特許第6669934号(P6669934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6669934動物識別装置の雄部品を動物識別装置の雌部品内に閉塞させる要素を有する動物識別装置の雌部品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6669934
(24)【登録日】2020年3月2日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】動物識別装置の雄部品を動物識別装置の雌部品内に閉塞させる要素を有する動物識別装置の雌部品
(51)【国際特許分類】
   A01K 11/00 20060101AFI20200309BHJP
【FI】
   A01K11/00 A
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-503531(P2019-503531)
(86)(22)【出願日】2017年7月11日
(65)【公表番号】特表2019-527063(P2019-527063A)
(43)【公表日】2019年9月26日
(86)【国際出願番号】EP2017067391
(87)【国際公開番号】WO2018019571
(87)【国際公開日】20180201
【審査請求日】2019年4月16日
(31)【優先権主張番号】1657216
(32)【優先日】2016年7月27日
(33)【優先権主張国】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511140563
【氏名又は名称】アルフレックス・ユーロップ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ドゥカルウェ,ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】イルペール,ジャン‐ジャック
(72)【発明者】
【氏名】デトゥミユ,ジャン‐ジャック
(72)【発明者】
【氏名】テシュネ,ブルーノ
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−065598(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/107612(WO,A1)
【文献】 国際公開第91/010982(WO,A1)
【文献】 米国特許第04953313(US,A)
【文献】 豪国特許出願公開第2004233502(AU,A1)
【文献】 中国実用新案第201967479(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物識別装置の雄部品のヘッドを受け入れるように構成された空洞(30)を備える雌部品であって、
前記空洞が、前記空洞内に前記ヘッドを保持するように構成されると共に前記空洞内に設けられた閉塞要素(20)を有し、
前記閉塞要素(20)が、基部(21)と、前記基部から前記空洞の入口に向かって延びる少なくとも2つの弾性爪(22)とを有し、
前記爪(22)は、前記空洞内への前記ヘッドの挿入前の位置であって挿入位置と呼ばれる位置、前記空洞内への前記ヘッドの挿入後の位置であって閉塞位置と呼ばれる位置とを含んだ少なくとも2つの位置の間で移動可能になっており、
前記挿入位置では、前記爪(22)が、前記空洞内にて雌部品によって拘束され、かつ前記ヘッドが前記空洞の入口に形成される開口から前記空洞内へ挿入可能であり、
前記閉塞位置では、前記ヘッドが前記空洞内を閉塞する、雌部品。
【請求項2】
前記閉塞要素における前記基部(21)及び/又は前記爪(22)が金属製である、請求項1に記載の雌部品。
【請求項3】
前記閉塞要素(20)が、前記雄部品のヘッドを受け入れるように適合されたハウジングを画定し、
前記基部が前記ヘッドの尖端を受け入れるように構成されている、請求項1又は2に記載の雌部品。
【請求項4】
前記閉塞要素の基部(21)が円筒形状又は部分球形状であり、
前記閉塞要素の爪(22)が切頭円錐形状であり、
前記開口の中心を通る前記閉塞要素の軸が、前記雌部品及び前記雄部品の間の接合軸と一致している、請求項1〜3のいずれか一項に記載の雌部品。
【請求項5】
前記閉塞要素の基部が後壁(211)を有している、請求項1〜4のいずれか一項に記載の雌部品。
【請求項6】
前記爪(22)が前記基部(21)の周りに均一に分配されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の雌部品。
【請求項7】
前記挿入位置にて、前記爪の自由端が、前記開口の外周側に位置する前記雌部品の溝内で保持されるようになっている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の雌部品。
【請求項8】
前記雄部品のヘッドを受け入れると共に前記空洞を画定するカバー(41)と、
前記受入カバーに固定して取り付けられると共に前記空洞の入口を画定する王冠状蓋(42)と
を備え、
前記挿入位置にて、前記爪の前記自由端が、前記開口の外周側に位置する前記蓋の凹部内で保持されるようになっている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の雌部品。
【請求項9】
前記挿入位置にて、前記爪の自由端が前記空洞の入口における前記開口の周縁に沿って形成される前記雌部品の安全リング(63)によって、前記開口の外周側の位置にて保持されるようになっており、
前記閉塞位置にて、前記爪の自由端が、前記ヘッドの前記空洞内への挿入によって前記空洞の後部側に移動した前記安全リングから離脱するようになっている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の雌部品。
【請求項10】
前記挿入位置にて、前記閉塞要素の基部(21)が前記空洞の後部に接触しないようになっており、
前記閉塞位置にて、前記閉塞要素の基部が前記空洞の後部に接触するようになっている、請求項1〜9のいずれか一項に記載の雌部品。
【請求項11】
前記閉塞位置にて前記閉塞要素を係止する係止要素(51,64)を備える請求項1〜10のいずれか一項に記載の雌部品。
【請求項12】
前記閉塞位置にて前記爪の自由端によって画定される周縁部分は、前記雄部品の一区域の周縁部分と明らかに等しくなっている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の雌部品。
【請求項13】
前記閉塞要素の基部が、前記空洞の後部と相補的な形状を有する球状キャップとなっている、請求項1〜12のいずれか一項に記載の雌部品。
【請求項14】
動物識別装置の雄部品のヘッドを受け入れるように構成された空洞(30)を備える雌部品であって、
前記空洞が、前記空洞内に前記ヘッドを保持するように構成されると共に前記空洞内に設けられた閉塞要素(20)を有し、
前記閉塞要素(20)が、基部(21)と、前記基部から前記空洞の入口に向かって延びる少なくとも2つの弾性爪(22)とを有し、
前記爪(22)は、前記空洞内への前記ヘッドの挿入途中の位置であって挿入位置と呼ばれる位置と、前記空洞内への前記ヘッドの挿入後の位置であって閉塞位置と呼ばれる位置とを含んだ少なくとも2つの位置の間で移動可能になっており、
前記挿入位置では、前記爪(22)が、前記空洞の入口に形成される開口から前記空洞内に挿入された前記ヘッドによって拘束され、
前記閉塞位置では、前記ヘッドが前記空洞内を閉塞する、雌部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、動物に固着するように構成された動物識別装置によって動物にタグ付けを行う分野に関する。
【0002】
詳細には、本発明は、このような動物識別装置の雌部品に関し、さらに詳細には、動物識別装置の雄部品を動物識別装置の雌部品内で閉塞(block)させることを可能にすると共に雌部品内に設けられた閉塞要素(blocking element)に関する。
【背景技術】
【0003】
家畜の追跡を改善し及び/又は動物の血統を保証するために用いられる従来の方法としては、例えば、動物の耳に動物識別装置を固着することによって動物にタグ付けすることが挙げられる。
【0004】
このような動物識別装置は、従来の形態では、支持体から延びて略尖端化されたヘッドにて終端するロッドによって形成される雄部品と、この雄部品のヘッドを受け入れる空洞を有する雌部品とを備えるものとなっている。
【0005】
このような装置は、動物の追跡可能性を確実にするために不可侵であることが必要である。すなわち、第1の動物に配置された識別装置を取り外し、この識別装置を第2の動物に再配置することがあってはならないのである。
【0006】
この目的を達成するためには、具体的には、一旦雄部品のヘッドが雌部品内に挿入されたならば、雄部品のヘッドを雌部品の受入空洞内で保持可能とするようになっている保持要素を用いる方法が知られている。
【0007】
図1A及び図1Bに示されるように、このような保持要素は、例えば、つま先部分13を画定すするいくつかの長孔12を有するリングの形態にある。このようなリングは、雌部品の入口に配置されることが意図されている。そのため、雄部品のヘッド14が矢印Fの方向において雌部品内に差し込まれると、雄部品14によって押されたこれらのつま先部分13は、いくらか互いに離間し、次いで、雄部品がリング11を横切ったときに元の位置に戻り、これによって、雄ヘッド14を雌部品の受入空洞15内で閉塞させる。
【0008】
例えば、雄ヘッド14がつま先部分13を押すと、リングの内径d1が5mmから6mmに変化し、次いで、雄ヘッド14が雌部品の受入空洞15内に挿入されると、5mmに戻ることになる。
【0009】
このようなつま先部分14は、リングの周縁部分に対して傾斜して、これらの自由端は、受入空洞の後部の方に向けられ(すなわち、受入空洞の入口と反対側の方向に傾斜し)、これによって、雄ヘッドを入口孔から受入空洞の後部に通過させることが容易になる。
【0010】
そのため、このようなリングは、雌部品の空洞内への雄部品の進入を可能にするが、その引き出しを阻止し、これによって、雄部品及び雌部品の解放を防ぐことになる。
【0011】
このようなリングの1つの欠点は、雄ヘッドを雌部品内に差し込むために大きな力を加えることが必要なことにある。実際に、つま先部分13は、リングの内径d1が、例えば、5mmから6mmに変化するように強制的に曲げられなければならない。特に、リングが金属製である場合、これらのつま先部分13の曲げが比較的制限され、これによって、かなりの力を用いることが必要となる。
【0012】
加えて、このようなリングの使用は大きな空洞深さPを必要とする。実際には、空洞の深さは、空洞の後部に向かうつま先部分13の曲げによって雄ヘッドを空洞15内に差し込むことを可能とするように、設計されなければならない。ここで、一旦雄ヘッドが受入空洞内に挿入され、つま先部分13がそれらの元の位置に復帰したならば、雄ヘッドは、つま先部分の自由端と空洞の後部との間にわたって閉塞されないことになる。そのため、雄ヘッドの長さ方向において隙間又は遊びが生じ、枝状物体、電線等が雄部品の支持部及び雌部品の間に入り込むおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そのため、不可侵であり、かつ先行技術の欠点のいずれも有さない新規の識別装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、動物識別装置の雄部品のヘッドを受け入れるように構成される空洞を備えた動物識別装置の雌部品の形態にある新規の解決策を提案する。
【0015】
本発明によれば、このような空洞は、雄部品のヘッドを雌部品の空洞内に保持するように意図された閉塞要素を備え、前記閉塞要素は、基部と、この基部から前記空洞の入口に向かって延びる少なくとも2つの弾性爪とを有し、この爪は、空洞内への雄ヘッドの挿入を可能にする1つの挿入位置と、前記空洞内における雄ヘッドの閉塞を可能にする1つの閉塞位置とを含んだ少なくとも2つの位置間で移動可能になっている。
【0016】
そのため、本発明は、受入空間内においてバネ作用する閉塞要素であって、雌部品の空洞内への雄部品の挿入を可能にするがその引出しを阻止するように、雄ヘッドの通過を可能にする閉塞要素の存在に係る新規の独創的な雌部品を提案する。
【0017】
具体的には、提案される解決策は、固着の容易性を低下させることなく又は製造コストを増大させることなく、動物識別装置の不可侵の特性を改良するものである。
【0018】
さらに具体的には、閉塞要素の基部から空洞の入口に向かって延びる弾性爪の存在が、雄部品を雌部品内に差し込むのに必要な位置決め力を低減させる。実際、弾性爪をいくらか撓ませることによって、雄ヘッドの通過を可能にするのに十分に受入空洞の開口を大きくすることができる。先行技術によれば、つま先部分が受入空洞の後部に向かって延びているので、雄ヘッドを雌部品内に差し込むためにかなりの力を加える必要があることに留意されたい。
【0019】
加えて、閉塞要素の基部から空洞の入口に向かって延びる弾性爪の存在によって、空洞を浅くすることができる。実際、弾性爪の僅かな撓みによって、雄ヘッドを十分に空洞に差し込むことができるので、空洞の深さを大きくする必要がない。そのため、雌部品の空洞内における雄ヘッドの長さ方向に生じる隙間又は遊びを著しく縮小させ、これによって、動物識別装置の長期にわたる耐性を改良することができる。
【0020】
特に、本発明の閉塞要素は、空洞の高さと明らかに等しい高さを有している。そのため、弾性爪は、先行技術のつま先部分の長さよりも大きな長さを有している。先行技術にて用いられるつま先部分と比較して、長い爪を用いることによって、同一の開口を得るのに必要な折曲げ角度が小さくなる。
【0021】
閉塞要素の基部及び/又は爪は、鋼のような金属、ナイロンのようなプラスチック、樹脂、又は複合材料、可能であれば、ガラス繊維富化材料等から作製することができる。
【0022】
そのため、このような要素は、特に外部からの侵入に対して耐性があり、これによって、動物識別装置の不可侵特性を改良することになる。具体的には、このような要素は、高温に対して、特に、座屈、煮沸等に対して耐性がある。よって、これらの要素は、食肉処理後に動物から取り外すことができる。
【0023】
特に、閉塞要素は、雄部品のヘッドを受け入れるのに適するハウジングを画定し、閉塞要素の基部は、前記ヘッドの尖端を受け入れるように意図されている。
【0024】
そのため、閉塞要素の基部は、雄ヘッドの(尖った)先端を支持するディスク形状を有し、閉塞要素の爪は、基部から空洞の入口に向かって延びるフレア(flare)形状を有している。
【0025】
変形例としては、閉塞要素の基部を円筒形状又は部分球形状とすることができ、爪を切頭円錐形状とすることができる。閉塞要素の回転によって生じる軸は、雌部品及び雄部品の間の接合軸と一致する(すなわち、空洞の軸と一致する)。
【0026】
特に、もしも閉塞要素の基部が、雌部品の空洞の後部の形状(凹球形状)に相補的な形状を有する球キャップ(凸球)であったならば、閉塞要素及び雌部品の間にボール/ソケット接続が得られることになる。
【0027】
動物識別装置が位置決めされた後、すなわち、雄部品が閉塞要素内に閉塞されたときに、ボール/ソケット接続は、雄部品と雌部品との間に3自由度の回転をもたらし、これによって、動物識別部の破損及び/又は動物の耳の引き裂きのおそれが低減される。
【0028】
これらの種々の構成によって、基部は、閉塞位置において空洞の後部に位置する(しかし、必ずしも空洞の後部に直接接触する必要がない)。
【0029】
1つの特定実施形態によれば、閉塞要素の基部は後壁を有している。そのため、雄ヘッドが雌部品の空洞内に挿入されたときに、雄ヘッドの先端(尖端)は、閉塞要素の基部の後壁に当接し、雄部品は、爪と閉塞要素の基部の後部との間に閉塞される。よって、外部要素(枝状物体、電線等)が雄部品と雌部品との間に入り込むおそれが低減される。
【0030】
特に、硬質材料(金属、ナイロン、剛性プラスチック、複合材料等)によって構成されるとよいこのような後壁は、ドリル加工、曲げ加工等によるどのような侵入をも困難にする遮蔽をもたらすという点において、動物識別装置の不可侵特性を改良することになる。
【0031】
1つの特定の実施形態によれば、前記爪は、閉塞要素の基部の周りに均一に分配されている。
【0032】
そのため、雄部品が雌部品内にさらに十分に保持され、動物識別装置の寿命が長くなることが確実になる。
【0033】
例えば、閉塞要素は10本の爪を備えることができる。
【0034】
1つの特定実施形態によれば、これらの爪は、挿入位置において開口内に拘束されている。
【0035】
そのため、雌部品内への雄ヘッドの挿入中、これらの爪を離間させるために追加的な力を加える必要がなく、これによって、動物識別装置の位置決めを容易にし、(先行技術と比較してこの装置を配置するのに必要な力を低減させることになる)。対照的に、先行技術のシステムでは、雄ヘッドを雌部品に差し込むために保持要素、例えば、リングのつま先部分を変形させ、これによって、位置決め応力を生じさせる必要があることに留意されたい。
【0036】
第1の例によれば、挿入位置において、爪の自由端が雌部品の溝内に保持される。このような溝は、空洞経の入口に位置しており、弾性爪は、閉塞要素の基部から空洞の入口に向かって延びている。
【0037】
第2の例によれば、雌部品は、雄ヘッドを受け入れると共に空洞を画定するカバーと、受入カバーに固定して取り付けられると共に空洞の入口を画定する王冠状蓋とを備え、挿入位置において、爪の自由端は蓋の凹部内に保持される。
【0038】
第3の例によれば、爪の自由端は、空洞の入口に設けられた安全リングによって保持される。
【0039】
1つの特定の実施形態によれば、閉塞要素の基部は、挿入位置において空洞の後部に接触しないようになっており、閉塞位置においては空洞の後部に接触するようになっている。
【0040】
そのため、雌部品内への雄部品の挿入によって、閉塞要素は、雄部品及び雌部品の間の接合軸(すなわち、空洞の軸)に沿って雌部品の受入空洞内を摺動する。このような摺動によって、挿入位置において開口内に拘束された爪の自由端が解放される。よって、挿入位置から閉塞位置への移行は、雌部品の空洞内への雄ヘッドの挿入によって促進されることになる。
【0041】
本発明の1つの特定の特性によれば、雌部品は、閉塞位置において閉塞要素を係止する係止手段も備えている。
【0042】
このような係止手段は、閉塞位置において閉塞要素(すなわち、柔軟爪)の解放を阻止する。
【0043】
特に、閉塞位置における爪の自由端によって画定される周縁部分(perimeter)は、雄部品のある区域の周縁部分(perimeter)と明らかに等しくなっている。
【0044】
そのため、閉塞は、例えば、閉塞要素の爪の自由端が雄部品のロッドの周縁部分の全体又はほぼ全体に接触することによって、雄部品のロッドの周縁部分の全体又はほぼ全体にわたってなされることになる。一方、先行技術によれば、つま先部分間の長孔によって各つま先部分と次のつま先部分との間に空間が生じている。
【0045】
従って、本発明による雌部品では、閉塞要素と雄部品との間の接触面が大きいので、雄ヘッドへの接触圧力は、先行技術における接触圧力よりも低くなる。よって、引き裂きのおそれが小さくなる。これによって、動物識別装置は、長時間にわたる持続能力を有することになる。
【0046】
本発明の他の特徴及び利点は、単純な例示的かつ包括的な例としてもたらされる特定の実施形態の以下の説明及び添付の図面からさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1A】先行技術に係る雌部品内に雄部品を保持するために用いられていたリングの一例を示す図である。
図1B】先行技術に係る雌部品内に雄部品を保持するために用いられていたリングの一例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る閉塞要素を示す図である。
図3A】本発明の第1実施形態について、閉塞要素が開口内に予め拘束されていない状態で示す図である。
図3B】本発明の第1実施形態について、閉塞要素が開口内に予め拘束されていない状態で示す図である。
図3C】本発明の第1実施形態について、閉塞要素が開口内に予め拘束されていない状態で示す図である。
図4A】本発明の第2実施形態の変形例について、閉塞要素が開口内に予め拘束されていない状態で示す図である。
図4B】本発明の第2実施形態の変形例について、閉塞要素が開口内に予め拘束されていない状態で示す図である。
図5A】閉塞位置において閉塞要素を係止する一例を示す図である。
図5B】閉塞位置において閉塞要素を係止する一例を示す図である。
図6A】本発明の第2実施形態の変形例について、閉塞要素が開口内に予め拘束されていない状態で示す図である。
図6B】本発明の第2実施形態の変形例について、閉塞要素が開口内に予め拘束されていない状態で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
[一般的原理]
本発明の一般的原理は、雌部品の受入空洞内に設けられた閉塞要素であって、空洞内に雄部品のヘッドを挿入することを可能にするがそれを引き出すことを阻止するように、このヘッドの通過を可能にする閉塞要素の使用に基づいている。
【0049】
このような閉塞要素は図2に示されている。閉塞要素は、基部21と、この基部21から雌部品の空洞の入口に向かって延びる少なくとも2つの弾性爪22とを備えている。爪の柔軟性又は弾性は、金属、ナイロン、ガラス繊維富化複合材料等のような材料を用いることによって、得ることができる。
【0050】
基部21は、動物識別の分野において従来から用いられている雌部品の空洞の後部と協働できるように、リング形状若しくはディスク形状のような2次元の円形状、又は円筒形状のような3次元の形状、及び/又は半球状断片又は球状断片(特に球状キャップ)を有することができる。基部は、特に、平面又は円形とすることができる後壁211を有している。例えば、図2に示されるように、基部は、球状キャップの形態にある丸い後壁を有する中空円筒によって形成されている。
【0051】
爪22は、基部21を形成するディスク若しくはリングから又は円筒の先端(基端)から又は空洞の反対側の後部の球断片から、空洞の入口孔に向かって延びている。爪22は、フレア形状を有している(すなわち、爪の自由端によって画定される直径は、爪の基部において画定される直径よりも大きい)。爪22は、雄部品のヘッドを受け入れるように適合されたハウジングを画定するために切頭円錐形状である。これらの爪は、有利には、基部の周りに均一に分配されている。
【0052】
各爪は、雄ヘッドを閉塞位置に保持するフックとして折り返されることが可能な板バネによって形成されている。例えば、各爪22は、フレア形状を画定する1つの直線部分221とフックを画定する湾曲部分222とを含む少なくとも2つの部分を有している。例えば、直線部分は、約7mmから10mmの長さを有し、湾曲部分は、約1mmから3mmの長さを有している。
【0053】
これらの爪は、2つの位置、具体的には、(矢印Fの方向において)空洞内へのヘッドの挿入を可能にする挿入位置と、空洞内におけるヘッドの閉塞を可能にする閉塞位置との間で移動可能である。挿入位置では、これらの爪は、雄部品を通過させるように互いにいくらか離間している。閉塞位置では、これらの爪は、雄部品を雌空洞内の適所に閉塞させる。
【0054】
1つの特定の実施形態によれば、爪の数及び/又は寸法は、閉塞位置において爪の自由端によって画定される周縁部分が、雄部品の一区域の周縁部分、例えば、雄部品のロッドの一区域の周縁部分と明らかに等しくなるように選択される。換言すれば、爪の自由端によって画定される内径は、ロッドと雄ヘッドとの間の接合部におけるロッドの直径と明らかに等しくなっている。
【0055】
以下、本発明を実施する種々の例について説明する。
【0056】
従来から、動物識別装置は、支持部から延びてヘッドで終端するロッドによって形成された雄部品と、この雄部品のヘッドを受け入れる空洞を有する雌部品とを備えると考えられている。雄部品は、その基部において、ロッドの直径よりも大きい直径を有している。これによって、ロッドと雄ヘッドとの間の接合部は、第1の肩を画定する。必要に応じて、第2の肩がロッドに画定されてもよい
【0057】
このような動物識別装置は、特に、雄部品及び雌部品から構成される2つの部品によって形成することができる。雄部品及び雌部品は、別部品とされ、柔軟リンクによって連結されてもよいし、又は一体部品であってもよい。
【0058】
[第1実施形態]
図3A及び図3Bを参照して、本発明の第1実施形態について説明する。この実施形態によれば、雄部品が雌部品内に挿入される前、閉塞要素の爪は、「緩和(relax)」している。
【0059】
雄ヘッドが雌部品内に挿入される前、閉塞要素20は、図3Aに示されるように、静止位置にある。例えば、閉塞要素20の基部は、空洞30の後部と接触し、閉塞要素20の爪に応力が加えられず、従って、「緩和(relaxed)」している。
【0060】
雄部品が雌部品内に挿入されると、雄ヘッド31の尖った形状によって、閉塞要素20の爪は、図3Bに示されるように、雄ヘッドの最大径に達するまで徐々に外方に移動することができる。そのため、雄部品31によって、応力が閉塞要素20の爪に加えられる。この位置は、空洞内へのヘッドの挿入を可能にする挿入位置に対応する。
【0061】
図3Cに示されるように、一旦雄ヘッドが空洞30内に挿入されたならば、すなわち、一旦雄ヘッドの第1の肩311が爪の自由端を通り抜けたならば、雄ヘッドによって閉塞要素20の爪に加えられた応力が緩和し、爪がそれらの元の位置に復帰する。この位置において、閉塞要素の爪は、第1の肩311の基端において雄部品を掴むことになる。この位置は、空洞内における雄ヘッドの閉塞を可能にする閉塞位置に対応する。
【0062】
必要に応じて、係止リングのような係止手段を用いて、閉塞要素を閉塞位置に係止し、これによって、特に雌部品内への雄ヘッドの挿入の後に爪の解放/拡張を阻止することができる。
【0063】
[第2実施形態]
以下、図4A図6Bを参照し、本発明の第2実施形態について説明する。この実施形態によれば、雄部品が雌部品内に挿入される前に閉塞要素の爪が、開口内に拘束されている。
【0064】
図4A及び図4Bに示される第1の例によれば、例えば、雌部品は、雄部品のヘッドを受け入れると共に空洞を画定するカバー41と、受入れカバーに固定して取り付けられると共に空洞の入口を画定する王冠状蓋42と、雄ヘッドを雌部品内にて閉塞させる要素20とを備えている。蓋42は、必要に応じて、雌部品の初回使用を確実にする引き裂き可能なシャッタによって閉鎖されていてもよく、これによって、空洞内への汚損材料の導入を阻止することができる。このようなシャッタは、雌部品内への雄ヘッドの挿入中に雄ヘッドによって引き裂くことが可能になっている。
【0065】
雄ヘッド31が雌部品内に挿入される前に、図4Aに示されるように、閉塞要素20は、開口内に拘束されている。この目的を達成するために、閉塞要素20の各爪の自由端は、爪を強制的に開いた状態で雌部品の空所内に配置される。例えば、このような空所は、空洞の入口孔において雌部品に形成された溝である。このような空所は、蓋42に形成された凹部であってもよい。この位置は、空洞内へのヘッドの挿入を可能にする挿入位置に対応する。
【0066】
この挿入位置では、閉塞要素20の基部は、空洞の後部と接触していない。
【0067】
雄ヘッド31は、雌部品の受入空洞内に容易に入り込むことができる。なぜならば、閉塞要素の爪が開口内に拘束されており、これによって、雄ヘッドの導入を妨げないからである。そのため、配置力又は位置決め力が低減する。雄ヘッドの尖端が閉塞要素20の後壁211に当接すると、雄ヘッドが後壁211を雌部品の空洞の後部に向かって押し込む。図4Bに示されるように、空洞の後部に向かう閉塞要素20の移行によって、この移動が十分に行われるやいなや(例えば、閉塞要素20の後壁211が空洞の後部に接触する時又はこれが生じる前に)、爪がそれらの空所から解放される。そのため、閉塞要素20の爪に加えられた応力が緩和され、爪が閉じることになる。この位置において、閉塞要素の爪は、第1の肩311の基端において雄部品を掴むことになる。この位置は、空洞内における雄部品の閉塞を可能にする閉塞位置に対応する。
【0068】
図5A及び図5Bに示されるように、係止手段51を用いて、閉塞要素を閉塞位置に係止することができる。例えば、このような係止手段は、係止リング又は係止ボールから構成されている。
【0069】
挿入位置において、これらの係止手段51は、雌部品の空所(例えば、蓋52に設けられた空所)内において閉塞要素20の爪によって保持される。閉塞位置において、これらの係止手段51は解放されることになる。
【0070】
図5A及び図5Bに示される例によれば、挿入位置において、閉塞要素の爪は、この目的のために雌部品に設けられた空所の壁に対して、リング(又はボール)及び係止バネ511を圧縮する。図4A及び図4Bを参照して前述したように、係止要素20の基部は、この挿入位置において空洞の基部と接触していない。
【0071】
雄ヘッドが閉塞要素20の後壁211を雌部品の空洞の後部に向かって押し込むと、閉塞要素20の爪に加えられた応力が緩和され、その結果、リング(又はボール)及び係止バネ511に加えられた応力が緩和される。解放された係止バネ511は、係止リング(又はボール)をその空所(又はそれらの空所)から停止位置に至るまで空洞の後部に向かって押し出し、この停止位置において、リング(又はボール)は、空洞の内壁及び爪と接触することになる。この位置において、リングは、閉塞要素20を係止し、爪の解放/拡張を阻止する。なぜならば、リングは、一方において空洞の内壁上に静止し、他方において爪上に静止するからである。
【0072】
図6A及び図6Bに示される第2の例によれば、例えば、雌部品が雄部品のヘッドを受け入れると共に空洞を画定するカバー61と、受入カバーに固定して取り付けられた王冠状蓋62と、雄ヘッドを雌部品内に閉塞するための要素20と、閉塞要素の爪を開口内に拘束することを可能にする安全リング63とを備えている。
【0073】
例えば、このような安全リング63は、空洞内の蓋62に可逆的にしっかりと取り付けられている。蓋62及び安全リングは、空洞の入口を画定する。安全リング63又は蓋62は、必要に応じて、雌部品の初回使用を確実にする引き裂き可能なシャッタ65によって閉鎖されていてもよく、これによって、空洞内への汚損材料の導入を阻止することができる。このようなシャッタは、雌部品内への雄ヘッドの挿入中に雄ヘッドによって引き裂くことが可能になっている。
【0074】
このような安全リング63は、その外壁に、挿入位置において閉塞要素の爪を開位置に保持することことを可能にする凹部のような空所631を有している。また、このような安全リング63は、その内壁に、安全リングを蓋62から切り離すように雄ヘッドが寄り掛かることができる支持面632も有している。
【0075】
そのため、図6Aに示されるように、雄ヘッドが雌部品内に挿入される前、閉塞要素20は開口内に拘束されている。この位置は、空洞内へのヘッドの挿入を可能にする挿入位置に対応する。
【0076】
図6Bに示されるように、雄ヘッドが空洞に入り込むと、このヘッドは、安全リング63を雌部品の空洞の後部に向かって押し込む。空洞の後部に向かう安全リング63の移行によって、爪がそれらの空所から解放される。そのため、閉塞要素20の爪に加えられた応力が緩和され、爪が閉じることになる。この位置では、閉塞要素の爪は、ロッドと雄ヘッドとの接合部に形成された肩の基端において雄部品のロッドを掴むことになる。この位置は、空洞内における雄ヘッドの閉塞を可能にする閉塞位置に対応する。
【0077】
図6A及び図6Bに示されるように、係止手段64を用いて、閉塞要素をこの第2の例による閉塞位置に係止することができる。例えば、このような係止手段は、ボタン又は非復帰リップ弁のような可動部品の形態にある。
【0078】
挿入位置において、安全リング63及び/又は閉塞要素の開いた爪は、リップ64(又はボタン)を蓋62の空所内に押圧状態で維持するために、このリップ(又はボタン)上に置かれている。
【0079】
雄ヘッドが安全リング63を雌部品の空洞の後部に向かって押し出すと、閉塞要素20の爪に加えられた応力が緩和され、これによって、リップ64(又はボタン)が緩和される。
【0080】
そのため、リップ64は、もはや蓋62の空所内に押圧されず、この位置において突出することになる。突出するリップ64は、係止要素20を係止し、爪の開口/拡張を防ぐことになる。
【0081】
[変形形態]
以上、雌部品が切頭円錐形状を有する本発明の実施形態の種々の例を提示してきた。当然のことではあるが、他の形状、例えば、円筒形状等も考えられる。同様に、受入空洞の形状も種々異なっていてもよく、例えば、円筒形状であってもよい。
【0082】
とりわけ、雄部品は、種々の形状、例えば、図4A及び図6Aに示されるような形状を有することもできる。本発明による雌部品の形状は、雄部品の選択された形状と協働するように適合されていなければならない。

図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B