特許第6669964号(P6669964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6669964碍子の付着物回収容器、付着物回収装置、及び付着物量測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6669964
(24)【登録日】2020年3月3日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】碍子の付着物回収容器、付着物回収装置、及び付着物量測定装置
(51)【国際特許分類】
   H01B 17/52 20060101AFI20200309BHJP
   G01N 1/02 20060101ALN20200309BHJP
【FI】
   H01B17/52 Z
   !G01N1/02 A
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-65364(P2016-65364)
(22)【出願日】2016年3月29日
(65)【公開番号】特開2017-182967(P2017-182967A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219451
【氏名又は名称】東亜ディーケーケー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 芳晴
(72)【発明者】
【氏名】橋本 わかな
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−80646(JP,A)
【文献】 特開昭58−178270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 17/52
G01N 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひだ部を備える碍子の前記ひだ部に追従するように波状部が形成された回収容器本体と、
前記碍子の前記ひだ部と前記回収容器本体の波状部との間に水密に閉じられた洗浄空間が形成されるように、前記碍子と前記回収容器本体との間に介在されるパッキンと、を備え、
前記回収容器本体には、前記洗浄空間に回収液を供給する供給路と前記洗浄空間から回収液を回収する回収路が形成されていることを特徴とする碍子の付着物回収容器。
【請求項2】
前記供給路は、前記波状部の凸部に形成され、前記洗浄空間に向けて開口する噴射口を有する請求項1に記載の碍子の付着物回収容器。
【請求項3】
前記回収路は、前記波状部の凹部に形成され、前記洗浄空間に向けて開口する回収口を有する請求項1または2に記載の碍子の付着物回収容器。
【請求項4】
前記碍子は略回転体をなし、
前記回収容器本体は、略回転体の一部の角度部分の形状をなしている請求項1〜3のいずれか一項に記載の碍子の付着物回収容器。
【請求項5】
前記碍子を保持するクランプ部材が前記回収容器本体に取り付けられている請求項1〜4のいずれか一項に記載の碍子の付着物回収容器。
【請求項6】
前記クランプ部材は、前記碍子における上面部に配置され、前記回収容器本体とともに前記碍子を保持する請求項5に記載の碍子の付着物回収容器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の付着物回収容器とポンプとを備え、
前記回収容器本体の前記供給路と前記回収路とが接続されて前記洗浄空間を含む循環流路が形成されており、
前記ポンプは、前記洗浄空間に回収液を循環供給することを特徴とする碍子の付着物回収装置。
【請求項8】
請求項7に記載の碍子の付着物回収装置と、
前記循環流路の中の回収液の電気伝導率を測定する電気伝導率計と、を備え、
前記電気伝導率計が測定した電気伝導率に基づき、前記碍子の付着物量を測定することを特徴とする碍子の付着物量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、碍子の付着物回収容器、付着物回収装置、及び付着物量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
碍子は、絶縁のために送電鉄塔や変電所の電線等に取り付けられる。潮風等に起因して碍子の表面に塩分が付着すると、碍子の絶縁性が低下する。そこで、碍子に付着した塩分量の測定が行われている。碍子に付着した塩分量の測定のため、例えば、送電鉄塔等にパイロット碍子が取り付けられる。パイロット碍子に付着した塩分量は、例えば筆洗法によって測定される。筆洗法は、パイロット碍子に付着した塩分を純水で洗い流して得られた水溶液における塩分濃度を測定して碍子に付着した塩分量を求める方法である。
筆洗法を行うにあたり、パイロット碍子は、送電鉄塔等から取り外される。パイロット碍子は、送電鉄塔等から取り外され、室内に移動させられた後、純水によって洗浄される。パイロット碍子を洗浄して得られた水溶液の塩分濃度を測定し、測定した塩分濃度に基づいて、パイロット碍子に付着した塩分の塩分量を求める。
【0003】
ところが、筆洗法は、パイロット碍子の脱着及び測定、計算に時間がかかる方法である。また、筆洗法は、熟練した作業者が行わないと、誤差が生じやすい方法である。そこで、被測定碍子の表面の汚損物を噴水洗浄し、汚損水を回収して碍子の汚損量を測定する碍子汚損量測定装置がある(例えば、特許文献1参照)。
この碍子汚損量測定装置では、碍子の笠部を嵌入可能とした有底円筒を備えている。碍子の汚損量を測定する際には、有底円筒の底部が碍子と当接させて密閉状の洗浄空間を形成し、この洗浄空間で碍子の裏面に洗浄水を噴射する。この洗浄水によって碍子から汚損物を除去し、汚損物が含まれた洗浄水の導電率から碍子の汚損量を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−218937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に開示された碍子汚損量測定装置では、洗浄水における汚損物(付着物)の濃度が低くなり、汚損量の測定精度が低くなることがあった。このため、精度の高い汚損量の測定を行うためには、熟練した作業者が作業を行うことが要求されることとなった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、熟練した作業者でなくとも、碍子の付着物の量を精度よく測定できる碍子の付着物回収容器、付着物回収装置、及び付着物量測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下の構成を有する。
[1]ひだ部を備える碍子の前記ひだ部に追従するように波状部が形成された回収容器本体と、
前記碍子の前記ひだ部と前記回収容器本体の波状部との間に水密に閉じられた洗浄空間が形成されるように、前記碍子と前記回収容器本体との間に介在されるパッキンと、を備え、
前記回収容器本体には、前記洗浄空間に回収液を供給する供給路と前記洗浄空間から回収液を回収する回収路が形成されていることを特徴とする碍子の付着物回収容器。
[2][1]の碍子の付着物回収容器であって、
前記供給路は、前記波状部の凸部に形成され、前記洗浄空間に向けて開口する噴射口を有する。
[3][1]または[2]の碍子の付着物回収容器であって、
前記回収路は、前記波状部の凹部に形成され、前記洗浄空間に向けて開口する回収口を有する。
[4][1]〜[3]の碍子の付着物回収容器であって、
前記碍子は略回転体をなし、
前記回収容器本体は、略回転体の一部の角度部分の形状をなしている。
[5][1]〜[4]の碍子の付着物回収容器であって、
前記碍子を保持するクランプ部材が前記回収容器本体に取り付けられている。
[6][5]の碍子の付着物回収容器であって、
前記クランプ部材は、前記碍子における上面部に配置され、前記回収容器本体とともに前記碍子を保持する。
[7][1]〜[6]のうちのいずれか1項に記載の付着物回収容器とポンプとを備え、
前記回収容器本体の前記供給路と前記回収路とが接続されて前記洗浄空間を含む循環流路が形成されており、
前記ポンプは、前記洗浄空間に回収液を循環供給することを特徴とする碍子の付着物回収装置。
[8][7]に記載の碍子の付着物回収装置と、
前記循環流路の中の回収液の電気伝導率を測定する電気伝導率計と、を備え、
前記電気伝導率計が測定した電気伝導率に基づいて、前記碍子の付着物量を測定することを特徴とする碍子の付着物量測定装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熟練した作業者でなくとも、碍子の付着物の量を精度よく測定できる碍子の付着物回収容器、付着物回収装置、及び付着物量測定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態例の碍子の付着物量測定装置を示す概略構成図である。
図2】碍子の斜視図である。
図3】一実施形態例の付着物回収容器の要部の斜視図である。
図4】一実施形態例の付着物回収容器の平面図である。
図5】(a)は、図4のa−a線断面図、(b)は、図4のb−b線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
(碍子の付着物量測定装置)
図1は、本発明の一実施形態例の碍子の付着物量測定装置を示す概略構成図である。
図1に示すように、碍子の付着物量測定装置1は、本発明の碍子の付着物回収容器の一例である回収容器10と、回収容器10に回収液を循環供給するポンプ30と、回収容器10から回収された回収液を貯留する貯留槽40と、貯留槽40に貯留される回収液の電気伝導率を測定する電気伝導率計50と、を備えている。回収容器10と、ポンプ30と、貯留槽40とによって、本発明の碍子の付着物回収装置の一例の一部が構成される。
回収容器10は、碍子80に付着する付着物を回収する容器である。回収容器10の説明の前に、碍子80の構造について説明する。
【0011】
(碍子)
図2は、碍子の斜視図である。碍子80は、いわゆる懸垂碍子であり、図1及び図2に示すように、笠部81及びひだ部82を備えている。ひだ部82は、笠部81の底面に形成されている。碍子80は、所定の形状を鉛直軸周りに1回転させた略回転体をなしている。碍子80は、平面視した形状が円形をなしている。
ひだ部82は、山部82Aと、谷部82Bとを備えている。ひだ部82には、複数、この例では4個の山部82Aが設けられている。ひだ部82には、複数、この例では3個の谷部82Bが形成されている。複数の山部82Aと谷部82Bとは、同心状に交互に配置されている。
【0012】
図2に示すように、碍子80は、複数連結されている。図2に示す例では、2個の碍子80が連結された状態を示しているが、実際には、さらに多くの碍子80が連結されている。複数連結された碍子80は、送電鉄塔や変電所の電線等の絶縁が要求される箇所に設置される。連結される碍子の数は、電線等に対する絶縁性能等に応じて決められる。上段の碍子80と下段の碍子80とを連結する際には、上段の碍子80の連結凸部84が下段の碍子80の連結凹部83の上方から嵌め込まれる。これらの連結凹部83及び連結凸部84は、図示しないピン等の連結具で連結される。
【0013】
(回収容器)
次に、回収容器10について説明する。図1に示すように、回収容器10は、回収容器本体11と、回収容器本体11に取り付けられたクランプ20とを備える。
回収容器本体11の高さは、碍子80の笠部81と、その碍子80の上方に連結された他の碍子80のひだ部82との間の離間距離よりも短くされている。このため、回収容器本体11は、連結された2個の碍子80の間に配置可能とされ、上側の碍子80のひだ部82に取り付け可能とされている。
また、クランプ20の高さも、碍子80の笠部81と、その碍子80の上方に連結された他の碍子80のひだ部82との間の離間距離よりも短くされている。このため、クランプ20は、連結された2個の碍子80の間に容易に配置することができる。したがって、回収容器本体11とクランプ20とによって碍子80を容易に保持することができる。以下、回収容器本体11とクランプ20とのそれぞれについて説明する。
【0014】
(回収容器本体)
まず回収容器本体11について説明する。図3は、一実施形態例の付着物回収容器の要部の斜視図である。図3に示すように、回収容器本体11の外形は、所定の形状を鉛直軸周りに1/4回転させた形状を成している。このため、回収容器本体11は、略回転体の一部の角度部分の形状をなしている。回収容器本体11は、ABS樹脂、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PVC(塩化ビニル)、POM(ポリアセタール)、PA(ナイロン)、PU(ポリウレタン)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(アクリル)、エポキシ樹脂等で形成されている。
図1に示すように、回収容器本体11には、波状部12が形成されている。波状部12は、碍子80のひだ部82に追従するように形成されている。波状部12は、図3に示すように、本発明の波状部の凸部の一例である突条12Aを備えている。波状部12は、本発明の波状部の凹部の一例である凹溝12Bを備えている。波状部12には、複数、この例では3個の突条12Aが設けられている。波状部12には、複数、この例では4個の凹溝12Bが形成されている。複数の突条12Aと凹溝12Bとは、平面視して半径方向に沿って同心状に交互に配置されている。
【0015】
図2に示す碍子80の山部82Aと、図3に示す回収容器本体11の凹溝12Bとは、碍子80のひだ部82に回収容器本体11を取り付けたときに、互いに対向するように配置されている。碍子80の谷部82Bと回収容器本体11の突条12Aとは、碍子80のひだ部82に回収容器本体11を取り付けたときに、互いに対向する位置に配置される。
碍子80の山部82Aと谷部82Bとの位相と、回収容器本体11の凹溝12Bと突条12Aとの位相とは、互いにほぼ共通している。このため、碍子80に対して回収容器本体11を離間して配置させた場合、図1に示すように、碍子80におけるひだ部82と、回収容器本体11における波状部12との離間距離は、略一定となる。
【0016】
回収容器10は、パッキン13を備えている。パッキン13は、回収容器本体11の波状部12の四周に設けられている。パッキン13は、弾性及び水密性を有する材料、例えばNBR(ニトリルゴム)、CR(クロロプレンゴム)、EPM(エチレンプロピレンゴム)、シリコーンゴム等によって構成されている。パッキン13の頂部は、碍子80のひだ部82に回収容器本体11を取り付けたときに、碍子80のひだ部82の1/4相当の範囲の外周に当接する。こうして、パッキン13は、碍子80のひだ部82に回収容器本体11を取り付けたときに、碍子80と回収容器本体11との間に介在される。このとき、パッキン13は、碍子80のひだ部82と回収容器本体11の波状部12との間を水密状態で離間させる。ひだ部82と波状部12との間には、回収液が供給される洗浄空間14が形成されている。
洗浄空間14は、パッキン13によって水密に閉じられている。洗浄空間14の高さは、パッキン13の厚さとほぼ共通である。パッキン13の厚さ(≒洗浄空間14の高さ)は、約10mmである。洗浄空間14の高さは、例えば5mm〜30mm程度とするのが好適である。ただし、洗浄空間14の高さは、これ以外の高さであってもよい。
【0017】
図1に示すように、回収容器10は、供給路15と回収路16とを備えている。供給路15及び回収路16は、いずれも回収容器本体11に形成された孔部である。
図3にも示すように、供給路15の一端には、導入口15Aが形成されている。供給路15は、導入口15Aから導入された回収液を洗浄空間14に供給する。導入口15Aは、回収容器本体11の側面に1個形成されている。
供給路15の他端には、噴射口15Bが複数形成されている。噴射口15Bは、洗浄空間14に向けて開口しており、波状部12の突条12Aの頂点に形成されている。図3及び図4に示すように、複数の噴射口15Bは、各突条12Aにおいて、突条12Aの延在方向に略等間隔で離間して配置されている。噴射口15Bは、回収液をひだ部82の谷部82Bに向けて噴射する噴射口である。噴射口15Bから噴射された回収液は、図1に矢印で示すように、ひだ部82と波状部12との間の洗浄空間14に供給される。
【0018】
各突条12Aにはそれぞれ6個の噴射口15Bが形成されている。3個の突条12Aは、同心状に配置されている。このため、3個の突条12Aの延在長さは、内側の方が外側よりも短くなっている。内側の突条12Aに形成された隣り合う噴射口15Bの離間距離は、外側の突条12Aに形成された隣り合う噴射口15Bの離間距離よりも短くなっている。
図5(a)に示すように、突条12A内では、供給路15が分岐して各噴射口15Bに対して接続されている。各噴射口15Bからは、矢印で示すように、回収液が噴射される。突条12A内における供給路15の配置位置は、回収路16の配置位置よりも高くされている。
【0019】
回収路16の一端には、排出口16Aが形成されている。排出口16Aは、回収容器本体11の側面に1個形成されている。回収路16の他端には、回収口16Bが複数形成されている。回収口16Bは、図4にも示すように、波状部12の凹溝12Bの底部に形成されている。複数の回収口16Bは、各凹溝12Bに1個ずつ形成されている。回収口16Bは、凹溝12Bの延在方向の中央位置に形成されている。
凹溝12Bは、図5(b)に示すように、凹溝12Bの延在方向の中央の方が、凹溝12Bの延在方向の端部よりも低くなっている。このため、凹溝12B内の回収液は、矢印で示すように、凹溝12Bの延在方向の中央に集められる。凹溝12Bの延在方向の中央部には、回収口16Bが形成されている。このため、凹溝12B内の回収液が回収されやすくなっている。
また、凹溝12Bの内側では、横方向に延在する回収路16の形成高さよりも高い位置に供給路15が配置されている。供給路15と回収路16とは、回収容器本体11のいずれの位置においても、重ならない位置に形成されている。
【0020】
(クランプ)
次に、クランプ20について説明する。図1に示すように、クランプ20は、碍子80における笠部81の上面部に配置されている。クランプ20は、回収容器本体11とともに碍子80を挟持する。
クランプ20は、ボディ部21と、アーム22と、締付部材23とを備えている。ボディ部21は、回収容器本体11に固定された部材である。ボディ部21は、例えば熱可塑性樹脂製であり、常温では変形しない構成とされている。アーム22は、ボディ部21に取り付けられた板状の部材である。アーム22は、例えば金属製である。アーム22の基端部がボディ部21に取り付けられている。
【0021】
締付部材23は、つまみ部材23Aと押さえ板23Bとを備えて構成されている。締付部材23は、アーム22の先端部に設けられている。押さえ板23Bは、つまみ部材23Aを例えば時計回りに回転させることにより、アーム22から離反する方向に力が働く部材である。
押さえ板23Bは、碍子80のひだ部82に回収容器本体11が取り付けられたときに、アーム22から離反する方向に働く力により、アーム22に反力をとって碍子80の笠部81を回収容器本体11の方向に押圧する。碍子80の笠部81は、押さえ板23Bとパッキン13とに挟まれるとともに、押さえ板23Bからの押圧力を受けて、クランプ20と回収容器本体11とによって保持される。
【0022】
(碍子の付着物量測定装置のその他の部材)
図1に示すように、ポンプ30は、第1接続管61を介して、回収容器本体11に形成された導入口15Aに接続されている。貯留槽40は、第2接続管62を介して、回収容器本体11に形成された排出口16Aに接続されている。貯留槽40には、排出口16Aから排出される回収液の一定量を貯留させることができるようになっている。貯留槽40の容積は、後述する電気伝導率計50による測定に必要な回収液の液量に対応した容積とされている。
ポンプ30と貯留槽40とは、第3接続管63を介して接続されている。貯留槽40に貯留される回収液は、ポンプ30を作動させることにより、回収容器本体11に循環供給される。第1接続管61〜第3接続管63と、回収容器本体11に設けられた供給路15及び回収路16とによって洗浄空間14に回収液を循環供給する循環流路が形成されている。このうち、回収容器本体11に設けられた供給路15及び回収路16を内部流路とすると、第1接続管61〜第3接続管63が外部流路となる。ポンプ30は、第1接続管61〜第3接続管63と、回収容器本体11に設けられた供給路15及び回収路16とを介して洗浄空間14に回収液を循環供給する。なお、外部流路が形成されておらず、内部流路のみが形成されているようにしてもよい。この場合、ポンプは、回収容器本体11に設けられる。
【0023】
電気伝導率計50は、変換器51と、検出器52と、変換器51及び検出器52を接続するケーブル53とを備えている。検出器52は、貯留槽40内の回収液中に配設されている。
変換器51は、ケーブル53を介して検出器52に交流電圧を印加し、検出器52が有する一対の電極間を流れる電流に基づき回収液の電気伝導率を測定する。また、本実施形態例では、変換器51は碍子の付着物量測定装置1の演算部を兼ねており、測定した回収液の電気伝導率を、回収液の塩分濃度に換算し、これに基づいて碍子の付着物量を求める。なお、碍子に付着した付着物の主成分は塩分である。
【0024】
(碍子の付着物量の測定)
次に、碍子80に付着した付着物量の測定手順について説明する。
碍子80に付着した付着物量を測定する際には、作業者は、送電鉄塔等の取付位置に取り付けられた碍子80に対して、図1に示すように、回収容器10を取り付ける。ここで、例えば碍子80が送電鉄塔に設けられているときには、作業者は、碍子の付着物量測定装置1を持って送電鉄塔に上って碍子80の取付位置まで移動する。
碍子80に回収容器10を取り付ける際、作業者は、碍子80の下側から回収容器本体11を押し当てる。このとき、碍子80のひだ部82と回収容器本体11のパッキン13とが当接する。また、碍子80の笠部81の上方にクランプ20を配置し、笠部81の上面にクランプ20の押さえ板23Bを当接させる。
続いて、作業者は、クランプ20のつまみ部材23Aを時計回りに回転させて、押さえ板23Bとパッキン13とによって碍子80を保持する。押さえ板23Bとパッキン13とによって保持された碍子80と回収容器本体11との間には、水密状態の洗浄空間14が形成される。
【0025】
洗浄空間14が形成されたら、貯留槽40に一定量の純水を回収液として貯留する。続いて、ポンプ30を作動させて、回収液を回収容器10の導入口15Aから供給路15に導入する。貯留槽40には、あらかじめ純水を貯留させておいてもよい。また、貯留槽に貯留する純水の量は、例えば100ccとすることができる。また、純水の量は、その他の量としてもよい。
ポンプ30を作動させて供給路15に回収液(純水)を供給し、循環流路内を循環させると、まず噴射口15Bから回収液が噴射される。噴射口15Bから噴射された回収液は、碍子80のひだ部82の谷部82Bに吹き付けられる。谷部82Bに吹き付けられた回収液には、谷部82Bに付着する付着物(主成分は塩分)が溶け込む。その結果、回収液(純水)は、塩分を含んだ水溶液となる。
【0026】
回収液は、図1に矢印で示すように、重力によって回収容器本体11の凹溝12B上の洗浄空間14の全体に案内される。凹溝12Bには傾斜が形成され、最も低い位置に回収口16Bが形成されているので、回収液は、回収容器10の回収口16Bから回収される。回収された回収液は、貯留槽40へと導入される。
回収液中の付着物量は、循環を続けるにつれて上昇する。上述のとおり、碍子80に付着した付着物の主成分は塩分であるため、付着物量は、回収液の電気伝導率を塩分濃度換算した値に基づいて求めることができる。電気伝導率計50により貯留槽40内の回収液の電気伝導率を継続して測定することにより、回収液中の付着物量が上昇していく状態を確認できる。
ところが、ある程度の時間が経過すると、碍子80に付着した付着物のほぼ全量が洗い落とされ、付着物量の上昇が徐々になくなっていく。すなわち、回収液の電気伝導率はほとんど変化しなくなる。回収液の電気伝導率がほぼ一定となった時点(付着物量がほぼ一定となった時点)で碍子80の付着物量の測定を終了する。
【0027】
以上説明した碍子の付着物量測定装置1における回収容器10では、碍子80のひだ部82に追従するように波状部12が形成されている。このため、ひだ部82と波状部12との間では、ひだ部82の山部82Aと波状部12の凹溝12Bとの間に洗浄空間14を形成できる。さらには、ひだ部82の谷部82Bと波状部12の突条12Aとの間に洗浄空間14を形成できる。
したがって、ひだ部82と波状部12とが全体的に近接し、洗浄空間14の高さが全体的に低くなるので、洗浄空間14の容積を小さくすることができる。よって、ひだ部82を洗浄する際の純水(回収液)を少量で済ませることができる。その結果、回収液の塩分濃度(回収液量に対する付着物の相対量)を高めることができるので、熟練した作業者でなくとも、碍子80に付着する付着物の量を精度よく測定することができる。
また、洗浄空間14を狭くすることにより、洗浄空間14内の水勢を高めることができる。このため、ひだ部82に付着する付着物を勢いよく洗い流すことができる。したがって、碍子80に付着した付着物を回収液によって速やかに回収することができるので、碍子80に付着する付着物の量をさらに精度よく測定することができる。
【0028】
特に、回収液を噴射する噴射口15Bは、波状部12の突条12Aに形成されている。このため、供給路15から供給された回収液を、洗浄空間14の全体に対して効率的に行き渡らせることができるので、ひだ部82の広い範囲を洗浄することができる。その結果、回収液の塩分濃度を高めることができるので、碍子80に付着する付着物の量を精度よく測定することができる。
また、回収液を回収する回収口16Bは、波状部12の凹溝12Bに形成されている。このため、洗浄空間14内における回収液を確実に回収することができる。
【0029】
また、回収容器本体11には、洗浄空間14内の回収液を回収容器本体11の外部に排出する回収路16が設けられている。このため、付着物を回収して得られた回収液を回収容器本体11の外部に容易に排出することができる。したがって、回収液の塩分濃度(電気伝導率)の測定を容易に行うことができる。また、回収容器本体11に設けられた回収口16Bは、凹溝12Bに形成されている。このため、回収容器10で付着物を回収して得られる回収液を回収容器本体11の外部に確実に排出することができる。
また、回収口16Bが形成された凹溝12Bには傾斜が形成されており、回収口16Bは、凹溝12Bの最も低い位置に配置されている。このため、洗浄空間14内の回収液を回収口16Bに集めることができるので、回収口16Bから回収液を容易に回収することができる。
【0030】
また、碍子80は、略回転体であるところ、回収容器本体11は、一定の形状を鉛直軸周りに1/4回転させた形状である。このため、回収容器10では、碍子80のひだ部82のうち1/4の範囲に付着した付着物を回収するので、電気伝導率計50が測定した回収液の電気伝導率から換算した回収液の塩分濃度を4倍することにより、碍子80のひだ部82の全体に付着した付着物量を推定することもできる。したがって、碍子80に付着した付着物の量を簡易に測定することができる。
また、回収容器本体11は、一定の形状を鉛直軸周りに1/4回転させた形状であり、全周にわたってはいないことから、送電鉄塔等に取り付けられた碍子80にそのまま回収容器10を取り付けることができる。このため、碍子80を取り外すことなく付着物の量を測定できるので、測定にかかる時間や手間を軽減することができる。
なお、回収容器本体11は、一定の形状を鉛直軸周りに1/4回転させた形状ではなく、一定の形状を鉛直軸周りに1/2回転または1/3回転させた形状など他の角度部分を持った形状であってもよい。
【0031】
また、回収容器10の回収容器本体11には、碍子80を保持するクランプ20が設けられている。このため、回収容器本体11を碍子80に対して容易かつ確実に取り付けることができる。また、クランプ20は、碍子80の上面部に配置され、回収容器本体11とともに碍子80を挟持している。このため、回収容器本体11を碍子80のひだ部82に向けた状態で、碍子80を容易かつ確実に保持することができる。
【0032】
また、碍子の付着物量測定装置1は、ポンプ30によって回収容器本体11に回収液を循環供給している。このため、回収容器本体11に回収液を容易に供給することができる。したがって、碍子80に付着した付着物の量を容易に測定することができる。
【0033】
また、貯留槽40内の回収液の電気伝導率を測定するにあたり、電気伝導率を継続的に測定している。このため、回収液の電気伝導率(回収液の塩分濃度、付着物の量)がほぼ最大の値となったことを確認できるので、碍子80に付着した付着物の量を精度よく測定できる。なお、回収液の電気伝導率がほぼ最大の値となるまで測定することに代えて、ポンプ30で所定時間回収液を循環供給したときの回収液の電気伝導率を測定するようにしてもよい。
【0034】
以上、添付図面を参照しながら本実施形態に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0035】
例えば、上記の一実施形態例では、回収容器本体11から回収液を排出するための外部流路として第1接続管61〜第3接続管63を設けているが、これらの第1接続管61〜第3接続管63を設けないようにしてもよい。この場合、回収容器本体11内において、洗浄空間14、供給路15、及び回収路16に回収液が滞留することになるが、洗浄空間14に滞留する回収液の電気伝導率を、電気伝導率計50を用いて計測すればよい。あるいは、回収液の電気伝導率を測定するために回収液を貯留する貯留部を回収容器本体11に形成してもよい。あるいは、一定時間洗浄空間14内で回収液を滞留させた後、碍子80から回収容器10を取り外し、洗浄空間14に滞留する回収液をそのまままたは別容器に移して、回収液中の電気伝導率を計測してもよい。
【0036】
また、上記の一実施形態例では、噴射口15Bから回収液を噴射しているが、回収液を噴射せずに単に供給するのみでもよい。回収液を噴射口15Bから噴射することで、洗浄空間14内には、ある程度の水圧がかかり、水圧によって付着物(塩分)の溶け込みを促進させられる。しかし、噴射による洗い流しが無い場合でも、付着物の量を測定することができる。
また、噴射口15Bは、突条12Aの頂部に形成されているが、他の位置に形成されていてもよい。例えば、突条12Aの側面に形成されていてもよいし、凹溝12Bに形成されていてもよい。
【0037】
また、上記の一実施形態例において、測定対象となる碍子80は、懸垂碍子であるが、測定対象となる碍子は、ひだ部を備える他の碍子であればよく、長幹碍子あるいはラインポスト碍子(LP碍子)であってもよい。懸垂碍子ではひだ部が下方に配置されているので、上記の一実施形態例のように、碍子の下側に噴射口及び回収口を設けている。これに対して、長幹碍子あるいはLP碍子は、ひだ部が側方に配置されている。このため、長幹碍子あるいはLP碍子に取り付ける回収容器は、碍子の側方に噴射口を設け、最下方位置に回収口を設けたものとすればよい。
【符号の説明】
【0038】
1:碍子の付着物量測定装置
10:回収容器
11:回収容器本体
12:波状部
12A:突条(凸部)
12B:凹溝(凹部)
13:パッキン
14:洗浄空間
15:供給路
15B:噴射口
16:回収路
16B:回収口
20:クランプ(クランプ部材)
30:ポンプ
40:貯留槽
50:電気伝導率計
80:碍子
81:笠部
82:ひだ部
82A:山部
82B:谷部
図1
図2
図3
図4
図5