(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
単結晶粒子及び/又は複数の一次粒子の凝集体である二次粒子である、少なくともニッケル、コバルト及びマンガンのうち1種類以上を含む層状構造を有する二次電池用正極活物質であって、
累積体積百分率が50体積%の粒子径(D50)±1.0μmである粒子の平均粒子強度が、200MPa以上であり、
下記一般式(1)
Li[Lia(M1xM2y)1−a]O2+b (1)
(式中、0≦a≦0.30、−0.30≦b≦0.30、0.9≦x≦1.0、0≦y≦0.1、x+y=1、M1は、少なくともNi、Co及びMnのうち1種類以上からなる金属元素、M2は、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、Zn、Sn、Zr、Ga、V、B、Mo、As、Ge、P、Pb、Si、Sb、Nb、Ta、Re及びBiからなる群から選択された少なくとも1種の金属元素を意味する。)で表され、
CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、2θ=64.5±1°の範囲に現れる2つの回折ピークの低角度側のピークの半値全幅をα、高角度側のピークの半値全幅をβとしたとき、β/αが、0.97≦β/α≦1.25である二次電池用正極活物質。
単結晶粒子及び/又は複数の一次粒子の凝集体である二次粒子である、少なくともニッケル、コバルト及びマンガンのうち1種類以上を含む層状構造を有する二次電池用正極活物質であって、
累積体積百分率が50体積%の粒子径(D50)±1.0μmである粒子の平均粒子強度が、200MPa以上であり、
下記一般式(1)
Li[Lia(M1xM2y)1−a]O2+b (1)
(式中、0≦a≦0.30、−0.30≦b≦0.30、0.9≦x≦1.0、0≦y≦0.1、x+y=1、M1は、少なくともNi、Co及びMnのうち1種類以上からなる金属元素、M2は、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、Zn、Sn、Zr、Ga、V、B、Mo、As、Ge、P、Pb、Si、Sb、Nb、Ta、Re及びBiからなる群から選択された少なくとも1種の金属元素を意味する。)で表され、
CuKα線を使用したサイクル試験前後の正極のX線回折測定において、
試験温度:25℃、充電時条件:充電最大電圧4.2V、充電時間0.5時間、充電電流2C、CC、放電時条件:放電最小電圧3.0V、放電時間0.5時間、放電電流2C、CC、充放電回数:1000回の条件、
試験温度:60℃、充電時条件:充電最大電圧4.2V、充電時間0.5時間、充電電流2C、CC、放電時条件:放電最小電圧3.0V、放電時間0.5時間、放電電流2C、CC、充放電回数:500回の条件
におけるサイクル試験前後の格子定数の変化率を、(サイクル試験前のa軸/サイクル試験後のa軸)×100=A、(サイクル試験前のc軸/サイクル試験後のc軸)×100=Cとした場合、
25℃及び60℃のサイクル試験では、AとCのいずれもが99.30%以上100.90%以下である二次電池用正極活物質。
少なくともニッケル、コバルト及びマンガンのうち1種類以上を含む複合水酸化物粒子にリチウム(Li)化合物を、少なくともNi、Co及びMnのうち1種類以上からなる金属元素(M1)に対して、1.00≦Li/M1≦1.30の原子比にて添加して、リチウム化合物と複合水酸化物粒子の混合物を得る工程と、
前記混合物を、下記式
p≧−600q+1603(式中、qは、少なくともニッケル、コバルト及びマンガンのうち1種類以上からなる金属元素(M1)の合計に対するLiの原子比(Li/M1)であり、1.00≦q≦1.30、pは、本焼成温度であり、940℃<p≦1100℃を意味する。)で表される焼成温度で焼成する本焼成工程と、
を含み、
前記本焼成工程に加え、さらに下記(1)〜(3)の工程
(1)焼成温度が300℃以上800℃以下である、前記本焼成工程前に行う仮焼工程、(2)焼成温度が600℃以上900℃以下である、前記本焼成工程後に行う焼戻し工程、
(3)前記本焼成工程及び/又は前記焼戻し工程前に、M2(M2は、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、Zn、Sn、Zr、Ga、V、B、Mo、As、Ge、P、Pb、Si、Sb、Nb、Ta、Re及びBiからなる群から選択された少なくとも1種類の金属元素を意味する。)で表される金属を添加する工程、
のうち少なくとも1工程を含む請求項1〜4のいずれかに記載の二次電池用正極活物質の製造方法。
前記リチウム化合物と前記複合水酸化物粒子の混合工程前に、前記複合水酸化物粒子の粒度分布幅を0.40≦(D90−D10)/D50≦1.00とする工程を含む請求項6に記載の製造方法。
前記本焼成工程において、鞘へ前記混合物を充填した際の前記混合物の体積(V)に対する、前記鞘との接触面を含めた前記混合物の表面積(S)の割合が、0.08≦S/V≦2.00である請求項6または7に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の二次電池用正極活物質について、詳細を説明する。本発明の二次電池用正極活物質は、単結晶粒子及び/又は複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子であり、少なくともニッケル、コバルト及びマンガンのうち1種類以上を含む層状構造を有する。本発明の二次電池用正極活物質の形状は、特に限定されず、多種多様な形状となっているが、例えば、略球形状、略立方体形状、略直方体形状等を挙げることができる。
【0025】
本発明の二次電池用正極活物質は、単結晶粒子または複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子のいずれか一方、または単結晶粒子と二次粒子の両方が含まれる。本発明の二次電池用正極活物質の走査型電子顕微鏡(SEM)の画像である
図1では、単結晶粒子と二次粒子の両方が含まれている。
図1に示すように、単結晶粒子は、一次粒子の形態であり、二次粒子は、複数の一次粒子が凝集して形成された粒子である。
【0026】
本発明の二次電池用正極活物質の結晶構造は、層状構造であり、六方晶型の結晶構造又は単斜晶型の結晶構造であることがより好ましい。
【0027】
六方晶型の結晶構造は、P3、P31、P32、R3、P−3、R−3、P312、P321、P3112、P3121、P3212、P3221、R32、P3m1、P31m、P3c1、P31c、R3m、R3c、P−31m、P−31c、P−3m1、P−3c1、R−3m、R−3c、P6、P61、P65、P62、P64、P63、P−6、P6/m、P63/m、P622、P6122、P6522、P6222、P6422、P6322、P6mm、P6cc、P63cm、P63mc、P−6m2、P−6c2、P−62m、P−62c、P6/mmm、P6/mcc、P63/mcm、P63/mmcからなる群から選ばれるいずれか一つの空間群に帰属される。
【0028】
また、単斜晶型の結晶構造は、P2、P21、C2、Pm、Pc、Cm、Cc、P2/m、P21/m、C2/m、P2/c、P21/c、C2/cからなる群から選ばれるいずれか一つの空間群に帰属される。
【0029】
これらのうち、放電容量が高い二次電池を得る意味で、結晶構造は、空間群R−3mに帰属される六方晶型の結晶構造、又はC2/mに帰属される単斜晶型の結晶構造であることが特に好ましい。
【0030】
本発明の二次電池用正極活物質の累積体積百分率が50体積%の粒子径(D50)(以下、単に「D50」ということがある。)±1.0μmの範囲、すなわち、(D50)−1.0μm〜(D50)+1.0μmの範囲である粒子の平均粒子強度は、200MPa以上である。この優れた平均粒子強度は、本発明の二次電池用正極活物質が、単結晶粒子を含んでいることに起因していると考えられる。(D50)±1.0μmの平均粒子強度は、200MPa以上であれば、特に限定されないが、その下限値は、常温、高温いずれの環境下でもより優れたサイクル特性を発揮する点から、230MPaが好ましく、250MPaがより好ましく、310MPaが特に好ましい。一方で、(D50)±1.0μmの平均粒子強度の上限値は、特に限定されないが、例えば、効率的に製造可能である点で、3000MPaが好ましく、2200MPaがより好ましく、1000MPaがさらに好ましく、700MPaが特に好ましい。なお、上記した下限値、上限値は、任意で組み合わせることができる。
【0031】
本発明の二次電池用正極活物質のD50の下限値は、特に限定されないが、ハンドリング性を高める点から2.0μmが好ましく、2.5μmがより好ましく、3.0μmが特に好ましい。一方で、二次電池用正極活物質のD50の上限値は、密度の向上と電解液との接触面を確保することのバランスの点から、20.0μmが好ましく、15.0μmが特に好ましい。なお、上記した下限値、上限値は、任意で組み合わせることができる。
【0032】
本発明の二次電池用正極活物質では、CuKα線を使用した粉末X線回折測定において、2θ=64.5±1°の範囲に現れる2つの回折ピークの低角度側の回折ピークの半値全幅をα、高角度側の回折ピークの半値全幅をβとしたとき、β/αが、0.97≦β/α≦1.25である回折ピークの半値全幅の構成か、CuKα線を使用した正極のX線回折パターンにおいて、サイクル試験前後の格子定数の変化率を、(サイクル試験前のa軸/サイクル試験後のa軸)×100=A、(サイクル試験前のc軸/サイクル試験後のc軸)×100=Cとした場合、25℃及び60℃のサイクル試験で、AとCのうちの少なくとも一方が99.30%以上100.90%以下である格子定数の変化率の構成か、少なくともいずれか一方の構成を有する。
【0033】
CuKα線を使用した粉末回折ピークの半値全幅について
上記したD50±1.0μmの平均粒子強度の範囲と、0.97≦β/α≦1.25の回折ピークの半値全幅を有することにより、常温、高温いずれの環境下でも優れたサイクル特性を発揮できる二次電池用正極活物質を得ることができる。すなわち、回折ピークの半値全幅が0.97≦β/α≦1.25の関係を満たすことで、常温、高温いずれの環境下でも優れたサイクル特性の付与に寄与することを本発明の発明者らは見出した。
【0034】
β/αの値は、0.97以上1.25以下であれば特に限定されないが、常温、高温いずれの環境下でも安定的により優れたサイクル特性を得る点から、1.00以上1.20以下がより好ましく、1.03以上1.13以下が特に好ましい。
【0035】
格子定数の変化率について
上記した(D50)±1.0μmの範囲における平均粒子強度の範囲と、25℃及び60℃のサイクル試験では上記Aと上記Cのうちの少なくとも一方が99.30%以上100.90%以下である格子定数の変化率と、を有することにより、常温、高温いずれの環境下でも優れたサイクル特性を発揮できる二次電池用正極活物質を得ることができる。すなわち、25℃のサイクル試験(常温のサイクル試験)と60℃のサイクル試験(高温のサイクル試験)において、a軸とc軸の少なくとも一方の格子定数の変化率が、99.30%以上100.90%以下に制御されていることで、常温、高温いずれの環境下でも優れたサイクル特性の付与に寄与することを本発明の発明者らは見出した。これは、常温及び高温のサイクル試験において、サイクル試験の前後にて二次電池用正極活物質の結晶構造の変化が低減されていることに起因するものと考えられる。
【0036】
25℃及び60℃のサイクル試験では、AとCのうちの少なくとも一方が99.30%以上100.90%以下であれば、特に限定されないが、常温、高温いずれの環境下でも安定的により優れたサイクル特性を得る点から、AとCのいずれも99.30%以上100.90%以下が好ましく、AとCのいずれも99.32%以上100.90%以下が特に好ましい。
【0037】
本発明の二次電池用正極活物質の組成としては、少なくともニッケル、コバルト及びマンガンのうち1種類以上からなる金属元素を含む組成であれば、特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)
Li[Li
a(M1
xM2
y)
1−a]O
2+b (1)
(式中、aは、0≦a≦0.30が好ましく、0≦a≦0.20がより好ましく、0≦a≦0.10が特に好ましい。bは、特に限定されないが、−0.30≦b≦0.30が好ましく、−0.20≦b≦0.20がより好ましく、0≦b≦0.20が特に好ましい。xは0.9≦x≦1.0、yは0≦y≦0.10が好ましく、0≦y≦0.05がより好ましく、0≦y≦0.02が特に好ましい。x+y=1である。M1は、Ni、Co及びMnのうち1種以上からなる金属元素であり、Ni、Co及びMnの組成は、特に限定されないが、Ni組成範囲として、10mol%以上90mol%以下が好ましく、30mol%以上80mol%以下がより好ましく、50mol%以上60mol%以下が特に好ましい。Co組成範囲としては、10mol%以上50mol%以下が好ましく、10mol%以上30mol%以下がより好ましい。Mn組成範囲としては、0mol%以上50mol%以下が好ましく、0mol%以上40mol%以下がより好ましい。M2は、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、Zn、Sn、Zr、Ga、V、B、Mo、As、Ge、P、Pb、Si、Sb、Nb、Ta、Re及びBiからなる群から選択された少なくとも1種の金属元素を意味する。)で表される二次電池用正極活物質が挙げられる。このうち、任意の金属元素であるM2が含まれることで、常温、高温いずれの環境下でも安定的により優れたサイクル特性を得ることができる。これらの任意の金属元素のうち、ZrとAlが好ましい。
【0038】
本発明の二次電池用正極活物は、例えば、リチウムイオン二次電池の正極活物質として使用することができる。
【0039】
本発明の二次電池用正極活物のBET比表面積は、特に限定されないが、例えば、密度の向上と電解液との接触面を確保することのバランスの点から、下限値は0.10m
2/gが好ましく、0.30m
2/gが特に好ましい。一方で、その上限値は5.0m
2/gが好ましく、4.0m
2/gがより好ましく、2.0m
2/gが特に好ましい。なお、上記した下限値、上限値は、任意で組み合わせることができる。
【0040】
次に、本発明の二次電池用正極活物の製造方法例について説明する。
【0041】
上記製造方法としては、例えば、まず、少なくともニッケル、コバルト及びマンガンのうち1種類以上を有する複合水酸化物粒子(以下、単に、「複合水酸化物粒子」ということがある。)を調製する。複合水酸化物粒子は、二次電池用正極活物質の前駆体である。本発明に用いる前駆体は、少なくともニッケル、コバルト及びマンガンのうち1種類以上を有する複合酸化物でもよい。複合水酸化物粒子の調製方法は、まず、共沈法により、ニッケルの塩溶液(例えば、硫酸塩溶液)、コバルトの塩溶液(例えば、硫酸塩溶液)及びマンガンの塩溶液(例えば、硫酸塩溶液)のうちの1種類以上の金属塩溶液と錯化剤とpH調整剤を適宜添加することで、反応槽内にて反応させて、複合水酸化物粒子を調製して、複合水酸化物粒子を含むスラリー状の懸濁物を得る。懸濁物の溶媒としては、例えば、水が使用される。
【0042】
上記金属塩溶液に添加する錯化剤としては、水溶液中で、ニッケル、コバルト、マンガンのイオンと錯体を形成可能なものであれば、特に限定されず、例えば、アンモニウムイオン供給体(硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、弗化アンモニウム等)、ヒドラジン、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ウラシル二酢酸、及びグリシンが挙げられる。なお、沈殿に際しては、水溶液のpH値を調整するため、必要に応じて、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)を添加してもよい。
【0043】
上記金属塩溶液に加えて、pH調整剤と錯化剤を反応槽に適宜連続して供給すると、金属塩溶液の金属(ニッケル、コバルト、マンガンのうちの1種類以上)が共沈反応し、複合水酸化物粒子が調製される。共沈反応に際しては、反応槽の温度を、例えば、10℃〜80℃、好ましくは20〜70℃の範囲内で制御し、反応槽内のpH値を液温40℃基準で、例えば、pH9〜pH13、好ましくはpH11〜13の範囲内で制御しつつ、反応槽内の物質を、適宜、撹拌する。反応槽としては、例えば、形成された複合水酸化物粒子を分離するためにオーバーフローさせる連続式や、反応終了まで系外に排出しないバッチ式を挙げることができる。
【0044】
上記のようにして得られた複合酸化物粒子を懸濁物からろ過後、水洗し、加熱処理することで、粉体状の複合水酸化物粒子を得る。得られた複合水酸化物粒子は、必要に応じて、例えば、乾式分級機により、粒度分布幅の(D90−D10)/D50を狭める工程を追加してもよい。
【0045】
本発明の二次電池用正極活物質の前駆体である複合水酸化物粒子のD50の下限値は、特に限定されないが、ハンドリング性を高める点から2.0μmが好ましく、2.5μmがより好ましく、3.0μmが特に好ましい。一方で、複合水酸化物粒子のD50の上限値は、焼成時のリチウム化合物との反応を高める点から、25.0μmが好ましく、20.0μmが特に好ましい。なお、上記した下限値、上限値は、任意で組み合わせることができる。
【0046】
また、複合水酸化物粒子の粒度分布は、特に限定されないが、(D90−D10)/D50の値の下限値は、効率的な製造可能範囲の点から、0.40が好ましく、0.50がより好ましく、0.70が特に好ましい。一方で、複合水酸化物粒子の(D90−D10)/D50の値の上限値は、常温環境下で優れたサイクル特性を得つつ、高温環境下でもより優れたサイクル特性を得る点から、1.00が好ましく、0.96がより好ましく、常温環境下でさらに優れたサイクル特性を得る点から0.80が特に好ましい。なお、上記した下限値、上限値は、任意で組み合わせることができる。
【0047】
次に、得られた粉体状の複合水酸化物粒子にリチウム化合物を添加して複合水酸化物粒子とリチウム化合物の混合物を調製する。このとき、1.00≦Li/M1≦1.30の原子比となるように、リチウム化合物を添加する。リチウム化合物としては、リチウムを有する化合物あれば特に限定されず、例えば、炭酸リチウム、水酸化リチウム等を挙げることができる。
【0048】
次に、得られた混合物を、次の式で表される焼成温度により焼成(以下、本焼成ということがある。)を行う。本焼成は式p≧−600q+1603(式中、qは、少なくともNi、Co及びMnのうち1種類以上からなる金属元素(M1)の合計に対するLiの原子比(Li/M1)であり、1.00≦q≦1.30、pは、本焼成温度であり、940℃<p≦1100℃を意味する。)で表される焼成温度で焼成する。上記焼成温度での焼成工程における焼成時間は、特に限定されないが、例えば、5〜20時間が好ましく、8〜15時間が特に好ましい。上記本焼成での昇温速度は、材料温度と焼成炉の温度を同等に保つ点から、50〜550℃/hが好ましく、100〜400℃/hがより好ましく、140℃〜380℃/hが特に好ましい。本焼成の雰囲気については特に限定されないが、例えば大気、酸素などが挙げられる。本焼成に用いる焼成炉としては特に限定されないが、例えば静置式のボックス炉やローラーハース式連続炉などが挙げられる。また、本発明の二次電池用正極活物の製造方法では、本焼成工程に加えて、さらに、本焼成工程の前に仮焼工程、本焼成工程の後に焼戻し工程、本焼成工程及び/または焼戻し工程の前に、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、Zn、Sn、Zr、Ga、V、B、Mo、As、Ge、P、Pb、Si、Sb、Nb、Ta、Re及びBiからなる群から選択される少なくとも1種の金属成分を添加する工程のうち、少なくとも1つの工程を実施する。
【0049】
上記本焼成において、焼成用の鞘へ充填物である上記複合水酸化物粒子とリチウム化合物との混合物を充填する際、充填物の鞘との接触面を含めた表面積(S)と充填物の体積(V)の比S/Vの下限値については、特に限定されないが、充填物の温度を均一化する点から0.08mm
2/mm
3が好ましい。また、上限値については、特に限定されないが、生産性の点から2.00mm
2/mm
3が好ましく、0.68mm
2/mm
3がより好ましく、0.36mm
2/mm
3が特に好ましい。なお、上記した下限値、上限値は、任意で組み合わせることができる。鞘については特に限定されないが、例えば内寸130mm×130mm×88mmや280mm×280mm×88mmの鞘が挙げられる。
【0050】
仮焼工程は、原料に含まれるガスを放出させ、酸化させることで二次電池用正極活物質の結晶性をより好ましい形態とするための工程である。仮焼成は、例えば、300℃以上800℃以下が好ましく、650℃以上760℃以下が特に好ましい。また、仮焼成の焼成時間は、特に限定されないが、例えば、1〜20時間が好ましく、3〜10時間が特に好ましい。上記仮焼成での昇温速度は、材料温度と焼成炉の温度を同等に保つ点から、50〜550℃/hが好ましく、100〜400℃/hがより好ましく、140℃〜380℃/hが特に好ましい。仮焼成の雰囲気については特に限定されないが、例えば大気、酸素などが挙げられる。仮焼成に用いる焼成炉としては特に限定されないが、例えば静置式のボックス炉やローラーハース式連続炉などが挙げられる。
【0051】
また、焼戻し工程は、二次電池用正極活物質の結晶性をより好ましい形態とするための工程である。焼戻し工程は、例えば、600℃以上900℃以下が好ましく、650℃以上860℃以下が特に好ましい。また、焼戻しの焼成時間は、特に限定されないが、例えば、1〜20時間が好ましく、3〜10時間が特に好ましい。上記焼戻しでの昇温速度は、材料温度と焼成炉の温度を同等に保つ点から、50〜550℃/hが好ましく、100〜400℃/hがより好ましく、140℃〜380℃/hが特に好ましい。焼戻しの雰囲気については特に限定されないが、例えば大気、酸素などが挙げられる。焼戻しに用いる焼成炉としては特に限定されないが、例えば静置式のボックス炉やローラーハース式連続炉などが挙げられる。
【0052】
また、Fe、Cu、Ti、Mg、Al、W、Zn、Sn、Zr、Ga、V、B、Mo、As、Ge、P、Pb、Si、Sb、Nb、Ta、Re及びBiからなる群から選択される少なくとも1種の金属成分を添加する工程は、二次電池用正極活物質の結晶性をより好ましい形態とするための工程である。
【0053】
[二次電池]
次いで、二次電池の構成を説明しながら、本発明の二次電池用正極活物質を二次電池の正極活物質として用いた正極、およびこの正極を有する二次電池について説明する。ここでは、二次電池としてリチウム二次電池を例にして説明する。
【0054】
本発明の二次電池用正極活物質を正極活物質として用いたリチウム二次電池の一例は、正極および負極、正極と負極との間に挟持されるセパレータ、正極と負極との間に配置される電解液を有する。
【0055】
図2は、リチウム二次電池の一例を示す模式図である。
図2に示す円筒型のリチウム二次電池10は、次のようにして製造する。
【0056】
まず、
図2(a)に示すように、帯状の形状を有する一対のセパレータ1、一端に正極リード21を有する帯状の正極2、および一端に負極リード31を有する帯状の負極3を、セパレータ1、正極2、セパレータ1、負極3の順に積層し、巻回することにより電極群4とする。
【0057】
次いで、
図2(b)に示すように、電池缶5内部に電極群4および不図示のインシュレーターを収容した後、電池缶5の缶底を封止し、電極群4に電解液6を含浸させ、正極2と負極3との間に電解質を配置する。さらに、電池缶5の上部をトップインシュレーター7および封口体8で封止することで、リチウム二次電池10を製造することができる。
【0058】
電極群4の形状としては、特に限定されず、例えば、電極群4を巻回の軸に対して垂直方向に切断したときの断面形状が、円、楕円、長方形、角丸長方形となるような柱状の形状を挙げることができる。
【0059】
また、このような電極群4を有するリチウム二次電池の形状としては、国際電気標準会議(IEC)が定めた電池に対する規格であるIEC60086、またはJIS C 8500で定められる形状を採用することができる。前記規格で定められる形状としては、例えば、円筒型、角型などを挙げることができる。
【0060】
さらに、リチウム二次電池は、上記巻回型の構成に限らず、正極、セパレータ、負極、セパレータの積層構造を繰り返し重ねた積層型の構成であってもよい。積層型のリチウム二次電池としては、いわゆるコイン型電池、ボタン型電池、ペーパー型(またはシート型)電池を挙げることができる。
【0061】
以下、リチウム二次電池の各構成について順に説明する。
(正極)
リチウム二次電池の正極は、まず正極活物質(本発明の二次電池用正極活物質)、導電材およびバインダーを含む正極合剤を調製し、この正極合剤を正極集電体に担持させることで製造することができる。
【0062】
(導電材)
リチウム二次電池の正極が有する導電材としては、炭素材料を用いることができる。炭素材料として、例えば、黒鉛粉末、カーボンブラック(例えばアセチレンブラック)、繊維状炭素材料などを挙げることができる。カーボンブラックは、微粒で表面積が大きいため、少量を正極合剤中に添加することにより正極内部の導電性を高め、充放電効率および出力特性を向上させることができるが、多く入れすぎるとバインダーによる正極合剤と正極集電体との結着力、および正極合剤内部の結着力がいずれも低下し、かえって内部抵抗を増加させる原因となる。
【0063】
正極合剤中の導電材の割合は、使用条件等に応じて適宜選択可能であるが、正極活物質100質量部に対して5質量部以上20質量部以下が好ましい。なお、導電材として黒鉛化炭素繊維、カーボンナノチューブなどの繊維状炭素材料を用いる場合には、この割合を下げることも可能である。
【0064】
(バインダー)
リチウム二次電池の正極が有するバインダーとしては、熱可塑性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVdFということがある。)、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEということがある。)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体などのフッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂;を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
これらの熱可塑性樹脂のうち、バインダーとしてフッ素樹脂およびポリオレフィン樹脂を用い、正極合剤全体に対するフッ素樹脂の割合を1質量%以上10質量%以下、ポリオレフィン樹脂の割合を0.1質量%以上2質量%以下とすることによって、正極集電体との密着力および正極合剤内部の結合力がいずれも高い正極合剤を得ることができる。
【0066】
(正極集電体)
リチウム二次電池の正極が有する正極集電体としては、Al、Ni、ステンレスなどの金属材料を形成材料とする帯状の部材を用いることができる。このうち、加工しやすく、安価であるという点で、Alを形成材料とし、薄膜状に加工したものが好ましい。
【0067】
正極集電体に正極合剤を担持させる方法としては、特に限定されず、例えば、正極合剤を正極集電体上で加圧成型する方法が挙げられる。また、有機溶媒を用いて正極合剤をペースト化し、得られる正極合剤のペーストを正極集電体の少なくとも一面側に塗布して乾燥させ、プレスし固着することで、正極集電体に正極合剤を担持させてもよい。
【0068】
正極合剤をペースト化する場合、用いることができる有機溶媒としては、例えば、N,N―ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミンなどのアミン系溶媒;テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒;酢酸メチルなどのエステル系溶媒;ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPということがある。)などのアミド系溶媒;が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
正極合剤のペーストを正極集電体へ塗布する方法としては、例えば、スリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、カーテン塗工法、ナイフ塗工法、グラビア塗工法および静電スプレー法等が挙げられる。以上に挙げられた方法により、正極を製造することができる。
【0070】
(負極)
リチウム二次電池が有する負極は、正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープかつ脱ドープが可能であればよく、負極活物質を含む負極合剤が負極集電体に担持されてなる電極、負極活物質単独からなる電極を挙げることができる。
【0071】
(負極活物質)
リチウム二次電池の負極が有する負極活物質としては、炭素材料、カルコゲン化合物(酸化物、硫化物など)、窒化物、金属または合金で、正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープかつ脱ドープが可能な材料が挙げられる。
【0072】
リチウム二次電池の負極活物質として使用可能な炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維および有機高分子化合物焼成体を挙げることができる。
【0073】
リチウム二次電池の負極活物質として使用可能な酸化物としては、例えば、SiO
2、SiOなど式SiO
x(ここで、xは正の実数)で表されるケイ素の酸化物;TiO
2、TiOなど式TiO
x(ここで、xは正の実数)で表されるチタンの酸化物;V
2O
5、VO
2など式VO
x(ここで、xは正の実数)で表されるバナジウムの酸化物;Fe
3O
4、Fe
2O
3、FeOなど式FeO
x(ここで、xは正の実数)で表される鉄の酸化物;SnO
2、SnOなど式SnO
x(ここで、xは正の実数)で表されるスズの酸化物;WO
3、WO
2など一般式WO
x(ここで、xは正の実数)で表されるタングステンの酸化物;Li
4Ti
5O
12、LiVO
2などのリチウムとチタンまたはバナジウムとを含有する複合金属酸化物;を挙げることができる。
【0074】
リチウム二次電池の負極活物質として使用可能な硫化物としては、例えば、Ti
2S
3、TiS
2、TiSなど式TiS
x(ここで、xは正の実数)で表されるチタンの硫化物;V
3S
4、VS
2、VSなど式VS
x(ここで、xは正の実数)で表されるバナジウムの硫化物;Fe
3S
4、FeS
2、FeSなど式FeS
x(ここで、xは正の実数)で表される鉄の硫化物;Mo
2S
3、MoS
2など式MoS
x(ここで、xは正の実数)で表されるモリブデンの硫化物;SnS
2、SnSなど式SnS
x(ここで、xは正の実数)で表されるスズの硫化物;WS
2など式WS
x(ここで、xは正の実数)で表されるタングステンの硫化物;Sb
2S
3など式SbS
x(ここで、xは正の実数)で表されるアンチモンの硫化物;Se
5S
3、SeS
2、SeSなど式SeS
x(ここで、xは正の実数)で表されるセレンの硫化物;を挙げることができる。
【0075】
リチウム二次電池の負極活物質として使用可能な窒化物としては、例えば、Li
3N、Li
3−xA
xN(ここで、AはNiおよびCoのいずれか一方または両方であり、0<x<3である。)などのリチウム含有窒化物を挙げることができる。
【0076】
これらの炭素材料、酸化物、硫化物、窒化物は、1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。また、これらの炭素材料、酸化物、硫化物、窒化物は、結晶質または非晶質のいずれでもよい。
【0077】
また、リチウム二次電池の負極活物質として使用可能な金属としては、例えば、リチウム金属、シリコン金属、スズ金属などを挙げることができる。
【0078】
リチウム二次電池の負極活物質として使用可能な合金としては、例えば、Li−Al、Li−Ni、Li−Si、Li−Sn、Li−Sn−Niなどのリチウム合金;Si−Znなどのシリコン合金;Sn−Mn、Sn−Co、Sn−Ni、Sn−Cu、Sn−Laなどのスズ合金;Cu
2Sb、La
3Ni
2Sn
7などの合金;を挙げることもできる。
【0079】
これらの金属や合金は、例えば箔状に加工された後、主に単独で負極として用いられる。
【0080】
上記負極活物質のうち、充電時に未充電状態から満充電状態にかけて負極の電位がほとんど変化しない(電位平坦性がよい。)、平均放電電位が低い、繰り返し充放電させたときの容量維持率が高い(サイクル特性がよい。)などの理由から、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛を主成分とする炭素材料が好ましい。炭素材料の形状としては、特に限定されず、例えば、天然黒鉛のような薄片状、メソカーボンマイクロビーズのような球状、黒鉛化炭素繊維のような繊維状、または微粉末の凝集体などのいずれでもよい。
【0081】
リチウム二次電池の負極合剤は、必要に応じて、バインダーを含有してもよい。バインダーとしては、熱可塑性樹脂を挙げることができ、例えば、PVdF、熱可塑性ポリイミド、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0082】
(負極集電体)
リチウム二次電池の負極が有する負極集電体としては、Cu、Ni、ステンレスなどの金属材料を形成材料とする帯状の部材を挙げることができる。このうち、リチウムと合金を作り難く、加工しやすいという点で、Cuを形成材料とし、薄膜状に加工したものが好ましい。
【0083】
負極集電体に負極合剤を担持させる方法としては、特に限定されず、正極の場合と同様に、例えば、加圧成型による方法、溶媒などを用いてペースト化し負極集電体上に塗布、乾燥後プレスし圧着する方法が挙げられる。
【0084】
(セパレータ)
リチウム二次電池が有するセパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、含窒素芳香族重合体などの材質からなる、多孔質膜、不織布、織布などの形態を有する材料を用いることができる。また、これらの材質を1種または2種以上用いてセパレータを形成してもよいし、これらの材料を積層してセパレータを形成してもよい。
【0085】
リチウム二次電池のセパレータとしては、例えば、特開2000−30686号公報、特開平10−324758号公報などに記載のセパレータを挙げることができる。セパレータの厚みは、使用条件等に応じて適宜選択可能であるが、リチウム二次電池の体積エネルギー密度が上がり、内部抵抗が小さくなる点で、機械的強度が保たれる限り薄くした方が好ましく、より好ましくは5〜200μm程度、特に好ましくは5〜40μm程度である。
【0086】
リチウム二次電池のセパレータは、好ましくは、熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムを有する。リチウム二次電池においては、正極−負極間の短絡などが原因で電池内に異常電流が流れた際に、短絡箇所の電流を遮断して、過大電流が流れることを阻止(シャットダウン)する機能を有することが好ましい。ここで、シャットダウンは、短絡により短絡箇所のセパレータが過熱され、予め想定された使用温度を越えた場合に、セパレータにおける多孔質フィルムが軟化または融解して微細孔を閉塞することによりなされる。そして、セパレータがシャットダウンした後、ある程度の高温までリチウム二次電池内の温度が上昇しても、その温度により破膜することなく、シャットダウンした状態を維持することが好ましい。
【0087】
セパレータのシャットダウン後、ある程度の高温までリチウム二次電池内の温度が上昇しても、その温度により破膜することなく、シャットダウン状態を維持できるセパレータとしては、耐熱多孔層と多孔質フィルムとが積層されてなる積層フィルムが挙げられる。このような積層フィルムをセパレータとして用いることにより、二次電池の耐熱性をより高めることが可能となる。積層フィルムにおいては、耐熱多孔層は、多孔質フィルムの両面に積層されていてもよい。
【0088】
(積層フィルム)
以下、前記の耐熱多孔層と多孔質フィルムとが互いに積層された積層フィルムについて説明する。
【0089】
リチウム二次電池のセパレータとして用いられる積層フィルムにおいて、耐熱多孔層は、多孔質フィルムよりも耐熱性の高い層である。耐熱多孔層は、無機粉末から形成されていてもよいし(第1の耐熱多孔層)、耐熱樹脂から形成されていてもよいし(第2の耐熱多孔層)、耐熱樹脂とフィラーとを含んで形成されていてもよい(第3の耐熱多孔層)。耐熱多孔層が、耐熱樹脂を含有することにより、塗工などの容易な手法で、耐熱多孔層を形成することができる。
【0090】
(第1の耐熱多孔層)
耐熱多孔層が無機粉末から形成されている場合、耐熱多孔層に用いられる無機粉末としては、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、炭酸塩、硫酸塩などの無機物からなる粉末が挙げられ、これらの中でも、導電性の低い(絶縁性の高い)無機物からなる粉末が好ましく用いられる。具体的に例示すると、アルミナ粉末、シリカ粉末、二酸化チタン粉末、炭酸カルシウム粉末等が挙げられる。このような無機粉末は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
これらの無機物からなる粉末の中でも、化学的安定性が高いことから、アルミナ粉末が好ましい。また、無機物からなる粉末を構成する粒子のすべてがアルミナ粒子であることがより好ましく、無機物からなる粉末を構成する粒子のすべてがアルミナ粒子であり、且つその一部または全部が略球状のアルミナ粒子であることがさらに好ましい。
【0092】
(第2の耐熱多孔層)
耐熱多孔層が耐熱樹脂から形成されている場合、耐熱多孔層に用いられる耐熱樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、芳香族ポリエステル、ポリエーテルサルホンおよびポリエーテルイミド等を挙げることができる。積層フィルムの耐熱性をより高めるためには、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミドが好ましく、より好ましくは、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミドである。
【0093】
耐熱多孔層に用いられる耐熱樹脂として、さらに好ましくは、芳香族ポリアミド(パラ配向芳香族ポリアミド、メタ配向芳香族ポリアミド)、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミドなどの含窒素芳香族重合体であり、特に好ましくは芳香族ポリアミド、生産性の点から特に好ましいのは、パラ配向芳香族ポリアミド(以下、パラアラミドということがある。)である。
【0094】
また、耐熱樹脂として、ポリ−4−メチルペンテン−1、環状オレフィン系重合体を挙げることもできる。
【0095】
これらの耐熱樹脂を用いることにより、リチウム二次電池のセパレータとして用いられる積層フィルムの耐熱性、すなわち、積層フィルムの熱破膜温度をより高めることができる。これらの耐熱樹脂のうち、含窒素芳香族重合体を用いる場合には、その分子内の極性によるためか、電解液との相性、すなわち、耐熱多孔層における保液性も向上する場合があり、リチウム二次電池製造時における電解液の含浸の速度も高く、リチウム二次電池の充放電容量もより高まる。
【0096】
積層フィルムの熱破膜温度は、耐熱樹脂の種類に依存し、使用場面、使用目的に応じ、選択使用される。具体的には、耐熱樹脂として、上記含窒素芳香族重合体を用いる場合は400℃程度に、また、ポリ−4−メチルペンテン−1を用いる場合は250℃程度に、環状オレフィン系重合体を用いる場合は300℃程度に、夫々、熱破膜温度をコントロールすることができる。また、耐熱多孔層が、無機物からなる粉末の場合には、熱破膜温度を、例えば、500℃以上にコントロールすることも可能である。
【0097】
上記パラアラミドは、パラ配向芳香族ジアミンとパラ配向芳香族ジカルボン酸ハライドとの縮合重合により得られるものであり、アミド結合が芳香族環のパラ位またはそれに準じた配向位(例えば、4,4’−ビフェニレン、1,5−ナフタレン、2,6−ナフタレンなどのような反対方向に同軸または平行に延びる配向位)で結合される繰り返し単位から実質的になるものである。具体的には、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(パラベンズアミド)、ポリ(4,4’−ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン−4,4’−ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(パラフェニレン−2,6−ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(2−クロロ−パラフェニレンテレフタルアミド)、パラフェニレンテレフタルアミド/2,6−ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体などのパラ配向型またはパラ配向型に準じた構造を有するパラアラミドが例示される。
【0098】
前記の芳香族ポリイミドとしては、芳香族の二酸無水物とジアミンとの縮重合で製造される全芳香族ポリイミドが好ましい。
【0099】
縮重合に用いられる芳香族の二酸無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4―ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0100】
縮重合に用いられるジアミンの具体例としては、オキシジアニリン、パラフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン、3,3’−メチレンジアニリン、3,3’−ジアミノベンソフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ナフタレンジアミン等が挙げられる。
【0101】
また、芳香族ポリイミドとしては、溶媒に可溶なポリイミドが好適に使用できる。このようなポリイミドとしては、例えば、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとの重縮合物のポリイミドが挙げられる。
【0102】
前記の芳香族ポリアミドイミドとしては、例えば、芳香族ジカルボン酸および芳香族ジイソシアネートを用いてこれらの縮合重合から得られるもの、芳香族二酸無水物および芳香族ジイソシアネートを用いてこれらの縮合重合から得られるものが挙げられる。芳香族ジカルボン酸の具体例としては、イソフタル酸、テレフタル酸等が挙げられる。また芳香族二酸無水物の具体例としては無水トリメリット酸が挙げられる。芳香族ジイソシアネートの具体例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、オルソトリレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0103】
また、イオン透過性をより高めるためには、積層フィルムが有する耐熱多孔層の厚みは、薄い耐熱多孔層であることが好ましく、1μm以上10μm以下がより好ましく、1μm以上5μm以下がさらに好ましく、1μm以上4μm以下が特に好ましい。また、耐熱多孔層は、微細孔を有し、その孔のサイズ(直径)は、好ましくは3μm以下、より好ましくは1μm以下である。
【0104】
(第3の耐熱多孔層)
また、耐熱多孔層が耐熱樹脂とフィラーとを含んで形成されている場合、耐熱樹脂は、上記第2の耐熱多孔層に用いられる耐熱樹脂と同じものを使用することができる。フィラーは、有機粉末、無機粉末またはこれらの混合物からなる群から選ばれる1種以上を用いることができる。フィラーを構成する粒子は、その平均粒子径が、0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。
【0105】
フィラーとして用いることができる有機粉末としては、例えば、スチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチルなどの単独重合体または2種類以上の共重合体;PTFE、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、4フッ化エチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライドなどのフッ素系樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;ポリオレフィン樹脂;ポリメタクリレート;などの有機物からなる粉末が挙げられる。このような有機粉末は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの有機粉末の中でも、化学的安定性が高いことから、PTFEの粉末が好ましい。
【0106】
また、フィラーとして用いることができる無機粉末としては、上記耐熱多孔層に用いられる無機物の粉末と同じものを例示することができる。
【0107】
耐熱多孔層が耐熱樹脂とフィラーとを含んで形成されている場合、フィラーの含有量としては、フィラーの材質の比重にもよるが、例えば、フィラーを構成する粒子のすべてがアルミナ粒子である場合には、耐熱多孔層の総質量を100質量部としたとき、フィラーの質量は、好ましくは5質量部以上95質量部以下であり、より好ましくは20質量部以上95質量部以下であり、さらに好ましくは30質量部以上90質量部以下である。これらの範囲は、フィラーの材質の比重により、適宜設定できる。
【0108】
フィラーの形状については、特に限定されず、略球状、板状、柱状、針状、繊維状などの形状が挙げられ、いずれの粒子も用いることができるが、均一な孔を形成しやすいことから、略球状粒子であることが好ましい。略球状粒子としては、粒子のアスペクト比(粒子の長径/粒子の短径)が1.0以上1.5以下である粒子が挙げられる。粒子のアスペクト比は、電子顕微鏡写真により測定することができる。
【0109】
リチウム二次電池のセパレータとして用いられる積層フィルムにおいて多孔質フィルムは、微細孔を有し、シャットダウン機能を有することが好ましい。この場合、多孔質フィルムは、熱可塑性樹脂を含有する。
【0110】
多孔質フィルムにおける微細孔のサイズは、小さいほど好ましく、より好ましくは3μm以下、特に好ましくは1μm以下である。多孔質フィルムの空孔率は、使用条件等に応じて適宜選択可能であるが、好ましくは30体積%以上80体積%以下、より好ましくは40体積%以上70体積%以下である。リチウム二次電池において、予め想定された使用温度を越えた場合には、熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムは、多孔質フィルムを構成する熱可塑性樹脂の軟化または融解により、微細孔を閉塞することができる。
【0111】
多孔質フィルムに用いられる熱可塑性樹脂は、リチウム二次電池における電解液に溶解しないものであれば、特に限定されずに使用することができる。具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂等を挙げることができ、これらの2種以上の混合物を用いてもよい。
【0112】
セパレータがより低温で軟化してシャットダウンさせるためには、多孔質フィルムがポリエチレンを含有することが好ましい。ポリエチレンとして、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレンなどのポリエチレンを挙げることができ、分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンを挙げることもできる。
【0113】
多孔質フィルムの突刺し強度をより高めるためには、多孔質フィルムを構成する熱可塑性樹脂は、少なくとも超高分子量ポリエチレンを含有することが好ましい。また、多孔質フィルムの製造面において、熱可塑性樹脂は、低分子量(重量平均分子量1万以下)のポリオレフィンからなるワックスを含有することが好ましい場合もある。
【0114】
また、積層フィルムにおける多孔質フィルムの厚みは、使用条件等に応じて適宜選択可能であるが、好ましくは3μm以上30μm以下であり、より好ましくは3μm以上25μm以下である。また、積層フィルムの厚みは、使用条件等に応じて適宜選択可能であるが、好ましくは40μm以下、より好ましくは、30μm以下である。また、耐熱多孔層の厚みをA(μm)、多孔質フィルムの厚みをB(μm)としたときには、A/Bの値が、0.1以上1.0以下であることが好ましい。
【0115】
リチウム二次電池において、セパレータは、電池使用時(充放電時)に電解質を良好に透過させるため、JIS P 8117で定められるガーレー法による透気抵抗度が、50秒/100cc以上、300秒/100cc以下であることが好ましく、50秒/100cc以上、200秒/100cc以下であることがより好ましい。
【0116】
また、セパレータの空孔率は、使用条件等に応じて適宜選択可能であるが、好ましくは30体積%以上80体積%以下、より好ましくは40体積%以上70体積%以下である。使用するセパレータは、空孔率の異なるセパレータを積層したものであってもよい。
【0117】
(電解液)
リチウム二次電池が有する電解液は、電解質および有機溶媒を含有する。
【0118】
電解液に含まれる電解質としては、LiClO
4、LiPF
6、LiAsF
6、LiSbF
6、LiBF
4、LiCF
3SO
3、LiN(SO
2CF
3)
2、LiN(SO
2C
2F
5)
2、LiN(SO
2CF
3)(COCF
3)、Li(C
4F
9SO
3)、LiC(SO
2CF
3)
3、Li
2B
10Cl
10、LiBOB(ここで、BOBは、bis(oxalato)borateのことである。)、LiFSI(ここで、FSIはbis(fluorosulfonyl)imideのことである)、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩、LiAlCl
4などのリチウム塩が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。このうち、電解質としては、フッ素を含むLiPF
6、LiAsF
6、LiSbF
6、LiBF
4、LiCF
3SO
3、LiN(SO
2CF
3)
2およびLiC(SO
2CF
3)
3からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むものを用いることが好ましい。
【0119】
また前記電解液に含まれる有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタンなどのカーボネート類;1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;3−メチル−2−オキサゾリドンなどのカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−プロパンサルトンなどの含硫黄化合物、またはこれらの有機溶媒にさらにフルオロ基を導入したもの(有機溶媒が有する水素原子のうち1以上をフッ素原子で置換したもの)を用いることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0120】
このうち、カーボネート類を含む混合溶媒が好ましく、環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒、環状カーボネートとエーテル類との混合溶媒がさらに好ましい。環状カーボネートと非環状カーボネートとの混合溶媒としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートを含む混合溶媒が好ましい。このような混合溶媒を用いた電解液は、動作温度範囲が広く、高い電流レートにおける充放電を行っても劣化し難く、長時間使用しても劣化し難く、かつ負極の活物質として天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛材料を用いた場合でも難分解性であるという多くの特長を有する。
【0121】
また、電解液としては、リチウム二次電池の安全性を向上させるために、LiPF
6などのフッ素を含むリチウム塩およびフッ素置換基を有する有機溶媒を含む電解液を用いることが好ましい。このうち、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテルなどのフッ素置換基を有するエーテル類とジメチルカーボネートとを含む混合溶媒は、高い電流レートにおける充放電を行っても容量維持率が高いため、さらに好ましい。
【0122】
上記の電解液の代わりに固体電解質を用いてもよい。固体電解質としては、例えばポリエチレンオキサイド系の高分子化合物、ポリオルガノシロキサン鎖またはポリオキシアルキレン鎖の少なくとも一種以上を含む高分子化合物などの有機系高分子電解質を用いることができる。また、高分子化合物に非水電解液を保持させた、いわゆるゲルタイプのものを用いることもできる。またLi
2S−SiS
2、Li
2S−GeS
2、Li
2S−P
2S
5、Li
2S−B
2S
3、Li
2S−SiS
2−Li
3PO
4、Li
2S−SiS
2−Li
2SO
4、Li
2S−GeS
2−P
2S
5などの硫化物を含む無機系固体電解質が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これら固体電解質を用いることで、リチウム二次電池の安全性をより高めることができることがある。
【0123】
また、リチウム二次電池において、固体電解質を用いる場合には、固体電解質がセパレータの役割を果たす場合もあり、その場合には、セパレータを必要としないこともある。
【0124】
以上のような構成の正極活物質は、本発明の二次電池用正極活物質を用いているため、正極活物質を用いたリチウム二次電池を、常温、高温いずれの環境下でも優れたサイクル特性を示すものとすることができる。
【0125】
また、以上のような構成の正極は、本発明の二次電池用正極活物質を有するため、リチウム二次電池を、常温、高温いずれの環境下でも優れたサイクル特性を示すものとすることができる。
【0126】
さらに、以上のような構成のリチウム二次電池は、本発明の二次電池用正極活物質を有する正極を備えるため、従来よりも常温、高温いずれの環境下でも優れたサイクル特性を示すものとすることができる。
【実施例】
【0127】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0128】
実施例1〜7及び比較例1〜4の二次電池用正極活物質の製造方法
実施例3、4と比較例2、3に用いるニッケル、コバルト、マンガン複合水酸化物粒子の調製
攪拌機付きの反応槽に、硫酸ニッケルと硫酸コバルトと硫酸マンガンとを所定比(ニッケル:コバルト:マンガン=50:20:30の原子比)で溶解した水溶液と、硫酸アンモニウム水溶液を滴下して反応槽内で反応温度30.0℃、液温40℃基準で反応pH11.9になるように水酸化ナトリウムを適時滴下し、ニッケル、コバルト、マンガン複合水酸化物を生成した。生成した水酸化物は、反応槽のオーバーフロー管から連続的にオーバーフローさせて取り出し、濾過後、水洗し、100℃乾燥の各処理を施して、二次電池用正極活物質の前駆体であるニッケル、コバルト、マンガン複合水酸化物粒子を得た。このニッケル、コバルト、マンガン複合水酸化物粒子のD50は3.9μm、(D90−D10)/D50は0.96であった。
【0129】
実施例1、2、6、7に用いるニッケル、コバルト、マンガン複合水酸化物粒子の調製
実施例3、4と比較例2、3に用いるニッケル、コバルト、マンガン複合水酸化物粒子を乾式分級機で分級することにより、D50が4.2〜4.4μm、(D90−D10)/D50が0.78〜0.88のニッケル、コバルト、マンガン複合水酸化物粒子を調製した。
【0130】
実施例5と比較例1、4に用いるニッケル、コバルト、マンガン複合水酸化物粒子の調製
攪拌機付きの反応槽に、硫酸ニッケルと硫酸コバルトと硫酸マンガンとを所定比(ニッケル:コバルト:マンガン=50:20:30の原子比)で溶解した水溶液と、硫酸アンモニウム水溶液を滴下して反応槽内で反応温度50.0℃、液温40℃基準で反応pH11.4になるように水酸化ナトリウムを適時滴下し、ニッケル、コバルト、マンガン複合水酸化物を生成した。生成した水酸化物は、反応槽のオーバーフロー管からオーバーフローさせて連続的に取り出し、濾過後、水洗、脱水、100℃乾燥の各処理を施して、二次電池用正極活物質の前駆体であるニッケル、コバルト、マンガン複合水酸化物粒子を得た。このニッケル、コバルト、マンガン複合水酸化物粒子のD50は11.6μm、(D90−D10)/D50は0.90であった。
【0131】
実施例1〜7と比較例1〜4にて用いるニッケル、コバルト、マンガン複合水酸化物粒子のD50と(D90−D10)/D50の値を、下記表1に示す。なお、下記表1のD50、D90、D10の値は、レーザー回折粒度分布計(株式会社堀場製作所製、LA−950)を用い、ニッケル、コバルト、マンガン複合水酸化物粒子0.1gを、0.2質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液50mlに投入し、該粒子を分散させた分散液を得た。得られた分散液について粒度分布を測定し、体積基準の累積粒度分布曲線を得た。得られた累積粒度分布曲線において、10%累積時の微小粒子側から見た粒子径(D10)の値を、50%累積時の微小粒子側から見た粒子径(D50)の値を、90%累積時の微小粒子側から見た粒子径(D90)の値を、ニッケル、コバルト、マンガン複合水酸化物粒子の平均粒子径とした。
【0132】
次に、実施例1〜7と比較例1〜4にて用いる、乾燥粉末であるニッケル、コバルト、マンガン複合水酸化物粒子に、それぞれ、下記表1に示すLi/M1の原子比となるように、炭酸リチウム粉末を添加して混合して、ニッケル、コバルト、マンガン複合水酸化物粒子と炭酸リチウムの混合粉を得た。得られた混合粉を鞘に充填後、下記表1に示す焼成温度条件にて、焼成を行った。焼成は、ボックス炉を用い、ドライエアー雰囲気下で、昇温速度200℃/minの条件で行った。各焼成工程後、粉砕機(増幸産業株式会社製、スーパーマスコロイダーMKCA6−2)を用いて焼成品の粉砕を行い、その後、325メッシュ篩にて篩がけを行い、次工程を行った。本焼成工程の、前記混合粉、又は仮焼工程後の前記混合粉の鞘への充填量は、内寸130×130×88mmの鞘に、下記表1に示すS/Vとなるように充填した。
【0133】
実施例3及び6では、本焼成工程前にZrO
2を、ニッケル、コバルト、マンガン複合水酸化物粒子に対し0.3mol%添加して本焼成を行い、さらに、焼戻し工程前にAl
2O
3をニッケル、コバルト、マンガン複合水酸化物粒子に対し1.0mol%添加して焼戻しを行った。また、実施例4では、焼戻し工程前にAl
2O
3をニッケル、コバルト、マンガン複合水酸化物粒子に対し1.0mol%添加して焼戻しを行った。また、実施例7では、本焼成工程前にZrO
2を、ニッケル、コバルト、マンガン複合水酸化物粒子に対し0.3mol%添加して本焼成を行った。
【0134】
上記のようにして、実施例1〜7及び比較例1〜4の二次電池用正極活物質を製造した。実施例1〜7と比較例1〜4の二次電池用正極活物質のD50の値を、下記表2に示す。なお、下記表2のD50の値は、レーザー回折粒度分布計(株式会社堀場製作所製、LA−950)を用い、上記複合水酸化物と同様の方法で測定した。
【0135】
【表1】
【0136】
実施例と比較例の二次電池用正極活物質の評価項目は、以下の通りである。
(1)二次電池用正極活物質の組成分析
実施例1〜7及び比較例1〜4で得られた二次電池用正極活物質について、組成分析は、得られた二次電池用正極活物質の粉末を塩酸に溶解させた後、誘導結合プラズマ発光分析装置(株式会社パーキンエルマージャパン製、Optima7300DV)を用いて行った。
【0137】
(2)2θ=64.5±1°の範囲の2つの回折ピークの半値全幅
実施例1〜7及び比較例1〜4で得られた二次電池用正極活物質について、粉末X線回折測定は、X線回折装置(株式会社リガク製、UltimaIV)を用いて行った。上記のようにして得られた二次電池用正極活物質の粉末を専用の基板に充填し、Cu−Kα線源(40kV/40mA)を用いて、回折角2θ=10°〜100°、サンプリング幅0.03°、スキャンスピード20°/minの条件にて測定を行うことで、粉末X線回折図形を得た。統合粉末X線解析ソフトウェアPDXLを用い、該粉末X線回折図形から64.5±1°の範囲に表れる2つのピークのうち、低角度側のピークの半値全幅をα、高角度側のピークの半値全幅をβとし、半値幅比β/αを算出した。
【0138】
(3)平均粒子強度
島津微小圧縮試験機MCT−510にて測定した。
実施例1〜7及び比較例1〜4で得られた二次電池用正極活物質について、株式会社島津製作所製「微小圧縮試験機MCT−510」を用いて行った。上記方法で測定した、体積平均粒子径(D50)±1.0μmの範囲の二次電池用正極活物質のうち、任意に選んだ二次電池用正極活物質1個に対して、上限試験力(負荷)200mN、負荷速度定数86.7(負荷速度0.4464mN/S)で試験圧力をかけ、二次電池用正極活物質の変位量を測定した。試験圧力を徐々にあげて行った際、試験圧力がほぼ一定のまま変位量が最大となる圧力値を試験力(P)とし、下記数式(A)に示す平松らの式(日本鉱業会誌,Vol.81,(1965))により、強度(St)を算出した。この操作を計10粒子について行い、10粒子の粒子強度の平均値から平均粒子強度を算出した。
St=2.8×P/(π×d×d) (d:粒子径)
【0139】
(4)BET比表面積
実施例1〜7及び比較例1〜4で得られた二次電池用正極活物質について、比表面積測定装置(株式会社マウンテック製、Macsorb)を用い、1点BET法によって測定した。
【0140】
(5)サイクル試験前後の格子定数の変化率
後述する容量維持率(サイクル特性)に用いたサイクル試験前後のラミネートセルを分解し、サイクル試験前後の正極板について、X線回折装置(Bruker社製、D8 ADVANCE)を用いて格子定数の変化率の測定を行った。具体的には、まず、サイクル試験前後の正極板をガラスプレートに貼り付け、Cu−Kα線源(40kV、40mA)を用いて、回折角2θ=10°〜100°、サンプリング幅0.0217°、スキャンスピード2.6°/minの条件にて測定を行うことで、X線回折図形を得た。その後、XRD解析ソフトウェアTOPASを用い、該X線回折図形からa軸、c軸の格子定数を求め、(サイクル試験前のa軸/サイクル試験後のa軸)×100、(サイクル試験前のc軸/サイクル試験後のc軸)×100から、25℃と60℃におけるサイクル試験前後の格子定数の変化率を算出した。
【0141】
正極の作製
実施例1〜7及び比較例1〜4で得られた二次電池用正極活物質(正極活物質)と導電材(アセチレンブラック)とバインダー(PVdF)とを、正極活物質:導電材:バインダー=90:5:5(質量比)の組成となるように加えて混練することにより、ペースト状の正極合剤を調製した。正極合剤の調製時には、N−メチル−2−ピロリドンを有機溶媒として用いた。
【0142】
得られた正極合剤を、集電体となる厚さ15μmのAl箔に、目付け量10mg/cm
2となるように塗布して120℃で8時間真空乾燥を行い、正極を得た。この正極の電極面積は9cm
2とした。
【0143】
負極の作製
負極として黒鉛(正極活物質)と増粘剤(CMC)と結着剤(SBR400)とを、負極活物質:増粘剤:結着剤=100:1:1(質量比)の組成となるように加えて混練することにより、ペースト状の負極合剤を調製した。負極合剤の調整時には、水を溶媒として用いた。
【0144】
得られた負極合剤を、集電体となる厚さ10μmのCu箔に塗布して120℃で8時間真空乾燥を行い負極を得た。この負極の電極面積は12cm
2とした。
【0145】
リチウム二次電池(ラミネートセル)の作製
以下の操作を、露点−60℃のドライエアー雰囲気のグローブボックス内で行った。
【0146】
「正極の作製」で作製した正極を、ラミネートの上にアルミ箔面を下に向けて置き、その上に積層フィルムセパレータ(ポリエチレン製多孔質フィルムの上に、耐熱多孔層を積層(厚み16μm))を置き、さらに、その上に「負極の作製」で作製した負極のうち、NP比1.1となる負極を、アルミ箔面を上に向けて置き、さらにラミネートを重ね、シーラーにて3辺を留め、60℃10時間真空乾燥させた。ここに電解液を1.4g注入し、真空で残りの1辺をシールした。上記電解液は、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートとの3:5:2(体積比)混合液に、LiPF
6を1mol/lとなるように溶解して調製した。
【0147】
「リチウム二次電池(ラミネートセル)の作製」で作製した電池を用いて、以下に示す条件で、SEI皮膜を形成させるために化成工程を行った。
温度25℃、充電最大電圧4.2V、放電最小電圧2.7V(10、11サイクル目のみ3.0V)
1サイクル目:充電時間20時間、充電電流0.05C、充電方式CCCV 0.01C Cut、放電時間10時間、放電電流0.1C、放電方式CC
2〜4サイクル目:充電時間10時間、充電電流0.1C、充電方式CCCV 0.01C Cut、放電時間5時間、放電電流0.2C、放電方式CC
5〜9サイクル目:充電時間5時間、充電電流0.2C、充電方式CCCV 0.05C Cut、放電時間5時間、放電電流0.2C、放電方式CC
10〜11サイクル目:充電時間5時間、充電電流0.2C、充電方式CCCV 0.05C Cut、放電時間5時間、放電電流0.2C、放電方式CC
【0148】
(6)容量維持率(サイクル特性)
化成工程を行った電池を用いて、正確な容量測定を行うため、充放電前に0.2Cで2サイクル充放電を行った。その後、以下に示す条件で充放電試験を実施した。充放電試験における、充電容量および放電容量をそれぞれ以下のようにして求め、1サイクル目の放電容量を基準とし、容量の維持率を算出した。各試験でN=3実施し、その平均値を各活物質の容量維持率とした。
試験温度:25℃
充電時条件:充電最大電圧4.2V、充電時間0.5時間、充電電流2C、CC
放電時条件:放電最小電圧3.0V、放電時間0.5時間、放電電流2C、CC
充放電回数:1000回
試験温度:60℃
充電時条件:充電最大電圧4.2V、充電時間0.5時間、充電電流2C、CC
放電時条件:放電最小電圧3.0V、放電時間0.5時間、放電電流2C、CC
充放電回数:500回
【0149】
上記評価項目の結果を下記表2〜4に示す。
【0150】
【表2】
【0151】
【表3】
【0152】
【表4】
【0153】
上記表2、4から、平均粒子強度が200MPa以上であり、CuKα線を使用した粉末X線回折パターンのピークより、β/αが0.97≦β/α≦1.25である実施例1〜7の二次電池用正極活物質では、25℃1000サイクルにおける容量維持率が80%以上、60℃500サイクルにおける容量維持率が75%以上と、常温、高温いずれの環境下でも優れたサイクル特性を発揮できる二次電池用正極活物質を得ることができた。また、上記表2、3、4から、平均粒子強度が200MPa以上であり、サイクル試験前後の格子定数の変化率が、25℃及び60℃の試験において、a軸、c軸ともに、99.30%以上100.90%以下である実施例1〜7の二次電池用正極活物質では、25℃1000サイクルにおける容量維持率が80%以上、60℃500サイクルにおける容量維持率が75%以上と、常温、高温いずれの環境下でも優れたサイクル特性を発揮できる二次電池用正極活物質を得ることができた。また、表2から、実施例1〜7の二次電池用正極活物質では、良好なD50、BET比表面積を得ることができた。
【0154】
特に、1.06≦β/α≦1.13である実施例3、4、6では、25℃1000サイクルにおける容量維持率が88%以上、且つ60℃500サイクルにおける容量維持率が80%以上と、常温、高温いずれの環境下でもさらに優れたサイクル特性を発揮できる二次電池用正極活物質を得ることができた。また、上記表1、4から、ニッケル、コバルト、マンガン複合水酸化物粒子の(D90−D10)/D50が0.78である実施例6は、(D90−D10)/D50が0.96であり焼成条件が実施例6と同じである実施例3と比較して、25℃1000サイクルにおける容量維持率がさらに向上した。従って、複合水酸化物粒子の(D90−D10)/D50が0.80以下に制御されることで常温でのサイクル特性がさらに向上した。
【0155】
また、上記表1、4から、p≧−600q+1603(式中、qは、少なくともNi、Co及びMnのうち1種類以上からなる金属元素(M1)の合計に対するLiの原子比(Li/M1)であり、1.00≦q≦1.30、pは、本焼成温度であり、940℃<p≦1100℃を意味する)の焼成温度で表される本焼成工程に加えて、仮焼工程、焼戻し工程、添加物(M2の金属元素を含む、Al
2O
3及び/またはZrO
2)の添加のうちの少なくとも1つの工程を実施した実施例1〜7では、常温、高温いずれの環境下でも優れたサイクル特性を発揮できる二次電池用正極活物質を製造することできた。
【0156】
また、常温、高温いずれの環境下でも優れたサイクル特性を発揮できる実施例1〜7では、BET比表面積が0.35m
2〜6.1m
2/gと良好なBET比表面積を得ることができた。また、上記実施例1〜7では、充填時の混合粉の表面積(S)/体積(V)は、0.08〜0.24mm
2/mm
3の範囲であった。
【0157】
一方で、上記表2、4から、平均粒子強度が200MPa未満であり、β/αが0.96以下である比較例1、2の二次電池用正極活物質では、60℃500サイクルにおける容量維持率が60%以上73%以下であり、高温環境下にて優れたサイクル特性を発揮できなかった。また、上記表2、3、4から、平均粒子強度が200MPa未満であり、サイクル試験前後の格子定数の変化率が、60℃の試験において、a軸が99.25%〜99.26%である比較例2、4では、60℃500サイクルにおける容量維持率が73%であり、高温環境下にて優れたサイクル特性を発揮できなかった。また、上記表2、3、4から、平均粒子強度が200MPa未満であり、60℃の試験において、a軸、c軸ともに、99.30%以上100.90%以下の範囲外である比較例3の二次電池用正極活物質では、25℃1000サイクルにおける容量維持率が79%、60℃500サイクルにおける容量維持率が69%と、常温、高温いずれの環境下でも優れたサイクル特性を得られなかった。
【0158】
また、上記表1、4から、仮焼工程を実施したものの、p≧−600q+1603(式中、qは、少なくともNi、Co及びMnのうち1種類以上からなる金属元素(M1)の合計に対するLiの原子比(Li/M1)であり、1.00≦q≦1.30、pは、本焼成温度であり、940℃<p≦1100℃を意味する。)の焼成温度で表される本焼成を行わず、鞘に混合物を充填する際S/Vが0.06cm
2/cm
3であった比較例1では、上記の通り、常温、高温いずれの環境下でも優れたサイクル特性を発揮できなかった。また、焼成工程として本焼成工程のみ実施し、M2の金属元素も添加しなかった比較例2、3では、上記の通り、常温から高温の域にわたって安定的に優れたサイクル特性を得ることはできなかった。また、実施例と同様にして仮焼工程及び本焼成工程を実施したものの、鞘に混合物を充填する際S/Vが0.07cm
2/cm
3であった比較例4では、上記の通り、常温から高温の域にわたって安定的に優れたサイクル特性を得ることはできなかった。
【解決手段】単結晶粒子及び/又は複数の一次粒子の凝集体である二次粒子である、少なくともニッケル、コバルト及びマンガンを含む層状構造を有する二次電池用正極活物質であって、累積体積百分率が50体積%の粒子径(D50)±1.0μmである粒子の平均粒子強度が、200MPa以上であり、X線回折パターンにおいて、2θ=64.5±1°の範囲に現れる2つの回折ピークの低角度側のピークの半値全幅をα、高角度側の回折ピークの半値全幅をβとしたとき、β/αが、0.97≦β/α≦1.25である二次電池用正極活物質。