【文献】
NEOBEE(登録商標)MEDIUM CHAIN TRIGLYCERIDES,Stepan Lipid Nutrition,2012年 3月,p.1-6
【文献】
Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine,2012年,Vol.2012, Article ID 139140,p.1-6,doi:10.1155/2012/139140
【文献】
CONTRERAS CARLOS M,ANXIOLYTIC-LIKE EFFECTS OF HUMAN AMNIOTIC FLUID AND ITS FATTY ACIDS IN WISTAR RATS,BEHAVIOURAL PHARMACOLOGY,2011年10月,VOL:22, NR:7,PAGE(S):655 - 662,URL,http://dx.doi.org/10.1097/FBP.0b013e32834aff3d
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記組成物が、飲料、マヨネーズ、マーガリン、低脂肪スプレッド、乳製品、チーズ・スプレッド、プロセスチーズ、乳製品デザート、フレーバーミルク、クリーム、発酵乳製品、チーズ、バター、コンデンスミルク製品、アイスクリームミックス、大豆製品、低温殺菌液状卵、ベーカリー製品、菓子製品、菓子バー、チョコレートバー、高脂肪、液状エマルジョン、噴霧乾燥粉末、凍結乾燥粉末、HUTプリン(HUT pudding)、低温殺菌プリン、ゲル、ジェリー、ヨーグルト、又は脂肪ベースのフィリング若しくは含水フィリングを有する食品の形態である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0022】
中鎖脂肪酸
中鎖脂肪酸(MCFA)は、6〜10個、6〜11個、又は6〜12個の炭素原子から構成された脂肪酸を指す。
【0023】
特定の実施形態では、MCFAは、8〜10個の炭素原子を有し得る。特に、MCFAはデカン酸又はオクタン酸であり得る。
【0024】
デカン酸(Deconoic acid)は、カプリン酸としても知られる式CH
3(CH
2)
8COOHの飽和脂肪酸である。本明細書では、C10とも呼ばれる。
【0025】
オクタン酸は、カプリル酸としても知られる式CH
3(CH
2)
6COOHの飽和脂肪酸である。本明細書では、C8とも呼ばれる。
【0026】
MCFAは、トリグリセリド、ジアシル−グリセリド、モノアシル−グリセリド、リン脂質、リゾリン脂質、コレステロール、及び糖脂質の形態であり得る。
【0027】
MCFAは、トリグリセリドの形態であってよい。特に、MCFAは、中鎖トリグリセリド(MCT)の形態であってよい。すなわち、MCFAは、トリグリセリドの3つの脂肪酸部分のそれぞれがMCFAであるトリグリセリドの形態であってよい。
【0028】
特に、MCFAは、それぞれの脂肪酸部分が同数の炭素を含むMCTの形態であり得る。例えば、MCTは、3つのデカン酸部分又は3つのオクタン酸部分を含み得る。
【0029】
MCTは、例えば、ヤシ油及びココナツ油中に少量存在する。デカン酸及びオクタン酸は、それぞれココナツ油の脂肪酸組成の約5〜8%及び約4〜10%を構成する。
【0030】
本発明者らは、対象に対しMCTを投与することで、インスリン受容体基質−1(IRS−1)のリン酸化が増大することを見出した。
【0031】
IRS−1は、PI3KによるAktのインスリン様成長因子(IGF)受容体活性化を介在するアダプタータンパク質である。Aktは、グルコース代謝、アポトーシス、及び増殖などといったエネルギー及び代謝プロセスのマスタースイッチレギュレーターとして機能する。
【0032】
したがって、理論に束縛されることを望むものではないが、MCFA及びMCTは、ミトコンドリアの活性を変化させることにより、例えば、IRS−1リン酸化反応、特にIRS−1のセリン312のリン酸化を増大させることにより、不安神経症を治療及び/又は予防し得る。
【0033】
ある種の実施形態では、MCFA、MCT、又は組成物は、アルギニン及び/又は魚油と組み合わせては投与されない。
【0034】
組成物
第2の態様では、本発明は、不安神経症の治療及び/又は予防に使用するための、本発明の第1の態様で定義したとおりのMCFAを含む組成物を提供する。
【0035】
組成物は、本発明の第1の態様に定義するとおりの複数種のMCFAを含み得る。すなわち、組成物は、6〜10個、6〜11個、又は6〜12個の炭素原子から構成された脂肪酸を含み得る。
【0036】
特定の実施形態では、組成物は、8〜10個の炭素原子から構成されたMCFAを含み得る。
【0037】
組成物は、1日あたり少なくとも約5g/L〜150g/Lデカン酸の用量を送達するのに好適な形態であってよい。用量は、1日あたり約5g/L、10g/L、15g/L、20g/L、30g/L、40g/L、50g/L、60g/L、70g/L、80g/L、90g/L、100g/L、110g/L、120g/L、130g/L、140g/L、150g/L、175g/L、200g/L、225g/L、250g/L、又は500g/Lデカン酸であってよい。
【0038】
組成物は、1日あたり少なくとも約5g/L〜150g/Lオクタン酸の用量を送達するのに好適な形態であってよい。用量は、1日あたり約5g/L、10g/L、15g/L、20g/L、30g/L、40g/L、50g/L、60g/L、70g/L、80g/L、90g/L、100g/L、110g/L、120g/L、130g/L、140g/L、150g/L、175g/L、200g/L、225g/L、又は250g/Lオクタン酸であってよい。
【0039】
本発明者らは、MCT形態のオクタン酸を投与することで、血漿及び脳においてケトンレベルが急上昇することを見出した。本発明者らは、MCT形態のデカン酸を投与することで、血漿及び脳においてケトンレベルが長期にわたって上昇することも見出した。理論に束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、in vivoではオクタン酸がより速やかに代謝されるためである可能性があると考えている。
【0040】
したがって、組成物は、デカン酸とオクタン酸とを含み得る。
【0041】
組成物は、およそ等しい割合でデカン酸とオクタン酸とを含み得る。すなわち、デカン酸のオクタン酸に対する比は、約1:1重量/重量であり得る。
【0042】
組成物は、デカン酸のオクタン酸に対する比が高くてもよい。例えば、デカン酸対オクタン酸比は、約2:1、3:1、4:1、5:1、又は10:1重量/重量であってよい。
【0043】
特定の実施形態では、デカン酸対オクタン酸比は、約3:2重量/重量であり得る。
【0044】
組成物は、遊離形態又は実質的に遊離形態のモノ又は多価不飽和脂肪酸であり得る。
【0045】
組成物のケトン比(ketogenic ratio)は0.2〜0.3:1であり得る。他の実施形態では、この比は0.5:1又は1:1又は5:1であり得る。「ケトン比」は、炭水化物及びタンパク質の合計重量に対する脂質重量を指す。
【0046】
組成物は、錠剤、糖衣錠、カプセル、ゲルキャップ、粉末、顆粒、溶液、エマルジョン、懸濁液、被覆粒子、噴霧乾燥粒子、又はピルの形態とすることができる。
【0047】
組成物は、水で再構成することにより使用可能なものであってよい。組成物は、水中油型エマルジョンであってよい。
【0048】
組成物は、食品物質に挿入又は混ぜ込まれ得る。組成物は、食品、例えば、ヒト用の食品の形態であり得る。
【0049】
組成物は、栄養補助食品の形態であってもよい。栄養補助食品とは、対象の普段の食生活を補助することを意図する製品を指す。
【0050】
組成物は完全栄養製品の形態であってよい。完全栄養製品とは、対象により消費される単独型の物品、又は食事、又は治療食を意図する製品を指す。
【0051】
組成物は、飲料、マヨネーズ、マーガリン、低脂肪スプレッド、乳製品、チーズ・スプレッド、プロセスチーズ、乳製品デザート、フレーバーミルク、クリーム、発酵乳製品、チーズ、バター、コンデンスミルク製品、アイスクリームミックス、大豆製品、低温殺菌液状卵、ベーカリー製品、菓子製品、菓子バー、チョコレートバー、高脂肪、液状エマルジョン、噴霧乾燥粉末、凍結乾燥粉末、HUTプリン(HUT pudding)、低温殺菌プリン、ゲル、ジェリー、ヨーグルト、又は脂肪ベースのフィリング若しくは含水フィリングを有する食品の形態であり得る。
【0052】
組成物は、乳児用調製粉乳であってもよい。
【0053】
一般論として、組成物の投与は、経口経路又は別の経路により胃腸管へと投与するというものであってよく、例えば、投与は胃経管栄養法によるものでもあり得る。
【0054】
組成物は、MCFAに富んだものであり得る。特に、組成物は、オクタン酸及び/又はデカン酸に富んだものであり得る。
【0055】
「富んだ」とは、MCFAが組成物に添加されていることを意味する。例えば、MCFAは組成物に混ぜ込まれ(すなわち、添加され)得る。
【0056】
一実施形態では、食品又は食品抽出物がもともとMCFAを含有する場合、「MCFAが富化されている」とは、富化されている食品又は食品抽出物が、食品又は食品抽出物において天然に生じるよりも多量のMCFAを含むことを意味する。
【0057】
例えば、富化組成物、食品、又は食品抽出物は、同等の天然の組成物、すなわち富化させていない食品又は食品抽出物の少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、又は少なくとも100倍超のMCFAを含み得る。
【0058】
本発明は、不安神経症の治療及び/又は予防用の組成物の製造における、本明細書で定義されるとおりのMCFAの使用も提供する。
【0059】
一態様では、本発明は、不安神経症の治療及び/又は予防用の薬剤の製造におけるMCFAの使用に関する。かかる薬剤は、医薬的に許容され得る1種以上の好適な賦形剤(carriers excipients)を含み得る。
【0060】
本発明は、約3:2重量/重量比のデカン酸対オクタン酸比を有する、組成物も提供する。
【0061】
デカン酸及びオクタン酸はMCTの形態であり得る。MCTの脂肪酸部分は、同数の炭素を含み得る。
【0062】
組成物は、本明細書で定義される形態であってよい。
【0063】
不安神経症
不安神経症は、精神的な混乱(inner turmoil)を伴う不快な状態であり、多くの場合、落ち着きのない振る舞い、身体的愁訴及び反芻などの神経質な言動を伴う。不安神経症は、予想されるイベントをひどく恐れる、主観的な好ましくない感覚であり、通常であれば、主観的にのみ脅迫としてみなされる状況に対する過剰反応として一般化され、気にされない、恐怖感、心配、及び不安感として記載され得る。
【0064】
認識されている不安障害のタイプは、パニック障害、社会不安症、限局性恐怖症、及び全般性不安障害など複数ある。症状は不安神経症のタイプによって異なるものの、一般的に:パニック感、恐怖感、及び不安感;睡眠障害;手及び/又は足の冷え又は発汗;息切れ;心臓の動悸;口渇;手足のしびれ又は刺痛;悪心;筋肉の緊張及びめまい;が挙げられる。
【0065】
不安神経症は、一般的に、有効な質問表によって分析される。例えば、一般的な健康についての質問表は、概ね中等度の身体症状及び不安症状についての、60個の質問から構成される。30項目及び12項目の質問表も一般的に使用される。患者の健康状態についての質問表(PHQ−9)及び疫学的研究センターによる抑うつスケール(CES−D)は、不安神経症スケールの更なる例である。
【0066】
臨床医は、通常、具体的な不安神経症発症環境及び応答について尋ねる短時間の問診によって不安神経症を診断する。これらは、不安神経症を、社会不安神経症、全般性不安障害、パニック障害、又は恐怖性障害などのサブタイプに分類するのに使用される。
【0067】
不安神経症は、人見知り、社会不安症、全般性不安障害、全般性不安、恐怖症、パニック障害、強迫神経症、又は外傷後ストレス障害であり得る。
【0068】
人見知りは、見知らぬ人々と接したときに子供が経験するストレスの一形態である。症状としては:見知らぬ人に対し無口になり、ジロジロ見るようになる、泣くことにより又はその他の発声により口頭で抵抗する、及び保護者の後ろに隠れる等を挙げることができる。
【0069】
社会不安障害は、社会状況及び取り巻く人々に対し絶え間なく恐怖を感じるというものである。そのうち最も一般的なものが不安障害である。
【0070】
全般性不安障害(GAD)は、過剰で制御不能な、多くの場合、イベント又はアクティビティ(activity)について予想される非理性的な心配/懸念により特徴づけられる不安障害である。各個体は、多くの場合、疲労感、そわそわ感、頭痛、悪心、手足の無感覚、筋肉の緊張、筋肉痛、嚥下困難、呼吸困難の発作、集中力の低下、振戦、けいれん、易怒性、興奮、発汗、情緒不安定、不眠症、体のほてり、並びに発疹、及び不安の完全な制御ができない、などの様々な身体症状を示す。
【0071】
The Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(2013)は、GADを以下の基準により定義している:
A.様々なイベント又はアクティビティ(仕事又は学校での成績など)について、数日以上少なくとも6ヶ月以内にわたって過剰な不安感及び心配(不安予想)が生じる。
B.当人が心配を制御することを困難に感じていることを自覚している。
C.不安感及び心配が、次の6とおりの症状のうちの3つ(以上)を伴っている(数日〜6ヶ月以内にわたって、少なくとも幾つかの症状が存在している):
情動不安又は興奮状態若しくは緊張状態。
易疲労性。
集中力の欠如又は頭の中が真っ白になる。
易刺激性。
筋肉の緊張。
睡眠障害(入眠困難若しくは中途覚醒、又はレストレス(restless)、満足感の得られない睡眠)。
D.不安感、心配、又は身体症状が、社会領域、職業領域、又はその他の機能的に重要な領域において臨床的に有意な悩み又は障害を生き起こしている。
E.狼狽が、物質による生理作用(例えば、薬物乱用、薬物療法)又は別の医学的状態(例えば、甲状腺機能亢進症)によるものではない。
F.障害が別の精神障害(例えば、パニック障害のパニック発作が発症することについての不安又は心配、社会不安障害・社会恐怖症における否定的評価、強迫神経症における汚染又はその他の強迫観念、分離不安障害における愛着対象からの分離、外傷後ストレス障害における衝撃的な出来事のリマインダー、神経性食欲不振症における体重増加、身体症状障害における身体愁訴、身体醜形障害における外見上の欠陥の認識、病気不安症における重病の罹患、あるいは統合失調症又は妄想性障害における妄想的信念の内容)により良好に説明されるものではない。
【0072】
恐怖症(恐怖症性不安障害)としては、特定の刺激又は状況で恐怖及び不安がトリガーされる全ての症例が挙げられる。患者は、典型的には、彼らの恐れる対象に遭遇することにより恐ろしい結果がもたらされると予測する。対象には、動物から、場所、体液、特定の状況に至るまであらゆるものが該当し得る。
【0073】
患者が強い恐怖及び憂慮に関し軽度の発作に罹患しているとき、パニック障害は、多くの場合、身震い、身体の揺れ、せん妄、めまい、悪心、及び/又は呼吸困難を特徴とする。これらのパニック発作は突然生じ、ピークは10分以内であるものの、数時間にわたって持続する場合もある。発作はストレス、恐怖、又は更には興奮によってもトリガーされる場合があり;具体的な原因が常に明らかなものではない。
【0074】
強迫神経症は、胸騒ぎ、憂慮、恐怖、又は心配(強迫観念)、関連する不安(脅迫衝動)の低減を目的とした反復行動、あるいはこのような強迫観念及び衝動脅迫の組み合わせをもたらす侵入思考を特徴とする不安症である。
【0075】
ヒトは、性的暴行、戦争、重いけが、又は死に直面した恐怖などといった1つ以上のトラウマ体験にさらされた後に外傷後ストレス障害を発症し得る。この診断は、動揺を生じるフラッシュバックの再発、イベント記憶の回避又はかかる記憶に対する麻痺、並びに過覚醒などの症状群が、トラウマ体験の発生から一ヶ月以上経過後も継続している場合に付くことがある。
【0076】
本発明によって治療及び/又は予防される不安神経症は、年齢関連性の認知低下に関係するものではない。
【0077】
治療及び/又は予防
「治療する」ことは、不安神経症に関係する少なくとも1つの症状を減弱、低減、又は改善させることを目的として、及び/又は不安神経症の進行を遅らせる、低下させる、若しくは阻止することを目的として、本明細書に記載のMCFA又は組成物を、不安神経症を示している対象に投与することを意味する。
【0078】
「予防する」ことは、不安神経症に関係する少なくとも1つの症状の発症の低減又は予防のため、本明細書に記載のとおりのMCFA又は組成物を、何ら症状を示していない対象に投与することを意味する。
【0079】
不安神経症の症状は、上記のとおりの質問表及び問診により決定され得る。
【0080】
対象
対象は、ウシ、イヌ、ヤギ、シカ、ウマ、ネコ、ヒト、ヒツジ、ブタ及び霊長類などの哺乳動物を挙げることができるが、これらに限定されない。好ましくは、対象は、ヒトである。
【0082】
様々な実施形態において、対象は、不安神経症である可能性があるか、その疑いがあるか、又はそのリスクがある。
【0083】
実施例により本発明を更に説明するが、これらの実施例は、当業者が本発明を実施するのに役立てるために提供することを意味するものであり、本発明の範囲を限定することを決して意図するものではない。
【実施例】
【0084】
実施例1−MCTは不安レベルを低減する
生得的な不安感について、100匹のラットの表現型を高架式十字迷路により決定し、三群:重度不安群(HA)、正常不安群(NA)、及び軽度不安群(LA)、に分けた(
図1を参照)。
【0085】
MCT(C8:C10)は、側坐核の酸素の消費に関しては、対照食と比較して何の効果も有しなかったものの、不安神経症の表現型間(HA対LA)で明らかな違いが見られた(
図2を参照)。
【0086】
2週間のMCT投与により、ストレスの加えられていないラットにおいて、すなわち主に軽度不安群において、不安レベルは改善した。
【0087】
重度不安群においては、MCTにより社会的相互作用が改善した(
図4を参照)。
【0088】
治療介入後1週間及び3週間でケトンレベルはわずかに上昇し(
図5を参照)、線条体ホモジネートにおいてはIRS−1のリン酸化もMCTによる治療介入後に上昇していた(
図6を参照)。
【0089】
これらの結果として、生得的な不安感は、ミトコンドリア機能と直接関係することが示唆された。特に結果は、MCTの短期投与が、おそらくはIRS−1経路を介し不安神経症を軽減することを示す。
【0090】
2週間のMCT摂取後、ラットの大脳皮質において、複合体Iのタンパク質発現は増加していた(
図7を参照)。
【0091】
実施例2−オクタン酸又はデカン酸投与後の血漿及び脳のケトンレベルの経時的な動態の違い
血漿ケトンレベルは、オクタン酸の摂取後に、デカン酸の摂取と比較して急速に上昇した(
図8Aを参照)。
【0092】
血漿β−HBは、オクタン酸摂取について脳β−HBと同様の動態を示し、デカン酸をより急速に増加及び消化させ、長期の増加をもたらした(
図8Bを参照)。
【0093】
方法
動物の表現型決定及び食事介入
100匹の雄性Wistarラットを、ボール紙の筒及びティッシュを十分に入れた標準的なラットケージにそれぞれ収容し、不断給餌及び不断給水した。1週間慣れさせた後、全てのラットを計量し、高架式十字迷路試験によってベースライン不安について試験した。
【0094】
高架式十字迷路(EPM)装置は4つのアームから構成され、うち2つのアームでは壁がないのに対し、他2つのアームでは両側面及び終端に壁がある。各アームの長さは50cmとする。試験当日、低照度下(オープンアームでは15lux及びクローズアームでは5lux)でラットを迷路の中央部に配置し、その行動を5分間観察した。評価したパラメーターには:迷路のオープンアーム、クローズアーム、及び中央部分におけるラットの滞在時間が含まれる。毛づくろい、硬直、及び体を伸ばした状態の警戒姿勢(stretch−attend postures)などの様々な行動も評価した。
【0095】
3日後、EPM動物には社会性行動試験を行った。試験セッション前に、3日間にわたって30分間新しいケージに実験動物を収容し、慣らした。試験日に、実験動物の体重を合わせ、2群の対として新しいケージに収容し、30分間にわたって十分に対面(interact)させた。この対面時間中の実験動物の行動をビデオに記録した。
【0096】
ラットを、不安神経症によって:重度群、中等度群、軽度群の三群に分けした。重度、中等度、軽度不安神経症ラットを更に摂取群に分けた。15日間にわたり、重度、中等度、及び軽度不安神経症の各16匹のラットには、5%中鎖トリグリセリド(40:60のオクタン酸トリグリセリド及びデカン酸トリグリセリド)を含む飼料を与え、それぞれ15匹のラットには、特殊配合された動物用飼料によって対照飼料(5%ヒマワリ油)を与えた。飼料は、標準的な飼料として、通常の脂肪、通常の炭水化物、及び通常のタンパク質比を含有する動物用飼料の形態とした。被検飼料を1週間摂取させた後、以下の一連の試験を行い実験動物を情動行動について評価した。明暗箱試験、社会性行動試験、及び社会優位性試験の間には2日間の休養期間を設けた。体重を確実に維持させるため、ラットは毎週計量した。15日後、ラットを屠殺し、RNA解析及びタンパク質解析のため脳を採取した。
【0097】
明暗箱試験
明暗箱は、3つの区画を有する長矩形の形状の装置から構成される。1つのチャンバーは床が固く明るい。別のチャンバーは床が滑りやすく暗い。これらの2つのチャンバーは、より小さく、薄暗い、中央のチャンバーにより分離されている。実験動物を中央のチャンバーに収容し、慣れさせた。慣れさせた後、実験動物には5分間にわたり他の2つのチャンバーを自由に探索させた。実験動物が明暗チャンバーにおいて滞在する時間の長さと、チャンバーに入った回数とを記録した。この試験では、実験動物における不安神経症の特質の程度を評価することの見込みを提供する。「不安」な動物は、明箱に滞在する時間が短く、明箱に入る回数が少ない。
【0098】
社会性行動試験
実験動物を3つの箱から構成される装置に入れ、物体を調査するか、収容されている幼若個体を調査するか10分間選択させる。幼若個体は、実験動物の攻撃性を誘発させないよう25〜32日齢とした。ストレスレベル及び不安レベルの低減を試験する1日前に、幼若個体を装置及び箱に慣れさせた。実験中、対象は中央の箱に入れ、他の2つの箱には侵入させずに5分間環境に慣れさせた。次にドアを取り除き、動物には10分間自由に2つの箱を行き来させた。幼若個体を調査するのに費やした時間と、物体を調査するのに費やした時間を記録し、処理について知らない観察者によってスコアを付け、パーセンテージに変換した。実験動物は、この時の社会的選好が50%を超過するように選定された。次に実験動物を飼育ケージに30分間戻す。試験間インターバル後、実験動物を装置に戻す。このとき、物体の代わりに新奇幼若個体をチャンバーに配置する。動物を中央の箱に入れ、新奇幼若個体を調査するか(物体の代わり)、前回の試験からの幼若個体を調査するかの選択肢を与える。強い社会性記憶を備えている実験動物は、試験時間の5分間超にわたるより長時間を新奇幼若個体の調査に費やした。
【0099】
血漿ケトン及び脳ケトン
処理の開始から7日間後、マウス尾部静脈より採血し、屠殺中に胴体の血液を回収した。血液を遠心分離し、比色キット(Cayman,US)を使用してβ−ヒドロキシ酪酸について血漿サンプルを分析した。脳ケトン測定の際、サンプル調製は、50μL脳組織懸濁液(pH2)の液体/液体抽出と、MSTFA(シリル化)による抽出物の誘導体化を含んだ。BHBの分析はGC/MSにより行った。内部標準13C2−3−OH−But,m/z 233(3−OH−But),m/z 118(13C2−3−OH−But),2〜24μg/mL(水)により校正;LOQ:2μg/mL,LOD:0.7μg/mL。
【0100】
ウェスタンブロット
組織を、10%スクロースとプロテアーゼ阻害剤とを含む200mLトリス緩衝液(pH7.4)に懸濁し、超音波処理し、使用までの間−80℃で維持した。BCAアッセイによりタンパク質量を評価し、希釈した後、ゲルで分離した。タンパク質をニトロセルロース膜に転写し、次に飽和させ(5% BSA)、一次抗体(ウサギPSD−95)及び二次抗体とともにインキュベートした。
【0101】
ELISA
線条体組織からタンパク質抽出物を調製した。IRS−1及びリン酸化IRS−1(pS312)に対する抗体を含むキット(Life Technologies)を使用して、サンドイッチELISAにより全タンパク質量及びリン酸化タンパク質を検出(probe)し比較した。
【0102】
経口摂取したオクタン酸及びデカン酸(deconoicacid)の時間ダイナミクス(temporal dynamics)試験
対照ラットには上記のとおり、ヒマワリ油を強制経口投与した。MCT8及びMCT10にはそれぞれオクタン酸又はデカン酸を強制経口投与した。ラットを屠殺し、上記のとおり、胴体の血液、門脈血、及び脳、膵臓、及び肝臓を回収した。
【0103】
上記明細書で言及した全ての出版物は、参照により本明細書に援用される。本発明に記載する方法及びシステムの様々な修正及び変更は、本発明の範囲及び主旨から逸脱することなく、当業者には明白であろう。本発明について特に好ましい実施形態に関連して記載してきたが、特許請求する本発明は、このような特定の実施形態に不当に限定されるものではないことを理解すべきである。事実、記載された本発明を実施するための様態の様々な修正は、分子生物学、細胞生物学、又は関連分野の当業者に明らかであり、以下の特許請求の範囲内にあることが意図される。