(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2溶接痕は、前記基部のうち、前記回動軸の軸方向において前記係止部と重なる部分を避けて配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の車両用シートフレーム。
前記第1溶接痕は、略円形状からなり、前記被嵌合部及び前記嵌合部の周囲を囲むように延びていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の車両用シートフレーム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、リクライニング装置は、バックフレームの回転動作に伴って比較的大きな荷重が掛かる構成部品であるため、バックフレームに対する組み付け剛性を確保する必要がある。一方で、リクライニング装置は、複数の部材を組み合わせてなり、その組み付け作業が比較的複雑となるため、組み付け作業を効率化してコスト削減を図る工夫が必要とされている。
上述した特許文献1のようなリクライニング装置では、その組み付け剛性を確保するために、リクライナ側の突起部とバックフレーム側の貫通孔とが接触している周縁部分が全体にわたって溶接接合されていた。そのため、溶接作業の効率性に劣り、材料費や工程費などのコストが高くなっていた。
【0008】
またところで、リクライニング装置のバネ係止ブラケットは、バックフレームの回転動作時に渦巻きバネの付勢力が直接掛かる部材であり、また、バックフレームの回転動作を規制するためにクッションフレームの一部と当接するように配置されている。そのため、バネ係止ブラケットの取り付け剛性を確保する必要がある。
そこで、特許文献2や特許文献3のようなリクライニング装置では、バックフレームに対してバネ係止ブラケットを溶接固定する作業や、バネ係止ブラケットに貫通穴を設けてボルト締結する作業を加えて取り付け剛性を確保していた。
しかしながら、バネ係止ブラケットの組み付け作業を複雑な工程とせずに、その組み付け剛性を向上させる技術が望まれていた。
特に、作業効率化のために、リクライニング動作時の荷重の掛かり方を考慮して、バネ係止ブラケットのうち、荷重が集中する部分を局所的に補強する技術が必要とされていた。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、構成要素となる2つの部材同士を相対回動可能に連結する装置を備え、当該装置の組み付け剛性を確保しながらも、その組み付け作業を効率化させた車両用シートフレーム及び車両用シートを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、当該装置動作時の荷重の掛かり方を考慮して、当該装置のうち、荷重が集中する部分を局所的に補強した車両用シートフレーム及び車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、本発明の車両用シートフレームによれば、車両用シートの骨格となる車両用シートフレームであって、該車両用シートフレームの構成要素となる第1部材と、該第1部材に対して回動可能となるように回動軸を介して連結される第2部材と、該第2部材に取り付けられ、該第2部材の回動動作をロックするロック部材と、を備え、該ロック部材の表面には、前記第2部材の表面に設けられた被嵌合部に組み付けるための嵌合部が形成され、前記被嵌合部及び前記嵌合部が組み付けられた状態で溶接されることで、前記第2部材及び前記ロック部材の少なくとも一方の表面に溶接痕が形成され、該溶接痕は、
第1溶接痕であって、前記被嵌合部及び前記嵌合部の周囲を囲むように延びて、前記被嵌合部と前記嵌合部とが接触している部分と、前記第2部材及び前記ロック部材の各々の表面が重ね合わされている部分と、を通って
おり、前記回動軸を中心として前記第2部材を回動方向に沿って付勢する付勢バネと、前記第2部材に取り付けられる基部と、該基部の外表面から張り出すように設けられ、前記付勢バネの一端側が係止される係止部と、を有するバネ係止部材と、をさらに備え、前
記基部及び前記第2部材が当接した状態で溶接されることで、前記基部及び前記第2部材の少なくとも一方に第2溶接痕が形成され、該第2溶接痕は、前記係止部と前記第1溶接痕との間に配置されていること、により解決される。
【0011】
上記構成により、2つの部材同士を相対回動可能に連結する装置の構成部品となるロック部材を組み付けるにあたり、第2部材側の被嵌合部と、ロック部材側の嵌合部とが組み付けられた状態で溶接されるため、ロック部材の組み付け剛性を確保できる。
そして、溶接痕が、被嵌合部及び嵌合部の周囲を囲むように延びて、被嵌合部と嵌合部とが接触している部分と、第2部材及びロック部材の各々の表面が重ね合わされている部分と、を通っているため、従来のように被嵌合部と嵌合部とが接触している周縁部分全体を溶接する場合と比較して、シンプルな溶接痕を形成し易くなり、溶接作業の効率性が上がる。シンプルな溶接痕の形状であれば、溶接作業のバラツキを抑え、コストダウンがし易くなる。
また上記構成により、2つの部材同士を相対回動可能に連結する装置の構成部品となるバネ係止部材を組み付けるにあたり、当該装置動作時の荷重の掛かり方を考慮して、当該装置のうち、比較的荷重が集中する部分を局所的に補強することができる。
詳しく説明すると、バネ係止部材は、第2部材の回転動作時に付勢バネの付勢力が直接掛かる部材であり、また例えば、第2部材の回転動作を規制するために第1部材の一部と当接するものであって、比較的荷重が集中し易い部材である。
そこで、バネ係止部材の基部において、付勢バネの一端が係止される係止部と、ロック部材を組み付けるための第1溶接痕との間に第2溶接痕が形成されることで、特に荷重が集中し易い部分を溶接固定で局所的に補強できる。
【0019】
このとき、前記第2溶接痕は、前記基部において該基部の外周部分よりも内側に配置されていると良い。
また、前記第2溶接痕は、少なくとも一部分が略直線状であると良い。
また、前記第2溶接痕は、略L字形状であると良い。
また、前記第2溶接痕は、略U字形状であると良い。
上記構成により、バネ係止部材を組み付けるにあたり、シンプルな溶接部を形成することで、バネ係止部材の溶接作業(組み付け作業)を効率化できる。
【0020】
このとき、前記基部の外表面には、前記第2部材に取り付けるための加工部が形成され、前記第2溶接痕は、前記基部のうち、前記加工部と、前記基部の外周部分との間に配置されていると良い。
上記構成により、バネ係止部材を組み付けるにあたって、バネ係止部材のうち、特に荷重が集中し易い部分を溶接固定で補強した上で、さらに加工部が形成されているため、バネ係止部材の組み付け剛性が向上する。
【0021】
このとき、前記第2溶接痕は、前記基部のうち、前記回動軸の軸方向において前記係止部と重なる部分を避けて配置されていると良い。
上記構成により、例えば回動軸の軸方向において係止部側から(左右外側から)レーザー溶接した場合に係止部が邪魔にならない(干渉しない)形状となる。
このとき、前記第1溶接痕は、略円形状からなり、前記被嵌合部及び前記嵌合部の周囲を囲むように延びていると良い。
また、前記第1溶接痕は、略楕円形状からなり、前記第1溶接痕の一部が、前記嵌合部の外周縁を通っており、前記第1溶接痕の一部とは異なる部分が、前記嵌合部の外周縁よりも外側を通っていると良い。
上記構成により、シンプルな形状の溶接痕となるため、溶接作業の効率性が一層上がり、溶接作業のバラツキを一層抑え、コストダウンも一層し易くなる。
【0022】
このとき、上記車両用シートフレームを骨格として備える車両用シートも実現することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、2つの部材同士を相対回動可能に連結する装置の組み付け剛性を確保できる。
そして、従来の溶接痕の形状と比較して、シンプルな溶接痕を形成し易くなり、溶接作業の効率性が上がる。シンプルな溶接痕の形状であれば、溶接作業のバラツキを抑え、コストダウンがし易くなる。
そして、溶接痕が連続して延びているため、例えば、溶接痕が不連続で複数形成されている場合と比較して、溶接作業の効率性が上がる。一般に溶接痕の起点はクラックが生じ易くなるため、溶接痕が連続して延びているほうが接合強度が高くなる。
【0024】
本発明によれば、第2部材とロック部材との組み付け作業が容易な嵌合構造となる。
本発明によれば、一般に嵌合突起と嵌合穴とが接触している部分を狙って溶接するためには、比較的高い精度が要求されるところ、本発明に係る溶接痕は、例えば、全体として一対の第1嵌合突起部と嵌合穴とが接触している部分さえ高精度を守って形成されれば良く、溶接作業の効率性を向上できる。
本発明によれば、従来のように嵌合穴と嵌合突起とが接触している周縁部分が全体にわたって溶接される場合と比較して、同等な取り付け剛性を確保できる上に、溶接作業の効率性を格段に向上できる。
【0025】
本発明によれば、2つの部材同士を相対回動可能に連結する装置の構成部品となるバネ係止部材を組み付けるにあたり、当該装置動作時の荷重の掛かり方を考慮して、当該装置のうち、比較的荷重が集中する部分を局所的に補強できる。
詳しく説明すると、バネ係止部材は、第2部材の回転動作時に付勢バネの付勢力が直接掛かる部材であり、また例えば、第2部材の回転動作を規制するために第1部材の一部と当接するものであって、比較的荷重が集中し易い部分である。
そこで、バネ係止部材の基部において、付勢バネの一端が係止される係止部と、ロック部材を組み付けるための第1溶接痕との間に第2溶接痕が形成されることで、特に荷重が集中し易い部分を溶接固定で局所的に補強できる。
【0026】
本発明によれば、バネ係止部材を組み付けるにあたり、シンプルな溶接部を形成することで、バネ係止部材の溶接作業(組み付け作業)を効率化できる。
本発明によれば、バネ係止部材を組み付けるにあたって、バネ係止部材のうち、特に荷重が集中し易い部分を溶接固定で補強した上で、さらに加工部が形成されているため、バネ係止部材の組み付け剛性が向上する。
本発明によれば、例えば回動軸の軸方向において係止部側から(左右外側から)レーザー溶接した場合に、係止部が邪魔にならない(干渉しない)形状となる。
本発明によれば、上記車両用シートフレームを骨格として備える車両用シートも実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る車両用シートについて、
図1〜
図11を参照しながら説明する。
本実施形態は、クッションフレームに対してバックフレームを回動可能に連結するリクライニング装置を備え、リクライニング本体は、バックフレームの外側面に設けられた嵌合穴に組み付けられた状態で溶接固定されており、略円形状からなる溶接痕が、嵌合穴の周囲を囲むように連続して延びて、嵌合穴と嵌合突起とが接触している部分と、バックフレーム及びリクライニング本体の各々の側面が重ね合わされている部分と、を交互に通っていることを特徴とする車両用シートの発明に関するものである。
クッションフレーム、バックフレームは、それぞれ特許請求の範囲において第1部材、第2部材に相当する。また、リクライニング本体は、ロック部材に相当する。
なお、車両用シートのシートバックに対して乗員が着座する側がシート前方側となる。
【0029】
本実施形態の車両用シートSは、
図1に示すように、着座部となるシートクッション1と、背もたれ部となるシートバック2と、を主に備え、骨格となる
図2に示す車両用シートフレームSaに不図示のクッションパッドを載置して、不図示の表皮材で被覆されて構成されている。
また、車両用シートSは、
図2に示すように、シートクッション1の骨格となるクッションフレーム10に対して、シートバック2の骨格となるバックフレーム20を相対回動可能となるように連結するリクライニング装置30を備えている。
【0030】
クッションフレーム10は、
図2に示すように、略矩形状の枠体からなり、車両用シートSを前後方向にスライド移動させるための不図示のスライドレール装置、及び車両用シートSを上下方向に移動させるための不図示の高さ調整装置を介して車体フロアに取り付けられている。
クッションフレーム10のシート後端部であってシート左右方向の外側面には、
図3、
図4に示すように、リクライニング装置30の回動軸33を挿通させるための軸穴11と、軸穴11の周辺に設けられ、リクライニング装置30の付勢バネ34の他端部が係止される係止部12と、が形成されている。
【0031】
バックフレーム20は、
図2に示すように、略矩形状の枠体からなり、その下端部がリクライニング装置30を介してクッションフレーム10の後端部に連結されることで支持されている。かかる状態においてバックフレーム20は、クッションフレーム10に対して相対回動することが可能となっている。
バックフレーム20の下端部であってシート左右方向の外側面には、
図4、
図5に示すように、リクライニング本体31を嵌め込むための嵌合穴21と、リクライニング装置30のバネ係止部材35を組み付けるための組み付け穴22と、が形成されている。
【0032】
嵌合穴21は、
図4に示すように、略四つ葉形状の貫通穴からなり、リクライニング本体31の内側面に設けられた嵌合突起32を組み付け可能な位置に形成されている。
嵌合穴21は、車両用シートSが使用位置にあるときに、上下方向において回動軸33を挟む位置に配置される一対の第1嵌合穴部21aと、シート前後方向において回動軸33を挟む位置に配置される一対の第2嵌合穴部21bと、を備えている。
なお、車両用シートSの使用位置とは、例えば
図2に示すように、バックフレーム20が起立姿勢でロックされた状態であって、乗員が着座可能な位置である。
【0033】
リクライニング装置30は、
図3〜
図5に示すように、クッションフレーム10に対してバックフレーム20を回動可能に連結する装置からなり、バックフレーム20の左右幅方向の外側面に取り付けられている。
リクライニング装置30は、バックフレーム20を回動させるときに駆動するリクライニング本体31と、回動軸33と、バックフレーム20を回動方向に沿って付勢する付勢バネ34と、バックフレーム20の外側面に取り付けられ、付勢バネ34の一端部が係止されるバネ係止部材35と、から主に構成されている。
【0034】
リクライニング本体31は、公知なロック機構を備えており、バックフレーム20の状態を、クッションフレーム10に対して固定されたロック状態と、クッションフレーム10に対して相対回動可能なアンロック状態との間で切り替えることが可能である。
なお、リクライニング本体31は、バックフレーム20を起立姿勢でロックした状態から、
図2に示す操作レバー37が操作されることでロック状態を解除する。
リクライニング本体31のシート幅方向の内側面には、バックフレーム20の嵌合穴21に組み付けるための嵌合突起32が形成されている。
【0035】
嵌合突起32は、
図5に示すように、リクライニング本体31の外表面から突出形成された略湾曲形状の突起部分からなり、リクライニング本体31の中心軸を中心として同一円周上に不連続で複数形成されている。
嵌合突起32は、車両用シートSが使用位置にあるときに、
図5、
図7に示すように、上下方向において回動軸33を挟む位置に配置される一対の第1嵌合突起部32aと、シート前後方向において回動軸33を挟む位置に配置される一対の第2嵌合突起部32bと、から構成されている。
一対の第1嵌合突起部32aは互いに対向する位置に配置され、同様に一対の第2嵌合突起部32bも互いに対向する位置に配置されている。
【0036】
上記構成において、リクライニング本体31は、その左右内側面がバックフレーム20の左右外側面と当接して重ね合わされた状態で、バックフレーム20の嵌合穴21に一部が嵌め込まれている。
また、
図7に示すように、バックフレーム20の嵌合穴21にリクライニング本体31が組み付けられた状態で溶接されることで、バックフレーム20の左右内側面に第1溶接痕60が形成されている。第1溶接痕60の詳細は後述する。
【0037】
回動軸33は、
図3、
図4に示すように、軸方向がシート左右方向に沿った状態でバックフレーム20間に配置され、回動軸33の延出端部は、嵌合穴21を通じてバックフレーム20の外側面から左右外側に突出している。
突出した回動軸33の延出端部は、リクライニング本体31と組み付けられ、さらにリクライニング本体31よりも外側の位置にあるクッションフレーム10の軸穴11を貫通して左右外側に突出している。
なお、回動軸33の延出端部には、
図2に示す操作レバー37が取り付けられている。
【0038】
付勢バネ34は、バックフレーム20をシート前方側に付勢する渦巻きバネからなり、バックフレーム20の状態がアンロック状態にあるときに、回動軸33を中心としてバックフレーム20をクッションフレーム10側に回転させるように付勢する。
付勢バネ34の一端部は、バックフレーム20側に設けられ、左右外側に延出するバネ係止部材35に掛け止めされており、その他端部は、クッションフレーム10側に設けられ、左右外側に延出する係止部12に掛け止めされている。
【0039】
バネ係止部材35は、付勢バネ34の一端部を係止する略L字形状の板金部材である。
バネ係止部材35は、バックフレーム20の左右外側面に取り付けられる基部35aと、基部35aの外表面から張り出すように設けられ、付勢バネ34の一端部が係止される係止部35bと、から構成されている。
基部35aの外表面には、締結ボルトによってバックフレーム20に取り付けるための組み付け穴36が形成されている。
係止部35bは、基部35aの下端部から左右外側に延出し、その延出部分が付勢バネ34側に向かってやや折り曲げられて設けられている。また、係止部35bの表面には、係止部35bの延出方向に沿って溶接ビードが形成されている。
なお、係止部35bは、必ずしも基部35aの下端部から左右外側に延出していなくても良く、例えば基部35aの上端部から左右外側に延出しても良いし、基部35bの中央部から左右外側に延出しても良い。
【0040】
組み付け穴36は、加工部に相当し、シート前後方向に所定の間隔を空けて2つ形成されており、バックフレーム20の左右外側面に基部35aが当接した状態で、組み付け穴22と対向する位置に配置されている。
また、組み付け穴36の周辺には、
図3に示すように、バックフレーム20の左右外側面に基部35aが当接した状態で溶接されることで、バックフレーム20の左右内側面に第2溶接痕40、50が形成されている。第2溶接痕40、50の詳細は後述する。
【0041】
上記構成により、リクライニング装置30は、回動軸33を中心としてバックフレーム20をシート前後方向に回転させることで、バックフレーム20の起立姿勢を調整することができる。
このとき、バネ係止部材35は、
図6に示すように、バックフレーム20が付勢バネ34の付勢方向に向かって所定の回転位置までシート前方に回転したときに、バックフレーム20の回転移動を規制するためにクッションフレーム10の一部である移動規制部13に当接するように配置されている。
詳しく言うと、バネ係止部材35のうち、係止部35b前端部にある当接部35cと、クッションフレーム10の後端部において上端部分にある移動規制部13とが、当接するように配置されている。
【0042】
なお、バネ係止部材35は、
図6に示すように、バックフレーム20が所定の回転位置までシート後方に回転したときにも、クッションフレーム10の一部である移動規制部14に当接するように配置されている。
そのため、上記当接位置を調整することで、クッションフレーム10に対するバックフレーム20の回動範囲を適宜調整することができる。
【0043】
<第2溶接痕40、50の形成位置>
次に、バックフレーム20の左右外側面にバネ係止部材35が当接した状態で、バックフレーム20の左右内側からレーザー溶接することで形成される第2溶接痕40、50について、
図6、
図7に基づいて説明する。
なお、上記レーザー溶接することで、バックフレーム20の一部が溶けてバネ係止部材35に接合されており、当該接合部分が第2溶接痕40、50となる。
【0044】
第2溶接痕40は、
図6、
図7に示すように、略U字形状からなり、シート前方側の組み付け穴36aの周囲を囲むようにして、バックフレーム20の左右内側面に形成されている。
詳しく言うと、第2溶接痕40は、バネ係止部材35のうち、組み付け穴36aと、クッションフレーム10の移動規制部13に当接する当接部35cとの間に形成されている第1溶接部41と、第1溶接部41の延出方向の各々の端部から延びて、組み付け穴36aを互いに挟む位置に形成される第2溶接部42及び第3溶接部43と、から構成されている。
【0045】
第1溶接部41は、組み付け穴36aと当接部35cとの2点を通り、回動軸33の軸方向に沿って形成される仮想平面Fに対して直交する方向に延びている。
第2溶接部42、第3溶接部43は、それぞれ第1溶接部41から連続して、第1溶接部41の延出方向とは直交する方向に延びている。
第2溶接部42は、第3溶接部43よりも係止部35b側に形成され、第3溶接部43よりも長尺となるように延びている。
【0046】
また、第2溶接部42、第3溶接部43において、第1溶接部41側とは反対側の一端部がそれぞれ幅広となるように形成されている。
具体的には、第2溶接部42には、一端部から連続して屈曲し、第2溶接部42に対向するように延びている屈曲溶接部44が形成されている。
同様に、第3溶接部43には、一端部から連続して屈曲し、第3溶接部43に対向するように延びている屈曲溶接部45が形成されている。
屈曲溶接部44、45は、それぞれ組み付け穴36a側に屈曲するように形成されている。
【0047】
第2溶接痕40は、第2溶接部42側から第1溶接部41を経て第3溶接部43側まで一度にレーザー溶接することで形成されている。
詳しく言うと、第2溶接部42側の屈曲溶接部44からスタートして、第3溶接部43側の屈曲溶接部45まで一度にレーザー溶接することで第2溶接痕40が形成されている。
なお、第2溶接痕40は、第3溶接部43側から第2溶接部42側に向かってレーザー溶接することで形成されていても良い。
【0048】
第2溶接痕50は、
図7に示すように、略円形状からなり、シート後方側の組み付け穴36bの周囲を囲むようにして、バックフレーム20の左右内側面に形成されている。
【0049】
上記構成において、一般に、バックフレーム20の回転動作時の荷重の掛かり方を考慮すると、バネ係止部材35のうち、組み付け穴36aと、当接部35cとの間に荷重が集中して、バネ係止部材35をバックフレーム20から引き剥がそうとする応力が働く。
そこで、上記のように、第1溶接部41が形成されることで、バネ係止部材35のうち、特に荷重が集中する部分を溶接固定で局所的に補強できる。
また、上記のように、第2溶接部42、第3溶接部43が形成されることで、バネ係止部材35のうち、組み付け穴36a周辺の比較的荷重が掛かり易い部分をさらに補強できる。
【0050】
上記構成において、バネ係止部材35のうち、一方の組み付け穴36b周辺には、比較的荷重が分散して掛かることが分かっている。そのため、略円形状の第2溶接痕50が形成されることで、組み付け穴36b周辺を万遍なく補強できる。
【0051】
<第1溶接痕60の形成位置>
次に、バックフレーム20の左右外側面にリクライニング本体31が組み付けられた状態で、バックフレーム20の左右内側からレーザー溶接することで形成される第1溶接痕60について、
図7に基づいて説明する。
なお、上記レーザー溶接することで、バックフレーム20及びリクライニング本体31の一部が溶けて互いに接合されており、当該接合部分が第1溶接痕60となる。
【0052】
第1溶接痕60は、
図7に示すように、略円形状からなり、嵌合穴21及び嵌合突起32の周囲を囲むように連続して延びており、嵌合穴21と嵌合突起32とが接触している部分と、バックフレーム20及びリクライニング本体31の各々の側面が重ね合わされている部分と、を交互に通るように形成されている。
第1溶接痕60は、言い換えると、回動軸33を中心として嵌合穴21の外周縁、及び嵌合突起32の外周縁を通る同一円周上に連続して形成されている。
なお、第1溶接痕60の形成位置において、バックフレーム20及びリクライニング本体31の各々の側面が重ね合わされている部分とは、嵌合穴21の外周縁上にあって、嵌合突起32と接触していない部分に相当する。
【0053】
第1溶接痕60は、上方側にある第1嵌合突起部32aの外周縁からスタートして、順にシート後方側にある第2嵌合突起部32b、下方側にある第1嵌合突起部32a、シート前方側にある第2嵌合突起部32bの各々の外周縁を通って円形状となるように一度にレーザー溶接することで形成されている。
なお、レーザー溶接作業は、第1溶接痕60のどの位置からスタートしても良いし、シート前方側回りであってもシート後方側回りであっても良い。
【0054】
上記構成により、第1溶接痕60は、従来のように嵌合穴21と嵌合突起32とが接触している周縁部分全体を溶接する場合と比較して、シンプルな円形状の溶接痕となり、溶接作業の効率性が上がる。シンプルな円形状であるため、溶接作業のバラツキを抑え、コストダウンがし易くなる。
また、第1溶接痕60は、連続した円形状からなり、例えば、不連続で複数形成されている場合と比較して、溶接作業の効率性が上がる。また、一般に第1溶接痕60の起点はクラックが生じ易くなるため、第1溶接痕60が連続して延びているほうが接合強度が高くなる。
【0055】
さらに、第1溶接痕60は、嵌合穴21と嵌合突起32とが接触している嵌合部分と、バックフレーム20及びリクライニング本体31の各々の側面が重ね合わされている重ね部分と、を通るように形成されており、2つの部材同士が複合的に溶接されている。
そのため、従来のように嵌合穴21と嵌合突起32とが接触している周縁部分が全体にわたって溶接される場合と比較して、同等な取り付け剛性を確保できる上に、溶接作業の効率性を格段に向上できる。
【0056】
さらに、第1溶接痕60は、バックフレーム20の左右内側からレーザー溶接することで形成されているため、左右外側から溶接する場合と比較して、他の構成部品と干渉することを抑制できる。しかも、第1溶接痕60は、シンプルな形状で形成されているため、一層干渉を抑制できる。
さらに、第1溶接痕60は、外部から視認できない位置にあるため、車両用シートSの意匠性、高級感が向上する。
【0057】
<車両用シートの第2実施形態>
次に、車両用シートSの第2実施例について、
図8に基づいて説明する。
なお、以下の説明において上述した車両用シートSと重複する内容は説明を省略する。
第2実施例に係る車両用シートSでは、バネ係止部材35の外表面に組み付け穴36が1つ形成され、組み付け穴36の周囲を囲むように略U字形状の第2溶接痕140が形成されている点が異なっている。
また、バックフレーム20の左右内側面に一対の円弧形状の第1溶接痕160が形成されている点が異なっている。
【0058】
第2溶接痕140は、バネ係止部材35のうち、組み付け穴36と、当接部35cとの間に形成されている第1溶接部141と、第2溶接部142及び第3溶接部143と、から構成されている。
第1溶接部141は、組み付け穴36と当接部35cとの2点を通り、回動軸33の軸方向に沿って形成される仮想平面Fに対して直交する方向に延びている。
第2溶接部142、第3溶接部143は、それぞれ第1溶接部141から連続して、第1溶接部141の延出方向とは直交する方向に延びている。
第2溶接部142には、第1溶接部141側とは反対側の一端部から連続して屈曲し、第2溶接部142に対向するように延びている屈曲溶接部144が形成されている。
【0059】
一対の第1溶接痕160は、回動軸33を中心として嵌合穴21及び嵌合突起32の各々の外周縁を通る同一円周上に形成されており、また、回動軸33を間に挟む位置に配置されている。
【0060】
なお、バネ係止部材35において係止部35bは、必ずしも基部35aの下端部から左右外側に延出していなくても良く、例えば基部35aの上端部や中央部から左右外側に延出していても良い。
【0061】
<車両用シートの第3実施形態>
次に、車両用シートSの第3実施例について、
図9に基づいて説明する。
第3実施例に係る車両用シートSでは、バネ係止部材35の外表面に組み付け穴36a、36bが形成され、各組み付け穴36a、36bの周囲をそれぞれ囲むように略U字形状の第2溶接痕240、250が形成されている点が異なっている。
また、バックフレーム20の左右内側面に略楕円形状の第1溶接痕260が形成されている点が異なっている。
【0062】
第2溶接痕240の第1溶接部241は、組み付け穴36aと当接部35cとの2点を通り、回動軸33の軸方向に沿って形成される仮想平面F1に対して直交する方向に延びている。
第2溶接部242、第3溶接部243は、それぞれ第1溶接部241から連続して、第1溶接部241の延出方向とは直交する方向に延びている。
【0063】
一方で、第2溶接痕250の第1溶接部251は、バネ係止部材35のうち、組み付け穴36bと、付勢バネ34の一端部が係止される部分との2点を通り、回動軸33の軸方向に沿って形成される仮想平面F2に対して直交する方向に延びている。
第2溶接部252、第3溶接部253は、それぞれ第1溶接部251から連続して、第1溶接部251の延出方向とは直交する方向に延びている。
【0064】
上記のように、バネ係止部材35のうち、組み付け穴36bの周辺において比較的荷重が集中し易い部分に第2溶接痕250が形成されているため、シンプルな溶接固定で局所的に補強することができる。
【0065】
第1溶接痕260は、一部が回動軸33を中心として嵌合穴21及び嵌合突起32の各々の外周縁を通る同一円周上に形成されており、一部が回動軸33を中心として当該外周縁よりも外側を通る同一楕円周状に形成されている。
第1溶接痕260は、上方側にある第1嵌合突起部32aの外周縁からスタートして、順にシート後方側にある第2嵌合突起部32bの外側、下方側にある第1嵌合突起部32aの外周縁、シート前方側にある第2嵌合突起部32bの外側を通って略楕円形状となるようにレーザー溶接することで形成されている。
【0066】
上記構成により、一般に嵌合穴21と嵌合突起32とが接触している部分を狙って溶接するためには、比較的高い精度が要求されるところ、第1溶接痕260は、全体として一対の第1嵌合突起部32aと嵌合穴21とが接触している部分さえ高精度を守って形成されていれば良く、それ以外の部分は多少のバラツキを吸収することができる。
そのため、溶接作業の効率性が格段に向上する。
【0067】
なお、バネ係止部材35において係止部35bは、必ずしも基部35aの下端部から左右外側に延出していなくても良く、例えば基部35aの上端部や中央部から左右外側に延出していても良い。
【0068】
<車両用シートの第4実施形態>
次に、車両用シートSの第4実施例について、
図10、
図11に基づいて説明する。
第4実施例に係る車両用シートSでは、バネ係止部材135が、バックフレーム20の外側面に取り付けられる基部135aと、基部135aの上端部から外側に張り出すように設けられ、付勢バネ34の一端部が係止される係止部135bと、から構成されている点が異なっている。
また、バネ係止部材135の外表面において、組み付けボルト用の組み付け穴136が1つ形成され、組み付け穴136を間に挟む位置に一対の第2溶接痕340が形成されている点が異なっている。
【0069】
バネ係止部材135の基部135aは、バックフレーム20の外側面において部分的に窪んだ凹部20aに取り付けられており、バックフレーム20に対する取り付け剛性が向上している。
また基部135aは、リクライニング本体31及びクッションフレーム10のそれぞれの上端に沿わせるように湾曲して形成されており、言い換えれば、リクライニング本体31及びクッションフレーム10との干渉を抑制するための逃げ形状を有している。
【0070】
係止部135bは、段差形状となっており、基部135aの上端部からシート幅方向の外側に延出し、その延出部分が付勢バネ34側に向かって下方にやや折り曲げられて形成されている。
そのため、バネ係止部材135では、第1実施形態のバネ係止部材35と比較して、付勢バネ34が係止される係止部先端135baと、組み付け穴136とが上下方向においてより近接した位置に配置される。その結果、付勢バネ34によるバネ係止部材135をバックフレーム20から引き剥がそうとするねじれ荷重に対して補強することができる。
【0071】
一対の第2溶接痕340は、
図11に示すように、それぞれ略矩形状(囲まれた形状)からなり、シート前後方向において組み付け穴136を間に挟む位置に配置され、基部135aの外周に沿わせた形状となっている。また、一対の第2溶接痕340は、組み付け穴136の外周に近づけた位置に配置されている。そのため、バネ係止部材135のうち、組み付け穴136周辺の比較的荷重が掛かり易い部分を補強することができる。
【0072】
一対の第2溶接痕340は、
図11に示すように、上下方向においてバネ係止部材135の基部135aのうち、係止部135bと第1溶接痕60との間に位置する部分に形成されている。
上記のように、付勢バネ34の一端が係止される係止部135bと、リクライニング本体31を組み付けるための第1溶接痕60との間に第2溶接痕340が形成されているため、バネ係止部材135のうち、特に荷重が集中し易い部分を溶接固定で局所的に補強できる。
【0073】
一対の第2溶接痕340は、上下方向において係止部135bとの干渉を抑制するための逃げ部341を有している。言い換えれば、第2溶接痕340は、基部135aのうち、回動軸33の軸方向において係止部135bと重なる部分を避けて配置されている。そのため、例えばバックフレーム20の左右外側からレーザー溶接した場合にも係止部135bが邪魔にならない形状となっている。
逃げ部341は、バックフレーム20とリクライニング本体31とを連結する回動軸33に向かって延びた形状となっている。そのため、バックフレーム20とリクライニング本体31との連結剛性が向上する。
【0074】
<その他の実施形態>
上記実施形態の車両用シートSでは、第1部材に相当するクッションフレーム10に対して第2部材に相当するバックフレーム20を相対回動可能に連結するリクライニング装置30を備えたものとして示した。
しかし、上記に限定されることなく適宜変更可能である。例えば、車体フロア側に対してバックフレーム20を相対回動可能に連結したり、車体フロア側に対してクッションフレーム10を相対回動可能に連結したりする装置を備えたシートにも適用できる。
また、車体フロア側に対してシート本体を相対回動可能に連結する装置を備えたシートにも適用できるし、乗員の下腿部を下方側から持ち上げて支持するいわゆるオットマン装置をクッションフレーム10に対して相対回動可能に連結するシート等にも適用できる。
【0075】
また上記実施形態の車両用シートSでは、
図5に示すように、被嵌合部に相当する嵌合穴21と、嵌合部に相当する嵌合突起32とが組み付けられる構成としていた。
しかし、上記に限定されることなく、例えば、嵌合凹部と嵌合凸部とが組み付けられる構成としても良いし、嵌合穴と嵌合爪とが組み付けられても良い。補強的にボルト締結や、接着剤で接着されていても良い。
【0076】
また上記実施形態において、
図3に示すように、バネ係止部材35の外表面には、バックフレーム20に取り付けるための加工部として組み付け穴36が形成されているが、これに限定されることなく適宜変更可能である。例えば、組み付け穴36の代わりに凹凸部や溶接部が形成されても良いし、接着材を塗布した接着部が形成されても良い。
【0077】
また上記実施形態において、第1溶接痕60、第2溶接痕40、50は、レーザー溶接によって形成されているが、これに限定されることなく、レーザー溶接の代わりにスポット溶接、超音波溶接等、母材の一部を溶かして接合する公知な溶接方法を適宜採用しても良い。
【0078】
また上記実施形態において、
図7に示すように、第1溶接痕60は、略円形状に形成されているが、これに限定されることなく、略半楕円形状や、四角形状のような略多角形状等に形成されていても勿論良い。また第1溶接痕60は、連続した円形状となっているが、これに限定されることなく、不連続で形成されていても勿論良い。
【0079】
また上記実施形態において、
図7に示すように、第2溶接痕40は、各溶接部41、42、43が連続して形成されてなるが、これに限定されることなく、各溶接部41、42、43が不連続で形成されていても勿論良い。
【0080】
また上記実施形態において、
図10、
図11に示すように、一対の第2溶接痕340は、それぞれ略矩形状に形成されているが、これに限定されることなく変更可能である。
例えば、第2溶接痕340が略L字形状に形成されて、回動軸33の軸方向において係止部135bと重なる部分を避けて配置されていても良い。
また例えば、第2溶接痕340が略U字形状に形成されて、回動軸33の軸方向において係止部135bと重なる部分を避けて配置されていても良い。
【0081】
上記実施形態では、具体例として自動車に用いられる車両用シートについて説明したが、これに限定されることなく、電車、バス等の車両用シートのほか、飛行機、船等の乗り物用シートとしても利用することができる。
【0082】
本実施形態では、主として本発明に係る車両用シートSに関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。