコンデンサ電圧v及びリアクトル電流iが追従するように制御できる。
【0045】
なお、オブザーバ22aにおいて、コンデンサ18の電圧の推定値であるコンデンサ電圧推定値v(v(k))(チルダ)を用いずに、コンデンサ18の電圧の実測値であるコンデンサ電圧vを用いてもよい。この場合、数式(8)においてコンデンサ電圧推定値v(=v(k)(チルダ))をコンデンサ電圧v(k)に置き換えて演算を行えばよい。
【0046】
[第3の実施の形態]
第1及び第2の実施の形態では、リアクトル12を実際に流れるリアクトル電流の目標値であるリアクトル電流指令値iに基づいて制御を行ったが、コンデンサ電圧の目標値であるコンデンサ電圧指令値vに基づいて制御を行ってもよい。図10に示すように、MPC24bでは、コンデンサ電圧指令値vに基づいてデューティ比d(k+1)を求める処理を行う。
【0047】
オブザーバ22aは、第2の実施の形態と同様に、コンデンサ電圧指令値v、コンデンサ電圧v、電源電圧v及び出力電流iを数式(4)の代入することによって、現在の誤差デューティ比推定値Δd(=Δd(k)(チルダ))、リアクトル電流推定値i(=i(k)(チルダ))及びコンデンサ電圧推定値v(=v(k)(チルダ))を算出する。なお、誤差デューティ比推定値Δd(=Δd(k)(チルダ))、リアクトル電流推定値i(=i(k)(チルダ))及びコンデンサ電圧推定値v(=v(k)(チルダ))は、数式(4)におけるkをk−1に読み替えて処理することによって算出することができる。算出された誤差デューティ比推定値Δd(=Δd(k)(チルダ))、リアクトル電流推定値i(=i(k)(チルダ))及びコンデンサ電圧推定値v(=v(k)(チルダ))は、MPC24bに入力される。
【0048】
MPC24bは、電力変換装置200の状態方程式を第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のデューティ比dに対する二次方程式に変形し、当該二次方程式にオブザーバ22aで算出された誤差デューティ比推定値Δd(=Δd(k)(チルダ))、リアクトル電流推定値i(=i(k)(チルダ))及びコンデンサ電圧推定値v(=v(k)(チルダ))を適用することでデューティ比dを算出する。制御装置104aは、算出されたデューティ比dを用いて電力変換装置200を制御する。
【0049】
MPC24bでは、数式(3)を二次方程式に変更して、当該二次方程式を解くことによってデューティ比d(k+1)を算出する。数式(3)の左辺の1行目v(k+1)をv^*(k)、右辺のΔd(k)をΔd(k)(チルダ)、i(k)をi(k)(チルダ)、v(k)をv(k)(チルダ)に置き換えて、デューティ比d(k)に対する二次方程式に変更すると数式(9)となる。
【数9】
【0050】
数式(9)の二次方程式をデューティ比d(k+1)に対して解くと、数式(10)で表される。
【数10】
【0051】
MPC24bは、数式(10)に、電力変換装置200の各状態量及びオブザーバ22aで算出された誤差デューティ比推定値Δd(=Δd(k)(チルダ))、リアクトル電流推定値i(=i(k)(チルダ))及びコンデンサ電圧推定値v(=v(k)(チルダ))を代入することによって制御に用いるデューティ比d(k+1)を算出する。
【0052】
このようにして、第3の実施の形態における制御装置104aによって、リミッタ26から出力されたデューティ比dとなるように第1スイッチング素子14及び第2スイッチング素子16のオン期間が制御される。これにより、電力変換装置200は、目標とされるコンデンサ電圧指令値vとなるように制御される。
【0053】
図11(a)〜図11(c)は、それぞれ第2の実施の形態における制御装置104aによって電力変換装置200を制御したときのコンデンサ電圧指令値v、コンデンサ電圧v及び電源電圧vを示す。図12(a)〜図12(b)は、それぞれ第2の実施の形態における制御装置104aによって電力変換装置200を制御したときのリアクトル電流i及び出力電流iを示す。また、図13は、デューティ比dの時間変化を示す。
【0054】
なお、図11図12及び図13では、横軸の時間は同じ時間範囲を示している。また、図11(a)〜図11(c)では、縦軸の電流値は同じ電圧範囲を示している。図12(a)〜図12(b)では、縦軸の電流値は同じ電流範囲を示している。
【0055】
本実施の形態における制御装置104aによって、図11図13に示すように、電力変換装置200は目標とされるコンデンサ電圧指令値vにコンデンサ電圧vが追従するように制御できる。
【0056】
なお、オブザーバ22aにおいて、コンデンサ18の電圧の推定値であるコンデンサ電圧推定値v(v(k))(チルダ)を用いずに、コンデンサ18の電圧の実測値であるコンデンサ電圧vを用いてもよい。この場合、数式(10)においてコンデンサ電圧推定値v(=v(k)(チルダ))をコンデンサ電圧v(k)に置き換えて演算を行えばよい。
【0057】
[変形例]
電力変換装置100,200において、リアクトル電流に応じてリアクトル12の値L(インダクタンス)は変化する。そこで、第1〜第3の実施の形態における制御において、リアクトル12に流れるリアクトル電流i又は流れると予想されるリアクトル電流推定値(チルダ)iに応じてリアクトル12の値L(インダクタンス)を変更することが好適である。
【0058】
図14は、電流値に対するリアクトル12の値L(インダクタンス)の変化を示す図である。図14において、横軸の電流値は最大電流を1として正規化し、縦軸のリアクトル12の値L(インダクタンス)は電流値が0のときを1として正規化して示している。
【0059】
第1〜第3の実施の形態において、制御に用いられるリアクトル電流i又は予想されるリアクトル電流推定値(チルダ)iに応じたリアクトル12の値L(インダクタンス)を各数式に適用することによって、電力変換装置100,200に対してより適切な制御を行うことができる。
【0060】
なお、上記実施の形態では、同一次元オブザーバとしたが、最小次元オブザーバを適用してもよい。また、双1次変換を利用して状態方程式を離散化したが、これに限定されるものではなく、0次ホールド、前進差分、後退差分を利用して離散化させてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 直流電源、12 リアクトル、14 第1スイッチング素子、16 第2スイッチング素子、18 コンデンサ、20 演算器、22 オブザーバ、22a オブザーバ、26 リミッタ、100,200 電力変換装置、102 負荷、104 制御装置、104a 制御装置。
図1
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図10
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