【実施例】
【0065】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。なお、
実施例11〜28は参考例であり、実施例において、%及び部は、断りの無い限り、全て質量基準である。
【0066】
≪本発明の電磁波シールド材用不織布<1>に関する実施例≫
【0067】
[実施例1]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維30質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40質量部とをパルパーにより水中に分散し、濃度1質量%の均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを、通気度275cm
3/cm
2/sec、組織[上網:平織、下網:畝織]の抄造ワイヤーを設置した傾斜型抄紙機にて、湿式法で抄き上げ、135℃のシリンダードライヤーによって、未延伸PET系短繊維を熱融着させて強度を発現させ、目付10g/m
2の湿式不織布とした。さらに、この湿式不織布を、誘電発熱ジャケットロール(金属製熱ロール)及び弾性ロールからなる1ニップ式熱カレンダー装置を使用して、熱ロール温度200℃、線圧100kN/m、処理速度30m/分の条件で熱カレンダー処理し、厚さ15μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0068】
[実施例2]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維10質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維50質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ17μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0069】
[実施例3]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維50質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維10質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ16μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0070】
[実施例4]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維45質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維45質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維10質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ16μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0071】
[実施例5]
繊度0.1dtex(繊維径3.0μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ14μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0072】
[実施例6]
繊度0.1dtex(繊維径3.0μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維10質量部と、繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維30質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ14μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0073】
[実施例7]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度1.7dtex(繊維径12.0μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維10質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維30質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ16μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0074】
[実施例8]
繊度0.06dtex(繊維径2.4μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維10質量部と、繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維30質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ14μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0075】
[実施例9]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維30質量部と、繊度1.2dtex(繊維径10.5μm)、繊維長5mmの未延伸PET系短繊維10質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ16μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0076】
[実施例10]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維15質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維15質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維70質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ14μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0077】
[比較例1]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度1.2dtex(繊維径10.5μm)、繊維長5mmの未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ17μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0078】
[比較例2]
繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維60質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ15μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0079】
[比較例3]
繊度1.7dtex(繊維径12.0μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度3.3dtex(繊維径17.5μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ21μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0080】
[比較例4]
繊度1.7dtex(繊維径12.0μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維60質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ18μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0081】
[比較例5]
繊度0.1dtex(繊維径3.0μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維60質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例1と同じようにして、厚さ15μmの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0082】
実施例及び比較例で作製した電磁波シールド材用不織布に対して無電解めっき法によってニッケル皮膜で覆い、次に、電気めっき法によって銅皮膜とニッケル皮膜を順に積層して、電磁波シールド材を作製した。
【0083】
<評価>
[搬送性]
電磁波シールド材用不織布を一定のテンションで搬送し、その時の皺の発生状況を下記基準で評価した。
【0084】
「○」皺が入らずに、搬送性が非常に良い。
「△」電磁波シールド材用不織布の一部に皺が入るが、搬送性に問題は無い。
「×」加工ができない程に、電磁波シールド材用不織布の全体に皺が入り、搬送性が劣る。
【0085】
[電磁波シールド性(電界)]
同軸管法による電磁波シールド性(電界)に基づき測定した。周波数40MHz〜3GHzの範囲では同軸管法39Dによって測定し、周波数500MHz〜18GHzの範囲では、同軸管法GPC7によって測定した。周波数500MHz〜3GHzは、同軸管法39Dと同軸管法7の両方で測定するが、低い数値を採用した。
【0086】
電磁波シールド性に記載の数値が高い程、電磁波シールド性が優れていることを示す。
【0087】
【表1】
【0088】
実施例1〜10の電磁波シールド材用不織布は、繊維径が3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維から選択される、繊維径が異なる2種以上の延伸ポリエステル系短繊維と、繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維とを必須成分として含有する湿式不織布であることから、搬送性に優れかつ優れた電磁波シールド性がある。実施例4の電磁波シールド材用不織布は、少し強度が低下したが、搬送性に問題は無く、電磁波シールド性も優れていた。
【0089】
これに対し、繊維径が3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維から選択される、繊維径が異なる2種以上の延伸ポリエステル系短繊維と、繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維とを必須成分として含有していない比較例1、2、3及び4の電磁波シールド材用不織布は、電磁波シールド性に劣るものであった。すなわち、未延伸ポリエステル系短繊維の繊維径が5μm超である比較例1の電磁波シールド材用不織布、繊維径が12μm以上の延伸ポリエステル系短繊維から選択される、繊維径が異なる2種の延伸ポリエステル系短繊維を含有している比較例3の電磁波シールド材用不織布、延伸ポリエステル系短繊維の繊維径が12μmである比較例4の電磁波シールド材用不織布、及び、繊維径が3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維を含有しているものの繊維径が同一の1種の延伸ポリエステル系短繊維のみ(繊維径5.3μm)を含有している比較例2の電磁波シールド材用不織布は、多重反射損失が低下したと考えられる。
【0090】
また、繊維径が3μm以上12μm未満の延伸ポリエステル系短繊維を含有しているものの繊維径が同一の1種の延伸ポリエステル系短繊維のみ(繊維径3.0μm)を含有している比較例5の電磁波シールド材用不織布は、ウェブの搬送時に皺が入り、搬送性に劣る。小さい繊維径の延伸ポリエステル系短繊維のみを含むことによってウェブがしなやかになり、伸び易くなり、皺が入りやすくなったと考えられる。
【0091】
≪本発明の電磁波シールド材用不織布<2>に関する実施例≫
【0092】
<評価>
(1)表面抵抗値
MIL DTL 83528Cに基づいて測定した。
【0093】
(2)電磁波シールド性(電界)
同軸管法による電磁波シールド性(電界)に基づき測定した。周波数40MHz〜3GHzの範囲では同軸管法39Dによって測定し、周波数500MHz〜18GHzの範囲では、同軸管法GPC7によって測定した。周波数500MHz〜3GHzは、同軸管法39Dと同軸管法GPC7の両方で測定するが、低い数値を採用した。
【0094】
(3)ピール評価
幅25mm×長さ150mmの電磁波シールド材試料に、粘着テープ(Nitto(登録商標)31Bテープ、日東電工株式会社製)を貼り付け、2kgのロールで300mm/分のスピードで10回ローリングする。その後、テープと試料を180度の角度にし、1000mm/分のスピードで剥がす。以下の基準によって評価した。
【0095】
<基準>
○:3回測定し、試料の破断及びテープへの金属粉の付着が無かった。
△:3回測定し、試料の破断及びテープへの金属粉の付着が1〜2回発生した。
×:3回測定し、試料の破断及びテープへの金属粉の付着が3回発生した。
【0096】
[実施例11]
繊度0.06dtex(繊維径2.4μm)、繊維長3mmの延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維20質量部と、繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維40質量部と繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの単一成分型バインダー用未延伸PET系短繊維40質量部とをパルパーにより水中に分散し、濃度1質量%の均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを、通気度275cm
3/cm
2/sec、組織[上網:平織、下網:畝織]の抄造ワイヤーを設置した傾斜型抄紙機にて、湿式法で抄き上げ、135℃のシリンダードライヤーによって、バインダー用未延伸PET系短繊維を熱融着させて強度を発現させ、湿式不織布とした。さらに、この湿式不織布を、誘電発熱ジャケットロール(金属製熱ロール)及び弾性ロールからなる1ニップ式熱カレンダー装置を使用して、熱ロール温度200℃、線圧100kN/m、処理速度100m/分の条件で熱カレンダー処理し、目付6.5g/m
2、密度0.50g/cm
3の電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0097】
次いで、前記電磁波シールド材用不織布を、無電解めっき処理によりニッケル皮膜で覆い、次に、電気めっき処理によって、銅皮膜とニッケル皮膜を順に積層して、金属皮膜処理を施し、厚さ17.5μmの電磁波シールド材を得た。
【0098】
[実施例12]
繊維配合を、繊度0.06dtex(繊維径2.4μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維40質量部と、繊度0.3dtex(繊維径3.0μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維20質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの単一成分型バインダー用未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は、実施例11と同じようにして、湿式不織布を得た。この湿式不織布を、処理速度50m/分の条件とした以外は、実施例11と同じように熱カレンダー処理し、目付6.5g/m
2、密度0.63g/cm
3の電磁波シールド材用不織布を作製した。次いで、実施例11と同じように金属皮膜処理を施して、厚さ16.0μmの電磁波シールド材を得た。
【0099】
[実施例13]
繊維配合を、繊度0.06dtex(繊維径2.4μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維60質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mmの単一成分型バインダー用未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は、実施例11と同じようにして、湿式不織布を得た。この湿式不織布を、線圧125kN/m、処理速度40m/分の条件とした以外は、実施例11と同じように熱カレンダー処理し、目付6.5g/m
2、密度0.80g/cm
3の電磁波シールド材用不織布を作製した。次いで、実施例11と同じように金属皮膜処理を施して、厚さ15.5μmの電磁波シールド材を得た。
【0100】
[実施例14]
目付5.0g/m
2とした以外は、実施例11と同じようにして、湿式不織布を得た。この湿式不織布を、実施例13と同じように熱カレンダー処理し、密度0.80g/cm
3の電磁波シールド材用不織布を作製した。次いで、前記電磁波シールド材用不織布を、スパッタリング処理によりニッケル皮膜で覆い、電気めっき処理によって銅皮膜とニッケル皮膜を順に積層して、金属皮膜処理を施し、厚さ8.5μmの電磁波シールド材を得た。
【0101】
[実施例15]
目付5.0g/m
2とした以外は、実施例12と同じようにして、湿式不織布を得た。この湿式不織布を、実施例11と同じように熱カレンダー処理し、密度0.50g/cm
3の電磁波シールド材用不織布を作製した。次いで、前記電磁波シールド材用不織布を実施例14と同じように金属皮膜処理を施して、厚さ12.0μmの電磁波シールド材を得た。
【0102】
[実施例16]
目付5.0g/m
2とした以外は、実施例13と同じようにして湿式不織布を得た。この湿式不織布を、実施例12と同じように熱カレンダー処理し、密度0.63g/cm
3の電磁波シールド材用不織布を作製した。次いで、実施例14と同じように金属皮膜処理を施して、厚さ10.0μmの電磁波シールド材を得た。
【0103】
[比較例11]
繊維配合を、繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長5mmの延伸PET系短繊維60質量部と、繊度1.2dtex(繊維径10.7μm)、繊維長5mmの単一成分型バインダー用未延伸PET系短繊維40質量部とした以外は実施例11と同じようにして、目付10.0g/m
2の湿式不織布を得た。この湿式不織布を、線圧135kN/m、処理速度40m/分の条件とした以外は、実施例11と同じように熱カレンダー処理し、密度0.85g/cm
3の電磁波シールド材用不織布を作製した。次いで、実施例14と同じように金属皮膜処理を施して、厚さ16.0μmの電磁波シールド材を得た。
【0104】
[比較例12]
線圧100kN/m、処理速度50m/分の条件とした以外は、比較例11と同じようにして、目付10.0g/m
2、密度0.63g/cm
3の電磁波シールド材用不織布を作製した。次いで、比較例11と同じように金属皮膜処理を施して、厚さ20.0μmの電磁波シールド材を得た。
【0105】
[比較例13]
線圧90kN/m、処理速度100m/分の条件とした以外は、比較例11と同じようにして、目付10.0g/m
2、密度0.45g/cm
3の電磁波シールド材用不織布を作製した。次いで、比較例11と同じように金属皮膜処理を施して、厚さ26.0μmの電磁波シールド材を得た。
【0106】
[比較例14]
比較例11と同じようにして、目付10.0g/m
2、密度0.85g/cm
3の電磁波シールド材用不織布を作製した。次いで、実施例11と同じように金属皮膜処理を施して、厚さ16.0μmの電磁波シールド材を得た。
【0107】
[比較例15]
比較例12と同じようにして、目付10.0g/m
2、密度0.63g/cm
3の電磁波シールド材用不織布を作製した。次いで、比較例14と同じように金属皮膜処理を施して、厚さ20.0μmの電磁波シールド材を得た。
【0108】
[比較例16]
比較例13と同じようにして、目付10.0g/m
2、密度0.45g/cm
3の電磁波シールド材用不織布を作製した。次いで、比較例14と同じように金属皮膜処理を施して、厚さ26.0μmの電磁波シールド材を得た。
【0109】
【表2】
【0110】
繊維径3μm未満の延伸ポリエステル系短繊維及び繊維径が3μm以上5μm以下の未延伸ポリエステル系短繊維を必須成分として含有し、目付が7g/m
2以下であり、密度が0.5〜0.8g/cm
3である湿式不織布である電磁波シールド材用不織布に、金属皮膜処理を施してなる電磁波シールド材である実施例11〜16は、電磁波シールド性に優れ、金属皮膜が剥がれ難いという効果が達成できた。また、金属皮膜処理が、スパッタリングによってニッケル被覆を形成させる処理、電気めっきによって銅被覆を形成させる処理及び電気めっきによってニッケル被覆を形成させる処理をこの順に含み、厚さが15μm以下であり、表面抵抗値が0.03Ω/□以下である実施例14〜16の電磁波シールド材の方が、実施例11〜13の電磁波シールド材と比べて、電磁波シールド性により優れ、金属皮膜がより剥がれ難いことが分かる。
【0111】
比較例11〜16は、繊維径が3μm以上の延伸PET系短繊維と繊維径が5μm超の未延伸PET系短繊維とを含有し、目付が7g/m
2超である湿式不織布である電磁波シールド材用不織布に金属皮膜処理を施してなる電磁波シールド材である。金属皮膜処理が、スパッタリングによってニッケル被覆を形成させる処理、電気めっきによって銅被覆を形成させる処理及び電気めっきによってニッケル被覆を形成させる処理をこの順に含んでいる比較例11及び13では、電磁波シールド性及びピール評価の結果が悪かった。比較例12の電磁波シールド材は、電磁波シールド性及びピール評価が良かったが、電磁波シールド材の厚さは20.0μmであり、薄くすることができなかった。比較例14〜16では、無電解めっき処理によりニッケル皮膜で覆い、次に、電気めっき処理によって、銅皮膜とニッケル皮膜を順に積層して、金属皮膜処理を施していて、ピール評価の結果は良かったが、電磁波シールド性は悪かった。
【0112】
≪本発明の電磁波シールド材用不織布<3>に関する実施例≫
【0113】
[実施例21]
繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長5mmの延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)系短繊維30質量部と、繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mm、融点246℃の単一成分型バインダー用未延伸PET系短繊維40質量部とをパルパーにより水中に分散し、濃度1質量%の均一な抄造用スラリーを調製した。この抄造用スラリーを、通気度275cm
3/cm
2/sec、組織[上網:平織、下網:畝織]の抄造ワイヤーを設置した傾斜型抄紙機にて、湿式法で抄き上げ、135℃のシリンダードライヤーによって、バインダー用未延伸PET系短繊維を熱融着させて強度を発現させ、目付10g/m
2の湿式不織布とした。さらに、この湿式不織布を、誘電発熱ジャケットロール(金属製熱ロール)及び弾性ロールからなる1ニップ式熱カレンダー装置を使用して、熱ロール温度202℃、線圧100kN/m、処理速度40m/分の条件で熱カレンダー処理し、厚さ15μm、剥離強度2.1N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0114】
[実施例22]
熱ロール温度を208℃とした以外は実施例21と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度3.1N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0115】
[実施例23]
熱ロール温度を205℃とした以外は実施例21と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度4.2N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0116】
[実施例24]
延伸ポリエステル系短繊維の配合を、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.1dtex(繊維径3.0μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部とした以外は実施例23と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度3.5N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0117】
[実施例25]
延伸ポリエステル系短繊維の配合を、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.06dtex(繊維径2.4μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部とした以外は実施例23と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度3.7N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0118】
[実施例26]
延伸ポリエステル系短繊維の配合を、繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.1dtex(繊維径3.0μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部とした以外は実施例23と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度3.4N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0119】
[実施例27]
延伸ポリエステル系短繊維の配合を、繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.06dtex(繊維径2.4μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部とした以外は実施例23と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度3.3N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0120】
[実施例28]
延伸ポリエステル系短繊維の配合を、繊度0.1dtex(繊維径3.0μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.06dtex(繊維径2.4μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部とした以外は実施例23と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度3.5N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0121】
[比較例21]
熱ロール温度を198℃とした以外は実施例21と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度1.8N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0122】
[比較例22]
熱ロール温度を195℃とした以外は実施例21と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度1.0N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0123】
[比較例23]
熱ロール温度を198℃とした以外は実施例24と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度1.5N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0124】
[比較例24]
熱ロール温度を198℃とした以外は実施例25と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度1.0N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0125】
[比較例25]
繊維の配合を、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.3dtex(繊維径5.3μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.1dtex(繊維径3.0μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維30質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mm、融点246℃の単一成分型バインダー用未延伸PET系短繊維10質量部とした以外は実施例23と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度0.2N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0126】
[比較例26]
繊維の配合を、繊度0.6dtex(繊維径7.4μm)、繊維長3mmの延伸PET系短繊維10質量部と、繊度0.2dtex(繊維径4.3μm)、繊維長3mm、融点246℃の単一成分型バインダー用未延伸PET系短繊維90質量部とした以外は実施例23と同じようにして、厚さ15μm、剥離強度1.8N/mの電磁波シールド材用不織布を作製した。
【0127】
実施例及び比較例で作製した電磁波シールド材用不織布に対して、めっき前処理であるアルカリ処理を施し、無電解めっき法により、銅及びニッケルの金属めっき処理を施し、電磁波シールド材を作製した。
【0128】
<評価>
[剥離強度]
電磁波シールド材用不織布を25mm×200mmに断裁し、両面テープ(ニチバン製、商品名:NW−R25、ナイスタック(登録商標)低粘着タイプ)を台紙(三菱製紙製、商品名:Nパールカード(登録商標) FSC認証−MX(450.0g/m
2))の非光沢面に貼り付け、その上から電磁波シールド材用不織布を重ね、その上面に包装テープ(カモ井工業製、商品名:No.220W)を貼り付け、
図1のような形で剥離試験を実施し、剥離強度を測定した。剥離試験には、SHIMPO(日本電産シンポ)製、装置名:デジタルフォースゲージFGC−2Bを用い、治具間距離1.8cmとし、該距離の中央部分に電磁波シールド材用不織布があるようにし、速度100mm/minの条件で測定した。
【0129】
[耐繊維脱落性]
電磁波シールド材用不織布を採取し、25mm×200mmに断裁し、学振型摩擦堅牢度試験機を使い、500gfの錘を載せたビリケンモス(登録商標)布を使って、電磁波シールド材用不織布を5往復擦り、下記基準で評価した。
【0130】
「◎」ビリケンモス布に繊維が付着しない。
「○」ビリケンモス布に繊維がほとんど付着しない。
「△」ビリケンモス布に繊維が若干付着するが実用上問題が無い。
「×」ビリケンモス布に繊維が付着し、場合によっては基材が破断する。
【0131】
[欠点頻度]
めっき前処理であるアルカリ処理を施した電磁波シールド材用不織布に金属めっき処理を施した際における1000m当たりの欠点頻度を確認した。
【0132】
「◎」0個/1000m。
「○」1個/1000m。
「△」2個/1000m。
「×」3個以上/1000m。
【0133】
[電磁波シールド性(電界)]
同軸管法による電磁波シールド性(電界)に基づき測定した。周波数40MHz〜3GHzの範囲では同軸管法39Dによって測定し、周波数500MHz〜18GHzの範囲では、同軸管法GPC7によって測定した。周波数500MHz〜3GHzは、同軸管法39Dと同軸管法7の両方で測定するが、低い数値を採用した。
【0134】
電磁波シールド性に記載の数値が高い程、電磁波シールド性が優れていることを示す。
【0135】
【表3】
【0136】
実施例21〜28の電磁波シールド材用不織布は、比較例21〜26の電磁波シールド材用不織布と比べて、剥離強度が高いために、優れた耐繊維脱落性があり、欠点頻度も少ないために歩留まりも良好で優れた電磁波シールド性が発現した。
【0137】
実施例21〜23を比較すると、熱ロール温度が205℃である実施例23において、剥離強度が最も高く、耐繊維脱落性が向上した。一方、比較例21〜24では、熱ロール温度が200℃よりも低かったために、電磁波シールド材用不織布の剥離強度が低く、耐繊維脱落性が悪く、欠点頻度も非常に多かった。
【0138】
比較例25及び26は、未延伸ポリエステル系短繊維の含有率が電磁波シールド材用不織布を構成する繊維全体の20質量%未満又は80質量%超えであり、好ましい範囲から外れていたため、熱ロール温度が205℃と、好ましい範囲であったにもかかわらず、剥離強度が低く、耐繊維脱落性の悪い電磁波シールド材用不織布となった。