特許第6669735号(P6669735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6669735アクティブOLEDディスプレイ、アクティブOLEDディスプレイの操作方法、および化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6669735
(24)【登録日】2020年3月2日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】アクティブOLEDディスプレイ、アクティブOLEDディスプレイの操作方法、および化合物
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20200309BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20200309BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20200309BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   H05B33/22 C
   H05B33/14 A
   H01L27/32
   H05B33/12 B
   H05B33/22 A
   G09F9/30 365
   G09F9/30 338
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-516834(P2017-516834)
(86)(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公表番号】特表2017-538282(P2017-538282A)
(43)【公表日】2017年12月21日
(86)【国際出願番号】EP2015072539
(87)【国際公開番号】WO2016050834
(87)【国際公開日】20160407
【審査請求日】2018年9月7日
(31)【優先権主張番号】14187061.8
(32)【優先日】2014年9月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503180100
【氏名又は名称】ノヴァレッド ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ローテ,カルステン
(72)【発明者】
【氏名】ローセノー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ハルディ,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ツェルナー,マイク
(72)【発明者】
【氏名】カンツラー,トビアス
【審査官】 岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0264295(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0264313(US,A1)
【文献】 国際公開第2013/135352(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第02706584(EP,A1)
【文献】 国際公開第2014/128843(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/088759(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/163276(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
G09F 9/30
H01L 27/32
H05B 33/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のOLED画素と、
前記複数のOLED画素の画素を個別に駆動するように構成された駆動回路とを備え、
前記OLED画素の各々は、アノード、カソード、および有機層のスタックを含み、
前記有機層のスタックは、
カソードとアノードとの間に接触して設けられ、
電子輸送層、正孔輸送層、および前記正孔輸送層と前記電子輸送層との間に設けられた発光層を含み、
共通の正孔輸送層は、前記複数のOLED画素の場合、前記複数のOLED画素の前記有機層のスタックに設けられた前記正孔輸送層によって形成され、前記共通の正孔輸送層は、正孔輸送マトリックス材料と電気的なpドーパントとを含み、前記共通の正孔輸送層の導電率は、1×10−3S・m−1より低く、1×10−8S・m−1より高いことを特徴とするアクティブOLEDディスプレイ。
【請求項2】
真空エネルギー準位がゼロであることを示す絶対基準で表された前記電気的なpドーパントのLUMOエネルギー準位が、前記正孔輸送マトリックス材料を形成する化合物の最高HOMOエネルギー準位より少なくとも150meV高いことを特徴とする請求項1に記載のアクティブOLEDディスプレイ。
【請求項3】
真空エネルギー準位がゼロであることを示す絶対基準で表された前記電気的なpドーパントのLUMOエネルギー準位が、前記正孔輸送マトリックス材料を形成する化合物の最高HOMOエネルギー準位よりも高い600meV未満であることを特徴とする請求項1または2に記載のアクティブOLEDディスプレイ。
【請求項4】
前記正孔輸送マトリックス材料は、−4.8eVから−5.5eVの範囲において真空エネルギー準位がゼロであることを示す絶対基準で表された最高占有分子軌道のエネルギーを有する化合物からなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のアクティブOLEDディスプレイ。
【請求項5】
前記共通の正孔輸送層は、50nm未満の厚さを有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のアクティブOLEDディスプレイ。
【請求項6】
前記共通の正孔輸送層は、3nm以上の厚さを有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のアクティブOLEDディスプレイ。
【請求項7】
真空エネルギー準位がゼロであることを示す絶対基準で表された前記アノードの仕事関数は、前記pドーパントを形成する化合物の最高LUMOエネルギー準位よりも高い500meV未満であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のアクティブOLEDディスプレイ。
【請求項8】
前記有機層のスタックは、前記正孔輸送層と前記発光層との間に設けられた電子阻止層をさらに含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のアクティブOLEDディスプレイ。
【請求項9】
前記電子阻止層は、30nm以上の厚さを有することを特徴とする請求項8に記載のアクティブOLEDディスプレイ。
【請求項10】
前記電子阻止層は、200nm未満の厚さを有することを特徴とする請求項8または9に記載のアクティブOLEDディスプレイ。
【請求項11】
前記電子阻止層を構成する各化合物は、前記共通の正孔輸送層の前記正孔輸送マトリックス材料を形成するいずれかの化合物のHOMO準位より高い、真空エネルギー準位がゼロであることを示す絶対基準で表されたHOMO準位を有することを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載のアクティブOLEDディスプレイ。
【請求項12】
前記共通の正孔輸送層の前記正孔輸送マトリックス材料は、前記電子阻止層のマトリックス材料の正孔移動度より低い正孔移動度で設けられることを特徴とする請求項8から11のいずれか1項に記載のアクティブOLEDディスプレイ。
【請求項13】
前記共通の正孔輸送層の前記正孔輸送マトリックス材料は、非局在化電子の共役系を含む化合物から選択され、前記共役系は、少なくとも2つの第3級アミン窒素原子の孤立電子対を含むことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載のアクティブOLEDディスプレイ。
【請求項14】
前記発光層は、複数の分離されたサブ領域を含み、前記サブ領域の各々は、前記複数のOLED画素からの前記画素の1つに割り当てられることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載のアクティブOLEDディスプレイ。
【請求項15】
共通の電子輸送層は、前記複数のOLED画素の場合、前記複数のOLED画素の前記有機層のスタックに設けられた前記電子輸送層によって形成されることを特徴とする請求項1から14のいずれか1項に記載のアクティブOLEDディスプレイ。
【請求項16】
前記共通の電子輸送層は、電子輸送マトリックス材料と電気的なnドーパントとを含むことを特徴とする請求項15に記載のアクティブOLEDディスプレイ。
【請求項17】
駆動回路は、前記複数のOLED画素の各画素に駆動電流を印加し、前記駆動電流は、動作時において隣接するOLED画素ごとに異なることを特徴とする請求項1から16のいずれか1項に記載のアクティブOLEDディスプレイを有するアクティブOLEDディスプレイの操作方法。
【請求項18】
以下の式を有する化合物
【化1】
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本開示は、複数のOLED画素を有するアクティブOLEDディスプレイ、アクティブOLEDディスプレイの操作方法、および化合物に関する。
【0002】
〔背景技術〕
Tangらによって低い操作電圧が実証された1987年以来(C. W. Tang et al. Appl. Phys. Lett. 51 (12) 913 (1987))、有機発光ダイオードは、大面積ディスプレイの実現のための有望な候補である。それらは、例えば、熱真空蒸発または溶液処理によって付着され、続いて金属層を介して電気接点の構造が形成される一連の薄い(通常1nmから1μm)有機材料層からなる。有機電気装置は、特性に関して、無機材料に基づいて確立された成分と競合する、ダイオード、発光ダイオード、フォトダイオード、および薄膜トランジスタ(TFT)などの、多種多様な電子または光電子部品を提供する。
【0003】
有機発光ダイオード(OLED)の場合、外部から供給される電圧、続いて活性領域における励起子(電子−正孔対)の形成、およびこれらの励起子の放射再結合の結果として、発光ダイオードによって、電荷キャリア(一方の側からの電子、他方の側からの正孔)を接点から隣接する有機層に注入することによって、光が生成されて発光する。
【0004】
従来の無機成分(ケイ素またはガリウムヒ素のような無機半導体に基づく)を超える有機成分の利点は、大型ディスプレイ部品(視覚ディスプレイ、スクリーン)またはランプ(照明用途)などの大面積の部品を製造するための選択肢である。有機材料は、無機材料と比較して比較的安価である(材料とエネルギーの消費が少ない)。さらに、これらの材料は、無機材料と比較して処理温度が低いため、フレキシブル基板上に堆積させることができ、ディスプレイおよび照明工学における一連の新しい用途が開かれる。
【0005】
このような成分の基本的な構成は、以下の層の1つ以上の配置を含む:キャリア基板;通常は透明である正孔注入(正の接点)ベース電極;正孔注入層(HIL);正孔輸送層(HTL);発光層(EL);電子輸送層(ETL);電子注入層(EIL);通常は仕事関数の低い金属である電子注入(負の接点)カバー電極;周囲の影響を排除するための封入。
【0006】
上記は最も典型的な場合を示しているが、(HTLおよびETLを除いて)いくつかの層を省略してもよく、または1つの層がいくつかの特性を組み合わせてもよい。
【0007】
ドープされた電荷キャリア輸送層(アクセプター性分子の混合によるHTLのpドーピング、ドナー性分子の混合によるETLのnドーピング)の使用は、文献US5,093,698に記載されている。この意味でのドーピングは、ドーピング物質の層への混合が、関連する2つの物質のうちの1つの純粋な層と比較して、この層の平衡電荷キャリア濃度を増加させ、結果として導電率が改善され、隣接するコンタクト層からこの混合層へのより良い電荷キャリアの注入を意味する。電荷キャリアの輸送は、依然としてマトリックス分子上で起こる。US5,093,698によれば、ドープされた層は、接点材料との界面で注入層として使用され、発光層はその間に存在する(または、他の接点の次に、1つのドープされた層のみが使用される場合)。ドーピングによって増加した平衡電荷キャリア密度および関連するバンドの屈曲は、電荷キャリアの注入を容易にする。US5,093,698によれば、HTL内の正孔と同様にETL内の電子が、HTL材料の非常に高いイオン化エネルギーおよびETL材料の非常に低い電子親和力を必要とする、さらなる障壁なしに、EL(発光層)に注入されることが可能であるように、有機層のエネルギー準位(HOMO=最高占有分子軌道または最高エネルギー性価電子帯エネルギー;LUMO=最低非占有分子軌道または最低エネルギー性伝導帯エネルギー)は、取得されるべきである。
【0008】
アクティブOLEDディスプレイに関しては、ディスプレイの画素間のいわゆるクロストークが大きな問題となっている。画素または色のクロストークは、近接画素から散乱された別の色の光子と誤って混合する画素によって生成された1つの色の光子を示す。例えば、文献GB2492400AおよびWO2002/015292A2は、OLED装置におけるカラークロストークを低減するための手段を提供する。加えて、または別の態様として、電気的なクロストークが生じることがある。この場合、例えば、一方の画素に印加される駆動電流によって、駆動電流が供給される画素に近い他の画素から発光が生じることがある。両方とも、表示装置の性能に悪影響を与える(Yamazaki et al., A. (2013), 33.2: Spatial Resolution Characteristics of Organic Light-emitting Diode Displays: A comparative Analysis of MTF for Handheld and Workstation Formats. SID Symposium Digest of Technical Papers, 44: 419-422. doi: 10.1002/j.2168-0159.2013.tb06236.x)。
【0009】
典型的な市販のアクティブマトリクスOLEDディスプレイでは、電気的な画素のクロストークは、より多くのOLED画素によって共有される正孔輸送層(HTL)における(共有HTLがディスプレイ内に存在する複数の画素のアノードに電気的に接続されるという意味における)酸化還元pドーピングの適用によって引き起こされ得る。ドープされたマトリックスの分子からドーパント分子へ電子を移動させることによって新しい電荷キャリア(正孔)の生成により電荷キャリア密度を増加させる酸化還元pドーパントの使用は、低動作電圧、高い動作安定性および高い生産収益に有益である。一方、酸化還元pドーピングは、正孔輸送層の導電率を、pドーパントなしの10−8S/cm未満、通常は、10−10S/cm未満から、(通常、1wt.%と5wt.%との間の範囲におけるpドーパントの濃度において)10−6S/cm以上に増加させる。したがって、ドープされた酸化還元HTLは、通常、複数の画素に共有されたHTLを含むアクティブマトリックスディスプレイにおける、いくらかの電気的な画素のクロストークの原因である。もし、ETLが酸化還元nドーパントと共にnドープされれば、ドープされた酸化還元HTLと同様の高い導電率を示すかもしれない。しかしながら、共通のカソードでレイアウトを表示するために、ETLは、電気的な画素のクロストークを引き起こさない。
【0010】
〔概要〕
アクティブOLEDディスプレイのための改善された技術を提供することが目的であり、特に、アクティブOLEDディスプレイの隣接する画素間のクロストークを低減しなければならない。
【0011】
本発明の一態様では、請求項1に記載のアクティブOLEDディスプレイ、請求項17に記載のアクティブOLEDディスプレイの操作方法、および請求項18に記載の化合物が提供される。さらなる実施形態は従属請求項の主題である。
【0012】
本発明の一態様では、複数のOLED画素を有するアクティブOLEDディスプレイが提供される。アクティブOLEDディスプレイは、複数のOLED画素を備え、各々のOLED画素は、アノード、カソード、および有機層のスタックを含む。有機層のスタックは、カソードとアノードとの間に接触して設けられ、電子輸送層、正孔輸送層、および正孔輸送層と電子輸送層との間に設けられた発光層とを備える。有機層のスタックとカソードとの間、および有機層のスタックとアノードとの間の接触は、電気的接触であってもよい。さらに、アクティブOLEDディスプレイは、複数のOLED画素の画素を個別に駆動するように構成された駆動回路を備える。複数のOLED画素の場合、複数のOLED画素の有機層のスタックに設けられた正孔輸送層によって共通の正孔輸送層が形成される。共通の正孔輸送層は、正孔輸送マトリックス材料と電気的pドーパントとを含む。共通の正孔輸送層の導電率は、1×10−3S・m−1より低くてもよく、1×10−8S・m−1より高くてもよい。共通の正孔輸送層の導電率は、電気的なpドーパントでドープされた正孔輸送マトリックス材料の導電率を示す。または、共通の正孔輸送層の導電率の範囲に加えて、正孔輸送マトリックス材料の正孔移動度が5×10−4cm/Vsよりも低くてもよい。OLED画素間の電気的なクロストークは、企画されたアクティブOLEDディスプレイのために制限されてもよく、または、除去されてもよい。
【0013】
有機半導体装置の重要な特性はそれらの導電率である。電気的なドーピングによって、有機半導体装置の層の導電率を著しく高めることができる。例えば、いわゆる二点法によって薄い層のサンプルの導電率を測定することができる。このとき、薄い層に電圧を印加し、その層を流れる電流を測定する。接点の相対位置およびサンプルの層の厚さを考慮することにより、抵抗、個々の導電率が得られる。
【0014】
有機層内の電荷キャリア移動度は、アドミッタンス分光法によって得られた静電容量対周波数の痕跡から決定されることが可能である(例えば、Nguyen et al., Determination of charge-carrier transport in organic devices by admittance spectroscopy: Application to hole mobility in α-NPD." Physical Review B 75.7 (2007): 075307)。
【0015】
本発明の別の態様では、複数のOLED画素を有するアクティブOLEDディスプレイの操作方法が提供されている。駆動回路は、複数のOLED画素の各画素に駆動電流を印加し、その駆動電流は隣接する画素に対して異なる。OLEDディスプレイの操作中の少なくとも1つの点において、異なる電位が隣接する画素に印加される。
【0016】
さらに本発明の別の態様では、化合物は以下に開示された式を有する。
【0017】
【化1】
【0018】
必要に応じて、複数のOLED画素のうちの1つ以上に対して、有機層、すなわち、正孔阻止層、電子注入層、および/または電子阻止層を設けてもよい。
【0019】
共通の正孔輸送層の導電率は、5×10−4S・m−1より小さくてもよく、1×10−4S・m−1より小さくてもよく、5×10−5S・m−1より小さくてもよく、または1×10−5S・m−1より小さくてもよい。共通の正孔輸送層の導電率は、5×10−8S・m−1より大きくてもよく、1×10−7S・m−1より大きくてもよく、5×10−7S・m−1より大きくてもよく、または1×10−6S・m−1より大きくてもよい。
【0020】
共通の正孔輸送層(HTL)は、OLEDディスプレイ内の複数のOLED画素に対して形成されてもよい。一実施形態では、共通のHTLは、OLEDディスプレイ内の複数の画素の全ての画素に割り当てられてもよい。同様に、カソードは、複数の画素の共通のカソードとして形成されてもよい。共通のカソードは、OLEDディスプレイ内の複数の画素の全ての画素に割り当てられてもよい。全ての個々の画素は、他の個々の画素のアノードに接触しない独自のアノードを有してもよい。
【0021】
さらに、アクティブOLEDディスプレイは、OLEDディスプレイに設けられた複数の画素の個々の画素を個別に駆動するように構成された駆動回路を有する。一実施形態では、個別に駆動するステップは、個々の画素に印加される駆動電流の個別の制御を含んでもよい。
【0022】
共通のHTLは、pドーパントで電気的にドープされた正孔輸送マトリックス(HTM)材料からなる。正孔輸送マトリックス材料は、2つ以上のpドーパントで電気的にドープされてもよい。HTM材料は、1つ以上のHTM化合物からなるが、正孔輸送材料という用語は、少なくとも1つのHTM化合物を含む全ての半導体材料に対して本出願を通じて使用されるより広い用語であることが理解されている。正孔輸送マトリックス材料は、1つ以上の有機化合物からなっていてもよい。
【0023】
真空エネルギー準位がゼロであることを示す絶対基準で表される電気的なpドーパントのLUMOエネルギー準位は、少なくとも150meV、少なくとも200meV、少なくとも250meV、少なくとも300meV、または少なくとも350meVであってもよい。HTM材料を形成する化合物の最高のHOMOエネルギー準位よりも高い。
【0024】
真空エネルギー準位がゼロであることを示す絶対基準で表される電気的なpドーパントのLUMOエネルギー準位は、HTM材料を形成する化合物の最高のHOMOエネルギー準位よりも高い600meV未満、550meV未満、500meV未満、450meV未満、または400meV未満であってもよい。
【0025】
HTMは、−4.8から−5.5eV、−4.9から−5.4eV、または−5.0から−5.3eVの範囲において真空エネルギー準位がゼロであることを示す絶対基準で表された最高占有分子軌道のエネルギーを有する化合物からなっていてもよい。
【0026】
共通正孔輸送層は、50nm未満、40nm未満、30nm未満、20nm未満、または15nm未満の厚さを有してもよい。
【0027】
一般的な正孔輸送層は、3nm以上、5nm以上、8nm以上、または10nm以上の厚さを有してもよい。
【0028】
アノードは、インジウムスズ酸化物(ITO)のような透明導電性酸化物(TCO)からなっていてもよい。または、アノードは、半透明のアノードに至る1つ以上の薄い金属層からなっていてもよい。別の実施形態では、アノードは、可視光に対して透明ではない厚い金属層からなっていてもよい。
【0029】
一実施形態では、真空エネルギー準位がゼロであることを示す絶対基準で表されるアノードの仕事関数は、共通のHTLにおいてpドーパントを形成する化合物の最高LUMOエネルギー準位よりも高い500meV未満、450meV未満、400meV未満、350meV未満、または300meV未満であってもよい。
【0030】
OLED画素は、正孔輸送層と発光層との間に設けられた電子阻止層(EBL)を含んでもよい。EBLは、共通のHTLおよびEMLと直接接触していてもよい。電子阻止層は、有機正孔輸送マトリックス材料からなる電気的にドープされていない層(換言すれば、電気的なドーパントを含まなくてもよい)であってもよい。共通の正孔輸送層の有機正孔輸送マトリックス材料の成分は、電子阻止層の有機正孔輸送マトリックス材料の成分と同じであってもよい。本発明の別の実施形態では、両方の正孔輸送マトリックス材料の成分が異なってもよい。
【0031】
EBLは、30nm以上、50nm以上、70nm以上、100nm以上、または110nm以上の層の厚さを有してもよい。
【0032】
EBLの厚さは、200nm未満、170nm未満、140nm未満、または130nm未満であってもよい。EBLと比較して、共通のHTLは、約1桁分薄くてもよい。
【0033】
電子阻止層を構成する各化合物は、共通の正孔輸送層の正孔輸送マトリックス材料を構成する化合物のHOMO準位よりも高い、真空エネルギー準位がゼロであることを示す絶対基準で表されるHOMO準位を有してもよい。電子阻止層の有機マトリックス材料は、正孔輸送層のマトリクス材料の正孔移動度以上の正孔移動度を有してもよい。
【0034】
共通のHTLおよび/またはEBLの正孔輸送マトリックス(HTM)材料は、少なくとも2つの第3級アミン窒素原子の孤立電子対を含む非局在化電子の共役系を含む化合物から選択されてもよい。
【0035】
ドープされた正孔輸送層および/または共通の正孔輸送層の正孔輸送マトリックス材料に適した化合物は、例えばトリアリールアミン化合物から公知の正孔輸送マトリックス(HTM)から選択されてもよい。ドープされた正孔輸送材料のHTMは、少なくとも2つの第3級アミン窒素原子の孤立電子対を含む非局在化電子の共役系を含む化合物であってもよい。例として、N4,N4’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N4,N4’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(HT1)、およびN4,N4,N4”,N4”−テトラ([1,1’−ビフェニル]−4−イル)−[1,1’:4’,1”−ターフェニル]−4,4”−ジアミン(HT4)が挙げられる。ターフェニルジアミンのHTMの合成は、WO2011/134458A1、US2012/223296A1またはWO2013/135237A1;1,3−フェニルジアミンのマトリックスは、例えばWO2014/060526A1に記載されている。これらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。多くのトリアリールアミンのHTMが市販されている。OLEDディスプレイの発光層は、複数のサブ領域を含んでもよく、個々のサブ領域は、複数の画素のうちの1つの画素に割り当てられる。ディスプレイの発光層のサブ領域に対応する個々の画素の発光層は、隣接する画素の発光層には接触しないことが好ましい。ディスプレイ製造工程では、個々の画素のEMLを含む有機層は、トップエミッション、ボトムエミッション、またはボトムエミッションのマイクロキャビティのいずれかにおいて、例えば、ファインメタルマスキング(FMM)、レーザ誘導熱画像処理(LITI)、および/またはインクジェット印刷(IJP)などの公知の方法によってパターン化されてもよい(例えば、Chung et al. (2006), 70.1: Invited Paper: Large-Sized Full Color AMOLED TV: Advancements and Issues. SID Symposium Digest of Technical Papers, 37: 1958-1963. doi: 10.1889/1.2451418; Lee et al. (2009), 53.4: Development of 31-Inch Full-HD AMOLED TV Using LTPS-TFT and RGB FMM. SID Symposium Digest of Technical Papers, 40: 802-804. doi: 10.1889/1.3256911)。RGBレイアウトが提供されてもよい。
【0036】
複数のOLED画素の場合、複数のOLED画素の有機層のスタックに設けられた電子輸送層によって共通の電子輸送層が形成されてもよい。
【0037】
共通の電子輸送層は、有機電子輸送マトリックス(ETM)材料を含んでもよい。さらに、共通の電子輸送層は、1つ以上のnドーパントを含んでもよい。ETMのための適切な化合物は、例えば、文献EP1,970,371A1またはWO2013/079217A1に開示されているような芳香族またはヘテロ芳香族構造の成分を含む。
【0038】
カソードは、低い仕事関数を有する金属または金属合金からなっていてもよい。TCOからなる透明のカソードも、当該技術分野において公知である。
【0039】
有機層のスタックは、2000g/mol未満の分子量を有する有機化合物からなっていてもよい。別の実施形態では、有機化合物は1000g/mol未満の分子量を有していてもよい。
【0040】
〔実施形態の説明〕
以下では、さらなる実施形態を、例を用い図面を参照してさらに詳細に説明する。図では以下に示すようになる。
【0041】
図1は、複数のOLED画素を有するアクティブOLEDディスプレイの概略図である。
【0042】
図2は、表2の線1(黒い四角)および表2の線2(白い四角)それぞれに従った装置による比較例1の基準の装置の電流密度対電圧のグラフ表示である。
【0043】
図3は、表2の線1(黒い四角)および表2の線2(白い四角)それぞれに従った装置による比較例1の基準の装置の量子効率対電流密度のグラフ表示である。
【0044】
図4は、表2の線1(黒い四角)および表2の線2(白い四角)それぞれに従った装置による比較例1の基準の装置の輝度対時間のグラフ表示である。
【0045】
図5は、表2の線1(黒い四角)および表2の線2(白い四角)それぞれに従った装置による比較例1の基準の装置の順方向電圧対時間のグラフ表示である。
【0046】
図1は、OLEDディスプレイ1に設けられた複数のOLED画素2、3、4を有するアクティブOLEDディスプレイ1の概略図を示す。OLEDディスプレイ1において、各画素2、3、4は、駆動回路(図示せず)に接続されたアノード2a、3a、4aに設けられている。アクティブマトリクスディスプレイのための駆動回路として機能することができる種々の装置が当該技術分野で知られている。一実施形態では、アノード2a、3a、4aは、TCO、例えばITOからなっていてもよい。
【0047】
カソード6は、電気的にドープされた正孔輸送層(HTL)7、電子阻止層(EBL)5、画素2、3、4に割り当てられ、電子輸送層(ETL)9に個別に設けられたサブ領域2b、3b、4bを有する発光層(EML)を含む有機スタックの上に設けられる。例えば、サブ領域2b、3b、4bは、カラーディスプレイ(R−赤、G−緑、B−青)用のRGBの組み合わせを提供することができる。アノード2a、3a、4aおよびカソード6を介して画素2、3、4に個別の駆動電流を印加することにより、表示画素2、3、4は独立して操作される。
【0048】
〔合成例〕
HT3の合成
【0049】
【化2】
【0050】
ステップ1:N−(3−フルオロ−4−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4−アミンの合成
4−ブロモビフェニル(20.0g、85.8mmol)、3−フルオロ−4−メチルアニリン(11.3g、90.1mmol)、Pd(OAc)(578mg、2.57mmol、3mol.%)、2,2’−ビス(ジフェニルフォスフィノ)−1,1’−ビナフタレン((BINAP)2.40g、3.86mmol、4.5mol.%)、およびCsCO(39.13g、0.12mol、1.4eq.)を窒素雰囲気下のフラスコに入れた。固体を無水1,4−ジオキサンに懸濁し、懸濁液を125℃で22時間還流した。室温で冷却した後、それをシリカで濾過し、パッドをジクロロメタンですすいだ。濾液を乾燥するまで蒸発させ、クロマトグラフィー(シリカ、ヘキサン/ジクロロメタンを2:1で溶出、対応するTLC系0.35におけるR)によって精製する。生成物を2つの主な破片に分離した:(−1)HPLCによる純度99.73%で7.55g(収率32%)、(−2)HPLCによる純度99.33%で3.75g(収率16%)。次のステップのために両方の破片を確保して混合した。
【0051】
HNMR(CDCl、400MHz):7.58(2H、dd、J=8.24および1.10Hz)、7.54(2H;m−AB;J=8.57Hz)、7.43(2H、t、J=7.75Hz)、7.31(2H、t、J=7.38Hz)、7.14(2H;m−AB;J=8.57Hz)、7.09(1H、t、J=8.47Hz)、6.81(2H、m)、5.86(1H、bs)、2.22(3H、s)ppm。
【0052】
13CNMR(CDCl、100MHz):164.18、163.29、161.36、143.03、142.95、142.86、141.21、134.34、132.43、132.37、129.31、128.44、127.22、126.95、118.42、117.52、117.38、114.02(d、J=2.93Hz)、105.10、104.89、14.12(d、J=3.24Hz)ppm。
【0053】
ステップ2:N4,N4”−ジ([1,1’−ビフェニル]−4−イル)−N4,N4”−ビス(3−フルオロ−4−メチルフェニル)−[1,1’:4’,1”−ターフェニル]−4,4”−ジアミンの合成
4,4”−ジブロモ−1,1’:4’,1”−ターフェニル(7.33g、18.9mmol)、N−(3−フルオロ−4−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4−アミン(11.0g、39.7mmol、2.16eq.)、Pd(dba)(217mg、0.57mmol、2.0mol%)、PtBu(115mg、0.57mmol、2.0mol%)、およびKOtBu(6.36g、56.7mmol、3.0eq)を窒素雰囲気下のフラスコに入れる。固体を無水トルエンに懸濁し、懸濁液を80℃で22時間還流した。室温で冷却した後、それをシリカで濾過し、パッドをテトラヒドロフランで十分にすすぎ、濾液を乾燥するまで蒸発させる。得られた固体を還流メタノール(150mL)中で20分間粉砕し、懸濁液を熱濾過し、乾燥後、表題の化合物14.9g(収率98.9%)を、HPLCによる純度98.92%で得た。次いで生成物を昇華させて、HPLCによる純度99.51%を有する黄色非晶質固体を得た。
【0054】
元素分析:C85.88%(原則86.13%)、H5.60%(原則5.42%)N3.61%(原則3.59%)
ガラス転移開始:Tg=114℃(DSC10K/minから)、溶解ピークは観察されなかった。
【0055】
〔装置の例〕
比較例1
先行技術によるアクティブOLEDディスプレイは、次の層の次の真空堆積によって透明のITOアノード(厚さ90nm)に設けられたガラス基板上に調製された:pドープされたHTL(10nm、8wt.%のPD2をドープされたHT1);EBL(HT1、120nm);蛍光のEML(ABH113:SFC社製のNUBD370、韓国、20nm、97:3wt.%);ETL(ET1:LiQ、36nm、50:50wt.%);カソード(アルミニウム、100nm)。得られた結果を表2の1行目に示す。
【0056】
実施例1
比較例1を、3wt.%のPD2をドープされたHT2からなる、pドープされたHTLで再現した。得られた結果を表2の2行目に示す。
【0057】
実施例2
実施例1を、HT2の代わりにHT3を用いて再現した。得られた結果を表2の3行目に示す。
【0058】
実施例3
比較例1を、7wt.%のPD2をドープされたHT4からなるpドープされたHTLで再現した。得られた結果を表2の4行目に示す。
【0059】
比較例2
実施例1および2を、HT2またはHT3の代わりにHT1を用いて再現した。得られた結果を表2の5行目に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
次に、表2で使用される用語に関して、さらなる説明が提供される。
【0063】
用語「HOMO」は、溶液中の分子のサイクリックボルタンメトリーから得られ、ゼロエネルギー準位として扱われる真空に対する物理的な絶対基準で表される最高占有分子軌道エネルギー準位を示す。所定のHOMO準位は、式EHOMO=−q*Vcv−4.8eVに従って(標準酸化還元対のフェロセニウム/フェロセン(Fc/Fc)の電位をゼロに等しいとする目盛で以下に特定され、表されたサイクリックボルタンメトリー(CV)によって測定された)酸化還元電位Vcvから算出された。ここで、q*は電子(le)の電荷を表す。
【0064】
酸化還元電位は、例えば、定電位装置Metrohm PGSTAT30およびソフトウェアMetrohm Autolab GPESを室温で用いて、サイクリックボルタンメトリーによって決定され得る。被験物質の0.1MTHF(テトラヒドロフラン)溶液を乾燥させ、アルゴン雰囲気下で、0.1Mテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェート支持電解質を用いて、白金作用電極の間に、塩化銀で覆われたシルバーワイヤーで構成され、100mV/sのスキャンレートで測定溶液に直接浸漬されるAg/AgCl擬似標準電極(Metrohm銀棒電極)を用いて、特定の化合物に与えられた酸化還元電位を、脱気されたアルゴン下で測定した。測定では、最初の実験は作用電極上に設定された電位の最も広い範囲で行われ、その後、その範囲は次の実験内で適切に調整された。最後の3回の実験は、フェロセン(0.1M濃度)を標準として添加して行われた。標準的なFc/Fc酸化還元対について観察されたカソード電位およびアノード電位の平均を差し引いた後の、試験化合物のカソードのピークおよびアノードのピークに対応する電位の平均は、最後に上記に記録された値を与えた。記録された比較化合物と同様に、研究された全ての化合物は、明確で可逆的な電気化学的挙動を示した。または、ジクロロメタンを溶媒として使用することができる。酸化還元電位を電子親和力(EA)およびイオン化電位(IP)に変換するために、しばしば単純な法則が使用される:IP(eV)=4.84eV+e*Eox(Eoxは、ボルト対フェロセン/フェロセニウム(Fc/Fc))で与えられ、EA(eV)=4.84eV+e*Ered(Eredは、ボルト対Fc/Fcで与えられる)、それぞれ(B.W. D'Andrade, Org. Electron. 6, 11-20 (2005))、e*は元素の電荷である。例え厳密に正しくなくても、用語「HOMOのエネルギー」E(HOMO)と「LUMOのエネルギー」E(LUMO)とをイオン化エネルギーと電子親和性との同義語として、それぞれ使用することは一般的である(Koopmans定理)。
【0065】
用語「μθ」は、ゼロ電界移動度を示す。移動度は、静電容量対周波数の軌道からのアドミッタンス分光法で決定され、文献(Nguyen et al)に詳細に記載されている。アドミッタンス分光法による有機装置における電荷キャリア移動度の決定:α−NPDにおける正孔移動度の応用、Physical Review B 75.7 (2007): 075307。
【0066】
正孔移動度の測定に用いられた装置は、ITO(100nm)/HT1:PD2(10nm)/評価されたHTM(700nm)/HT1:PD2(10nm)/Au(10nm)/Al100nm)の層構造を有する。ITOアノードとAu/Alカソードとのオーム接触を確実にするために、HT1:PD2(重量比90:10)の10nmの正孔注入層を設けた。幾何学的な静電容量の測定は、HILなしで上記のように与えられたサンプルを用いて行われた。以下の条件およびパラメータが適用された:室温、振幅:20mV、周波数:110Hz〜2MHz。電圧範囲は、10から50mA/cmの範囲の関連する電流密度での移動度の評価を可能にするために適切に選択された。
【0067】
「導電率」欄は、表2の次の欄に与えられた濃度のPD2ドーパントを含む選択されたマトリックスの薄膜上に、例えばWO2013/135237A1に記載されている標準的な4点法によって測定された導電率を示す。導電率の測定のために準備された薄膜を、ITO接点で覆われたガラス基板上に真空堆積した。導電率は室温で評価した。
【0068】
QEは量子効率を表す;LT97は、与えられた電流密度で動作する装置の輝度内の時間幅を表し、初期値の3%を超えて変化していない。「電圧上昇」は、OLEDの別の重要な動作特性である。定電流で動作する安定した装置では、電圧は一定のままである。試験装置の電圧が、所望の寿命の間にその初期値の5%を上回る場合、試験された材料がその装置を不安定にする兆候である。
【0069】
図2から図5は、ここで提案されたOLEDが、実施例1から3のHTLよりも著しく高い伝導度を有する酸化還元ドープされたHTLを含む比較例1の従来技術のOLEDと同じ性能を有し、ディスプレイにおけるクロストークを抑制できることを示している。本開示のディスプレイは、十分なドーパント濃度を有する酸化還元ドープされ電気的にドープされた正孔輸送層による、抑制されたクロストークを示し、また、装置の良好な安定性と、アノードおよび/または隣接する有機層からの良好な電荷注入とを可能にするが、低い電荷キャリア移動度および/または低い実際の電荷キャリア濃度に起因して、著しく低い導電性を有するものと思われる。
【0070】
5.10−4cm/Vs以上の正孔移動度を有するHT1マトリックスを含む最先端のOLEDにおいて導電率を低下させる試みは、比較例2で行ったように、必要な動作安定性を欠いている装置をもたらした。これらの結果は、驚くべきことに、酸化還元pドーパントの十分な濃度は、良好な電圧を保持するためだけでなく、装置の安定性のためにも重要であることを示した。さらに、低い正孔移動度(5.10−4cm/Vs以下)を有するマトリックスを含むHTLの導電率が低いにもかかわらず、酸化還元pドーパントとの組み合わせにおいて、これらのマトリックスは、驚くべきことに、複数の画素に共有された共通のHTLを含む最先端のディスプレイにおける画素として用いられるならば、同等以上の電圧および他の性能のパラメータを有するOLEDの構成を、本発明のOLEDがその低い導電率のHTLにより画素のクロストークを顕著に抑制するという実質的な利点を有する、高い導電率のHTLを含む最先端の装置として与えることが実証された。
【0071】
前述の説明および特許請求の範囲に開示された特徴は、別々およびそれらの任意の組み合わせの両方で、開示の態様をその多様な形態で実現するための材料であってもよい。
【0072】
本出願を通じて使用される重要な符号および略語:
CV サイクリックボルタンメトリー
DSC 示差走査熱量測定
EBL 電子阻止層
EIL 電子注入層
EML 発光層
eq. 同等
ETL 電子輸送層
ETM 電子輸送マトリックス
Fc フェロセン
Fc フェロセニウム
HBL 正孔阻止層
HIL 正孔注入層
HOMO 最高占有分子軌道
HPLC 高性能液体クロマトグラフィー
HTL 正孔輸送層
p−HTL pドープされた正孔輸送層
HTM 正孔輸送マトリックス
ITO インジウムスズ酸化物
LUMO 最低非占有分子軌道
mol.% モル%
NMR 核磁気共鳴
OLED 有機発光ダイオード
OPV 有機太陽電池
QE 量子効率
Rf TLCにおける遅延要素
RGB 赤−緑−青
TCO 透明導電性酸化物
TFT 薄膜トランジスタ
Tg ガラス転移温度
TLC 薄層クロマトグラフィー
wt.% 重量%
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1】複数のOLED画素を有するアクティブOLEDディスプレイの概略図である。
図2】表2の線1(黒い四角)および表2の線2(白い四角)それぞれに従った装置による比較例1の基準の装置の電流密度対電圧のグラフ表示である。
図3】表2の線1(黒い四角)および表2の線2(白い四角)それぞれに従った装置による比較例1の基準の装置の量子効率対電流密度のグラフ表示である。
図4】表2の線1(黒い四角)および表2の線2(白い四角)それぞれに従った装置による比較例1の基準の装置の輝度対時間のグラフ表示である。
図5】表2の線1(黒い四角)および表2の線2(白い四角)それぞれに従った装置による比較例1の基準の装置の順方向電圧対時間のグラフ表示である。
図1
図2
図3
図4
図5