【実施例】
【0011】
(紙幣取扱装置の構成)
図1は、実施例の紙幣取扱装置を示す模式図である。
図1に示すように、実施例の紙幣取扱装置1は、紙幣3が入金及び出金される入出部としての入出金部5と、紙幣3を鑑別するための鑑別部6と、紙幣3を一時的に収容するための収容部としての複数の保留部7と、紙幣3を格納するための複数の格納部8と、を備える。また、紙幣取扱装置1は、入出金部5、鑑別部6、保留部7、格納部8を相互に連結して紙幣3を双方向に搬送する双方向搬送路9を有する搬送機構10と、搬送機構10を制御する制御部14と、を備える。
【0012】
複数の格納部8には、紙幣3が金種毎に分類されて格納される。なお、紙幣取扱装置1は、保留部7及び格納部8の個数が複数に限定されるものではなく、少なくとも1つの保留部7及び格納部8を備えて構成されればよい。また、制御部14は、入出金部5、鑑別部6、保留部7、格納部8をそれぞれ制御する。
【0013】
また、紙幣取扱装置1は、上段部1A及び下段部1Bを有する。上段部1Aには、入出金部5、鑑別部6、保留部7が配置されている。下段部1Bには、格納部8が配置されている。説明の便宜上、
図1以降において、紙幣取扱装置1の配置の一例として、紙幣取扱装置1の水平方向をX方向とし、紙幣取扱装置1の上下方向をY方向とする。紙幣取扱装置1において、X方向を水平方向に限定するものではなく、Y方向を上下方向に限定するものではない。
【0014】
入出金部5によって紙幣取扱装置1の内部へ送られた紙幣3は、例えば、紙幣3を鑑別する鑑別部6を介して保留部7へ送られる。なお、紙幣取扱装置1における入出金部5は、入金部と出金部とを兼ねるが、入金部と出金部がそれぞれ独立して設けられてもよい。実施例では、入金部と出金部とを含めて入出金部5と称する。
【0015】
紙幣3としては、例えばポリマー等の樹脂材料によって形成された紙幣も含む。また、本発明に係る紙幣取扱装置1について、例えば、本実施例では、紙葉類の一例として、紙幣3を用いて説明するが、紙幣3に限定されるものではない。紙葉類としては、例えば、紙幣3以外に小切手、金券、有価証券、バウチャー券、その他の金銭的価値を有する媒体も含まれる。
【0016】
(双方向搬送路の構成)
図1に示すように、双方向搬送路9は、入出金部5に対して紙幣3を搬送する線状の第1搬送路11と、第1搬送路11の一端が連結された環状の第2搬送路12と、第2搬送路12に一端が連結された線状の第3搬送路13と、を有する。双方向搬送路9は、同一搬送路(11、12、13)において一方向とその逆方向とに往復搬送可能に構成されている。
【0017】
第1搬送路11は、入出金部5から延びる線状路11aと、第2搬送路12に連結される連結路11bと、を有する。第2搬送路12は、互いに平行に沿う上下一組の線状路12a、12bと、各線状路12a、12bの両端をそれぞれ連結する一組の連結路12c、12dと、を有する。
【0018】
第2搬送路12は、紙幣取扱装置1の上段部1Aと下段部1Bとに跨って設けられている。第2搬送路12において、一組の連結路12c、12dは上段部1Aと下段部1Bとに跨って上下方向(Y方向)に延びて配置されている。上下一組の線状路12a、12bは、水平方向(X方向)に沿って延びており、上側の線状路12aが上段部1Aに配置され、下側の線状路12bが下段部1Bに配置されている。
【0019】
第3搬送路13は、第2搬送路12の上下一組の線状路12a、12bに沿って延びる線状路13aと、第2搬送路12に連結される連結路13bと、を有する。第3搬送路13の連結路13bは、U字状に湾曲されており、第2搬送路12の上側の線状路12aに連結されている。線状路13aは、X方向において鑑別部6の手前まで延びている。
【0020】
図1に示すように、鑑別部6は、第2搬送路12の一経路としての上側の線状路12a上に配置されている。また、格納部8は、第2搬送路12の上側の線状路12aに平行に沿う他経路としての下側の線状路12bに接続されている。鑑別部6に対して、環状の第2搬送路12の線状路12aの外周側、すなわち鑑別部6の上方には、紙幣3が、線状路12aに沿って搬送されない非搬送領域15が設けられている。言い換えると、紙幣取扱装置1の上下方向(Y方向)において、鑑別部6の上方には、第3搬送路13の線状路13aが延びておらず、鑑別部6の上方を紙幣3が通過しないように構成されている。
【0021】
保留部7は、第3搬送路13に接続されており、巻取ドラム(図示せず)に紙幣3を巻き付けて収容する巻取ドラム型である。保留部7は、劣化した劣化紙幣としての損券3aのみを一時的に収容する損券用の保留部7aを含む。紙幣3は、鑑別部6の鑑別結果に基づいて損券3aか否かが判定され、損券3aとしては、例えば、鑑別状態が低い紙幣3や、鑑別不能な紙幣3が含まれる。
【0022】
格納部8は、第2搬送路12に接続されている。格納部8には、格納部8から入出金部5へ紙幣3を出金するときに判定された損券3aを回収するための回収部8aを含んでいる。なお、損券用の保留部7a、回収部8aの個数を1つに限定するものではなく、紙幣取扱装置1の実際の使用環境等に応じて、損券用の保留部7a、回収部8aの個数が適宜調整されてもよい。
【0023】
搬送機構10は、双方向搬送路9を構成する搬送ベルトと、搬送ベルトを駆動する駆動ローラ等を有しており、制御部14と電気的に接続されている。搬送機構10は、制御部14により、駆動ローラの回転方向が切り替えられることで、搬送ベルトによる紙幣3の搬送方向が逆方向となる。また、搬送機構10は、第2搬送路12及び第3搬送路13を開閉するための開閉機構21を有する。開閉機構21の具体的な構成については後述する。
【0024】
図2は、実施例の紙幣取扱装置1において、第2搬送路12における鑑別部6の両側経路が閉じた状態を示す側面図である。
図3は、実施例の紙幣取扱装置1において、第2搬送路12における鑑別部6の両側経路が開いた状態を示す側面図である。
図2及び
図3に示すように、搬送機構10は、第2搬送路12の線状路12aにおける鑑別部6の両側経路(上流側経路及び下流側経路)を開閉するための開閉機構21を有しており、開閉機構21によって、第2搬送路12の上側の線状路12aと共に鑑別部6の上方も開閉される。なお、第2搬送路12の下側の線状路12b等の他の経路の開閉機構については説明を省略するが、開閉可能に構成されている。
【0025】
具体的には、
図2及び
図3に示すように、本実施例における開閉機構21は、第3搬送路13の線状路13aと、この線状路13aに平行に沿う第2搬送路12の上側の線状路12aの一部、例えば、鑑別部6の片側経路(下流側経路)とを連動して開閉可能に構成されている。開閉機構21は、第2搬送路12の線状路12aにおける鑑別部6の上流側経路(
図3右側)に対して入出金部5を回動可能に支持するフレーム(図示せず)を有する。また、開閉機構21は、第2搬送路12の線状路12aにおける鑑別部6の下流側経路(
図3左側)に対して第3搬送路13を回動可能に支持するフレーム22と、第3搬送路13の線状路13aに対して保留部7群を回動可能に支持するフレーム(図示せず)と、を有する。また、保留部7群を支持するフレームと、入出金部5を支持するフレームには、開閉機構21の開閉動作を規制するロック部材25がそれぞれ設けられている。
【0026】
フレーム22は、第3搬送路13における鑑別部6とは反対側の一端部22aが回動可能に設けられており、保留部7群を回動可能に支持するフレームに、リンク部材23を介して連動可能に連結されている。また、フレーム22には、第2搬送路12を構成する一方側の搬送ベルト及び搬送ローラが設けられると共に、第3搬送路13を構成する一方側の搬送ベルト及び搬送ローラが設けられている。
【0027】
以上のように構成された開閉機構21では、例えば第2搬送路12の上側の線状路12aにおける鑑別部6の下流側経路を開くときに、ロック部材25のロック状態が解除され、保留部7群を支持するフレームが回動操作される。保留部7群を支持するフレームの回動に伴って、リンク部材23を介してフレーム22が連動して回動される。このように連動することで、開閉機構21は、第2搬送路12の上側の線状路12aと、第3搬送路13の線状路13aとを一動作で開く。また、開閉機構21では、第2搬送路12の線状路12aにおける鑑別部6の上流側経路を開くときに、ロック部材25のロック状態が解除され、入出金部5を支持するフレームが回動操作されることで、第2搬送路12を開く。
【0028】
そして、
図3に示すように、開閉機構21によれば、第2搬送路12及び第3搬送路13を開いたときに鑑別部6の上方を大きく開放することが可能になり、鑑別部6の上方に空きスペースが生じる。このため、鑑別部6の上方側から、各第2搬送路12の上側の線状路12a及び第3搬送路13の線状路13aを容易に確認することが可能になり、ジャムを起こした紙幣3の視認性を高めることができる。
【0029】
ここで、実施例における開閉機構21と対比するため、関連技術の紙幣取扱装置における開閉機構の構成について説明する。関連技術の紙幣取扱装置では、8の字状をなす搬送路において上下2つの環状の搬送路を結ぶ位置に鑑別部が配置されている。このため、鑑別部の上方を跨いで上方経路が延びているので、搬送路における鑑別部の両側経路を開く場合には、鑑別部の上方経路を開いた後に、順番に両側経路を開く必要があった。このため、関連技術における開閉機構は、鑑別部の上方経路を開くための上部分と、鑑別部の両側経路をそれぞれ開くための両側部分と、を有しており、例えば、上部分を回動支点まわりに回動可能に支持するフレームを有することで、開閉機構の複雑化を招いていた。また、開閉機構が複雑化することで、上部分、両側部分を開いた状態でも、鑑別部の両側経路と上方経路の視認性が乏しく、鑑別部の周囲でジャムを起こした紙幣を見つけにくい不都合がある。例えば、鑑別部の両側経路をメンテナンスするときに、鑑別部の上方経路を開いた上部分によって、鑑別部の両側経路へ保守担当者が手などを進入させる空間が狭くなる傾向にあり、ジャム時のメンテナンス作業が煩雑であった。
【0030】
一方、実施例の紙幣取扱装置1によれば、上述のように鑑別部6の上方に、上述した非搬送領域15が設けられたことによって、開閉機構21の構成が、関連技術のように鑑別部6の上方に位置する搬送路によって制約されることが避けられる。このため、実施例は、開閉機構21の構造の自由度が高められるので、開閉機構21を簡素化することが可能になる。開閉機構21を簡素化することにより、例えば、第2搬送路12の上側の線状路12aが開かれたときに線状路12a内へ保守担当者が手などを進入させる空間を広く確保することが可能になり、ジャム時のメンテナス作業が、開閉機構21の一部に妨げられず、作業性が高められる。
【0031】
また、開閉機構21は、リンク部材23を介して連動することで、第2搬送路12の上側の線状路12aと、第3搬送路13の線状路13aとを一動作で開くことができるので、双方向搬送路9のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0032】
図4は、実施例の紙幣取扱装置1が備える格納部8を説明するための模式図である。格納部8は、
図4に示すように、双方向搬送路9の第2搬送路12と格納部8との間で紙幣3の搬送方向を切り替える切り替え機構26を有する。
【0033】
切り替え機構26は、紙幣3の搬送方向を案内するガイドローラ27と、紙幣3の搬送方向を切り替えるための3つの切り替え部材28a〜28cと、を有しており、制御部14に接続されている。また、格納部8には、ピックローラ29a、繰り出しローラ29b、分離ローラ29c等が設けられており、格納部8内に格納された紙幣3を1枚ずつ繰り出す。
【0034】
ガイドローラ27は、第2搬送路12の下側の線状路12bと格納部8との間に配置されている。3つの切り替え部材28a〜28cは、紙幣3を案内するガイド面を有するくさび状に形成されており、ガイドローラ27の外周面に隣接して配置されている。切り替え部材28a〜28cは、制御部14によって、紙幣3の搬送方向に応じてガイドローラ27の外周面に対する姿勢が切り替えられることで、格納部8と線状路12bとの間でガイドローラ27に対する紙幣3の経路が変化し、紙幣3の搬送方向を切り替える。
【0035】
このように格納部8は、切り替え機構26を有することで、第2搬送路12の搬送方向の切り換えに応じて、第2搬送路12の下側の線状路12bと格納部8との間の搬送方向を切り替えて紙幣3を搬送することができる。
【0036】
また、双方向搬送路9が有する第1搬送路11、第2搬送路12及び第3搬送路13における所定の位置には、例えば、
図1に示すように、紙幣3の通過を検知するための複数の位置センサ17がそれぞれ設けられている。位置センサ17は、制御部14にそれぞれ接続されている。位置センサ17としては、例えば光学センサが用いられており、双方向搬送路9に向けて検知光を発する発光部と、発光部が発した検知光を受光する受光部と、を有する。
【0037】
制御部14は、双方向搬送路9上で紙幣3の通過を検知しない状態が所定時間経過したときや、紙幣3を検知した状態が所定時間経過したときに、位置センサ17の検知結果に基づいて双方向搬送路9上で紙幣3のジャムが発生したと判定する。また、制御部14が紙幣3のジャムの発生を検知する構成は、位置センサ17を用いる構成に限定するものではない。制御部14は、例えば、搬送機構10の搬送ベルトや搬送ローラの回転抵抗の変化に基づいてジャムを判定してもよい。
【0038】
(保留部及び格納部の増設)
図5は、実施例の紙幣取扱装置1において保留部7及び格納部8を追加した状態を示す模式図である。本実施例の紙幣取扱装置1の設置後、実際に取り扱う環境等の必要に応じて、
図5に示すように、第2搬送路12の一組の線状路12a、12b、及び第3搬送路13の線状路13aをX方向へ延長することによって、第3搬送路13の線状路13aに接続する保留部7の個数、第2搬送路12の下側の線状路12bに接続する格納部8の個数を容易に追加することができる。
【0039】
(紙幣のジャム発生時の搬送動作)
図6は、実施例の紙幣取扱装置1におけるジャム発生時の搬送動作を説明するためのフローチャートである。
図6に示すように、紙幣取扱装置1の紙幣取扱時に、制御部14は、位置センサ17の検知結果に基づいて双方向搬送路9上で紙幣3のジャムが発生したか否かを判定する(ステップS1)。双方向搬送路9で紙幣3が搬送不能になった場合、制御部14は、位置センサ17の検知結果に基づいて双方向搬送路9上で紙幣3のジャムが発生したと判定する。ジャムが発生したと判定された場合、制御部14は、双方向搬送路9における紙幣3の搬送方向を、紙幣3のジャムが生じる直前に紙幣3を搬送していた方向とは逆方向へ切り替えて逆転させるように制御する(ステップS2)。ステップS1においてジャムの発生が判定されない場合、制御部14は、位置センサ17の検知結果に基づいてジャムの発生の有無を判定し続ける。
【0040】
例えば、入出金部5から保留部7へ紙幣3を収容する入金時にジャムが発生した場合、制御部14は、搬送機構10を制御することで、双方向搬送路9の第2搬送路12等の搬送方向を逆転させて、ジャムを起こした紙幣3を入出金部5へ戻す。また例えば、格納部8から紙幣3を入出金部5へ送る出金時にジャムが発生した場合、制御部14は、搬送機構10を制御することで、双方向搬送路9の第2搬送路12等の搬送方向を逆転させて、ジャムを起こした紙幣3を回収部8aへ収容する。また、入金時や出金時と異なる他の紙幣処理時に双方向搬送路9上のいずれかの経路でジャムが発生した場合であっても、制御部14が双方向搬送路9の搬送方向を逆転することで、ジャムを自動的に解消することが可能となる。
【0041】
上述のように、紙幣取扱装置1は、入金時及び出金時に、双方向搬送路9の搬送方向を逆方向に切り替えることで、ジャムを起こした紙幣3を移動させて搬送することが可能となり、ジャムを自動的に解消することが可能となる。また、制御部14は、位置センサ17の検知結果に基づいて、ジャムを起こした紙幣3の搬送の有無を判定し、例えば、ジャムを起こした紙幣3の搬送が検知されるまで、ジャムを起こした紙幣3の移動を試みるように制御を行ってもよい。このとき、制御部14は、双方向搬送路9の逆転と正転とを所定回数だけ繰り返したり、双方搬送路9を逆転するときの搬送速度を段階的に変化させたりする制御を行ってもよい。
【0042】
また、上述した制御部14の制御動作によって、紙幣3のジャムが自動的に解消しない場合には、開閉機構21によって双方向搬送路9の第2搬送路12、第3搬送路13等を手動で開いて、ジャムを起こした紙幣3が双方向搬送路9から取り除かれる。本実施例では、上述したように、開閉機構21によって、第2搬送路12の線状路12a及び第3搬送路13の線状路13aが連動して開閉可能に構成されているので、メンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0043】
また、開閉機構21によって第2搬送路12の上側の線状路12a、第3搬送路13の線状路13aをそれぞれ大きく開くことが可能になるので、個々に一本道をなす線状路12a、13aのジャムが生じた箇所を容易に見つけることができ、ジャムを起こした紙幣3を適正に除去することが可能になる。その結果、ジャムの解消後に双方向搬送路9を検査するためにいわゆるパトロール券(チェックシート)を使用する頻度も抑えることが可能になり、メンテナンス作業の作業性が高められる。
【0044】
(損券の取扱処理)
紙幣取扱装置1は、鑑別部6の鑑別結果に基づいて、入金時に入出金部5から送られる紙幣のうち、正常な紙幣3が保留部7へ収容されると共に、損券3aが損券用の保留部7aへ収容される。すなわち、紙幣取扱装置1では、入金時に発生したすべての損券3aが損券用の保留部7aへ一旦収容される。
【0045】
制御部14は、入出金部5から送られた損券3aを損券用の保留部7aへ一旦収容した後に、損券3aを損券用の保留部7aから一括して入出金部5へ送る。このとき、制御部14は、損券用の保留部7aから入出金部5へ損券3aを送るときの搬送速度を、入出金部5から保留部7及び損券用の保留部7aへ、損券3aを含む紙幣3を送るときの搬送速度よりも遅くなるように制御する。
【0046】
紙幣取扱装置1における紙幣3の搬送速度は、例えば入金時に損券3aを取り扱う頻度や損券3aの劣化状態等に応じて設定されており、例えば1000[mm/s]程度に設定されている。制御部14は、損券3aを、損券用の保留部7aから入出金部5へ一括して送るときに、損券3aの搬送速度を例えば400[mm/s]程度〜500[mm/s]程度の遅い搬送速度で返却するように制御する。これにより、ジャムが生じやすい損券3aを入出金部5へ返却するときにジャムが発生することを抑制することができる。
【0047】
また、制御部14は、損券3aの搬送速度を遅くするのに加えて、損券用の保留部7aから入出金部5へ損券3aを搬送する搬送間隔を、入出金部5から保留部7へ紙幣3を搬送するときの搬送間隔よりも広げて搬送してもよい。これにより、損券3aを入出金部5へ返却するときのジャムの発生を更に抑えることができる。
【0048】
(実施例の紙幣取扱方法)
図7は、実施例の紙幣取扱方法を説明するためのフローチャートである。以上のように構成された紙幣取扱装置1を用いた実施例の紙幣取扱方法は、
図7に示すように、入金時に入出金部5へ紙幣3が入れられた後(ステップS11)、入出金部5から双方向搬送路9によって鑑別部6へ送り、鑑別部6により紙幣3を鑑別する(ステップS12)。続いて、制御部14は、鑑別部6の鑑別結果に基づいて、鑑別部6を通過して紙幣3が損券3aであるか否かを判定する(ステップS13)。
【0049】
紙幣取扱装置1は、鑑別部6の鑑別結果に基づいて、制御部14によって入出金部5から送られた紙幣3が損券3aと判定されたときに、損券3aを損券用の保留部7aへ一時的に収容する(ステップS14)。一方、紙幣取扱装置1は、鑑別部6の鑑別結果に基づいて、制御部14によって入出金部5から送られた紙幣3が損券3aではない(正券)と判定されたときに、入出金部5から双方向搬送路9によって送られた紙幣3を保留部7に一時的に収容する(ステップS15)。続いて、制御部14は、入出金部5へ入れられた紙幣3を全て鑑別部6で鑑別したか否かを判定する(ステップS16)。
【0050】
紙幣取扱装置1は、入金された全ての紙幣3を鑑別部6で鑑別したと判定されたとき、すなわち入出金部5から送られた全ての損券3aを損券用の保留部7aへ一旦収容した後、制御部14は、双方向搬送路9によって、損券用の保留部7aから全ての損券3aを一括して入出金部5へ送り、かつ、制御部14によって損券3aを送るときの搬送速度を、入出金部5から紙幣3を送るときの搬送速度よりも遅くなるように制御する(ステップS17)。
【0051】
上述したように実施例の紙幣取扱装置1は、入出金部5、鑑別部6、保留部7及び格納部8を相互に連結して紙幣3を双方向に搬送する双方向搬送路9を有する搬送機構10と、搬送機構10を制御する制御部14と、を備える。これにより、紙幣取扱装置1は、双方向搬送路9のいずれの経路においても紙幣3を逆方向へ搬送することができる。このため、紙幣取扱装置1は、双方向搬送路9上で紙幣3のジャムが生じた場合、制御部14によって搬送機構10を制御し、双方向搬送路9の搬送方向を逆転させることで、ジャムを起こした紙幣3を双方向搬送路9に沿って搬送し、ジャムを自動的に解消することが可能になる。そのため、紙幣取扱装置1は、ジャムを解消するためのメンテナンス作業を行う頻度を減らし、メンテナンス作業に伴う紙幣取扱装置1の休止を抑えることができる。
【0052】
また、実施例の紙幣取扱装置1は、第2搬送路12の上側の線状路12aに鑑別部6が配置され、第2搬送路12の下側の線状路12bに格納部8が接続されており、鑑別部6に対して環状の第2搬送路12の外周側に、紙幣3が線状路12aに沿って搬送されない非搬送領域15が設けられている。鑑別部6の上方に非搬送領域15が設けられることで、鑑別部6が配置された第2搬送路12を開くための開閉機構21の構成の自由度が高められ、開閉機構21を簡素化することができる。そして、開閉機構21が簡素化することで、第2搬送路12の線状路12aを開いた空間を広く確保することが可能になり、ジャムを起こした紙幣3の視認性、ジャム時のメンテナンス作業の作業性を高めることができる。その結果、メンテナンス作業に伴う紙幣取扱装置1の休止時間を短縮することができる。
【0053】
また、紙幣取扱装置1の双方向搬送路9は、環状の第2搬送路12に線状の第1搬送路11及び線状の第3搬送路13が連結されて構成されることにより、双方向搬送路9における経路の分岐箇所を減らし、双方向搬送路9の全体が簡素化される。このため、ジャムを起こした紙幣3を追跡して見つけやすくなり、メンテナンス作業の作業性を高めることができる。
【0054】
また、紙幣取扱装置1は、非搬送領域15が設けられることにより、紙幣取扱装置1において鑑別部6の上方の部分が占める高さ(上段部1Aの高さ)を小さくし、鑑別部6の下方に占める高さ(下段部1Bの高さ)を大きくすることが可能となり、個々の格納部8を大きく確保することができる。
【0055】
また、紙幣取扱装置1は、線状の第3搬送路13を有することにより、入出金部5と保留部7及び損券用の保留部7aとを結ぶ経路が1本道で構成されており、第3搬送路13が終端(行き止まり)を有する。このため、ジャムの発生時にジャムを起こした紙幣3を1本道の経路に沿って容易に追跡し、双方向搬送路9においてジャムが生じた箇所を容易に見付けることが可能になる。したがって、ジャムを解消するためのメンテナンス作業の作業性を高め、メンテナンス作業に伴う紙幣取扱装置1の休止時間を短縮することができる。
【0056】
また、実施例の紙幣取扱装置1の双方向搬送路9は、互いに沿う一組の線状路12a、12bを有する第2搬送路12と、第2搬送路12の線状路12a、12bに沿って延びる線状路13aを有する第3搬送路13と、を有する。これにより、紙幣取扱装置1の実際の使用環境に応じて、第2搬送路12の上下一組の線状路12a、12b、第3搬送路13の線状路13aを一方向(X方向)へ沿ってそれぞれ延長することによって、保留部7、損券用の保留部7a、格納部8、回収部8aを容易に追加することができる。また、例えば紙幣取扱装置1の奥行き方向である一方向へ沿って第2搬送路12を延長し、保留部7を第2搬送路12に追加することができるので、紙幣取扱装置1の高さ(Y方向)を変更することなく保留部7を増やすことができる。
【0057】
このように保留部7を増やすことで、紙幣3をより細かく分類して収容し、分類された紙幣3に応じて個別に取扱処理を行うことが可能になり、必要に応じて各種の取扱処理の制御を追加する拡張性を高めることができる。また、保留部7を容易に増やせるので、紙幣3の偽券のみを収容する偽券用の保留部を設けることで、制御部14によって警備へ通報する等の取扱処理を行うことも可能となる。
【0058】
また、実施例の紙幣取扱装置1が有する搬送機構10は、第3搬送路13の線状路13aと、線状路13aに沿う第2搬送路12の線状路12aの一部とを連動して開閉させる開閉機構21を有する。このように開閉機構21は、リンク部材23を介して連動することで、第2搬送路12の線状路12aと、第3搬送路13の線状路13aとを一動作で開くことができる。このため、ジャムを生じた紙幣3を双方向搬送路9上から除去するときに、第2搬送路12及び第3搬送路13を容易に開くことが可能になり、双方向搬送路9のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0059】
また、実施例の紙幣取扱装置1の制御部14は、入出金部5から送られた損券3aを損券用の保留部7aへ収容した後に、損券3aを損券用の保留部7aから一括して入出金部5へ送る。制御部14は、損券3aを送るときの搬送速度を、入出金部5から、損券3aを含む紙幣3を保留部7及び損券用の保留部7aへ送るときの搬送速度よりも遅くなるように制御する。関連技術の紙幣取扱装置では、入金時に発生した損券それぞれが入出金部へ個々に返却されており、損券を入出金部へ返却するときの搬送速度を切り替えることが困難であり、入出金部へ返却される損券がジャムを発生するおそれがあった。
【0060】
一方、実施例の紙幣取扱装置1の制御部14は、損券用の保留部7aへ収容された損券3aを一括して入出金部5へ送り、損券3aの劣化状態を考慮して損券3aの搬送速度を相対的に遅くすることで、損券3aの返却時にジャムが発生することを抑えることができる。また、入金時に損券3aを損券用の保留部7aへ一旦収容することで、関連技術のように入金時に損券を個々に入出金部へそれぞれ返却するよりも、入金時の紙幣3の処理時間を短縮することができる。例えば、入出金部5から大量の紙幣3を紙幣取扱装置1へ補充する場合に、大量の損券3aが発生したときであっても、保留部7、損券用の保留部7aを増やすことで、損券3aのみを一括して入出金部5へ戻すことが可能となる。また、必要に応じて、制御部14は、損券用の保留部7aから入出金部5へ損券3aを送るときに損券3aの搬送間隔を、紙幣3の入金時に比べて大きくすることで、損券3aを入出金部5へ返却するときにジャムが発生することを更に抑えることができる。