【課題を解決するための手段】
【0008】
従来の方法は、送信の前または後のいずれかで、複雑でエラーが起こりやすい複数の方法ステップにおいて、目標信号値が達成されるように信号がエラー訂正されなければならないという欠点を有する。さらに、既知の方法は、急勾配と高い振幅を有するできるだけ好適な信号を生成するように信号を予め歪ませることに基づくが、この最適化された信号の好適な時間を較正することもできない。これに関連して、伝送パラメータおよび/またはフィルタ係数は、連続データ信号をサンプリングするのに適した時間に関して信頼性のある予測を行うことができるように考慮されていない。
【0009】
したがって、本発明の目的は、誤り率を低減するサンプリング時間を決定し、任意に設定する方法を提供することである。つまり、信号に直接作用することなく、信号強度が、できる限り正確に符号化される値を反映するか、もしくは閾値を下回って下降するかまたは閾値を上回って上昇するという信頼できる予測が実行され得る最適な測定点を設定すべきである。提案された方法および提案された装置は、技術的に高い複雑度を伴わずに動作可能でなければならず、他のハードウェア構成要素と組み合わせて再使用可能でなければならない。本発明のさらなる目的は、対応して具体化された装置及び該装置を含むシステムを提供することである。
【0010】
この目的は、請求項1の特定事項によって達成される。
従って、連続データ信号のサンプリング時間を受信側で決定し、且つシリアルビットデータストリームのビット幅内のビット値を検出する方法が提供される。本発明に従った方法では、データ信号補償デバイスを用いて送信される連続データ信号を変調するために提供された連続データストリームの少なくとも1つのフィルタ係数が測定され、送信される連続データ信号の振幅が、該サンプリング時間において最大値となるように、少なくとも1つの測定されたフィルタ係数および提供されたサンプリング時間メトリックに応じてサンプリング時間が決定される。
【0011】
受信機側でデータストリームのサンプリング値を決定するには、連続データ信号を伝送媒体に変調する送信機が必要である。しかしながら、送信機は、特別に具体化される必要はなく、したがって、本発明に従った方法は、従来の送信機を用いて動作させることができる。送信機は、複数の通信信号を交換するように、少なくとも1つの伝送媒体を介して受信機に通信可能に接続される。送信機は、典型的には、連続データストリームを介して、ビットストリーム、すなわち、個々のビットの任意に長いシーケンスを送信するように具体化される。これに関連して、特定の時間における閾値を超える信号強度によって、設定ビットを符号化し、閾値未満の信号強度によって、未設定ビットを符号化する。信号強度のプログレッション(progression)は、技術的な理由から、非2進法で符号化されなければならないため、信号強度の連続的なプログレッションを媒体上に近似的にマッピングする曲線となる。したがって、個々の不都合な時点で、ビットが実際にセットされているかどうかについての予測を行うことは不可能である。このことは、信号強度が閾値に近い値を有する場合に当てはまる。本発明によれば、このことは、信号のプログレッションの振幅がいつ最大になるかを特に注意深く決定することによって無効にされる。
【0012】
本発明によれば、送信機を適応させることなく、これらの不都合な時点で、すなわち、信号強度が閾値に近く、受信機側では回避される場合にサンプリングするのでなく、サンプリングは実際に最大振幅で行われることが特に有利である。このことは、測定時間、すなわちサンプリング時間において信号強度が閾値から十分に離れていることを保証する。サンプリング時間は、送信されるべき関連するビットのタイムスパン内で明確に符号化されるビット幅内に時間的に配置される。したがって、サンプリング時間は、それぞれの場合にこのビット幅内で選択され、それぞれの場合にビット構成を読み取る必要がある。シリアルビットデータストリームを個々のビットに細分化する個々のビット幅は、典型的には時間的に等間隔である。
【0013】
典型的に実行されるサンプリングは、ビット幅の時間的中心におけるサンプリング時間を含み得る。したがって、信号強度は、例えば、ビット幅の最初の部分付近において符号化された「ゼロ」から符号化された「1」への変化で増加し、ビット幅の中心で略最大に達し、その後にゼロが符号化された場合に低下する。したがって、ビット幅の中心は、適切なサンプリング時間の基準点として選択され得る。サンプリング時間をさらに改善するために、本発明によれば、サンプリング点が振幅最大に時間シフトされるように、サンプリング時間は、少なくとも1つの測定されたフィルタ係数に応じて時間シフトされる。
【0014】
本発明に従って決定されたサンプリング点は、複数の送信されたビットまたは複数の送信されるべきビットに対して有利であり、したがって、統計的に言えば、平均ビット誤り率を低減させる。
【0015】
典型的には、サンプリングは、最適化された固定遅延で行われる。本発明に従った固定遅延は、送信のエラー・クオータ(error quota)、言い換えれば、各ビット幅のビット値の検出が可能な限り低いように、サンプリングが好適な時間に行われるように最適化される。従って、本発明によれば、誤って送信されるか又は誤って検出されたビットを再送信する必要がないので、信頼性の高いデータ送信を保証できるだけでなく、送信容量も増加させることができるという利点がある。例えば、単語を構成する複数のビットを検査してエラーが検出された場合に単語を再送信することができる。誤り率が既知の方法との比較によって低減されるので、このタイプの再送信が、本発明に従って避けることができる。
【0016】
既知の方法では、クロック周波数またはオーバーサンプリングの技術的な複雑さが増大することによって、伝送容量におけるこのタイプの増加が可能である。しかしながら、この場合には誤り率もまた増加するので、このことはこのような発明によれば回避される。各場合に振幅最大値が存在する時間間隔は簡単に達成されるように、クロック周波数の増加は暗黙的にビット幅を減少させる。したがって、適切なサンプリング時間の決定は複雑でエラーを起こしやすい。本発明の一態様によれば、クロック周波数を増加させることなく、データスループットを上げることができ、この目的のために、連続データ信号によって誤って検出されたビットを再送する必要が低下するように、適切なサンプリング時間を決定することができる。
【0017】
本発明の一態様では、実行されるか、または実行されるべきサンプリングの前の少なくとも1つのフィルタ係数および該サンプリングの後の少なくとも1つのフィルタ係数が測定される。このことは、本発明によれば、データ信号の振幅が最大である時間を高精度に決定することができるという利点を有する。この目的のために、受信機でフィルタ係数を測定するか、またはそれらをデータメモリから読み出すことが有利であり得る。例えば、対応する係数を提供する他の複数のユニットも読み出すことができる。したがって、本発明によれば、複数のフィルタ係数を計算して提供する追加のデータ伝送コンポーネントを読み出すことが可能である。このことは、フィルタ係数を提供するためのアルゴリズム、特にLMSアルゴリズムによって行うことができる。LMSアルゴリズムは、解を最小二乗問題(least mean squares problem)またはこのアルゴリズムの変形に近似するための最小平均二乗アルゴリズム(least mean squares algorithm)であってもよい。各測定点の前後の少なくとも1つのフィルタ係数を考慮することで、提案された方法により精度が有利に改善され、最大振幅レベルの結果として、ビット値を検出するためのデータ信号の読み取りにおいてより低い誤り率となる。
【0018】
本発明の1つの態様によれば、サンプリングが実行された後のフィルタ係数を考慮することは、計画された、実行されたまたは実行されるべき、連続データ信号のサンプリングの後の少なくとも1つのフィルタ係数に基づくものである。したがって、実行されるサンプリングは、以前の反復で既に実行されているかもしれないが、実際のサンプリングの前にサンプリング時間を推定し、対応するフィルタ係数をこのサンプリング時間に考慮することが特に有利である。これに関連して、当業者は、実行されるサンプリングの後にフィルタ係数を決定するためのさらなる選択肢を認識している。
【0019】
本発明のさらなる態様によれば、提供されたサンプリング時間の前で正確に1つのフィルタ係数を選択し、且つ提供されたサンプリング時間の後で1つのフィルタ係数を正確に選択することが有利である。複数のフィルタ係数は、適合された有利なデータ信号を生成するために連続データ信号に変調されるので、各サンプリング時間の前後で正確に1つのフィルタ係数を考慮することが特に有利である。これらは、そのような方法で、サンプリング時間の直前および直後に時間的に適用される複数のフィルタ係数から正確に選択される。典型的には、同じフィルタ係数が常に使用されるが、本発明によれば、複数のフィルタ係数が使用され、連続データ信号に適用され、それぞれ異なる場合がある。したがって、本発明によれば、連続的なデータストリームの勾配をより正確に変調することができる。さらに、これらの異なる複数のフィルタ係数をサンプリング時間の決定において考慮することができる。
【0020】
本発明のさらなる態様によれば、少なくとも1つのフィルタ係数は、実行されるサンプリングの前および後のいずれかで測定される。このことは、本発明によれば、サンプリング時間を決定する特に効率的な方法が提案されるという利点がある。一般的に言えば、複数のフィルタ係数のパラメータは、複数のフィルタ係数がこれらが考慮されるようにどのような特性を有するかを示すサンプリングメトリック(sampling metric)によって決定され得る。これに関連して、例えばサンプリング時間の前にフィルタ係数のみを考慮に入れることを提供することが可能である。このタイプのメトリックは、1組の制御コマンドとして提供されるか、または対応する具体化されたハードウェアコンポーネントにハードワイヤード実装(implemented hard-wired)されてもよい。
【0021】
本発明のさらなる態様によれば、少なくとも1つのフィルタ係数は、1組の測定方法からの少なくとも1つの測定方法によって測定され、1組の測定方法は、少なくとも1つの測定センサの読み取り、複数の送信パラメータに応じた計算、決定、データメモリの読み出し、送信構成の読み出し、アルゴリズム、特にLMSアルゴリズムの評価、少なくとも1つのプレカーソルの決定、および少なくとも1つのポストカーソルの決定を含む。このことは、対応する装置に既に実装され、再利用可能な多くの好適な測定方法を使用できるという利点を有する。また、本発明によれば、有利には、複数の方法を同時に使用できるように、個々の方法を組み合わせることも可能である。したがって、例えば、第1のフィルタ係数を受信機で測定することができ、第2のフィルタ係数を、対応して実装されたアルゴリズムによって計算することができる。複数の測定方法の組み合わせも有利である。
【0022】
本発明のさらなる態様によれば、サンプリング時間メトリックは、サンプリング時間が、測定されたフィルタ係数の信号強度の和に応じて決定されることを提供する。このことは、複数のフィルタ係数の信号強度が単純な方法で、単に付加的に考慮され得るという利点を有する。これにより、単に技術的に低い複雑度で具体化され得るが、依然としてサンプリング時間の正確な決定を可能にする。
【0023】
本発明のさらなる態様によれば、サンプリング時間メトリックは、サンプリング時間が、測定された複数のフィルタ係数の信号強度の合計の最小値にあることを提供する。このことは、本発明によれば、最適な測定時間が見出されるという利点を有する。最適な測定時間は、送信されたデータ信号の振幅が最も高いサンプリング時間として定義され得る。このことは、最大振幅が、時間間隔および連続データ信号の信号強度によって定義されるビット値が確実に可能な限り明確に読み取られることを保証するため、最適に指定される。予め設定された閾値は、信号強度がサンプリング時間において「0」または「1」として読み取られるかどうかを判定するため、閾値を上回るかまたは下回る信号強度の存在に関して可能な限り予測を明確となるように、閾値について特に明確な境界を有することが特に有利である。このことは、特に最大振幅で可能であり、また本発明によるものである。この目的のために、提案されたメトリックは、一連のテストにおいて特に信頼できることが分かっている。
【0024】
本発明のさらなる態様によれば、サンプリング時間メトリックは、1組のうちの少なくとも1つの提供方法によって提供され、該1組は、データメモリの読み出し、ハードワイヤードメトリックユニットの提供、ハードウェアで具体化されたメトリックユニットの提供、メトリック回路の提供、対応するワイヤードメトリック構成要素の提供、制御ユニットの提供、および制御ユニットの提供を含む。このことは、本発明によるメトリックが、特に相乗的に組み合わせることができる複数の選択肢に基づいて提供できるという利点を有する。したがって、メトリックは、複数の計算モジュールにわたって分散して実装され、各モジュールは、提案されたメトリックの少なくとも一部を提供する。
【0025】
本発明のさらなる態様によれば、決定されるサンプリング時間は、1組の時間から追加の時間に対して決定され、該1組は、追加のサンプリング時間、ビット幅の境界、データ信号の勾配、および測定された振幅レベルを含む。このことは、既知の複数の時間に基づいて、サンプリングタイプが、比較的に、しかし絶対的に決定され得るという利点を有する。
【0026】
本発明のさらなる態様によれば、データ信号強度は、少なくとも1つのフィルタ係数を測定するように決定される。このことは、フィルタ係数が経験的に決定され、フィルタ係数を読み出す際のエラーが防止され得るという利点を有する。従って、課題のフィルタ係数は簡単な方法で決定され得る。
【0027】
本発明のさらなる態様によれば、データ信号補償デバイスは、1組のユニットからの少なくとも1つのユニットとして構成され、該1組は、制御ユニット、スイッチボード、歪みモジュール、プレ歪みモジュール、受信機、および送信機を含む。このことは、本発明によれば、既存の複数の装置が適合され、その後に再使用され得るという利点を有する。したがって、本発明による方法を具体化するように既存のシステムを適合させることが可能である。
【0028】
本発明のさらなる態様によれば、連続データ信号が、1組のメディアのうちの少なくとも1つの信号伝送媒体を用いて送信され、該1組は、ケーブル、導電接続、差動ライン、同軸線、およびバスラインを含む。このことは、提案された方法および提案された装置が複数の信号伝送媒体と互換性があり、したがって、既存の複数のシステムが、異なる信号伝送媒体で有利に拡張され得るという利点を有する。特に、信号伝送の複数の段階は、それぞれ異なる信号伝送媒体を使用してブリッジされてもよい。
【0029】
本発明のさらなる態様によれば、測定デバイスが、データ信号の振幅を決定するために、所定の時間または決定された時間において読み出される。このことは、介在するコンポーネントを追加することなく経験的に振幅を測定できるという利点がある。この段階を繰り返して実行し、複数の所定時間を用いて複数の測定値を取り込むことも可能である。
【0030】
また目的は、連続データ信号のサンプリング時間を受信側で決定し、且つシリアルビットデータストリームのビット幅内のビット値を判定する装置によって達成される。該装置は、データ補償デバイスによって連続的に送信される連続データ信号を変調するために提供された少なくとも1つのフィルタ係数を測定するように構成された測定ユニットと、連続的に送信されるデータ信号の振幅が、該サンプリング時間において最大値となるように、少なくとも1つの測定されたフィルタ係数および提供されたサンプリング時間メトリックに応じてサンプリング時間を決定するように構成されたサンプリング時間ユニットと、を備える。
【0031】
また目的は、開示された複数の装置のうちの少なくとも1つを含む通信システムによって達成される。また目的は、開示された複数の方法のうちの1つを実行させるコンピュータプログラムによって、および対応する複数のコマンドを記憶するコンピュータプログラム製品によっても達成される。