特許第6670004号(P6670004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6670004潜在的エネルギー伝達によって冷却するシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670004
(24)【登録日】2020年3月3日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】潜在的エネルギー伝達によって冷却するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20200309BHJP
   F28C 3/08 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   F24F5/00 101Z
   F28C3/08 Z
【請求項の数】18
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-522550(P2017-522550)
(86)(22)【出願日】2015年10月27日
(65)【公表番号】特表2017-535741(P2017-535741A)
(43)【公表日】2017年11月30日
(86)【国際出願番号】AU2015000642
(87)【国際公開番号】WO2016065395
(87)【国際公開日】20160506
【審査請求日】2018年4月10日
(31)【優先権主張番号】2014904294
(32)【優先日】2014年10月27日
(33)【優先権主張国】AU
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517141524
【氏名又は名称】インテックス ホールディングス ピーティーワイ エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ディヴィス,ロジャー,フィリップ
【審査官】 五十嵐 康弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−215680(JP,A)
【文献】 特表平11−504105(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/056249(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0109052(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0073290(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0150481(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 5/00
F24F 3/00−3/16
F28C 1/00−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体冷却システムであって:
第1タンクの中に保持された熱伝達流体であって、前記第1タンクの中で表面エリアを有する熱伝達流体と;
前記熱伝達流体が前記第1タンクの中にある間に、空気が前記熱伝達流体の前記表面エリアを横切ることを許可する又は強制する手段であって、
前記空気の湿球温度は、あるプロセス又はある場所から熱エネルギーを除去するのに十分な、前記熱伝達流体の要求される温度とほぼ等しい温度、又は該要求される温度よりも低い温度にあり、それによって、前記空気は、前記熱伝達流体の温度が、蒸発手段によって、前記要求される温度とほぼ等しい温度まで下げられるか、又は該要求される温度とほぼ等しい温度に維持されることを引き起こす、手段と;
を含み、
前記プロセス又は前記場所で要求される冷却された熱伝達流体が、前記第1タンクから前記第1タンクから前記プロセス又は前記場所に移送され、
前記冷却された熱伝達流体が、前記プロセス又は前記場所からの熱を吸収し、温められたた戻り流体となることによって使用され、
前記流体冷却システムは、前記プロセス又は前記場所から温められた戻り熱伝達流体が移送される、パイプ配管を介して前記第1タンクと常時直列に連通された第2タンクと、前記第2タンクから流出した任意量の温められた熱伝達流体を、要求される温度と同等になるまで保持するための第3流出タンクとを含む、流体冷却システム。
【請求項2】
請求項1に記載の流体冷却システムであって、
前記熱伝達流体は小滴の形をしており、それによって、各小滴は、前記熱伝達流体の前記表面エリアの一部を形成する小滴表面エリアを有し、この小滴表面エリアを横切ることを、前記空気は許可され又は強制され、前記プロセス又は前記場所で要求される冷却された熱伝達流体は、前記冷却された小滴を受容する前記第1タンクから移送される、流体冷却システム。
【請求項3】
請求項1に記載の流体冷却システムであって、
前記温められた戻り熱伝達流体は、ある時間期間の間前記第2タンクに保持され、前記第1タンクへ移送されると共に前記第1タンクの中の熱伝達流体と混ざることが防止され、それによって、前記要求される温度で、又は前記要求される温度の近くで、前記第1タンクの中の熱伝達流体を維持する、流体冷却システム。
【請求項4】
請求項3に記載の流体冷却システムであって、
前記第2タンク中の熱伝達流体が、前記要求される温度とほぼ等しい温度、又は前記要求される温度に近い温度にある場合、前記第2タンク中の熱伝達流体が前記第1タンクへ移送される、流体冷却システム。
【請求項5】
請求項4に記載の流体冷却システムであって、
前記プロセス又は前記場所から戻る温められた戻り熱伝達流体は、前記第2タンクの上方部分に受容され、且つ冷却された熱伝達流体は、前記第2タンクの下方部分から、前記第1タンクの上方部分へ移送される、流体冷却システム。
【請求項6】
請求項4に記載の流体冷却システムであって、
前記第2タンクは、空気が前記第2タンクの中の熱伝達流体の表面エリアを横切ることを許可する又は強制するための手段を含み、前記空気の湿球温度は、前記第2タンクの中の熱伝達流体の温度とほぼ等しい温度、又は前記第2タンクの中の熱伝達流体の温度よりも低い温度にあり、その結果として、前記第2タンクの中の熱伝達流体の温度が、蒸発手段によって下げられることを引き起こす、流体冷却システム。
【請求項7】
請求項6に記載の流体冷却システムであって、
前記第2タンクからの流出は、周囲条件が前記第2タンクの中の熱伝達流体の蒸発冷却を許すまで続く、流体冷却システム。
【請求項8】
請求項7に記載の流体冷却システムであって、
前記第2タンクからの熱伝達流体が前記第1タンクへ移送される場合、前記第3タンクからの熱伝達流体は、前記第2タンクへ移送される、流体冷却システム。
【請求項9】
請求項8に記載の流体冷却システムであって、
前記第3タンクの中の熱伝達流体の温度が前記要求される温度と同等である場合、前記第3タンクの中の熱伝達流体は、前記第1タンクのための補給熱伝達流体のソースとして使用される、流体冷却システム。
【請求項10】
請求項9に記載の流体冷却システムであって、
前記第3タンクの中の熱伝達流体の温度が、空気が前記第3タンクの中の流体の表面エリアを横切ることを許可する又は強制することによって下げられ、前記空気の湿球温度は、前記第3タンクの中の熱伝達流体の温度とほぼ等しい温度、又は該熱伝達流体の温度よりも低い温度にある、流体冷却システム。
【請求項11】
請求項1に記載の流体冷却システムであって、
前記要求される温度とほぼ等しい温度、又は前記要求される温度よりも低い温度にある湿球温度を有する空気を作り出すために、周囲空気の湿球温度を減少させる手段を、更に含む、流体冷却システム。
【請求項12】
請求項11に記載の流体冷却システムであって、
周囲空気の前記湿球温度を減少させる手段は、前記周囲空気の絶対湿度を減少させる除湿プロセスである、流体冷却システム。
【請求項13】
請求項12に記載の流体冷却システムであって、
前記除湿プロセスは、あるスペースに入る前に空気を処理するための空気処理システムの一部を形成し、前記空気処理システムは、前記除湿プロセスの上流又は下流に冷却プロセスを更に含む、流体冷却システム。
【請求項14】
請求項13に記載の流体冷却システムであって、
前記要求される温度にほぼ近い温度まで下げられる、又は該要求される温度にほぼ近い温度に維持される熱伝達流体は、熱エネルギーを除去するための冷却プロセスへ移送される、流体冷却システム。
【請求項15】
請求項13に記載の流体冷却システムであって、
前記熱伝達流体の表面エリアを横切ることを許可される又は強制される前記空気は、前記スペースから供給される空気であり、この空気は十分に低い湿球温度を有し、その結果、前記熱伝達流体の温度が、蒸発手段によって、前記要求される温度にほぼ近い温度まで下げられる、又は該要求される温度とほぼ近い温度に維持される、流体冷却システム。
【請求項16】
請求項13に記載の流体冷却システムであって、
前記スペースは、住宅若しくはビルディング内部、又は、スポーツスタジアムの内部若しくは動物畜舎の何れかを含む、部分的に囲まれたエリアである、流体冷却システム。
【請求項17】
請求項1に記載の流体冷却システムであって、
前記空気が前記体積の熱伝達流体の前記表面エリアを横切ることを強制するための前記手段は、空気が制御された速度で移動することを誘発する、1つ以上の換気ファンの形をしている、流体冷却システム。
【請求項18】
請求項1に記載の流体冷却システムであって、
前記熱伝達流体は水であり、
前記第1タンク又は前記第2タンクは、予想される最も長い期間に等しい持続期間の間、前記プロセス又は前記場所に対して要求されるような冷却水を供給するのに十分な体積を有し、ここで該予想される最も長い期間が経過すれば、蒸発冷却は、上昇した湿球温度のために、効果的ではなくなる、流体冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜在的エネルギー伝達による冷却のシステム及び方法に関し、且つ、特に、不必要な低温熱エネルギーを、取り巻く周囲環境に放出することによって、流体を冷却するためのシステム及び方法に関し、ここで冷却には、換気される空気が熱伝達流体の表面エリアを横切ることを許可される又は強制されることを含む流体蒸発プロセスを利用する。本発明は、更に、空気を冷却するために、及び換気空気を蒸発プロセスに供給するために、冷却された熱伝達流体を利用する空気処理システムに関する。液体の集合体は、普及している湿球温度近くまで冷却され、これによって、不必要な熱エネルギーを周囲に放出し、ある場所から又はあるプロセスにおいて、不必要な熱エネルギーを除去するための冷却媒体として、液体を適切なものにする。
【背景技術】
【0002】
周囲にとって不必要な熱エネルギーを除く、信頼できる方法がしばしば要求されるが、そのような方法は、例えば、多くの工業的プロセス及び製造プロセスの一部として、及び占有されたビルディングの暖房、換気及び冷房(HVAC)技術において要求される。この要求は、温帯性気候及び熱帯性気候の両方において存在する。熱エネルギーを周囲環境に放出することは、熱伝達流体に、伝導性及び/又は放射性の熱交換器表面を通過させることによって達成可能であり、該熱交換器表面では、流体の温度は、周囲の乾球温度よりも高い。
【0003】
伝達流体温度が周囲の乾球温度に近い場合、要求される量の熱エネルギーを放出するには、比較的大きな熱交換器表面が要求される。周囲温度が伝達流体の温度を超える場合、熱エネルギーの有利な伝達は起こり得ない。これらの環境においは、伝達流体の温度を周囲温度の十分上まで上昇させるために、熱ポンプ(逆ランキンサイクル)を使用することが一般に用いられ、その結果として、必要な冷却効果を提供するのに適した温度まで、膨張によって流体を冷却する前に、環境への不必要な熱エネルギーの伝達が、放射、対流、及び/又は伝導によって容易に起こり得る。
【0004】
放射伝達、又は熱交換器を通した対流伝達に対する代替案として、伝達流体(通常は水)の直接蒸発を使用して、周囲環境にエネルギーを伝達してもよい。直接蒸発は、水の蒸発の潜熱、又は液体の集合体からの他の流体蒸気を、周囲空気の中に伝達することを含み、その場合、残りの液体の集合体での顕熱エネルギーにおける対応する降下が、温度減少に帰着する。この方法は、例えば、冷却塔の中で使用されるが、ここで冷却塔は、通常、熱エネルギーを(熱交換器の中の)伝達流体から、蒸発する水滴に伝達するための熱交換機と結合されており、このことが、伝達流体の温度における降下に帰着する。
【0005】
蒸発冷却の1つの利点として、次のことが挙げられる。即ち、熱エネルギー伝達は、周囲乾球温度未満の場合であってさえも、湿球温度(これは、幾つかの実例において、乾球温度よりも10℃又はそれ以上低いかもしれない)と同程度に低い場合に対してさえも、継続することが可能であり、従って、冷却塔の中の熱交換器をまたぐ温度差を増加させる。温度伝達を、周囲の乾球温度から得られるよりも高い温度差で達成できる場合、ある与えられた熱負荷に対して、より小さな熱交換器を使用してもよい。代わりに、周囲への不必要な熱エネルギーの、要求される伝達を達成するためには、ヒートシンクとしての冷却塔からの伝達流体を使用している逆ランキン(Rankine)サイクル熱ポンプによって、より少ないエネルギーを消費してもよい。しかしながら、間接的接触の冷却塔技術の場合、熱交換器をまたぐ熱伝達は、常に伝達流体の温度が、普及している湿球温度の少なくとも数度上にある、ということに帰着する。
【0006】
冷却塔だけを使用することは、多くの気候において有効ではない。その理由は、夏季の十分に長い時間期間の間、有用に冷却された伝達流体を作り出すほどには、湿球温度が十分に低く下がらないからである。温度差が小さい場合、非常に大きな表面エリア及び非常に大きな流速が要求され、このことは、高エクセルギーの電気的/機械的エネルギーの形態にある冷却塔を動作させるために、より大きなエネルギーを必要とする。ここで高エクセルギーの電気的/機械的エネルギーは、通常、化石燃料から動力を受ける発電機、又は他の発電機によって供給される。
【0007】
他の一般的に使用される技術である逆ランキンサイクルは、低品質の熱エネルギー(低エクセルギー)を除去するために、より大きな入力の高品質の電気的/機械的エネルギー(高エクセルギー)さえをも要求し、これは、高い程度の不可逆的エネルギー変換(エクセルギーの損失)に帰着する。熱ポンプに対して電気を確実に提供するためには、該高い程度の不可逆的エネルギー変換は、通常、化石燃料の燃焼又は核動力サイクルを要求する。エネルギーサイクルにおけるこれらの燃料の使用を低減するために、広範囲にわたる願望が存在する。
【0008】
本発明の目的は、前述の問題の少なくとも幾つかを克服すること、又は有用な代替案を社会一般に提供することである。
【0009】
本明細書に含まれている記録、行為、材料、装置、物品などに関する任意の議論は、単に本発明に対する背景を提供する目的のためのものである。任意の又は全てのこれまでの議論が、先行技術の基礎の一部を形成するか、又は、本出願における請求項のいずれかの優先日の前に存在していたような、本発明の分野においてありふれた一般的知識であったということは、認められるべきではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
一態様によれば、本発明は、流体冷却システムを提供し、この流体冷却システムは:
表面エリアを含むある体積の熱伝達流体と;
ある体積の空気が、該体積の熱伝達流体の表面エリアを横切ることを許可する又は強制するための手段であって、空気の湿球温度は、あるプロセス又は場所から熱エネルギーを除去するのに十分な、熱伝達流体の要求される温度とほぼ等しい温度、又は熱伝達流体の要求される温度よりも低い温度にあり、それによって、該体積の空気は、前記流体の温度が、蒸発によって、前記要求される温度とほぼ等しい温度まで下げられる、又は該ほぼ等しい温度に維持されることを引き起こす、手段と;
を含む。
【0011】
一実施形態において、要求される温度は、流体のほぼ最高温度であり、この最高温度より上では、流体は温かすぎて、流体への伝達に際して、目標プロセス又は目標場所から、望ましい熱エネルギーの除去を引き起こすことができない。湿球温度が要求される流体温度よりも低い場合に、最も有効な冷却が起こるかもしれないのに対して、湿球温度が、要求される温度とほぼ等しい場合には、若干の冷却効果しか起こらないかもしれない。「熱伝達流体の温度とほぼ等しい温度で、又は熱伝達流体の温度よりも低い温度で」という用語は、流体の有効な冷却が起こるという、これらの可能なシナリオの各々を包含することが意図されている。
【0012】
一実施形態において、該体積の熱伝達流体はタンクの中に保持され、且つ該体積の空気は、タンクの中の流体の集合体の上部表面エリアを横切ることを許可され又は強制され、そこでは、前記プロセス又は場所で要求される冷却された流体が、前記タンクから移送される。
【0013】
代替的実施形態において、該体積の熱伝達流体は小滴の形をしており、それによって、各小滴は、小滴表面エリアを有し、この小滴表面エリアは、該体積の熱伝達流体の表面エリアの一部を形成し、該体積の空気は、該体積の熱伝達流体の表面エリアを横切ることを許可され又は強制され、そこでは、前記プロセス又は場所で要求される冷却された流体が、冷却された小滴を受容するタンクから移送される。
【0014】
上の冷却された小滴を受容することに対する関連では、タンクの中に冷却された小滴を直接受容することであってもよく、又は状況によっては、小滴を間接的に受容することであってもよく、その場合、例えば、タンクは、冷却された小滴が移送される貯蔵タンクである。
【0015】
一実施形態において、冷却システムは単一のタンクを含み、この単一タンクから、冷却された流体が、プロセス又は場所へ移送され、且つ単一タンクの中に、温められた流体が、プロセス又は場所から戻される。
【0016】
一実施形態において、前記体積の熱伝達流体は十分に多量であり、そのため、前記流体の温度は、プロセス又は場所からの戻り流体を付加することによって、ある程度を超えて上昇しない。ここである程度とは、プロセス又は場所から熱エネルギーを除去することにおいて、流体がもはや有用でなくなる程度のことである。
【0017】
一実施形態において、戻り流体は、タンクの上方部分に受容され、且つ冷却された流体は、タンクの下方部分から、場所又はプロセスへ移送される。
【0018】
代替的実施形態において、冷却システムは2つのタンクを含む。第1タンクは、自身から、ほぼ要求される温度まで又は要求される温度未満に冷却された流体が、プロセス又は場所に移送されるタンクである。第2タンクは、自身へ、温かい戻り流体が、場所又はプロセスから移送されるタンクである。
【0019】
一実施形態において、温かい方の流体は、第2タンクの中に保持され、且つ、ある時間期間の間、第1タンクへ移送されると共に第1タンクの中の流体と混ざることが防止され、それによって、第1タンクの中の流体を、前記要求される温度で、又は前記要求される温度の近くで維持する。
【0020】
一実施形態において、第2タンクの中の流体が、ほぼ前記要求される温度、又はそれに近い温度の場合、第2タンクの中の流体は、第1タンクに移送される。
【0021】
一実施形態において、プロセス又は場所から戻る温められた流体は、第2タンクの上方部分に受容され、且つ冷却された流体は、第2タンクの下方部分から、第1タンクの上方部分へ移送される。
【0022】
一実施形態において、第2タンクは、ある体積の空気が、第2タンクの中の熱伝達流体の表面エリアを横切ることを許可する又は強制するための手段を含み、空気の湿球温度は、第2タンクの中の熱伝達流体の温度とほぼ等しい温度、又は熱伝達流体の温度よりも低い温度にあり、その結果として、第2タンクの中の熱伝達流体の温度が蒸発手段によって下げられることを引き起こす。
【0023】
一実施形態において、システムは、第2タンクから流出した任意量の温かい流体を維持するための、第3の流出タンクを含むが、ここで流出は、条件が第2タンクの中の流体の蒸発冷却を許すまで続く。
【0024】
一実施形態において、第2タンクからの流体が第1タンクへ移送される場合、第3タンクからの流体は、第2タンクへ移送される。
【0025】
一実施形態において、第3タンクの中の流体の温度が、要求される温度と同等である場合、第3タンクの中の流体は、第1タンクのための補給流体のソースとして使用される。
【0026】
一実施形態において、第3タンクの中の流体の温度は、ある体積の空気が、第3タンクの中の流体の表面エリアを横切ることを許可する又は強制することによって下げられ、空気の湿球温度は、第3タンクの中の熱伝達流体の温度とほぼ等しい、又は熱伝達流体の温度よりも低い。
【0027】
一実施形態において、システムは:
要求される温度とほぼ等しい温度、又は要求される温度よりも低い温度にある湿球温度を有する空気を作り出すために、周囲空気の湿球温度を減少させる手段、
を更に含む。
【0028】
一実施形態において、周囲空気の湿球温度を減少させる手段は、周囲空気の絶対湿度を減少させる除湿プロセスである。
【0029】
一実施形態において、前記除湿プロセスは、あるスペースに入る前に、空気を処理するための空気処理システムの一部を形成し、そこでは空気処理システムは、除湿プロセスの上流又は下流に冷却プロセスを更に含む。
【0030】
一実施形態において、前記要求される温度とほぼ等しい温度まで下げられた、又は該ほぼ等しい温度に維持された熱伝達流体は、熱エネルギーを除去するための冷却プロセスへ移送される。
【0031】
一実施形態において、該体積の熱伝達流体の表面エリアを横切ることを許可された又は強制された該体積の空気は、前記スペースから供給された空気であり、この空気は、十分に低い湿球温度を有し、その結果、熱伝達流体の温度が、蒸発手段によって、前記要求される温度とほぼ等しい温度まで下げられる、又は該ほぼ等しい温度で維持されることを引き起こす。
【0032】
一実施形態において、該スペースは、住宅若しくはビルディング内部、又は、スポーツスタジアムの内部若しくは動物畜舎のような、部分的に囲まれたエリアである。一実施形態において、該スペースは、自身のスペースの中の熱交換器を通して冷却された流体を汲み出すことによって、冷却される。一実施形態において、熱交換器は、ビルディングの各階の床、壁又は天井の中の、循環水式冷却パイプのような、大きくてゆっくり流れる熱交換器である。
【0033】
一実施形態において、該体積の空気が、該体積の熱伝達流体の表面エリアを横切ることを強制するための手段は、空気が制御された速度で移動することを誘発する、1つ以上の換気ファンの形をしている。速度は、ファン速度を調節することによるか、又は流体がタンクの中に保持されている場合は、自由表面の上方の囲まれた体積を調節することによって、制御することが可能である。自由表面の高さを決定することによって、各タンクの冷却速度は、ファンが最適な効率で動作することを可能にしながら、最適化することが可能である。蒸発の速度は、自由表面上方での空気速度に依存し、且つこの蒸発の速度は、当業者によって計算することが可能である。
【0034】
一実施形態において、タンクは、予想される最も長い期間に等しい持続期間の間、プロセス又は場所に対して要求されるような、冷却水を供給するのに十分な体積を有するが、ここで該予想される最も長い期間が経過すれば、蒸発冷却は、上昇した湿球温度のために、効果的ではなくなっているであろう。
【0035】
一実施形態において、前記熱伝達流体は水である。水のコストは、他の冷却液体のコストに比べて極めて低く、且つ水は、地球の表面上で自由に利用できる。水は、完全に毒性がなく、且つ非常に好ましい特有の熱蓄積容量を有する。
【0036】
別の態様によれば、本発明は、あるスペースに入る前に、ある体積の空気を処理するための空気処理システムを提供し、前記空気処理システムは:
乾燥された空気を作り出すことを目的とした、周囲空気の絶対湿度を減少させるための除湿器と;
除湿器の下流にある熱交換器であって、該除湿器は、蒸発により熱エネルギーを除去することによって、乾燥された空気を冷却するための、冷却されたプロセス流体の入力を含む、熱交換器と;
周囲空気が除湿器の中に入り、除湿器からの乾燥された空気が熱交換器を横切り、且つ、熱交換器からの乾燥され且つ冷却された空気が該スペースの中に入ることを許可する又は強制する手段と;
を含み、
冷却されたプロセス流体は、ある体積の空気が、ある体積の熱伝達流体の表面エリアを横切ることを許可する又は強制することによって作り出され、空気の湿球温度は、乾燥された空気から熱エネルギーを除去するのに要求される熱伝達流体の温度とほぼ等しい温度、又は熱伝達流体の温度よりも低い温度にあり、それによって、該体積の空気は、前記流体の温度が、蒸発手段によって、前記要求される温度とほぼ等しい温度まで下げられるか、又は該ほぼ等しい温度に維持される。
【0037】
一実施形態において、該体積の熱伝達流体の表面エリアを横切ることを許可される又は強制される該体積の空気は、前記スペースから供給された空気であり、この空気は、十分に低い湿球温度を有し、その結果、熱伝達流体の温度が、蒸発手段によって、前記要求される温度とほぼ等しい温度まで下げられる、又は該ほぼ等しい温度に維持されることを引き起こす。
【0038】
別の態様によれば、本発明は、流体を冷却するための方法又はプロセスを提供し、この方法又はプロセスは:
ある体積の空気が、ある体積の熱伝達流体の表面エリアを横切ることを許可する又は強制するステップであって、該体積の空気の湿球温度は、あるプロセス又は場所から熱エネルギーを除去するのに十分な、熱伝達流体の要求される温度とほぼ等しい温度、又は熱伝達流体の要求される温度よりも低い温度にあり、該空気は、前記流体の温度が、蒸発手段によって、前記要求される温度とほぼ等しい温度まで下げられる、又は該ほぼ等しい温度に維持されることを引き起こす、ステップ、
を含む。
【0039】
一実施形態において、本方法又はプロセスは、空気が、該体積の熱伝達流体の表面エリアを横切ることを許可される又は強制される前に、ある体積の空気の湿球温度を減少させるステップであって、それによって、空気の乾球温度を実質的に変更することなく、空気の絶対湿度を減少させる、ステップ、を更に含む。
【0040】
更に別の態様によれば、本発明は、あるスペースの中に入る前に、空気を処理するための方法又はプロセスを提供し、前記方法又はプロセスは:
乾燥された空気を作り出すために、周囲空気の絶対湿度を減少させるステップと;
冷却された空気を作り出すために、前記乾燥された空気が熱交換器を横切ることを許可する又は強制するステップであって、熱交換器は、蒸発により熱エネルギーを除去することによって、乾燥された空気を冷却するために、冷却された流体の入力を有する、ステップと;
前記乾燥され且つ冷却された空気が、該スペースの中に入ることを許可する又は強制するステップと;
を含み、
冷却された流体は、ある体積の空気が、ある体積の熱伝達流体の表面エリアを横切ることを許可する又は強制することによって作り出され、該空気の湿球温度は、乾燥された空気から熱エネルギーを除去するのに要求される熱伝達流体の温度とほぼ等しい温度、又は該熱伝達流体の温度よりも低い温度にあり、それによって、該体積の空気は、前記流体の温度が、蒸発手段によって、前記要求される温度とほぼ等しい温度まで下げられるか、又は該ほぼ等しい温度に維持されることを引き起こす。
【0041】
一実施形態において、該体積の熱伝達流体の表面を横切ることを許可される又は強制される該体積の空気は、前記スペースから供給される空気であり、この空気は、十分低い湿球温度を有し、その結果、熱伝達流体の温度が、蒸発手段によって、要求される前記温度とほぼ等しい温度まで下げられる、又はその温度に維持されることを引き起こす。
【図面の簡単な説明】
【0042】
添付図面(それらは、この明細書に組み込まれ、且つこの明細書の一部を構成する)は、本発明の幾つかの履行例を例示し、且つ説明と共に、本発明の利点及び原理を説明するのに役立つ。
図1】一実施形態による単一タンク流体冷却システムの概略図である。
図2】一実施形態による、水塔を利用した単一タンク流体冷却システムの流れ図である。
図3】一実施形態による二重タンク流体冷却システムの概略図である。
図4】一実施形態による、水塔を利用した二重タンク流体冷却システムの流れ図である。
図5】一実施形態による、貯蔵タンクを組み込んだ二重タンク流体冷却システムの概略図である。
図6】本発明の実施形態による単一タンク冷却システム及び多重タンク冷却システムをモデルとした結果を反映する3つのグラフを示したものである。
図7】あるスペースのための空気処理システムの流れ図であり、この空気処理システムは、乾燥され且つ冷却された空気を該スペースに提供するための除湿及び冷却手段と、冷却された流体を冷却手段に提供するための水塔を利用すると共に、該スペースからの空気を供給源とする単一タンク流体冷却手段とを含む。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の以下の詳細な説明では、添付図面を参照する。説明は典型的な実施形態を含んではいるが、他の実施形態も可能であり、且つ、本発明の精神及び範囲から外れることなく、説明された実施形態に対して、変更がなされてもよい。可能な限り、同じ部分及び同様な部分を参照するために、実施形態及び以下の説明を通して、同じ参照符号が使用されるであろう。
【0044】
理解されるべきことであるが、本発明を具体化する冷却システム及び方法は、ある場所又はプロセスに提供されるべき冷却された流体又は空気を必要とする、多くの異なる応用において使用してもよい。例として、ビルディング内部のスペースを冷却するために使用されるプロセスにおいて、その後に使用するための流体の冷却が、本明細書で説明される。しかしながら、本発明は、その他の内部エリア、若しくは外部(完全に又は部分的に囲まれた)エリア、又は工業的プロセスを含めた他のプロセスを含む、他の応用を有する。
【0045】
一態様によれば、本発明は、流体冷却システム10に関する。流体冷却システム10は、ある体積の空気が、ある体積の熱伝達流体の表面エリアを横切ることを許可する又は強制する手段を含み、空気の湿球温度は、あるプロセス又は場所から熱エネルギーを除去するのに要求される熱伝達流体の温度とほぼ等しい温度、又は熱伝達流体の温度よりも低い温度にあり(本明細書では、時々「要求される温度」と呼ばれる)、それによって、該体積の空気は、流体の温度が、蒸発手段によって、要求される温度とほぼ等しい温度まで下げられる、又は該ほぼ等しい温度に維持されることを引き起こす。例として、少なくとも1つのタンク12は、水のような熱伝達流体14の集合体又は貯蔵体を保持するために使用してもよく、流体が、要求される温度とほぼ等しい温度、又は要求される温度よりも低い温度にある場合、冷却又は熱エネルギー除去を提供する目的のために、この熱伝達流体14を、ある場所又はプロセス16に移送してもよい。要求される温度は、例えば、最高流体温度であってもよく、この最高流体温度を超えると、流体は、該場所又はプロセスにおいて適切な冷却効果を有するには、温かすぎるであろう。
【0046】
ビルディングの内部において、冷却が要求される場合、例えば、ビルディング内部は、ビルディングの中の熱交換器(図示せず)を通して、第1タンク12から冷却された流体を汲み上げることによって冷却してもよく、ここで熱交換器は、空気及び/又は、ビルディングの中の伝導構造と接触している。換言すれば、冷却された流体を、ビルディング内部を冷却するのに使用される熱交換器に提供してもよい。熱交換器は、例えば、ビルディングの各階の床、壁又は天井における循環水式の冷却パイプ網(図示せず)のような、大きくてゆっくり流れる熱交換器であってもよい。
【0047】
技量のある受取人であれば、次のことを正しく認識するであろう。即ち、調節された、わずかに冷却された水の集合体を、あるビルディングから不必要な熱エネルギーを除去するために利用できる場合、任意の適切な熱交換システムは、不必要な熱エネルギーが該ビルディングから容易且つ完全に除去され得るように設計してもよい。その際、例えば、もしビルディング内の望ましい温度が23℃である場合、入る際には20℃と同程度の、そしてビルディングから出る際には22.5℃と同程度の温度にある流体を利用する。
【0048】
先に述べたタンク12を利用した、一実施形態による流体冷却システム10が、図1に示される。タンク内の頭隙18は、ファン20又は、換気される空気(これは周囲雰囲気でもよい)が流体の集合体の表面22を横切ることを許可する又は強制する他の手段を含んでもよい。但しこれは、周囲雰囲気の湿球温度が、あるプロセス又は場所から熱エネルギーを除去するのに要求される温度よりも低い場合のことである。試験の間に、次のことが見出された。即ち、0.6m/sから1m/sの、水の集合体の表面を横切ることを強制された又は許可された空気の速度に対して、水の温度は、18℃と19℃の間に維持され、これによって、水の表面エリアの1mあたり、100ワットまでの冷却速度を達成する。この試験は、26℃から27℃の周囲乾球温度において実施された。システム10は、パイプ配管24及び26、又は他の手段を更に含んでもよい。ここで他の手段とは、必要に応じて、冷却された流体をタンク12からプロセス又は場所16へ、及び逆に温められた流体をプロセス又は場所16からタンク12へ、それぞれ移送可能とするためのものである。
【0049】
別の実施形態において、タンク12は、水塔とタンク27を組み合わせたものよって置き換えてもよく、そこでは熱伝達流体は噴霧され(図示せず)、且つ空気流は熱伝達流体の小滴の表面エリアを横切ることを強制され、それによって小滴を冷却するが、このことは、水塔及びタンク27の中に集められた、冷却された流体の集合体又は貯蔵体に帰着する。技量のある人であれば、次のことを正しく認識するであろう。即ち、同じ蒸発冷却原理は、該体積の熱伝達流体が、タンクの中の水の集合体であるか、又は水塔の中の噴霧小滴であるかどうかには関係なく、適用される、ということである。水塔とタンク27を組み合わせたものを組み込むシステム10が、図2の流れ図に示されている。そしてこの図はまた、水塔とタンク27を組み合わせたものの中に入る前に、空気を処理してもよいことを示すが(冷却するか、又は乾燥するか)、このことは、図6の実施形態に関して、以下でより詳しく説明される通りである。
【0050】
ある体積の空気に湿球温度を与えることは、多くの方法において達成することが可能である。ここでの湿球温度は、ある場所又はプロセスから熱エネルギーを除去するのに要求される、熱伝達流体の温度とほぼ等しい温度、又は熱伝達流体の温度よりも低い温度にある。例えば、空気が熱伝達流体の集合体を横切ることを強制されるような上の例においては、該空気は、周囲空気であってもよく、且つ、日周的サイクルのある一定の期間の間、有用な冷却を許可するために、十分に低い湿球温度を自然に有してもよい。もし空気の処理が、十分に低い湿球温度を達成するために、要求される場合、ある体積の周囲空気は、除湿プロセスを経験してもよい。ここで除湿プロセスはまた、周囲空気の乾球温度を実質的に変えることなく、周囲空気の絶対湿度を減少させる。例えば、乾燥剤技術を使用して周囲空気を乾燥させることは、この結果を達成するかもしれない。しかしながら、本発明は、任意の1つの手段に限定されない。ここで任意の1つの手段とは、その手段によって、入ってくる体積の空気が、必要な湿球温度を達成するものである。乾燥剤技術を使用して空気を除湿するシステム及び方法は、本出願人による同時係属中の出願において説明される。
【0051】
上記の実施形態のいずれかによるシステム10は、図3に示されるように、第1タンク12/27と直列にある第2タンク28を含んでもよい。この実施形態では、要求される流体温度よりも高い流体温度にある戻り流体30は、場所又はプロセス16から第2タンク28へ戻してもよい。第2タンク28は、タンク12と同様に構成してもよく、且つファン20又は、換気される周囲雰囲気が、第2タンク中の流体の集合体の表面22を横切ることを許可する又は強制するための他の手段を含んでもよい。但しこれは、周囲雰囲気の湿球温度が、要求される流体温度よりも低い場合のことである。第1タンク及び第2タンクの中の流体は、付加的なパイプ配管32を介して連通してもよい。
【0052】
温められた流体30は、第2タンク28の中で保持され、且つ、ある時間の間、第1タンク12へ移送されると共に第1タンク12の中の熱伝達流体14と混ざることが防止され、それによって、第1タンクの中の流体を、第1流体温度、又は第1流体温度に近い温度に維持してもよい。第2タンクの中の流体の温度が、第2タンク28における1つ以上のファン20を使用することによって、要求される流体温度まで、又は要求される流体温度に近い温度まで減少される場合、流体を第2タンクから第1タンク12へ移送してもよい。
【0053】
図4は、2つのタンクシステムの流れ図を示し、このタンクシステムは、図2に関して以前に説明されたように、第1タンクが、水塔とタンク27を組み合わせたものである場合に該当する。要求される流体温度よりも高い流体温度にある戻り流体30は、場所又はプロセス16から、第2タンクへ戻してもよい。この第2タンクは、第2タンク28と同様に構成してもよいが、新しい参照符号33が割り当てられている。新しい参照符号を割り当てる目的は、この第2タンク28(これは、水塔とタンクを組み合わせたものである第1タンク27に関連付けられる)を、水の集合体を保持するように構成された第1タンク12に関連付けられる第2タンクと区別するためである。第2タンク33は、タンク12と同様に構成してもよく、且つファン20又は他の手段を含んでもよい。ここで他の手段とは、周囲雰囲気の湿球温度が要求される流体温度よりも低い場合に、換気される周囲雰囲気が、第2タンク33の中の流体の集合体の表面22を横切ることを許可する又は強制するためのものである。代わりに、第2タンク33は、第2水塔及び、タンク27と同様なタンク組み合わせであってもよく、又は任意の関連する流体冷却手段を持たない、一時的な貯蔵タンクであってもよい。
【0054】
上で説明された二重タンクシステムは、図5に示されるように、第3タンク34を更に含んでもよい。第3タンクの目的は、第2タンク28/33から流出した任意量の温かい流体30を保持することであってもよく、ここで流出は、周囲条件が、要求される流体温度に対する、第2タンク28/33の中の流体の蒸発冷却を許すまで続く。第2タンクと第3タンクとの間の流体の移送は、パイプ配管36を介したものであり、且つ第3タンクの中の流体はまた、パイプ配管38を介して、大気に対して通気してもよい。第3タンク36の中の流体の温度が、要求される流体温度と同等である場合、第3タンク36の中の流体はまた、第1タンク12/27のための補給流体のソースとして使用してもよく、この補給流体のソースは、蒸発プロセスを通してシステムから除去された水の質量を補うためのものである。第3タンクと第1タンクとの間の流体の移送は、パイプ配管40を介したものである。
【0055】
パイプ配管は、次のように配置してもよい。即ち、任意の1つのタンクからの温かい水が利用される場合、その水は、より温かい水の層が存在するタンクの上方部分から出るように、そして冷却された水が利用される場合、その水は、より冷たい水の層が存在するタンクの下方部分から出るように、配置してもよい。必要な場合、各タンクは、流体温度センサと、周囲空気温度センサと、タンクへの又はタンクからの流体の流れ(及び、このゆえに、各タンクにおける体積)を制御するための制御機構とを含んでもよい。そのような制御機構はまた、ファン及びファン速度を制御するために、使用してもよい。センサ及び制御機構は、センサからの示度が制御機構(複数可)の動作を誘発するように、更に構成してもよい。例えば、空気の湿球温度が要求される温度未満である場合に、センサは感知してもよく、且つ制御機構は、それに従って、ファンを動作させてもよい。技量のある受取人はまた、次のことを正しく認識するであろう。即ち、流体の表面上方の空気速度及びタンク内部の流体体積のような因子を調節可能にすることは、異なる応用及び環境に合わせるための、様々なタスク構成における適応性を可能にする、ということである。
【0056】
従って、第2タンク28/33における、高めの温度と戻り流体を保持することの組み合わせは、流体から除かれる不必要な熱エネルギーが十分な割合となることに帰着する。ここで、流体から除かれるのは、第1タンク12/27の中の流体の温度が、不必要に上げられないような十分に低い温度で、流体が第1タンク12/27、又は第3保持タンク34に戻される前のことである。第2タンク28/33の中の流体が高めの温度であることで、夏時間の間のより連続的な時間にわたって、有用な冷却を達成することが可能であり、その結果、不必要な熱エネルギーを、より効果的に除くことが可能であり、これにより、そうでなければ要求されると予想されるものよりも、小さい総体積のタンクを使用することが可能になる。第2タンク28/33を付加することによって、要求される総タンク体積を、20倍も減少させることが可能である。
【0057】
第2タンク28/33の中の流体の温度は、その温度が要求される温度に近くなるまで、強制された蒸発(又は他の手段)によって低減されるので、且つ、必要に応じて、戻り流体は、それが要求される流体温度と同等になるまで、第3タンク34の中に保持されるので、第1タンク12/27の中の流体の温度は、いつでも有用な冷却を提供するのに十分低いままであってもよい。第1タンク12/27における流体の温度は、従って、仮に水が加熱源から直ちに戻されたとしても、それよりも低い温度で有用に維持することが可能であり、これによって、冷却水の効用性及び入手可能性を増加させるか、又は、夏の拡張された期間の間、冷却容量を維持するのに要求されるタンクのサイズを実質的に減少させる。
【0058】
図6は、第1タンク12と第2タンク28の組み合わせを使用する場合と比べて、それ自身の上で第1タンク12を使用する場合の、システム10を数学的にモデル化することから生じる3つのグラフを示す。上のほうのグラフ40は、直列に2つのタンクを含むシステム10の第1タンクにおける流体の温度を1時間ごとに計算したものを示し、総体積及び総面積が同一の単一タンクシステムと比較されている。各々が同じ温度(17.8℃)でスタートしているにもかかわらず、単一タンクシステムは、二週間の期間の多くに対して18℃よりも上であり、その一方で、二重タンクシステムは、幾つかの場合で15℃に近づいている。データは二週間に対するもので、この二週間は、試験気候年の中の1月の第1週におけるアデレード(南オーストラリア)に対する暑い夏期間のものである。予想されることであるが、仮にタンク12及び28がタンク27及び33で置き換えられ、且つ試験が同様な条件で実施されたとしても、結果としてのデータは同等であろう。
【0059】
第2のグラフ42は、二重タンクシステムの例が、望ましい温度未満で冷却水を供給できる時間の割合を百分率で示したものである。第3のグラフ44は、単一タンクシステムの上述の例が、多重タンクシステムの体積の20倍の体積を要求することを実証している。いずれの例においても、タンクが15℃未満の場合、冷却は使用されない。
【0060】
別の態様によれば、本発明は空気処理システム50を提供し、この空気処理システム50は、ある体積の空気から熱エネルギーを除去するために、冷却されたプロセス流体を使用し、それによって、スペース52又はプロセスの中に入る前に、空気を冷却する。図7は、システム50の例を示す。システム50は、2つの異なる、なおも相互に影響しあう流れ(これらは、空気と水である)を有していると考えることができる。該体積の空気は、最初に、除湿プロセス(図示せず)において前処理してもよく、そこでは、飛沫同伴された水蒸気の一部又は潜熱が除去されるが、その際、空気流の顕熱には著しい変化はない。システム50はまた、空気流の顕熱を減少させるための冷却プロセス54を示し、ここで顕熱を減少させるのは、この明細書で以前に説明された手段によって作り出される冷却された流体と熱交換する方法による。この点については、タンク12/27は、図7にも示されており、そこでは、タンク12/27で作り出される冷却された流体が冷却プロセス54へ移送されることを、正しく認識することが可能である。従って、流体は、冷却プロセス54を通して温められ、且つ、閉じたループの中で冷却プロセス54へ逆に戻される前に、続いてタンク12/27の中で冷却される。除湿され且つ冷却された空気は、スペース(これは、同様に別の場所又はプロセスであってもよい)に受け渡すことが可能であり、そのスペースの排気は、タンク12/27に供給してもよい。それゆえ、冷却プロセス42において空気流から顕熱を得た後、流体は、蒸発冷却手段であるタンク12/27へ受け渡されるが、蒸発冷却手段では、冷却され且つ乾燥された空気流からの大幅に減少された湿球温度が、潜熱の除去を通して、流体流において利用可能な冷却量を改善する。
【0061】
本発明のこの態様を具体化する流体冷却システム10は、従って、ビルディングの効果的な冷却を可能にし、その場合、例えば、入力電気エネルギー供給に対する(及び強制換気のためのファンを含む制御システムに対する)、利用可能な有用な熱冷却エネルギーの性能係数は、20よりも大きい。電気的に駆動される逆ランキンサイクル熱ポンプのCOP(これは、通常、3.6と4の間にあり、且つ非常に高いところでも、5よりも少ない)と比べた場合、本発明の恩恵は明らかである。電気のコストは増加すると共に、化石燃料又は核燃料から動力を受ける発電機の使用を削減することは増々望ましくなるので、このシステムの利点は明白である。
【0062】
最も乾燥した気候にある場合を除いて、ビルディングの屋根の上から集められた雨水は、一年のサイクルにわたって、蒸発による冷却のための補給水を供給するのに、通常は十分であり、これによって、他のソースから貴重な飲み水を供給する必要度を減少させる、又は排除する。システムは、それ故に、環境にやさしく、自己完結的であり、且つ、PVパネル又は、商業的に実行可能な方法における他の再生可能なエネルギー生成システムのような、非送電網エネルギー源によって(ファン及びポンプのために)機械的に動力を受けることが可能である。ビルディングの生活に関して、エネルギー利用における非常に重要な削減が達成されるかもしれず、このことは、非常に重要な商業的恩恵を意味する。
【0063】
上で説明された冷却システム及び方法は、太陽熱暖房システムと組み合わせることが可能であるが、その理由は、ビルディングにおける熱伝達表面は比較的大きく、且つ、それ故に、通常は太陽熱収集装置から利用可能な低温熱を、ビルディングの冬暖房において有用且つ貴重に利用できるからである。
【0064】
各水保持タンク12/27の主要なコスト、又は水塔とタンク28/33を組み合わせたものの各々は、等価的な逆ランキンサイクル熱ポンプシステム及び関連する熱交換器の取り付けコストよりも実質的に少ないことが可能である。蒸発による冷却のために使用される液体はまた、実体的冷却エネルギーの貯蔵所として使用してもよく、このことは、熱交換器が必然的に伴う温度差を排除するのと同様に、熱交換器のコストを排除し、それによって、全体的システムのコストを削減するのと同様に、有用性を改善する。
【0065】
更なる利点及び改良は、本発明の範囲から外れることなく、本発明に対して、非常に首尾よくなされるかもしれない。本発明は、最も実際的且つ好ましい実施形態と考えられることにおいて、示され且つ説明されてきたが、本発明の範囲及び精神の中で、本発明からの新発展がなされてもよいことは理解される。ここで本発明は、本明細書で開示された詳細に限定されるべきではなく、請求項の完全な範囲に一致されるべきであり、それによって、任意の及び全ての等価なデバイス、装置、システム及び/又は方法を包含する。
【0066】
続く任意の請求項において、及び本発明の要約において、明示された言い回し又は必要な含意によって、文脈が別な方法で要求する場合を除いて、用語「備える」は、「含む」の意味において使用され、即ち、指定された特徴は、本発明の様々な実施形態における更なる特徴と関連付けてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7