特許第6669845号(P6669845)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6669845
(24)【登録日】2020年3月2日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】感染抑制装置
(51)【国際特許分類】
   B64D 11/06 20060101AFI20200309BHJP
   B64D 13/06 20060101ALI20200309BHJP
   B60N 2/56 20060101ALI20200309BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20200309BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20200309BHJP
   F24F 7/00 20060101ALI20200309BHJP
   F24F 9/00 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   B64D11/06
   B64D13/06
   B60N2/56
   A61L9/00 C
   A61L9/20
   F24F7/00 A
   F24F9/00 B
   F24F9/00 F
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-241094(P2018-241094)
(22)【出願日】2018年12月25日
【審査請求日】2019年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中摩 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 智子
【審査官】 林 政道
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−225983(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/065709(WO,A1)
【文献】 特開2009−126349(JP,A)
【文献】 米国特許第10029797(US,B2)
【文献】 特開平2−115642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 11/06
B64D 13/06
B60N 2/56
A61L 9/00
A61L 9/20
F24F 7/00
F24F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の乗客が着席する複数の座席を有し、前記座席に着座した際の前後方向及び左右方向に、前記複数の座席が整列して配置されている乗り物に搭載され、前記複数の乗客間での感染を抑制するための感染抑制装置であって、
前記前後方向における後方から吸気する吸気口、前記吸気口から吸気した空気を清浄化して清浄空気とする空気清浄化機構、及び、前記前後方向における前方に前記清浄空気を吹き出す吹出口を有し、前記吹出口から前記左右方向に対して垂直な層状に前記清浄空気を吹き出し可能なエアバリア形成ユニットを備え、
前記エアバリア形成ユニットは、前記複数の座席の背もたれにおける側端部にそれぞれ設けられると共に、
前記前後方向に隣り合う前記座席に設けられる前記エアバリア形成ユニットが、前記前後方向に対向するように設けられており、前方の前記エアバリア形成ユニットの前記吸気口にて、後方の前記エアバリア形成ユニットの前記吹出口から吹き出された清浄空気を含む空気を吸気可能に構成されている、
感染抑制装置。
【請求項2】
前記空気清浄化機構は、紫外線の照射により光触媒機能を発揮する光触媒が担持され塵埃を捕集する光触媒担持フィルタと、前記光触媒担持フィルタに紫外線を照射する光源と、を有する、
請求項1に記載の感染抑制装置。
【請求項3】
前記エアバリア形成ユニットは、前記吸気口から吸気される空気の状態を検出するためのセンサを有する、
請求項1または2に記載の感染抑制装置。
【請求項4】
前記エアバリア形成ユニットは、前記吹出口からの前記清浄空気の吹出量を調整可能な風量調整機構を有する、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の感染抑制装置。
【請求項5】
前記エアバリア形成ユニットは、前記背もたれのリクライニング角度に応じて、前記吹出口からの前記清浄空気の吹き出し方向を制御する吹き出し方向制御機構を有する、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の感染抑制装置。
【請求項6】
前記乗り物が、航空機である、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の感染抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り物に搭載され、乗客間での感染を抑制するための感染抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機等の乗り物において、乗客間でのウィルスや細菌の感染が問題となっている。特許文献1では、座席のヘッドレストの側部から、座席に着席している乗客の顔の周囲へと清浄空気を供給する機構が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第10029797号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の機構では、乗客の耳元から清浄空気を供給する構造となっているため、感染を抑制すべく清浄空気の供給量を多くすると、音が大きくなってしまい、また、顔に風が吹き付けられることになるため、乗客が不快に感じてしまうおそれがある。また、特許文献1の機構では、大きなくしゃみや咳き込んだときのように、顔の位置が動いた場合には、乗客から排出された細菌やウィルスの飛散は防ぐことが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、乗客に不快感を与えることなく乗客間での感染を抑制可能な感染抑制装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、複数の乗客が着席する複数の座席を有し、前記座席に着座した際の前後方向及び左右方向に、前記複数の座席が整列して配置されている乗り物に搭載され、前記複数の乗客間での感染を抑制するための感染抑制装置であって、前記前後方向における後方から吸気する吸気口、前記吸気口から吸気した空気を清浄化して清浄空気とする空気清浄化機構、及び、前記前後方向における前方に前記清浄空気を吹き出す吹出口を有し、前記吹出口から前記左右方向に対して垂直な層状に前記清浄空気を吹き出し可能なエアバリア形成ユニットを備え、前記エアバリア形成ユニットは、前記複数の座席の背もたれにおける側端部にそれぞれ設けられると共に、前記前後方向に隣り合う前記座席に設けられる前記エアバリア形成ユニットが、前記前後方向に対向するように設けられており、前方の前記エアバリア形成ユニットの前記吸気口にて、後方の前記エアバリア形成ユニットの前記吹出口から吹き出された清浄空気を含む空気を吸気可能に構成されている、感染抑制装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、乗客に不快感を与えることなく乗客間での感染を抑制可能な感染抑制装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態に係る感染抑制装置を搭載した航空機のキャビンを示す図であり、(a)はエアバリア形成ユニットを設けた座席の側面図、(b)はその上面図である。
図2】(a),(b)は、エアバリア形成ユニットの構成例を示す概略構成図である。
図3】センサと制御装置を説明する説明図である。
図4】(a),(b)は、吹き出し方向制御機構を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0010】
図1は、本実施の形態に係る感染抑制装置を搭載した航空機のキャビンを示す図であり、(a)はエアバリア形成ユニットを設けた座席の側面図、(b)はその上面図である。図2(a),(b)は、エアバリア形成ユニットの構成例を示す概略構成図である。
【0011】
図1に示すように、感染抑制装置1は、複数の乗客が着席する複数の座席10を有する乗り物100に搭載され、複数の乗客間での感染を抑制するための装置である。ここでは、乗り物100が航空機である場合を説明するが、感染抑制装置1を搭載する乗り物100は航空機に限らず、例えば、新幹線や特急電車等の長距離列車、あるいはバス等にも適用可能である。詳細は後述するが、感染抑制装置1では、細菌やウィルスの分解及び不活化のみならず、臭いの抑制や粒子状物質(PM)の除去も可能であるため、多数の乗客が長時間閉鎖空間で過ごすことが強いられる乗り物100において、特に好適に用いることができる。
【0012】
座席10は、座面11と、座面11の後方の端部から上方に延びる背もたれ12と、を有している。座面の両側部には、アームレスト13がそれぞれ設けられている。背もたれ12の状部には、ヘッドレスト12aが設けられている。座席10は、座面11に対する背もたれの傾斜角度を調整可能なリクライニング機能を有していてもよい。
【0013】
航空機のキャビン101には、複数の座席10が整列して配置されている。より詳細には、座席10の前後方向及び左右方向に、複数の座席10が整列して配置されている。なお、ここでは、座席10の背もたれ12側を後方、その反対側を前方としている。また、座席10の側方、すなわちアームレスト13側の方向を左右方向としている。一般的な航空機(旅客機)においては、乗り物100の進行方向に対する前後方向、左右方向が、座席10の前後方向、左右方向と一致しているが、これに限らず、乗り物100の進行方向と座席10の前後方向、左右方向が一致していなくてもよい。以下、前後、左右、上下の各方向は、座席10を基準とした方向を表すものとする。
【0014】
感染抑制装置1は、各座席10に取り付けられた複数のエアバリア形成ユニット2を備えている。図1及び図2(a)に示すように、エアバリア形成ユニット2は、後方から吸気する吸気口21と、吸気口21から吸気した空気を清浄化して清浄空気とする空気清浄化機構22と、前方に清浄空気を吹き出す吹出口23と、を有している。
【0015】
吸気口21は、空気清浄化機構22を収容するケース24の背面24aに設けられた開口であり、上下に延びるスリット状に形成されている。同様に、吹出口23は、ケース24の前面24bに設けられた開口であり、上下に延びるスリット状に形成されている。吹出口23からは、左右方向に対して垂直(すなわち、上下及び前後方向に対して平行)な層状となるように、清浄空気が吹出される。
【0016】
ケース24内には、ケース24の内部空間を前後に分割するように隔壁24cが設けられている。隔壁24cの下端部は、ケース24の下面24dから離間するように形成されており、隔壁24cと下面24dとの間に空気の流路となる隙間24eが形成されている。吸気口21からケース24内に導入された空気は、隔壁24cの後方の空間24fを通って下方に導かれ、隔壁24の下方の隙間24eを通り、隔壁24cの前方の空間24gを通って上方に導かれて、吹出口23から排出される。
【0017】
隔壁24cの前方の空間24gには、空気の吸入(吸気)及び排出(吹き出し)を行うためのファン25が設けられており、このファン25の上方(吹出口23側)の空間24gに、空気清浄化機構22が設けられている。
【0018】
空気清浄化機構22は、吸気口21から導入された空気に対して、細菌やウィルスの分解及び不活化を行い、かつ、臭いの抑制や粒子状物質の除去を行うものである。空気清浄化機構22は、紫外線の照射により光触媒機能を発揮する光触媒が担持され塵埃を捕集する光触媒担持フィルタ222と、光触媒担持フィルタ222を通過した塵埃を捕集する捕集フィルタ221と、光触媒担持フィルタ222に紫外線を照射する光源223と、を有している。
【0019】
本実施の形態では、光源223として、紫外光を発する発光ダイオードを平面状に配置した第1発光ダイオード群223a及び第2発光ダイオード群223bを用いている。また、これら両発光ダイオード群223a,223bの間に光触媒担持フィルタ222と捕集フィルタ221を配置している。空気清浄化機構22は、吸気口21側(図示下方)から吹出口23側(図示上方)にかけて、第1発光ダイオード群223a、光触媒担持フィルタ222、捕集フィルタ221、及び第2発光ダイオード群223bを順次配置して構成されている。
【0020】
本実施の形態では、両発光ダイオード群223a,223bとして発光波長が異なるものを用いている。具体的には、第1発光ダイオード群223aでは、波長250nm以上280nm以下の深紫外光を発する発光ダイオードを用い、第2発光ダイオード群223bでは、波長360nm以上380nm以下の紫外光を発する発光ダイオードを用いた。
【0021】
さらに、本実施の形態では、光触媒担持フィルタ222として、第1発光ダイオード群223a側に、アパタイトを含有する光触媒が担持され、第2発光ダイオード群223b側に、酸化チタンを含む光触媒が担持されたものを用いた。殺菌能力が高いものの比較的強度の弱い波長250nm以上280nm以下の深紫外光が照射される第1発光ダイオード群223a側に、細菌やウィルスの吸着力及び不活化する能力が高いアパタイトを含む光触媒を担持させることで、細菌やウィルスを不活化させる能力をより高めることができる。
【0022】
光触媒担持フィルタ222としては、例えば、ハニカム状に多数の空間を仕切る壁部材を有し、当該壁部材で仕切られた各空間内に多数の光触媒の粒子が封じ込められたものを用いることができる。光触媒担持フィルタ222は、例えば、0.4μmの粒子の捕集率が99%未満である中高性能フィルタとされる。
【0023】
捕集フィルタ221としては、例えば、0.3μmの粒子の捕集率が90%以上の準HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)を用いることができる。
【0024】
このような構成の空気清浄化機構22を用いることで、細菌やウィルスの分解及び不活化のみならず、臭いの原因物質の除去による臭いの抑制や粒子状物質の除去も可能となり、乗客の快適性を向上できる。この空気清浄化機構22では、NOxなども分解可能であり、またPM2.5等の微粒子も除去可能である。
【0025】
図示していないが、空気清浄化機構22の前後には、紫外光を遮断する遮光部材が設けられてもよい。遮光部材としては、光を遮蔽しつつも空気の通過を妨げないものを用いることが望ましく、例えば、多数の孔を有するパンチングメタルを複数枚用い、孔の位置をずらし所定の間隔をあけて重ねられた部材等を用いることができる。また、図示していないが、光触媒担持フィルタ222よりも吸気口21側に、ネット状、あるいはスポンジ状の粗フィルタが設けられていてもよい。
【0026】
図2(a)に示したエアバリア形成ユニット2では、ケース24内で空気の流路を狭くしているため、ファン25や空気清浄化機構22(発光ダイオード群223a,223b、光触媒担持フィルタ222、捕集フィルタ221)を小型として低コスト化が可能である。
【0027】
ただし、エアバリア形成ユニット2の具体的な構成はこれに限定されるものではなく、例えば図2(b)に示すように、ファン25として縦型ファン(ラインフローファン)を用い、吸気口21側(後方)から吹出口23側(前方)にかけて、第1発光ダイオード群223a、光触媒担持フィルタ222、捕集フィルタ221、及び第2発光ダイオード群223bを順次配置して空気清浄化機構22を構成してもよい。図2(b)では、ケース24内で流路の方向を変換していないため、エアバリア形成ユニット2の小型化が可能である。なお、ファン25としては、縦型ファンに代えて、複数の小型のファンを上下に並べて配置したものを用いることもできる。
【0028】
図1(a),(b)に戻り、感染抑制装置1では、エアバリア形成ユニット2は、複数の座席10の背もたれ12における両側端部にそれぞれ設けられる。ここでは、背もたれ12の側方に突出するようにエアバリア形成ユニット2を設ける場合を示しているが、エアバリア形成ユニット2を背もたれ12内に内蔵してもよい。エアバリア形成ユニット2は、ヘッドレスト12aのやや下方に設けられる。
【0029】
本実施の形態に係る感染抑制装置1では、前後方向に隣り合う座席10に設けられるエアバリア形成ユニット2が、前後方向に対向するように設けられている。さらに、前方のエアバリア形成ユニット2の吸気口21にて、後方のエアバリア形成ユニット2の吹出口23から吹き出された清浄空気を含む空気を吸気可能に構成されている。
【0030】
これにより、吹出口23から吹出す清浄空気の風量を少なくした場合であっても、前方のエアバリア形成ユニット2の吸気口21への吸い込みによって、座席10の両側にエアバリア、すなわち空気の障壁(エアカーテンとも呼称される)を形成することが可能になる。エアバリア形成ユニット2では、清浄空気の吹出し量が少ないために静音での動作が容易に実現可能であり、また、清浄空気は座席10の間に吹出されるため、乗客の顔等に直接風があたらない。したがって、感染抑制装置1によれば、静粛性を維持し乗客の快適性を確保しつつも、エアバリアによって区画された空間への細菌やウィルスの侵入を抑制し、乗客間での感染を抑制することが可能になる。
【0031】
本実施の形態では、図1(b)に示されるように、各座席10の両側にそれぞれエアバリア形成ユニット2を設けたが、この場合、左右に隣り合う座席10の間に2つのエアバリア形成ユニット2が並んで設けられることになる。このような場合、いずれか一方のエアバリア形成ユニット2を省略してもよい。
【0032】
また、エアバリア形成ユニット2は、吹出口23からの清浄空気の吹出量を調整可能な風量調整機構を有していてもよい。風量調整機構は、例えば、ファン25の駆動電流の制御、あるいはPWM制御等の適宜な制御によってファン25の回転数を調整することにより、清浄空気の吹出量を調整可能に構成される。
【0033】
また、風量調整機構は、吹出口23からの清浄空気の吹出量をゼロにする、すなわち清浄空気の吹き出し(エアバリアの形成)を停止できるように構成されてもよい。例えば、ケース24の上方や下方に空気を吹き出す排気口を設けると共にこの排気口を通常時は閉じておくようにし、清浄空気の吹き出し停止時に、排気口を開き、かつ、吹出口23を閉じる制御を行うことで、吸気口21からの吸気を継続して後ろの座席10のエアバリアの形成を継続しつつも、清浄空気の吹き出しを停止することができる。例えば、夫婦や親子が隣接している座席10に着席する場合、座席間のエアバリアが邪魔になることが想定できる。このような場合、座席間のエアバリア形成ユニット2の吹出量をゼロにして、複数の座席10を1つのユニットとしてエアバリアを形成することも可能になる。
【0034】
風量の調整については、座席10のアームレスト13等に乗客が操作可能なコントローラを設け、当該コントローラの操作によってエアバリア形成ユニット2毎に(あるいは座席10毎に)個別に調整可能としてもよい。また、乗客による個別の風量の調整は不可とし、キャビン101内の全てのエアバリア形成ユニット2の風量を一括管理するように構成することもできる。
【0035】
また、例えば、図3に示すように、各エアバリア形成ユニット2に、吸気口21から吸気される空気の状態を検出するためのセンサ26を設けてもよい。センサ26としては、温度センサ、湿度センサ、臭いセンサ、埃センサのいずれか、あるいは1つ以上を組み合わせて用いることができる。また、現在は実用化されていないが、将来的には、センサ26として、ウィルスや細菌を検出可能なセンサを用いることもできる。
【0036】
図3の例では、各センサ26の出力は、制御装置3に出力されている。制御装置3は、各センサ26からの情報を取得するセンサ情報取得部31と、センサ情報取得部31で取得した情報を基に、キャビン101内の空気の状態の分布(例えば温度の分布、臭いの分布など)を解析する空気状態分布解析部32と、を備えている。空気状態分布解析部32の分析結果は、図示しない記憶装置等に記録される。記憶装置等に記憶された分析結果は、例えば、新規な機体の開発や、航空機空調設計(空調解析)等に用いることができる。また、分析結果を表示する表示器をコックピット等に設けることで、コックピット等でも、空気の状態分布を把握することが可能である。
【0037】
さらに、図3の例では、制御装置3は、各エアバリア形成ユニット2の風量(吹出量)を自動的に調整するように構成されている。制御装置3は、空気状態分布解析部32の分析結果を基に、各エアバリア形成ユニット2の風量(吹出量)を調整する風量制御部33を有している。風量制御部33は、例えば、臭いの検出値が大きいエリアでエアバリア形成ユニット2の風量(吹出量)を大きくする等の制御を行う。このように、センサ26と制御装置3を備えることで、空気の状況をみながら各エアバリア形成ユニット2の風量を自動制御することも可能である。これらセンサ情報取得部31、空気状態分布解析部32、及び風量制御部33は、CPU等の演算素子、メモリ、記憶装置、ソフトウェア、インターフェイス等を適宜組み合わせて実現される。
【0038】
また、図4(a),(b)に示すように、エアバリア形成ユニット2は、背もたれ12のリクライニング角度(座面11と背もたれ12のなす角度)に応じて、吹出口23からの清浄空気の吹き出し方向を制御する吹き出し方向制御機構27を有していてもよい。
【0039】
図4(a),(b)に示す吹き出し方向制御機構27は、吹出口23に設けられ吹出し方向を制御可能な複数のフィン271を有している。このフィン271の角度を、背もたれ12のリクライニング角度に応じて制御することで、リクライニング角度によらず、前方に清浄空気を吹き出すことが可能になる。なお、背もたれ12をリクライニングしても倒れないフレームが座席10の側端部に設けられている場合、このフレームにエアバリア形成ユニット2を設けることで、吹き出し方向制御機構27を省略可能である。
【0040】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る感染抑制装置1では、後方から吸気する吸気口21、吸気口21から吸気した空気を清浄化して清浄空気とする空気清浄化機構22、及び、前方に清浄空気を吹き出す吹出口23を有し、吹出口23から左右方向に対して垂直な層状に清浄空気を吹き出し可能なエアバリア形成ユニット2を備え、エアバリア形成ユニット2は、複数の座席10の背もたれ12における側端部にそれぞれ設けられると共に、前後方向に隣り合う座席10に設けられるエアバリア形成ユニット2が、前後方向に対向するように設けられており、前方のエアバリア形成ユニット2の吸気口21にて、後方のエアバリア形成ユニット2の吹出口23から吹き出された清浄空気を含む空気を吸気可能に構成されている。
【0041】
前方のエアバリア形成ユニット2による吸い込みによって、エアバリア形成ユニット2から吹き出す風量を小さくしても、座席10間にエアバリアを形成することが可能になる。その結果、静粛性を維持し乗客の快適性を確保しつつも、エアバリアによって区画された空間への細菌やウィルスの侵入を抑制し、乗客間での感染のリスクを低減することが可能になる。感染抑制装置1は、既存の座席10にエアバリア形成ユニット2を取り付けるか、あるいは、乗り物100の座席を、エアバリア形成ユニット2を設けた座席10に変更するのみで適用可能であり、乗り物100の構造を変更することなく、容易に適用することが可能である。
【0042】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0043】
[1]複数の乗客が着席する複数の座席(10)を有し、前記座席(10)に着座した際の前後方向及び左右方向に、前記複数の座席(10)が整列して配置されている乗り物(100)に搭載され、前記複数の乗客間での感染を抑制するための感染抑制装置(1)であって、前記前後方向における後方から吸気する吸気口(21)、前記吸気口(21)から吸気した空気を清浄化して清浄空気とする空気清浄化機構(22)、及び、前記前後方向における前方に前記清浄空気を吹き出す吹出口(23)を有し、前記吹出口(23)から前記左右方向に対して垂直な層状に前記清浄空気を吹き出し可能なエアバリア形成ユニット(2)を備え、エアバリア形成ユニット(2)は、前記複数の座席(10)の背もたれ(12)における側端部にそれぞれ設けられると共に、前記前後方向に隣り合う前記座席(10)に設けられる前記エアバリア形成ユニット(2)が、前記前後方向に対向するように設けられており、前方の前記エアバリア形成ユニット(2)の前記吸気口(21)にて、後方の前記エアバリア形成ユニット(2)の前記吹出口(23)から吹き出された清浄空気を含む空気を吸気可能に構成されている、感染抑制装置(1)。
【0044】
[2]前記空気清浄化機構(22)は、紫外線の照射により光触媒機能を発揮する光触媒が担持され塵埃を捕集する光触媒担持フィルタ(222)と、前記光触媒担持フィルタ(222)に紫外線を照射する光源(223)と、を有する、[1]に記載の感染抑制装置(1)。
【0045】
[3]前記エアバリア形成ユニットは、前記吸気口(21)から吸気される空気の状態を検出するためのセンサ(26)を有する、[1]または[2]に記載の感染抑制装置(1)。
【0046】
[4]前記エアバリア形成ユニット(2)は、前記吹出口(21)からの前記清浄空気の吹出量を調整可能な風量調整機構を有する、[1]乃至[3]の何れか1項に記載の感染抑制装置(1)。
【0047】
[5]前記エアバリア形成ユニット(2)は、前記背もたれ(12)のリクライニング角度に応じて、前記吹出口(23)からの前記清浄空気の吹き出し方向を制御する吹き出し方向制御機構(27)を有する、[1]乃至[4]の何れか1項に記載の感染抑制装置(1)。
【0048】
[6]前記乗り物(100)が、航空機である、[1]乃至[5]の何れか1項に記載の感染抑制装置(1)。
【0049】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0050】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、エアバリア形成ユニット2が1つのファン25を有する場合について説明したが、これに限らず、吸気用のファンと吹出用のファンを別途備え、吸い込む空気量(吸気量)と吹き出す空気量(吹出量)を個別に制御可能としてもよい。この場合、清浄空気の吹出量を、吸気量に比べて少ない設定にして、より静音性を高めることが可能である。なお、吸気量と吹出量の差分については、例えば、ケース24の上部または下部に吸排気口を設け、当該吸排気口から吸排気を行えるように構成するとよい。
【0051】
また、上記実施の形態では、エアバリア形成ユニット2がヘッドレスト12aの近傍のみで清浄空気を吹き出すように構成したが、座席10の下方(座面11の近傍)まで延びる縦長の形状にエアバリア形成ユニット2を形成し、エアバリアを形成する範囲をより広くすることも当然に可能である。
【0052】
さらに、上記実施の形態では、各座席10にエアバリア形成ユニット2を設ける場合を説明したが、乗り物100内に、エアバリア形成ユニット2を設けない座席10が含まれていてもよい。例えば、3つの座席が左右に並んで設けられている場合、中央の座席のエアバリア形成ユニット2を省略し、端の2つの座席10のみにエアバリア形成ユニット2を設けてもよい。また、各座席10の両側端部にエアバリア形成ユニット2を設けずとも、左右に並んで配置された複数の座席10を座席ユニットとし、その座席ユニットの両側端部に一対のエアバリア形成ユニット2を設けてもよい。つまり、複数の座席10毎に一対のエアバリア形成ユニット2を設けてもよく、エアバリア形成ユニット2の配置レイアウトは適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…感染抑制装置
2…エアバリア形成ユニット
3…制御装置
10…座席
12…背もたれ
21…吸気口
22…空気清浄化機構
222…光触媒担持フィルタ
223…光源
23…吹出口
26…センサ
26 各センサ
27…吹き出し方向制御機構
100…乗り物
【要約】
【課題】乗客に不快感を与えることなく乗客間での感染を抑制可能な感染抑制装置を提供する。
【解決手段】複数の座席10が前後方向及び左右方向に整列して配置されている乗り物100に搭載され、複数の乗客間での感染を抑制する装置であって、後方から吸気する吸気口21、吸気口21から吸気した空気を清浄化して清浄空気とする空気清浄化機構22、及び、前方に清浄空気を吹き出す吹出口23を有し、吹出口23から左右方向に対して垂直な層状に清浄空気を吹き出し可能なエアバリア形成ユニット2を備え、エアバリア形成ユニット2は、複数の座席10の背もたれ12における側端部にそれぞれ設けられると共に、前後方向に対向するように設けられており、前方のエアバリア形成ユニット2の吸気口21にて、後方のエアバリア形成ユニット2の吹出口23から吹き出された清浄空気を含む空気を吸気可能に構成されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4