特許第6669654号(P6669654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6669654湿潤剤を含む逆エマルションの形態の唇用組成物、及びそれを用いた処置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6669654
(24)【登録日】2020年3月2日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】湿潤剤を含む逆エマルションの形態の唇用組成物、及びそれを用いた処置方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20200309BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20200309BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20200309BHJP
   A61K 8/894 20060101ALI20200309BHJP
   A61K 8/97 20170101ALI20200309BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20200309BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   A61K8/06
   A61K8/34
   A61K8/891
   A61K8/894
   A61K8/97
   A61K8/31
   A61Q1/04
【請求項の数】18
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2016-542177(P2016-542177)
(86)(22)【出願日】2014年12月22日
(65)【公表番号】特表2017-500359(P2017-500359A)
(43)【公表日】2017年1月5日
(86)【国際出願番号】EP2014079073
(87)【国際公開番号】WO2015097185
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2017年11月2日
(31)【優先権主張番号】1363424
(32)【優先日】2013年12月23日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ロシャナク・ドゥボー
(72)【発明者】
【氏名】レジーヌ・アンベール
【審査官】 ▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−506614(JP,A)
【文献】 特表2013−542989(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/165130(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 組成物の質量に対して15質量%〜70質量%の、1種又は複数の保湿剤又は湿潤剤を含む水性相、
- 組成物の質量に対して30質量%〜85質量%の親油性相
を含む油中水型エマルションタイプの化粧用組成物であって、該親油性相は、
- 組成物の質量に対して1質量%〜20質量%の、少なくとも1種の極性不揮発性炭化水素系の第1の油、
- 組成物の質量に対して5質量%〜40質量%の、少なくとも1種の揮発性若しくは不揮発性の、炭化水素系又は無極性シリコーン油であり、該組成物はジメチコン断片を場合によって有する少なくとも1種のフェニルシリコーン油を含む、シリコーン油、
- 組成物の質量に対して0.15質量%〜20質量%の、極性又は無極性炭化水素系化合物、ワックス及びペースト状物質から選ばれる、融点が少なくとも30℃の少なくとも1種の固形化合物
を含み、
- ここで該組成物は、20質量%以下の合成起源の無極性炭化水素系化合物の親油性相を含み、
- 油中水型エマルションを得るための少なくとも1種の乳化界面活性剤系
を含み、
前記第1の油が、
- 式R1COOR2[式中、R1は、4〜40個の炭素原子を含む、直鎖状若しくは分枝状の、飽和若しくは不飽和の、又は芳香族の脂肪酸残基を表し、R2は、4〜40個の炭素原子を含む、特に分枝状である炭化水素系鎖を表し、ただしR1及びR2の炭素原子の合計が、18個以上である]のモノエステル、
- 飽和である、脂肪酸トリグリセリド、例えば、ヘプタン酸トリグリセリド又はオクタン酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド及びそれらの混合物、トリヘプタン酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル又はC18〜36酸トリグリセリド;
- 炭化水素系植物油、および
- これらの混合物
から選ばれる、化粧用組成物。
【請求項2】
多価アルコール、好ましくは2から6つのヒドロキシル基を含むC2〜C8多価アルコール、糖、尿素及びそれらの誘導体、乳酸及びそれらの塩、ヒアルロン酸及びそれらの塩、AHA、BHA、ナトリウムピドレート、セリン、エクトイン及びそれらの誘導体、キトサン及びそれらの誘導体、コラーゲン、プランクトン、インペラタ・シリンドラ(Imperata cylindra)の抽出物、アクリル酸ホモポリマー、β-グルカン、トケイソウ油の混合物、アプリコット油、トウモロコシ油及びコメヌカ油、C-グリコシド誘導体、モスカータバラ油、亜鉛が豊富な微細藻類プロフィリジウム・クルエンタム(Prophyridium cruentum)の抽出物、アルギニン、又はそれらの混合物;特に多価アルコール、好ましくは、2から6つのヒドロキシル基を含むC2〜C8の多価アルコール、ヒアルロン酸及びそれらの塩、並びにそれらの混合物から選ばれる、少なくとも1種の保湿剤又は湿潤剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
組成物の質量に対して10質量%以下の保湿剤又は湿潤剤、好ましくは組成物の質量に対して3質量%〜10質量%の保湿剤又は湿潤剤を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記炭化水素系植物油が、ホホバ油、不飽和トリグリセリド、例えばヒマシ油、オリブ油、キシメニア油、ピラカキシ油、コリアンダー油、マカダミア油、トケイソウ油、アルガン油、ゴマ油、ブドウ種子油、アボカド油、キョウニン油(アンズ核油)、シア脂の液体画分又はカカオ脂の液体画分から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記不揮発性の炭化水素系又は無極性シリコーン油が、非フェニルシリコーン油;ジメチコン断片を場合により含むフェニルシリコーン油;炭化水素系油、例えば液体パラフィン又はそれらの誘導体、スクアラン、イソエイコサン、ナフタレン油、水添若しくは非水添ポリブテン、水添若しくは非水添ポリイソブテン、水添若しくは非水添ポリデセン;デセン/ブテンコポリマー、ポリブテン/ポリイソブテンコポリマー;又はそれらの混合物から選ばれることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記揮発性の油が、シリコーン油、炭化水素系油、好ましくは無極性である炭化水素系油、又はフルオロ油、又はそれらの混合物から選ばれ、好ましくは揮発性のシリコーン油から選ばれることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記揮発性若しくは不揮発性の、炭化水素系又は無極性シリコーン油の含有量が、組成物の質量に対して8質量%から30質量%の範囲であり;20質量%以下の合成起源の無極性炭化水素系化合物の親油性相を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
メチコン断片を有さない少なくとも1種のフェニルシリコーン油を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
1種又は複数の揮発性シリコーン油を含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
・極性炭化水素系化合物、例えば以下のペースト状化合物:
- ラノリン及びその誘導体、
- ポリアルキレングリコールペンタエリスリチルエーテル、糖の脂肪アルコールエーテル、及びそれらの混合物から選ばれるポリオールエーテル、
- 1つ又は複数のC2〜C100ジオール間のポリエーテル化から生じる脂溶性ポリエーテル、
- エステル及びポリエステル、例えば、グリセロールオリゴマーのエステル、C8〜C30アルキル基を有するビニルエステルホモポリマー、プロピオン酸アラキジル、脂肪酸トリグリセリド及びそれらの誘導体、フィトステロールエステルの全体的に又は部分的に水素化された植物油、ペンタエリスリトールエステル、その遊離アルコール官能基又は遊離酸官能基が酸基又はアルコール基により適切にエステルされたジオール二量体及び二酸二量体のエステル;水添ヒマシ油エステル、植物起源のバター;
- 並びに/又はそれらの混合物;
・無極性炭化水素系化合物、例えばマイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、オゾケライト、ポリエチレンワックス、ポリメチレンワックス及びマイクロワックス、並びにそれらの混合物;
・極性炭化水素系化合物、例えばエステルワックス及びアルコールワックス、またそれらの混合物
から選ばれる、融点が30℃から100℃の間の少なくとも1種の固形化合物を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
ポリオールの脂肪酸エステル、例えば、モノ-、ジ-、トリ-若しくはセスキ-オレイン酸又はステアリン酸ソルビトール又はグリセリル、ラウリン酸グリセリル又はポリエチレングリコール;シリコーン界面活性剤、例えば、シリコーン主鎖のペンダント基であり又は末端にある、例えば6〜22個の炭素原子を含むアルキル若しくはアルコキシ鎖を有するアルキル若しくはアルコキシジメチコンコポリオール;ポリオキシアルキレン化グリコール脂肪酸エステルタイプのポリマーから選ばれる、少なくとも1種の乳化界面活性剤系を含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記乳化界面活性剤系が、ポリオールアルキルエステルから選ばれる、好ましくはグリセロール及び/又はソルビタンエステルから選ばれる、少なくとも1種の共界面活性剤も含むことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記乳化界面活性剤系の含有量が、組成物の総質量に対して1質量%から6質量%、好ましくは、2質量%から6質量%の範囲であることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記水性相の含有量が、組成物の質量に対して15質量%から55質量%の範囲であることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記親油性相の含有量が、組成物の総質量に対して、40質量%から85質量%の範囲であることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも1種の色素を含むことを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
流体形態であることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物を唇に塗布する、唇の処置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の湿潤剤又は保湿剤と栄養付与油を含む親油性相とを含む、逆エマルションの形態である、唇を処置するための組成物に関する。
【0002】
本発明はまた、前記組成物を用いた唇の処置方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、より詳細には、唇に塗布されることを目的とした保湿性組成物、例えば、リップバーム又はリップセラムに関し、これらは、固体の形態でも流体の形態でもよい。これらの組成物の大部分は、無水であり、一般に、保湿剤/湿潤剤としてのグリセロール、及び比較的大きな含有量の無極性炭化水素系化合物、例えば、ポリブテン、ポリイソブテン(水素化されていても水素化されていなくてもよい)、パラフィン、液体ワセリンをも含み、供給形態に応じて、様々な含有量のワックス、特に無極性ワックス、又はペースト状化合物から選ばれる構造化剤を含む。
【0004】
組成物はまた、前述の成分の他に、より少量で水を含んで存在し、水中油型直接エマルションの形態である。
【0005】
これらの組成物が塗布される場合、これらの組成物は、唇の領域で水分を維持することに寄与する表面で閉塞性バリヤーを形成し、唇に潤いを与える。それによって、唇の外観及び柔らかさは改善される。
【0006】
しかしながら、保湿効果が持続せず、組成物の塗布を止めた後、その効果が程度の差はあれど速やかに低下することが判明している。
【0007】
更に、使用者が、これらの組成物の沈着物が唇に存在すると感じることを、外部の攻撃に対するバリヤー作用と関連付けることができたとしても、ある種の場合において、この沈着物はそれでもなお、重すぎ、べとべとしすぎているか、又は粘着性であると感じられる可能性があるままである。
【0008】
このため、効果が塗布を止めた後でも経時的により持続する及び沈着物が唇に対して軽く、わずかなべと付きしかないか又はべと付きがない、やや粘着性の唇用トリートメント組成物について調査が続いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許出願WO02/051828
【特許文献2】仏国特許出願第0853634号
【特許文献3】特許出願WO2008/155059
【特許文献4】仏国特許出願公開第2792190号
【特許文献5】特許出願EP-A-1086683
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】C.M.Hansen:「The three dimensional solubility parameters」、J. Paint Technol.39巻、105頁(1967年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、前述の問題を克服すること及び塗布中唇の状態を改善するが、本組成物の塗布を止めてから数日後も、依然として感知できる組成物を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらのねらいは、本発明によって達成でき、その一対象は、
- 組成物の質量に対して8質量%〜70質量%の、1種又は複数の保湿剤又は湿潤剤を含む水性相、
- 組成物の質量に対して30質量%から92質量%の親油性相
を含む油中水型エマルションタイプの化粧用組成物であって、該親油性相は、
- 組成物の質量に対して1質量%〜20質量%の、少なくとも1種の極性不揮発性炭化水素系の第1の油
- 少なくとも1種の揮発性若しくは不揮発性の、炭化水素系又は無極性シリコーン油であり、該組成物は少なくとも1種のシリコーン油を含む、シリコーン油、
- 極性又は無極性炭化水素系化合物から選ばれる、融点が少なくとも30℃の少なくとも1種の固形化合物
を含み、
- ここで該組成物は、20質量%を超える合成起源の無極性炭化水素系化合物の親油性相を含まず、
- 油中水型エマルションを得るための少なくとも1種の乳化界面活性剤系
を含む、化粧用組成物である。
【0013】
本発明の一対象はまた、前記組成物が唇に塗布される処置方法である。
【0014】
驚くべきことに、本組成物の塗布を止めてから数日後も、唇の柔軟性及び肌に潤いを与える感覚を改善する効果が依然として感知できるということが判明している。
【0015】
更に本発明による組成物は塗布が容易であり、べとつきがない輝きのある非粘着性の沈着物を残す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
用語「の間の」及び「の範囲の」とは、限定を含むものとして理解されるものとする。
【0017】
本発明による組成物は、化粧用であり、生理的に許容される媒体、すなわち、本発明の組成物を唇に塗布するために特に適している媒体を有利には含む。
【0018】
生理学的に許容される媒体は、一般に、組成物を塗布しなければならない支持体の性質、また、組成物が包装されるべき外観に適合される。
【0019】
好ましくは、本組成物は、液体形態又はクリーム、バター状のもの若しくはペーストの形態となる。
【0020】
20℃の粘度は、より詳細には、1Pa・秒を超える。好ましくは、組成物は、1から25Pa・秒の間の粘度を有する。
【0021】
好ましくは、本発明による組成物は、20℃で、粘度が1Pa・秒から25Pa・秒の間であり、好ましくは1.5Pa・秒から18Pa・秒の間である。
【0022】
好ましくは、本発明による組成物の20℃における粘度は、2から16Pa・秒の間である。
【0023】
用語「ペースト」及び「バター状のもの」が、したがって、固体でなく、測定を可能にする粘度である、組成物を意味することが留意されるものとする。
【0024】
粘度を測定するためのプロトコール
粘度測定は、No.3又はNo.4スピンドルを装備したRheomat RM180粘度計を用いて、20℃で実施し、この測定は、ずり速度200秒-1で、スピンドルが回転してから10分後に実施される(この時間の後に粘度の安定化及びスピンドルのスピン速度の安定化が観察される)。
【0025】
本発明による組成物は、油中水型エマルションの形態である。
【0026】
水性相
本発明による組成物は、含有量が、組成物の質量に対して15質量%から70質量%の間であり、好ましくは組成物の質量に対して15質量%から55質量%の間である水性相を含む。
【0027】
湿潤剤/保湿剤
先に示した通り、本発明による組成物は、(湿潤剤としても知られている)少なくとも1種の保湿剤を含む。
【0028】
特に挙げることのできる湿潤剤又は保湿剤の例には、
- 2から6つのヒドロキシル基を含む、特に、C2〜C8、好ましくはC3〜C6の多価アルコール、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール又はジグリセロール及びその混合物、
- 糖、例えば、ソルビトール又はキシリトール、
- ヒアルロン酸及びそれらの塩、ヒアルロン酸球、例えば、Engelhard Lyon社によって販売されているもの、
- 尿素及びその誘導体、特にNational Starch社により販売されているHydrovance(2-ヒドロキシエチル尿素)、
- AHA及びBHA、例えば乳酸及びそれらの塩、特に、そのアルカリ金属塩、例えば、乳酸ナトリウム、
- ナトリウムピドレート、
- セリン、アルギニン、
- エクトイン及びその誘導体、
- キトサン及びそれらの誘導体、コラーゲン;Engelhard Lyon社によってmarine filling spheresという名称で販売されている海洋起源のコラーゲン及びコンドロイチン硫酸の球(Atelocollagen)
- プランクトン、
- アクリル酸ホモポリマー、例えば、NOF Corporation製のLipidure-HM(登録商標)等、
- β-グルカン、特に、Mibelle-AG-Biochemistry社製のカルボキシメチルβ-グルカンナトリウム、
- C-グリコシド誘導体、例えば特許出願WO02/051828に記載されているもの、特に水/プロピレングリコール混合物(60/40質量%)中に活物質30質量%を含有する溶液の形態のC-β-D-キシロピラノシド-2-ヒドロキシプロパン、例えば、Chimex社によりMexoryl SBB(登録商標)という商品名で製造されている製品が含まれる。
【0029】
好ましくは、湿潤剤/保湿剤は、2から6つのヒドロキシル基を含む好ましくはC2〜C8の多価アルコール、糖、尿素及びそれらの誘導体、ヒアルロン酸及びそれらの塩、AHA、BHA、特に乳酸及びそれらのナトリウム塩、ナトリウムピドレート、セリン、アルギニン、エクトイン及びそれらの誘導体、キトサン及びそれらの誘導体、コラーゲン、プランクトン、アクリル酸ホモポリマー、例えば、NOF Corporation製のLipidure-HM(登録商標)、及びβ-グルカンから選ばれる。
【0030】
更により好ましくは、湿潤剤/保湿剤は、2から6つのヒドロキシル基を含む、好ましくはC2〜C8の多価アルコール、最も詳細には、グリセロール;ヒアルロン酸及びそれらの塩、また、それらの混合物から選ばれる。
【0031】
本発明による組成物は、より詳細には、組成物の質量に対して10質量%以下の保湿剤又は湿潤剤、好ましくは、組成物の質量に対して3質量%〜10質量%の保湿剤又は湿潤剤を含む。
【0032】
水溶性溶媒
本発明による組成物は、水の他に、少なくとも1種の水溶性溶媒を含むことができる。
【0033】
本発明において、用語「水溶性溶媒」とは、室温で液体であり、水混和性(25℃及び大気圧で50質量%を超える水との混和性)である化合物を意味する。
【0034】
本発明による組成物において用いることができる水溶性溶媒はまた、揮発性であってもよい。
【0035】
本発明による組成物において用いることができる水溶性溶媒の中でもとりわけ、1〜5個の炭素原子を含む低級モノアルコール、例えばエタノール及びイソプロパノール等、C3及びC4ケトン並びにC2〜C4アルデヒドを特に挙げることができる。
【0036】
本組成物がいずれかを含む場合、水溶性溶媒の含有量は、組成物の質量に対して0〜5質量%を表す。
【0037】
好ましくは、組成物の水性相は、いかなる水溶性溶媒をも含まない。
【0038】
親油性相
したがって、本組成物は、組成物の総質量に対して親油性相を30質量%〜92質量%、好ましくは30質量%〜85質量%含む。更により詳細な実施形態によれば、親油性相の含有量は、組成物の質量に対して40質量%から85質量%、更に優先的には40質量%から75質量%の範囲である。
【0039】
この親油性相は、少なくとも1種の極性不揮発性炭化水素系の第1の油;少なくとも1種の揮発性若しくは不揮発性の、炭化水素系又は無極性シリコーン油;極性又は無極性炭化水素系化合物から選ばれる、融点が少なくとも30℃の少なくとも1種の固形化合物;油中水型エマルションを得るための少なくとも1種の乳化界面活性剤系を含む。更に、本組成物は、20質量%を超える合成起源の無極性炭化水素系化合物の親油性相を含まない。
【0040】
用語「合成起源の無極性炭化水素系化合物」とは、より詳細には、これらの化合物が、室温(25℃)で液体でも固体でも、石油化学工業に由来する水素原子及び炭素原子のみを含む、炭化水素系化合物を意味することを目的としている。
【0041】
極性炭化水素系の第1の油
用語「油」とは、室温(25℃)及び大気圧(1.013×105Pa)で液体である水不溶性非水性化合物を意味する。
【0042】
用語「炭化水素系油」とは、炭素原子及び水素原子、場合により酸素原子及び窒素原子から本質的に形成され、更にそれらによって構成され、いかなるケイ素原子又はフッ素原子をも含まない油を意味することを目的としている。
【0043】
炭化水素系油は、アルコール、エステル、エーテル、カルボン酸、アミン及び/又はアミド基を含むことができる。
【0044】
好ましくは、炭化水素系油は、ケイ素及びフッ素がないことに加えて、ヘテロ原子、例えば、N、Si及びPがない。したがって、炭化水素系油は、シリコーン油及びフルオロ油と異なる。
【0045】
本事例では、不揮発性炭化水素系油は、少なくとも1個の酸素原子を含む。
【0046】
特に、この不揮発性炭化水素系油は、少なくとも1つのエステル官能基を含む(そのため「エステル油」と呼ばれる)。
【0047】
本発明による組成物において用いることができるエステル油は、特にヒドロキシル化することができる。
【0048】
本組成物は、特に、
- C2〜C8モノカルボン酸又はポリカルボン酸とC2〜C8アルコールの、場合によってヒドロキシル化されたモノエステル、ジエステル又はトリエステルから選ばれる、1種又は複数の不揮発性炭化水素系油を含むことができる。
【0049】
特に、
*C2〜C8カルボン酸とC2〜C8アルコールの、場合によってヒドロキシル化されたモノエステル、
*C2〜C8ジカルボン酸とC2〜C8アルコールの、場合によってヒドロキシル化されたジエステル、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸2-ジエチルヘキシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソステアリル又はコハク酸2-ジエチルヘキシル、
*C2〜C8トリカルボン酸とC2〜C8アルコールの、場合によってヒドロキシル化されたトリエステル、例えば、クエン酸エステル、例えば、クエン酸トリオクチル、クエン酸トリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、クエン酸トリブチル又はクエン酸アセチルトリブチル等、
- C2〜C8ポリオールと、1種又は複数のC2〜C8カルボン酸のエステル、例えば、一酸のグリコールジエステル、例えば、ジヘプタノン酸ネオペンチルグリコール、又は一酸のグリコールトリエステル、例えばトリアセチン。
- 特に、少なくとも18個の炭素原子、更により詳細には、18から70個の炭素原子を含むエステル油。
【0050】
挙げることができる例には、モノエステル、ジエステル又はトリエステルが含まれる。
【0051】
エステル油は、ヒドロキシル化されていてもヒドロキシル化されてなくてもよい。
【0052】
不揮発性エステル油は、例えば以下から選択することができる。
*少なくとも18個の炭素原子を含み、更により詳細には合計で18から40個の炭素原子を含むモノエステル、特に、式R1COOR2[式中、R1は、4〜40個の炭素原子を含む、直鎖状若しくは分枝状の、飽和若しくは不飽和又は芳香族の脂肪酸残基を表し、R2は、4〜40個の炭素原子を含む、特に分枝状である、炭化水素系鎖を表し、ただしR1基及びR2基の炭素原子の合計が18個以上である]のモノエステル、例えば、プルセリン油(Purcellin oil)(オクタノン酸セトステアリル)、イソノナン酸イソノニル、C12〜C15安息香酸アルキル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ネオペンタノン酸オクチルドデシル、ステアリン酸2-オクチルドデシル、エルカ酸2-オクチルドデシル、イソステアリン酸イソステアリル、C12〜C15安息香酸アルキル、例えば安息香酸2-オクチルドデシル、オクタン酸のアルコール若しくはポリアルコール、デカン酸のアルコール若しくはポリアルコール又はリシノール酸のアルコール若しくはポリアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-オクチルデシル又はミリスチン酸2-オクチルドデシルである。
【0053】
好ましくは、これらは、式R1COOR2[式中、R1は、4〜40個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状の脂肪酸残基を表し、R2は、4〜40個の炭素原子を含む、特に分枝状の、炭化水素系鎖を表し、R1基及びR2基は、R1基及びR2基の炭素原子の合計が、18個以上であるというものである]のエステルである。
【0054】
更により詳細には、エステルは、合計で18から40個の炭素原子を含む。
【0055】
挙げることができる好ましいモノエステルには、イソノナン酸イソノニル、エルカ酸オレイル及び/又はネオペンタン酸2-オクチルドデシル、
*少なくとも18個の炭素原子、更により詳細には18〜22個の炭素原子を含む、脂肪酸のモノエステル、特に、ラノリン酸、オレイン酸、ラウリン酸又はステアリン酸とジオールのモノエステル、例えばモノイソステアリン酸プロピレングリコール;
*特に少なくとも18個の炭素原子を含む、更により詳細には、合計で18から60個の炭素原子、好ましくは、合計で18から50個の炭素原子を含むジエステル。特に用いることができるのは、ジカルボン酸とモノアルコールのジエステル、好ましくは、例えばリンゴ酸ジイソステアリル、又はモノカルボン酸のグリコールジエステル、例えばジヘプタン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸プロピレングリコール、ジイソノナン酸ジエチレングリコール又はジイソステアリン酸ポリグリセリル-2(特に、例えばAkzo社によりDermol DGDISという市販参照名で販売されている化合物);
*好ましくは総炭素数が、少なくとも18個の炭素原子、更により詳細には18〜70個の範囲である、ヒドロキシル化モノエステル及びジエステル、例えば、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3、乳酸イソステアリル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチルドデシル、マレイン酸ジイソステアリル又はステアリン酸グリセリル;
*特に少なくとも35個の炭素原子を含む、更により詳細には、合計で35から70個の炭素原子を含むトリエステル、特に、例えばトリカルボン酸のトリエステル、例えばクエン酸トリイソステアリル、又はトリメリット酸トリデシル、又はモノカルボン酸のグリコールトリエステル、例えばトリイソステアリン酸ポリグリセリル-2;
*特に少なくとも35個の炭素原子を含む、更により詳細には、総炭素数が35〜70個の範囲であるテトラエステル、例えばモノカルボン酸のペンタエリスリトール又はポリグリセロールテトラエステル、例えばテトラペラルゴン酸ペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、テトライソノナン酸ペンタエリスリチル、トリス(2-デシル)テトラデカン酸グリセリル、テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2又はテトラキス(2-デシル)テトラデカン酸ペンタエリスリチル;
*不飽和脂肪酸二量体及び/又は三量体とジオールとの縮合により得られるポリエステル、例えば仏国特許出願第0853634号に記載のもの、特に、例えばジリノール酸と1,4-ブタンジオールとの縮合により得られるポリエステル。このポリマーに関して、Biosynthis社によりViscoplast 14436Hという名称[INCI名:(ジリノール酸/ブタンジオール)コポリマー]で販売されているポリマー、又はポリオールと二量体二酸とのコポリマー及びそれらのエステル、例えばHailuscent ISDAを挙げることができる;
*ジオール二量体とモノカルボン酸又はジカルボン酸とのエステル及びポリエステル、特にC8からC34の不飽和脂肪酸、特にC12からC22の不飽和脂肪酸、特にC16からC20の不飽和脂肪酸、更に詳細にはC18の不飽和脂肪酸の二量体化に特に由来するジカルボン酸二量体から得ることができる、ジオール二量体と脂肪酸のエステル及びジオール二量体とジカルボン酸二量体のエステル等、例えば、ジリノール二酸とジリノールジオール二量体とのエステル等、例えば日本精化株式会社によってLusplan DD-DA5(登録商標)及びDD-DA7(登録商標)という商品名で販売されるもの;
*ヒドロキシル化カルボン酸の少なくとも1種のトリグリセリドを脂肪族モノカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸でエステル化させることから得られる、場合によって不飽和のポリエステル、例えばZenitech社によりZeniglossという参照名で販売されているコハク酸及びイソステアリン酸ヒマシ油;
*特に飽和である脂肪酸トリグリセリド、例えばヘプタン酸トリグリセリド又はオクタン酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド及びそれらの混合物、トリヘプタン酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル又はC18〜36酸トリグリセリド等;
*炭化水素系植物油、例えばホホバ油等、不飽和トリグリセリド、例えばヒマシ油、オリブ油、キシメニア(ximenia)油、ピラカキシ(pracaxi)油、コリアンダー油、マカダミア油、トケイソウ油、アルガン油、ゴマ油、ブドウ種子油、アボカド油、キョウニン油(アンズ核油)、シア脂の液体画分又はカカオ脂の液体画分等、
*これらの混合物
が含まれる。
【0056】
より詳細には、本発明による組成物に含まれる極性不揮発性の第1の油は、少なくとも18個の炭素原子を含むモノエステル、室温で液体である7〜40個の炭素原子を含む脂肪酸トリグリセリド、及び炭化水素系植物油、並びにそれらの混合物から選ばれる。
【0057】
好ましくは、極性不揮発性の第1の油は、以下から選択される。
*例えば式R1COOR2[式中、R1は、4〜40個の炭素原子を含む、直鎖状若しくは分枝状の、飽和若しくは不飽和の、又は芳香族の脂肪酸残基を表し、R2は、4〜40個の炭素原子を含む、特に分枝状である炭化水素系鎖を表し、ただしR1及びR2の炭素原子の合計が、18個以上である]のモノエステル、
*特に飽和である、脂肪酸トリグリセリド、例えば、ヘプタン酸トリグリセリド又はオクタン酸トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド及びそれらの混合物、トリヘプタン酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル又はC18〜36酸トリグリセリド;
*炭化水素系植物油、例えばホホバ油等、不飽和トリグリセリド、例えばヒマシ油、オリブ油、キシメニア油、ピラカキシ油、コリアンダー油、マカダミア油、トケイソウ油、アルガン油、ゴマ油、ブドウ種子油、アボカド油、キョウニン油(アンズ核油)、シア脂の液体画分又はカカオ脂の液体画分等、
*これらの混合物から選ばれる。
【0058】
本発明の詳細な一実施形態によれば、第1の油の含有量は、組成物の質量に対して1質量%から20質量%の範囲である。
【0059】
無極性油
本発明による組成物の親油性相は、少なくとも1種の揮発性若しくは不揮発性の、炭化水素系又は無極性シリコーン油を含む。
【0060】
不揮発性無極性炭化水素系油
これらの油は、植物起源、鉱物起源又は合成起源であってもよい。
【0061】
本発明の目的では、用語「無極性油」、より詳細には無極性炭化水素系油とは、25℃における溶解度パラメータδaが、0(J/cm3)1/2に等しい油を意味することを目的としている。
【0062】
ハンセン3次元溶解度空間における溶解度パラメータの定義及び算出は、C.M.Hansenによる論文:「The three dimensional solubility parameters」、J. Paint Technol.39巻、105頁(1967年)に記載されている。
【0063】
このハンセン空間によれば、
- δDは、分子の衝突中に誘起される双極子の形成から生じるロンドン分散力を特徴とし;
- δpは、永久双極子間のデバイ相互作用力、また、誘起双極子と永久双極子との間のケーソム相互作用力を特徴とし;
- δhは、特定の相互作用力(水素結合、酸/塩基、ドナー/アクセプター等)を特徴とし;
- δaは、方程式δa=(δp2h2)1/2によって決定される。
【0064】
パラメータδp、δh、δD、及びδaは、(J/cm3)1/2で表される。
【0065】
用語「炭化水素系油」とは、炭素原子及び水素原子、場合によっては、酸素原子及び窒素原子から本質的に形成され、更にそれらによって構成され、いかなるケイ素原子又はフッ素原子をも含まない油を意味する。炭化水素系油は、アルコール、エステル、エーテル、カルボン酸、アミン及び/又はアミド基を含むことができる。無極性炭化水素系油は、より詳細には、水素原子及び炭素原子のみを含む炭化水素系油を意味することを目的としている。
【0066】
好ましくは、不揮発性無極性炭化水素系油は、例えば、鉱物起源若しくは合成起源の直鎖状又は分枝状炭化水素、例えば:
- 液体パラフィン又はそれらの誘導体(鉱油)、
- スクアラン、
- イソエイコサン、
- ナフタレン油、
- ポリブテン、例えばAmoco社によって販売又は製造されているIndopol H-100(モル質量又はMW=965g/mol)、Indopol H-300(MW=1340g/mol)及びIndopol H-1500(MW=2160g/mol)等、
- ポリイソブチレン、水素化ポリイソブテン、例えば、日油株式会社により販売されているParleam(登録商標)、Amoco社により販売又は製造されているPanalane H-300 E(MW=1340g/mol)、Synteal社により販売又は製造されているViseal 20000(MW=6000g/mol)及びWitco社により販売又は製造されているRewopal PIB 1000(MW=1000g/mol)、或いはNOF Corporationにより販売されているParleam Lite、
- ポリデセン、及び水添ポリデセン、例えばMobil Chemicals社により販売又は製造されているPuresyn 10(MW=723g/mol)及びPuresyn 150(MW=9200g/mol)、或いはExxonMobil Chemical社により販売されているPuresyn 6、
- デセン/ブテンコポリマー、ポリブテン/ポリイソブテンコポリマー、特にIndopol L-14、
- 及びそれらの混合物
から選ぶことができる。
【0067】
好ましくは、本組成物は、より詳細には、液体パラフィン又はそれらの誘導体、及び水添若しくは非水添ポリ(イソ)ブテン、又はそれらの混合物から選ばれる、少なくとも1種の不揮発性無極性炭化水素系油を含む。
【0068】
非フェニルシリコーン油
用語「非フェニルシリコーン油」とは、いかなるフェニル置換基をも有さないシリコーン油を意味する。
【0069】
無極性シリコーン油は、より詳細には、いかなるイオン基又はイオン化基をも含まない、好ましくは、いかなるオキシアルキレン化(C2〜C4)単位(好ましくは、オキシエチレン、オキシプロピレン)、又はグリセロール単位をも含まないシリコーン油を意味することを目的としている。
【0070】
挙げることができるこれらの不揮発性非フェニルシリコーン油の代表的な例には、ポリジメチルシロキサン;アルキルジメチコン;ビニルメチルメチコン;更には脂肪族基及び/又はヒドロキシル基、チオール基及び/若しくはアミン基等の官能基で修飾されたシリコーンが含まれる。
【0071】
「ジメチコン」(INCI名)は、ポリ(ジメチルシロキサン)(化学名)に相当することに留意するべきである。
【0072】
不揮発性非フェニルシリコーン油は、好ましくは、不揮発性ジメチコン油から選ばれる。
【0073】
特に、これらの油は、次の不揮発性油から選ぶことができる。
- ポリジメチルシロキサン(PDMS)、
- ペンダント基である、及び/又はシリコーン鎖の末端に存在している、脂肪族基、特にアルキル又はアルコキシ基(これらの基はそれぞれ2〜24個の炭素原子を含む)を含むPDMS。例として、Evonik Goldschmidt社からAbil Wax 9801という商用参照名で販売されているセチルジメチコンを挙げることができる、
- 脂肪族基、又はヒドロキシル基、チオール基及び/又はアミン基等の官能基を含むPDMS、
- ヒドロキシル基、チオール基及び/又はアミン基等の官能基で置換されたポリアルキルメチルシロキサン、
- 脂肪酸、脂肪アルコール又はポリオキシアルキレン、及びそれらの混合物で修飾されたポリシロキサン。
【0074】
好ましくは、これらの不揮発性非フェニルシリコーン油は、ポリジメチルシロキサン、アルキルジメチコン、また、脂肪族基、特にC2〜C24アルキル基及び/又はヒドロキシル基、チオール基及び/若しくはアミン基等の官能基を含むPDMSから選ばれる。
【0075】
非フェニルシリコーン油は、特に式(I)
【0076】
【化1】
【0077】
[式中、
R1、R2、R5及びR6は、一緒に又は別々に、1から6個の炭素原子を含むアルキル基であり、
R3及びR4は、一緒に又は別々に、1〜6個の炭素原子を含むアルキル基、ビニル基、アミン基又はヒドロキシル基であり、
Xは、1〜6個の炭素原子を含むアルキル基、ヒドロキシル基又はアミン基であり、
n及びpは、流体化合物となるように、特にその25℃における粘度が9センチストーク(cSt)(9x10-6m2/秒)から800,000cStの間であるように選ばれる整数である]のシリコーンから選択することができる。
【0078】
本発明に従って用いることができる不揮発性非フェニルシリコーン油として、下記のものを挙げることができる。
- R1〜R6置換基及びXは、メチル基を表し、p及びnは、粘度が500,000cStであるような数であり、例えば、General Electric社によりSE30という名称で販売されている製品、Wacker社によりAK 500000という名称で販売されている製品、Bluestar社によりMirasil DM 500 000という名称で販売されている製品、及びDow Corning社によりDow Corning 200 Fluid 500 000cStという名称で販売されている製品、
- R1〜R6置換基及びXは、メチル基を表し、p及びnは、粘度が60,000cStであるような数であり、例えば、Dow Corning社によりDow Corning 200 Fluid 60 000 CSという名称で販売されている製品、及びWacker社によりWacker Belsil DM 60 000という名称で販売されている製品、
- R1〜R6置換基及びXは、メチル基を表し、p及びnは、粘度が100cSt又は350cStであるような数であり、例えば、Dow Corning社によりそれぞれBelsil DM100という名称及びDow Corning 200 Fluid 350 CSという名称で販売されている製品、
- R1〜R6置換基は、メチル基を表し、X基はヒドロキシル基を表し、n及びpは、粘度が700cStであるような数であり、例えばMomentive社によりBaysilone Fluid T0.7という名称で販売されている製品。
【0079】
ジメチコン断片を場合によって有するフェニルシリコーン油
用語「シリコーン油」とは、少なくとも1個のケイ素原子を含み、特にSi-O基を含む油を意味する。
【0080】
用語「フェニル」は、前記油が、その構造中でフェニル基を含むことを指定している。
【0081】
用語「ジメチコン断片」は、ケイ素原子が、2つのメチル基を有する二価のシロキサン基(この基は、分子の末端に配置されない)を意味する。ジメチコン断片は、次式:-Si(CH3)2-O-によって表すことができる。
【0082】
用語「不揮発性」は、25℃及び大気圧における蒸気圧が非ゼロであり、0.02mmHg(2.66Pa)未満であり、より良好には10-3mmHg(0.13Pa)未満である油を意味することを目的としている。
【0083】
無極性シリコーン油は、より詳細には、いかなるイオン基又はイオン化基をも含まない、好ましくは、いかなるオキシアルキレン化(C2〜C4)単位(好ましくは、オキシエチレン、オキシプロピレン)、又はグリセロール単位をも含まないシリコーン油を意味することを目的としている。
【0084】
したがって、不揮発性フェニルシリコーン油は、以下から選ぶことができる。
a)次式(I)
【0085】
【化2】
【0086】
[式中、1価又は2価であるR基は、互いに独立して、メチル又はフェニルを表す、ただし、少なくとも1つのR基はフェニルを表す]に対応する、ジメチコン断片を場合によっては有するフェニルシリコーン油。
【0087】
好ましくは、この式において、フェニルシリコーン油は、少なくとも3つ、例えば少なくとも4つ、少なくとも5つ又は少なくとも6つのフェニル基を含む。
b)次式(II)
【0088】
【化3】
【0089】
[式中、R基は互いに独立して、メチル又はフェニルを表す、ただし、少なくとも1つのR基はフェニルを表す]に対応する、ジメチコン断片を場合によっては有するフェニルシリコーン油。
【0090】
好ましくは、この式において、式(II)の化合物は、少なくとも3つ、例えば少なくとも4つ又は少なくとも5つのフェニル基を含む。
【0091】
上記の異なるフェニルオルガノポリシロキサン化合物の混合物を用いることができる。
【0092】
挙げることができる例には、トリフェニルオルガノポリシロキサン、テトラフェニルオルガノポリシロキサン又はペンタフェニルオルガノポリシロキサンの混合物が含まれる。
【0093】
式(II)の化合物の中でも、より詳細には、少なくとも4つ又は少なくとも5つのR基がフェニル基を表し、残りの基がメチルを表す式(II)に対応する、ジメチコン断片を有さないフェニルシリコーン油を挙げることができる。
【0094】
かかる不揮発性フェニルシリコーン油は、好ましくは、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン又はテトラメチルテトラフェニルトリシロキサンである。これら油は、特に、Dow Corning社によりPH-1555HRI又はDow Corning 555 Cosmetic Fluid(化学名:1,3,5-トリメチル-1,1,3,5,5-ペンタフェニルトリシロキサン;INCI名:トリメチルペンタフェニルトリシロキサン)という参照名で販売されており、或いは又はDow Corning社によりDow Corning 554 Cosmetic Fluidという参照名で販売されているテトラメチルテトラフェニルトリシロキサンを用いることもできる。
【0095】
これらは、特に次式(III)、(III'):
【0096】
【化4】
【0097】
[式中、Meは、メチルを表し、Phは、フェニルを表す]に対応する。
c)次式(IV)
【0098】
【化5】
【0099】
[式中、Meは、メチルを表し、yは、1から1000の間であり、
Xは、-CH2-CH(CH3)(Ph)を表す]に対応する少なくとも1種のジメチコン断片を有するフェニルシリコーン油。
d)次式(V)
【0100】
【化6】
【0101】
[式中、
- R1〜R10は、互いに独立に、飽和又は不飽和の、直鎖状、環状又は分枝状のC1〜C30炭化水素系基であり、
- m、n、p及びqは、互いに独立に、0から900の間の整数であり、ただし、m+n+qの合計は0以外である]に対応するフェニルシリコーン油、及びこれらの混合物。
【0102】
好ましくは、m+n+qの合計は、1から100の間である。有利には、m+n+p+qの合計は、1から900の間であり、好ましくは1から800の間である。
【0103】
好ましくは、qは、0に等しい。
【0104】
より詳細には、R1〜R10は、互いに独立に、飽和又は不飽和、好ましくは飽和の、直鎖状又は分枝状のC1〜C30炭化水素系基、特に好ましくは、飽和のC1〜C20、特にC1〜C18炭化水素系基、又は単環式若しくは多環式のC6〜C14、特にC10〜C13アリール基、又はアラルキル基(そのアルキル部分は、好ましくはC1〜C3アルキルである)を表す。
【0105】
好ましくは、R1〜R10は、それぞれ、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、デシル、ドデシル又はオクタデシル基、或いはフェニル、トリル、ベンジル又はフェネチル基を表すことができる。R1〜R10は特に同一であってもよく、更にメチル基であってもよい。
【0106】
式(V)のより詳細な第1の実施形態によれば、以下を挙げることができる。
i)次式(VI)
【0107】
【化7】
【0108】
[式中、
- R1〜R6は、互いに独立に、飽和若しくは不飽和の、直鎖状、環状又は分枝状のC1〜C30炭化水素系基、好ましくはC6〜C14アリール基又はアラルキル基(そのアルキル部分はC1〜C3アルキルである)であり;
- m、n及びpは、互いに独立に、0から100の間の整数であり、ただし、n+mの合計は1から100の間である]に対応する、少なく1種のジメチコン断片を場合によって有する、フェニルシリコーン油、及びこれらの混合物。
【0109】
好ましくは、R1〜R6は、互いに独立に、C1〜C20、特にC1〜C18炭化水素系基、好ましくはアルキル基、又は単環式(好ましくはC6)若しくは多環式のC6〜C14アリール基、特にC10〜C13のもの、又はアラルキル基(好ましくはアリール部分はC6アリールであり、アルキル部分はC1〜C3アルキルである)を表す。
【0110】
好ましくは、R1〜R6はそれぞれ、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、デシル、ドデシル又はオクタデシル基、或いはフェニル、トリル、ベンジル又はフェネチル基を表すことができる。
【0111】
R1〜R6は、特に同一であってもよく、更にメチル基であってもよい。好ましくは、m=1若しくは2若しくは3、並びに/又はn=0及び/又はp=0若しくは1を、式(VI)に適用することができる。
【0112】
特定の一実施形態によれば、不揮発性フェニルシリコーン油は、少なくとも1つのジメチコン断片を有するフェニルシリコーン油から選ばれる。
【0113】
好ましくは、かかる油は、以下の式(VI)の化合物に対応する。
【0114】
A)m=0であり、n及びpは、互いに独立して、1から100の間の整数である。
【0115】
好ましくは、R1〜R6は、メチル基である。
【0116】
本実施形態によれば、シリコーン油は、信越化学工業株式会社製のKF-54(400cSt)、KF54HV(5000cSt)、KF-50-300CS(300cSt)、KF-53(175cSt)又はKF-50-100CS(100cSt)等のジフェニルジメチコンから好ましくは選ばれる。
【0117】
B)pは1から100の間であり、n+mの合計は1から100の間であり、n=0である。
【0118】
少なくとも1つのジメチコン断片を場合によっては有するこれらのフェニルシリコーン油は、より詳細には、以下の式(VII)
【0119】
【化8】
【0120】
[式中、Meはメチルであり、Phはフェニルであり、OR'は-OSiMe3基を表し、pは0である、又は1から1000の間であり、mは1から1000の間である]に対応する。特に、m及びpは、化合物(VII)が不揮発性油となるような数である。
【0121】
少なくとも1つのジメチコン断片を有する不揮発性フェニルシリコーンの第1の実施形態によれば、pは1から1000の間であり、mは、より詳細には、化合物(VII)が不揮発性油となるような数である。例えば、特にWacker社によってBelsil PDM 1000という参照名で販売されているトリメチルシロキシフェニルジメチコンを用いてもよい。
【0122】
ジメチコン断片を有さない不揮発性フェニルシリコーンの第2の実施形態によれば、pは0に等しく、mは1から1000の間であり、特に化合物(VII)が不揮発性油となるような数である。
【0123】
例えば、特にDow Corning 556 Cosmetic Grade Fluid(DC556)という参照名で販売されている、フェニルトリメチルシロキシトリシロキサンを用いてもよい。
ii)次式(VIII)
【0124】
【化9】
【0125】
[式中、
- Rは、互いに独立に、飽和若しくは不飽和の、直鎖状、環状又は分枝状のC1〜C30炭化水素系基であり、好ましくはRは、C1〜C30アルキル基であり、好ましくはC6〜C14アリール基又はアラルキル基(そのアルキル部分はC1〜C3アルキルである)であり、
- m及びnは、互いに独立して、0から100の間の整数である、ただし、n+mの合計は1から100の間である]に対応する、ジメチコン断片を有さない不揮発性フェニルシリコーン油及びそれらの混合物。
【0126】
好ましくは、Rは、互いに独立に、飽和若しくは不飽和、好ましくは飽和の、直鎖状又は分枝状のC1〜C30炭化水素系基、特に好ましくは飽和のC1〜C20、特にC1〜C18、より詳細にはC4〜C10の炭化水素系基、単環式若しくは多環式のC6〜C14、特にC10〜C13アリール基、又はアラルキル基(そのアルキル部分は好ましくはC6アリールであり、アルキル部分はC1〜C3アルキルである)を表す。
【0127】
好ましくは、Rsはそれぞれ、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、デシル、ドデシル又はオクタデシル基、或いはフェニル、トリル、ベンジル又はフェネチル基を表し得る。
【0128】
Rsは、特に同一であってもよく、更にメチル基であってもよい。
【0129】
好ましくは、m=1若しくは2若しくは3、並びに/又はn=0及び/又はp=0若しくは1を、式(VIII)に適用することができる。
【0130】
好ましい一実施形態によれば、式(VIII)中、nは、0から100の間の整数であり、mは、1から100の間の整数であり、ただし、n+mの合計は1から100の間である。好ましくは、Rはメチル基である。
【0131】
一実施形態によれば、25℃における粘度が5から1500mm2/秒(すなわち、5〜1500cSt)、好ましくは粘度が5から1000mm2/秒(すなわち、5〜1000cSt)である式(VIII)のフェニルシリコーン油を用いることができる。
【0132】
本実施形態によれば、不揮発性フェニルシリコーン油は、Dow Corning社製のDC556(22.5cSt)等のフェニルトリメチコン(n=0の場合)、或いは信越化学工業株式会社製のKF56 A等のジフェニルシロキシフェニルトリメチコン油(m及びnが1から100の間である場合)、又はRhone-Poulenc社製のSilbione 70663V30油(28cSt)から好ましくは選ばれる。括弧内の値は、25℃における粘度を表す。
e)次式
【0133】
【化10】
【0134】
[式中、
R1、R2、R5及びR6は、同一であっても異なってもよく、1〜6個の炭素原子を含むアルキル基であり、
R3及びR4は、同一であっても異なってもよく、1〜6個の炭素原子を含むアルキル基、又はアリール基(好ましくは、C6〜C14)である、ただし、R3及びR4の少なくとも1つがフェニル基であり、
Xは、1〜6個の炭素原子を含むアルキル基、ヒドロキシル基又はビニル基であり、
n及びpは、油に質量平均分子量200000g/mol未満、好ましくは150000g/mol未満、より好ましくは100000g/mol未満を付与するように選ばれる、1以上の整数である]に対応する、少なくとも1つのジメチコン断片を場合によっては有するフェニルシリコーン油及びそれらの混合物。
f)並びにその混合物。
【0135】
好ましくは、本発明による組成物は、より詳細にはいかなるジメチコン断片をも含まない、少なくとも1種の不揮発性フェニルシリコーン油を含む。
【0136】
揮発性油
本発明のある特定の実施形態によれば、本組成物はまた、少なくとも1種の揮発性油を含むことができる。
【0137】
揮発性油は、特に、シリコーン油、好ましくは非極性である炭化水素系油、又はフッ素化油となり得る。
【0138】
一実施形態によれば、揮発性油は、シリコーン油であり、引火点が40℃から102℃の範囲であり、好ましくは引火点が55℃を超え95℃以下であり、優先的には65℃から95℃の範囲であるシリコーン油から特に選ぶことができる。
【0139】
本発明において用いることができる揮発性シリコーン油として、挙げることができるのは、室温の粘度が8センチストーク(cSt)(8×10-6m2/秒)未満であり、特に2〜10個のケイ素原子、特に2〜7個のケイ素原子を含む直鎖状又は環式シリコーンであり、これらのシリコーンは、1〜10個の炭素原子を含むアルキル基又はアルコキシ基を場合により含む。
【0140】
本発明において用いることができる揮発性シリコーンとして、特に挙げることができるのは、粘度が5cSt及び6cStのジメチコン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルヘキシルトリシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン及びドデカメチルペンタシロキサン、並びにそれらの混合物である。
【0141】
第2の実施形態によれば、揮発性油は、フッ素化油、例えばノナフルオロメトキシブタン又はペルフルオロメチルシクロペンタン、及びそれらの混合物である。
【0142】
第3の実施形態によれば、揮発性油は、好ましくは、無極性である炭化水素系油である。
【0143】
無極性揮発性炭化水素系油は、40℃から102℃、好ましくは、40℃から55℃、優先的には40℃から50℃の範囲の引火点を有し得る。
【0144】
炭化水素系揮発性油は、特に、8〜16個の炭素原子を含む炭化水素系揮発性油、及びそれらの混合物、特に:
- 分枝状のC8〜C16アルカン、例えばC8〜C16イソアルカン(イソパラフィンとしても知られている)、イソドデカン、イソデカン及びイソヘキサデカン、例えば、Isopar又はPermethylという商品名で販売されている油、
- 直鎖状アルカン、例えば、Sasol社によりそれぞれParafol 12-97及びParafol 14-97という参照名で販売されているn-ドデカン及びn-テトラデカン、またそれらの混合物、ウンデカン-トリデカン混合物(Cetiol UT)、Cognis社により特許出願WO2008/155059の実施例1及び2において得られたn-ウンデカン及びn-トリデカンの混合物、並びにそれらの混合物
から選ぶことができる。
【0145】
好ましくは、本発明による組成物は、ジメチコン断片を場合によって有し、好ましくはいかなるものも含まない、少なくとも1種のフェニルシリコーン油を含む。
【0146】
この好ましい実施形態によれば、本組成物はまた、1種又は複数の揮発性シリコーン油を含む。
【0147】
更に、本組成物は、より詳細には、水添若しくは非水添ポリ(イソ)ブテンから選ばれる、少なくとも1種の無極性炭化水素系油を好ましくは含むことができる。
【0148】
本発明のある特定の実施形態によれば、揮発性若しくは不揮発性炭化水素系又は無極性シリコーン油の含有量は、より詳細には、組成物の質量に対して5質量%から40質量%、好ましくは8質量%から30質量%の範囲であり、本組成物は、20質量%以下の合成起源の無極性炭化水素系化合物の親油性相を含む。
【0149】
より詳細には、不揮発性シリコーン油/揮発性シリコーン油の質量比は、これらの油が本組成物中に存在する場合、0.1から2の範囲である。
【0150】
固形化合物
先に挙げている通り、本組成物の親油性相は、少なくとも1種の固形化合物を含み、融点は少なくとも30℃であり、好ましくは30℃から100℃の間であり、極性又は無極性炭化水素系化合物から選ばれる。
【0151】
これらの固形化合物は、ワックス及びペースト状化合物から選ぶことができる。
【0152】
ワックス
本発明による組成物は、少なくとも1種のワックスを含むことができる。
【0153】
本発明による組成物において用いることができるワックスは、室温で変形可能であってもなくてもよい、動物、植物、鉱物若しくは合成起源の固形のワックス、及びそれらの混合物から選ばれる。
【0154】
本発明の目的では、用語「ワックス」とは、状態が可逆的に固体/液体に変化する室温(25℃)で固体であり、融点が30℃以上であり、最高で100℃までとなり得る、親油性化合物を意味する。
【0155】
本発明の目的では、融点は、ISO規格11357-3;1999に記載されている熱分析(DSC)で観察された最大吸熱ピークの温度に対応する。ワックスの融点は、示差走査熱量計(DSC)、例えばTA Instruments社によってDSC Q2000という名称で販売されている熱量計を用いて測定することができる。
【0156】
好ましくは、ワックスは、70J/g以上の融解熱ΔHfを有する。
【0157】
好ましくは、ワックスは、X線観察によって視覚可能である、少なくとも1つの結晶性部分を含む。
【0158】
測定プロトコールは、以下の通りである。
【0159】
るつぼに入れたワックス試料5mgを加熱速度10℃/分で-20℃から120℃に移行する第1の昇温にかけ、次いで冷却速度10℃/分で120℃から-20℃に冷却し、最後に加熱速度5℃/分で-20℃から120℃に移行する第2の昇温にかける。第2の温度上昇中に、以下のパラメータを測定する。
- 先に挙げた通り、観察された融解曲線の最大吸熱ピークの温度に対応する、温度の関数として、吸収された力の差の変動を表す、ワックスの融点(Mp)、
- 得られた融解曲線全体の積分に対応する、ΔHf:ワックスの融解熱。ワックスのこの融解熱は、化合物を固体状態から液体状態に変化させるのに必要とされるエネルギーの量である。これは、単位J/gで表される。
【0160】
ワックスは、特に0.05MPaから15MPaの範囲の、好ましくは6MPaから15MPaの範囲の硬度を有し得る。硬度は、Rheo社によりTA-TX2iという名称で販売されているテクスチュロメータを用いて20℃で測定する圧縮力を測定することによって決定される。このテクスチュロメータは、直径2mmのステンレス鋼シリンダーを備え、このシリンダーが測定速度0.1mm/秒で移動し、ワックスに貫入深さ0.3mmまで貫入する。
【0161】
無極性ワックス:
用語「無極性ワックス」とは、以下に定義する通り25℃における溶解度パラメータδaが0(J/cm3)1/2に等しいワックスを意味する。
【0162】
無極性ワックスは、特に炭素原子及び水素原子のみから構成され、N、O、Si、P等のヘテロ原子を含まない炭化水素系ワックスである。
【0163】
用語「炭化水素系ワックス」とは、炭素原子及び水素原子、場合によっては酸素原子及び窒素原子から本質的に形成され、更にそれらによって構成され、いかなるケイ素原子又はフッ素原子をも含まないワックスを意味する。これは、アルコール、エステル、エーテル、カルボン酸、アミン及び/又はアミド基を含むことができる。
【0164】
更に詳細には、無極性ワックスは、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、オゾケライト、ポリエチレンワックス、ポリメチレンワックス及びマイクロワックス、並びにそれらの混合物から選ぶことができる。
【0165】
用いることができるマイクロクリスタリンワックスとして、Sonneborn社によって販売されているMultiwax W 445(登録商標)、並びにParamelt社によって販売されているMicrowax HW(登録商標)及びBase Wax 30540(登録商標)を挙げることができる。
【0166】
挙げることができるオゾケライトは、Ozokerite Wax SP 1020 Pである。
【0167】
挙げることができるポリエチレンワックスとしては、New Phase Technologies社によって販売されているPerformalene 500-Lポリエチレン及びPerformalene 400ポリエチレンが含まれる。
【0168】
挙げることができるポリメチレンワックスとしては、Cirebelle社によってCirebelle 303という参照名で販売されているポリメチレンワックス(54℃);Cirebelle 108という参照名で販売されているポリメチレンワックス(80℃)が含まれる。
【0169】
本発明による組成物において無極性ワックスとして用いることができるマイクロワックスとして、Micro Powders社によってMicropoly 200(登録商標)、220(登録商標)、220L(登録商標)及び250S(登録商標)という名称で販売されているもの等のポリエチレンマイクロワックスを特に挙げることができる。
【0170】
極性ワックス
本発明の目的では、用語「極性ワックス」とは、25℃における溶解度パラメータδaが0(J/cm3)1/2以外であるワックスを意味する。
【0171】
特に、用語「極性ワックス」とは、化学構造が炭素原子及び水素原子から本質的に形成され、更にそれらによって構成され、酸素、窒素、ケイ素若しくはリン原子等の少なくとも1つの高電気陰性度のヘテロ原子を含むワックスを意味する。
【0172】
ハンセン3次元溶解度空間における溶解度パラメータの定義及び算出は、C.M.Hansenによる論文:「The three dimensional solubility parameters」、J. Paint Technol. 39巻、105頁(1967年)に記載されている。
【0173】
このハンセン空間によれば、
- δDは、分子の衝突中に誘起される双極子の形成から生じるロンドン分散力を特徴とし;
- δpは、永久双極子間のデバイ相互作用力、また、誘起双極子と永久双極子との間のケーソム相互作用力を特徴とし;
- δhは、特定の相互作用力(水素結合、酸/塩基、ドナー/アクセプター等)を特徴とし;
- δaは、方程式δa=(δp2h2)1/2によって決定される。
【0174】
パラメータδp、δh、δD、及びδaは、(J/cm3)1/2で表される。
【0175】
極性ワックスは、特に、炭化水素系ワックス、フルオロワックス又はシリコーンワックスとなり得る。
【0176】
用語「シリコーンワックス」とは、少なくとも1個のケイ素原子、特にSi-O基を含む油を意味する。
【0177】
第1の好ましい実施形態によれば、極性ワックスは炭化水素系ワックスである。極性炭化水素系ワックスとして、エステルワックス及びアルコールワックスから選ばれるワックスが特に好ましい。
【0178】
本発明によれば、用語「エステルワックス」とは、少なくとも1つのエステル官能基を含むワックスを意味する。
【0179】
「アルコールワックス」という表現は、本発明によれば、少なくとも1つのアルコール官能基を含む、すなわち、少なくとも1つの遊離ヒドロキシル(OH)基を含むワックスを意味するものと理解される。
【0180】
エステルワックスとして、特に、以下のものを用いることができる。
- エステルワックス、例えば、下記から選ばれるもの等:
i)式R1COOR2[式中、R1及びR2は、原子の数が10から50個の範囲である直鎖状、分枝状又は環状の脂肪鎖を表し、これはO、N又はP等のヘテロ原子を含むことができ、融点は25から120℃の範囲である]のワックスである。
【0181】
特に、エステルワックスとして、(ヒドロキシステアリルオキシ)ステアリン酸C20〜C40アルキル(アルキル基は20〜40個の炭素原子を含む)を単独若しくは混合物として、又はステアリン酸C20〜C40アルキルを用いることができる。かかるワックスは、特に、Koster Keunen社によってKester Wax K 82 P(登録商標)、Hydroxypolyester K 82 P(登録商標)、Kester Wax K 80 P(登録商標)及びKester Wax K82Hという名称で販売されている。
ii)モンタン酸(オクタコサン酸)グリコール及びブチレングリコールワックス、例えばClariant社により販売されているワックスLicowax KPS Flakes(INCI名:モンタン酸グリコール)。
iii)Heterene社によりHest 2T-4S(登録商標)という名称で販売されている、テトラステアリン酸ビス(1,1,1-トリメチロールプロパン)。
iv)一般式R3-(-OCO-R4-COO-R5)[式中、R3及びR5は、同一であり又は異なり、好ましくは同一であり、C4〜C30アルキル基(アルキル基は、4〜30個の炭素原子を含む)を表し、R4は、1つ又は複数の不飽和基を含んでも含まなくてもよい、直鎖状又は分枝状C4〜C30脂肪族基(アルキル基は4〜30個の炭素原子を含む)を表し、好ましくは直鎖状で不飽和である]のジカルボン酸のジエステルワックス。
v)例えば、水添ホホバ油、水添ヒマワリ油、水添ヒマシ油、水添ヤシ油等の直鎖状若しくは分枝状C8〜C32脂肪鎖を有する動物油又は植物油の接触水素化によって得られたワックス、また、Sophim社によってPhytowax Ricin 16L64(登録商標)及び22L73(登録商標)という名称で販売されているもの等、セチルアルコールでエステル化されたヒマシ油の水素化よって得られたワックスをも挙げることができる。かかるワックスについては、仏国特許出願公開第2792190号に記載されており、ワックスは、Phytowax Olive 18 L 57という名称で販売されているもの等のステアリルアルコールでエステル化されたオリブ油の水素化によって得られ、或いは;
vi)ビーズワックス、合成ビーズワックス、ポリグリセロール化ビーズワックス、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、オキシプロピレン化ラノリンワックス、米ぬかワックス、オーリクリーワックス、エスパルトグラスワックス、コルク繊維ワックス、サトウキビワックス、はぜろう、スマクワックス;モンタンワックス、オレンジワックス、ラウレルワックス及び水添ホホバワックス、(ポリ)アルコキシル化シリコーンでエステル化することにより得られたシリコーンワックス、例えば、シリコーンビーズワックス、シリコーンキャンデリラワックス又はシリコーンカルナウバワックス等、及びそれらの混合物。
【0182】
挙げることができるアルコールワックスには、好ましくは直鎖状であり、好ましくは飽和の、16〜60個の炭素原子を含み、融点が25から120℃の間である、アルコールが含まれる。挙げることができる例としては、New Phase Technologies社製のワックスであるPerformacol 550-L Alcohol、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ベヘニルアルコール、エルシル(erucyl)アルコール若しくはアラキジル(arachidyl)アルコール、又はそれらの混合物が含まれる。
【0183】
ペースト状化合物
本発明に従って考慮される組成物はまた、少なくとも1種のペースト状脂肪物質を含むこともできる。
【0184】
本発明の目的では、用語「ペースト状脂肪物質」とは、固体/液体の状態変化が可逆的である、固体状態で異方性の結晶組織を示し、23℃の温度で液体画分及び固体画分を含む、親油性脂肪化合物を意味する。
【0185】
言い換えれば、ペースト状化合物の出発融点は、23℃未満となり得る。23℃で測定したペースト状化合物の液体画分は、化合物9質量%から97質量%を表し得る。23℃におけるこの液体画分は、好ましくは15質量%から85質量%の間、より好ましくは40質量%から85質量%の間を表す。
【0186】
本発明の目的では、融点は、ISO規格11357-3;1999に記載されている熱分析(DSC)で観察された最大吸熱ピークの温度に対応する。ペースト又はワックスの融点は、示差走査熱量計(DSC)、例えば、TA Instruments社によってMDSC 2920という名称で販売されている熱量計を用いて測定することができる。
【0187】
測定プロトコールは、次の通りである。
【0188】
るつぼに入れた(場合に応じて)ペースト又はワックス試料5mgを加熱速度10℃/分で-20℃から100℃に移行する第1の昇温にかけ、次いで冷却速度10℃/分で100℃から-20℃に冷却し、最後に加熱速度5℃/分で-20℃から100℃に移行する第2の昇温にかける。第2の昇温中、温度の関数として、空のるつぼ及びペースト又はワックスの試料を含有するるつぼによって吸収された力の差の変動を測定する。化合物の融点は、吸収された力の差の変動を温度の関数として表す曲線のピークの先端に対応する温度の値である。
【0189】
23℃におけるペースト状化合物の質量に対する液体の割合は、23℃で消費される融解熱のペースト状化合物の融解熱に対する比に等しい。
【0190】
ペースト状化合物の融解熱は、固体状態から液体状態に変化するために、化合物によって消費される熱である。ペースト状化合物は、その質量のすべてが結晶性固体形態であるとき、固体状態であると言われる。ペースト状化合物は、その質量のすべてが液体形態であるとき、液体状態と言われる。
【0191】
ペースト状化合物の融解熱は、TA Instrument社によってMDSC 2920という名称で販売されている熱量計等の示差走査熱量計(DSC)を用いて、ISO規格11357-3:1999に従って、1分当たり5℃又は10℃の昇温で、得られたサーモグラムの曲線下面積と等しい。ペースト状化合物の融解熱は、化合物を固体状態から液体状態に変化させるのに必要とされるエネルギー量である。これは、単位J/gで表される。
【0192】
23℃で消費される融解熱は、固体状態から、試料が23℃で有する液体画分と固体画分とで構成される状態へ変化するために、試料が吸収するエネルギーの量である。
【0193】
好ましくは、32℃で測定されたペースト状化合物の液体画分は、化合物の30質量%〜100質量%、好ましくは化合物の50質量%〜100質量%、より好ましくは60質量%〜100質量%を表す。32℃で測定されたペースト状化合物の液体画分が100%に等しいとき、ペースト状化合物の融解範囲の限界の温度は32℃以下である。
【0194】
32℃で測定されたペースト状化合物の液体の割合は、32℃で消費された融解熱のペースト状化合物の融解熱に対する比に等しい。32℃で消費される融解熱は、23℃で消費される融解熱と同じ方法で算出される。
【0195】
ペースト状脂肪物質は、合成化合物及び植物起源の化合物から選ぶことができる。ペースト状脂肪物質は、植物由来の出発物質からの合成によって得ることができる。
【0196】
ペースト状化合物は、有利には、
- ラノリン及びその誘導体、例えば、ラノリンアルコール、オキシエチレン化ラノリン、アセチル化ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル等のラノリンエステル、及びオキシプロピレン化ラノリン等、
- ワセリン、特に、INCI名がペトロラタムであり、Penreco社によりUltima White PET USPという名称で販売されている製品、
- ポリアルキレングリコールペンタエリスリチルエーテル、糖の脂肪アルコールエーテル、及びそれらの混合物、5オキシエチレン単位(5OE)(CTFA名:PPG-5ペンタエリスリチルエーテル)を含むポリエチレングリコールペンタエリスリチルエーテル、5オキシプロピレン(5OP)単位(CTFA名:PEG-5ペンタエリスリチルエーテル)を含むポリプロピレングリコールペンタエリスリチルエーテル及びそれらの混合物、特に、Vevy社によってLanolideという名称で販売されている混合物PEG-5ペンタエリスリチルエーテル、PPG-5ペンタエリスリチルエーテル及びダイズ油(構成物が、質量比46/46/8、すなわち、PEG-5ペンタエリスリチルエーテル46%、PPG-5ペンタエリスリチルエーテル46%及びダイズ油8%である混合物である)から選ばれるポリオールエーテル;
- 1個又は複数のC2〜C100ジオール、好ましくはC2〜C50ジオール間のポリエーテル化から生じる脂溶性ポリエーテルから選ばれる。
【0197】
脂溶性ポリエーテルの中で特に好ましいのは、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとC6〜C30長鎖アルキレンオキシドのコポリマーであり、より好ましくは、コポリマーにおける、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドのアルキレンオキシドに対する質量比が5:95〜70:30であるものである。このファミリーにおいて、特に挙げることができるのは、長鎖アルキレンオキシドが、平均分子量1000〜10000であるブロックの形態で配列されるようなコポリマー、例えば、Akzo Nobel社によりElfacos ST9という商品名で販売されている、ドデカンジオール(22mol)とポリエチレングリコール(45OE)とのエーテル等のポリオキシエチレン/ポリドデシルグリコールブロックコポリマー、
- エステル及びポリエステル、
- 並びに/又はこれらの混合物
である。
【0198】
エステルの中でも、以下のものが特に好ましい。
- グリセロールオリゴマーのエステル、特にジグリセロールエステル、詳細にはアジピン酸とグリセロールの縮合物(そこでグリセロールのヒドロキシル基のいくつかが、ステアリン酸、カプリン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸、並びに12-ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸の混合物と反応している)、好ましくは、例えば、Sasol社によりSoftisan649という商品名で販売されているビスジグリセリルポリアシルアジペート-2等、
- C8〜C30アルキル基を有するビニルエステルホモポリマー、例えば(特にChimex社によりMexomer PPという参照名で販売されている)ラウリン酸ポリビニル、及びAlzo社によりWaxenol801という商品名で販売されているプロピオン酸アラキジル、
- フィトステロールエステル、
- 脂肪酸トリグリセリド及びそれらの誘導体、例えば、脂肪酸のトリグリセリド(特にC10〜C18であり、部分的に又は全体的に水素化されており、例えば、Sasol社によりSoftisan100という参照名で販売されている)、
- ペンタエリトリトールエステル、
- 直鎖状又は分枝状のC4〜C50ジカルボン酸又はポリカルボン酸とC2〜C50ジオール又はポリオールとの重縮合から得られる非架橋ポリエステル、
脂肪族ヒドロキシカルボン酸エステルの、脂肪族カルボン酸とのエステル化から得られるエステルの脂肪族エステル。好ましくは、脂肪族カルボン酸は、4〜30個、好ましくは8〜30個の炭素原子を含む。脂肪族カルボン酸は、好ましくは、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘキシルデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、イソステアリン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、イソアラキジン酸、オクチルドデカン酸、ヘンエイコサン酸及びドコサン酸、並びにそれらの混合物から選ばれる。脂肪族カルボン酸は、好ましくは分枝状である。脂肪族ヒドロキシカルボン酸エステルは、有利には、2〜40個の炭素原子、好ましくは10〜34個の炭素原子、更に良好には12〜28個の炭素原子、1〜20個のヒドロキシル基、好ましくは1〜10個のヒドロキシル基、更に良好には1〜6個のヒドロキシル基を含む、ヒドロキシル化された脂肪族カルボン酸に由来する。脂肪族ヒドロキシカルボン酸エステルは、
a)飽和の直鎖状のモノヒドロキシル化脂肪族モノカルボン酸の部分又は全エステル;
b)不飽和モノヒドロキシル化脂肪族モノカルボン酸の部分又は全エステル;
c)飽和のモノヒドロキシル化脂肪族ポリカルボン酸の部分又は全エステル;
d)飽和ポリヒドロキシル化脂肪族ポリカルボン酸の部分又は全エステル;
e)モノヒドロキシル化若しくはポリヒドロキシル化した脂肪族モノカルボン酸又はポリカルボン酸と反応しているC2〜C16脂肪族ポリオールの部分又は全エステル、
及びそれらの混合物から選ばれる。
- 必要に応じて、遊離アルコール官能基又は酸官能基が、酸基又はアルコール基でエステル化された、ジオールダイマーと二酸ダイマーのエステル、特にダイマージリノール酸エステル;かかるエステルは、以下のINCI名ビス-ベヘニル/イソステリル/ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルフィトステリル(Plandool G)、フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ダイマージリノール酸ベヘニル(Plandool H又はPlandool S)を有するエステル及びそれらの混合物から特に選ぶことができる、
- 植物起源のバター状のもの、例えばマンゴーバター等、例えばAarhuskarlshamn社によってLipex 203という参照名で販売されている製品、シア脂、特に、INCI名がButyrospermum Parkii Butterである製品、例えば、Aarhuskarlshamn社によってSheasoft(登録商標)という参照名で販売されている製品、クプアスバター(Beraca Sabara社製のRain Forest RF3410)、ムルムルバター(Beraca Sabara社製のRain Forest RF3710)、カカオ脂;またオレンジワックス、例えば、Koster Keunen社によってOrange Peel Waxという参照名で販売されている製品、
- 全体的に又は部分的に水素化された植物油、例えば水素化されたダイズ油、水素化されたヤシ油、水素化されたナタネ油、水素化された植物油の混合物、水素化されたダイズ油、ヤシ油、パーム油及びナタネ植物油の混合物、例えばAarhuskarlshamn社によってAkogel(登録商標)という参照名で販売されている混合物(INCI名水添野菜油)、Desert Whale社によってIso-Jojoba-50(登録商標)という商品参照名で製造又は販売されている、トランス異性体化された、部分的に水素化されたホホバ油、部分的に水素化されたオリブ油、例えば、Soliance社によってBeurroliveという参照名で販売されている化合物、
- 水添ヒマシ油エステル、例えば水添ヒマシ油ダイマージリノール酸等、例えば高級アルコール工業株式会社によって販売されているRisocast-DA-L、及び水添ヒマシ油イソステアレート、例えば、Nisshin Oil社によって販売されているSalacos HCIS(V-L)、
- 並びにこれらの混合物。
【0199】
ペースト状化合物の中でも、脂溶性ポリエーテル、エステル及びポリエステル、より詳細には、グリセロールオリゴマーのエステル、植物起源のバター状のもの及び全体的に又は部分的に水素化された植物油との脂溶性ポリエーテル、エステル及びポリエステルが、好ましくは選ばれる。
【0200】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、組成物は、少なくとも1種のワックスを含む。
【0201】
好ましくは、固体化合物の含有量は、組成物の総質量に対して0.15質量%から20質量%の範囲である。
【0202】
界面活性剤系
本発明による組成物は、より詳細には、ポリオールの脂肪酸エステル、例えばモノ-、ジ-、トリ-若しくはセスキ-オレイン酸又はステアリン酸ソルビトール又はグリセリル、ラウリン酸グリセリル又はポリエチレングリコール;シリコーン界面活性剤、例えば、シリコーン主鎖のペンダント基であり又は末端にある、例えば6〜22個の炭素原子を含むアルキル若しくはアルコキシ鎖を有するアルキル若しくはアルコキシジメチコンコポリオール等;又はポリオキシアルキレン化グリコール脂肪酸エステルタイプのポリマーから選ばれる、少なくとも1種の乳化界面活性剤系を含む。
【0203】
本発明による組成物は、油中水型エマルション、特にHLB(親水性/親油性バランス)が7未満である界面活性剤を得ることが可能である乳化界面活性剤を含む。
【0204】
好ましくは、乳化界面活性剤は、ポリオールの脂肪酸エステル、例えばモノ-、ジ-、トリ-若しくはセスキ-オレイン酸又はステアリン酸ソルビトール又はグリセリル、ラウリン酸グリセリル又はポリエチレングリコール等;シリコーン主鎖のペンダント基であり又は末端にある、例えば6〜22個の炭素原子を含む、アルキル若しくはアルコキシ鎖を有するアルキル若しくはアルコキシジメチコンコポリオール;ポリオキシアルキレン化グリコール脂肪酸エステルタイプのポリマー、及びそれらの混合物から選ばれる。
【0205】
好ましくは、本組成物は、少なくとも1種のシリコーン界面活性剤を含む。
【0206】
好ましくは、本組成物は、シリコーン主鎖のペンダント基であり又は末端にある、例えば6〜22個の炭素原子を含むアルキル若しくはアルコキシ鎖を有するアルキル若しくはアルコキシジメチコンコポリオールから選ばれる、少なくとも1種の界面活性剤を含む。
【0207】
特に、乳化界面活性剤は、C8〜C22アルキルジメチコンコポリオール、すなわち、オキシプロピレン化及び/又はオキシエチレン化ポリメチル(C8〜C22)アルキルジメチルメチルシロキサンとなり得る。
【0208】
C8〜C22アルキルジメチコンコポリオールは、有利には、次式(I)
【0209】
【化11】
【0210】
[式中、
- PEは、(-C2H4O)x-(C3H6O)y-R、(Rは、水素原子及び1から4個の炭素原子のアルキル基から選ばれ、xは0から100までの範囲であり、yは、0から80までの範囲であり、x及びyは、同時に0でない)を表し、
- mは、1から40の範囲であり、
- nは、10から200の範囲であり、
- oは、1から100の範囲であり、
- pは、7から21の範囲であり、
- qは、0から4の範囲であり、
好ましくは、
R=Hであり、
m=1〜10であり、
n=10〜100であり、
o=1〜30であり、
p=15であり、
q=3である]の化合物である。
【0211】
好ましくは、C8〜C22アルキルジメチコンコポリオールとして、セチルジメチコンコポリオール、特にINCI名が、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコンである製品、例えばEvonik Goldschmidt社によってAbil EM-90という名称で販売されている製品が用いられる。
【0212】
W/Oエマルションを得るために本発明において用いることができる他の界面活性剤として、油中水型の乳化特性を有するポリオキシアルキレン化グリコール脂肪酸エステルタイプのポリマーを挙げることができる。
【0213】
前記ポリマーの脂肪酸エステルは、好ましくはポリヒドロキシル化される。特に、このポリマーは、ポリ(ヒドロキシル化エステル)ブロック及びポリエチレングリコールブロックを含む、好ましくはABA構造のブロックポリマーである。
【0214】
上記で定義される通り前記乳化ポリマーの脂肪酸エステルは、12から20個の炭素原子、好ましくは14から18個の炭素原子を含む鎖を一般に有する。エステルは、オレイン酸エステル、パルミチン酸エステル及びステアリン酸エステルから特に選ぶことができる。
【0215】
上記で定義される前記乳化ポリマーのポリエチレングリコールブロックは、好ましくは、エチレンオキシド4〜50mol、より好ましくはエチレンオキシド20〜40molを含む。
【0216】
本発明の組成物を調製するために特に適している、ポリマー界面活性剤は、ICI社によってArlacel P 135という商品名で販売されている、30OEを有するジポリヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコールである。
【0217】
有利には、界面活性剤は、ポリオールアルキルエステルを含む群から選ぶことができる。特に挙げることができるポリオールアルキルエステルには、グリセロール及び/又はソルビタンエステル、例えばCognis社によってLameform TGIという名称で販売されているジイソステアリン酸ポリグリセリル-3、Goldschmidt社によってIsolan GI 34という名称で販売されている製品等のイソステアリン酸ポリグリセリル-4、ICI社によってArlacel 987という名称で販売されている製品等のイソステアリン酸ソルビタン、ICI社によってArlacel 986という名称で販売されている製品等のイソステアリン酸ソルビタングリセリル、並びにそれらの混合物が含まれる。
【0218】
言うまでもなく、本発明による組成物は、いくつかの界面活性剤を含むことができる。特に、本発明による組成物は、ポリオールの脂肪酸エステル、例えばモノ-、ジ-、トリ-若しくはセスキ-オレイン酸又はステアリン酸ソルビトール又はグリセリル、ラウリン酸グリセリル又はポリエチレングリコール等;シリコーン主鎖のペンダント基であり又は末端にある、例えば6〜22個の炭素原子を含むアルキル若しくはアルコキシ鎖を有するアルキル若しくはアルコキシジメチコンコポリオール;ポリオキシアルキレン化グリコール脂肪酸エステルタイプのポリマー、及びそれらの混合物から選ばれる、少なくとも2種の界面活性剤の混合物を含むことができる。
【0219】
特に好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、式(I)のC8〜C22アルキルジメチコンコポリオール、好ましくはセチルジメチコンコポリオール、特に、INCI名がセチルPEG/PPG-10/1ジメチコンである製品、例えば、Evonik Goldschmidt社によってAbil EM-90という名称で販売されている製品から好ましくは選ばれる、シリコーン界面活性剤を含む。
【0220】
好ましくは、本実施形態によれば、本発明による組成物は、ポリオールアルキルエステル、好ましくはグリセロール及び/又はソルビタンエステルから選ばれる少なくとも1種の共界面活性剤(コサーファクタント)を含む。好ましくは、共界面活性剤は、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3、イソステアリン酸ポリグリセリル-4、イソステアリン酸ソルビタン及びソルビタングリセリルイソステアレート、並びにそれらの混合物から選ばれる。
【0221】
好ましくは、共界面活性剤は、イソステアリン酸ポリグリセリル-4、例えば、Goldschmidt社によってIsolan GI 34という名称で販売されている製品等である。
【0222】
乳化界面活性剤系は、組成物中で、組成物の総質量に対して1質量%から6質量%、好ましくは2質量%から6質量%の範囲である含有量で存在することができる。
【0223】
本発明による組成物はまた、色素、充填剤又は化粧品活性剤等、化粧品において通常用いられる任意の追加の成分を含むこともできる。
【0224】
言うまでもなく、本発明に従って用いられる組成物の有利な特性が、想定された添加により有害な影響を受けない又は実質的に受けないように、当業者は、注意して場合による追加の化合物及び/又はその量を選択する。
【0225】
色素
本発明による組成物は、水溶性又は非水溶性の、脂溶性又は非脂溶性の有機又は鉱物色素、及び光学効果を有する材料、並びにそれらの混合物から選ぶことができる、少なくとも1種の色素を含むことができる。好ましくは、色素の量は、前記組成物の総質量に対して10質量%未満である。
【0226】
本発明の目的では、用語「色素」とは、適当な化粧品媒体中で十分な量で配合される場合、着色された光学効果をもたらすことのできる化合物を意味する。
【0227】
好ましくは、本発明による組成物は、顔料及び/又は真珠光沢剤及び/又は水溶性染料から選ばれる少なくとも1種の色素、並びにそれらの混合物を含む。
【0228】
好ましい一実施形態によれば、本発明による組成物は、少なくとも1種の水溶性色素を含む。
【0229】
本発明に従って用いられる水溶性色素は、より詳細には、水溶性染料である。
【0230】
本発明の目的では、用語「水溶性染料」とは、水性相又は水に混和性の溶媒に溶解性であり着色することができる、天然若しくは合成の、一般に有機の任意の化合物を意味することを目的としている。特に、用語「水溶性」とは、25℃で測定して少なくとも0.1g/lに等しい濃度まで水に溶解される化合物の能力(巨視的に等方性の透明な、有色又は無色の溶液の生成)を意味することを目的としている。この溶解性は、特に1g/l以上である。
【0231】
本発明において用いるのに適している水溶性染料として、特に、合成の若しくは天然の水溶性染料、例えばFDC Red 4(CI:14700)、DC Red 6(Lithol Rubine Na;CI:15850)、DC Red 22(CI:45380)、DC Red 28(CI:45410 Na塩)、DC Red 30(CI:73360)、DC Red 33(CI:17200)、DC Orange 4(CI:15510)、FDC Yellow 5(CI:19140)、FDC Yellow 6(CI:15985)、DC Yellow 8(CI:45350 Na塩)、FDC Green 3(CI:42053)、DC Green 5(CI:61570)、FDC Blue 1(CI:42090)を挙げることができる。
【0232】
本発明と関連して用いることができる水溶性色素の供給源の限定しない例証として、コチニールカルミン、ビートの根、ブドウ、ニンジン、トマト、アナットー(annatto)、パプリカ、ヘンナ、カラメル及びクルクミンの抽出物等の天然由来のものを特に挙げることができる。
【0233】
したがって、本発明において用いるのに適している水溶性色素は、特に、カルミン酸、ベタニン、アントシアン、エノシアニン(enocyanin)、リコペン、β-カロテン、ビキシン、ノルビキシン、カプサンチン、カプソルビン(capsorubin)、フラボキサンチン、ルテイン、クリプトキサンチン、ルビキサンチン、ビオラキサンチン、リボフラビン、ロドキサンチン、カンタキサンチン(cantaxanthin)及びクロロフィル、及びそれらの混合物である。
【0234】
これらはまた、硫酸銅、硫酸鉄、水溶性スルホポリエステル、ローダミン、ベタイン、メチレンブルー、タートラジンの二ナトリウム塩、及びフクシンの二ナトリウム塩となり得る。
【0235】
これらの水溶性染料のうちのいくつかは、食品の使用について特に認可されている。より詳細に挙げることができるこれらの染料の代表には、食品コードE120、E162、E163、E160a〜g、E150a、E101、E100、E140及びE141で参照される、カロテノイドファミリーの染料が含まれる。
【0236】
好ましい一変形形態によれば、作製することを目的としている皮膚及び/又は唇に移行されようとする水溶性色素は、基質に含浸することによって適合されるように生理的に許容される媒体で配合される。
【0237】
水溶性色素は、前記組成物の総質量に対して0.001質量%から5質量%、好ましくは0.002質量%から3質量%の範囲の含有量で、本発明による組成物中に存在し得る。
【0238】
別の実施形態によれば、本発明による組成物は、色素として少なくとも1種の顔料及び/又は真珠光沢剤を含むことができる。
【0239】
用語「顔料」とは、液体有機相に不溶性であり、組成物及び/又は組成物で生成された沈着物を着色し且つ/又は不透明にすることを目的とした、白色の又は着色された無機(鉱物)又は有機の粒子を意味するものと理解されるものとする。
【0240】
顔料は、鉱物顔料、有機顔料及び複合顔料(すなわち、鉱物材料及び/又は有機材料をベースとした顔料)から選ぶことができる。
【0241】
顔料は、単色顔料、レーキ、真珠光沢剤及び光学効果を有する顔料、例えば、反射顔料及びゴニオクロマチック顔料から選ぶことができる。
【0242】
鉱物顔料は、金属酸化物顔料、酸化クロム、酸化鉄、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、マンガンバイオレット、プルシアンブルー、群青及びフェリックブルー、及びそれらの混合物から選ぶことができる。
【0243】
有機顔料は、例えば以下の通りとなり得る。
- コチニールカルミン、
- アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、キサンテン染料、ピレン染料、キノリン染料、トリフェニルメタン染料又はフルオラン染料の有機顔料、
- 有機レーキ又はアゾ、アントラキノン、インジゴイド、キサンテン、ピレン、キノリン、トリフェニルメタン若しくはフルオラン染料等の酸性染料の不溶性のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、アルミニウム塩、ジルコニウム塩、ストロンチウム塩又はチタン塩。これらの染料は、一般に、少なくとも1つのカルボン酸基又はスルホン酸基を含む。
- メラニンに基づいた顔料。
【0244】
有機顔料のうち、D&C Blue No.4、D&C Brown No.1、D&C Green No.5、D&C Green No.6、D&C Orange No.4、D&C Orange No.5、D&C Orange No.10、D&C Orange No.11、D&C Red No.6、D&C Red No.7、D&C Red No.17、D&C Red No.21、D&C Red No.22、D&C Red No.27、D&C Red No.28、D&C Red No.30、D&C Red No.31、D&C Red No.33、D&C Red No.34、D&C Red No.36、D&C Violet No.2、D&C Yellow No.7、D&C Yellow No.8、D&C Yellow No.10、D&C Yellow No.11、FD&C Blue No.1、FD&C Green No.3、FD&C Red No.40、FD&C Yellow No.5及びFD&C Yellow No.6を挙げることができる。
【0245】
疎水化処理剤は、シリコーン、例えば、メチコン、ジメチコン、及びパーフルオロアルキルシラン等;脂肪酸、例えば、ステアリン酸等;金属石鹸、例えば、アルミニウムジミリステート、水添タロウグルタメートのアルミニウム塩、パーフルオロアルキルホスフェート、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロアルキルシラザン、ポリヘキサフルオロプロピレンオキシド、パーフルオロアルキルパーフルオロポリエーテル基を含むポリオルガノシロキサン、アミノ酸、N-アシルアミノ酸又はその塩;レシチン、イソプロピルトリイソステアリルチタネート、並びにそれらの混合物から選ぶことができる。
【0246】
N-アシルアミノ酸は、8〜22個の炭素原子を含むアシル基、例えば、2-エチルヘキサノイル基、カプロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基又はココイル基等を含むことができる。これらの化合物の塩は、アルミニウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、ジルコニウム塩、亜鉛塩、ナトリウム塩又はカリウム塩となり得る。アミノ酸は、例えば、リシン、グルタミン酸又はアラニンとなり得る。
【0247】
上記で引用される化合物において挙げられた用語「アルキル」とは、1〜30個の炭素原子を含むアルキル基、好ましくは5〜16個の炭素原子を含むアルキル基を意味する。
【0248】
疎水処理された顔料は、詳細には、特許出願EP-A-1086683に記載されている。
【0249】
本特許出願の目的では、用語「真珠光沢剤」とは、特に殻中で、ある種の軟体動物によって生成された、或いは合成された、虹色であってもなくてもよく、且つ光学干渉を介して色彩効果を有する、任意の形態の着色された粒子を意味することを目的としている。
【0250】
挙げることができる真珠光沢剤の例には、酸化鉄で被覆されたチタンマイカ、オキシ塩化ビスマスで被覆されたマイカ、酸化クロムで被覆されたチタンマイカ、特に上記のタイプの有機染料で被覆されたチタンマイカ等の真珠光沢顔料、及びオキシ塩化ビスマスをベースとする真珠光沢顔料が含まれる。これらはまた、表面に金属酸化物及び/又は有機色素の連続した少なくとも2層が重ねられているマイカ粒子でもよい。
【0251】
真珠光沢剤は、より詳細には、黄、桃、赤、青銅、橙、茶、金及び/又は銅の色又は色合いを有する。
【0252】
第1の組成物中に干渉顔料として導入されてよい真珠光沢剤の例証として、特にEngelhard社によりBrilliant gold 212G(Timica)、Gold 222C(Cloisonne)、Sparkle gold(Timica)、Gold 4504(Chromalite)及びMonarch gold 233X(Cloisonne)という名称で販売されている金色に着色された真珠光沢剤;特にMerck社によりBronze fine(17384)(Colorona)及びBronze(17353)(Colorona)という名称で、並びにEngelhard社によりSuper bronze(Cloisonne)という名称で販売されている青銅色の真珠光沢剤;特にEngelhard社によりOrange 363C(Cloisonne)及びOrange MCR 101(Cosmica)という名称で、並びにMerck社によりPassion orange(Colorona)及びMatte orange(17449)(Microna)という名称で販売されている橙色の真珠光沢剤;特にEngelhard社によりNu-antique copper 340XB(Cloisonne)及びBrown CL4509(Chromalite)という名称で販売されている褐色の真珠光沢剤;特にEngelhard社によりCopper 340A(Timica)という名称で販売されている銅色の色合いを有する真珠光沢剤;特にMerck社によりSienna fine(17386)(Colorona)という名称で販売されている赤色の色合いを有する真珠光沢剤;特にEngelhard社によりYellow(4502)(Chromalite)という名称で販売されている黄色の色合いを有する真珠光沢剤;特にEngelhard社によりSunstone G012(Gemtone)という名称で販売されている金色の色合いを有する赤色の真珠光沢剤;特にEngelhard社によりTan opale G005(Gemtone)という名称で販売されている淡紅色の真珠光沢剤;特にEngelhard社によりNu antique bronze 240 AB(Timica)という名称で販売されている金色の色合いを有する黒色の真珠光沢剤、特にMerck社によりMatte blue(17433)(Microna)という名称で販売されている青色の真珠光沢剤、特にMerck社によりXirona Silverという名称で販売されている銀色の色合いを有する白色の真珠光沢剤、特にMerck社によりIndian summer(Xirona)という名称で販売されている金緑色で淡紅色の橙色の真珠光沢剤、並びにそれらの混合物を挙げることができる。
【0253】
本発明による組成物はまた、色素がなくてもよい。
【0254】
充填剤
本発明に従って用いられる化粧用組成物は、有機若しくは鉱物の性質の少なくとも1種の充填剤を含むこともできる。
【0255】
用語「充填剤」とは、組成物の媒体に不溶性であり、それに分散している形態の任意の形状の無色又は白色の固体粒子を意味するものと理解するべきである。無機性又は有機性のこれらの粒子は、組成物にこし(body)又は剛性を与え、且つ/又はメークアップに柔らかさ及び均一性を与えることができる。これらは、色素と異なる。
【0256】
本発明による組成物において用いることができる充填剤の中でもとりわけ、シリカ、カオリン、ベントン、デンプン、ラウロイルリジン、場合によって親水性に又は疎水性に処理されたフュームドシリカ粒子、並びにそれらの混合物を挙げることができる。
【0257】
本発明に従って用いられる組成物は、組成物の全質量に対して0.1質量%から15質量%の範囲の含有量、特に、組成物の全質量に対して1質量%から10質量%の含有量で1種又は複数の充填剤を含むことができる。
【0258】
好ましくは、本発明による組成物は、充填剤、ワックス、ペースト状脂肪物質、半結晶性ポリマー及び/又は親油性ゲル化剤及びそれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。
【0259】
通常の追加の化粧品成分
本発明に従って用いられる組成物はまた、特に、酸化防止剤、追加の(親油性若しくは親水性)皮膜形成ポリマー、香料、保存剤、中和剤、日焼け止め、甘味剤、ビタミン、フリーラジカルスカベンジャー及び金属イオン封鎖剤、並びにそれらの混合物から特に選ぶことができる、任意の通常の化粧品成分を含むこともできる。
【0260】
言うまでもなく、当業者は、本発明による組成物の有利な特性が、想定される添加によって有害な影響を全く受けない又は実質的に受けないように、場合による追加の成分及び/又はその量を注意深く選択する。
【0261】
本発明による組成物は、より詳細には、唇をメークアップ及び/又はケアするための組成物となり得る。
【0262】
本発明による組成物は、液状リップスティック、又は唇用のある程度濃厚なクリーム若しくはペースト、例えばリップグロス又はリップバター等を構成することができる。
【0263】
本発明による組成物は、化粧品又は皮膚科学において一般に用いられる公知の方法によって製造することができる。
【0264】
本発明による組成物は、特に唇に塗布されることを目的とした流体化粧用組成物についてよく知られているデバイスの任意のタイプで調節することができる。
【0265】
したがって、本組成物を排出することができる少なくとも1個の開口部を備えた末端で終結させる、或いはフェルト又はフロック加工された先端又はブラシで終結させるボール(ロールオン)を装備した塗布具を含む容器、計量分配ペンタイプの容器;浸漬塗布具、例えばブラシを備える容器を含むデバイスを用いることが想定され得る。
【0266】
かかるデバイスは、前記組成物が容器から適用部材に又は支持体に排出することが可能である組成物を計量分配するための機序を備えていても備えていなくてもよい。この機序は、有利には、組成物をメーターで計るための手段を含み得るということを留意すべきである。
【0267】
次の例は、本発明の例証として提示されるものであり、その範囲を限定するものとして解釈することはできない。
【実施例】
【0268】
次の組成物を調製する(別段示されない限り、含有量は、活物質の質量百分率として表される)。
【0269】
【表1】
【0270】
調製プロトコール
油性相の成分を、加熱パンに置き、全体を固体/ペースト状成分を融解する及び均質な混合物を得るために十分な温度にする。
【0271】
次いで、水性相の成分を、(Rayneriミキサーで)撹拌しながら加えて、逆エマルションを得る。
【0272】
唇における本組成物の沈着物は、速やかに乾燥する、均一で、薄く、軽く、べとつきがない及び粘着性がない沈着物を得る。
【0273】
唇の状態は、特に柔らかさが改善される。この効果は、処置を止めた後でも持続する。