(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
左右に離間して配置された左右のサイドフレームを有するクッションフレームと、前記クッションフレームに被せられるクッションパッドおよび表皮材とを備えるシートであって、
前記クッションパッドは、第1パッド層と、着座者のヒップポイントの左右両側で前記第1パッド層の下に配置された、前記第1パッド層よりも硬い左右の第2パッド層とを有し、
前記ヒップポイントを通る前後方向に直交する断面において、前記第2パッド層は、前記第1パッド層との境界面が、下にいくほど前記クッションパッドの左右方向内側に位置するとともに、下方に向けて凹む形状をなしており、かつ、前記左右のサイドフレームの間に配置され、
前記左右のサイドフレームは、前記第1パッド層の、前記第2パッド層よりも左右方向外側の部分を下から支持しており、
前記第2パッド層は、上下方向において、前記サイドフレームの上端と下端の間に配置されていることを特徴とするシート。
前記第2パッド層は、前記ヒップポイントから左右方向外側へ第1距離までの範囲、前記ヒップポイントから後へ第2距離までの範囲、および、前記ヒップポイントから前へ第3距離までの範囲には配置されていないことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のシート。
左右の前記第2パッド層は、前記ヒップポイントよりも前の少なくとも一部の左右方向の幅が、前にいくほど狭くなっていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のシート。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シートは、長時間座っても疲労感が出にくいことが望ましいが、従来技術ではその点が考慮されていなかった。
【0005】
そこで、本発明は、長時間座っても疲労感を少なくすることができるシートを提供することを目的とする。
また、本発明は、クッションパッドを薄くすることを目的とする。
また、本発明は、座り心地を確保しながら、着座者を安定して支持することを目的とする。
また、本発明は、快適な座り心地を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するため、本発明のシートは、クッションパッドを備えるシートであって、前記クッションパッドは、第1パッド層と、着座者のヒップポイントの左右両側で前記第1パッド層の下に配置された、前記第1パッド層よりも硬い左右の第2パッド層とを有し、前記ヒップポイントを通る前後方向に直交する断面において、前記第2パッド層は、前記第1パッド層との境界面が、下にいくほど前記クッションパッドの左右方向内側に位置するとともに、下方に向けて凹む形状をなしていることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、第2パッド層と第1パッド層の境界面が、下にいくほど左右方向内側に位置するとともに、下方に向けて凹む形状をなしていることで、第2パッド層の境界面を人体の形状に沿わせることができる。そして、人がシートに座ったときには、第2パッド層によって着座者の臀部および大腿部の側部を支持することができるので、坐骨周辺の圧力が相対的に下がり、坐骨周辺と臀部および大腿部の全体で着座者をバランス良く支持することができる。これにより、着座者の坐骨周辺の血行が悪くなりにくくなるので、長時間座っても疲労感を少なくすることができる。
【0008】
前記したシートにおいて、前記クッションパッドは、前記ヒップポイントの左右両側に、表皮材を吊り込むための左右の溝を有し、前記第2パッド層は、左右方向において、対応する前記溝をまたぐように配置されている構成とすることができる。
【0009】
これによれば、第2パッド層が溝の左右方向内側だけに配置される場合と比較して、第2パッド層の左右方向の幅を確保できるので、第2パッド層の境界面を人体、特に、臀部および大腿部の側部の形状に左右に広い範囲で沿わせることができる。これにより、人がシートに座ったときには、第2パッド層によって着座者の臀部および大腿部の側部をしっかりと支えることができるので、長時間座っても疲労感をより少なくすることができる。また、第2パッド層が溝の左右方向外側だけに配置される場合には、第2パッド層が着座者から離れた位置に配置されて第2パッド層の機能を十分に発揮できなくなるおそれがあるが、第2パッド層を左右方向において溝をまたぐように配置することで、第2パッド層の機能を十分に発揮させることが可能となるので、長時間座っても疲労感をより少なくすることができる。
【0010】
前記したシートにおいて、前記第2パッド層は、前記溝よりも左右方向内側の部分が、左右方向内側にいくほど薄くなっている構成とすることができる。
【0011】
これによれば、第2パッド層の厚さが一定である場合と比較して、クッションパッドを薄くすることができる。
【0012】
前記したシートにおいて、前記第1パッド層は、前記溝よりも左右方向内側の部分が、左右方向外側にいくほど薄くなっている構成とすることができる。
【0013】
これによれば、第1パッド層の厚さが一定である場合と比較して、クッションパッドを薄くすることができる。
【0014】
前記したシートにおいて、前記第2パッド層は、前記ヒップポイントよりも後方に、左右方向内側に延びる延出部を有する構成とすることができる。
【0015】
これによれば、着座者の臀部の後側部を軟らかい第1パッド層を介して硬い第2パッド層で支持できるので、座り心地を確保しながら、着座者を安定して支持することができる。
【0016】
前記したシートにおいて、左右の前記第2パッド層は、前記ヒップポイントよりも後方に位置する左右に延びる連結部でつながっている構成とすることができる。
【0017】
これによれば、着座者の臀部の後部全体を軟らかい第1パッド層を介して硬い第2パッド層で支持できるので、座り心地を確保しながら、着座者を安定して支持することができる。
【0018】
前記したシートにおいて、前記連結部は、前記第1パッド層の下に配置され、前記第1パッド層との境界面が、下にいくほど前に位置している構成とすることができる。
【0019】
これによれば、連結部の第1パッド層との境界面によって人体の臀部から腰部にかけての形状に沿った形状が形成されるので、人がシートに座ったときに、硬さの急変を感じないため、快適な座り心地を実現することができる。
【0020】
前記したシートにおいて、前記第2パッド層は、前記ヒップポイントから左右方向外側へ第1距離までの範囲、前記ヒップポイントから後へ第2距離までの範囲、および、前記ヒップポイントから前へ第3距離までの範囲には配置されていない構成とすることができる。
【0021】
これによれば、ヒップポイント付近に硬いに第2パッド層があると、坐骨周辺に圧力がかかりやすくなって疲労感の軽減度合いが低下する可能性があるが、ヒップポイント付近に第2パッド層が配置されていないことで、坐骨周辺の圧力を下げることができる。これにより、着座者の坐骨周辺の血行がより悪くなりにくくなるので、長時間座っても疲労感をより少なくすることができる。
【0022】
前記したシートにおいて、左右の前記第2パッド層は、前記ヒップポイントよりも前の少なくとも一部の左右方向の幅が、前にいくほど狭くなっている構成とすることができる。
【0023】
これによれば、硬い第2パッド層が前にいくほど着座者の大腿部から徐々に離れるように配置されることになるので、人がシートに座ったときに、硬さの急変を感じないため、快適な座り心地を実現することができる。
【0024】
前記したシートにおいては、前後に延びて前記クッションパッドを下から支持する複数の支持部材を備え、前記複数の支持部材は、左右方向中央に配置された第1支持部材と、前記第1支持部材の左右両側に配置された左右の第2支持部材とを含み、前記第2パッド層は、少なくとも前後方向における前記ヒップポイントの位置で、前記第2支持部材の上に配置され、前記第1支持部材の上には配置されていない構成とすることができる。
【0025】
これによれば、ヒップポイントの左右の第2パッド層を左右の第2支持部材によって下から支えることができるので、人がシートに座ったときに、第2パッド層が下に沈み込むのを抑えることができる。これにより、第2パッド層の機能を十分に発揮させることが可能となるので、長時間座っても疲労感をより少なくすることができる。また、ヒップポイント付近の第1パッド層を第1支持部材によって下から支えることができるので、人がシートに座ったときに、軟らかい第1パッド層が沈み込みすぎるのを抑制することができ、快適な座り心地を実現することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、長時間座っても疲労感を少なくすることができる。
【0027】
また、本発明によれば、第2パッド層を左右方向においてクッションパッドの溝をまたぐように配置することで、長時間座っても疲労感をより少なくすることができる。
【0028】
また、本発明によれば、第2パッド層の溝よりも左右方向内側の部分を左右方向内側にいくほど薄くすることで、クッションパッドを薄くすることができる。
【0029】
また、本発明によれば、第1パッド層の溝よりも左右方向内側の部分を左右方向外側にいくほど薄くすることで、クッションパッドを薄くすることができる。
【0030】
また、本発明によれば、第2パッド層のヒップポイントよりも後方に延出部を設けることで、座り心地を確保しながら、着座者を安定して支持することができる。
【0031】
また、本発明によれば、左右の第2パッド層をヒップポイントよりも後方の連結部でつなげることで、座り心地を確保しながら、着座者を安定して支持することができる。
【0032】
また、本発明によれば、第1パッド層の下に配置された連結部の第1パッド層との境界面を下にいくほど前に位置する構成とすることで、快適な座り心地を実現することができる。
【0033】
また、本発明によれば、第2パッド層をヒップポイント付近に配置しないことで、長時間座っても疲労感をより少なくすることができる。
【0034】
また、本発明によれば、左右の第2パッド層のヒップポイントよりも前の少なくとも一部の左右方向の幅を前にいくほど狭くすることで、快適な座り心地を実現することができる。
【0035】
また、本発明によれば、第2パッド層を少なくとも前後方向におけるヒップポイントの位置で第2支持部材の上に配置し、第1支持部材の上には配置しないことで、長時間座っても疲労感をより少なくすることができるとともに、快適な座り心地を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付の図面を参照しながら、発明の一実施形態について説明する。なお、本明細書において、前後、左右、上下は、シートに座った者(着座者)から見た、前後、左右、上下を基準とする。
図1に示すように、本実施形態のシートは、自動車に搭載される車両用シートSとして構成されており、シートクッションS1と、シートバックS2と、ヘッドレストS3とを備えている。
【0038】
車両用シートSの内部には、
図2に示すようなシートフレームFが内蔵されている。シートフレームFは、シートクッションS1の骨格を構成するクッションフレームF1と、シートバックS2の骨格を構成するバックフレームF2と、ヘッドレストS3の骨格を構成する図示しないヘッドレストフレームとを備えている。車両用シートSは、シートフレームFに、ウレタンフォームなどからなるパッド材と、布地や皮革などからなる表皮材を被せることで構成されている。
【0039】
クッションフレームF1は、左右に離間して配置され、前後方向に延びる左右のサイドフレーム21と、左右のサイドフレーム21の前端部同士を連結するフロントフレーム22と、左右のサイドフレーム21の後端部同士を連結するリアフレーム23とを備えている。
【0040】
各サイドフレーム21は、左右方向を向く側壁部21Aと、側壁部21Aの上端から左右内側へ延出する上フランジ21Bと、側壁部21Aの下端から左右内側へ延出する下フランジ21Cとを備えている。
フロントフレーム22は、金属板からなるフレーム、いわゆるパンフレームである。フロントフレーム22には、上側の面に、左右に離間して4つ並んで配置されたフック22Aが、フロントフレーム22を構成する板金を切り起こすことで設けられている。
リアフレーム23は、パイプからなるフレームである。リアフレーム23には、左右に離間して4つ並んで配置されたフック23Aが設けられている。
【0041】
クッションフレームF1には、フロントフレーム22とリアフレーム23に、複数の支持部材の一例としての4つのSバネ30が架設されている。各Sバネ30は、左右方向に交互に屈曲しながら前後方向に延びる弾性変形可能な部材であり、後述するクッションパッド40を下から支持する(
図4参照)。4つのSバネ30は、左右に並んで配置されており、第1支持部材の一例としての第1Sバネ31と、第2支持部材の一例としての第2Sバネ32とを含んでいる。
【0042】
第1Sバネ31は、クッションフレームF1の内側の左右方向中央に2つ配置されている。第1Sバネ31は、着座者の坐骨の真下付近を通るように配置されている。
【0043】
第2Sバネ32は、クッションフレームF1の内側で第1Sバネ31の左右両側に1つずつ、合計2つ配置されている。言い換えると、左右の第2Sバネ32は、左右に離間して配置されており、その間に2つの第1Sバネ31が配置されている。第2Sバネ32は、着座者の坐骨の最も下方に突出している部分よりも全体的に左右外側に配置されている。詳しくは、第2Sバネ32は、左右方向における中心位置が、着座者の坐骨の最も下方に突出している部分の左右外側に配置されている。2つの第2Sバネ32の左右方向における中心位置同士の距離(ピッチ)D1は、例えば、21〜27cm、望ましくは22〜26cmとなっている。
【0044】
第1Sバネ31および第2Sバネ32の前端は、それぞれフロントフレーム22に設けられたフック22Aに掛止され、第1Sバネ31および第2Sバネ32の後端は、それぞれリアフレーム23に設けられたフック23Aに掛止されている。これにより、第1Sバネ31および第2Sバネ32は、フロントフレーム22とリアフレーム23に架け渡すように設けられている。
【0045】
クッションフレームF1には、
図3および
図4に示すようなパッド材としてのクッションパッド40と、表皮材50が被せられている。
クッションパッド40は、中央部41と、中央部41の左右両側に設けられて中央部41よりも上側に張り出した左右の側部42とを有している。また、クッションパッド40は、表皮材50を吊り込むための吊り込み溝43を有している。
【0046】
吊り込み溝43は、前後方向に延びる左右の第1溝43Aと、左右方向に延びる第2溝43Bおよび第3溝43Cとを含んでいる。
左右の第1溝43Aは、溝の一例であり、ヒップポイントHPの左右両側において、中央部41と各側部42との境界部に沿って延びるように形成されている。なお、本明細書において、ヒップポイントHPは、SAE J−826に基づく3Dマネキンをシートに着座させたときのヒップポイントの位置である。
第2溝43Bは、ヒップポイントHPの前側において、左右の第1溝43Aの前後方向中央部付近同士をつなぐように形成されている。
第3溝43Cは、ヒップポイントHPの後側において、左右の第1溝43Aの後部同士をつなぐように形成されている。
【0047】
クッションパッド40には、表皮材50を吊り込み溝43内に吊り込むための吊りワイヤ44がインサート成形により埋設されている。吊りワイヤ44は、吊り込み溝43に沿うように配置され、吊り込み溝43の底部に形成された複数の穴45から部分的に露出している。表皮材50は、フック部材55を、吊りワイヤ44の露出した部分に係合させることでクッションパッド40に留められている。
【0048】
本実施形態において、クッションパッド40は、第1パッド層100と、第1パッド層100よりも硬い左右の第2パッド層200とを有している。
第1パッド層100は、クッションパッド40の上側の層(表層)を形成する部分である。
【0049】
第2パッド層200は、クッションパッド40の下側の層を形成する部分であり、第1パッド層100の下に配置されている。
図3に示すように、左右の第2パッド層200は、それぞれ、前後方向に延びる本体部210と、本体部210の後端部から左右方向内側に延びる延出部220とを有している。左右の第2パッド層200の延出部220は、互いにつながって一体となっており、連結部230を構成している。このため、左右の第2パッド層200は、左右に延びる連結部230でつながった略U字形状をなしている。本実施形態において、左右の第2パッド層200は、本体部210および延出部220(連結部230)の両方が第1パッド層100の下に配置されている。すなわち、第2パッド層200は、クッションパッド40の上側(表側)には露出していない。
【0050】
左右の第2パッド層200は、本体部210が着座者のヒップポイントHPの左右両側の位置で左右に離間して配置されている。各第2パッド層200は、本体部210が、前後方向において、第2溝43B付近から第1溝43Aの後端部付近までの範囲にわたるように配置されている。
【0051】
また、各第2パッド層200は、本体部210が、左右方向において、対応する第1溝43Aをまたぐように配置されている。具体的には、左の第2パッド層200の本体部210が左の第1溝43Aをまたぐように配置されており、右の第2パッド層200の本体部210が右の第1溝43Aをまたぐように配置されている。詳しくは、各本体部210は、左右方向に所定の幅を有しており、対応する第1溝43Aの下に配置されている。そして、各本体部210は、左右外側の縁が対応する第1溝43Aよりも左右外側に配置されており、左右内側の縁が対応する第1溝43Aよりも左右内側に配置されている。
【0052】
また、左右の第2パッド層200は、各延出部220(連結部230)が、ヒップポイントHPよりも後方に位置している。詳しくは、各延出部220(連結部230)は、第3溝43Cの後側に配置されている。
【0053】
第2パッド層200は、上下方向から見て、ヒップポイントHPから左右方向外側へ第1距離D11までの範囲、ヒップポイントHPから後へ第2距離D12までの範囲、および、ヒップポイントHPから前へ第3距離D13までの範囲には配置されていない。すなわち、第2パッド層200は、上下方向から見て、ヒップポイントHPの周囲の所定の範囲には配置されていない。なお、本実施形態においては、第2パッド層200は、第2溝43Bよりも前には配置されていない。
【0054】
また、上下方向から見て、第2パッド層200は、前後方向におけるヒップポイントHPの位置で、第2Sバネ32の上に配置され、第1Sバネ31の上には配置されていない。詳しくは、左の第2パッド層200は、本体部210が左の第2Sバネ32の後部の上に配置されており、右の第2パッド層200は、本体部210が右の第2Sバネ32の後部の上に配置されている。一方、左右の第2パッド層200の本体部210は、左右中央の第1Sバネ31の上には配置されていない。言い換えると、本体部210は、第1Sバネ31に対し左右方向外側にずれた位置に配置されている。なお、本実施形態において、左右の第2パッド層200は、各延出部220(連結部230)が第1Sバネ31の後端部の上に配置されている。
【0055】
図4に示すように、ヒップポイントHPを通る前後方向に直交する断面において、第2パッド層200の本体部210は、第1パッド層100との境界面211が、下にいくほどクッションパッド40の左右方向内側に位置するとともに、下方に向けて凹む形状をなしている。詳しくは、境界面211は、左右内側に向けて下方へ傾斜する傾斜面として形成されており、さらに、左右内側に向かうほど水平面となす角度が徐々に小さくなるような凹曲面形状をなしている。
【0056】
また、第2パッド層200の本体部210は、下側の面である下面212が、水平面に略平行な平面となっている。第2パッド層200の本体部210は、境界面211が左右内側に向けて下方へ傾斜する傾斜面となっており、下面212が水平面に略平行な平面となっていることで、特に左右の第1溝43A(一点鎖線参照)よりも左右方向内側の部分の厚さ(上下の長さ)が、左右方向内側にいくほど薄くなっている略三角形状をなしている。
【0057】
一方、第1パッド層100は、左右の第1溝43Aよりも左右方向内側の部分、詳しくは、本体部210の第1溝43Aよりも左右方向内側の部分の上に配置された部分が、左右方向外側にいくほど薄くなっている。このため、クッションパッド40の第1溝43Aよりも左右方向内側の部分である中央部41は、その厚さが、左右方向において略一定な比較的薄い形状をなしている。
【0058】
図5に示すように、ヒップポイントHPを通る左右方向に直交する断面において、第2パッド層200の連結部230は、第1パッド層100との境界面231が、下にいくほど前に位置するとともに、下方に向けて凹む形状をなしている。詳しくは、境界面231は、前に向けて下方へ傾斜する傾斜面として形成されており、さらに、前に向かうほど水平面となす角度が徐々に小さくなるような凹曲面形状をなしている。
【0059】
クッションパッド40の下側の面(裏面)には、シート部材60が配置されている。シート部材60は、クッションパッド40の剛性を向上させるとともに、クッションパッド40の裏面に切れ目などが生じることや、路面からの雑音を抑えるために設けられるシート状の部材である。このようなシート部材60としては、例えば、不織布や粗毛布などを用いることができる。
【0060】
次に、以上のように構成された車両用シートSの作用効果について説明する。
図6に示すように、車両用シートSのシートクッションS1は、左右両側で第1パッド層100の下に配置された第2パッド層200の、本体部210と第1パッド層100の境界面211が、左右内側に向けて下方へ傾斜する傾斜面であり、かつ、凹曲面形状をなしていることで、境界面211を人体の形状に沿わせることができる。
【0061】
そして、人(着座者P)が車両用シートSに座ったときには、第2パッド層200によって着座者Pの臀部および大腿部の側部を左右外側から挟むように支持することができるので、第2パッド層200が配置されていない場合と比較して、着座者Pの臀部および大腿部の側部をしっかりと支えることができる。その結果、坐骨P1(正確には、坐骨P1の最も下に突出したところ。以下同様。)の周辺の圧力が相対的に下がるので、坐骨P1の周辺と臀部および大腿部の全体で着座者Pをバランス良く支持することができる。これにより、着座者Pの坐骨P1の周辺の血行が悪くなりにくくなるので、長時間座っても着座者Pの疲労感を少なくすることができる。
【0062】
また、各第2パッド層200が、左右方向において、対応する第1溝43Aをまたぐように配置されているので、第2パッド層200が第1溝43Aの左右内側だけに配置される場合と比較して、第2パッド層200(本体部210)の左右方向の幅を確保することができる。その結果、本体部210と第1パッド層100の境界面211を、人体、特に、臀部および大腿部の側部の形状に左右に広い範囲で沿わせることができるため、着座者Pが車両用シートSに座ったときには、第2パッド層200によって着座者Pの臀部および大腿部の側部をよりしっかりと支えることができ、長時間座っても疲労感をより少なくすることができる。
【0063】
また、第2パッド層が第1溝43Aの左右外側だけに配置される場合には、第2パッド層が着座者Pから離れた位置に配置されることになるので、疲労感を少なくするという第2パッド層の機能を十分に発揮できなくなるおそれがあるが、第2パッド層200を第1溝43Aをまたぐように配置することで、第2パッド層200の機能を十分に発揮させることが可能となる。これにより、長時間座っても疲労感をより少なくすることができる。
【0064】
また、第2パッド層200の第1溝43Aよりも左右内側の部分が内側にいくほど薄くなっているので、第2パッド層の厚さが一定である場合と比較して、長時間座っても疲労感の少ないという機能を有するクッションパッド40を薄くすることができる。
【0065】
また、第1パッド層100の第1溝43Aよりも左右内側の部分が外側にいくほど薄くなっているので、第1パッド層の厚さが一定である場合と比較して、長時間座っても疲労感の少ないという機能を有するクッションパッド40を薄くすることができる。
【0066】
また、第2パッド層200が延出部220を有するので、着座者Pの臀部の後側部を軟らかい第1パッド層100を介して硬い第2パッド層200で支持できるので、座り心地を確保しながら、着座者Pを安定して支持することができる。
【0067】
特に、本実施形態では、左右の第2パッド層200が連結部230でつながっているので、着座者Pの臀部の後部の全体を軟らかい第1パッド層100を介して硬い第2パッド層200で支持できるので、座り心地を確保しながら、着座者Pをより安定して支持することができる。
【0068】
また、連結部230と第1パッド層100の境界面231が前に向けて下方へ傾斜する凹曲面状の傾斜面であるので、境界面231によって人体の臀部から腰部にかけての形状に沿った形状が形成されることになる。これにより、着座者Pが車両用シートSに座ったときに、硬さの急変を感じないため、快適な座り心地を実現することができる。
【0069】
また、ヒップポイントHP付近に硬い第2パッド層があると、坐骨P1の周辺に圧力がかかりやすくなって疲労感の軽減度合いが低下する可能性があるが、本実施形態では、ヒップポイントHPの周囲の所定の範囲に第2パッド層200が配置されていないので、ヒップポイントHP付近に第2パッド層が配置される場合と比較して、坐骨P1の周辺の圧力をより確実に下げることができる。これにより、坐骨P1の周辺の血行がより悪くなりにくくなるので、長時間座っても疲労感をより少なくすることができる。
【0070】
また、第2パッド層200の本体部210が第2Sバネ32の上に配置されているので、ヒップポイントHPの左右の第2パッド層200(本体部210)を左右の第2Sバネ32によって下から支えることができる。その結果、着座者Pが車両用シートSに座ったときに、第2パッド層200が下に沈み込むのを抑えることができる。これにより、第2パッド層200の機能を十分に発揮させることが可能となるので、長時間座っても疲労感をより少なくすることができる。
【0071】
また、クッションパッド40の左右方向中央の下に第1Sバネ31が配置されていることで、ヒップポイントHP付近の第1パッド層100を第1Sバネ31によって下から支えることができる。これにより、着座者Pが車両用シートSに座ったときに、軟らかい第1パッド層100が沈み込みすぎるのを抑制することができるので、快適な座り心地を実現することができる。
【0072】
以上、発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、下記のように発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、左右の第2パッド層200が連結部230でつながっていたが、これに限定されない。例えば、
図7に示すように、左右の第2パッド層200は、延出部220がつながっていない構成であってもよい。
【0073】
また、前記実施形態では、第2パッド層200が第2溝43Bよりも前には配置されていない構成であったが、これに限定されない。例えば、
図8に示すように、左右の第2パッド層200は、第2溝43Bより前にも配置されていてもよい。詳しくは、
図8に示す形態では、各第2パッド層200の本体部210は、前後方向において、クッションパッド40の前端部から後端部までの範囲にわたって第1溝43Aに沿うように配置されている。
【0074】
また、
図8に示す形態では、左右の第2パッド層200は、ヒップポイントHPよりも前の少なくとも一部、具体的には、本体部210の、第2溝43Bよりも前側の部分の左右方向の幅が、前にいくほど徐々に狭くなっている。詳しくは、本体部210は、第2溝43Bよりも前側の部分の左右方向外側の縁が、前後方向に沿って略まっすぐ延びているのに対し、第2溝43Bよりも前側の部分の左右方向内側の縁が、前にいくほど左右方向外側に位置している。このような構成によれば、硬い第2パッド層200が前にいくほど着座者の大腿部から徐々に離れるように配置されることになるので、着座者が車両用シートSに座ったときに、硬さの急変を感じないため、快適な座り心地を実現することができる。
【0075】
また、前記実施形態では、第2パッド層200が、ヒップポイントHPの左右両側で前後に延びる本体部210と、ヒップポイントHPよりも後方で左右内側に延びる延出部220とを有していたが、これに限定されない。例えば、
図9に示すように、第2パッド層200は、延出部を備えない構成であってもよい。なお、第2パッド層200によって着座者の臀部および大腿部の側部をしっかりと支え、坐骨P1の周辺の圧力を相対的に下げるという作用を得るためには、第2パッド層200は、少なくともヒップポイントHPの左右両側に配置されていれば足りる。
【0076】
また、
図9に示す形態では、第2パッド層200は、前後方向にわたって、第2Sバネ32の上には配置されているが、第1Sバネ31の上には配置されていない。言い換えると、
図9に示す形態では、左右の第2パッド層200は、第1Sバネ31の上に配置される部分を有していない。
【0077】
また、前記実施形態では、第2パッド層200と第1パッド層100の境界面211が、左右内側に向けて下方へ傾斜する傾斜面であり、かつ、凹曲面形状をなしていたが、この形状は、人体の形状に沿わせて徐々に変化させることが望ましい。すなわち、左右の第2パッド層の第1パッド層との境界面は、人体の形状になるべく沿っていることが望ましい。
【0078】
また、前記実施形態では、第1支持部材としての第1Sバネ31が左右方向中央に2つ配置されていたが、これに限定されず、例えば、1つだけ配置されていてもよいし、3つ以上配置されていてもよい。また、前記実施形態では、第2支持部材としての第2Sバネ32が第1Sバネ31の左右両側に1つずつ配置されていたが、これに限定されず、左右両側にそれぞれ複数配置されていてもよい。また、前記実施形態では、支持部材としてSバネ30を例示したが、これに限定されず、例えば、Sバネ以外のワイヤ状の部材であってもよいし、板状の部材であってもよい。また、前記実施形態では、第1支持部材と第2支持部材の両方が同じ構成の支持部材(Sバネ30)であったが、これに限定されず、例えば、一方がワイヤ状の部材で、他方が板状の部材であるというように、異なる構成の支持部材であってもよい。
【0079】
なお、前記実施形態では、支持部材としてのSバネ30を、フロントフレーム22やリアフレーム23に設けられたフック22A,23Aに掛止することでクッションフレームF1に取り付けていたが、支持部材の取付方法は特に限定されない。例えば、支持部材は、ねじ止めや溶接などによって取り付けてもよいし、フック22A,23A以外の取付部品を用いて取り付けてもよい。
【0080】
また、前記実施形態では、第2パッド層200が、クッションパッド40の下側に露出するように、第1パッド層100の下側に配置されていたが、これに限定されない。例えば、第2パッド層は、クッションパッドの下側に露出しないように、第1パッド層に埋設された状態で配置されていてもよい。
【0081】
また、前記実施形態では、クッションパッド40が第1パッド層100と第2パッド層200の2つの層を有する構成であったが、これに限定されず、例えば、第1パッド層および第2パッド層のほかに1層以上の層を有する構成であってもよい。この場合、第1パッド層および第2パッド層以外の層を、上下方向において、第1パッド層と第2パッド層の間に配置してもよい。
【0082】
また、前記実施形態では、第1パッド層100および第2パッド層200が、それぞれ単一のパッド材(部品)からなる構成であったが、これに限定されず、それぞれ複数の部品からなる構成であってもよい。すなわち、第1パッド層100および第2パッド層200の少なくとも一方は、複数の部品を組み立ててなる構成であってもよい。また、第1パッド層100および第2パッド層200の少なくとも一方は、複数の層を有するものであってもよい。この場合、各層の硬さは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0083】
また、前記実施形態では、シートとして自動車に搭載される車両用シートSを例示したが、これに限定されず、自動車以外の乗物、例えば、鉄道車両や船舶、航空機などに搭載される乗物用シートであってもよい。また、シートは、乗物用のシートに限定されず、例えば、家庭などで使用されるシートであってもよい。
【0084】
また、前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。