(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2粘着層の表面の凹凸構造は、格子状又は縞状の溝、或いは、独立した複数の島状突起であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のグラファイト複合フィルム。
前記粘着部が、規則的に配置された、多角形、棒状、帯状の島状突起である場合、島状突起の一辺と、当該辺と向かい合う隣接する島状突起の一辺との間の間隔は、0.01mm以上であることを特徴とする請求項7又は8に記載のグラファイト複合フィルム。
前記グラファイト複合フィルムとSUSとのピール強度が4.0N/25mm以上12.0N/25mm以下であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載のグラファイト複合フィルム。
前記グラファイトフィルムは、グラファイトシートと接着層とが交互に積層されてなるグラファイト積層体であって、前記グラファイト積層体に含まれる前記グラファイトシートの積層数は3層以上であることを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載のグラファイト複合フィルム。
前記セパレーターの凹凸構造を有する表面の粗さがRa0.06μm以上1.00μm以下、且つ、Rz0.3μm以上10.0μm以下であることを特徴とする請求項16に記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
前記セパレーターの凹凸構造を有する表面に粘着剤溶液を製膜して、凹凸構造を転写することを特徴とする請求項16又は17に記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
前記セパレーターを、溶媒残存率5%以下の前記第2粘着層に接触させて、前記第2粘着層の表面に前記凹凸構造を転写することを特徴とする請求項16又は17に記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
前記グラファイトフィルムの凹凸構造を有する表面の表面粗さがRa0.55μm以上1.70μm以下、且つ、Rz2.3μm以上6.00μm以下であることを特徴とする請求項20に記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
前記第2粘着層の凹凸構造を有する表面の表面粗さがRa0.8μm以下、Rz4.5μm以下であることを特徴とする請求項20から22のいずれか1項に記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
前記グラファイト複合フィルムの前記被着体と接した面と反対側の表面に保護層が積層されており、当該保護層の表面の表面粗さが、Ra0.15μm以上10μm以下、且つ、Rz1.0μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項25に記載の放熱部品。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。
【0019】
〔1〕グラファイト複合フィルム
上述したように、粘着剤が全面に塗布されている一般的なグラファイト複合フィルムは、グラファイト複合フィルムと被着体(発熱部品)との密着性が良いので放熱性に優れるが、発熱部品に接合させたときに、空気を巻き込み被着体とグラファイト複合フィルムとの間に気泡が発生するという問題がある。気泡発生の問題を解決する方法としては、被着体とグラファイト複合フィルムの密着頻度や密着性を落とす方法が考えられる。かかる方法としては、具体的には、点状の粘着剤を使用したり、粘着力(ピール強度)の弱い粘着剤を使用したりする方法などが考えられるが、これらの方法では、グラファイト複合フィルムの主目的である放熱性を犠牲にしてしまうこととなる。そこで、本発明者らは、放熱性を損なうことなく空気の噛みこみを抑制できるグラファイト複合フィルムを実現すべく鋭意検討した結果、グラファイトフィルムと当該グラファイトフィルムに接した粘着層とを有し、前記グラファイトフィルムの全面積に対する、粘着剤で覆われているグラファイトフィルムの面積の割合は35%以上100%以下であり、前記粘着層が前記グラファイトフィルムと接した面と反対側の表面に凹凸構造を有するグラファイト複合フィルムによれば、放熱性を損なうことなく空気の噛みこみを抑制できることを見出し本発明を完成させるに至った。即ち、本発明に係るグラファイト複合フィルムは、グラファイトフィルムと当該グラファイトフィルムに接した粘着層とを有し、前記グラファイトフィルムの全面積に対する、粘着剤で覆われているグラファイトフィルムの面積の割合は35%以上100%以下であり、前記粘着層は、前記グラファイトフィルムと接した面と反対側の表面に凹凸構造を有するものである。
【0020】
(1−1)粘着層
粘着層とは、グラファイトフィルム上に積層され、被着体とグラファイト結合フィルムとを接合する層である。本発明に係るグラファイト複合フィルムは、粘着剤により覆われているグラファイトフィルムの面積が、グラファイトフィルムの全面積の35%以上100%以下であり、粘着層は、グラファイトフィルムと接した面と反対側の表面に凹凸構造を有していればよい。これにより、グラファイト複合フィルムの放熱性を損なうことなく、被着体に貼り合わせた際の被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生を低減することができる。本発明の効果について、本発明者らは次のように推測している。まず、グラファイト複合フィルムにおいて、被着体と接する粘着層の表面に凹凸構造が形成されている場合、グラファイト複合フィルムと被着体とを貼り合せた際に両者の間に気泡が生じたとしても、当該凹凸構造によって生じる微細な間隙により、容易に気泡を除去することができる(いわゆる“エア抜け”の容易性)。そして、本発明に係るグラファイト複合フィルムでは、グラファイトフィルムの全面積の35%〜100%が粘着剤で覆われているので、凹凸構造によって微細な間隙が生じて気泡が除去された後に、微細な間隙が生じていた部分の少なくとも一部においても存在する粘着剤によりグラファイト複合フィルムが被着体に接合されると考えられる。そのため、グラファイト複合フィルムと被着体(例えば、SUSの筐体、プラスチックの筐体など)との密着性が良いことから、グラファイト複合フィルムから被着体への熱移動がスムーズであるので、放熱性を損なうことがない。
【0021】
なお、本発明において、「粘着剤で覆われているグラファイトフィルムの面積」とは、被着体と貼り合わせるための粘着剤を含む層において、粘着剤で覆われているグラファイトフィルムの面積を意味する。したがって、粘着層が多層構造である場合は、「粘着剤で覆われているグラファイトフィルムの面積」とは、粘着層の前記グラファイトフィルムと接した面と反対側の被着体と貼り合わせるための粘着剤を含む層、即ち最外層において、粘着剤で覆われているグラファイトフィルムの面積をいう。なお、多層構造の場合、最外層の粘着剤は直接グラファイトフィルムと接しているわけではないが、当該粘着剤が覆っている領域に相当するグラファイトフィルムの面積を「粘着剤で覆われているグラファイトフィルムの面積」とする。
【0022】
本発明に係るグラファイト複合フィルムでは、粘着剤により覆われているグラファイトフィルムの面積は、グラファイトフィルムの全面積の35%以上100%以下である。すなわち、本発明には、粘着剤により覆われているグラファイトフィルムの面積の、グラファイトフィルムの全面積に対する割合が、100%である場合と、35%以上100%未満である場合が含まれる。
【0023】
粘着剤により覆われているグラファイトフィルムの面積の、グラファイトフィルムの全面積に対する割合が、100%である場合は、例えば、
図9の(b)に示すように、粘着層において、グラファイトフィルムの全面積が粘着剤により覆われているとともに、粘着層がグラファイトフィルムと接した面と反対側の表面に凹凸構造を有している。
【0024】
粘着剤により覆われているグラファイトフィルムの面積の、グラファイトフィルムの全面積に対する割合が、35%以上100%未満である場合は、例えば、
図9の(a)に示すように、粘着層において、グラファイトフィルムが粘着剤により覆われず露出している部分が存在するとともに、粘着層がグラファイトフィルムと接した面と反対側の表面に凹凸構造を有している。かかる場合、粘着剤により覆われているグラファイトフィルムの面積の、グラファイトフィルムの全面積に対する割合は、より好ましくは35%以上90%以下であり、さらに好ましくは50%以上85%以下である。粘着剤により覆われているグラファイトフィルムの面積の、グラファイトフィルムの全面積に対する割合が前記範囲内であれば、被着体との接触がよく熱伝導に優れ、グラファイト複合フィルムの放熱性を損なうことなく、被着体に貼り合わせた際の被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生を低減することができるため好ましい。また、被着体との接触がよいため、粘着力にも優れる。
【0025】
なお、本発明では、粘着層は、グラファイトフィルムと接した面と反対側の表面に凹凸構造を有していればよく、粘着層のグラファイトフィルムと接した面の構造はどのような構造であってもよい。即ち、粘着層のグラファイトフィルムと接した面は、凹凸構造を有していても有していなくてもよい。
【0026】
(1−1−1)凹凸構造
本発明において、凹凸構造を有しているとは、平坦でなく凹凸を有していればよく、その他の構成は特に限定されない。例えば、前記粘着層の凹凸構造を有する表面の表面粗さは、Ra0.19μm以上10μm以下、且つ、Rz1.6μm以上100μm以下であることがより好ましく、Ra0.19μm以上1.0μm以下、且つ、Rz1.6μm以上10.0μm以下であることがさらに好ましく、Ra0.35μm以上0.70μm以下、且つ、Rz2.5μm以上6.0μm以下であることが特に好ましい。或いは、前記粘着層の凹凸構造を有する表面の表面粗さは、Raが好ましくは0.19μm以上10μm以下であり、より好ましくは0.19μm以上1.0μm以下であり、さらに好ましくは0.35μm以上0.70μm以下である。また、前記粘着層の凹凸構造を有する表面の表面粗さは、Rzがより好ましくは1.6μm以上100μm以下であり、さらに好ましくは1.6μm以上10.0μm以下であり、特に好ましくはRz2.5μm以上6.0μm以下である。前記凹凸構造を有する表面の表面粗さが前記範囲内であれば、グラファイト複合フィルムの放熱性を損なうことなく、被着体に貼り合わせた際の被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生を低減することができるため好ましい。なお、ここで、表面粗さとは、実施例に記載の測定方法によって測定された値を言う。
【0027】
ここで、前記凹凸構造の具体的な形状は特に限定されるものではなく、どのような形状であってもよい。また、前記凹凸構造は、形状が一定ではなく、種々の形状の凹部及び凸部の少なくとも何れかが混ざったものであってもよい。しかしながら、前記凹凸構造は、見た目や生産性の観点から一定の形状の凹部及び凸部の少なくとも何れかからなるものであることがより好ましい。一定形状であれば、見た目にも美しく見え、一定のパターンであれば、フィルムの量産にも適している。
【0028】
前記凹凸構造が、一定の形状の凹部及び凸部の少なくとも何れかからなるものである場合の具体的な形状は特に限定されるものではないが、例えば、格子状又は縞状の溝、或いは、独立した複数の島状突起を挙げることができる。
【0029】
<独立した複数の島状突起>
図1に前記凹凸構造の具体例を示す。
図1中(a)は、独立した複数の島状突起を上から見た平面図である。図中、ハッチング部分が島状突起である。ここで、島状突起の形状は、図では円形であるが、円形に限定されるものではなくどのような形状であってもよく、例えば、楕円形、多角形、棒状、帯状、不定形等であってもよい。多角形には、三角形、正方形・長方形・ひし形等の四角形、五角形、六角形等が含まれる。
【0030】
図1の(a)に示す島状突起を破線Aで切断した断面図は、
図9の(a)のような構成であってもよいし、
図9の(b)のような構成であってもよい。すなわち、凹部の底面部分には、粘着剤が存在していても存在していなくてもよい。或いは、前記断面図は、
図9の(a)の構成と(b)の構成とが混在したものであってもよい。これらの例では、島状突起が前記凹凸構造の凸部であり、島状突起以外の部分が前記凹凸構造の凹部である。
【0031】
図9の(a)は、粘着剤により覆われているグラファイトフィルムの面積の、グラファイトフィルムの全面積に対する割合が、35%以上100%未満である一例である。
図9の(a)に示すように、この例では、グラファイトフィルム41が粘着剤42により覆われず露出している部分が存在する。
図9の(a)の例では、グラファイトフィルム41が粘着剤42により覆われず露出している部分が凹部の底面39に該当する。かかる構成では、島状突起の高さhが、粘着層(後述する三層構造を有する粘着層では第2粘着層)の厚みと同じであり、粘着層の凹部に接着剤が存在しないで、グラファイトフィルム41(後述する三層構造を有する粘着層では三層構造の基材)が露出している。この場合、粘着層は、グラファイトフィルム41上に配置された複数の粘着部を含み、粘着層の表面の凹凸構造は、凸部が前記粘着部からなり、凹部には接着剤が存在せずグラファイトフィルム41が露出していると言うこともできる。かかる構成によれば、被着体に貼り合わせた際の被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生をより効率的に低減することができるため好ましい。
【0032】
図9の(b)は、粘着剤により覆われているグラファイトフィルムの面積の、グラファイトフィルムの全面積に対する割合が、100%である一例である。
図9の(b)に示すように、この例では、グラファイトフィルム41の全面積が粘着剤42により覆われているとともに、粘着層がグラファイトフィルム41と接した面と反対側の表面に凹凸構造を有している。かかる構成では、島状突起の高さhが、粘着層(後述する三層構造を有する粘着層では第2粘着層)の厚みより小さく、粘着層の凹部の底部39とグラファイトフィルム41との間に接着剤が存在している。かかる構成によれば、被着体に貼り合わせた際の被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生をより効率的に低減することができるとともに、その後粘着層の凹部の底部39とグラファイトフィルム41との間に存在する接着剤により被着体とグラファイト複合フィルムとが接合されるため好ましい。
【0033】
密着性に優れるという観点から、各島状突起の上面38は同一面上にあることがより好ましい。また、同様の観点から、各島状突起の上面38は平面であることがより好ましい。
図1の(a)及び
図9の(a)及び(b)では各島状突起は規則的に配置されているが、不規則に配置されていてもよい。また、
図1の(a)及び
図9の(a)及び(b)では各島状突起は同じ形状であるが、複数種類の異なる形状を含むものであってもよい。凹部の底面39も、特にこれに限定されるものではないが、同一平面上にあることがより好ましい。また、前記底面39は平面であることがより好ましい。
【0034】
島状突起の側面40は、前記底面39又は前記上面38に対して、略垂直であってもよいし角度をなしていてもよい。角度をなす場合島状突起の側面40と前記底面39とがなす角度αは、好ましくは60°以上150°以下、より好ましくは90°以上120°以下である。しかし、本実施形態には、島状突起の側面40が、前記底面39又は前記上面38と、必ずしも明確に角度αを成さないで、丸みを帯びて繋がっている形態も含まれる。島状突起の高さh、即ち前記底面39と前記上面38との間の間隔は、好ましくは0.1μm以上20μm以下、より好ましくは0.5μm以上5μm以下、更に好ましくは1.0μm以上3.0μm以下である。前記島状突起の高さhが前記範囲内であれば、グラファイト複合フィルムの放熱性を損なうことなく、被着体に貼り合わせた際の被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生をより好適に低減することができるため好ましい。
【0035】
前記島状突起が、規則的に配列した、多角形、棒状、帯状の島状突起である場合、島状突起の一辺と、当該辺と向かい合う隣接する島状突起の一辺との間の間隔(以下、「島状突起相互間の間隔」と称することがある。)は、好ましくは0.01mm以上であり、より好ましくは0.1mm以上である。また、上限は、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは0.88mm以下、更に好ましくは0.5mm以下である。例えば、島状突起が四角形である場合は、島状突起の四角形の一辺と、当該辺と向かい合う隣接する島状突起の四角形の一辺との間の間隔が上記範囲内であることが好ましい。前記間隔が上記範囲内であれば、グラファイト複合フィルムの放熱性を損なうことなく、被着体に貼り合わせた際の被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生を低減することができるため好ましい。
【0036】
<格子状の溝>
図1中(b)は、格子状の溝を上から見た平面図である。図中、ハッチングされていない部分が格子状の溝である。ここで、格子状の溝は、図では正方形格子であるが、正方形格子に限定されるものではなくどのような格子であってもよく、例えば、三角形格子、長方形格子、ひし形格子、多角形格子等であってもよいし、複数種類の格子を含むものであってもよい。また、溝は直線の溝に限定されるものではなく曲線の溝であってもよい。
【0037】
図1の(b)に示す格子状の溝を破線Bで切断した場合の断面図は、独立した複数の島状突起の場合と同様に、
図9の(a)のような構成であってもよいし、
図9の(b)のような構成であってもよいし、これらの構成が混在したものであってもよい。格子状の溝の例では、格子状の溝が前記凹凸構造の凹部であり、格子状の溝以外の部分が前記凹凸構造の凸部である。
【0038】
図9の(a)及び(b)については、<独立した複数の島状突起>において説明したとおりである。なお、格子状の溝の例では、
図9の(a)の構成において、格子状の溝の深さhが、粘着層(後述する三層構造を有する粘着層では第2粘着層)の厚みと同じであり、凹部に接着剤が存在しないで、グラファイトフィルム41(後述する三層構造を有する粘着層では基材)が露出している。かかる構成によれば、被着体に貼り合わせた際の被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生をより効率的に低減することができるため好ましい。
【0039】
また、格子状の溝の例では、
図9の(a)の構成において、格子状の溝の深さhが、粘着層(後述する三層構造を有する粘着層では第2粘着層)の厚みより小さく、凹部の底部39とグラファイトフィルム41との間に接着剤が存在している。かかる構成によれば、被着体に貼り合わせた際の被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生をより効率的に低減することができるとともに、その後粘着層の凹部の底部39とグラファイトフィルム41との間に存在する接着剤により被着体とグラファイト複合フィルムとが接合されるため好ましい。
【0040】
密着性に優れるという観点から、凸部である溝部分以外の部分の上面は同一面上にあることがより好ましい。また、同様の観点から、当該上面は平面であることがより好ましい。
【0041】
また、格子状の溝のピッチは、好ましくは0.05mm以上2.0mm以下であり、より好ましくは0.1mm以上1.0mm以下であり、さらに好ましくは0.15mm以上0.40mm以下である。なお、ここで、格子状の溝のピッチとは、格子を構成する溝の交点と、当該交点と隣接する交点との間隔をいう。なお、溝が一定の幅を有する場合、前記交点とは、溝の中心を通る線同士の交点をいう。例えば、溝が正方形格子及びひし形格子の場合、ピッチは、それぞれ溝の中心を通る線が形成する格子の正方形及びひし形の一辺の長さである。また、長方形格子の場合、長方形の一方の辺の長さ及び他方の辺の長さの2つのピッチがある。したがって、長方形格子の場合は、両方のピッチが上記範囲内であることが好ましい。格子状の溝のピッチが前記範囲内であれば、グラファイト複合フィルムの放熱性を損なうことなく、被着体に貼り合わせた際の被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生をより好適に低減することができるため好ましい。
【0042】
また、溝の深さは、好ましくは0.1μm以上20μm以下、より好ましくは0.3μmm以上5μm以下、更に好ましくは0.5μm以上1.9μm以下である。溝の幅も、特に限定されるものではないが、好ましくは0.001mm以上2mm以下、より好ましくは0.01mm以上0.05mm以下である。格子状の溝の深さ及び幅が前記範囲内であれば、グラファイト複合フィルムの放熱性を損なうことなく、被着体に貼り合わせた際の被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生をより好適に低減することができるため好ましい。
【0043】
溝の形状も特に限定されるものではなく、断面が、例えば、V字形、U字形、四角形等である。また、溝の断面は厳密なV字形、U字形、四角形ではなく、これらが変形した不定型な形状であってもよい。なお、独立した複数の島状突起と、格子状の溝とは、同じ凹凸形状を示す場合がある。
【0044】
<縞状の溝>
図1中(c)は、縞状の溝を上から見た平面図である。なお、本発明において、縞状とは、
図1の(c)に示すように、筋状の縞をいい、格子縞を除く趣旨である。図中、ハッチングされていない部分が縞状の溝である。ここで、縞状の溝は、図では直線の溝であるが、溝の形状はこれに限定されるものではなく、曲線の溝であってもよい。また、図では、溝と溝との間隔は一定であるが、必ずしも一定でなくてもよい。
【0045】
図1の(c)に示す縞状の溝を破線Cで切断した場合の断面図は、独立した複数の島状突起の場合と同様に、
図9の(a)のような構成であってもよいし、
図9の(b)のような構成であってもよいし、これらの構成が混在したものであってもよい。縞状の溝の例では、縞状の溝が前記凹凸構造の凹部であり、縞状の溝以外の部分が前記凹凸構造の凸部である。
【0046】
図9の(a)及び(b)については、<独立した複数の島状突起>において説明したとおりである。なお、格子状の溝の例では、
図9の(a)の構成において、縞状の溝の深さhが、粘着層(後述する三層構造を有する粘着層では第2粘着層)の厚みと同じであり、凹部に接着剤が存在しないで、グラファイトフィルム41(後述する三層構造を有する粘着層では基材)が露出している。かかる構成によれば、被着体に貼り合わせた際の被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生をより効率的に低減することができるため好ましい。
【0047】
また、格子状の溝の例では、
図9の(a)の構成において、縞状の溝の深さhが、粘着層(後述する三層構造を有する粘着層では第2粘着層)の厚みより小さく、凹部の底部39とグラファイトフィルム41(後述する三層構造を有する粘着層では基材)との間に接着剤が存在している。かかる構成によれば、被着体に貼り合わせた際の被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生をより効率的に低減することができるとともに、その後粘着層の凹部の底部39とグラファイトフィルム41との間に存在する接着剤により被着体とグラファイト複合フィルムとが接合されるため好ましい。
【0048】
密着性に優れるという観点から、凸部である溝部分以外の部分の上面は同一面上にあることがより好ましい。また、同様の観点から、当該上面は平面であることがより好ましい。また、縞状の溝のピッチは、好ましくは0.1mm以上2.0mm以下であり、より好ましくは0.5mm以上1.0mm以下である。なお、ここで、縞状の溝のピッチとは、溝と溝との間隔をいう。なお、溝が一定の幅を有する場合、前記間隔とは、溝の中心を通る線同士の間隔をいう。溝の深さ、幅及び形状については、格子状の溝と同様である。
【0049】
<粘着層の厚み>
前記粘着層の厚みは、好ましくは1.00μm以上20.00μm以下であり、より好ましくは2.00μm以上10.00μm以下であり、更に好ましくは、3.00μm以上7.00μm以下である。前記粘着層の厚みが1.00μm以上であれば被着体との接続が十分に行えるため好ましい。また、前記粘着層の厚みが20.00μm以下であればグラファイトフィルムで拡散した熱を、粘着剤を介して被着体に伝える場合の熱抵抗を抑制できる観点で好ましい。なお、ここで、「粘着層の厚み」とは、被着体と貼り合わせるための粘着剤を含む層の厚みを意味する。したがって、粘着層が多層構造である場合は、「粘着層の厚み」とは、粘着層の前記グラファイトフィルムと接した面と反対側の被着体と貼り合わせるための粘着剤を含む層、即ち最外層の厚みを指す。例えば、粘着層が後述するように三層構造を有する場合は、粘着層の厚みとは、後述する第2粘着層の厚みを指す。
【0050】
また、粘着層の厚みは、後述する実施例に記載の方法に基づき測定して得られた値をいう。また、本明細書において、グラファイトフィルム(GS)、粘着層及び粘着層が三層構造である場合はその各層、グラファイト複合フィルム、アプリケーション層、保護層、などの厚みも、同様に後述する実施例に記載の方法に基づき測定して得られた値をいう。
【0051】
(1−1−2)粘着層の構成
前記粘着層は、粘着剤により覆われているグラファイトフィルムの面積が、グラファイトフィルムの全面積の35%以上100%以下であり、グラファイトフィルムと接した面と反対側の表面に凹凸構造を有していればその構成は特に限定されるものではなく単層構造であっても多層構造であってもよい。前記粘着層は、第1粘着層、基材、及び第2粘着層を含む三層構造を有することがより好ましい。前記粘着層が基材を含むことにより、グラファイト複合フィルムのコシが増える。またグラファイトフィルムの破断を抑制できるため、一度取り付けたグラファイトフィルムを再剥離する際に、グラファイトフィルムが層間剥離する事を抑制することができる。それゆえ、一旦グラファイトフィルムを剥がし再度貼りつける作業を容易に行うことができる。
【0052】
図11に、三層構造の粘着層を有するグラファイト複合フィルムの一例の断面を模式的に示す。
図11の(a)は、粘着剤により覆われているグラファイトフィルムの面積の、グラファイトフィルムの全面積に対する割合が35%以上100%未満である場合の一例であり、
図11の(b)は、粘着剤により覆われているグラファイトフィルムの面積の、グラファイトフィルムの全面積に対する割合が100%である場合の一例である。
【0053】
図11の(a)及び(b)に示すように、第1粘着層45、基材44、及び第2粘着層43は、前記グラファイトフィルム41上に、前記グラファイトフィルム41側から、前記第1粘着層45、前記基材44、前記第2粘着層43の順に積層している。したがって、前記粘着層は、前記第2粘着層43の前記基材44と接していない表面に前記凹凸構造を有していればよい。なお、粘着層が三層構造を有する場合の前記凹凸構造については、前記「(1−1−1)の凹凸構造」に説明したとおりであるのでここでは説明を省略する。但し、前記「(1−1−1)の凹凸構造」の説明において、「グラファイトフィルム41」は「基材」に、「粘着層」は「第2粘着層」に読み替えるものとする。
【0054】
かかる三層構造の粘着層においても、粘着剤で覆われているグラファイトフィルムの面積は、グラファイトフィルムの全面積の35%以上100%以下であればよい。ここで、三層構造の粘着層において、粘着剤で覆われているグラファイトフィルムの面積とは、粘着層の前記グラファイトフィルムと接した面と反対側の被着体と貼り合わせるための粘着剤を含む層、即ち、第2粘着層において、粘着剤で覆われているグラファイトフィルムの面積をいう。本発明では、グラファイトフィルムの面積と基材の面積とは同じであることが好ましく、かかる場合、第2粘着層において粘着剤で覆われているグラファイトフィルムの面積は、第2粘着層の粘着剤で覆われている前記基材の面積であるということもできる。
【0055】
従って、言い換えれば、前記第2粘着層では、粘着剤により覆われている前記基材の面積が、前記基材の全面積の35%以上100%以下であることが好ましい。これにより、グラファイト複合フィルムと被着体とを貼り合せた際に両者の間に生じた気泡が、凹凸構造によって微細な間隙が生じて除去された後に、存在する粘着剤によりグラファイト複合フィルムが被着体に接合される。そのため、グラファイト複合フィルムから被着体への熱移動がスムーズであるので、放熱性を損なうことがない。
【0056】
すなわち、前記第2粘着層では、粘着剤により覆われている前記基材の面積は、前記基材の全面積の100%であってもよいし、35%以上100%未満であってもよい。
【0057】
粘着剤により覆われている前記基材の面積の、前記基材の全面積に対する割合が100%である場合は、その構成は、
図9の(b)の例で示したグラファイトフィルムと粘着剤の構成においてグラファイトフィルムを基材に置き換えた構成であるので、ここでは説明は省略する。具体的には、
図11の(b)に示すように、第2粘着層43において、前記基材44の全面積が粘着剤により覆われているとともに、第2粘着層43が前記基材44と接した面と反対側の表面に凹凸構造を有している。
【0058】
粘着剤により覆われている前記基材の面積の、前記基材の全面積に対する割合が35%以上100%未満である場合は、その構成は、
図9の(a)の例で示したグラファイトフィルムと粘着剤の構成においてグラファイトフィルムを基材に置き換えた構成であるので、ここでは説明は省略する。具体的には、
図11の(a)に示すように、第2粘着層43において、前記基材44が粘着剤により覆われず露出している部分が存在するとともに、第2粘着層43が前記基材と接した面と反対側の表面に凹凸構造を有している。かかる場合、粘着剤により覆われている前記基材の面積の、グラファイトフィルムの全面積に対する割合は、より好ましくは35%以上90%以下であり、さらに好ましくは50%以上85%以下である。粘着剤により覆われている前記基材の面積の、前記基材の全面積に対する割合が前記範囲内であれば、被着体との接触がよく熱伝導に優れ、グラファイト複合フィルムの放熱性を損なうことなく、被着体に貼り合わせた際の被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生を低減することができるため好ましい。また、被着体との接触がよいため、粘着力にも優れる。
【0059】
言い換えれば、粘着層が三層構造を有する場合、前記第2粘着層の前記凹凸構造の凹部の底面には、粘着剤が存在していても存在していなくてもよい。しかしながら、気泡発生をより効率的に低減するという観点からは、前記凹凸構造の凹部の底面に、粘着剤が存在していないことがより好ましい。この場合、前記凹凸構造の凹部には、前記基材が露出する。即ち、前記第2粘着層では、粘着剤により覆われている前記基材の面積は、前記基材の全面積の35%以上100%未満であることがより好ましい。この場合、第2粘着層は、前記基材上に配置された複数の粘着部であり、前記粘着層の表面の凹凸構造は、凸部が前記粘着部からなり、凹部には接着剤が存在せず前記基材が露出している。かかる構成によれば、被着体に貼り合わせた際の被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生をより効率的に低減することができるため好ましい。
【0060】
前記粘着部が規則的に配置された、多角形、棒状、帯状の島状突起である場合、島状突起の一辺と、当該辺と向かい合う隣接する島状突起の一辺との間の間隔は、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.1mm以上である。また、上限は、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは0.88mm以下、更に好ましくは0.5mm以下である。前記粘着部である島状突起の一辺と、当該辺と向かい合う隣接する島状突起の一辺との間の間隔が0.01mm以上であれば気泡発生をより効率的に低減するため好ましい。また、前記間隔が上記範囲内であれば、グラファイト複合フィルムの放熱性を損なうことなく、被着体に貼り合わせた際の被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生を低減することができるため好ましい。
【0061】
前記粘着部の面積の粘着層全体の面積に占める割合は、好ましくは35%以上90%以下、より好ましくは50%以上85%以下である。前記粘着部の面積の粘着層全体の面積に占める割合が前記範囲内であれば、被着体との接触がよく熱伝導に優れ、グラファイト複合フィルムの放熱性を損なうことなく、被着体に貼り合わせた際の被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生を低減することができるため好ましい。また、被着体との接触がよいため、粘着力にも優れる。
【0062】
なお、グラファイトフィルムに接する第1粘着層の粘着剤により覆われているグラファイトフィルムの面積の、グラファイトフィルムの全面積に対する割合は、100%であってもよいし、35%以上100%未満であってもよいが、より好ましくは100%である。これにより、グラファイト複合フィルムの放熱性を損なうことのない複合フィルムとすることができる。
【0063】
前記第1粘着層、基材、及び第2粘着層を含む粘着層における、各層の厚み構成も特に限定されるものではないが、前記第1粘着層は好ましくは0.1μm以上20μm以下、より好ましくは0.5μm以上5μm以下、更に好ましくは1μm以上3μm以下である。また、前記基材は、好ましくは0.5μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上5μm以下である。また、前記第2粘着層は好ましくは0.1μm以上20μm以下、より好ましくは0.5μm以上5μm以下、更に好ましくは1μm以上3μm以下である。
【0064】
前記粘着層に用いられる粘着剤の材料としては、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。これらの材料は、耐熱性に優れ、発熱部品及び/又は放熱部品と複合化して使用した場合にも、十分な長期信頼性が得られる。また、これらの材料は、繰り返し使用が可能であって長期信頼性に優れるため、再利用性及び再剥離性にも優れる。前記粘着層が三層構造を有する場合、第1粘着層と第2粘着層の材料は同じであっても異なっていてもよい。また、ポリイミド系やエポキシ系などの熱を加えて使用する接着剤にも、本技術は応用可能である。
【0065】
前記基材は高分子フィルムであることが好ましい。一例として、ポリイミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂、及びポリエステル系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含む高分子フィルムなどが挙げられる。中でもポリイミド、ポリエチレンテレフタレートは、耐熱性、強度及び寸法安定性に優れ、グラファイト複合フィルムとした際に、熱伝導性を低下させることなく、剥離性、傷つき防止性にも優れるグラファイト複合フィルムを得ることができる。
【0066】
なお、第2粘着層は、前記基材と接した面と反対側の表面に凹凸構造を有していればよく、第2粘着層の前記基材と接した面の構造はどのような構造であってもよい。即ち、第2粘着層の前記基材と接した面は、凹凸構造を有していても有していなくてもよい。
【0067】
また、第1粘着層の前記基材又はグラファイトフィルムと接した面の構造はどのような構造であってもよい。即ち、第1粘着層の前記基材又はグラファイトフィルムと接した面は、凹凸構造を有していても有していなくてもよい。
【0068】
(1−2)グラファイトフィルム
本発明に用いられるグラファイトフィルムは、放熱部品として用いることができるグラファイトフィルムであれば特に限定されるものではない。
【0069】
例えば、天然黒鉛や人造黒鉛等のグラファイト粉末をシート化して得られるグラファイトフィルム、高分子フィルムを熱処理して得られるグラファイトフィルムを好適に用いることができる。
【0070】
グラファイト粉末をシート化して得られるグラファイトフィルムは、グラファイト粉末をシート状に押し固めることによって製造される。グラファイト粉末がフィルム状に成型されるためには粉末がフレーク状、又はリン片状になっている必要がある。この様なグラファイト粉末の製造のための最も一般的な方法がエキスパンド(膨張黒鉛)法と呼ばれる方法である。これはグラファイトを硫酸などの酸に浸漬し、グラファイト層間化合物を作製し、しかる後にこれを熱処理、発泡させてグラファイト層間を剥離するものである。剥離後、グラファイト粉末を洗浄して酸を除去し薄膜のグラファイト粉末を得る。この様な方法で得られたグラファイト粉末をさらに圧延ロール成型してフィルム状のグラファイトを得る。この様な手法で得られた、膨張黒鉛を用いて作製されたグラファイトフィルムは柔軟性に富み、フィルム面方向に高い熱伝導性を有するので本発明の目的に好ましく用いられる。
【0071】
高分子フィルムを熱処理して得られるグラファイトフィルムは、ポリイミド、ポリアミド、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリパラフェニレンビニレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾビスイミダゾール、及びポリチアゾールから選ばれる少なくとも一種類以上の高分子フィルムを熱処理することによって製造される。
【0072】
中でも、本発明に用いられるグラファイトフィルムの原料フィルムは、より好ましくはポリイミドフィルムである。ポリイミドフィルムは、フィルムの炭化、黒鉛化が進行しやすいため、フィルムの熱拡散率、熱伝導率、電気伝導度が低温で均一に高くなりやすく、且つ熱拡散率、熱伝導率、電気伝導度そのものも高くなりやすい点、厚みが厚い場合においても熱伝導性の高いグラファイトとなる点、出来上がるグラファイトの結晶性が優れ、耐熱性、折り曲げ性に優れ、保護フィルムと貼り合わせた場合に、表面から黒鉛が落ちにくいグラファイトフィルムが得られやすい点でより好ましい。
【0073】
高分子フィルムからグラファイトフィルムを得るには、まず、出発物質である高分子フィルムを、予備加熱処理して炭化し、その後得られた炭化フィルムを高温で黒鉛化する。炭化は減圧下又は不活性ガス中で行うことがより好ましい。炭化は通常1000℃程度の温度で行い、例えば10℃/分の速度で昇温した場合には1000℃の温度領域で30分程度の温度保持を行うことが望ましい。黒鉛化は、より好ましくは減圧下もしくは不活性ガス中で行われる。黒鉛化の工程においては、その熱処理温度は、2000℃以上が必要で、最終的には2400℃以上、より好ましくは、2600℃以上さらに好ましくは2800℃以上である。このような温度で熱処理することにより、熱伝導性に優れたグラファイトを得ることができる。熱処理温度が高いほど良質のグラファイトへの転化が可能であるが、経済性の観点からはできるだけ低温で良質のグラファイトに転化できることが好ましい。2500℃以上の超高温を得るには、通常はグラファイトヒーターに直接電流を流して、そのジュ−ル熱を利用した加熱が行なわれる。
【0074】
或いは、炭化は、500℃以上900℃以下の加熱空間を2段階以上含む加熱処理装置を用いた連続炭化工程にて行ってもよい。連続炭化工程を用いる方法では、例えば、
図2に示すように、各加熱空間3内の温度を、各加熱空間3内で均一になるように、500℃以上900℃以下の間で複数段階に調整する。高分子フィルム2は巻き替え装置にセットし、加熱処理装置1に連続的に供給する。このとき、加熱フィルムに対して引張り強さ5kgf/cm
2以上500kgf/cm
2以下で張力を加えながら、100cm/min以上1000cm/min以下のライン速度で搬送することが好ましい。各加熱空間3内では
図3に示すように黒鉛製の冶具4でフィルム2を上下から挟みこみ、冶具4の間を滑らせるように搬送することが好ましい。このときフィルム2の厚み方向に加わる圧力は0.5g/cm
2以上10g/cm
2以下に調整することが好ましい。その後、ロール状に巻かれた炭化フィルム5を、
図4に示すように黒鉛化炉6に投入し黒鉛化する。なお、
図4中点線は巻き芯の位置を示す。このとき、炭化フィルムのTD方向と、重力方向7とが一致するようにすることが好ましい。
【0075】
本発明に用いられるグラファイトフィルムは、フィルムの面方向の熱伝導度が200W/mK以上であり、フィルム面に対して垂直方向の熱伝導度が20W/mK以下であることが好ましい。フィルムの面方向の熱伝導率が、200W/m・K以上であれば、粘着層や保護フィルム層を形成した複合品としても、グラファイト複合フィルムの熱伝導性は高くなる。また、発熱部品からの熱を速やかに移動させるためには、グラファイトフィルムの厚み方向の熱伝導率が十分小さい必要がある。また、フィルム面に対して垂直方向の熱伝導度が20W/mK以下であれば、被着体の発熱部分からの熱を優先的に面方向に拡散することが可能となり、ヒートスポットを抑制できる。
【0076】
さらに、本発明に用いられるグラファイトフィルムが、高分子フィルムを熱処理して得られるグラファイトフィルムである場合は、フィルムの面方向の熱伝導率は、800W/m・K以上であることが好ましい。
【0077】
本発明に用いられるグラファイトフィルムが、上述したようなグラファイト粉末をシート化、又は、高分子フィルムを熱処理して得られる単層のシートである場合、グラファイトフィルムの厚みは好ましくは5μm以上250μm以下、より好ましくは5μm以上120μm以下、さらに好ましくは7μm以上50μm以下、特に好ましくは10μm以上40μm以下である。グラファイトフィルムの厚みが5μm以上であれば電子機器の冷却に必要な放熱能力があり好ましい。また、グラファイトフィルムの厚みが250μm以下であれば厚みの薄い電子機器に投入できるため好ましい。
【0078】
本発明に用いられるグラファイトフィルムは、グラファイト粉末をシート化、又は、高分子フィルムを熱処理して得られる単層のシートからなるものであってもよいが、本発明において、グラファイトフィルムには、グラファイトシートと接着層とが交互に積層されてなるグラファイト積層体も含まれる。前記接着層は、これに限定されるものではないが、例えば、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のうちの少なくとも1つの樹脂を含む。前記接着層の厚さもこれに限定されるものではないが、0.1μm以上15μm未満であることが好ましい。前記グラファイト積層体に含まれる前記グラファイトシートの積層数は、これに限定されるものではないが、例えば3層以上であり、より好ましくは5層以上であり、さらに好ましくは10層以上であり、特に好ましくは15層以上であり、最も好ましくは20層以上である。また、積層数の上限値は、これに限定されるものではないが、例えば1000層以下であり、より好ましくは500層以下であり、さらに好ましくは200層以下であり、さらにより好ましくは100層以下であり、特に好ましくは80層以下であり、最も好ましくは50層以下である。積層数が3層以上であれば、熱輸送能力が高く、かつ、機械的強度に優れたグラファイト積層体を得ることができるので好ましい。
【0079】
グラファイト積層体に含まれる接着層の積層数は、特に限定されず、グラファイトシートの積層数に合わせて、適宜設定することができる。例えば、グラファイト積層体では、(i)隣接するグラファイトシート間に、1枚の接着層は勿論のこと、2枚以上の接着層が配置されていてもよく、(ii)グラファイトシートが、グラファイト積層体の最上面のみに配置、グラファイト積層体の最下面のみに配置、または、グラファイト積層体の最上面および最下面の両方に配置されていてもよく、(iii)接着層が、グラファイト積層体の最上面のみに配置、グラファイト積層体の最下面のみに配置、または、グラファイト積層体の最上面および最下面の両方に配置されていてもよい。なお、本明細書における「グラファイトシートと接着層とが交互に積層」には、(a)隣接するグラファイトシート間に1枚の接着層が配置される場合、および、(b)隣接するグラファイトシート間に2枚以上の接着層が配置される場合、の両方が包含される。つまり、接着層は、複数の接着層が積層されたものであってもよい。
【0080】
かかるグラファイト積層体は、グラファイトシートと接着層とを交互に積層し、積層物を加熱及び加圧する方法により製造することができる。或いは、グラファイトシートの少なくとも片面の上に接着層を形成してグラファイト接着シートを作成した後、当該グラファイト接着シートを積層する方法等により製造することができる。
【0081】
当該グラファイト積層体は、更に、前記グラファイトシートと前記接着層とが交互に積層された積層物を圧縮して得られるものであってもよい。ここで、「圧縮して得られるもの」とは、圧縮前の材料の厚さの合計よりも、圧縮後の材料の厚さの合計が薄くなっているものを意図する。このとき、グラファイトシートの表面に接着層の成分が浸潤しているものも、「圧縮して得られるもの」に包含される。なお、グラファイト積層体が圧縮して得られたものであるか否かは、i)圧縮処理の前後におけるグラファイト積層体の厚さの比較、または、ii)SEM(scanning electron microscope)によるグラファイト積層体内の層間の界面の観察、等によって確認することができる。なお、グラファイトシートと接着層との間には、他の構成が挟まれていてもよいし、他の構成が挟まれていなくてもよい。
【0082】
本発明に用いられるグラファイトフィルムが、前述したようなグラファイト積層体である場合、グラファイトフィルム、即ち、グラファイト積層体の厚みは、これに限定されるものではないが、好ましくは0.05mm以上であり、より好ましくは0.09mm以上であり、さらに好ましくは0.10mm以上である。グラファイト積層体の厚さが0.05mm以上であれば、輸送できる熱量が多くなり、発熱量が大きな電子機器にも適用することができる。グラファイトフィルム、即ち、グラファイト積層体の厚さの上限値は、これに限定されるものではないが、電子機器の薄型化という観点からは、好ましくは10mm以下であり、より好ましくは7.5mm以下であり、さらに好ましくは5mm以下であり、特に好ましくは2.5mm以下であり、最も好ましくは1mm以下である。
【0083】
前記グラファイト積層体を構成する各グラファイトシートは、前述した、天然黒鉛や人造黒鉛等のグラファイト粉末をシート化する方法、高分子フィルムを熱処理する方法により製造することができる。
【0084】
前記グラファイト積層体を構成する各グラファイトシートの厚みは、これに限定されるものではないが、好ましくは10μm以上200μm以下であり、より好ましくは12μm以上150μm以下であり、さらに好ましくは15μm以上100μm以下であり、特に好ましくは20μm以上80μm以下である。前記各グラファイトシートの厚みが10μm以上であれば、グラファイト積層体に含まれるグラファイトシートの積層枚数を削減することができ、熱伝導率の低い接着層の積層枚数を減らすことができる。また、前記各グラファイトシートの厚さが、200μm以下であれば、グラファイト積層体の高い熱伝導率を実現することができる。
【0085】
なお、前記接着層の材料としては、フィルム状のものを用いることも可能であるし、ワニス状のものを用いることも可能である。
【0086】
前記熱硬化性樹脂としては、PU(ポリウレタン)、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン系樹脂、グアナミン樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル、オリゴエステルアクリレート、ジアリルフタレート、DKF樹脂(レゾルシノール系樹脂の一種)、キシレン樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、PI(ポリイミド系)樹脂、PEI(ポリエーテルイミド)樹脂、PAI(ポリアミドイミド)樹脂、PPE(ポリフェニレンエーテル)等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、PPE(ポリフェニレンエーテル)が、材料選択の幅が広く、グラファイトシートとの密着性が優れるために好ましい。
【0087】
また、前記熱可塑性樹脂としては、アクリル、アイオノマー、イソブチレン無水マレイン酸コポリマー、AAS(アクリロニトリル−アクリル−スチレン共重合体)、AES(アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体)、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、ACS(アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体)、MBS(メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体)、エチレン−塩化ビニル共重合体、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、EVA系(エチレン−酢酸ビニル共重合体系)、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)、ポリ酢酸ビニル、塩素化塩化ビニール、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、カルボキシビニルポリマー、ケトン樹脂、ノルボルネン樹脂、プロピオン酸ビニル、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、TPX(ポリメチルペンテン)、ポリブタジエン、PS(ポリスチレン)、スチレン無水マレイン酸共重合体、メタクリル、EMAA(エチレン−メタクリル酸共重合体)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PVC(ポリ塩化ビニール)、ポリ塩化ビニリデン、PVA(ポリビニルアルコール)、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、セルロース系、ナイロン6、ナイロン6共重合体、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、共重合ナイロン、ナイロンMXD、ナイロン46、メトキシメチル化ナイロン、アラミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、POM(ポリアセタール)、ポリエチレンオキシド、PPE(ポリフェニレンエーテル)、変性PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PES(ポリエーテルサルフォン)、PSO(ポリサルフォン)、ポリアミンサルフォン、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PAR(ポリアリレート)、ポリパラビニールフェノール、ポリパラメチレンスチレン、ポリアリルアミン、芳香族ポリエステル、液晶ポリマー、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、EPE(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン共重合体)、ECTFE(エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド系)、PVF(ポリビニルフルオライド)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0088】
前記接着層としては、芳香族を含む材料(例えば、ポリエステル接着剤、および、ポリエチレンテレフタレートなど)を用いることが好ましい。当該構成であれば、接着層を積層した時に、グラファイトシートの平面と略平行に接着層が整列し、積層時にグラファイトシートの層が乱されにくく、理論値に近い熱伝導率を有するグラファイト積層体を得ることができる。
【0089】
また、本発明で用いられるグラファイトフィルムの体積は、50mm
3以上であることがより好ましい。グラファイトフィルムの体積が50mm
3以上になると、グラファイトフィルムのコシが強くなり、貼り合わせられる被着体への追従性が悪くなり、グラファイトフィルムと被着体との間に気泡が入りやすくなるという問題の解決が困難となる。特に、グラファイトシートの積層数が2層以上であるグラファイト積層体を用いるグラファイトフィルムでは、この問題の解決が重要となる。しかし、本発明の粘着層を用いれば、グラファイトフィルムの体積が50mm
3以上である場合においてもかかる問題を解決できることが示された。特に、グラファイトフィルムとして、グラファイトシートの積層数が2層以上であるグラファイト積層体を用いる場合は、体積が大きくなる傾向があるので、本発明の粘着層を用いることが特に有効である。
【0090】
(1−3)その他の層
本発明に係るグラファイト複合フィルムは、上記グラファイトフィルムと粘着層とを有していればよいが、さらに、セパレーター、保護層、アプリケーション層等を有していてもよい。
【0091】
(1−3−1)セパレーター
セパレーターは、基材フィルムに離形材が形成されたシートであり、粘着層の粘着面に積層される。セパレーターは、通常粘着層の粘着面をグラファイト複合フィルムの使用時までカバーすることを目的とするものであり、グラファイト複合フィルムの使用時に剥離される。なお、本発明では、グラファイト複合フィルムの製造工程において、セパレーターを、凹凸構造を粘着層に転写するための型としても用いる場合がある。このような型として用いられるセパレーターは、転写後剥離して、新たに平坦なセパレーターが積層される。しかし、型として用いられるセパレーターを剥離せず、そのまま、グラファイト複合フィルムの使用時まで、粘着面をカバーするために使用することもできる。
【0092】
セパレーターの厚みは特に限定されるものではないが、好ましくは2μm以上200μm以下、より好ましくは6μm以上100μm以下、さらに好ましくは10μm以上80μm以下である。セパレーターの厚みが200μm以下であれば、セパレーターを剥離する際にグラファイト複合フィルムにダメージを与えない。一方、厚みが2μm以上であれば、セパレーターのハンドリング性が十分である。
【0093】
前記基材フィルムの材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、PETフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリイミドフィルムなどが挙げられる。また、前記離型剤としても特に限定されるものではないが、例えば、シリコーン系、フッ素系などが挙げられる。
【0094】
(1−3−2)保護層
保護層は、グラファイトフィルムの粘着層と接する面と反対側の面に積層され、グラファイトフィルムを保護する目的、電気絶縁性を付与する目的、黒鉛粉の発生を抑制する目的、グラファイトフィルムを補強する目的等で用いられる。
【0095】
保護層の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは2μm以上200μm以下、さらに好ましくは6μm以上100μm以下、特に好ましくは10μm以上30μm以下である。保護層の厚みが200μm以下であれば、グラファイトフィルムの放熱特性を損なうことがない。一方、厚みが2μm以上であれば、保護層の機能を十分に発現できる。
【0096】
保護層の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、PETフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリイミドフィルムなどの高分子フィルムを用いることができる。
【0097】
(1−3−3)アプリケーション層
アプリケーション層は、基材フィルムに再剥離が可能な程度の微粘着材が形成されているシートであり、例えば、前記保護層のグラファイトフィルムと接する側と反対の面に積層され、グラファイト複合フィルムの使用時に剥離される。
【0098】
(1−4)グラファイト複合フィルム
本発明に係るグラファイト複合フィルムは、SUSとのピール強度が好ましくは4.0N/25mm以上12.0N/25mm以下であり、より好ましくは5.0N/25mm以上8.0N/25mm以下、更に好ましくは6.0N/25mm以上7.0N/25mm以下である。ここで、ピール強度とは、実施例において記載する方法により測定した値をいう。グラファイト複合フィルムとSUSとのピール強度が4.0N/25mm以上であれば、被着体との密着性が高く、グラファイトフィルムで拡散した熱を被着体に伝えやすいため好ましい。また、前記ピール強度が12.0N/25mm以下であれば、被着体への貼り合わせの際に、被着体とグラファイト複合フィルムの間で空気を噛みにくい点で好ましい。
【0099】
本発明に係るグラファイト複合フィルムは、面積が3cm
2以上であることが好ましい。3cm
2以上であれば、放熱効果が高く、近年の高出力の電子機器の冷却に適している。本発明に係るグラファイト複合フィルムは、より好ましくは面積が5cm
2以上であり、さらに好ましくは面積が10cm
2以上である。また、従来フィルムの面積が大きくなると、発熱部品に接合させたときに、空気を巻き込み被着体とグラファイト複合フィルムとの間に気泡が発生するという問題があった。しかし、本発明によれば、面積が25cm
2以上と大きい場合にも気泡発生を低減することができる。したがって、本発明は、特に面積が25cm
2以上と大きいグラファイト複合フィルムを用いる場合に特に有効である。
【0100】
〔2〕グラファイト複合フィルムの製造方法
本発明に係るグラファイト複合フィルムの製造方法は、上述した本発明に係るグラファイト複合フィルムを製造できる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、大きく分けて、凹凸構造を有する粘着層とグラファイトフィルムとを積層する方法(製造方法1)と、表面に凹凸構造を有するグラファイトフィルム上に粘着層を形成してグラファイトフィルムの当該凹凸構造を粘着層表面に出現させる方法(製造方法2)等を挙げることができる。
【0101】
(2−1)製造方法1
本実施形態に係るグラファイト複合フィルムの製造方法は、少なくとも片面に凹凸構造を有する粘着層の、当該凹凸構造が、グラファイトフィルムと接した面と反対側に配置されるように、当該粘着層と当該グラファイトフィルムとを積層する工程を含んでいる。
【0102】
即ち、本実施形態では、予め少なくとも片面に凹凸構造を設けた粘着層を作製しておき、この粘着層を、当該凹凸構造が、グラファイトフィルムと接した面と反対側に配置されるように、グラファイトフィルムと積層する。粘着層とグラファイトフィルムとの積層は、どのような方法を用いてもよいが、例えばラミネーター装置を用いて行うことができる。
【0103】
ここで、粘着層、凹凸構造、グラファイトフィルムについては上記〔1〕で説明したとおりであるのでここでは説明を省略する。
【0104】
少なくとも片面に凹凸構造を設けた粘着層を作製する方法としても特に限定されるものではないが、例えば、以下の方法を挙げることができる。
【0105】
(2−1−1)製造方法1−1
少なくとも片面に凹凸構造を設けた粘着層は、粘着剤溶液を所望の凹凸構造となるように塗布又は印刷する方法により作製することができる。所望の凹凸構造となるように塗布又は印刷する方法としては、公知の方法を適宜選択して用いることができ、特に限定されるものではない。
【0106】
例えば上述した、第1粘着層、基材及び第2粘着層を含む粘着層は、一例として
図5に示す方法により作製することができる。スキージ11を設置したグラビアコーター機を用いて、基材16に、粘着剤溶液を製膜し(第1粘着層15)、乾燥後、セパレーター14を、第1粘着層側に貼り合わせ積層品13を作製する。次に、スキージ11を設置したグラビアコーター機を用いて、別途、所望の複数の島状突起17が形成されるように、粘着剤溶液9を、セパレーター8にドット印刷する。ドット印刷により得られた積層品12を乾燥後、ドット印刷した面(第2粘着層17)が、積層品13の基材16と接するように、先に作製した積層品13とラミネートする。これにより、基材16に粘着剤溶液を製膜し乾燥して得られた第1粘着層15、基材16、粘着剤溶液をドット印刷し乾燥して得られた第2粘着層17が順に積層された粘着層が得られる。
【0107】
第1粘着層、基材及び第2粘着層を含む三層構造の粘着層以外の、例えば一層の粘着層についても、同様に粘着剤溶液を塗布又は印刷する方法によって、少なくとも片面に所望の凹凸構造を有する粘着層を作製することができる。
【0108】
したがって、本実施形態に係るグラファイト複合フィルムの製造方法は、さらに、粘着剤溶液を所望の凹凸構造となるように塗布又は印刷することによって、少なくとも片面に凹凸構造を設けた粘着層を作製する工程をさらに含んでいてもよい。
【0109】
即ち、本実施形態に係るグラファイト複合フィルムの製造方法は、粘着剤溶液を所望の凹凸構造となるように塗布又は印刷することによって、少なくとも片面に凹凸構造を設けた粘着層を作製する工程と、少なくとも片面に凹凸構造を有する粘着層の、当該凹凸構造が、グラファイトフィルムと接した面と反対側に配置されるように、当該粘着層と当該グラファイトフィルムとを積層する工程とを含んでいてもよい。
【0110】
(2−1−2)製造方法1−2
或いは、少なくとも片面に凹凸構造を設けた粘着層は、所望の凹凸構造と相補的関係にある凹凸構造を有するセパレーターの前記凹凸構造を粘着層の表面に転写する方法により作製することができる。かかる方法によれば、グラファイトフィルムの粘着層表面に、容易に凹凸構造を形成することができる。
【0111】
したがって、本実施形態に係るグラファイト複合フィルムの製造方法は、さらに、表面に凹凸構造を有するセパレーターの前記凹凸構造を前記粘着層の表面に転写することによって、少なくとも片面に凹凸構造を設けた粘着層を作製する工程をさらに含んでいてもよい。
【0112】
即ち、本実施形態に係るグラファイト複合フィルムの製造方法は、表面に凹凸構造を有するセパレーターの前記凹凸構造を前記粘着層の表面に転写することによって、少なくとも片面に凹凸構造を設けた粘着層を作製する工程と、少なくとも片面に凹凸構造を有する粘着層の、当該凹凸構造が、グラファイトフィルムと接した面と反対側に配置されるように、当該粘着層と当該グラファイトフィルムとを積層する工程とを含んでいてもよい。
【0113】
表面に凹凸構造を有するセパレーターの前記凹凸構造を前記粘着層の表面に転写する方法としては、公知の方法を適宜選択して用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、表面に凹凸構造を有するセパレーターの当該表面に粘着剤溶液を製膜して凹凸構造を転写する方法(転写方法1)、表面に凹凸構造を有するセパレーターの前記凹凸構造を有する面を粘着層に接触させて凹凸構造を転写する方法(転写方法2)を挙げることができる。
【0114】
本実施形態において、前記セパレーターの凹凸構造を有する表面の表面粗さは、好ましくはRa0.06μm以上1.00μm以下、且つ、Rz0.3μm以上10.0μm以下、より好ましくはRa0.30μm以上0.70μm以下、且つ、Rz2.90μm以上5.10μm以下である。前記セパレーターの凹凸構造を有する表面の表面粗さが上記範囲であれば、グラファイト複合フィルムの放熱性を損なうことなく、被着体に貼り合わせた際の被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生をより好適に低減することができるため好ましい。
【0115】
(転写方法1)
表面に凹凸構造を有するセパレーターの当該表面に粘着剤溶液を製膜して凹凸構造を転写する方法としては、公知の方法を適宜選択して用いることができ、特に限定されるものではない。
【0116】
例えば上述した、第1粘着層、基材及び第2粘着層を含む粘着層は、一例として
図6に示す方法により作製することができる。スキージ11を設置したグラビアコーター機を用いて、基材23に、粘着剤溶液を製膜し(第1粘着層24)、乾燥後、セパレーター25を、第1粘着層側に貼り合わせ積層品13を作製する。次に、所望の凹凸構造と相補的関係にある凹凸構造を有するようにエンボス処理が施されたセパレーター19に、粘着剤溶液20を、スキージ21を用いて所望の厚みとなるように製膜する。セパレーター19上の液膜を乾燥することにより、当該液膜は第2粘着層22となる。第2粘着層22のセパレーター19に接した面と反対側の面が、積層品13の基材23と接するように、先に作製した積層品13とラミネートする。これにより、基材23に粘着剤溶液を製膜し乾燥して得られた第1粘着層24、基材23、粘着剤溶液をセパレーター19に成膜し乾燥して得られたセパレーターの凹凸構造が転写された第2粘着層22が順に積層した粘着層が得られる。なお、凹凸構造が転写された後、セパレーター19を剥離し、第2粘着層22の粘着面をグラファイト複合フィルムの使用時までカバーするために、新たに第2粘着層22と接する表面が平坦なセパレーターを、積層してもよい。第1粘着層、基材及び第2粘着層を含む三層構造の粘着層以外の、例えば一層の粘着層についても、同様に所望の凹凸構造と相補的関係にある凹凸構造を有するようにエンボス処理が施されたセパレーターに粘着剤溶液を製膜して、凹凸構造を転写する方法により作製することができる。
【0117】
(転写方法2)
以下に、表面に凹凸構造を有するセパレーターの前記凹凸構造を有する面を粘着層に接触させて凹凸構造を転写する方法について説明する。なお、ここで、セパレーターを接触させる粘着層は乾燥後の粘着層を意味し、乾燥後の粘着層とは、溶媒残存率が5重量%以下の粘着層をいう。溶媒残存率は、粘着剤部のみをオーブンなどで溶剤の沸点以上の温度で、十分に乾燥させ、その前後の重量を測定し、以下の計算式で測定することができる。
溶媒残存率(%)=(乾燥前の重量−乾燥後の重量)/乾燥前の重量×100
表面に凹凸構造を有するセパレーターの前記凹凸構造を有する面を粘着層に接触させて、凹凸構造を転写する方法としては、公知の方法を適宜選択して用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、表面に凹凸構造を有するセパレーターを粘着層にラミネートする方法等を挙げることができる。かかる方法によれば、セパレーターの仕様を変更するのみで、従来の設備や製品を利用して少なくとも片面に凹凸構造を有する粘着層を作製することができる。
【0118】
例えば上述した、第1粘着層、基材及び第2粘着層を含む粘着層は、一例として
図7に示す方法により作製することができる。
図7に示すように、第1粘着層29、基材28及び凹凸構造を有しない粘着層27を含む三層構造の粘着層の一方のセパレーター26を剥離し、露出した凹凸構造を有しない粘着層27に、所望の凹凸構造と相補的関係にある凹凸構造を有するようにエンボス処理が施されたセパレーター31を、エンボス処理が施された面が接するようにラミネートして粘着層を得る。これにより、剥離しなかった方のセパレーター30に接する第1粘着層29、基材28、エンボスセパレーターをラミネートすることにより凹凸構造が転写された粘着層である第2粘着層32が順に積層した粘着層が得られる。なお、凹凸構造が転写された後、セパレーター31を剥離し、第2粘着層32の粘着面をグラファイト複合フィルムの使用時までカバーするために、第2粘着層32と接する表面が平坦なセパレーターを、積層してもよい。第1粘着層、基材及び第2粘着層を含む三層構造の粘着層以外の、例えば一層の粘着層についても、同様の方法により作製することができる。
【0119】
(2−2)製造方法2
本実施形態に係るグラファイト複合フィルムの製造方法は、表面に凹凸構造を有するグラファイトフィルム上に粘着層を形成して、グラファイトフィルムの当該凹凸構造を当該粘着層表面に出現させることによって、当該粘着層の表面に凹凸構造を形成する。
【0120】
本実施形態では、表面に凹凸構造を有するグラファイトフィルムを用い、かかるグラファイトフィルム上に粘着層を形成すればよいだけであるので、グラファイト複合フィルムの粘着層表面に容易に凹凸を形成することができる。表面に凹凸構造を有するグラファイトフィルム上に粘着層を形成する方法は特に限定されるものではなく、どのような方法を用いてもよいが、例えばラミネーター装置を用いてグラファイトフィルム上に粘着層を積層する方法、グラファイトフィルム上に粘着剤溶液を成膜して乾燥する方法等を挙げることができる。
【0121】
ここで、粘着層、凹凸構造、グラファイトフィルムについては上記〔1〕で説明したとおりであるのでここでは説明を省略する。
【0122】
表面に凹凸構造を有するグラファイトフィルムを製造する方法は特に限定されるものではないが、例えば、グラファイトフィルムの製造工程において圧延ロールの表面にエンボス処理が施された圧延ロールを用いてグラファイトフィルムを圧延する方法、高分子フィルムを熱処理してグラファイトフィルムを製造する方法においてクラファイト化を行うときの昇温速度を大きくする方法、高分子フィルムを熱処理してグラファイトフィルムを製造する方法において高分子フィルムと天然黒鉛シートとを交互に積層した積層体を用いて炭化及び黒鉛化を行う方法等を挙げることができる。また、グラファイトフィルムが前述したグラファイト積層体である場合、積層体表面が凹凸構造を有するように、前述の方法で製造した、表面に凹凸構造を有するグラファイトシートを積層体の最下面又は最上面に積層する方法等を用いることができる。
【0123】
表面に凹凸構造を有するグラファイトフィルムの凹凸構造を有する表面の表面粗さは、好ましくはRa0.55μm以上1.70μm以下、且つ、Rz2.3μm以上6.00μm以下、より好ましくはRa0.80μm以上1.30μm以下、且つ、Rz3.20μm以上4.70μm以下である。表面に凹凸構造を有するグラファイトフィルムの前記凹凸構造を有する表面の表面粗さが上記範囲であれば表面に凹凸のない通常の粘着層の表面粗さでも、容易に凹凸を形成できるため好ましい。
【0124】
また、表面に凹凸構造を有するグラファイトフィルムの厚みは、本発明に用いられるグラファイトフィルムが前述した単層のシートである場合、好ましくは5μm以上250μm以下、より好ましくは5μm以上120μm以下、さらに好ましくは7μm以上50μm以下、特に好ましくは10μm以上40μm以下である。前記グラファイトフィルムの厚みが上記範囲であれば粘着層に凹凸をつけやすいため好ましい。
【0125】
本発明に用いられるグラファイトフィルムが、前述したグラファイト積層体である場合、グラファイトフィルム、即ち、グラファイト積層体の厚みは、これに限定されるものではないが、好ましくは0.05mm以上であり、より好ましくは0.09mm以上であり、さらに好ましくは0.10mm以上である。グラファイトフィルム、即ち、グラファイト積層体の厚さの上限値は、これに限定されるものではないが、電子機器の薄型化という観点からは、好ましくは10mm以下であり、より好ましくは7.5mm以下であり、さらに好ましくは5mm以下であり、特に好ましくは2.5mm以下であり、最も好ましくは1mm以下である。
【0126】
また、上記方法により表面に凹凸構造が形成された粘着層の当該凹凸構造を有する表面の表面粗さは好ましくはRa0.19μm以上10μm以下、且つ、Rz1.6μm以上100μm以下であり、より好ましくはRa0.19μm以上0.80μm以下、且つ、Rz2.0μm以上5.00μm以下であり、さらに好ましくはRa0.25μm以上0.60μm以下、且つ、Rz2.5μm以上4.00μm以下である。或いは、当該表面粗さは好ましくはRa0.19μm以上10μm以下であり、より好ましくはRa0.19μm以上0.80μm以下であり、さらに好ましくはRa0.25μm以上0.60μm以下である。また、当該表面粗さは好ましくはRz1.6μm以上100μm以下であり、より好ましくはRz2.0μm以上5.00μm以下であり、さらに好ましくはRz2.5μm以上4.00μm以下である。前記粘着層の表面粗さが上記範囲であればグラファイト複合フィルムの放熱性を損なうことなく、被着体に貼り合わせた際の被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生を低減することができるため好ましい。
【0127】
また、上記方法により表面に凹凸構造が形成された粘着層の厚みは、好ましくは1.00μm以上20.00μm以下であり、より好ましくは2.00μm以上10.00μm以下、更に好ましくは、3.00μm以上7.00μm以下である。前記粘着層の厚みが1.00μm以上であれば被着体との接続が十分に行えるため好ましい。また、前記粘着層の厚みが20.00μm以下であればグラファイトフィルムの凹凸により粘着剤表面に凹凸が形成されやすいため好ましい。
【0128】
上述したグラファイト複合フィルムの製造方法(製造方法1及び2)は、上記工程に加えて、更に保護層をラミネートする工程及びアプリケーション層をラミネートする工程の少なくとも何れかを含み得る。
【0129】
〔3〕放熱部品
本発明に係るグラファイト複合フィルムは、放熱性を損なうことなく、被着体に貼り合わせた際の被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生を低減させることができるので、放熱部品に好適に利用することができる。したがって、本発明にかかるグラファイト複合フィルムを含む放熱部品も本発明に含まれる。
【0130】
即ち、本発明に係る放熱部品は、グラファイト複合フィルムを含む放熱部品であって、前記グラファイト複合フィルムは、グラファイトフィルムと当該グラファイトフィルムに接した粘着層とを有し、前記グラファイトフィルムの全面積に対する、粘着剤で覆われているグラファイトフィルムの面積の割合は35%以上100%以下であり、前記粘着層は、前記グラファイトフィルムと接した面と反対側の表面に凹凸構造を有していればよい。グラファイト複合フィルムについては、「〔1〕グラファイト複合フィルム」にて説明したとおりであるので、ここでは説明を省略する。
【0131】
本発明に係る放熱部品は、本発明のグラファイト複合フィルムを含んでいればその構成は特に限定されるものではないが、例えば、本発明のグラファイト複合フィルムを被着体に貼り合わせてなる放熱部品である。ここで、被着体は、例えば、放熱体等である。放熱体の材質は、SUS等の金属、樹脂等である。放熱体としては、より具体的には、発熱部品の筐体等を挙げることができる。
【0132】
前記グラファイトフィルムの厚みが90μm以下、より好ましくは60μm以下である場合、又は、好ましくは単層のグラファイトシートからなるものである場合、当該グラファイトフィルムの前記被着体と接した面と反対側の表面には、粘着層の凹凸構造に起因する凹凸構造が出現する。また、グラファイトフィルムの粘着層と反対側の面、即ち、グラファイトフィルムの前記被着体と接した面と反対側の面に保護層が積層されている場合、又は、保護層及びアプリケーション層が積層されている場合は、それぞれ、当該保護層又はアプリケーション層の表面に、粘着層の凹凸構造に起因する凹凸構造が出現する。このグラファイトフィルム又は保護層の表面に出現する凹凸構造は目視により観察することができる。かかる場合、凹凸構造が出現している前記保護層の表面の表面粗さは、Raが、好ましくは0.15μm以上10μm以下であり、より好ましくは0.17μm以上1.0μm以下であり、さらに好ましくは0.18μm以上0.25μm以下である。また、Rzが、好ましくは1.0μm以上100μm以下であり、より好ましくは1.0μm以上10μm以下であり、さらに好ましくは1.50μm以上2.00μm以下である。RaとRzとの組合せは、好ましくはRa0.15μm以上10μm以下、且つ、Rz1.0μm以上100μm以下であり、より好ましくはRa0.17μm以上1.0μm以下、且つ、Rz1.0μm以上10μm以下であり、さらに好ましくはRa0.18μm以上0.25μm以下、且つ、Rz1.50μm以上2.00μm以下である。
【0133】
前記グラファイトフィルムの厚みが60μmより大きい場合、より好ましくは90μmより大きい場合、又は、好ましくはグラファイト積層体からなるものである場合は、前記グラファイトフィルムが厚いために、当該グラファイトフィルムの前記被着体と接した面と反対側の表面には、粘着層の凹凸構造に起因する凹凸構造を目視で観察することはできない。かかる場合は、グラファイト複合フィルムが貼り付けられた状態の被着体の切断面を観察することにより、粘着層が凹凸構造を有するものであること、及び、グラファイトフィルムの全面積に対する、粘着剤で覆われているグラファイトフィルムの面積の割合が35%以上100%以下であることを確認することができる。
【0134】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0135】
本願発明は以下の構成を有するものである。
(1)グラファイトフィルムと当該グラファイトフィルムに接した粘着層とを有し、前記グラファイトフィルムの全面積に対する、粘着剤で覆われているグラファイトフィルムの面積の割合は35%以上100%以下であり、前記粘着層は、前記グラファイトフィルムと接した面と反対側の表面に凹凸構造を有するものであることを特徴とするグラファイト複合フィルム。
(2)前記粘着層の凹凸構造を有する表面の表面粗さが、Ra0.19μm以上10μm以下であることを特徴とする(1)に記載のグラファイト複合フィルム。
(3)前記粘着層の凹凸構造を有する表面の表面粗さが、Rz1.6μm以上100μm以下であることを特徴とする(1)又は(2)に記載のグラファイト複合フィルム。
(4)前記粘着層の厚みが1.00μm以上20.00μm以下であることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルム。
(5)前記粘着層の表面の凹凸構造は、格子状又は縞状の溝、或いは、独立した複数の島状突起であることを特徴とする(1)から(4)のいずれか1項に記載のグラファイト複合フィルム。
(6)前記格子状又は縞状の溝のピッチが0.05mm以上2.0mm以下であることを特徴とする(5)に記載のグラファイト複合フィルム。
(7)前記粘着層は、第1粘着層、基材、及び第2粘着層を含むものであり、前記粘着層は、前記グラファイトフィルム上に、前記グラファイトフィルム側から、前記第1粘着層、前記基材、前記第2粘着層の順に積層されており、前記グラファイトフィルムの全面積に対する、第2粘着層の粘着剤で覆われているグラファイトフィルムの面積の割合は35%以上100%以下であり、前記粘着層は、前記第2粘着層の基材と接した面と反対側の表面に前記凹凸構造を有するものであることを特徴とする(1)から(6)の何れか1項に記載のグラファイト複合フィルム。
(8)前記第2粘着層は、前記基材上に配置された複数の粘着部であり、
前記粘着層の表面の凹凸構造は、凸部が前記粘着部からなり、凹部には接着剤が存在せず前記基材が露出していることを特徴とする(7)に記載のグラファイト複合フィルム。
(9)前記粘着部の面積の粘着層全体の面積に占める割合が35%以上であることを特徴とする(8)に記載のグラファイト複合フィルム。
(10)前記粘着部が、規則的に配置された、多角形、棒状、帯状の島状突起である場合、島状突起の一辺と、当該辺と向かい合う隣接する島状突起の一辺との間の間隔は、0.01mm以上であることを特徴とする(8)又は(9)に記載のグラファイト複合フィルム。
(11)前記グラファイト複合フィルムとSUSとのピール強度が4.0N/25mm以上12.0N/25mm以下であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載のグラファイト複合フィルム。
(12)前記グラファイト複合フィルムの面積が3cm
2以上であることを特徴とする(1)から(11)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルム。
(13)前記グラファイトフィルムの厚みが90μm以上であることを特徴とする(1)から(12)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルム。
(14)前記グラファイトフィルムは、グラファイトシートと接着層とが交互に積層されてなるグラファイト積層体であって、前記グラファイト積層体に含まれる前記グラファイトシートの積層数は3層以上であることを特徴とする(1)から(13)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルム。
(15)前記グラファイトフィルムの体積は、50mm
3以上であることを特徴とする(1)から(14)のいずれか1項に記載のグラファイト複合フィルム。
(16)グラファイトフィルムと当該グラファイトフィルムに接した粘着層を有するグラファイト複合フィルムの製造方法であって、前記グラファイトフィルムの全面積に対する、粘着剤で覆われているグラファイトフィルムの面積の割合は35%以上100%以下であるとともに、少なくとも片面に凹凸構造を有する粘着層の、当該凹凸構造が、グラファイトフィルムと接した面と反対側に配置されるように、当該粘着層と当該グラファイトフィルムとを積層する工程を含むことを特徴とするグラファイト複合フィルムの製造方法。
(17)グラファイトフィルムと当該グラファイトフィルムに接した粘着層を有するグラファイト複合フィルムの製造方法であって、表面に凹凸構造を有するセパレーターの前記凹凸構造を前記粘着層の表面に転写することによって、少なくとも片面に凹凸構造を設けた粘着層を作製する工程と、少なくとも片面に凹凸構造を有する粘着層の、当該凹凸構造が、グラファイトフィルムと接した面と反対側に配置されるように、当該粘着層と当該グラファイトフィルムとを積層する工程とを含むことを特徴とするグラファイト複合フィルムの製造方法。
(18)前記セパレーターの凹凸構造を有する表面の粗さがRa0.06μm以上1.00μm以下、且つ、Rz0.3μm以上10.0μm以下であることを特徴とする(17)に記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
(19)前記セパレーターの凹凸構造を有する表面に粘着剤溶液を製膜して、凹凸構造を転写することを特徴とする(17)又は(18)に記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
(20)前記セパレーターを、溶媒残存率5%以下の前記粘着層に接触させて、前記粘着層の表面に前記凹凸構造を転写することを特徴とする(17)又は(18)に記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
(21)グラファイトフィルムと当該グラファイトフィルムに接した粘着層を有するグラファイト複合フィルムの製造方法であって、
表面に凹凸構造を有するグラファイトフィルム上に粘着層を形成して、グラファイトフィルムの当該凹凸構造を当該粘着層表面に出現させることによって、当該粘着層の表面に凹凸構造を形成することを特徴とするグラファイト複合フィルムの製造方法。
(22)前記グラファイトフィルムの凹凸構造を有する表面の表面粗さがRa0.55μm以上1.70μm以下、且つ、Rz2.3μm以上6.00μm以下であることを特徴とする(21)に記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
(23)前記グラファイトフィルムの厚みが5μm以上120μm以下であることを特徴とする(21)又は(22)に記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
(24)前記粘着層の凹凸構造を有する表面の表面粗さがRa0.8μm以下、Rz4.5μm以下であることを特徴とする請求項(21)から(23)のいずれかに記載のグラファイト複合フィルムの製造方法。
(25)グラファイト複合フィルムを含む放熱部品であって、前記グラファイト複合フィルムは、グラファイトフィルムと当該グラファイトフィルムに接した粘着層とを有し、前記グラファイトフィルムの全面積に対する、粘着剤で覆われているグラファイトフィルムの面積の割合は35%以上100%以下であり、前記粘着層は、前記グラファイトフィルムと接した面と反対側の表面に凹凸構造を有することを特徴とする放熱部品。
(26)前記グラファイト複合フィルムを被着体に貼り合わせてなることを特徴とする(25)に記載の放熱部品。
(27)前記グラファイト複合フィルムの前記被着体と接した面と反対側の表面に保護層が積層されており、当該保護層の表面の表面粗さが、Ra0.15μm以上10μm以下、且つ、Rz1.0μm以上100μm以下であることを特徴とする(26)に記載の放熱部品。
【実施例】
【0136】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0137】
なお実施例で用いられる粘着層、グラファイトフィルム(GS)、保護層、アプリケーション層の厚み及び表面粗さ、粘着層の凹凸構造の島状突起相互間の間隔、ピッチ、溝の深さ及び面積は以下の測定方法によって測定されたものである。
【0138】
<粘着層の凹凸構造の島状突起相互間の間隔、ピッチ、溝の深さ及び面積>
第2粘着層の凹凸構造の島状突起相互間の間隔、ピッチ、溝の深さ及び面積は、株式会社ミツトヨから入手できるクイックスコープ(型番:QS−L1020Z/AF)を用いて測定した。画像が観察可能な条件を調整して計測を行った。PSA1−1〜PSA1−7は、倍率:0.50、照明:落射0、透過0、リング50の条件で画像を観察し、島状突起相互間の間隔及び面積を計測した。また、PSA2−1〜PSA2−6は、倍率:0.50、照明:落射20、透過0、リング0で画像を観察しピッチ、溝の深さ及び面積を計測した。他の粘着層についても、画像が観察可能な条件を調整して計測を行った。
【0139】
<グラファイトフィルム(GS)、セパレーター及び放熱部品のグラファイト複合フィルムの保護層表面の表面粗さ>
グラファイトフィルム(GS)、セパレーター及び放熱部品のグラファイト複合フィルムの保護層表面の表面粗さの測定は、表面粗さ測定器(型番:SE−3500)(本体型番:DR−200X51)を用いて、室温23℃湿度50%の環境下、以下の測定条件で実施した。
【0140】
測定は同じサンプルで10箇所の測定を実施し、RaとRzについて平均値を求めた。
【0141】
評価長さ:任意
任意:0.8mm
縦倍率:2000
横倍率:100
カットオフ値0.8mm
送り速さ:0.5mm/s
<粘着層の表面粗さ>
粘着層の表面粗さの測定は、任意:8.0mmとしたこと以外は、グラファイトフィルム(GS)及びセパレーターと同様の方法で測定した。
【0142】
<厚み>
厚みの評価は、アプリケーション層、保護層、グラファイトフィルム(GS)、粘着層、グラファイト複合フィルムなどの厚みをハイデンハイン株式会社から入手可能な厚みゲージ(HEIDENHAIN−CERTO)を用い、室温23℃湿度50%の環境で、ラミネート前のサンプルの中央部を測定した。なお、凹凸構造を有する層の厚みは、前記中央部の最大厚みを測定した。
【0143】
〔グラファイトフィルムの製造〕
<GS1>
図2に示すように、複屈折0.15、厚み62μm、幅250mm、長さ50mの株式会社カネカ製ポリイミドフィルム アピカルNPIの巻き物を巻き替え装置にセットし、7つの加熱空間を含む加熱処理装置に連続的に供給しながら連続炭化工程を実施した。各加熱空間のMD方向(Machine Direction:流れ方向)の長さは50cm、TD方向(Transverse Direction:幅方向)の長さは300mmとし、各加熱空間内の温度を、各加熱空間内で均一になるように、フィルムの供給側から順にそれぞれ550℃、600℃、650℃、700℃、750℃、800℃、850℃に調整した。フィルムに対して引張り強さ30kgf/cm
2で張力を加えながら、50cm/minのライン速度でフィルムを搬送した。各加熱空間内では
図3に示すように黒鉛製の冶具でフィルムを上下から挟みこみ、フィルムを冶具の間を滑らせるように搬送した。フィルムの厚み方向に加わる圧力は2g/cm
2に調整した。次に、ロール状に巻かれた炭化フィルムを、
図4に示すように炭化フィルムのTD方向と、重力方向とが一致するように黒鉛化炉に投入し、2900℃まで2℃/minの昇温速度で熱処理した。得られた黒鉛化後フィルムをφ300、幅300mmの2本のロールで、3トンの力を加えながら圧延しグラファイトフィルム1(GS1)を得た。
【0144】
<GS2>
2900℃までの昇温速度を5℃/minとしたこと以外は、GS1と同様にグラファイトフィルム2(GS2)を得た。
【0145】
<GS3>
2900℃までの昇温速度を3℃/minとしたこと以外は、GS1と同様にグラファイトフィルム3(GS3)を得た。
【0146】
<GS4>
2900℃までの昇温速度を4℃/minとしたこと以外は、GS1と同様にグラファイトフィルム4(GS4)を得た。
【0147】
<GS5>
2900℃までの昇温速度を7.5℃/minとしたこと以外は、GS1と同様にグラファイトフィルム5(GS5)を得た。
【0148】
<GS6>
2900℃までの昇温速度を10℃/minとしたこと以外は、GS1と同様にグラファイトフィルム6(GS6)を得た。
【0149】
<GS7>
圧延ロールのロールの表面にエンボス処理が施されており、その表面粗さRaが1.30μm、Rzが5.0μmであること以外は、GS1と同様にグラファイトフィルム7(GS7)を得た。
【0150】
<GS8>
複屈折0.12、厚み62μm、幅250mm、長さ50mの株式会社カネカ製ポリイミドフィルム アピカルAHを、250mm長さにカットし、厚み200μmの天然黒鉛シートと交互に100枚積層して、5g/cm
2の荷重がフィルムにかかるように黒鉛製の重石板を載せた。この重石板を載せたポリイミドフィルム/黒鉛シート積層品を炭化炉にセットし、1400℃まで2℃/minの昇温速度で炭化した。次に炭化後の重石板を載せた炭化フィルム/黒鉛シート積層品をそのまま黒鉛化炉に投入し、2900℃まで5℃/minの昇温速度で黒鉛化した。得られた黒鉛化後フィルムを厚み125μmのポリイミドフィルム2枚で挟み、10MPaの圧力でプレス処理を実施し、グラファイトフィルム8(GS8)を得た。
【0151】
<GS9>
厚み32μmのグラファイトシート3枚と厚み5μmの接着フィルム2枚とを、最外層がグラファイトシートとなるように交互に積層した。この積層体を熱圧着して、グラファイトシートの積層数が3層のグラファイト積層体(厚み106μm)を得た。このグラファイト積層体をグラファイトフィルム9(GS9)とした。
【0152】
<GS10>
厚み32μmのグラファイトシート5枚と厚み5μmの接着フィルム4枚とを、最外層がグラファイトシートとなるように交互に積層した。この積層体を熱圧着して、グラファイトシートの積層数が5層のグラファイト積層体(厚み180μm)を得た。このグラファイト積層体をグラファイトフィルム10(GS10)とした。
【0153】
<GS11>
厚み32μmのグラファイトシート15枚と厚み5μmの接着フィルム14枚とを、最外層がグラファイトシートとなるように交互に積層した。この積層体を熱圧着して、グラファイトシートの積層数が15層のグラファイト積層体(厚み550μm)を得た。このグラファイト積層体をグラファイトフィルム11(GS11)とした。
【0154】
<GS12>
厚み32μmのグラファイトシート4枚と厚み5μmの接着フィルム3枚とを、最外層がグラファイトシートとなるように交互に積層した。この積層体を熱圧着して、グラファイトシートの積層数が4層のグラファイト積層体(厚み143μm)を得た。このグラファイト積層体をグラファイトフィルム12(GS12)とした。
【0155】
<GS13>
厚み32μmのグラファイトシート10枚と厚み5μmの接着フィルム9枚とを、最外層がグラファイトシートとなるように交互に積層した。この積層体を熱圧着して、グラファイトシートの積層数が10層のグラファイト積層体(厚み365μm)を得た。このグラファイト積層体をグラファイトフィルム13(GS13)とした。
【0156】
<GS14>
ポリイミドフィルムを加熱して、厚み200μmのグラファイトシートを得た。このグラファイトシートをグラファイトフィルム14(GS14)とした。
【0157】
〔粘着層の製造〕
<PSA1−1>
図5に示す方法により粘着層を作製した。グラビアコーター機を用いて、厚み2μmのPET基材に、乾燥後の厚みが2μmとなるようにトルエンで希釈したアクリル系粘着剤溶液を製膜し、乾燥後、厚み75μmの片面シリコン処理のPETセパレーターのシリコン処理面を、アクリル系粘着剤溶液を製膜した側に貼り合わせ積層品Aを作製した。次に、別途、グラビアコーター機を用いて、乾燥後に1.3mm×1.3mmの正方形の島状突起が
図1の(b)のように規則的に配置され、島状突起の正方形の一辺と、当該辺と向かい合う隣接する島状突起の正方形の一辺との間の間隔(島状突起相互間の間隔)が0.19mm、粘着部の面積の粘着層全体の面積に占める割合(表2及び以下のPSA1−2からPSA1−7の製造において、「粘着部面積」と表示)が76.1%、乾燥後の厚みが2μmとなるように、アクリル系粘着剤溶液を、厚み75μmの片面シリコン処理のPETセパレーターのシリコン処理面にドット印刷した(表2中、第2粘着層の構成として「島状突起」と記載)。ドット印刷により得られた積層品を乾燥後、ドット印刷した面が、積層品Aの基材と接するように、先に作製した積層品Aとラミネートし、PSA1−1を得た。PSA1−1は、積層品Aにおいてアクリル系粘着剤溶液を製膜し乾燥して得られた第1粘着層、基材、アクリル系粘着剤溶液をドット印刷し乾燥して得られた第2粘着層が順に積層した粘着層であり、両方の表面はPETセパレーターで覆われた状態で得られる。なお、本粘着層において第2粘着層の表面の凹凸構造である独立した複数の島状突起は、ピッチが1.5mm、溝の幅が0.19mm、溝の深さが2μmの正方形格子状の溝であるとも言うこともできる。
【0158】
<PSA1−2>
グラビアロールを1.3mm角の島状突起、島状突起相互間の間隔が0.88mm、粘着部面積35.6%となるように調整したこと以外は、PSA1−1と同様にしてPSA1−2を得た。
【0159】
<PSA1−3>
グラビアロールを1.3mm角の島状突起、島状突起相互間の間隔0.50mm、粘着部面積52.2%となるように調整したこと以外は、PSA1−1と同様にしてPSA1−3を得た。
【0160】
<PSA1−4>
グラビアロールを2.25mm角の島状突起、島状突起相互間の間隔0.88mm、粘着部面積85.0%となるように調整したこと以外は、PSA1−1と同様にしてPSA1−4を得た。
【0161】
<PSA1−5>
グラビアロールを3.5mm角の島状突起、島状突起相互間の間隔0.19mm、粘着部面積90.0%となるように調整したこと以外は、PSA1−1と同様にしてPSA1−5を得た。
【0162】
<PSA1−6>
グラビアロールを0.7mm角の島状突起、島状突起相互間の間隔0.1mm、粘着部面積76.6%となるように調整したこと以外は、PSA1−1と同様にしてPSA1−6を得た。
【0163】
<PSA1−7>
グラビアロールを0.07mm角の島状突起、島状突起相互間の間隔0.01mm、粘着部面積76.6%となるように調整したこと以外は、PSA1−1と同様にしてPSA1−7を得た。
【0164】
<PSA2−1>
図6に示す方法により粘着層を作製した。グラビアコーター機を用いて、厚み2μmのPET基材に、乾燥後の厚みが2μmとなるようにトルエンで希釈したアクリル系粘着剤溶液を製膜し、乾燥後、厚み75μmの片面シリコン処理のPETセパレーターのシリコン処理面を、アクリル系粘着剤溶液を製膜した側に貼り合わせ積層品Aを作製した。次に、0.2mm×0.3mmの長方形格子状の線状突起であって、線状突起の高さが平均1.0μm(以下のPSA2−2からPSA2−5の製造において、「ピッチ0.2×0.3mm、山高さ平均1.0μm」のように記載、なお、凹凸構造が転写されるため、表2では、「ピッチ0.2×0.3mm、溝の深さ平均1.0μm」のように記載)のエンボス処理が施され、エンボス面に片面シリコン処理がされたエンボスPETセパレーター(厚み75μm)のエンボス面に、アクリル系粘着剤溶液を乾燥後の厚みが2μmとなるように製膜した(表2中、第2粘着層の構成として「格子状の溝」と記載)。成膜したアクリル系粘着剤溶液を乾燥後、そのアクリル系粘着剤溶液を製膜した面が、積層品Aの基材と接するように、先に作製した積層品AとラミネートしてPSA2−1を得た。その後、前記エンボスPETセパレーターを剥離し、露出した、アクリル系粘着剤溶液を製膜し乾燥して得られた層の、エンボス面の形状が転写された面に、新たに厚み75μmの片面シリコン処理の平坦なPETセパレーターのシリコン処理面を貼り合わせた。PSA2−1は、積層品Aにおいてアクリル系粘着剤溶液を製膜し乾燥して得られた第1粘着層、基材、アクリル系粘着剤溶液をエンボスPETセパレーターに成膜し乾燥して得られた第2粘着層が順に積層した粘着層であり、両方の表面はPETセパレーターで覆われた状態で得られる。
【0165】
<PSA2−2>
ピッチ0.2×0.3mm、山高さ平均0.3μmのエンボス処理が施されたエンボスPETセパレーター(厚み75μm)を用いたこと以外は、PSA2−1と同様にしてPSA2−2を得た。
【0166】
<PSA2−3>
ピッチ0.2×0.3mm、山高さ平均0.5μmのエンボス処理が施されたエンボスPETセパレーター(厚み75μm)を用いたこと以外は、PSA2−1と同様にしてPSA2−3を得た。
【0167】
<PSA2−4>
ピッチ0.1×0.1mm、山高さ平均1.0μmのエンボス処理が施されたエンボスPETセパレーター(厚み75μm)を用いたこと以外は、PSA2−1と同様にしてPSA2−4を得た。
【0168】
<PSA2−5>
ピッチ2.0×2.0mm、山高さ平均1.0μmのエンボス処理が施されたエンボスPETセパレーター(厚み75μm)を用いたこと以外は、PSA2−1と同様にしてPSA2−5を得た。
【0169】
<PSA2−6>
厚み4μmのPET基材に、厚み8μmとなるようにトルエンで希釈したアクリル系粘着剤溶液を製膜したこと、エンボスPETセパレーターに、アクリル系粘着剤溶液を厚み8μmとなるように製膜したこと以外は、PSA2−1と同様にしてPSA2−6を得た。
【0170】
<Neofix5S2>
Neofix5S2は、日栄化工株式会社から入手可能な総厚み5μmの両面テープである。第2粘着層の表面粗さを測定すると、Ra0.10μmRz1.20μmと凹凸の少ない粘着剤であった。
【0171】
<PSA3−1>
図7に示す方法により粘着層を作製した。日栄化工株式会社から入手可能なNeofix5S2の一方のセパレーターを剥離し、露出した粘着面に新たに、厚み75μm、表面粗さRa0.55μm、Rz3.41μmのエンボスPETセパレーターを、前記粘着面に前記表面粗さを有する面が接するようにラミネートしてPSA3−1を得た(表2中、第2粘着層の構成として「エンボスセパ」と記載)。その後、前記エンボスPETセパレーターを剥離し、露出した、前記エンボスPETセパレーターのエンボス面の形状が転写された粘着面に、新たに厚み75μmの片面シリコン処理の平坦なPETセパレーターのシリコン処理面を貼り合わせた。なお、用いたNeofix5S2は乾燥されており、溶媒残存率は0.3%であった。PSA3−1は、Neofix5S2の剥離しなかった方のセパレーターに接する第1粘着層、基材、エンボスPETセパレーターをラミネートしたNeofix5S2の粘着層である第2粘着層が順に積層した粘着層であり、両方の表面はPETセパレーターで覆われた状態で得られる。
【0172】
<PSA3−2>
表面粗さRa0.06μm、Rz0.30μmのエンボスPETセパレーターを用いたこと以外は、PSA3−1と同様にしてPSA3−2を得た。
【0173】
<PSA3−3>
表面粗さRa0.30μm、Rz2.90μmのエンボスPETセパレーターを用いたこと以外は、PSA3−1と同様にしてPSA3−3を得た。
【0174】
<PSA3−4>
表面粗さRa0.70μm、Rz5.10μmのエンボスPETセパレーターを用いたこと以外は、PSA3−1と同様にしてPSA3−4を得た。
【0175】
<PSA3−5>
表面粗さRa1.00μm、Rz10.00μmのエンボスPETセパレーターを用いたこと以外は、PSA3−1と同様にしてPSA3−5を得た。
【0176】
<PSA4>
アクリル系重合体を主成分とする粘着剤を外径0.5mmの丸形の粒状とし、この粘着剤の上面を平坦とした形で0.25mmの間隔で、厚み32μmのグラファイトフィルム1(GS1)に厚み6μmとなるように、スキージで加圧して印刷し形成した(表3中、第2粘着層の構成として「点状」と記載)。前記粒状の各粘着剤は粘着部を構成する。なお、ここで、「0.25mmの間隔」とは、隣り合う丸形の粘着部相互間の間隔をいう(表3中、「粘着部相互間の間隔」と記載)。PSA4における粘着部の面積の粘着層全体の面積に占める割合は34.9%であった。PSA4は、得られたグラファイトフィルム上に形成された、粘着材の部分を指す。
【0177】
<PSA5>
アクリル系重合体を主成分とする粘着剤を外径0.5mmの丸形の粒状とし、この粘着剤の上面を平坦とした形で1.5mmの間隔で、印刷したこと以外は、PSA4と同様にしてPSA5を得た。PSA5における粘着部の面積の粘着層全体の面積に占める割合は4.9%であった。PSA5は、得られたグラファイトフィルム上に形成された、粘着材の部分を指す。
【0178】
〔グラファイト複合フィルムの製造〕
<実施例1〜36、比較例1>
表1に記載のグラファイトフィルム(GS)、保護層、及びアプリケーション層、並びに、両方の表面がPETセパレーターで覆われた表2〜3に記載の粘着層をそれぞれ用いてグラファイト複合フィルムを製造した。得られたグラファイト複合フィルムの粘着層のグラファイトフィルムと接した面と反対側の表面には、表4〜5に記載のセパレーターがそれぞれ積層されている。なお、表2〜3中「フラット」とは凹凸構造を有しないことを意味する。具体的には、Raが0.13μm以下で、且つ、Rzが1.30μm以下である場合は、凹凸が十分に少ないので、「フラット」とする。また、表2中「通常PSA」とは、凹凸構造を有しない第1粘着層と第2粘着層とを含む三層構造の粘着剤を意味する。表2〜3中に、グラファイトフィルムの全面積に対する、粘着剤で覆われているグラファイトフィルムの面積の割合を併せて示す(表2〜3中、「粘着剤で覆われている面積の割合(%)」と表示)。
【0179】
グラファイト複合フィルムは、それぞれサイズ100mm×120mmの、両方の表面がPETセパレーターで覆われた粘着層/グラファイトフィルム(GS)/保護層/アプリケーション層を、粘着層からこの順番に1層ずつラミネーター装置を使用して、空気が巻き込まれないように積層することにより製造した。その際、まず粘着層の第1粘着層側のPETセパレーターを剥離し、露出した第1粘着層の接着面とグラファイトフィルムとが接するように、粘着層とグラファイトフィルムとをラミネートした。即ち、グラファイトフィルムと接した面と反対側の表面に第2粘着層が配置するようにラミネートを実施した。その後、グラファイトフィルムの粘着層と接した面と反対側の面に、保護層とアプリケーション層をこの順に積層し積層品を得た。得られた積層品を、それぞれ、表4〜5に記載のサイズ(実施例1〜28及び比較例1:70mm×90mm;実施例29、32及び34〜36:50mm×50mm、実施例30、31及び33:15mm×40mm)となるようにカットしてグラファイト複合フィルムを得た。
【0180】
【表1】
【0181】
【表2】
【0182】
【表3】
【0183】
【表4】
【0184】
【表5】
【0185】
<比較例2>
比較例2では、アクリル系重合体を主成分とする粘着剤を外径0.5mmの丸形の粒状としこの粘着剤の上面を平坦とした形で0.25mmの間隔、厚み32μmのグラファイトフィルム1に厚み6μmとなるように、スキージで加圧して印刷し形成したあと、75μmのPETセパレーターを貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様にグラファイト複合フィルムを作製した。
【0186】
<比較例3>
比較例3では、アクリル系重合体を主成分とする粘着剤を外径0.5mmの丸形の粒状としこの粘着剤の上面を平坦とした形で1.5mmの間隔、厚み32μmのグラファイトフィルム1に厚み6μmとなるように、スキージで加圧して印刷し形成したあと、75μmのPETセパレーターを貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様にグラファイト複合フィルムを作製した。
【0187】
<参考例1>
サイズ40mm×60mmとなるようにカットしたこと以外は、比較例1と同様にグラファイト複合フィルムを作製した。
【0188】
<参考例2>
サイズ15mm×15mmとなるようにカットしたこと以外は、実施例29と同様にグラファイト複合フィルムを作製した。
【0189】
〔グラファイト複合フィルムの評価〕
各実施例、比較例及び参考例で得られたグラファイト複合フィルムについて以下の評価を行った。その結果を、表4及び表5に示す。
【0190】
<ピール強度>
グラファイト複合フィルムの粘着力を示す物性として、ピール強度を、JIS−Z0237記載の方法1の「試験板に対する180度引きはがし粘着力の試験方法」に準じて求めた。JIS−Z0237に記載の幅50mm×長さ125mm×厚み1.1mm、表面粗さRa:50nmのSUS板をメタノールで洗浄した。25mm×120mmにカットした、グラファイト複合フィルムのセパレーター、即ち第2粘着層に接するセパレーターを剥離し、環境温度23℃、湿度50%の条件下において、洗浄後のSUS板に、グラファイト複合フィルムを、第2粘着層とSUS板とが接するようにして、空気が入らないように2kgのローラーで2往復加圧貼付した。1時間放置後、SIMAZU製のオートグラフ(型番:AG−10TB)及び50Nのロードセル(型番:SBL−50N)を用い、同一の温度湿度条件下で300mm/minの速度で引っ張って、180度引きはがし粘着力を測定した。異なる試験片を用い同様の測定を3回実施し、結果は、3回測定の平均値の小数点以下第3位を四捨五入することにより、小数点以下第2位までの値として求め、ピール強度(単位:N/25mm)とした。
【0191】
<バブル評価>
グラファイト複合フィルムを被着体に貼り合わせたときの、被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生の低減を以下の方法により評価した。
【0192】
被着体:サイズ80mm×100mm、厚み0.2mmのSUS板(メタノールで洗浄したもの)
環境:環境温度23℃、湿度50%の条件下
測定回数:N10(N10回の測定で以下の評価の内最も多いものを結果として採用する。)
手順:グラファイト複合フィルムのPETセパレーターを剥離した。フラットな台の上に、露出した第2粘着層の粘着面を上にしてグラファイト複合フィルムを保持した。グラファイト複合フィルムの粘着面に被着体を、被着体の貼付けられる面が一気に接触するように載せ、重さ5kg(サイズ80mm×100mm)の重石を載せて10秒間保持した。その後、被着体の上から重さ10kgのゴムローラで3往復して空気溜りを除去した。その後、残った空気溜りをカウントし、以下の基準により評価した。なお、空気溜りは被着体表面に隆起として現れるので、空気溜りの大きさと有無は、見た目に隆起があるもので、最大の空気溜りの最大長さを測定し(楕円形であれば、隆起した一番長い距離を測定する。)、その測定長を以下基準で評価することができる。
【0193】
評価1…6.0mm以上の空気溜りがある場合
評価2…2.5mm以上6.0mm未満の空気溜りがある場合
評価3…1.5mm以上2.5mm未満の空気溜りがある場合
評価4…1.5mm未満の空気溜りがある場合
評価5…空気溜りがない場合
<密着性評価>
グラファイト複合フィルムの密着性を評価した。グラファイト複合フィルムのピール強度の試験結果を以下のように分類した。
【0194】
評価1…4.0N/25mm未満
評価2…4.0N/25mm以上5.0N/25mm未満
評価3…5.0N/25mm以上6.0N/25mm未満
評価4…6.0N/25mm以上6.5N/25mm未満
評価5…6.5N/25mm以上
<放熱試験>
グラファイト複合フィルムの放熱性を以下の放熱試験により評価した。
図8にグラファイト複合フィルムの放熱試験の装置構成図を示す。バブル評価とは別に、グラファイト複合フィルムのPETセパレーターを剥離し、ラミネーターを用いて、サイズ80mm×100mm、厚み0.2mmのSUS板33とグラファイトフィルム35とを、SUS板と露出した粘着層34の粘着面とが一気に接触するように貼り合わせた。アプリケーション層も剥離し、その後、10mm×10mm×1mmの発熱部品37としてのセラミックヒーター(ヒーター面には、放射率0.94の黒体スプレーを塗布しておく。)を、保護層36側からグラファイト複合フィルムの中央に取り付け、出力2Wで加熱し、温度上昇が飽和するまで待機した。放熱試験は、環境温度23℃、湿度50%の条件下、対流で温度が変化しないように、周囲に風除けを設置して実施した。温度の測定は、サーモビューワーを用いヒーター上の温度を測定することにより行った。測定はN5回で実施し、5回測定の平均値を測定値とし、以下基準で評価した。
【0195】
評価1…ヒーター上の温度が51.5℃以上の場合
評価2…ヒーター上の温度が51.0℃以上51.5℃未満の場合
評価3…ヒーター上の温度が50.5℃以上51.0℃未満の場合
評価4…ヒーター上の温度が50℃以上50.5℃未満の場合
評価5…ヒーター上の温度が50℃未満の場合
<リワーク性評価>
グラファイト複合フィルムのリワーク性(再剥離性)評価を実施した。放熱試験と同様にして、グラファイト複合フィルムとSUS板を貼り合わせた。貼り合わせてから10分、室温23℃湿度50%の環境におき、続いて、同環境にて引き剥がしのテスト(リワーク作業)を行った。以下の基準に従ってリワーク性を評価した。なお測定は10回実施し、以下の評価の内最も多いものを結果として採用した。
【0196】
評価1…リワーク時にグラファイト複合フィルムが破損し、1回のリワーク作業で50%以上の領域がSUS板に残る場合。
【0197】
評価2…リワーク時にグラファイト複合フィルムが破損し、1回のリワーク作業で10%以上50%未満の領域がSUS板に残る場合。
【0198】
評価3…リワーク時にグラファイト複合フィルムが破損しないか、破損しても1回のリワーク作業で10%未満しかSUS板に残らない場合。
【0199】
<粘着層のコスト>
粘着層のコストの評価は、グラファイト複合フィルムを1ピース製造するのに必要な粘着層の材料費をグラファイト複合フィルムの面積(cm
2)で割った、単位面積当たりのコストで評価した。基準として、比較例1の従来のグラファイト複合フィルムの単位面積当たりの粘着層のコストを1に規格化し、その他の実施例、比較例及び参考例のコストを算出した。
【0200】
評価1…コストが1.3より大きい場合
評価2…コストが1.2より大きく1.3以下の場合
評価3…コストが1.1より大きく1.2以下の場合
評価4…コストが1より大きく1.1以下の場合
評価5…コストが1以下の場合
<密着安定性>
グラファイト複合フィルムの密着安定性評価を実施した。グラファイト複合フィルムのPETセパレーターを剥離し、ラミネーターを用いて、サイズ100mm×100mm、厚み2mmのSUS板とグラファイト複合フィルムとを、SUS板と露出した粘着層の粘着面とが一気に接触するように貼り合わせた。貼り合わせてから一日間、室温23℃湿度50%の環境におき、続いて、貼り合わせたものを、カッターで、すべての層が切断されるように切って、1cmの長さの切れ目を入れ、浮きの発生を観察した。具体的には、浮きの発生の有無を観察し、浮きが発生する場合は、浮きの最大長さを測定した(楕円形であれば、隆起した一番長い距離を測定する。)。
【0201】
以下の基準に従って密着安定性を評価した。なお測定は3回実施し、以下の評価の内最も多いものを結果として採用した。
【0202】
評価1…最大長さが1mm以上の浮きがある場合
評価2…最大長さが0.5mm以上1mm以下の浮きがある場合
評価3…最大長さが0.5mm以下の浮きがある場合
評価4…浮きがない場合
<まとめ>
表4及び表5に示すグラファイト複合フィルムの評価結果から、粘着剤溶液を塗布又は印刷する方法により凹凸構造を設けた粘着層を有する本発明のグラファイト複合フィルム(実施例1〜7、34)、表面に凹凸構造を有するセパレーターに粘着剤溶液を製膜して凹凸構造を転写する方法により凹凸構造を設けた粘着層を有する本発明のグラファイト複合フィルム(実施例8〜13、29−33、36)、凹凸構造を有するセパレーターの前記凹凸構造を有する面を粘着層に接触させて凹凸構造を転写する方法により凹凸構造を設けた粘着層を有する本発明のグラファイト複合フィルム(実施例14〜18、35)、表面に凹凸構造を有するグラファイトフィルム上に粘着層を形成してグラファイトフィルムの当該凹凸構造を粘着層表面に出現させる方法により凹凸構造を設けた粘着層を有する本発明のグラファイト複合フィルム(実施例19〜25)、凹凸構造を有する粘着層とグラファイトフィルムとを積層する方法と、表面に凹凸構造を有するグラファイトフィルム上に粘着層を形成してグラファイトフィルムの当該凹凸構造を粘着層表面に出現させる方法とを組み合わせた方法により凹凸構造を設けた粘着層を有する本発明のグラファイト複合フィルム(実施例26〜28)では、放熱性を損なうことなく、被着体に貼り合わせた際の被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生を低減させることができるとともに、密着性やリワーク性に優れることが判る。
【0203】
また、サイズ40mm×60mmとなるようにカットしたこと以外は、比較例1と同様にグラファイト複合フィルムを作製した参考例1の結果より、グラファイト複合フィルムのサイズが小さい場合は、被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生の問題がそもそも起こらないことが判る。本発明のグラファイト複合フィルムは、特に、グラファイト複合フィルムのサイズが25cm
2以上である場合に、気泡発生の問題に対して有効に機能する。
【0204】
さらに、サイズ15mm×15mmとなるようにカットしたこと以外は、実施例29と同様にグラファイト複合フィルムを作製した参考例2の結果より、グラファイト複合フィルムのサイズが小さい場合は、放熱試験の結果が悪いことが判る。本発明のグラファイト複合フィルムは、特に、グラファイト複合フィルムのサイズが3cm
2以上である場合に、放熱効果に優れることが判る。
【0205】
実施例1〜7の中でも、特に実施例1、3、4、6で得られたグラファイト複合フィルムは、バブル評価と放熱試験の評価とが共に高いという点で優れている。かかる結果より、粘着部の面積の粘着層全体の面積に占める割合は50%以上85%以下であること、「島状突起相互間の間隔」が0.1mm以上であること、又は、格子状の溝のピッチが0.1mm以上であることが、より高い放熱性と気泡発生の大きな低減の両立のためにより好ましいことが判る。
【0206】
実施例8〜13の中でも、特に実施例8、10で得られたグラファイト複合フィルムは、バブル評価と放熱試験の評価とが共に高いという点で優れている。かかる結果より、溝の深さが0.5μm以上であること、溝のピッチが0.15μm以上であること、又は、粘着層の厚みが10μm以下であることが、より高い放熱性と気泡発生の大きな低減の両立のためにより好ましいことが判る。
【0207】
実施例14〜18の中でも、特に実施例14、16、17で得られたグラファイト複合フィルムは、バブル評価と放熱試験の評価とが共に高いという点で優れている。かかる結果より、粘着層に凹凸構造を転写するために用いられるセパレーターの凹凸構造を有する表面の表面粗さが、Ra0.30μm以上0.70μm以下、且つ、Rz2.90μm以上5.10μm以下であることが、より高い放熱性と気泡発生の大きな低減の両立のためにより好ましいことが判る。
【0208】
実施例19〜25の中でも、特に実施例19、21、22で得られたグラファイト複合フィルムは、バブル評価と放熱試験の評価とが共に高いという点で優れている。かかる結果より、グラファイトフィルムの凹凸構造を当該粘着層表面に出現させることによって粘着層の表面に凹凸構造を形成するために用いられるグラファイトフィルムの凹凸構造を有する表面の表面粗さが、Ra0.80μm以上1.30μm以下、且つ、Rz3.20μm以上4.70μm以下であることが、より高い放熱性と気泡発生の大きな低減の両立のためにより好ましいことが判る。
【0209】
なお、実施例26〜28のように、上記製造方法1と製造方法2のそれぞれで効果の優れる粘着剤やグラファイトフィルムを組み合わせて使用したとしても、密着性や放熱性などが劣化する場合があることが示された。この結果から、本発明の目的は、単に従来の知見に基づいて密着性や放熱性に優れた粘着剤とグラファイトフィルムを選択しただけでは、達成することができないことが判る。
【0210】
実施例29〜33及び36は、実施例8〜13と同様に、表面に凹凸構造を有するセパレーターに粘着剤溶液を製膜して凹凸構造を転写する方法により凹凸構造を設けた粘着層を有する本発明のグラファイト複合フィルムである。実施例29〜33は、グラファイトフィルムとしてグラファイト積層体を用いている点で、単層のグラファイトシートからなるグラファイトフィルムを用いている実施例8〜13と異なる。厚みがより小さい単層のグラファイトシートからなるグラファイトフィルムと比べて、グラファイト積層体を用いるグラファイトフィルムでは、グラファイトフィルムの厚みが90μm以上になる場合が多い。また、実施例36は、グラファイトフィルムとして、単層という点では同じであるが、厚みが90μm以上と大きなグラファイトフィルムを用いている点で、厚みがより小さいグラファイトフィルムを用いている実施例8〜13と異なる。このように、グラファイトフィルムの厚みが90μm以上になると、特に、グラファイトフィルムのコシが強くなり、貼り合わせられる被着体への追従性が悪くなり、グラファイトフィルムと被着体との間に気泡が入りやすくなるという問題がある。しかし、本発明の粘着層を用いることにより、気泡の発生を抑制することができることが示された。
【0211】
また、実施例34は、実施例1〜7と同様に、粘着剤溶液を塗布又は印刷する方法により凹凸構造を設けた粘着層を有する本発明のグラファイト複合フィルムである。実施例34は、グラファイトフィルムとしてグラファイト積層体を用いている点で、単層のグラファイトシートからなるグラファイトフィルムを用いている実施例1〜7と異なる。実施例34においても、気泡の発生を抑制することができることが示されており、実施例29〜33及び36の結果と同様のことが言える。
【0212】
また、実施例35は、実施例14〜18と同様に、凹凸構造を有するセパレーターの前記凹凸構造を有する面を粘着層に接触させて凹凸構造を転写する方法により凹凸構造を設けた粘着層を有する本発明のグラファイト複合フィルムである。実施例35は、グラファイトフィルムとしてグラファイト積層体を用いている点で、単層のグラファイトシートからなるグラファイトフィルムを用いている実施例14〜18と異なる。実施例35においても、気泡の発生を抑制することができることが示されており、実施例29〜33及び36の結果と同様のことが言える。
【0213】
また、グラファイトフィルムの体積が50mm
3以上になると、さらに、グラファイトフィルムのコシが強くなり、貼り合わせられる被着体への追従性が悪くなり、グラファイトフィルムと被着体との間に気泡が入りやすくなるという問題の解決が困難となる。特に、グラファイトシートの積層数が2層以上であるグラファイト積層体を用いるグラファイトフィルムでは、この問題の解決が重要となる。しかし、本発明の粘着層を用いれば、グラファイトフィルムの体積が50mm
3以上である実施例1〜35においてかかる問題を解決できることが示された。特に、グラファイトフィルムとして、グラファイトシートの積層数が2層以上であるグラファイト積層体を用いるばあいは、体積が大きくなる傾向があるので、本発明の粘着層を用いることが特に有効である。
【0214】
さらに、表4及び表5に示される密着安定性の評価結果より、前記グラファイトフィルムの全面積に対する、粘着剤で覆われているグラファイトフィルムの面積の割合が100%である、実施例8〜25、27〜33、35及び36では、グラファイト複合フィルムの被着体に対する密着安定性により優れることが示された。また、前記グラファイトフィルムの全面積に対する、粘着剤で覆われているグラファイトフィルムの面積の割合が35%以上100%未満である、実施例1〜7においても、その割合が35%未満である比較例2及び3に比較して密着安定性により優れることが示された。
【0215】
〔放熱部品の製造〕
<実施例37>
実施例1で得られたグラファイト複合フィルムを用いて放熱部品を作成した。具体的には、グラファイト複合フィルムのPETセパレーターを剥離し、ラミネーターを用いて、サイズ70mm×100mm、厚み0.2mmのSUS板とグラファイト複合フィルムとを、SUS板と露出した粘着層の粘着面とが一気に接触するように貼り合わせて放熱部品を製造した。このとき、複合グラファイトフィルムのSUS板と接した面と反対側のグラファイトフィルムの表面には、保護層とアプリケーション層とが積層されている。
【0216】
得られた放熱部品から前記アプリケーション層を剥離し、保護層側から観察した結果を
図10に示す。
図10に示されるように、放熱部品の、SUS板と接した面と反対側のグラファイトフィルムの表面に、粘着層の凹凸構造に起因する凹凸構造が出現することが確認された。
【0217】
<実施例38>
実施例29で得られたグラファイト複合フィルムを用いて放熱部品を作成した。具体的には、グラファイト複合フィルムのPETセパレーターを剥離し、ラミネーターを用いて、サイズ70mm×100mm、厚み0.2mmのSUS板とグラファイト複合フィルムとを、SUS板と露出した粘着層の粘着面とが一気に接触するように貼り合わせて放熱部品を製造した。このとき、複合グラファイトフィルムのSUS板と接した面と反対側のグラファイトフィルムの表面には、保護層とアプリケーション層とが積層されている。
【0218】
このとき放熱部品をグラファイト複合フィルムの面に垂直となる方向に切断し、切断面を観察した。切断面において、放熱部品の、SUS板とグラファイトフィルムとの間に存在する粘着層がSUS側で凹凸構造を有していることが観察された。
【0219】
そして、すべての実施例において、比較例1〜3と比べて、放熱性を損なうことなく、被着体に貼り合わせた際の被着体とグラファイト複合フィルムとの間の気泡発生を低減させ得るという効果が得られることが示された。