特許第6670007号(P6670007)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6670007パエニバシラス属菌の発酵によるα−グルコシダーゼ阻害剤を生産する培養液組成
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670007
(24)【登録日】2020年3月3日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】パエニバシラス属菌の発酵によるα−グルコシダーゼ阻害剤を生産する培養液組成
(51)【国際特許分類】
   C12P 1/00 20060101AFI20200309BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   C12P1/00 Z
   C12N1/20 A
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-95202(P2018-95202)
(22)【出願日】2018年5月17日
(65)【公開番号】特開2019-4870(P2019-4870A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2018年7月25日
(31)【優先権主張番号】106121366
(32)【優先日】2017年6月27日
(33)【優先権主張国】TW
【微生物の受託番号】DSMZ  DSM 32521
(73)【特許権者】
【識別番号】517222856
【氏名又は名称】淡江大學
【氏名又は名称原語表記】Tamkang University
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】王三郎
(72)【発明者】
【氏名】グェン,ヴァン−ボン
【審査官】 平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−183711(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第106749764(CN,A)
【文献】 特開昭53−142600(JP,A)
【文献】 Nguyen, V. B. et al., International Journal of Molecular Sciences, 2017 Mar 25, Vol.18(4):700, pp.1-12
【文献】 Biocatalysis and Agricultural Biotechnology, 2012,1(2):177-180
【文献】 New Biotechnology, 2011,28(6):559-565
【文献】 Marine drugs, 2015, Vol.13, pp.1847-1863
【文献】 Carbohydrate Polymers, 2006, Vol.64, pp.385-390
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 1/00−41/00
C12N 1/00− 7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1wt%〜2.5wt%の炭素/窒素ソースと0.01wt%〜0.2wt%の無機塩類が含まれて構成され、パエニバシラス属菌の発酵によるα−グルコシダーゼ阻害剤を生産するために用いられる、パエニバシラス属菌の発酵によるα−グルコシダーゼ阻害剤を生産する培養液であって、前記炭素/窒素ソースはキチンとタンパク質であり、前記キチンは、ホットアルカリプロセス法によってタンパク質を除去した無機塩抜きのカニ殻のパウダーであり、前記キチンと、前記タンパク質との最適な混合比例は、1:0.2であることを特徴とする、培養液
【請求項2】
前記タンパク質(protein)は、ペプトン(Peptone)と酵母エキス(Yeast Extract)から構成されることを特徴とする請求項に記載の、パエニバシラス属菌の発酵によるα−グルコシダーゼ阻害剤を生産する培養液
【請求項3】
前記無機塩類は、MgSO・7HOとKHPOを含むことを特徴とする請求項1に記載の、パエニバシラス属菌の発酵によるα−グルコシダーゼ阻害剤を生産する培養液
【請求項4】
前記ペプトンと前記酵母エキスとの混合比例は5:3乃至7:5であり、最適比例は、6:4であることを特徴とする請求項に記載の、パエニバシラス属菌の発酵によるα−グルコシダーゼ阻害剤を生産する培養液
【請求項5】
前記キチンと、MgSO・7HOとの最適な混合比例は、1:0.05であることを特徴とする請求項に記載の、パエニバシラス属菌の発酵によるα−グルコシダーゼ阻害剤を生産する培養液
【請求項6】
前記キチンと、KHPOとの最適な混合比例は、1:0.1であることを特徴とする請求項に記載の、パエニバシラス属菌の発酵によるα−グルコシダーゼ阻害剤を生産する培養液
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養液組成に関するものであり、特にパエニバシラス属菌の発酵によるα−グルコシダーゼ阻害剤の生産量を向上することができる培養液組成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
α−グルコシダーゼ(α−glucosidase)は、人体の小腸における上皮細胞に存在し、小腸によるブドウ糖の吸収に役に立つ。α−グルコシダーゼの異常であれば、2型糖尿病や、ポンペ病や、無精子症の発生を招いてしまう可能性がある。α−グルコシダーゼ阻害剤(α−glucosidase inhibitors, α−GI)は、可逆性による人体の腸におけるα−グルコシダーゼの活性を抑制すると共に、多糖類や二糖類から吸収可能なブドウ糖に変換する過程を遅延させ、ひいては食事後の血糖値の上昇を遅延させる効果も得られる。
【0003】
α−グルコシダーゼ阻害剤は、2型糖尿病に対する主な血糖降下の薬物であり、その効果が抜群で快速と持久性を有し、単独に使用する時に効果が顕著に見えられない場合、他の血糖降下の薬物と共に使用することができるので、血糖値を更にコントロールすることができ、使用上も非常に便利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、研究中にパエニバシラス属(Paenibacillus sp.)の菌について発酵培養の過程中にα−グルコシダーゼ阻害剤を多少発生することが発見し、台湾特許出願第105137545号にα−グルコシダーゼ阻害剤を生産するためのパエニバシラス属菌であるDSM 32521が掲示され、且つ動物実験から分かるように、前記DSM 32521のパエニバシラス属菌より発生されるα−グルコシダーゼ阻害剤は、従来のグルコシダーゼ阻害剤(例えばアカルボース(Acarbose))より動物に副作用を発生させることがない。
【0005】
しかしながら、パエニバシラス属菌の発酵によるα−グルコシダーゼ阻害剤を生産する従来の培養液組成では、より一層の生産率を得るために更に改良する必要があるので、本発明の課題となる。
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明は、液体の培養液の組成分を改良することにより、パエニバシラス属菌の成長速度を向上すると共に、単位体積の生産量を増加することにより、コストの降下及び製造プロセスのタクトタイムを減少することができる。
【0007】
本発明は、パエニバシラス属菌の発酵代謝によって大量のα−グルコシダーゼ阻害剤の培養基礎質を発生でき、α−グルコシダーゼの抑制効果を有する、パエニバシラス属菌の発酵によるα−グルコシダーゼ阻害剤を生産する他の培養液組成が提供されることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明は、キチン(chitin)と、無機塩類と、タンパク質とから構成される培養液を提供し、前記キチンと前記タンパク質は、前記培養液の炭素/窒素ソースとしてそれぞれ使用され、前記前記キチンと前記タンパク質の最適な混合比例は、1:0.2である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】パエニバシラス属菌であるDSM 32521が異なる培養液での成長カーブ図である。
図2】異なる比例であるキチンとタンパク質から発生されるα−グルコシダーゼ阻害剤により、酵母菌であるα−グルコシダーゼに対する抑制効果を示すカラム図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の技術特徴とメリットを更に明白するために、具体的な実施例と合わせて添付図面によって詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限られていない。
【0011】
パエニバシラス属菌の発酵によるα−グルコシダーゼ阻害剤を生産する培養液組成が提供され、前記培養液は、微生物の成長に対して促進効果を有し、特に本発明の液体である培養液でパエニバシラス属菌を培養すると、パエニバシラス属菌の発酵代謝によって大量のα−グルコシダーゼ阻害剤(α−glucosidase inhibitors)の培養基礎質を発生できるので、α−グルコシダーゼを抑制するための飲み薬を製作することができる。
【0012】
本発明の培養液組成は、0.1wt%〜2.5wt%の炭素/窒素ソースと0.01wt%〜0.2wt%の無機塩類が含まれて構成する。
【0013】
前記炭素/窒素ソースは、それぞれキチンとタンパク質(protein)から構成される。
【0014】
前記キチンは、ホットアルカリプロセス法によってタンパク質を除去した無機塩抜きのカニ殻のパウダー(CSP)及び無機塩抜きの海老殻のパウダー(SSP)から選ばれる何れ一つであり、前記キチンは、1wt%の前記無機塩抜きのカニ殻のパウダー(CSP)であるほうが好ましい。
【0015】
前記タンパク質(protein)は、ペプトン(Peptone)と酵母エキス(Yeast Extract)から構成され、前記ペプトンと前記酵母エキスとの混合比例は5:3乃至7:5であり、前記タンパク質(protein)の最適比例は、6:4である。
【0016】
本実施例における前記無機塩類は、それぞれMgSO・7HOとKHPOであり、前記キチンと、MgSO・7HO又はKHPOとの最適な混合比例は、それぞれ1:0.05と1:0.1である。
【実施例1】
【0017】
前記炭素/窒素の混合比例に対するテスト
本発明は、1wt%の前記無機塩抜きのカニ殻のパウダー(CSP)と、異なる比例である(0/1、0.2/1及び0.4/1)前記タンパク質(protein)とを混合させ、パエニバシラス属菌であるDSM 32521で四日間の発酵後、発酵された上澄み液であるα−グルコシダーゼ阻害剤が得られる。
【0018】
図1に示すように、前記無機塩抜きのカニ殻のパウダー(CSP)と前記タンパク質(protein)との混合比例が1:0.2であるものから得られたα−グルコシダーゼ阻害剤の活性は、最も高いということが分かった。
【0019】
さらに、異なる比例である前記タンパク質(protein)と前記無機塩抜きのカニ殻のパウダー(CSP)(0.1/1、0.2/1、0.3/1、0.4/1、0.6/1及び0.8/1)との培養液のそれぞれと、市販の培養液(NB)で前記パエニバシラス属菌であるDSM 32521を培養し、発生されたα−グルコシダーゼ阻害剤が酵母菌のα−グルコシダーゼに対する抑制活性をテストする。
【0020】
図2に示すように、前記タンパク質(protein)と前記無機塩抜きのカニ殻のパウダー(CSP)との混合比例は、0.2:1である時に、発生されたα−グルコシダーゼ阻害剤が最も最大の抑制活性を有することが分かった。
【0021】
異なるパエニバシラス属菌による発生されるα−グルコシダーゼ阻害剤
本実験では、異なるパエニバシラス属菌と他の培養体を本発明の培養液に利用し、発酵して取られた上澄み液により酵母菌、細菌及び大ネズミのα−グルコシダーゼに対する活性抑制の分析をそれぞれ行う。
【0022】
下表1に示すように、本発明の培養液を使用すると、パエニバシラス属菌から得られた上澄み液が酵母菌、細菌及び大ネズミのα−グルコシダーゼに対してみんな抑制活性を有し、これから分かるように、本発明の培養液組成は、異なるパエニバシラス属菌によってα−グルコシダーゼ阻害剤を発生することができるが、表1に示されるものではない。
【0023】
【表1】
【実施例2】
【0024】
本実施例では、本発明の培養液と前記市販の培養液(NB)によりパエニバシラス属菌からα−グルコシダーゼ阻害剤の発生量の比較について検討する。本実施例において、パエニバシラス属菌であるDSM 32521を本発明の培養液と市販の培養液(NB)に培養し、その代謝発生されたα−グルコシダーゼ阻害剤がS. cerevisiaeのα−グルコシダーゼに対する活性抑制についてテストする。
【0025】
下表2に示すように、市販の培養液(NB)に対して、本発明の培養液は、α−グルコシダーゼ阻害剤の発生量が2.5倍に上昇し(5,000 U/mLから12,379 U/mLに上昇する)、IC50の数値は、12倍に降下するので(81 μg/mLから6.7 μg/mLに降下する)、本発明の培養液組成は、微生物の成長速度を促進し、単位体積内の菌数量を向上するとともに、パエニバシラス属菌による発酵代謝から発生されるα−グルコシダーゼ阻害剤の生産量を上昇することができる。
【0026】
【表2】
【実施例3】
【0027】
本実施例は、パエニバシラス属菌であるDSM 32521が本発明の培養液において発酵して発生したα−グルコシダーゼ阻害剤と市販の糖尿病薬物であるAcarboseが各種のα−グルコシダーゼに対する抑制活性を比較するものである。
【0028】
下表3に示すように、市販の糖尿病薬物であるAcarboseに対して、本発明の培養液から発生されるα−グルコシダーゼ阻害剤は、大ネズミのα−グルコシダーゼ(Rat α−glucosidase)をより強く抑制活性があることを示す。
【0029】
【表3】
【0030】
上述の説明は、本発明の好適な実施例に対する具体的な説明であるが、これらの実施例は本発明における特許請求の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨に基づいてこれらの実施例の効果と等しい変形や変更して本発明を完成することができ、これらの変形や変更が本発明における特許請求の範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0031】
CSP 無機塩抜きのカニ殻のパウダー
SSP 無機塩抜きの海老殻のパウダー
protein タンパク質
NB 市販の培養液
【受託番号】
【0032】
DSM 32521
図1
図2