(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6669894
(24)【登録日】2020年3月2日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】電磁弁のための弁カートリッジおよび所属の電磁弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20200309BHJP
【FI】
F16K31/06 305L
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-558232(P2018-558232)
(86)(22)【出願日】2017年3月23日
(65)【公表番号】特表2019-515221(P2019-515221A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】EP2017056944
(87)【国際公開番号】WO2017198373
(87)【国際公開日】20171123
【審査請求日】2018年11月5日
(31)【優先権主張番号】102016208414.3
(32)【優先日】2016年5月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】フィンク,ラインハルト
【審査官】
谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−360748(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0308245(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁弁のための弁カートリッジ(1)であって、カプセル(3)と、該カプセル(3)内で可動にガイドされている可動子(5)と、第1の端部で以って前記カプセル(3)内に押し込まれている中空円筒形のバルブインサート(8)と、メインバルブシート(9.1)を備えた弁体(9)とを有しており、該弁体(9)が中空円筒形の前記バルブインサート(8)の第2の端部内に挿入されており、前記可動子(5)が、前記バルブインサート(8)内でガイドされているプランジャ(10)を移動させ、該プランジャ(10)が、ベース体(11)と、閉鎖部材(11.2)を備えた閉鎖体(11.1)とを有しており、前記閉鎖部材(11.2)が、シール機能を実施するために前記弁体(9)のメインバルブシート(9.1)内に気密に侵入し、前記プランジャ(10)の前記ベース体(11)に少なくとも1つの調整溝(16)が設けられていて、該調整溝(16)がシール領域(9.2)と可動子室(7)との間の体積調整(14)を可能にする形式のものにおいて、
前記プランジャ(10)が、該プランジャの、前記可動子(5)に向けられた端部に、前記バルブインサート(8)内で前記プランジャ(10)の半径方向のガイド(19)を形成する環状円筒形の外側輪郭(12)と、軸方向の穴(13)とを有しており、前記軸方向の穴(13)が、前記ベース体(11)内の少なくとも1つの前記調整溝(16)とのオーバラップ(17)を有していて、少なくとも1つの半径方向の切欠(18)を介して前記可動子室(7)に接続されていることを特徴とする、電磁弁のための弁カートリッジ。
【請求項2】
前記ベース体(11)が複数のウエブ(15)および調整溝(16)を有しており、これらのウエブ(15)および調整溝(16)が、前記軸方向の穴(13)とのそれぞれ1つのオーバラップ(17)を有していることを特徴とする、請求項1記載の弁カートリッジ。
【請求項3】
前記プランジャ(10)の可動子当接面に、前記軸方向の穴(13)を前記可動子室(7)に接続する複数の半径方向の切欠(18)が形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載の弁カートリッジ。
【請求項4】
前記プランジャ(10)がプラスチック射出成形部分として構成されていて、該プラスチック射出成形部分の前記ベース体(11)に、前記円筒形の外側輪郭(12)、前記軸方向の穴(13)および少なくとも1つの前記半径方向の切欠(18)を備えた中空円筒形体が射出成形されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の弁カートリッジ。
【請求項5】
前記バルブインサート(8)が、スリットの付けられた一体的なスリーブとして構成されていることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の弁カートリッジ。
【請求項6】
前記弁体(9)がキャップ状のスリーブとして構成されていて、該スリーブは、前記メインバルブシート(9.1)が前記バルブインサート(8)内に配置されるように、前記バルブインサート(8)の前記第2の端部内に押し込まれていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の弁カートリッジ。
【請求項7】
磁石構造群および弁カートリッジ(1)を有する電磁弁であって、前記弁カートリッジ(1)内に、磁石構造群により生ぜしめられた磁力によって可動である可動子(5)が可動にガイドされている形式のものにおいて、前記弁カートリッジ(1)が請求項1から6までのいずれか1項に従って構成されていることを特徴とする、電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の上位概念部に記載した、電磁弁のための弁カートリッジに関する。本発明の対象は、このような弁カートリッジを備えた電磁弁でもある。
【背景技術】
【0002】
無電流開放式の電磁弁では、シールエレメントとして閉鎖部材を備えたプランジャが使用される。プランジャガイドは、一般的に複数のウエブおよび切欠を備えたクローバーの葉の形に構成されている。ウエブ間の切欠は、弁のシール領域と可動子室との間の体積調整を保証する。ウエブ自体は、バルブインサートとプランジャとの間の傾斜角度を制限する。これは、バルブインサートが、周方向でウエブ幅よりも小さい、部分的な小さい真円度偏差だけを有している限り有効である。この領域がより大きい場合、プランジャはこの箇所で局所的により大きく傾く。しかしながら、傾き角度は、圧力調整精度およびそのばらつき若しくは再現性に影響を及ぼす。
【0003】
特許文献1によれば、例えば次のような弁カートリッジ、つまり、スリーブと、スリーブに接続されたバルブインサートと、スリーブ内において閉鎖位置と開放位置との間でリターンスプリングの力に抗して軸方向に可動にガイドされている、閉鎖幾何学的形状を有するプランジャに連結された弁可動子と、バルブインサートに接続され、かつバルブシートを備えた弁体とを有しており、このバルブシートが少なくとも1つの第1の流体開口と少なくとも1つの第2の流体開口との間に配置されている弁カートリッジが公知である。閉鎖幾何学的形状は、閉鎖位置内でバルブシートのシート幾何学的形状と気密に協働し、少なくとも1つの第1の流体開口と少なくとも1つの第2の流体開口との間の流体の流れを遮断する。開放位置で、閉鎖幾何学的形状はバルブシートから持ち上げられ、少なくとも1つの第1の流体開口と少なくとも1つの第2の流体開口との間で流体の流れを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102009026853号明細書
【発明の概要】
【発明の効果】
【0005】
独立請求項1の特徴を有する、電磁弁のための弁カートリッジは、プランジャの、可動子に向けられた端部に設けられた環状円筒形の外側輪郭によって、プランジャの傾きは、部分的な比較的大きい真円度偏差においても制限され得る、という利点を有している。しかも、本発明による弁カートリッジの実施例は製造公差に対してより安定している。これは、好適な形式で、圧力調整精度、構成部分製造公差に基づく圧力調整精度のばらつき並びに、同一の弁カートリッジにおける再現性に当てはまる。シール領域と可動子室との間の体積調整はさらに、好適な形式で軸方向の
穴によって保証されており、この軸方向の
穴は、ベース体内で少なくとも1つの調整溝とのオーバラップを有していて、少なくと
も1つの半径方向の切欠を介して可動子室と接続されている。
【0006】
プランジャの端部に配置された円筒形の外側輪郭は、全周面に亘って運動範囲を半径方向で制限する。このことから、好適な形式で、バルブインサート内におけるプランジャのより精確な改善されたガイドが得られる。円筒形の外側輪郭のガイド領域内における横断面狭窄部は、体積調整によって好適な形式で切換速度に影響を及ぼすことはない。
【0007】
プラスチック射出成形部分としての構成では、既存の機械若しくは工具構想によって、このプランジャのデザインを制作することができる。工具キャビティの簡単な適合、および射出プロセス技術的な防護が必要なだけである。
【0008】
本発明の実施例は、カプセルと、このカプセル内で可動にガイドされている可動子と、第1の端部で以ってカプセル内に押し込まれている中空円筒形のバルブインサートと、メインバルブシートを備えた弁体とを有しており、この弁体が中空円筒形のバルブインサートの第2の端部内に挿入されている、電磁弁のための弁カートリッジを提供する。可動子は、バルブインサート内でガイドされているプランジャを移動させ、このプランジャが、ベース体と、閉鎖部材を備えた閉鎖体とを有しており、閉鎖部材が、シール機能を実施するために弁体のメインバルブシート内に気密に侵入するようになっている。プランジャのベース体には少なくとも1つの調整溝が設けられていて、この調整溝がシール領域と可動子室との間の体積調整を可能にする。この場合、プランジャが、このプランジャの、可動子に向けられた端部に、バルブインサート内でプランジャの半径方向のガイドを形成する環状円筒形の外側輪郭と、軸方向の
穴とを有しており、この軸方向の
穴が、ベース体内の少なくとも1つの調整溝とのオーバラップを有していて、少なくとも1つの半径方向の切欠を介して可動子室に接続されている。
【0009】
また、磁石構造群および弁カートリッジを有する電磁弁が提案されており、この場合、弁カートリッジ内に、磁石構造群により生ぜしめられた磁力によって可動である可動子が可動にガイドされている。
【0010】
従属請求項に記載した手段および発展形態によって、独立請求項1に記載された、電磁弁のための弁カートリッジの好適な改善が可能である。
【0011】
特に好適には、ベース体が複数のウエブおよび調整溝を有することが可能であり、これらのウエブおよび調整溝が、軸方向の
穴とのそれぞれ1つのオーバラップを有していることである。また、プランジャの可動子当接面に、軸方向の
穴を可動子室に接続する複数の半径方向の切欠が形成されていてよい。軸方向の
穴の寸法、並びに調整溝および半径方向の切欠の数および寸法は、好適な形式で、減衰特性および弁ダイナミックスに課せられた要求が満たされるか若しくは維持されるように、選定および構成されてよい。
【0012】
電磁弁のための弁カートリッジの好適な実施形態では、プランジャがプラスチック射出成形部分として構成されていて、このプラスチック射出成形部分のベース体に、円筒形の外側輪郭、軸方向の
穴および少なくとも1つの半径方向の切欠を備えた中空円筒形体が射出成形されてよい。
【0013】
電磁弁のための弁カートリッジの別の好適な実施態様では、バルブインサートが、スリットの付けられた安価な一体的なスリーブとして構成されていてよい。弁体は、例えばキャップ状のスリーブとして構成されていてよく、このスリーブは、メインバルブシートがバルブインサート内に配置されるように、バルブインサートの第2の端部内に押し込まれていてよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】電磁弁のための弁カートリッジの一実施例の概略的な断面図である。
【
図2】
図1に示した電磁弁のための弁カートリッジの実施例のII―II交線に沿った概略的な断面図である。
【
図3】
図1に示した電磁弁のための弁カートリッジの実施例のIII―III交線に沿った概略的な断面図である。
【
図4】
図1に示した電磁弁のための弁カートリッジのプランジャの一実施例の、上方から見た概略的な平面図である。
【
図5】
図1に示した電磁弁のための弁カートリッジのプランジャの一実施例の、下方から見た概略的な平面図である。
【
図6】バルブインサートが部分的な真円度偏差を有する、電磁弁のための従来の弁カートリッジの可動子室の領域内の概略的な断面図である。
【
図7】バルブインサートが部分的な真円度偏差を有する、
図1に示した電磁弁のための弁カートリッジの可動子室の領域内の概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施例が図面に示されていて、以下に詳しく記載されている。
【0016】
図1乃至
図5に示されているように、電磁弁のための本発明による弁カートリッジ1の図示の実施例は、カプセル3と、このカプセル3内で可動にガイドされている可動子5と、第1の端部で以ってカプセル3内に押し込まれた中空円筒形のバルブインサート8と、中空円筒形のバルブインサート8の第2の端部内に挿入されたメインバルブシート9.1を備えた弁体9とを有している。可動子5は、バルブインサート8内でガイドされているプランジャ10を移動させ、このプランジャ10は、ベース体11と、閉鎖部材11.2を備えた閉鎖体11.1とを有しており、閉鎖部材11.2は、シール機能を実施するために弁体9のメインバルブシート9.1内に気密に侵入する。プランジャ10のベース体11内に、少なくとも1つの調整溝16が設けられていて、この調整溝16は、シール領域9.2と可動子室7との間の体積調整14を可能にする。この場合、プランジャ10は、その可動子5に向いた側の端部に、バルブインサート8内でプランジャ10の半径方向ガイド19を形成する環状円筒形の外側輪郭12と、軸方向の
穴13とを有しており、この軸方向の
穴13は、ベース体11内で少なくとも1つの調整溝16とのオーバラップ17を有していて、少なくとも1つの半径方向の切欠18を介して可動子室7に接続されている。
【0017】
さらに
図1乃至
図5に示されているように、プランジャ10のベース体11は図示の構成では、4つのウエブ15および調整溝16を備えたクローバーの葉の形に構成されており、これらのウエブ15および調整溝16は、軸方向の
穴13とのそれぞれ1つのオーバラップ17を有している。もちろん、その他の数のウエブ16および調整溝16が設けられていてもよい。
【0018】
さらに
図1乃至
図5に示されているように、プランジャ10の可動子当接面に、4つの半径方向の切欠18が形成されており、これらの切欠18は軸方向の
穴13を可動子室7に接続する。
【0019】
図示の実施例では、プランジャ10は安価なプラスチック射出成形部分として構成されており、このプラスチック射出成形部分のベース体11に、円筒形の外側輪郭12、軸方向の
穴13および4つの半径方向の切欠18を備えた中空円筒形体が射出成形されている。バルブインサート8は一体的なスリットの付けられたスリーブとして構成されている。弁体9はキャップ状のスリーブとして構成されていて、このスリーブは、メインバルブシート9.1がバルブインサート8内に配置されるように、バルブインサート8の第2の端部内に押し込まれている。弁体9は、例えば深絞り部分として製作されていてよい。
【0020】
ウエブ15間の切欠若しくは調整溝16は、シール領域9.1と可動子室7との間の体積調整を保証する。ウエブ15自体は、
図6に示された従来の弁カートリッジ1Hにおいて、バルブインサート8とプランジャ10Hとの間の傾斜角度を制限する。これは、バルブインサート8が、周方向でウエブ幅よりも小さい、部分的な小さい真円度偏差RAだけを有している限り有効である。真円度偏差RAの領域がより大きい場合は、プランジャ10Hの有効な半径方向遊びRSはより大きく、従来の弁カートリッジ1Hのプランジャ10Hはこの箇所で、
図6に示されているように、局所的により大きく傾斜し得る。さらに
図7に示されているように、射出成形された円筒形の外側輪郭12によって、本発明による弁カートリッジ1の実施例におけるプランジャの有効な半径方向遊びRSおよびひいてはプランジャ10の傾きは、より大きい部分的な真円度偏差RAにおいても制限される。これによって、本発明による弁カートリッジ1の実施例は製造公差に対してより安定している。これは特に、圧力調整精度、部分公差に基づく圧力調整精度のばらつき並びに同一の弁カートリッジ1における再現性のために当てはまる。
【0021】
軸方向の
穴13を可動子室7に接続する、プランジャ10の可動子当接面における半径方向の切欠18並びに円筒形の軸方向の
穴13によって、シール領域9.2と可動子室7との間で必要とされる体積調整が好適な形式で可能である。
【0022】
本発明による弁カートリッジ1の図示の実施例は、例えば、磁石構造群を備えた無電流開放式の電磁弁内に組み込まれてよい。この場合、弁カートリッジ1内で可動にガイドされている可動子5が、電磁弁を閉鎖するために、つまり閉鎖部材11.2をメインバルブシート9.1内に押し付けるために、詳しく図示していない磁石構造群により生ぜしめられた磁力によって移動せしめられる。開放位置へのプランジャ10のリセットは、磁石構造群の遮断時に詳しく図示していないリターンスプリングによって行われる。
【符号の説明】
【0023】
1,1H 弁カートリッジ
3 カプセル
5 可動子
7 可動室
8 バルブインサート
9 弁体
9.1 メインバルブシート
9.2 シール領域
10,10H プランジャ
11 ベース体
11.1 閉鎖体
11.2 閉鎖部材
12 外側輪郭
13 軸方向の
穴
14 体積調整
15 ウエブ
16 調整溝
17 オーバラップ
18 半径方向の切欠
19 半径方向のガイド
RA 真円度偏差
RS 有効な半径方向遊び