特許第6669907号(P6669907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6669907
(24)【登録日】2020年3月2日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】コークス炉の装炭レベル測定方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 31/02 20060101AFI20200309BHJP
   C10B 41/00 20060101ALI20200309BHJP
   G01F 23/284 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   C10B31/02
   C10B41/00
   G01F23/284
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-25436(P2019-25436)
(22)【出願日】2019年2月15日
(62)【分割の表示】特願2015-22527(P2015-22527)の分割
【原出願日】2015年2月6日
(65)【公開番号】特開2019-104922(P2019-104922A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2019年2月15日
(31)【優先権主張番号】特願2014-28501(P2014-28501)
(32)【優先日】2014年2月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】593207271
【氏名又は名称】株式会社WADECO
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萱野 早衛
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−306976(JP,A)
【文献】 特開2012−188589(JP,A)
【文献】 特開2012−067340(JP,A)
【文献】 特開2011−145237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 31/00
C10B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装炭車の受炭ホッパーから給炭装置により石炭投入シュートに送られ、前記石炭投入シュートを通じてコークス炉内に供給された石炭の表面に、ミリ波またはマイクロ波を送信し、石炭の表面で反射されたミリ波またはマイクロ波の反射波を受信して装炭レベルを測定するために、装炭車の内部に設置される装置を用いた測定方法であって、
前記石炭投入シュートの天井面の、該石炭投入シュートの中心軸よりも前記給炭装置とは反対側に開口を設けるとともに、前記開口と、ミリ波またはマイクロ波の送受信手段とをガイドパイプで連結し、
前記石炭投入シュートの中心軸よりも前記給炭装置とは反対側の位置にて、ミリ波又はマイクロ波による送受信を行うとともに、
前記給炭装置からの給炭量を少なくして、前記石炭投入シュートの中心軸よりも該給炭装置とは反対側に前記石炭が落下しない領域、または落下量が少ない領域を形成し、前記領域を通じて前記送受信を行って装炭レベルを測定する
ことを特徴とするコークス炉の装炭レベル測定方法
【請求項2】
前記給炭装置からの給炭量を装炭作業の後半で少なくし、装炭作業の後半から終了までの期間内に装炭レベルを測定する
ことを特徴とする請求項1記載のコークス炉の装炭レベル測定方法
【請求項3】
少なくとも測定時に前記ガイドパイプ内にパージ用ガスを供給することを特徴とする請求項1または2記載のコークス炉の装炭レベル測定方法
【請求項4】
前記石炭投入シュートの前記開口を塞いで防塵・防熱フィルタが取り付けられており、前記防塵・防熱フィルタに前記ガイドパイプが連結されるとともに、
前記防塵・防熱フィルタが、前記石炭投入シュート側から順に、ミリ波またはマイクロ波を透過する耐熱材料からなる通気性のフィルタと、ミリ波またはマイクロ波を透過する耐熱材料からなる非通気性の断熱板とを離間させて配置して枠体で包囲し、前記フィルタと前記断熱板との間の空間にパージ用ガス供給することを特徴とする請求項記載のコークス炉の装炭レベル測定方法
【請求項5】
前記ガイドパイプが、L字管で、その90°屈曲部に第1の反射板を備えており、
一端に前記送受信手段のアンテナを収容し、
他端に前記第1の反射板の反射面及び前記石炭投入シュートの前記開口の両方と対向する第2の反射板を備えることを特徴とする請求項の何れか1項に記載のコークス炉の装炭レベル測定方法
【請求項6】
前記防塵・防熱フィルタのフィルタが、ミリ波またはマイクロ波を透過する耐熱材料からなる繊維を平面状に織って通気性を持たせた面状織物フィルタ、または前記繊維を袋状に加工した通気性を持たせた袋状織物フィルタであることを特徴とする請求項記載のコークス炉の装炭レベル測定方法
【請求項7】
ミリ波またはマイクロ波の回転波を使用することを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載のコークス炉の装炭レベル測定方法
【請求項8】
装炭レベルを装炭中に測定し、最適レベルに達した時に装炭を停止する信号を出力することを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載のコークス炉の装炭レベル測定方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装炭車からコークス炉の装炭口を通じて投入された石炭の表面にミリ波またはマイクロ波を送信し、石炭の表面で反射されたミリ波またはマイクロ波を受信して装炭レベルを測定する装置を用いた測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉では、上面に複数の装炭口が設けられており、石炭を積んだ装炭車を移動させながら石炭を装炭口から順次投入している。その際、コークス炉内に投入された石炭の装炭レベルを測定し、できるだけ多く装炭して生産性を上げることが求められている。
【0003】
そこで、本出願人は先に、特許文献1において、図7に示すような測定装置を提案している。同図において、装炭車1は、受炭ホッパー10の石炭Cを、給炭装置12により石炭投入シュート11に送るための装置であり、コークス炉100の上面に固定されたレール101に沿って、例えば図示されるように紙面の前後方向に移動する。そして、装炭車1は、石炭投入シュート11が、コークス炉100の装炭口102の直上に至ったときに停車し、石炭Cを炉内に投下する。石炭投入シュート11の下方端部には、下端が内方に狭窄してコークス炉100の装炭口102の口径に合わせたスリーブ13が外装されており、石炭Cがこのスリーブ13を通じて装炭口102に確実に投下されるようになっている。
【0004】
装炭車1の上面1aにはマイクロ波の送受信手段20が設置され、床面1bの下方にはアンテナ22が配置されており、送受信手段20とアンテナ22とが導波管21により接続されている。送受信手段20には、マイクロ波の送受信や、装炭レベルの算出等の演算を行うコントローラ24が接続している。このように送受信手段20やコントローラ24をコークス炉100から離して配置することにより、断熱構造を用いなくても、熱による誤作動を防ぐことができる。
【0005】
また、アンテナ22と対向して反射板23が配置されており、反射板23に向かって延出するガイドパイプ26が付設されている。反射板23の反射面23aは、アンテナ22の反射面の軸線Aに対して45°の角度で装炭口側に傾斜しており、アンテナ22から送信されたマイクロ波が、反射板23の反射面23aで反射され、装炭口102を通じてコークス炉100の内部に送られ、更に石炭C´の表面で反射される(図中M)。そして、この反射マイクロ波が反射板23に戻り、反射面23aで反射されてアンテナ22で受信される。
【0006】
更に、反射板23には反射板移動手段(図示せず)が接続しており、測定時に反射板23を装炭口102の直上に移動し、石炭投入時に装炭口102の直上から離れるように移動させる。
【0007】
ここで、マイクロ波として電界が時計回り又は反時計回りの一方向に回転する回転波を用いることにより、装炭口102の壁面102aによる反射波(M´)を受信しないようにできるため、より正確な測定が可能になる。
【0008】
このような装置構成により、熱の影響を無くして装炭レベルを正確に測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012−188589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載された測定装置では、アンテナ22及びガイドパイプ26、反射板23がスリーブ13の下方に配置されているため、スリーブ13の下端とコークス炉100との離間距離によっては、これらを設置できない場合がある。また、装炭時と測定時とで反射板23を装炭口102の直上から移動させなければならず、反射板移動手段が別途必要になる。
【0011】
また、反射板23及びアンテナ22が装炭口102に接近しているため、測定時にコークス炉100からの粉塵が反射板23の反射面23a及びアンテナ22のアンテナ面に付着し、測定精度に悪影響を及ぼすおそれもある。
【0012】
そこで本発明は、コークス炉の装炭レベル測定装置において、石炭投入シュートのスリーブとコークス炉との離間距離に関係なく設置でき、反射板の移動手段も不要であり、更にはコークス炉からの粉塵や熱の影響を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記の目的を達成するために下記のコークス炉の装炭レベル測定方法を提供する。
(1)装炭車の受炭ホッパーから給炭装置により石炭投入シュートに送られ、前記石炭投入シュートを通じてコークス炉内に供給された石炭の表面に、ミリ波またはマイクロ波を送信し、石炭の表面で反射されたミリ波またはマイクロ波の反射波を受信して装炭レベルを測定するために、装炭車の内部に設置される装置を用いた測定方法であって、
前記石炭投入シュートの天井面の、該石炭投入シュートの中心軸よりも前記給炭装置とは反対側に開口を設けるとともに、前記開口と、ミリ波またはマイクロ波の送受信手段とをガイドパイプで連結し、
前記石炭投入シュートの中心軸よりも前記給炭装置とは反対側の位置にて、ミリ波又はマイクロ波による送受信を行うとともに、
前記給炭装置からの給炭量を少なくして、前記石炭投入シュートの中心軸よりも該給炭装置とは反対側に前記石炭が落下しない領域、または落下量が少ない領域を形成し、前記領域を通じて前記送受信を行って装炭レベルを測定する
ことを特徴とするコークス炉の装炭レベル測定方法
(2)前記給炭装置からの給炭量を装炭作業の後半で少なくし、装炭作業の後半から終了までの期間内に装炭レベルを測定する
ことを特徴とする上記(1)記載のコークス炉の装炭レベル測定方法
)少なくとも測定時に前記ガイドパイプ内にパージ用ガスを供給することを特徴とする上記(または(2)記載のコークス炉の装炭レベル測定方法
)前記石炭投入シュートの前記開口を塞いで防塵・防熱フィルタが取り付けられており、前記防塵・防熱フィルタに前記ガイドパイプが連結されるとともに、
前記防塵・防熱フィルタが、前記石炭投入シュート側から順に、ミリ波またはマイクロ波を透過する耐熱材料からなる通気性のフィルタと、ミリ波またはマイクロ波を透過する耐熱材料からなる非通気性の断熱板とを離間させて配置して枠体で包囲し、前記フィルタと前記断熱板との間の空間にパージ用ガス供給することを特徴とする上記()記載のコークス炉の装炭レベル測定方法
)前記ガイドパイプが、L字管で、その90°屈曲部に第1の反射板を備えており、
一端に前記送受信手段のアンテナを収容し、
他端に前記第1の反射板の反射面及び前記石炭投入シュートの前記開口の両方と対向する第2の反射板を備えることを特徴とする上記()〜()の何れか1項に記載のコークス炉の装炭レベル測定方法
)前記防塵・防熱フィルタのフィルタが、ミリ波またはマイクロ波を透過する耐熱材料からなる繊維を平面状に織って通気性を持たせた面状織物フィルタ、または前記繊維を袋状に加工した通気性を持たせた袋状織物フィルタであることを特徴とする上記()記載のコークス炉の装炭レベル測定方法
)ミリ波またはマイクロ波の回転波を使用することを特徴とする上記(1)〜()の何れか1項に記載のコークス炉の装炭レベル測定方法
)装炭レベルを装炭中に測定し、最適レベルに達した時に装炭を停止する信号を出力することを特徴とする上記(1)〜()の何れか1項に記載のコークス炉の装炭レベル測定方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の装炭レベル測定装置では、石炭投入シュートの中心軸よりも給炭装置とは反対側の位置にて送受信を行うとともに、給炭装置からの給炭量を少なくして石炭投入シュートの中心軸よりも給炭装置とは反対側に石炭が落下しない領域、または落下量が少ない領域を形成し、この領域を通じて送受信を行うことより、給炭装置から供給され、落下している石炭による反射の影響を受けることなく装炭レベルを測定することができる。また、送受信手段と石炭投入シュートの天井面の開口とをガイドパイプで連結し、装置全体を装炭車内に収容したため、石炭投入シュートのスリーブとコークス炉との離間距離に関係なく設置することができ、更には測定時と装炭時とで反射板をコークス炉の装炭口の直上に移動したり、装炭口から離す必要がなく、反射板の移動手段が不要になる。しかも、装炭中に装炭レベルを測定することもできる。更に、ガイドパイプ内にパージ用ガスを供給するため、粉塵の侵入を防ぐこともでき、装炭車の石炭投入シュートの天井面に防塵・防熱フィルタを設けることにより、炉内からの熱を遮断でき、粉塵の侵入をより防ぐことができ、送受信がより良好になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の装炭レベル測定装置の基本構成を示す断面図である。
図2】防塵・防熱フィルタを示す断面図である。
図3】防塵・防熱フィルタの他の例(袋状織物フィルタ)を示す断面図である。
図4】ガイドパイプとしてL字管を用いた装炭レベル測定装置を示す断面図である。
図5】本発明の装炭レベル測定装置の一例を示す断面図である。
図6】スイープによるビート波から装炭レベルを求める方法を説明するための模式図である。
図7】特許文献1の装炭レベル測定装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
本発明の装炭レベル測定装置の基本構成を図1に示すが、装置全体が一般的な装炭車1の内部に設置される。装炭車1は、図7にも示したように、外部から供給された石炭Cを貯留する受炭ホッパー10と、受炭ホッパー10の石炭Cを石炭投入シュート11に送るための給炭装置12とを備えている。尚、給炭装置12は、スクリューフィーダーやテーブルフィーダー等が一般的である。また、石炭投入シュート11の下方端部には、下端が内方に狭窄してコークス炉100の装炭口102の口径に合わせたスリーブ13が外装されていてもよい。そして、装炭車1は、コークス炉100の上面に固定されたレール101に沿って、例えば図示されるように紙面の前後方向に移動する。
【0018】
石炭投入シュート11の天井面11aの中央部分には開口11bが形成されており、開口11bにガイドパイプ40の一端が取り付けられている。また、ガイドパイプ40の他端には、送受信手段20のアンテナ22が取り付けられている。尚、ガイドパイプ40は、図の例では開口11bから直上に延びる直管であるが、屈曲部に反射板を設置したL字管でもよい(図4参照)。
【0019】
更に、ガイドパイプ40の側壁には、アンテナ22の付近にガス供給口35が設けられており、窒素ガスや空気等のパージ用ガスが供給される。ガス供給口35のガイドパイプ内の突出口(図示せず)は、ガイドパイプ40の内壁に向けて、かつ、石炭投入シュート11の開口11bに向けて下方に傾斜して形成されることが好ましく、これにより、図示されるように、パージ用ガスがガイドパイプ40の内壁に沿って石炭投入シュート11の開口11bに向かって螺旋状に旋回して流れ、開口11bから排出されるため、防塵効果が高まる。
【0020】
尚、図示は省略するが、送受信手段20はコントローラ(図7の符号24)により、ミリ波またはマイクロ波の送受信の制御、受信信号の処理等を行う。また、送受信手段20とコントローラはユニット化されていてもよい。
【0021】
このように構成される装炭レベル装置では、測定時には、図中の矢印で示されるように、送受信手段20からのミリ波またはマイクロ波は、アンテナ22から送信されてガイドパイプ40を伝搬して石炭投入シュート11、スリーブ13へと進み、装炭口102を通ってコークス炉100の内部へと進む。そして、炉内に堆積している石炭C´の表面で反射されたミリ波またはマイクロ波は、これまでとは逆の経路を経て送受信手段20で受信される。そして、コントローラにて、ミリ波またはマイクロ波の送受信の時間差に基づいて石炭C´の堆積レベルが算出される。また、少なくとも測定時に、好ましくは常時、パージ用ガスを供給することにより、ガイドパイプ40の内部への粉塵侵入が防止されるため、良好な送受信が行われる。
【0022】
また、送受信手段20、アンテナ22及びガイドパイプ40が、装炭車1の内部に収容されているため、石炭投入シュート11のスリーブ13とコークス炉100との離間距離に関係なく設置でき、更には特許文献1のように反射板23(図7参照)を移動する必要もない。
【0023】
また、図2に示すように、開口11bを塞いで防塵・防熱フィルタ30を取り付けてもよい。防塵・防熱フィルタ30は、耐熱材料からなり、ミリ波またはマイクロ波を透過し、気体を透過しない非通気性の断熱板31と、断熱材料からなり、ミリ波またはマイクロ波を透過する板材の全面に貫通孔32aを多数形成して通気性を持たせたフィルタ板32とを離間させ、枠体33で包囲したものである。断熱板31及びフィルタ板32は、例えばセラミック製とすることができる。
【0024】
また、枠体33には、断熱板31とフィルタ板32との間の空間Sにパージ用ガスを供給するためのガス供給口35が付設されている。尚、枠体33の内壁に隔壁36を設けるとともに、隔壁36にフィルタ板側に傾斜している突出口37を形成してもよい。これにより、ガス供給口35からのパージ用ガスが効率よくフィルタ板32へと供給され、貫通孔32aを通じて開口11bへと流出させることにより、粉塵の侵入を防ぐことができる。
【0025】
この防塵・防熱フィルタ30は、フィルタ板32が石炭投入シュート側になるように、開口11bに気密に装着される。
【0026】
ところで、上記したフィルタ板32はセラミック板のような剛体であることから、パージ用ガスを枠体内に供給して貫通孔32aから流出させても、フィルタ板32が振動することは無い。そのため、石炭投入シュート側の面の貫通孔以外の部分(図中ハッチング部分の下面)に付着した粉塵は、貫通孔32aからパージ用ガスを流出させても取り除くことが困難になる。粉塵の付着量が多くなりすぎると、ミリ波またはマイクロ波の送受信に影響するため、防塵・防熱フィルタ30を石炭投入シュート11から取り外し、付着した粉塵を取り除く作業が必要になる。
【0027】
そこで、フィルタ板32の代わりに、ミリ波またはマイクロ波を透過する耐熱材料からなる繊維、例えばセラミック繊維を平面状に織って通気性を持たせた織物(面状織物フィルタ)を枠体33に張設してもよい。この面状織物フィルタは軟質で、可撓性を有するため、パージ用ガスを枠体内に供給したときや、パージ用ガスが繊維間の隙間(貫通孔32aに相当)を通って流出するときに振動し、付着した粉塵を振るい落すことができる。尚、ミリ波またはマイクロ波を透過するセラミック繊維として、例えば宇部興産(株)製の「チラノ繊維」を用いることができる。このチラノ繊維は、シリコン、チタン、ジルコニウム、炭素及び酸素からなるセラミック繊維であり、これを織った織物は、耐熱性及び通気性を有する可撓性部材となる。
【0028】
また、より大きく振動させて粉塵の振るい落し効果を高めるために図3に示すように、上記の織物を袋状にした袋状織物フィルタ32Aを、自重により石炭投入シュータ側に垂下するように枠体33に取り付けてもよい。但し、図示されるように、給炭装置12からの石炭Cが袋状織物フィルタ32Aに当たらないように、袋状織物フィルタ32Aの下端が給炭装置12の開口12aよりも上方になるようにする。尚、袋状織物フィルタ32Aはミリ波やマイクロ波を透過する繊維材料からなるため、湾曲していてもミリ波やマイクロ波の送受信には何ら影響しない。
【0029】
更に、ガイドパイプ40を、図4に示すようにL字管にすることもできる。このL字管からなるガイドパイプ40Aは、90°屈曲部に第1の反射板41を備えており、一方の端部に送受信手段20が接続されており、他方の端部に第2の反射板42を備えている。尚、他方の端部は、図示されるように、防塵・防熱フィルタ30に取り付けられていることが好ましいが、石炭投入シュート11の開口11bに直接取り付けてもよい。第1の反射板41及び第2の反射板42は共に45°反射板であり、第1の反射板41の反射面は送受信手段20及び第2の反射板42の反射面を向くように45°上方に傾斜しており、第2の反射板42は第1の反射板41の反射面及び石炭投入シュート11を向くように45°下方に傾斜している。
【0030】
また、ガイドパイプ40Aにおいて、送受信手段20と第1の反射板41とを結ぶ直管部40aには、送受信手段20に接続するアンテナ22が収容されている。また、第1の反射板41と第2の反射板42とは水平管部40bで連結されている。更に、第2の反射板42には石炭投入シュート11に向かう垂下部40cが付設されており、垂下部40cが開口11bまたは防塵・防熱フィルタ30に連結して固定されている。
【0031】
ガイドパイプ40Aでは、送受信手段20(及びコントローラ)を高温のコークス炉100から離間させることができる。尚、送受信手段20をコークス炉100からより離間させるために、反射板の枚数を増やす等してガイドパイプ40Aを長くすることもできる。
【0032】
ガイドパイプ40Aでも、アンテナ22及びガイドパイプ40が、装炭車1の内部に収容されているため、石炭投入シュート11のスリーブ13とコークス炉100との離間距離に関係なく設置でき、更には特許文献1のように反射板23(図7参照)を移動する必要もない。
【0033】
そして、測定時には、図中に矢印で示すように、送受信手段20からのミリ波またはマイクロ波は、アンテナ22から送信されてガイドパイプ40Aの直管部40aを伝搬して第1の反射板41で反射された後、水平管部40bを伝播して第2の反射板42で再度反射され、その後、垂下部40cを伝搬し、石炭投入シュート11の開口11bまたは防塵・防熱フィルタ30を透過して石炭投入シュート11へと進行する。次いで、石炭投入シュート11からコークス炉100の装炭口102を通じて炉内へと進み、コークス炉内に堆積している石炭C´の表面で反射されたミリ波またはマイクロ波は、これまでとは逆の経路を経て送受信手段20で受信される。そして、コントローラにて、ミリ波またはマイクロ波の送受信の時間差に基づいて石炭C´の堆積レベルが算出される。
【0034】
ところで、炉内の石炭C´で反射されたミリ波またはマイクロ波は、装炭口102の壁面102aや石炭投入シュート11の内壁で更に反射されて第2の反射板42に入射し、送受信手段20で受信されることがある(図1及び図4のR´)。このような不要波が受信されると、本来の装炭レベルとは異なる位置にピークとなって現れる。そこで、電界が時計回りまたは反時計回りの一方向に回転する回転波を用いることが好ましい。この回転波は、反射により回転方向が反転する性質があるため、石炭C´の表面のみで反射されたミリ波またはマイクロ波(R)と、装炭口102の壁面102aや、石炭投入シュート11の内壁で更に反射されたミリ波またはマイクロ波(R´)とでは、反射の回数が異なるため、受信したミリ波またはマイクロ波を電界の回転方向で区別することができる。
【0035】
即ち、例えば時計回りの回転波を送信すると、第1の反射板41及び第2の反射板42で2回反射されて時計回りの回転波となって石炭C´に入射する。そして、石炭C´の表面で反射されて反時計回りの回転波となり、第2の反射板42及び第1の反射板41で反射されて反時計回りの回転波となって受信される。一方、例えば石炭投入シュート11の内壁で反射された場合には、石炭C´の表面で反射された反時計回りの回転波が石炭投入シュート11の内壁で反射された際に時計回りの回転波となり、第2の反射板42及び第1の反射板41で反射されて時計回りの回転波となって受信される。従って、反時計回りの回転波のみを受信することにより、石炭投入シュート11の内壁で反射された回転波(R´)を排除することができ、正確な装炭レベルを検出することができる。
【0036】
尚、回転波を生成するには、公知の方法で構わず、例えば送受信手段20とアンテナ22とを接続する導波管内に誘電材料からなる90°位相板を装着すればよい。
【0037】
また、検出媒体としてミリ波を使用することが好ましい。図示されるように、炉内に投入された石炭Cは通常、装炭口102の中心の直下付近を頂点とする円錐状に堆積し、装炭直後の石炭C´の表面は全体として凹凸面になる。そして、マイクロ波またはミリ波は、装炭口102の中心を軸線として入射するため、マイクロ波またはミリ波は石炭C´の円錐の傾斜面に入射し、反射される。マイクロ波は散乱角度が狭いため、傾斜面で反射されると、図中の水平方向や、斜め上方または斜め下方への反射波が主となり、ガイドパイプ40や送受信手段20が設置されている直上方向への反射波が少なくなるため、送受信を良好に行うことが困難になる。そのため、装炭後にレベラーを用いて石炭C´の表面を平坦化してから装炭レベルを測定している。
【0038】
これに対しミリ波は、マイクロ波に比べて散乱角度が大きいため、傾斜面で反射しても、種々の方向に反射して直上方向への反射波がマイクロ波を用いた場合よりも多くなり、受信を良好に行うことができるようになる。そのため、装炭直後にレベリング作業をすることなく装炭レベルを測定することができる。但し、測定した装炭レベルは、円錐状の頂点付近の装炭レベルであり、平坦化した装炭レベルとは異なる。そこで、測定した装炭レベルを円錐の頂点と見做し、その円錐の体積を算出して個々の円錐状に堆積した石炭C´の装炭量を求め、凹部を埋めて平坦化した場合を想定して装炭レベルを推定する。また、装炭後にレベラーを用いて石炭C´の表面を平坦化してから装炭レベルを測定し、推定した装炭量が正しいか否かを確認することもできる。
【0039】
また、ミリ波は、マイクロ波に比べてアンテナ22の口径並びにガイドパイプ40の口径を小さくすることができ、それに伴って防塵・防熱フィルタ30も小型化して空間Sも小容量になり、パージ用ガスがより効率的に作用して防塵効果がより高まる。
【0040】
更に、ミリ波は、マイクロ波に比べてビーム径を小さくすることもできる。図5(ここでは、図4の構成に従って示す。)に示すように、防塵・防熱フィルタ30を、石炭投入シュート11の中心軸Oよりも給炭装置12の開口12aとは反対側(図中右側)にずらして取り付け、上記と同様にしてミリ波を伝搬させる。それによりミリ波は、石炭投入シュート11の中心軸Oではなく、給炭装置12の開口12aとは反対側の空間を通ってコークス炉100へと進む。装炭作業中、通常は、石炭Cは石炭投入シュート11の内部全体を落下するが、給炭装置12からの石炭供給量を少なくすることにより、石炭投入シュート11の中心軸Oよりも開口12aとは反対側に、石炭Cが落下しない、もしくは落下量が少ない領域ができる。そこで、ミリ波を用い、給炭装置12からの石炭供給量を装炭作業の後半または終了近くに少なくすることで、落下している石炭Cによる反射の影響を受けることなく装炭レベルを測定することができる。
【0041】
尚、図5に示すように、防塵・防熱フィルタ30を、石炭投入シュート11の中心軸Oからずらして取り付ける構成は、石炭投入シュート11の径を広げることによりマイクロ波でも可能になる。
【0042】
装炭レベルは通常、装炭作業が完了した後に行われるが、このように装炭作業と同時に装炭レベルを測定することができれば、装炭レベルの調整を迅速に行うことが可能になる。
【0043】
また、装炭作業と同時に装炭レベルを測定する方法として、装炭中にスイープを複数回行い、スイープ毎に、落下している石炭による反射波とのビート波を生成し、スイープ終了までの全てのビート波を合算して得たスペクトルから装炭レベルと求めることもできる。尚、この場合は、検出媒体としてミリ波及びマイクロ波の両方を用いることができる。
【0044】
落下している石炭Cにミリ波またはマイクロ波を照射するとともに、スイープを複数回行うと、各スイープ毎に反射波とのビート波が生成するが、各スイープで生成したビート波は他のスイープで生成したビート波とは互いに位相が異なったものとなる。そのため、スイープ毎に生成した各ビート波を合算すると、種々の位相のビート波が重なり合い、全体として振幅が殆ど変らなくなる。一方、装炭口102の直下では、落下する石炭Cが堆積を続けるため、この位置で反射される反射波は、スイープの回数が変わっても同じ位相のビート波が生成する。そのため、この位置でのビート波を合算すると、スイープの回数だけ振幅が増していく。このことは、FET処理した後も等価である。
【0045】
即ち、図6に示すように、スイープ1回目のビート波(同図(a))と、スイープn回目のビート波(同図(b)とで、ピーク位置(位相)が若干異なるものの、振幅がほぼ同じプロファイルが得られている。そして、スイープ終了までの全てのビート波を合算すると、同図(c)に示すように、落下している石炭Cからの受信強度がスイープ1回目やn回目とほぼ同じレベルであるのに対し、装炭口102の直下で堆積を続けている石炭によるビード波では振幅が加算されて大きなピークAとなって現れている。そこで、この大きなピークAに検出することにより、装炭と同時に装炭レベルを検出することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 装炭車
10 受炭ホッパー
11 石炭投入シュート
12 給炭装置
20 送受信手段
22 アンテナ
30 防塵・防熱フィルタ
31 断熱板
32 フィルタ板
32A 袋状織物フィルタ
33 枠体
35 ガス供給口
40 ガイドパイプ
40A ガイドパイプ
41 第1の反射板
42 第2の反射板
100 コークス炉
101 レール
102 装炭口
C、C´ 石炭
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7