【実施例1】
【0029】
図1〜
図3に示すように、本願のプル型クランプ装置1は、鉛直な軸心を有するタンデム型流体圧シリンダ2によりピストンロッド6を退入方向へクランプ駆動するようにしたクランプ装置である。
前記タンデム型流体圧シリンダ2は、鉛直の軸心を有するシリンダ本体3と、このシリンダ本体3内に直列状に形成された第1,第2シリンダ孔4a,4bと、これら第1,第2シリンダ孔4a,4bに夫々可動に装着された第1,第2ピストン部5a,5bと、これら第1,第2ピストン部5a,5bに固着されて第1ピストン部5a側からシリンダ本体3外まで延びる共通のピストンロッド6とを有する。尚、本実施例において「流体圧」は加圧流体を意味する。また、「流体圧」として「油圧(加圧油)」を採用しているが、加圧エアを採用してもよい。
【0030】
前記シリンダ本体3は、シリンダ孔形成壁部3aと、このシリンダ孔形成壁部3aと一体のロッド側端壁3bと、第1,第2シリンダ孔4a,4bの間を仕切ると共にピストンロッド6が貫通する仕切り壁7と、第2シリンダ孔4bの端部を閉塞するヘッド側端壁3dを備えている。
前記第2シリンダ孔4bの内径が第1シリンダ孔4aの内径及び仕切り壁7の外径よりも大きく形成されている。
【0031】
シリンダ本体3の上部には所定の厚さを有する矩形状の据付け壁部3c(これは、ロッド側端壁3bを含む)が形成され、この据付け壁部3cの下端には水平な据付け面8が形成され、シリンダ孔形成壁部3aの上端部分は据付け壁部3cの一部で構成され、シリンダ孔形成壁部3aをクランプ装置1を取り付けるベース部材9の貫通孔9aに挿入し、据付け面8をベース部材9の上面に当接させた状態で、4つのボルト孔10に挿入される4本のボルトでシリンダ本体3がベース部材9に固定される。
【0032】
第1,第2シリンダ孔4a,4bのうちの、第1,第2ピストン部5a,5bに対してロッド側端壁3b側に第1,第2クランプ用流体圧作動室11a,11bが夫々形成され、第1,第2シリンダ孔4a,4bのうちの、第1,第2ピストン部5a,5bに対してロッド側端壁3bと反対側に第1,第2アンクランプ用流体圧作動室12a,12bが夫々形成されている。
【0033】
前記仕切り壁7は、上部側約2/3の大径部7aと、下部側約1/3の小径部7bとを有し、大径部7aの外周部の下端をシリンダ孔形成壁部3aの内面部に装着したストップリング13で受け止めることで、仕切り壁7が下方移動しないように規制されている。大径部7aの下半部の外径は、大径部7aの上半部の外径よりも僅かに大径に形成され、仕切り壁7が上方移動しないように規制されている。
【0034】
ピストンロッド6は、鉛直の軸心を有し且つ第1ピストン部5aと一体形成され、ピストンロッド6の上半部はロッド側端壁3bのロッド孔14を挿通してシリンダ本体3の上方へ延びている。ピストンロッド6の上端部分には、水平姿勢のクランプアーム15の基端部が固定されている。即ち、ピストンロッド6の上端部分には上方程小径化するテーパ部6aが形成され、このテーパ部6aにクランプアーム15の基端部が外嵌装着され、
ピストンロッド6の上端から螺合させた鉛直の固定ボルト16により座金16aを介してクランプアーム15の基端部がクランプロッド6に締結固定されている。前記ロッド側端壁3bのロッド孔14の内周部にシール部材17とダストシール18とが装着されている。
【0035】
ピストンロッド6の下半部は、仕切り壁7のロッド孔19(ピストンロッド貫通孔)を挿通して第2シリンダ孔4b内まで延び、ピストンロッド6の下端部分の小径軸部6bが第2ピストン部5bのロッド孔20に挿通され、ピストンロッド6の下端部に装着したストップリング21により第2ピストン部5bがピストンロッド6と一体的に上下動するようにピストンロッド6に連結されている。
【0036】
第1ピストン部5aの外周部にはシール部材22が装着され、第2ピストン部5bの外周部にはシール部材23が装着され、第2ピストン部5bのロッド孔20の内周部にはシール部材24が装着されている。仕切り壁7の上端近傍部の外周部にはシール部材25が装着され、仕切り壁7のロッド孔19の上端近傍部の内周部にはシール部材26が装着されている。ヘッド側端壁3dは、シリンダ孔形成壁部3aに装着されたストップリング27で抜け止めされ、ヘッド側端壁3dの外周部にはシール部材28が装着されている。
【0037】
前記シリンダ本体3の壁部内に、1つの共通の第1流体圧ポート31から第1,第2クランプ用流体圧作動室11a,11bに流体圧を供給可能なクランプ用流体圧通路32が形成されている。シリンダ本体3の壁部内に第2流体圧ポート33から第1アンクランプ用流体圧作動室12aに流体圧を供給可能なアンクランプ
用流体圧通路34が形成され、ピストンロッド6内に第1,第2アンクランプ用流体圧作動室12a,12bを連通するロッド内流体圧通路35が形成されている。このロッド内流体圧通路35の上端は第1ピストン部5aの下端近傍部で第1アンクランプ用流体圧作動室12aに連通している。
【0038】
第1流体圧ポート31は、据付け壁部3cの据付け面8に臨むように形成され、ベース部材9内の第1流体圧通路9bが第1流体圧ポート31に接続され、第1流体圧通路9bは流体圧供給源(図示略)に接続されている。第2流体圧ポート33は、据付け壁部3cの据付け面8に臨むように形成され、ベース部材9内の第2流体圧通路(図示略)が第2流体圧ポート33に接続され、第2流体圧通路は流体圧供給源(図示略)に接続されている。
【0039】
クランプ用流体圧通路32は、シリンダ本体3の据付け壁部3cとシリンダ孔形成壁部3aとに形成された流体圧通路32aと、この流体圧通路32aに連通するように仕切り壁7に形成された流体圧通路32bとからなる。流体圧通路32bの下端部に連通するように、仕切り壁7が装着された仕切り壁装着孔4cの内周部と仕切り壁7の外周部には環状溝36が形成されている。仕切り壁7内の流体圧通路32bは環状溝36から水平に延びてから下方へ延びて、第2クランプ用流体圧作動室11bに連通されている。
【0040】
アンクランプ用流体圧通路34は、第2流体圧ポート33から延び、据付け壁部3cとロッド側端壁3bとシリンダ孔形成壁部3aの内部を通って、第1アンクランプ用流体圧作動室12aの下端部の環状溝37に連通されている。
【0041】
アンクランプ状態からクランプ状態にピストンロッド6が退入する際にピストンロッド6を平面視にて反時計回り方向へ90°旋回させ、且つクランプ状態からアンクランプ状態にピストンロッド6が伸長する際にピストンロッド6を平面視にて時計回り方向へ90°旋回させるピストンロッド旋回機構40が設けられている。
【0042】
このピストンロッド旋回機構40は、仕切り壁7のロッド孔19の内周壁部に装着された複数(例えば、3つ)の鋼球41と、これら鋼球41が係合するようにピストンロッド6の外周部に形成された複数(例えば、3本)の係合溝42とを有する。
各係合溝42は、ピストンロッド6の中心に対する開角90°分の螺旋溝42aと、この螺旋溝42aの上端から上方へ直線的に延びる直線溝とで形成されている。
【0043】
次に、以上説明したプル型クランプ装置1の作用、効果について説明する。
図1のアンクランプ状態から
図3のクランプ状態に切換える場合、第1流体圧ポート31から第1,第2クランプ用流体圧作動室11a,11bに流体圧を供給し、第1,第2アンクランプ用流体圧作動室12a,12bから流体圧を排出すると、第1,第2ピストン部5a,5bが受圧してピストンロッド6が退入方向へクランプ駆動されて
図3のクランプ状態になる。
【0044】
アンクランプ状態においてクランプアーム15は
図1の紙面後方へ向いているが、アンクランプ状態からクランプ状態に切換わる際、ピストンロッド6の下降移動の前半においてはピストンロッド旋回機構40によりピストンロッド6が90°反時計回り方向へ旋回し、下降移動の後半においてはピストンロッド6が旋回することなく下降移動してクランプ対象物をクランプする。
【0045】
クランプ状態からアンクランプ状態に切換える際には、上記と逆に、第1,第2アンクランプ用流体圧作動室12a,12bに流体圧を供給し、第1,第2クランプ用流体圧作動室11a,11bから流体圧を排出する。このとき、ピストンロッド6の上昇移動の前半においてはピストンロッド6が旋回することなく上昇し、上昇移動の後半においてピストンロッド6が時計回り方向へ90°旋回する。
【0046】
シリンダ本体3の壁部内に、1つの共通の第1流体圧ポート31から第1,第2クランプ用流体圧作動室11a,11bに流体圧を供給可能なクランプ用流体圧通路32が形成されたため、第1,第2クランプ用流体圧作動室11a,11bへ流体圧を供給する流体圧供給系が簡単化し、クランプ装置1を小型化でき、製作コストを低減できる。第1,第2
クランプ用流体圧作動室11a,11bの流体圧でピストンロッド6を退入方向へクランプ駆動できるため、プル型クランプ装置1の駆動力を強化することができる。
【0047】
第2シリンダ孔4bの外周側のシリンダ本体3の壁部内には、流体圧通路を形成する必要がないため、第2シリンダ孔4b
の内径を第1シリンダ孔4a
の内径及び仕切り壁7の外径よりも大径に形成し、第2ピストン部5bの受圧面積を大きくしクランプ駆動力を強化できる。ピストンロッド6を伸長/退入させる際に、ピストンロッド旋回機構40により、ピストンロッド6を旋回させることができる。
【0048】
シリンダ本体3の壁部内に第1アンクランプ用流体圧作動室12aに流体圧を供給可能なアンクランプ用流体圧通路34を形成するため、第1アンクランプ用流体圧作動室12aに流体圧を供給する流体圧供給系が簡単化し、クランプ装置1を小型化でき、製作コストを低減できる。
【0049】
第1アンクランプ用流体圧作動室12aの他に、第2アンクランプ用流体圧作動室12bを形成するため、ピストンロッド6を伸長方向へアンクランプ駆動する駆動力を強化できる。ピストンロッド6内に第1,第2アンクランプ用流体圧作動室12a,12bを連通するロッド内流体圧通路35を形成するため、第2アンクランプ用流体圧作動室12bに流体圧を供給する流体圧供給系が簡単化し、コンパクトになる。
【実施例3】
【0052】
実施例3に係るプル型クランプ装置1Bについて、
図6、
図7に基づいて説明する。
このプル型クランプ装置1Bは、前記プル型クランプ装置1の一部の構成を変更しただけのものであるので、前記プル型クランプ装置1と同じ構成要素に同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0053】
このプル型クランプ装置1Bのタンデム型流体圧シリンダ2Bにおいて、前記仕切り壁7Bは、大径部7aと、この大径部7aの下端から下方へ延びる下端側小径部7bと、大径部7aの上端から上方へ延びる上端側小径部7cとを有する。前記旋回機構40は、上端側小径部7cとピストンロッド6に形成されている。
【0054】
第2ピストン部5bから仕切り壁7B側へ所定長さ延び且つ仕切り壁7Bの大径部7aと下端側小径部7bに流体密に摺動自在に挿入された筒部29であってピストンロッド6に外嵌固定された筒部29が第2ピストン部5bに一体形成されている。ピストンロッド6の下部は、筒部29に形成したロッド孔29aに挿通され、筒部29は仕切り壁
7Bに形成した挿入孔7hに摺動自在に挿入されている。
【0055】
ピストンロッド6の外周側に第1,第2アンクランプ用流体圧作動室12a,12bを連通するロッド外流体圧通路30が形成されている。このロッド外流体圧通路30は、係合溝42の下端部分と、筒部29のロッド孔29aの内周部に直線的に形成された直線溝30aとで構成されている。この直線溝30aの上端側部分は、ピストンロッド6が旋回しても、常に何れかの係合溝42の下端部分と連通するように、周方向に広幅に形成されている。また、挿入孔7hの下端近傍部において挿入孔7hの内周部にはシール部材38が装着されている。
【0056】
このプル型クランプ装置1Bにおいては、ピストンロッド6と仕切り壁7Bとの間にシール部材が存在しないため、ピストンロッド6の旋回時にピストンロッド6に作用する摩擦抵抗が小さくなるため、旋回性能を高めることができる。
【実施例4】
【0057】
実施例4に係るプル型クランプ装置1Cについて、
図8〜
図11に基づいて説明する。
このプル型クランプ装置1Cは、前記プル型クランプ装置1の一部の構成を変更しただけのものであるので、前記プル型クランプ装置1と同じ構成要素に同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0058】
このプル型クランプ装置1Cのタンデム型流体圧シリンダ2Cには、次のような流体圧短絡通路51と開閉弁機構52と圧力センサ53と制御ユニット57を含むクランプ不良検知手段50が設けられている。
前記仕切り壁7Cに、クランプ用流体圧通路32及び環状溝36を第1アンクランプ用流体圧作動室12aに連通する流体圧短絡通路51が形成され、この流体圧短絡通路51に、第1ピストン部5aがクランプ側へフルストローク移動した場合だけ開弁する開閉弁機構52が設けられている。
【0059】
開閉弁機構52は、鉛直軸心を有するもので、弁体収容孔54と、弁体55と、圧縮スプリング56とを備えている。弁体収容孔54は、大径孔54aと、この大径孔54aの上端から第1アンクランプ用流体圧作動室12aまで延びる小径孔54bとを有する。
【0060】
弁体55は、大径孔54aに収容された大径部55a及び中径部55bと、この中径部55bの上端から小径孔54b内へ延びて第1ピストン部5aに対向している小径部55cであって上端部が第1アンクランプ用流体圧作動室12aに突出している小径部55cとを備えている。大径孔54aの下部には弁体55を上方へ付勢する圧縮スプリング56が装着されている。
【0061】
中径部55bの上端外周部が小径孔54bの外周側壁部の下端に当接すると閉弁状態(
図9参照)になり、第1ピストン部5aがクランプ側へフルストローク移動した場合だけ、第1ピストン部5aが弁体55を下方へ押動するため開弁状態(
図11参照)になる。
【0062】
ベース部材9内の第1流体圧通路9bの流体圧を検出可能な圧力センサ53(又は圧力スイッチ)が設けられ、その圧力センサ53の検出信号が制御ユニット57に出力されている。
【0063】
このクランプ装置1Cをクランプ駆動する際に、クランプ対象物を正常にクランプした場合には、第1ピストン部5aがクランプ側へフルストローク移動しないから、
図8、
図9に示すように、第1ピストン部5aが弁体55を押動することはなく、開閉弁機構52は閉弁状態を維持する。そのため、第1流体圧通路9bの流体圧が異常に低下することはなく、制御ユニット57において圧力センサ53の検出信号から、正常にクランプしたことを検知することができる。
【0064】
他方、クランプ対象物が存在しないとか、クランプ対象物の厚さが過小であるような場合に、クランプ装置1Cをクランプ駆動した際には、第1ピストン部5aがクランプ側へフルストーク移動するため、
図10、
図11に示すように、開閉弁機構52が開弁状態になり、第1流体圧通路9bの流体圧が異常に低下する。それ故、制御ユニット57において圧力センサ53の検出信号からクランプ不良が発生したことを検知することができる。
【0065】
次に、前記実施例を部分的に変更する例について説明する。
1)実施例4のクランプ不良検知手段50を実施例2,3のプル型クランプ装置1A,1Bに適用することもできる。
【0066】
2)前記第1,第2流体圧ポート31,33は、据付け壁部3cの据付け面8に臨むように形成する必要はなく、据付け壁部3cの側面に臨むように形成してもよい。
【0067】
3)前記実施例におけるタンデム型流体圧シリン
ダは、2つの第1,第2シリンダ孔及び第1,第2ピストン部を有するものを例として説明したが、直列的に形成した3つ以上のシリンダ孔と、3つ以上のピストン部を有するタンデム型流体圧シリンダも本願のプル型クランプ装置に適用可能である。
【0068】
4)その他、当業者ならば、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。