特許第6670008号(P6670008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6670008セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統によりアブラナ科野菜の素材及び品種を選抜育種する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670008
(24)【登録日】2020年3月3日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統によりアブラナ科野菜の素材及び品種を選抜育種する方法
(51)【国際特許分類】
   A01H 1/02 20060101AFI20200309BHJP
   A01H 6/20 20180101ALN20200309BHJP
【FI】
   A01H1/02 Z
   !A01H6/20
【請求項の数】3
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-556894(P2018-556894)
(86)(22)【出願日】2016年12月21日
(65)【公表番号】特表2019-518436(P2019-518436A)
(43)【公表日】2019年7月4日
(86)【国際出願番号】CN2016111356
(87)【国際公開番号】WO2017219634
(87)【国際公開日】20171228
【審査請求日】2018年12月11日
(31)【優先権主張番号】201610458209.1
(32)【優先日】2016年6月23日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518377975
【氏名又は名称】成都市農林科学院
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】楊進
(72)【発明者】
【氏名】付紹紅
(72)【発明者】
【氏名】匡成兵
(72)【発明者】
【氏名】陳玲
(72)【発明者】
【氏名】李云
(72)【発明者】
【氏名】唐祖君
(72)【発明者】
【氏名】王継勝
(72)【発明者】
【氏名】鄒▲チュン▼
(72)【発明者】
【氏名】陶蘭蓉
(72)【発明者】
【氏名】康澤明
(72)【発明者】
【氏名】唐蓉
【審査官】 小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103858753(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102428869(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102224801(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103081800(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01H 1/00−17/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/AGRICOLA/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統によりアブラナ科野菜の素材及び品種を選抜育種する方法であって、
1)アブラナ科野菜の育種資源を収集するとともに、資源素材の特性を鑑定し、収集源が異なり、農業形質と遺伝的差異の大きな資源素材を分類のうえ番号を振り、開花時期を調査してから、開花時期に基づいて、セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統の播種を遅らせ、通常は、翌年のアブラナ科野菜の開花期と一致するように、セイヨウアブラナの倍加半数体の播種時期を前年の10月20日〜11月5日の間とするステップと、
2)前記ステップ1)で収集したアブラナ科野菜の資源素材を開花初期において人為的に除雄し、不稔性の資源を直接授粉可能するとともに、袋掛けにより隔離し、2〜4日後にセイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統で授粉するとともに、単一株を袋掛けして誘導後代を収穫するステップと、
3)前記ステップ2)で収穫した誘導後代を植栽し、実生期にフローサイトメーターで誘導後代の倍数性を鑑定して、倍数体、半数体、及びセイヨウアブラナの特性を有する株を淘汰し、繁殖可能性が正常で且つ倍数性が正常な単一株を選抜して袋掛けし、近親交配させるか、或いは、つぼみ期につぼみを開いて強制的に近親交配させるステップと、
4)前記ステップ3)の誘導後代のうち正常な近親交配後代について株系統を植栽し、株系統内での安定性と一致性を鑑定するとともに、分子マーカーで株系統内での一致性を鑑定し、安定株系統を雄株とし、安定細胞質不稔系統を雌株として検定交雑し、検定交雑後代の種子を収穫するステップと、
5)前記ステップ4)における検定交雑後代の種子を植栽し、検定交雑後代の株の繁殖可能性を鑑定して、検定交雑後代が完全不稔の場合には、ステップ4)の雄株は当該不稔性タイプの維持系統であるとみなして当該維持系統の近親交配結実率を鑑定し、検定交雑後代が完全可稔の場合には、ステップ4)の雄株は当該不稔性タイプの回復系統であるため、対応する回復系統を淘汰し、検定交雑後代が完全な不稔性でない場合には、ステップ4)の雄株は回復系統でも維持系統でもないため、淘汰するか、交雑して新たな維持系統を育成するステップと、
6)前記ステップ5)で選抜育種した維持系統と同タイプの不稔系統とを検定交雑し、収量、品質、耐病性を特性として有する新たな交雑の組み合わせ又は品種を選抜育種するステップと、
7)前記ステップ5)で選抜育種した維持系統と同タイプの不稔系統とを検定交雑した後、検定交雑後代の農業形質に基づいて、当該維持系統で検定交雑後代を戻し交配又は多世代戻し交配或いは1世代検定交雑し、セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統を用いて、検定交雑、戻し交配又は多世代戻し交配した不稔性株の単一株を授粉するとともに、袋掛けにより隔離するステップと、
8)前記ステップ7)で収穫した単一株の種子を植栽し、開花期に繁殖可能性を鑑定して、不稔性の単一株を引き続きセイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統で授粉し、誘導するとともに、単一株を袋掛けにより隔離して単一株を収穫するステップと、
9)前記ステップ8)で2回誘導された不稔性の単一株後代について、農業形質、分子マーカーにより株系統内での安定性及び一致性を鑑定するとともに、農業形質が一致しており、且つ株系統内で安定的な不稔性株系統について新たなアブラナ科野菜の細胞質不稔系統を形成し、セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統を用いて当該不稔性株系統につき3回目の誘導、授粉を行い、誘導効率を鑑定するステップと、
10)前記ステップ9)における3回目の誘導後代について、当該不稔性株系統に対する誘導系統の誘導能力を鑑定し、3回目の誘導後代株系統内の農業形質及び不稔性が高度に一致しており、且つ、株系統内の農業形質及び高度不稔性株が全誘導後代に占める割合である誘導能力が98%以上の場合、最後に、新たに形成された不稔性株系統又は安定不稔系統の遺伝的特性及び不稔状態を、セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統を用いて維持するステップと、
11)前記ステップ8)において2回の誘導を経て形成された不稔性株系統を、セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統で授粉してその不稔状態を維持し、当該不稔性株系統又は安定不稔系統の遺伝的特性はセイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統と無関係であり、当該不稔性株系統は、前記ステップ7)の維持系統である暫定維持系統の形質特性を有しているが、当該維持系統である暫定維持系統とは一定の遺伝的差異があるか、或いは、維持系統である暫定維持系統の核遺伝子を50〜99%含んでおり、維持系統である暫定維持系統の核遺伝子をどの程度含むかは、維持系統である暫定維持系統と不稔性単一株との戻し交配の世代数により決定され、維持系統である暫定維持系統の核遺伝子を異なる程度含むだけでなく、更にステップ4)の安定細胞質不稔系統の核遺伝子も含むステップと、
12)前記ステップ9)で形成した遺伝的差異の異なる安定細胞質不稔系統について、細胞質不稔系統に対するセイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統の誘導能力が98%よりも大きいことに基づいて、同一の維持系統であるセイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統によってこれを維持し、セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統は細胞質不稔系統の万能維持系統となり、且つ、1つの維持系統で複数の遺伝的安定及び異なる遺伝的背景を有する安定細胞質不稔系統を維持するステップと、
13)ステップ1)の異なる収集源、農業形質及び遺伝的差異の素材特性と対応する収集源とに基づいて誘導された安定的な維持系統と、ステップ12)で形成した安定的な新たな複数の細胞質不稔系統を検定交雑することで、収量潜在力、耐病性、ストレス耐性を有する新たなアブラナ科野菜の品種を選抜育種し、アブラナ科野菜の2系統による交雑新品種の選抜育種を実現するステップと、を含み、
前記セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統の選抜育種方法は、
(1)単為生殖性を遺伝的特性として有する初期世代安定系統を選抜育種するステップであって、
1)2つのセイヨウアブラナの親素材を交雑したF世代の種子を、培地において染色体倍加誘導剤により人為的に染色体倍加することで、倍加したF世代の株を取得し、
2)倍加したF世代の株を近親交配又は強制的近親交配してF世代を取得し、F世代を畑に植栽して観察するとともに、各単一株の繁殖可能性を鑑定し、可稔性後代を選抜して近親交配によりF世代を取得し、F世代についてホモ接合性を鑑定するとともに、形態、細胞学及び分子マーカーによる鑑定を実施し、後代のDNAをポリメラーゼ連鎖反応により増幅させ、各特異プライマーによる増幅下での単一株のDNAバンドタイプ及びバンド数を電気泳動により観察し、各単一株がいずれも2つの親の交雑後代であることが示されるとともに、各単一株同士の分子マーカーチャートが一致している場合、これらの単一株はホモ接合系統――初期世代安定系統であることを意味し、
3)取得した初期世代安定系統を少なくとも10個のセイヨウアブラナにおける通常のホモ接合安定系統と正逆交雑し、F世代、F世代について初期世代安定系統の遺伝的特性である単為生殖特性の有無を鑑定するとともに、前記正逆交雑においてFに分離が見られ、F世代に部分的な安定株系統が出現した場合には、対応する初期世代安定系統が単為生殖性を遺伝的特性として有する初期世代安定系統であるステップと、
(2)優性遺伝形質を備え、且つ単為生殖特性を有するとともに倍数性が遺伝的に安定している倍数体セイヨウアブラナを選抜育種するステップであって、
1)単為生殖性を遺伝的特性として有する初期世代安定系統と優性形質を備えるセイヨウアブラナとを交雑することで交雑F世代の種子を取得し、交雑Fの種子を培地において染色体倍加誘導剤により人為的に染色体倍加することで、倍加した優性形質を備えるF株を取得し、
2)倍加した優性形質を備えるF株について、マイクロ顕微鏡で観察するか、或いは、フローサイトメーターで染色体の倍数性鑑定を実施し、優性形質を備える倍数体株を選抜するとともに、異常な倍加株、異数体株、及び優性形質を備えない倍加株を淘汰し、優性形質の倍数体株とは、倍数性が遺伝的に安定しており、結実性が良好で、単為生殖性を遺伝的特性として有し、優性形質を備える六倍体又は八倍体のセイヨウアブラナ株であるステップと、
(3)セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統の鑑定及び誘導能力測定を行うステップであって、
1)倍数性が遺伝的に安定しており、単為生殖性を遺伝的特性として有し、優性形質を備えた倍数体株における優性形質によって、検定交雑後代に発生する交雑株を除去可能であり、検定交雑後代に優性形質株又は異数体株が出現した場合には、当該株が倍数体株と雌株との交雑により発生したことを意味するため当該株を除去し、
2)前記単一株の検定交雑後代に、完全不稔で正常な倍数性である二倍体又は四倍体のセイヨウアブラナであって、且つ優性形質を持たないものが出現した場合には、当該検定交雑後代に対応する雄株の遺伝子が検定交雑後代に入っていないことを意味するため、優性の倍数体株をセイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統とするステップ、を含む方法。
【請求項2】
セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統による選抜育種では、2つの親素材を交雑したF世代の種子、又は、単為生殖性を遺伝的特性として有する初期世代安定系統と優性形質を備えるセイヨウアブラナとを交雑することで取得した交雑F世代の種子を、培地において染色体倍加誘導剤により人為的に染色体倍加するが、その具体的方法として、
1)純度75%のアルコールで種子の表面を25〜40秒間消毒し、0.1%の昇汞で12〜17分間消毒した後、滅菌水で種子表面の昇汞を洗い流し、滅菌紙で種子表面の水分を拭き取ってから、種子を第1培地に播種し、
2)第1培地で種子を発根及び発芽させ、培養条件を、温度23〜25℃、昼光照射12〜16時間、照射強度2000〜3000ルクス、夜間暗所培養8〜12時間とし、成葉が1〜2枚育ってから株を下胚軸から切り取り、第2培地で引き続き成長させ、
3)続いて、切り取った株を第2培地に挿入して培養を続け、側芽が分化してから、側芽と株を第3培地に移して発根培養し、
4)発根培養から2週間後、株から太い根が伸びた後に株を室温で3〜7日間育苗して取り出し、株上の培地を水道水で洗い流して緩衝液に15〜30分間浸漬してから温室に移植し、95%以上の移植生育率を保証可能となるよう、温室は温度16〜25℃、相対湿度60〜80%とし、
前記第1培地は以下の成分比率で構成し、
MS培地 1L
6−ベンジルアミノプリン 0.5〜1.5mg
染色体倍加誘導剤 30〜70mg
ショ糖 20〜30g
寒天 8〜10g、
第1培地はpH=5.8〜6.0であり、
前記第2培地は以下の成分比率で構成し、
MS培地 1L
6−ベンジルアミノプリン 0.5〜1mg
染色体倍加誘導剤 20〜40mg
ショ糖 20〜30g
寒天 8〜10g、
第2培地はpH=5.8〜6.0であり、
前記第3培地は以下の成分比率で構成し、
MS培地 1L
1−ナフチル酢酸 0.03〜0.5mg
染色体倍加誘導剤 5〜20mg
ショ糖 20〜30g
寒天 8〜10g、
第3培地はpH=5.8〜6.0であり、
前記の浸漬用緩衝液の成分比率は、
水 1L
ファモキサドン又はシモキサニル 0.6〜1.2g
1−ナフチル酢酸 0.5〜1mg、
で構成されることを特徴とする請求項1に記載のセイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統によりアブラナ科野菜の素材及び品種を選抜育種する方法。
【請求項3】
染色体倍加誘導剤として、コルヒチン、トリフルラリン、オリザリンのうちの少なくとも1つを用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のセイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統によりアブラナ科野菜の素材及び品種を選抜育種する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農業に関し、特に、アブラナ科野菜における交雑新品種の選抜育種、及び、不稔系統、維持系統を迅速に選抜育種する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アブラナ科野菜は中国における代表的な冬野菜の一つである。また、中国における冬野菜の主な摂取源でもあり、主として、キャベツ、カリフラワー(ハナヤサイ)、ハクサイ(大白菜、小白菜)、ダイコン、カラシナ系アブラナ科野菜(チンゲン菜、ザーサイ、ダイトウサイ、カイラン等)を含む。現在、アブラナ科野菜は基本的に交雑品種の選抜育種が実現されており、雑種強勢手段として細胞質不稔タイプが主に用いられている。キャベツ、カリフラワー(ハナヤサイ)、ダイコンについては主にダイコンの細胞質不稔タイプを、その他のアブラナ科野菜については主に細胞質不稔を用いて交雑品種を選抜育種している。アブラナ科野菜は栄養体の取得が主たる目的のため、品種の選抜育種においては主に不稔系統と維持系統の選抜育種が最重要目的となり、回復系統は必要とされない。そして、新たな維持系統と不稔系統を検定交雑することで良好な交雑の組み合わせ又は新品種の選抜育種が可能となる。
【0003】
アブラナ科野菜の新品種を選抜育種する場合には、まず新たな近交系統又は遺伝的に安定したホモ接合株系統――ホモ接合系統(近交系統)を選抜育種する。次に、ホモ接合株系統と細胞質不稔系統を検定交雑し、回復と維持の関係を判断する。維持系統の場合には不稔系統と交雑して新たな交雑品種を検定交雑するか、或いは、当該維持系統を用いて多世代の戻し交配を行い、当該維持系統の特性を有する不稔系統を選抜育種する。そして、新たな不稔系統と複数の維持系統を検定交雑すれば、良好な組み合わせ又は品種を選抜育種可能となる。一方、ホモ接合株系統と不稔系統を検定交雑した結果、検定交雑後代が回復系統でも維持系統でもない場合、通常は淘汰するか、次の維持系統に進んで選抜育種を行う。アブラナ科野菜の交雑化普及を実現すべく、現在選抜育種されているホモ接合近交系統は回復効率を有しつつも、生産的には品種の選抜育種に利用可能である。しかし、資源保護の観点から、育種者はより維持系統の選抜育種を志向する傾向にある。
【0004】
一般的なアブラナ科野菜の近交系統の選抜育種では、2つ又は複数の遺伝的背景の異なる系統を交雑、収束交雑(convergent cross)、又は戻し交配することで交雑F世代(或いは、戻し交配BC世代。目的形質の選抜要求に応じて多世代戻し交配によりBC、BC…等を形成可能)を形成する。戻し交配の後代又はF世代は近親交配によりF世代を形成し、F世代が更に優良単一株を選抜して近親交配によりF世代を形成する。そして、Fが更に単一株を選抜して近親交配する、というように、F〜F世代となってようやく安定的なアブラナ科野菜の新系統を取得可能となる。よって、1世代あたり1年と計算すると、およそ6〜7年の期間が必要とされる。また、安定的な近交系統を更に不稔系統と検定交雑し、多世代の戻し交配により新たな不稔系統を選抜育種するには5〜6世代の戻し交配が必要となる。そのため、一般的な手段でアブラナ科野菜の2系統による新品種の選抜育種を実現するには、10〜12年ほどの期間を要し、交雑の新たな組み合わせ又は新品種の選抜育種効率は大変低い。
【0005】
現在のところ、アブラナ科野菜については、誘導系統又は倍加半数体誘導系統に関する報告は上がっていない。いわゆる「誘導系統」とは、当該植物を雄株とし、その花粉によって同種の株を授粉することで、同種の株(雌株)における半数体、倍加半数体(DH系統)等の発生といった相応の反応を誘導可能なものをいう。植物のうち、誘導系統を用いて新品種の選抜育種を行っているものとしてはトウモロコシが最も多いが、トウモロコシの誘導系統は半数体誘導系統に限られている。最も初期のトウモロコシの半数体誘導系統はstock6であるが、当該誘導系統はトウモロコシの半数体の発生を誘導することしかできない。そこで、半数体株を人為的に染色体倍加することでホモ接合二倍体(倍加半数体)を形成するが、誘導効率が低く、一般的には10%以下の誘導効率となる(収穫種子から取得した半数体数で計算)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、迅速且つ効果的にアブラナ科野菜の育種素材及び品種を選抜育種する方法を提供することを目的とする。当該方法では、わずか3世代(2年又は3年)でアブラナ科野菜の遺伝的に安定した株系統が得られるため、アブラナ科野菜の育種素材や交雑品種の選抜育種効率と的確性が向上する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、以下のように実現される。
【0008】
本発明におけるセイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統によりアブラナ科野菜の素材及び品種を選抜育種する方法は、1)アブラナ科野菜の育種資源を収集するとともに、耐病性、ストレス耐性、農業形質、収量特性、品質特性等を含む資源素材の特性を鑑定し、収集源が異なり、農業形質と遺伝的差異の大きな資源素材を分類のうえ番号を振り、開花時期を調査してから、開花時期に基づいて、セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統の播種を遅らせ、通常は、翌年のキャベツ、ハクサイ、ダイコン、カリフラワー等のアブラナ科野菜の開花期と一致するように、セイヨウアブラナの倍加半数体の播種時期を前年の10月20日〜11月5日の間とするステップと、2)前記ステップ1)で優良と鑑定され、且つ遺伝的に不安定な資源素材を開花初期において人為的に除雄し(不稔性の資源を直接授粉可能とする)とともに袋掛けにより隔離し、2〜4日後にセイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統で授粉するとともに、単一株を袋掛けして誘導後代を収穫するステップと、3)前記ステップ2)で収穫した誘導後代を植栽し、実生期にフローサイトメーターで誘導後代の倍数性を鑑定して、倍数体、半数体、及びセイヨウアブラナの特性を有する株を淘汰し、繁殖可能性が正常で且つ倍数性が正常な単一株を選抜して袋掛けし、近親交配させるか、或いは、つぼみ期につぼみを開いて強制的に近親交配させるステップと、4)前記ステップ3)の誘導後代のうち正常な近親交配後代について株系統を植栽し、株系統内での安定性と一致性を鑑定するとともに、分子マーカー(SSR又はSRAP)で株系統内での一致性を鑑定し、安定株系統を雄株とし、安定細胞質不稔系統(ダイコンの細胞質不稔等の細胞質不稔タイプ)を雌株として検定交雑し、検定交雑後代の種子を収穫するステップと、5)前記ステップ4)における検定交雑の種子を植栽し、検定交雑後代の繁殖可能性を鑑定して、検定交雑後代が完全不稔の場合には、ステップ4)の雄株は当該不稔性タイプの維持系統であるとみなして当該維持系統の近親交配結実率を鑑定し、検定交雑後代が完全可稔の場合には、ステップ4)の雄株は当該不稔性タイプの回復系統であるため、対応する回復系統を淘汰し、検定交雑後代が完全な不稔性でない場合には(半回復・半維持)、ステップ4)の雄株は回復系統でも維持系統でもないため、淘汰するか、交雑して新たな維持系統を育成するステップと、6)前記ステップ5)で選抜育種した維持系統と同タイプの不稔系統とを検定交雑し、収量、品質、耐病性を特性として有する新たな交雑の組み合わせ又は品種を選抜育種するステップと、7)前記ステップ5)で選抜育種した維持系統と同タイプの不稔系統とを検定交雑した後、検定交雑後代の農業形質に基づいて、当該維持系統で検定交雑後代を戻し交配又は多世代戻し交配或いは1世代検定交雑し、セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統を用いて、検定交雑、戻し交配又は多世代戻し交配した不稔性株の単一株を授粉するとともに、袋掛けにより隔離するステップと、8)前記ステップ7)で収穫した単一株の種子を植栽し、開花期に繁殖可能性を鑑定して、不稔性の単一株を引き続きセイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統で授粉し、誘導するとともに、単一株を袋掛けにより隔離して単一株を収穫するステップと、9)前記ステップ8)で2回誘導された不稔性の単一株後代について、農業形質、分子マーカー(SSR又はSRAP)により株系統内での安定性及び一致性を鑑定するとともに、農業形質が一致しており、且つ株系統内で安定的な不稔性株系統について新たなアブラナ科野菜の細胞質不稔系統を形成し、セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統を用いて当該不稔性株系統につき3回目の誘導、授粉を行い、誘導効率を鑑定するステップと、10)前記ステップ9)における3回目の誘導後代について、当該不稔性株系統に対する誘導系統の誘導能力を鑑定し、3回目の誘導後代株系統内の農業形質及び不稔性が高度に一致しており、且つ、誘導能力が98%以上(株系統内の農業形質、高度不稔性株が全誘導後代に占める割合)である場合、最後に、新たに形成された不稔性株系統(又は安定不稔系統)の遺伝的特性及び不稔状態を、セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統を用いて維持するステップと、11)前記ステップ8)において2回の誘導を経て形成された不稔性株系統を、セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統で授粉してその不稔状態を維持し、当該不稔性株系統(又は安定不稔系統)の遺伝的特性はセイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統と無関係であり、当該不稔性株系統は、前記ステップ7)の維持系統(暫定維持系統)の形質特性を有しているが、当該維持系統(暫定維持系統)とは一定の遺伝的差異があるか、或いは、維持系統(暫定維持系統)の核遺伝子を50〜99%含んでおり、維持系統(暫定維持系統)の核遺伝子をどの程度含むかは、維持系統(暫定維持系統)と不稔性単一株との戻し交配の世代数により決定され、維持系統(暫定維持系統)の核遺伝子を異なる程度含むだけでなく、更にステップ4)の安定細胞質不稔系統の核遺伝子も含むステップと、12)前記ステップ9)で形成した遺伝的差異の異なる(又は遺伝的背景の異なる)細胞質不稔系統(安定不稔系統)について、細胞質不稔系統に対するセイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統の誘導能力(98%超)に基づいて、同一の維持系統(セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統)でこれを維持可能であり、セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統は細胞質不稔系統の万能維持系統となり、且つ、1つの維持系統で複数の遺伝的安定及び異なる遺伝的背景を有する細胞質不稔系統を維持するステップと、13)ステップ1)の異なる収集源、農業形質及び遺伝的差異の素材特性と対応する収集源とに基づいて誘導された安定的な維持系統と、ステップ12)で形成した安定的な新たな不稔系統を検定交雑することで、収量潜在力、耐病性、ストレス耐性を有する新たなアブラナ科野菜の品種を選抜育種し、アブラナ科野菜の2系統による交雑新品種の選抜育種を実現するステップと、を含む。
【0009】
本発明で取得したアブラナ科野菜の遺伝的に安定した後代を用い、セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統を適用すれば、雌株によるF世代での単為生殖を誘導可能となり、F世代に安定した倍加半数体の個体が形成される。また、F世代について安定性及び一致性鑑定を行った結果、遺伝的に安定した後代を取得可能であった。
【0010】
前記セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統の選抜育種方法は、(1)単為生殖性を遺伝的特性として有する初期世代安定系統を選抜育種するステップであって、1)2つのセイヨウアブラナの親素材を交雑したF世代の種子を、培地において染色体倍加誘導剤により人為的に染色体倍加することで、倍加したF世代の株を取得し、2)倍加したF世代の株を近親交配又は強制的近親交配してF世代を取得し、F世代を畑に植栽して観察するとともに、各単一株の繁殖可能性を鑑定し、可稔性後代を選抜して近親交配によりF世代を取得し、F世代についてホモ接合性を鑑定するとともに、形態、細胞学及び分子マーカーによる鑑定を実施し、後代のDNAをポリメラーゼ連鎖反応により増幅させ、各特異プライマーによる増幅下での単一株のDNAバンドタイプ及びバンド数を電気泳動により観察し、各単一株がいずれも2つの親の交雑後代であることが示されるとともに、各単一株同士の分子マーカーチャートが一致している場合、これらの単一株はホモ接合系統――初期世代安定系統であることを意味し、3)取得した初期世代安定系統を少なくとも10個のセイヨウアブラナにおける通常のホモ接合安定系統と正逆交雑し、F世代、F世代について初期世代安定系統の遺伝的特性である単為生殖特性の有無を鑑定するとともに、前記正逆交雑においてFに分離が見られ、F世代に部分的な安定株系統が出現した場合には、対応する初期世代安定系統が単為生殖性を遺伝的特性として有する初期世代安定系統であるステップと、(2)優性遺伝形質を備え、且つ単為生殖特性を有するとともに倍数性が遺伝的に安定している倍数体セイヨウアブラナを選抜育種するステップであって、1)単為生殖性を遺伝的特性として有する初期世代安定系統と優性形質を備えるセイヨウアブラナとを交雑することで(例えば、優性の矮性、紫葉、花葉、黄葉、高エルカ酸等の形質)交雑F世代の種子を取得し、交雑Fの種子を培地において染色体倍加誘導剤により人為的に染色体倍加することで、倍加した優性形質を備えるF株を取得し、2)倍加した優性形質を備えるF株について、マイクロ顕微鏡で観察するか、或いは、フローサイトメーターで染色体の倍数性鑑定を実施し、優性形質を備える倍数体株を選抜するとともに、異常な倍加株、異数体株、及び優性形質を備えない倍加株を淘汰し、優性形質を備える倍数体株とは、主に倍数性が遺伝的に安定しており、結実性が良好で、単為生殖性を遺伝的特性として有し、優性形質(例えば、優性の矮性、紫葉、花葉、黄葉、高エルカ酸等の形質)を備える六倍体又は八倍体のセイヨウアブラナ株であるステップと、(3)セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統の鑑定及び誘導能力測定を行うステップであって、1)倍数性が遺伝的に安定しており、単為生殖性を遺伝的特性として有し、優性形質を備えた倍数体株における優性形質によって、検定交雑後代に発生する交雑株を除去可能であり、検定交雑後代に優性形質株又は異数体株が出現した場合には、当該株が倍数体株と雌株との交雑により発生したことを意味するため当該株を除去し、2)前記単一株の検定交雑後代に、完全不稔で正常な倍数性である二倍体又は四倍体のセイヨウアブラナであって、且つ優性形質を持たないものが出現した場合には、当該検定交雑後代に対応する雄株の遺伝子が検定交雑後代に入っていないことを意味するため、優性の倍数体株をセイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統とするステップ、を含む。
【0011】
前記セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統による選抜育種では、2つの親素材を交雑したF世代の種子、又は、単為生殖性を遺伝的特性として有する初期世代安定系統と優性形質を備えるセイヨウアブラナとを交雑することで取得した交雑F世代の種子を、培地において染色体倍加誘導剤により人為的に染色体倍加するが、その具体的方法として、1)純度75%のアルコールで種子の表面を25〜40秒間消毒し、0.1%の昇汞で12〜17分間消毒した後、滅菌水で種子表面の昇汞を洗い流し、滅菌紙で種子表面の水分を拭き取ってから、種子を第1培地に播種し、2)第1培地で種子を発根及び発芽させ、培養条件を、温度23〜25℃、昼光照射12〜16時間、照射強度2000〜3000ルクス、夜間暗所培養8〜12時間とし、成葉が1〜2枚育ってから株を下胚軸から切り取り、第2培地で引き続き成長させ、3)続いて、切り取った株を第2培地に挿入して培養を続け、側芽が分化してから、側芽と株を第3培地に移して発根培養し、4)発根培養から2週間後、株から太い根が伸びた後に株を室温で3〜7日間育苗して取り出し、株上の培地を水道水で洗い流して緩衝液に15〜30分間浸漬してから温室に移植し、95%以上の移植生育率を保証可能となるよう、温室は温度16〜25℃、相対湿度60〜80%とする。
【0012】
前記第1培地は以下の成分比率で構成する。
MS培地 1L
6−ベンジルアミノプリン 0.5〜1.5mg
染色体倍加誘導剤 30〜70mg
ショ糖 20〜30g
寒天 8〜10g
第1培地はpH=5.8〜6.0である。
【0013】
前記第2培地は以下の成分比率で構成する。
MS培地 1L
6−ベンジルアミノプリン 0.5〜1mg
染色体倍加誘導剤 20〜40mg
ショ糖 20〜30g
寒天 8〜10g
第2培地はpH=5.8〜6.0である。
【0014】
前記第3培地は以下の成分比率で構成する。
MS培地 1L
1−ナフチル酢酸 0.03〜0.5mg
染色体倍加誘導剤 5〜20mg
ショ糖 20〜30g
寒天 8〜10g
第3培地はpH=5.8〜6.0である。
【0015】
前記の浸漬用緩衝液の成分比率は以下の成分比率で構成する。
水 1L
ファモキサドン又はシモキサニル 0.6〜1.2g
1−ナフチル酢酸 0.5〜1mg
【0016】
セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統は、セイヨウアブラナとアブラナ科野菜について倍加半数体後代の発生を直接誘導可能であり、人為的な染色体倍加によってホモ接合系統を取得する必要がない。且つ、誘導効率が高く、最高で100%、一般的な誘導効率は50%以上である。倍加半数体誘導系統が雌株における倍加半数体の発生を誘導する主な原理は次の通りである。誘導系統は、大胞子生殖細胞(卵細胞)に単為生殖効果が発生し、且つ、卵細胞が染色体倍加を実施可能となるよう雌株を誘導することができる。即ち、卵細胞の単為生殖により発生する後代は倍加半数体となるが、このような現象が発生するメカニズムについては現在のところ明らかになっていない。
【0017】
前記染色体倍加誘導剤として、コルヒチン、トリフルラリン、オリザリンのうちの少なくとも1つを用いる。
【0018】
前記セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統(六倍体又は八倍体株)の基本原理として、誘導系統は単為生殖誘導遺伝子を有している。誘導系統を雄株とする場合、誘導系統の染色体(又は遺伝子)は雌株の染色体とは融合せず、雌株(即ち、卵細胞、二倍体)を誘導して単為生殖効果を発生させる。且つ、雌株の卵細胞染色体自体が倍加して倍加半数体を形成する。
【0019】
本発明の方法によれば、アブラナ科野菜の育種素材における近交系統(DH系統)、維持系統、新たな細胞質不稔系統の迅速な選抜育種が可能となる。よって、2年又は3世代という期間内に上記素材を取得可能となり、アブラナ科野菜の育種期間が大幅に短縮されるため、育種効率が向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の方法は以下の利点を有する。
【0021】
1.本発明の方法によれば、アブラナ科野菜の近交系統(維持系統)を迅速に選抜育種可能となり、最速3年で遺伝的に安定した近交系統(維持系統)を取得可能となる。また、新たな不稔系統についても迅速な選抜育種が可能であり、最速4年で安定的な不稔系統が取得される。また、5〜7年という期間内にアブラナ科野菜の2系統による新品種の選抜育種が実現され、アブラナ科野菜の選抜育種周期が1周期半以上短縮される。よって、アブラナ科野菜の新品種の選抜育種効率が向上し、労働力と物資の節約となる。
【0022】
2.本発明の方法はアブラナ科野菜全般に応用可能であり、応用領域が広い。
【0023】
3.セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統は、雌株における倍加半数体の発生を直接誘導するため、人為的な染色体倍加の必要がなく、更に安定した後代を形成可能となる。
【0024】
4.本発明の方法はアブラナ科野菜の交雑品種の選抜育種に適用可能であり、特に、アブラナ科野菜の細胞質不稔系統素材の選抜育種、例えば、ダイコンの細胞質不稔、核・細胞質相互作用性の細胞質不稔系統、維持系統の選抜育種に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統によりアブラナ科野菜の新品種を迅速に選抜育種する方法のフローチャートである。
図2図2は、セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統の選抜育種のフローチャートである。
図3図3は、セイヨウアブラナの初期世代安定系統を取得する方法のフローチャートである。
図4図4は、セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統Y3560の選抜育種のフローチャートである。
図5図5は、セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統Y3380の選抜育種のフローチャートである。
図6図6は、セイヨウアブラナの初期世代安定系統P3−2の選抜育種のフローチャートである。
図7図7は、キャベツの維持系統である蓉甘B012の選抜育種チャートである。
図8図8は、キャベツダイコンの細胞質不稔系統である蓉甘A105の選抜育種チャートである。
図9図9は、ダイコンの不稔系統である蘿蓉A007の選抜育種チャートである。
図10図10は、P3−2四倍体セイヨウアブラナの根端染色体の倍数性鑑定図である。
図11図11は、P3−2四倍体セイヨウアブラナのフローサイトメトリーによる倍数性鑑定チャートである。
図12図12は、Y3380のフローサイトメトリーによる倍数性鑑定チャートである。
図13図13は、Y3560のフローサイトメトリーによる倍数性鑑定チャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0026】
図1図2図5図7を参照する。多年草であるキャベツ資源を畑に植え、形質を観察したところ、甘336は外観形状、豊作性、耐病性に優れるが、群内において不安定であり、遺伝的分離が見られることがわかった。前年秋の8月中旬に播種、9月中旬に定植、12月下旬に栄養成長に伴い再定植し、1年目の3月末の開花初期に甘336を人為的に除雄して袋掛けにより隔離した。除雄3日後、セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統Y3380で誘導授粉し、袋掛けして隔離した。同年8月に誘導後代を畑に播種したところ、後代25株は外形がキャベツと100%一致していた。且つ、フローサイトメトリーで倍数性を鑑定したところ、いずれも二倍体であることがわかった。2年目の開花期に誘導後代である単一株のつぼみを開き、強制的に近親交配させて袋掛けにより隔離した。これにより、単一株から18株が収穫された。3年目に誘導後代の株系統を鑑定したところ、18株の株系統は全て一致していたが、各株系統間には部分的な差が存在することがわかった。18個の株系統とキャベツの不稔系統(ダイコンの細胞質不稔)である蓉蘿A019を検定交雑したところ、18個の安定株系統の検定交雑後代はいずれも高度不稔となり、18個の安定株系統は不稔系統に対していずれも維持系統であった。形態観察及び収量調査の結果、012株系統が収量に優れ、耐病性であり、且つストレス耐性がより良好であったため、最後に、キャベツダイコンの細胞質不稔系統と直接組み合わせることで新品種を選抜育種可能な蓉甘B012の維持系統を形成した。
【0027】
本実施例において、セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統は以下の方法で取得した。
【0028】
図2図4図6図7図13を参照する。出願人が取得したキャベツ型セイヨウアブラナの四倍体初期世代安定系統P3−2を20個のホモ接合キャベツ型四倍体セイヨウアブラナと正逆交雑したところ、3つの正逆交雑F世代において分離が見られた。また、これら3つの組み合わせのF世代に安定株系統が出現したことから、P3−2が単為生殖性を遺伝的特性として有することが示された。P3−2と高エルカ酸・矮性セイヨウアブラナ4247を正逆交雑し(矮性・高エルカ酸は優性形質)、交雑F世代の種子を染色体倍加した。そして、倍加した後代についてフローサイトメーターによる鑑定又は根端顕微鏡による観察・鑑定を行ったところ、矮性の八倍体株であることが示された。そこで、当該株をY3560と命名した。
【0029】
図2図5図6図10図11図12を参照する。出願人が取得したキャベツ型セイヨウアブラナの四倍体初期世代安定系統P3−2を20個のホモ接合キャベツ型四倍体セイヨウアブラナと正逆交雑したところ、3つの正逆交雑F世代において分離が見られた。また、これら3つの組み合わせのF世代に安定株系統が出現したことから、P3−2が単為生殖性を遺伝的特性として有することが示された。P3−2と四倍体キャベツ型矮性セイヨウアブラナD3−5を正逆交雑し(矮性は優性形質)、交雑F世代の種子を染色体倍加した。そして、倍加した後代についてフローサイトメーターによる鑑定又は根端顕微鏡による観察・鑑定を行ったところ、矮性の八倍体株であることが示された。そこで、当該株をY3380と命名した。
【0030】
本実施例では、P3−2と矮性セイヨウアブラナD3−5との交雑F及びP3−2と矮性・高エルカ酸セイヨウアブラナ4247との交雑Fの種子を、培地においてコルヒチンにより人為的に染色体倍加した。具体的な方法は以下の通りである。
【0031】
1)純度75%のアルコールで種子の表面を25秒間消毒し、0.1%の昇汞で12分間消毒した。続いて、滅菌水で種子表面の昇汞を洗い流し、滅菌紙で種子表面の水分を拭き取ってから、種子を第1培地(染色体倍加誘導培地)に播種した。
【0032】
2)第1培地で種子を発根及び発芽させた。培養条件としては、温度25℃、昼光照射16時間、照射強度2000ルクス、夜間暗所培養8時間とし、成葉が1〜2枚育ってから株を下胚軸から切り取り、第2培地で引き続き成長させた。
【0033】
3)続いて、切り取った株を第2培地に挿入して培養を続け、側芽が分化してから、側芽と株を第3培地(発根培地)に移して発根培養した。
【0034】
4)発根培養から2週間後、株から太い根が伸びた後に株を室温で3日間育苗し、取り出した。そして、株上の培地を洗い流し、緩衝液に15分間浸漬してから温室に移植した。温室は温度25℃、相対湿度60%とした。これにより、95%以上の移植生育率を保証可能であった。
【0035】
前記第1培地は、以下の成分比率で構成した。
MS培地 1L
6−ベンジルアミノプリン(6BA) 0.5mg
コルヒチン 50mg
ショ糖 20g
寒天 8g
【0036】
第1培地はpH=5.8〜6.0であった。また、MS培地はMurashige及びSkoogにより発明されたもので、MSと略称される。配合については表1を参照する。
【0037】
前記第2培地は、以下の成分比率で構成した。
MS培地 1L
6−ベンジルアミノプリン(6BA) 0.5mg
コルヒチン 30mg
ショ糖 30g
寒天 8g
【0038】
第2培地はpH=5.8〜6.0であった。また、前記第3培地は以下の成分比率で構成した。
MS培地 1L
1−ナフチル酢酸 0.03mg
コルヒチン 20mg
ショ糖 20g
寒天 8g
【0039】
第3培地はpH=5.8〜6.0であった。また、上記の浸漬用緩衝液は以下の成分比率で構成した。
水 1L
ファモキサドン又はシモキサニル 0.6g
1−ナフチル酢酸 0.5mg
【0040】
図2図3図5を参照する。Y3380を雄株とし、キャベツ型セイヨウアブラナの細胞質不稔系統(0464A)と検定交雑したところ、検定交雑後代の50株はいずれも高性であり、且つ、全て四倍体セイヨウアブラナであった。また、これらのうち49株は完全不稔、1株は半不稔であった。更に、形態的特徴は0464Aと全く同じであった。また、対照検定として、P3−2と矮性セイヨウアブラナD3−5との交雑F(非倍加株)を雄株として0464Aと交雑したところ、交雑後代の102株に矮性62株、高性40株が現れた。且つ、稔性の分離が大きく、完全可稔が73株、半不稔が20株、完全不稔が9株現れた。これより、Y3380の遺伝子は検定交雑株に入っておらず、検定交雑後代は0464Aの単為生殖によることが示された。誘導率は98%であった。また、Y3380を雄株とし、キャベツ型セイヨウアブラナ3954を除雄して収束交雑したところ(3954は中双11とCAXとの交雑F)、収束交雑後代Fに分離が見られた。各Fを近親交配させてF近親交配株45個を取得し、F世代の株系統を45個植栽したところ、安定株系統が45個現れた。よって、安定株系統は出現率100%、誘導率100%であった。
【0041】
また、Y3380を雄株とし、キャベツ型セイヨウアブラナ3968を除雄して収束交雑したところ(3968は中双11と1365との交雑F)、収束交雑後代Fに分離が見られた。各Fを近親交配させてF近親交配株52個を取得し、F世代の株系統52個を植栽したところ、安定株系統が28個現れた、よって、安定株系統は出現比率53.85%、誘導率53.85%であった。
【0042】
また、Y3380を雄株とし、キャベツ型セイヨウアブラナである中双11(一般品種、ホモ接合系統)を除雄して交雑したところ、交雑F株が70株得られた。70株のFは中双11と全く同じ形態を示した。且つ、各単一株を近親交配したF世代に分離は見られず、安定株系統であった。また、形態も中双11と全く同じであった。これより、F世代が純系であることが示された。即ち、Y3380と中双11の交雑過程において、中双11の単為生殖が誘導された。また、発生したFは単為生殖性で近親交配したため、ホモ接合系統となった。結果、Fは安定系統、Fもまた安定的となり、且つ、中双11と完全に同形態となった。これの誘導率は100%であった。
【0043】
同様に、Y3380を雄株とし、ハクサイ型セイヨウアブラナである雅安黄油菜YH(二倍体セイヨウアブラナ、2n=20)を除雄して交雑したところ、交雑F株が98株得られた。このうち97株のFはYHと全く同じ形態を示した。且つ、各単一株を近親交配したF世代の形態はいずれも二倍体であり、YHと外形が一致していた。これより、Y3380とYHの交雑過程においてYHの単為生殖が誘導されたといえる。また、発生したFは単為生殖性で近親交配し、且つ、形態もYHと全く同じであった。これの誘導率は98.9%であった。最後に、優性の矮性八倍体株Y3380をセイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統として決定した。
【0044】
図2図3図4を参照する。Y3560を雄株とし、キャベツ型セイヨウアブラナの細胞質不稔系統(0464A)と検定交雑したところ、検定交雑後代の80株はいずれも高性であった。且つ、76株は四倍体セイヨウアブラナ、2株は二倍体、2株は八倍体であった。このうち、76株の四倍体株は完全不稔、4株は半不稔であり、且つ、形態的特徴は0464Aと全く同じであった。また、対照検定として、P3−2と矮性・高エルカ酸セイヨウアブラナ4247との交雑F(非倍加株)を雄株として0464Aと交雑したところ、交雑後代の153株に矮性102株、高性51株が現れた。且つ、稔性の分離が大きく、完全可稔が65株、半不稔が35株、完全不稔が53株現れた。これより、Y3560の遺伝子は検定交雑株に入っておらず、検定交雑後代は0464Aの単為生殖によることが示された。誘導率は95%であった。
【0045】
また、Y3560を雄株とし、ハクサイ型セイヨウアブラナである雅安黄油菜YH(二倍体セイヨウアブラナ、2n=20)を除雄して交雑したところ、交雑F株が145株得られた。このうち143株のFはYHと全く同形態であった。且つ、各単一株を近親交配したF世代の形態はいずれも二倍体であり、YHと外形が一致していた。これより、Y3560とYHの交雑過程においてYHの単為生殖が誘導されたといえる。また、発生したFは単為生殖性で近親交配し、且つ、形態もYHと全く同じであった。これの誘導率は98.6%であった。
【0046】
同様に、Y3560を雄株とし、カラシナ型セイヨウアブラナGW(四倍体セイヨウアブラナ、2n=36)を除雄して交雑したところ、交雑F株が124株得られた。このうち123株のFはGWと全く同形態であった。且つ、各単一株を近親交配したF世代の形態はいずれも四倍体であり、GWと外形が一致していた。これより、Y3560とGWの交雑過程においてGWの単為生殖が誘導されたといえる。また、発生したFは単為生殖性で近親交配し、且つ、形態もGWと全く同じであった。これの誘導率は99.2%であった。最後に、優性の矮性八倍体株Y3560をセイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統として決定した。
【0047】
図3図6図10図11を参照して、初期世代安定系統P3−2は以下の方法で取得した。
【0048】
キャベツ型セイヨウアブラナF009(四倍体、染色体2n=38)とハクサイ型セイヨウアブラナYH(二倍体、雅安黄油菜、染色体2n=20)のつぼみを開き、人為的に除雄して交雑し、F世代の交雑種子を取得した。次に、F世代の交雑種子を培地においてコルヒチンで人為的に染色体倍加した。そして、倍加したF世代株を近親交配(又は強制的近親交配)することでF世代を取得し、F世代を畑に植栽して観察及び繁殖可能性鑑定(即ち、アセトカルミンによる花粉の染色)することで花粉の繁殖可能性を判断したところ、3種類の状況が見られた(1.半数体株。花粉が極めて少なく、且つ繁殖可能性が極めて低い。2.完全不稔の倍数体株。花器官の発育が阻害され、正常な開花が不可能。花粉なし。3.正常可稔株。花粉量が多く、花粉の繁殖可能性が95%以上)。続いて、F世代の正常可稔の単一株を近親交配してF世代を取得した。そして、F世代についてホモ接合性を鑑定し、F世代の単一株系統を植栽したところ、可稔性株系統のうち32%の単一株が一致しており、開花・結実が正常であった。また、一致していた株系統について細胞学的鑑定を行ったところ、染色体本数が一致しており(38本)、染色体の形態に異常は見られなかった。SSR分子マーカーについては、DNAポリメラーゼ連鎖反応によって各特異プライマーによる増幅下での単一株のDNAバンドタイプを電気泳動で観察したところ、各単一株はいずれもF009とYHの交雑後代であることが示された。且つ、各単一株のDNA増幅バンド数とバンドタイプが一致していたことから、これらの株系統はホモ接合系統であり、即ち初期世代安定系統であると判断可能であった。このうち、葉が大きくて亀裂がなく、着生が密であり、含油率55%のキャベツ型(染色体38本)セイヨウアブラナの初期世代安定系統をP3−2と命名した。
【0049】
本実施例では、F世代の交雑種子を培地においてコルヒチンにより人為的に染色体倍加した。具体的な方法は以下の通りである。
【0050】
1)純度75%のアルコールで種子の表面を25秒間消毒し、0.1%の昇汞で12分間消毒した。続いて、滅菌水で種子表面の昇汞を洗い流し、滅菌紙で種子表面の水分を拭き取ってから、種子を第1培地(染色体倍加誘導培地)に播種した。
【0051】
2)第1培地で種子を発根及び発芽させた。培養条件としては、温度25℃、昼光照射16時間、照射強度2000ルクス、夜間暗所培養8時間とし、成葉が1〜2枚育ってから株を下胚軸から切り取り、第2培地で引き続き成長させた。
【0052】
3)続いて、切り取った株を第2培地に挿入して培養を続け、側芽が分化してから、側芽と株を第3培地(発根培地)に移して発根培養した。
【0053】
4)発根培養から2週間後、株から太い根が伸びた後に株を室温で3日間育苗し、取り出した。そして、株上の培地を洗い流し、緩衝液に15分間浸漬してから温室に移植した。温室は温度25℃、相対湿度60%とした。これにより、95%以上の移植生育率を保証可能であった。
【0054】
前記第1培地は、以下の成分比率で構成した。
MS培地 1L
6−ベンジルアミノプリン(6BA) 0.5mg
コルヒチン 30mg
ショ糖 20g
寒天 8g
【0055】
第1培地はpH=5.8〜6.0であった。また、MS培地はMurashige及びSkoogにより発明されたもので、MSと略称される。配合については表1を参照する。
【0056】
前記第2培地は、以下の成分比率で構成した。
MS培地 1L
6−ベンジルアミノプリン(6BA) 0.5mg
コルヒチン 20mg
ショ糖 30g
寒天 8g
【0057】
第2培地はpH=5.8〜6.0であった。また、前記第3培地は以下の成分比率で構成した。
MS培地 1L
1−ナフチル酢酸 0.03mg
コルヒチン 5mg
ショ糖 20g
寒天 8g
【0058】
第3培地はpH=5.8〜6.0であった。また、上記の浸漬用緩衝液は以下の成分比率で構成した。
水 1L
ファモキサドン又はシモキサニル 0.6g
1−ナフチル酢酸 0.5mg
【0059】
【表1】
【実施例2】
【0060】
図1図2図4図5図8を参照する。従来のキャベツ不稔系統を改変し、不稔系統の組合せ能力と耐病性及び耐貯蔵・運輸特性を向上するために、キャベツの自家不和合系統(高組合せ能力系統)である甘121と耐貯蔵・運輸系統である甘051を交雑した。交雑したF世代は開花期において人為的に除雄し、セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統Y3560で授粉し、誘導した。すると、F世代(誘導第1世代)として15個の単一株が取得されたが、調査の結果、15個の単一株はいずれも外形がキャベツであり、且つ二倍体であることがわかった。次に、15個の単一株を袋掛けして(つぼみを開き)近親交配するとともに、花粉を取ってキャベツの不稔系統(ダイコンの細胞質不稔)である蓉蘿A019と検定交雑した。そして、近親交配後代については株系統内での安定性・一致性鑑定を、検定交雑後代については一致性及び不稔性鑑定を実施したところ、近親交配後代は株系統内において全て一致しており、いずれも二倍体であった。また、検定交雑後代についても高度に一致しており、いずれも不稔性であった。ただし、耐貯蔵・輸送性で平頭特性を有し、且つ、検定交雑後代の収量が高く、耐病性が良好であったのは株系統105のみであった。続いて、セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統Y3380で株系統105に対応する検定交雑後代の単一株を授粉し、隔離して単一株の種子を取得した。そして、105の検定交雑誘導後代を畑に植栽し、45株を取得したところ、42株が完全にキャベツの特性を有しており、且つ二倍体であった。一方、3株は外観がセイヨウアブラナ交雑株の特性と類似しており、倍数性が三倍体であった。また、42個の単一株は高度不稔であった。続いて、耐貯蔵・輸送性及び平頭特性を有する不稔性の単一株をY3560で授粉した。そして、袋掛けにより隔離し、単一株から種子を収穫したところ、30個の株系統から種子が得られた。30個の株系統について、外観形態、農業形質、分子マーカー(SRAP)で株系統内での一致性・安定性を鑑定したところ、10個の株系統で株系統内での一致性・安定性が高度に一致していた。また、2つ株系統が耐貯蔵・輸送性、耐病性、豊作特性を有していた。そこで、2つの株系統各々から10株を選抜し、Y3560とY3380で5株ずつ授粉するとともに、袋掛けにより隔離した。また、5つの株系統については混合授粉を行った。そして、安定的不稔系統に対する両誘導系統の誘導効率を鑑定したところ、Y3560による一方の不稔系統に対する誘導効率は100%、他方の不稔系統に対する誘導効率は97%であり、Y3380による2つの不稔系統の誘導効率はそれぞれ97%及び96%であることがわかった。したがって、最終的には、新たな不稔系統としてキャベツダイコンの細胞質不稔系統である蓉甘A105のみが形成された。また、当該不稔系統はY3560による授粉で繁殖可能であった。
【実施例3】
【0061】
図1図2図4図5図9を参照して、カブY23で韓国ダイコンH22を交雑し、F世代の開花期に人為的除雄を行ってからセイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統Y3380で授粉した。そして、F世代の誘導後代の実生期にフローサイトメーターで誘導後代の倍数性を鑑定したところ、10個の単一株のうち1つが半数体、9個が二倍体であり、且つ、外形はいずれもダイコンの特性を有していることがわかった。9個の単一株の開花期に袋掛けして近親交配し、近親交配後代について株系統内での一致性及び安定性を鑑定したところ、9個の株系統は株系統内が高度に一致及び安定していた。また、9個の株系統の花粉でダイコンの不稔系統である蓉蘿A001を検定交雑し、検定交雑後代について一致性、倍数性を鑑定したところ、9個の検定交雑後代はいずれも不稔性であった。このうち、7番の株系統は耐病性であり、収量特性が最も高かった。そこで、引き続きセイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統Y3560の花粉で7番の株系統の検定交雑後代を授粉して誘導し、袋掛けにより隔離した。すると、誘導後代に形態の分離が見られたことから、7番の株系統特性を有する4つの不稔性の単一株を選抜し、引き続きY3380で授粉して誘導することで4つの株系統を形成した。次に、4つの株系統について株系統内での一致性、安定性を鑑定したところ、各株系統内が高度に一致及び安定していることがわかった。ただし、各株系統間では農業形質にやや差があり、主には葉の色と株の高さに発現していた。また、4つの安定株系統について、Y3560とY3380でそれぞれ単一株を5つずつ授粉し、袋掛けにより隔離した。また、5つの株系統については混合収穫した。そして、不稔系統に対する誘導系統の誘導効果を鑑定したところ、Y3560の誘導効率は94〜99.8%の間であった。このうち1つの株系統の誘導効率は99.8%であり、当該株系統はY3560で不稔性を維持可能であった。一方、Y3380の誘導率は93〜99.7%の間であった。このうち1つの株系統の誘導効率は99.7%であり、Y3380で不稔性を維持可能であった。最後に、これら2つの高誘導率の不稔系統は同一の不稔系統であり、当該不稔系統はY3560とY3380で不稔性を維持可能であることがわかった。また、新たな不稔系統はダイコンの細胞質不稔であり、その遺伝子型は上記で選抜育種した7番の安定株系統(カブY23、韓国ダイコンH22由来の遺伝子型)と蓉蘿A001由来であったため、蘿蓉A007と命名した。
【0062】
本実施例2及び実施例3におけるセイヨウアブラナの倍加誘導系統の選抜育種方法は実施例1と同様であった。
【0063】
本発明の方法によれば、育種又は基礎研究において応用価値のあるアブラナ科野菜の素材を迅速(3世代)、高効率、大規模に取得可能となる。且つ、当該特許技術は応用範囲が広く、キャベツ、カリフラワー(ハナヤサイ)、ハクサイ(大白菜、小白菜)、ダイコン、カラシナ系アブラナ科野菜(チンゲン菜、ザーサイ、ダイトウサイ、カイラン等)を含むアブラナ科作物全般に適応される。当該技術は応用領域が広く、アブラナ科野菜作物の高収量化及び品質育種の推進を積極的に促進する役割を有する。
【0064】
上記の実施例は本発明における上記内容を更に説明するものであるが、本発明における上記テーマの範囲を上記実施例にのみ限定するものと解釈すべきではない。よって、上記の内容に基づき実現される技術はいずれも本発明の範囲に属する。
図1
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図13