(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6669917
(24)【登録日】2020年3月2日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】ボルテージレギュレータ
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20200309BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20200309BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20200309BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
G05F1/56 310F
H02J1/00 309H
H01L27/04 B
H01L27/04 H
H01L27/04 V
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-74531(P2019-74531)
(22)【出願日】2019年4月10日
(62)【分割の表示】特願2014-256851(P2014-256851)の分割
【原出願日】2014年12月19日
(65)【公開番号】特開2019-164800(P2019-164800A)
(43)【公開日】2019年9月26日
【審査請求日】2019年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 正一
(72)【発明者】
【氏名】冨岡 勉
【審査官】
小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−052886(JP,A)
【文献】
特開2010−266957(JP,A)
【文献】
特開2004−252891(JP,A)
【文献】
特開2010−165449(JP,A)
【文献】
特開2005−258644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
H01L 21/822
H01L 27/04
H02J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力電圧を分圧した分圧電圧と基準電圧の差を増幅した電圧によって出力トランジスタを制御する増幅器と、
制御信号によって抵抗値が切り替わる可変抵抗を有し、電源電圧の変動を検出すると前記出力トランジスタのゲート電圧を制御して、前記出力電圧のオーバーシュートを抑制する第一オーバーシュート抑制手段と、
電源投入を検出する手段を有し、電源起動時にのみ前記可変抵抗の抵抗値を大きくする前記制御信号を出力する制御回路と、を備えた
ことを特徴とするボルテージレギュレータ。
【請求項2】
前記ボルテージレギュレータは、
更に、前記増幅器の動作電流を制御して、前記出力電圧のオーバーシュートを抑制する第二オーバーシュート抑制手段を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載のボルテージレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルテージレギュレータのオーバーシュート特性を改善することが可能なボルテージレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のボルテージレギュレータは、
図4に示すように、電圧源401の基準電圧VREFと、ボルテージレギュレータの出力端子407の電圧(以下、VOUTと記載する)を分圧する分圧回路をなす抵抗405、406の接点の電圧との差電圧を増幅し電流源403によって給電される増幅器402とからなるボルテージレギュレータ制御回路と、増幅器402の出力電圧に基づき制御される出力トランジスタ404と、抵抗411とコンデンサ412とトランジスタ413とからなるオーバーシュート抑制手段400とで構成され、正の電源電圧(以下、VDDと記載する)により動作をする。
【0003】
増幅器402の出力電圧をVERR、抵抗405、406の接点の電圧をVFBとすれば、VREF>VFBならば、VERRは低くなり、逆にVREF<VFBならば、VERRは高くなる。
【0004】
VERRが低くなると、出力トランジスタ404は、オン抵抗が小さくなりVOUTを高くし、逆にVERRが高くなると、出力トランジスタ404は、オン抵抗が大きくなりVOUTを低くし、結局、VREF=VFBとなり、VOUTを一定に保持する。
【0005】
電源投入時には、VOUTはまだ低くVREF>VFBの状態である。このとき、出力トランジスタ404はオン抵抗が低くなるよう制御されるため、VOUTにオーバーシュートが発生しやすい。そこで、抵抗411とコンデンサ412との時定数で決まる一定の期間、トランジスタ413をオン制御することにより、VERRをVDDに近い電圧に制御する。このことにより、出力トランジスタ404はオフ制御されるため、VOUTのオーバーシュートの抑制が図られる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−252891号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、
図4に示す従来のボルテージレギュレータでは、VOUTのオーバーシュートの抑制時には、トランジスタ413がオフ制御されてしまうため、ボルテージレギュレータの出力端子407に負荷が接続されている場合、VOUTにアンダーシュートが発生する可能性がある。
【0008】
即ち、電源電圧や負荷などの状態によって、最適なオーバーシュート抑制手段が必要であるが、従来のボルテージレギュレータではそのような状態に対応できない、といった問題があった。
【0009】
本発明は、以上のような問題を解消するためになされたものであり、状態に基づいて最適なオーバーシュート抑制手段を適用可能なボルテージレギュレータを、提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のボルテージレギュレータは、
出力電圧を分圧した分圧電圧と基準電圧の差を増幅した電圧によって出力トランジスタを制御する増幅器と、制御信号によって抵抗値が切り替わる可変抵抗を有し、前記出力トランジスタのゲート電圧を制御して、前記出力電圧のオーバーシュートを抑制する第一オーバーシュート抑制手段と、電源投入を検出する手段を有し、電源起動時にのみ前記可変抵抗の抵抗値を大きくする前記制御信号を出力する制御回路と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のボルテージレギュレータによれば、状態に基づいて最適なオーバーシュート抑制手段を適用可能なボルテージレギュレータを、提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態のボルテージレギュレータを示す説明図である。
【
図2】第1の実施形態のボルテージレギュレータの他の例を示す説明図である。
【
図3】第2の実施形態のボルテージレギュレータを示す説明図である。
【
図4】従来のボルテージレギュレータを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、第1の実施形態のボルテージレギュレータを示す説明図である。第1の実施形態のボルテージレギュレータは、電圧源401と、増幅器402と、電流源403と、出力トランジスタ404と、分圧回路をなす抵抗405、406と、出力端子407と、オーバーシュート抑制手段100と、オーバーシュート抑制手段400と、制御回路101を、備えている。
【0014】
オーバーシュート抑制手段100は、抵抗111と、コンデンサ112と、トランジスタ113と、を備えている。オーバーシュート抑制手段400は、抵抗411と、コンデンサ412と、トランジスタ413と、を備えている。
【0015】
抵抗111とコンデンサ112は、正の電源電圧(以下、VDDと記載する)と負の電源電圧(以下、VSSと記載する)の間に直列に接続される。トランジスタ113は、ドレインとソースが電流源403の入力端子とVSSに接続され、ゲートが抵抗111とコンデンサ112の接続点に接続される。
【0016】
抵抗411とコンデンサ412は、VDDとVSSの間に直列に接続される。トランジスタ413は、ドレインとソースがVDDと増幅器402の出力端子に接続され、ゲートが抵抗411とコンデンサ412の接続点に接続される。
【0017】
電圧源401は、基準電圧(以下、VREFと記載する)を出力する。分圧回路は、出力端子407の電圧(以下、VOUTと記載する)を分圧した電圧(以下、VFBと記載する)を出力する。増幅器402は、VREFとVFBとの差を増幅した結果の電圧(以下、VERRと記載する)を出力する。電流源403は、増幅器402の動作電流を流す。オーバーシュート抑制手段100は、電源電圧の変動を検出して増幅器402の動作電流を制御する。オーバーシュート抑制手段400は、電源電圧の変動を検出して出力トランジスタ404のゲートを制御する。制御回路101は、第一出力端子がオーバーシュート抑制手段100に接続され、第二出力端子がオーバーシュート抑制手段400に接続され、夫々をオンオフ制御する。
【0018】
次に、第1の実施形態のボルテージレギュレータの動作について説明をする。基本的な動作は従来のボルテージレギュレータと同じである。
電源投入時には、VOUTはまだ低くVREF>VFBの状態である。このとき、出力トランジスタ404はオン抵抗が低くなるよう制御されるため、VOUTにオーバーシュートが発生しやすい。そこで、抵抗411とコンデンサ412との時定数で決まる一定の期間、トランジスタ413をオン制御することにより、VERRをVDDに近い電圧に制御する。出力トランジスタ404は、オフ制御されるためVOUTのオーバーシュートが抑制される。すなわち、オーバーシュート抑制手段400により、出力トランジスタ404をオフ制御することにより、VOUTのオーバーシュートが抑制される。
【0019】
電源投入時で出力トランジスタ404のオン抵抗が低い状態では、VOUTにオーバーシュートが発生する懸念が極めて高い。この状態では、トランジスタ413を素早くオフ制御するオーバーシュート抑制手段が求められるため、出力トランジスタ404をオフ制御する動作を機能させることは、状態に基づく適当なオーバーシュート抑制手段である。
【0020】
その後、VREF=VFBとなりVOUTを所定の電圧に保持する通常状態では、アンダーシュートに配慮したオーバーシュート抑制手段が求められる。そこで、抵抗111とコンデンサ112との時定数で決まる一定の期間、トランジスタ113をオン制御することにより、増幅器402の動作電流を増やすように制御する。このことにより、増幅器402による出力トランジスタ404の高速制御が可能となるため、VOUTのオーバーシュートが抑制される。すなわち、オーバーシュート抑制手段
100により、増幅器402の動作電流を増やすように制御することにより、VOUTのオーバーシュートが抑制される。
【0021】
VOUTを所定の電圧に保持する通常状態では、トランジスタ413をオフ制御するオーバーシュート抑制動作をするとVOUTにアンダーシュートが発生する可能性がある。この状態では、アンダーシュートに配慮したオーバーシュート抑制手段が求められるため、増幅器402の動作電流を増やすように制御するオーバーシュート抑制動作を機能させることは、状態に基づく適当なオーバーシュート抑制手段である。
【0022】
ここで、制御回路101は、複数のオーバーシュート抑制手段を状態に応じて選択的に機能させる。第1の実施形態のボルテージレギュレータの場合、電源投入時にはオーバーシュート抑制手段400を機能させ、通常状態ではオーバーシュート抑制手段100を機能させる。それらの制御の方法としては、例えば、トランジスタ413やトランジスタ113と直列にスイッチを備え、そのスイッチをオンオフ制御するようにすればよい。また例えば、抵抗411や抵抗111と並列にスイッチを備え、そのスイッチをオンオフ制御するようにすればよい。
【0023】
なお、制御回路101は、出力トランジスタ404のオン抵抗の大きさに基づき制御をする。このことにより、VREF>VFBであり出力トランジスタ404のオン抵抗が極めて低い状態かどうかが分かるため、状態に基づく適当なオーバーシュート抑制手段を選択的に機能させることが可能となる。例えば、出力トランジスタと並列の関係でトランジスタを備え、そのトランジスタが流す電流の大きさの大小を、判別する手段が挙げられる。
【0024】
また、
制御回路101は、電源電圧に基づき制御をする。例えば、電源の電圧を監視する電圧検出器を備え、その電圧検出器の出力を以って電源投入後であることを判別する手段が挙げられる。
【0025】
また、制御回路101は、VOUTの電圧に基づき動作をする。例えば、VOUTを監視する電圧検出器を備え、その電圧検出器の出力を以って電源投入後であることを判別する手段が挙げられる。
【0026】
また、オーバーシュート抑制手段400は、出力トランジスタ404をオフ制御する動作することが可能であれば、その構成は上述の回路に限定される必要はない。このため、構成に応じて機能をオンオフ制御することがなされればよく、従って上述機能のさせ方についても、何ら限定される必要はない。
【0027】
以上説明したように、第1の実施形態のボルテージレギュレータでは、状態に基づいて最適なオーバーシュート抑制手段を適用可能なボルテージレギュレータを提供することが可能となる。
【0028】
図2は、第1の実施形態のボルテージレギュレータの他の例を示す説明図である。
図2のボルテージレギュレータは、オーバーシュート抑制手段200と、制御回路201を備えている。オーバーシュート抑制手段200は、抵抗211とコンデンサ212とトランジスタ213を備えている。
【0029】
抵抗211とコンデンサ212は、VOUTとVSSの間に直列に接続される。トランジスタ213は、ドレインとソースが電流源403の入力端子とVSSに接続され、ゲートが抵抗211とコンデンサ212の接続点に接続される。
【0030】
オーバーシュート抑制手段200は、VOUTの変動を検出して増幅器402の動作電流を制御する。制御回路201は、第一出力端子がオーバーシュート抑制手段100に接続され、第二出力端子がオーバーシュート抑制手段400に接続され、第三出力端子がオーバーシュート抑制手段200に接続され、夫々をオンオフ制御する。
【0031】
次に、
図2のボルテージレギュレータの動作について説明をする。オーバーシュート抑制手段200の制御及び動作以外は、第1の実施形態のボルテージレギュレータと同じなので省略する。
【0032】
オーバーシュート抑制手段200は、VOUTが変動した際に、抵抗211とコンデンサ212との時定数で決まる一定の期間、トランジスタ213をオン制御することにより、増幅器402の動作電流を増やすように制御する。このことにより、増幅器402による出力トランジスタ404の高速制御が可能となるため、VOUTのオーバーシュートが抑制される。すなわち、オーバーシュート抑制手段200により、増幅器402の動作電流を増やすように制御することにより、VOUTのオーバーシュートが抑制される。
【0033】
電源投入や電源変動に係わらず、VOUTを所定の電圧に保持する通常状態では、VOUTが変動した時に増幅器402の動作電流を増やすように制御することは、状態に基づく適当なオーバーシュート抑制手段である。
【0034】
図3は、第2の実施形態のボルテージレギュレータを示す説明図である。第2の実施形態のボルテージレギュレータは、オーバーシュート抑制手段430と、制御回路301と、を備えている。
オーバーシュート抑制手段430は、可変抵抗431と、コンデンサ412と、トランジスタ413と、を備えている。
【0035】
可変抵抗431とコンデンサ412は、VDDとVSSの間に直列に接続される。トランジスタ113は、ドレインとソースが電流源403の入力端子とVSSに接続され、ゲートが抵抗111とコンデンサ112の接続点に接続される。
【0036】
可変抵抗431とコンデンサ412は、VDDとVSSの間に直列に接続される。トランジスタ413は、ドレインとソースがVDDと増幅器402の出力端子に接続され、ゲートが可変抵抗431とコンデンサ412の接続点に接続される。制御回路301は、出力端子がオーバーシュート抑制手段430に接続され、可変抵抗431を制御する。
【0037】
次に、第2の実施形態のボルテージレギュレータの動作について説明をする。基本的な動作は第1の実施形態のボルテージレギュレータと同じである。
電源投入時には、VOUTはまだ低くVREF>VFBの状態である。このとき、出力トランジスタ404はオン抵抗が低くなるよう制御されるため、VOUTにオーバーシュートが発生しやすい。そこで、制御回路301が、可変抵抗431の抵抗値が大きくなるようにトリミングする。そして、可変抵抗431とコンデンサ412との時定数で決まる一定の長い期間、トランジスタ413をオン制御することにより、VERRをVDDに近い電圧に制御する。このことにより、出力トランジスタ404はオフ制御されるため、VOUTのオーバーシュートが抑制される。すなわち、オーバーシュート抑制手段100により、出力トランジスタ404をオフ制御することにより、VOUTのオーバーシュートが抑制される。
【0038】
VOUTを所定の電圧に保持する通常状態では、VDD変動時において、アンダーシュートに配慮したオーバーシュート抑制手段が求められる。そこで、制御回路301が可変抵抗431の抵抗値を小さくなるようにトリミングする。そして、可変抵抗431とコンデンサ412との時定数で決まる電源投入時よりも短い一定の期間、トランジスタ413をオン制御することにより、VERRをVDDに近い電圧に制御する。このように制御することによって、トランジスタ413がオフ制御される期間が短くなるので、VOUTのアンダーシュートに配慮したオーバーシュート抑制手段が達成される。
【0039】
なお、第2の実施形態のボルテージレギュレータは、オーバーシュート抑制手段200を備えても、
図2のボルテージレギュレータと同様の効果を奏する。その場合は、制御回路301は、第二第二出力端子がオーバーシュート抑制手段200に接続され、オンオフ制御する。
【0040】
以上説明したように、第2の実施形態のボルテージレギュレータによれば、状態に基づいて最適なオーバーシュート抑制手段を適用可能なボルテージレギュレータを提供することが可能となる。
【0041】
なお、オーバーシュート抑制手段100とオーバーシュート抑制手段400は、電源電圧の変動に基づいて機能するように説明したが、これらは出力電圧の変動に基づいて機能するように構成してもよい。
また、オーバーシュート抑制手段100とオーバーシュート抑制手段200は、どちらかまたは両方がオフ制御されなくても本願発明の趣旨を逸脱するものではない。
【符号の説明】
【0042】
100、200、400、430 オーバーシュート抑制回路
101、201,301 制御回路
401 電圧源
402 増幅器
403 電流源