【実施例1】
【0026】
図1、
図2、
図5、
図7を参照する。多年草であるキャベツ資源を畑に植え、形質を観察したところ、甘336は外観形状、豊作性、耐病性に優れるが、群内において不安定であり、遺伝的分離が見られることがわかった。前年秋の8月中旬に播種、9月中旬に定植、12月下旬に栄養成長に伴い再定植し、1年目の3月末の開花初期に甘336を人為的に除雄して袋掛けにより隔離した。除雄3日後、セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統Y3380で誘導授粉し、袋掛けして隔離した。同年8月に誘導後代を畑に播種したところ、後代25株は外形がキャベツと100%一致していた。且つ、フローサイトメトリーで倍数性を鑑定したところ、いずれも二倍体であることがわかった。2年目の開花期に誘導後代である単一株のつぼみを開き、強制的に近親交配させて袋掛けにより隔離した。これにより、単一株から18株が収穫された。3年目に誘導後代の株系統を鑑定したところ、18株の株系統は全て一致していたが、各株系統間には部分的な差が存在することがわかった。18個の株系統とキャベツの不稔系統(ダイコンの細胞質不稔)である蓉蘿A019を検定交雑したところ、18個の安定株系統の検定交雑後代はいずれも高度不稔となり、18個の安定株系統は不稔系統に対していずれも維持系統であった。形態観察及び収量調査の結果、012株系統が収量に優れ、耐病性であり、且つストレス耐性がより良好であったため、最後に、キャベツダイコンの細胞質不稔系統と直接組み合わせることで新品種を選抜育種可能な蓉甘B012の維持系統を形成した。
【0027】
本実施例において、セイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統は以下の方法で取得した。
【0028】
図2、
図4、
図6、
図7、
図13を参照する。出願人が取得したキャベツ型セイヨウアブラナの四倍体初期世代安定系統P3−2を20個のホモ接合キャベツ型四倍体セイヨウアブラナと正逆交雑したところ、3つの正逆交雑F
1世代において分離が見られた。また、これら3つの組み合わせのF
2世代に安定株系統が出現したことから、P3−2が単為生殖性を遺伝的特性として有することが示された。P3−2と高エルカ酸・矮性セイヨウアブラナ4247を正逆交雑し(矮性・高エルカ酸は優性形質)、交雑F
1世代の種子を染色体倍加した。そして、倍加した後代についてフローサイトメーターによる鑑定又は根端顕微鏡による観察・鑑定を行ったところ、矮性の八倍体株であることが示された。そこで、当該株をY3560と命名した。
【0029】
図2、
図5、
図6、
図10、
図11、
図12を参照する。出願人が取得したキャベツ型セイヨウアブラナの四倍体初期世代安定系統P3−2を20個のホモ接合キャベツ型四倍体セイヨウアブラナと正逆交雑したところ、3つの正逆交雑F
1世代において分離が見られた。また、これら3つの組み合わせのF
2世代に安定株系統が出現したことから、P3−2が単為生殖性を遺伝的特性として有することが示された。P3−2と四倍体キャベツ型矮性セイヨウアブラナD3−5を正逆交雑し(矮性は優性形質)、交雑F
1世代の種子を染色体倍加した。そして、倍加した後代についてフローサイトメーターによる鑑定又は根端顕微鏡による観察・鑑定を行ったところ、矮性の八倍体株であることが示された。そこで、当該株をY3380と命名した。
【0030】
本実施例では、P3−2と矮性セイヨウアブラナD3−5との交雑F
1及びP3−2と矮性・高エルカ酸セイヨウアブラナ4247との交雑F
1の種子を、培地においてコルヒチンにより人為的に染色体倍加した。具体的な方法は以下の通りである。
【0031】
1)純度75%のアルコールで種子の表面を25秒間消毒し、0.1%の昇汞で12分間消毒した。続いて、滅菌水で種子表面の昇汞を洗い流し、滅菌紙で種子表面の水分を拭き取ってから、種子を第1培地(染色体倍加誘導培地)に播種した。
【0032】
2)第1培地で種子を発根及び発芽させた。培養条件としては、温度25℃、昼光照射16時間、照射強度2000ルクス、夜間暗所培養8時間とし、成葉が1〜2枚育ってから株を下胚軸から切り取り、第2培地で引き続き成長させた。
【0033】
3)続いて、切り取った株を第2培地に挿入して培養を続け、側芽が分化してから、側芽と株を第3培地(発根培地)に移して発根培養した。
【0034】
4)発根培養から2週間後、株から太い根が伸びた後に株を室温で3日間育苗し、取り出した。そして、株上の培地を洗い流し、緩衝液に15分間浸漬してから温室に移植した。温室は温度25℃、相対湿度60%とした。これにより、95%以上の移植生育率を保証可能であった。
【0035】
前記第1培地は、以下の成分比率で構成した。
MS培地 1L
6−ベンジルアミノプリン(6BA) 0.5mg
コルヒチン 50mg
ショ糖 20g
寒天 8g
【0036】
第1培地はpH=5.8〜6.0であった。また、MS培地はMurashige及びSkoogにより発明されたもので、MSと略称される。配合については表1を参照する。
【0037】
前記第2培地は、以下の成分比率で構成した。
MS培地 1L
6−ベンジルアミノプリン(6BA) 0.5mg
コルヒチン 30mg
ショ糖 30g
寒天 8g
【0038】
第2培地はpH=5.8〜6.0であった。また、前記第3培地は以下の成分比率で構成した。
MS培地 1L
1−ナフチル酢酸 0.03mg
コルヒチン 20mg
ショ糖 20g
寒天 8g
【0039】
第3培地はpH=5.8〜6.0であった。また、上記の浸漬用緩衝液は以下の成分比率で構成した。
水 1L
ファモキサドン又はシモキサニル 0.6g
1−ナフチル酢酸 0.5mg
【0040】
図2、
図3、
図5を参照する。Y3380を雄株とし、キャベツ型セイヨウアブラナの細胞質不稔系統(0464A)と検定交雑したところ、検定交雑後代の50株はいずれも高性であり、且つ、全て四倍体セイヨウアブラナであった。また、これらのうち49株は完全不稔、1株は半不稔であった。更に、形態的特徴は0464Aと全く同じであった。また、対照検定として、P3−2と矮性セイヨウアブラナD3−5との交雑F
1(非倍加株)を雄株として0464Aと交雑したところ、交雑後代の102株に矮性62株、高性40株が現れた。且つ、稔性の分離が大きく、完全可稔が73株、半不稔が20株、完全不稔が9株現れた。これより、Y3380の遺伝子は検定交雑株に入っておらず、検定交雑後代は0464Aの単為生殖によることが示された。誘導率は98%であった。また、Y3380を雄株とし、キャベツ型セイヨウアブラナ3954を除雄して収束交雑したところ(3954は中双11とCAXとの交雑F
1)、収束交雑後代F
1に分離が見られた。各F
1を近親交配させてF
1近親交配株45個を取得し、F
2世代の株系統を45個植栽したところ、安定株系統が45個現れた。よって、安定株系統は出現率100%、誘導率100%であった。
【0041】
また、Y3380を雄株とし、キャベツ型セイヨウアブラナ3968を除雄して収束交雑したところ(3968は中双11と1365との交雑F
1)、収束交雑後代F
1に分離が見られた。各F
1を近親交配させてF
1近親交配株52個を取得し、F
2世代の株系統52個を植栽したところ、安定株系統が28個現れた、よって、安定株系統は出現比率53.85%、誘導率53.85%であった。
【0042】
また、Y3380を雄株とし、キャベツ型セイヨウアブラナである中双11(一般品種、ホモ接合系統)を除雄して交雑したところ、交雑F
1株が70株得られた。70株のF
1は中双11と全く同じ形態を示した。且つ、各単一株を近親交配したF
2世代に分離は見られず、安定株系統であった。また、形態も中双11と全く同じであった。これより、F
1世代が純系であることが示された。即ち、Y3380と中双11の交雑過程において、中双11の単為生殖が誘導された。また、発生したF
1は単為生殖性で近親交配したため、ホモ接合系統となった。結果、F
1は安定系統、F
2もまた安定的となり、且つ、中双11と完全に同形態となった。これの誘導率は100%であった。
【0043】
同様に、Y3380を雄株とし、ハクサイ型セイヨウアブラナである雅安黄油菜YH(二倍体セイヨウアブラナ、2n=20)を除雄して交雑したところ、交雑F
1株が98株得られた。このうち97株のF
1はYHと全く同じ形態を示した。且つ、各単一株を近親交配したF
2世代の形態はいずれも二倍体であり、YHと外形が一致していた。これより、Y3380とYHの交雑過程においてYHの単為生殖が誘導されたといえる。また、発生したF
1は単為生殖性で近親交配し、且つ、形態もYHと全く同じであった。これの誘導率は98.9%であった。最後に、優性の矮性八倍体株Y3380をセイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統として決定した。
【0044】
図2、
図3、
図4を参照する。Y3560を雄株とし、キャベツ型セイヨウアブラナの細胞質不稔系統(0464A)と検定交雑したところ、検定交雑後代の80株はいずれも高性であった。且つ、76株は四倍体セイヨウアブラナ、2株は二倍体、2株は八倍体であった。このうち、76株の四倍体株は完全不稔、4株は半不稔であり、且つ、形態的特徴は0464Aと全く同じであった。また、対照検定として、P3−2と矮性・高エルカ酸セイヨウアブラナ4247との交雑F
1(非倍加株)を雄株として0464Aと交雑したところ、交雑後代の153株に矮性102株、高性51株が現れた。且つ、稔性の分離が大きく、完全可稔が65株、半不稔が35株、完全不稔が53株現れた。これより、Y3560の遺伝子は検定交雑株に入っておらず、検定交雑後代は0464Aの単為生殖によることが示された。誘導率は95%であった。
【0045】
また、Y3560を雄株とし、ハクサイ型セイヨウアブラナである雅安黄油菜YH(二倍体セイヨウアブラナ、2n=20)を除雄して交雑したところ、交雑F
1株が145株得られた。このうち143株のF
1はYHと全く同形態であった。且つ、各単一株を近親交配したF
2世代の形態はいずれも二倍体であり、YHと外形が一致していた。これより、Y3560とYHの交雑過程においてYHの単為生殖が誘導されたといえる。また、発生したF
1は単為生殖性で近親交配し、且つ、形態もYHと全く同じであった。これの誘導率は98.6%であった。
【0046】
同様に、Y3560を雄株とし、カラシナ型セイヨウアブラナGW(四倍体セイヨウアブラナ、2n=36)を除雄して交雑したところ、交雑F
1株が124株得られた。このうち123株のF
1はGWと全く同形態であった。且つ、各単一株を近親交配したF
2世代の形態はいずれも四倍体であり、GWと外形が一致していた。これより、Y3560とGWの交雑過程においてGWの単為生殖が誘導されたといえる。また、発生したF
1は単為生殖性で近親交配し、且つ、形態もGWと全く同じであった。これの誘導率は99.2%であった。最後に、優性の矮性八倍体株Y3560をセイヨウアブラナの倍加半数体誘導系統として決定した。
【0047】
図3、
図6、
図10、
図11を参照して、初期世代安定系統P3−2は以下の方法で取得した。
【0048】
キャベツ型セイヨウアブラナF009(四倍体、染色体2n=38)とハクサイ型セイヨウアブラナYH(二倍体、雅安黄油菜、染色体2n=20)のつぼみを開き、人為的に除雄して交雑し、F
1世代の交雑種子を取得した。次に、F
1世代の交雑種子を培地においてコルヒチンで人為的に染色体倍加した。そして、倍加したF
1世代株を近親交配(又は強制的近親交配)することでF
2世代を取得し、F
2世代を畑に植栽して観察及び繁殖可能性鑑定(即ち、アセトカルミンによる花粉の染色)することで花粉の繁殖可能性を判断したところ、3種類の状況が見られた(1.半数体株。花粉が極めて少なく、且つ繁殖可能性が極めて低い。2.完全不稔の倍数体株。花器官の発育が阻害され、正常な開花が不可能。花粉なし。3.正常可稔株。花粉量が多く、花粉の繁殖可能性が95%以上)。続いて、F
2世代の正常可稔の単一株を近親交配してF
3世代を取得した。そして、F
3世代についてホモ接合性を鑑定し、F
3世代の単一株系統を植栽したところ、可稔性株系統のうち32%の単一株が一致しており、開花・結実が正常であった。また、一致していた株系統について細胞学的鑑定を行ったところ、染色体本数が一致しており(38本)、染色体の形態に異常は見られなかった。SSR分子マーカーについては、DNAポリメラーゼ連鎖反応によって各特異プライマーによる増幅下での単一株のDNAバンドタイプを電気泳動で観察したところ、各単一株はいずれもF009とYHの交雑後代であることが示された。且つ、各単一株のDNA増幅バンド数とバンドタイプが一致していたことから、これらの株系統はホモ接合系統であり、即ち初期世代安定系統であると判断可能であった。このうち、葉が大きくて亀裂がなく、着生が密であり、含油率55%のキャベツ型(染色体38本)セイヨウアブラナの初期世代安定系統をP3−2と命名した。
【0049】
本実施例では、F
1世代の交雑種子を培地においてコルヒチンにより人為的に染色体倍加した。具体的な方法は以下の通りである。
【0050】
1)純度75%のアルコールで種子の表面を25秒間消毒し、0.1%の昇汞で12分間消毒した。続いて、滅菌水で種子表面の昇汞を洗い流し、滅菌紙で種子表面の水分を拭き取ってから、種子を第1培地(染色体倍加誘導培地)に播種した。
【0051】
2)第1培地で種子を発根及び発芽させた。培養条件としては、温度25℃、昼光照射16時間、照射強度2000ルクス、夜間暗所培養8時間とし、成葉が1〜2枚育ってから株を下胚軸から切り取り、第2培地で引き続き成長させた。
【0052】
3)続いて、切り取った株を第2培地に挿入して培養を続け、側芽が分化してから、側芽と株を第3培地(発根培地)に移して発根培養した。
【0053】
4)発根培養から2週間後、株から太い根が伸びた後に株を室温で3日間育苗し、取り出した。そして、株上の培地を洗い流し、緩衝液に15分間浸漬してから温室に移植した。温室は温度25℃、相対湿度60%とした。これにより、95%以上の移植生育率を保証可能であった。
【0054】
前記第1培地は、以下の成分比率で構成した。
MS培地 1L
6−ベンジルアミノプリン(6BA) 0.5mg
コルヒチン 30mg
ショ糖 20g
寒天 8g
【0055】
第1培地はpH=5.8〜6.0であった。また、MS培地はMurashige及びSkoogにより発明されたもので、MSと略称される。配合については表1を参照する。
【0056】
前記第2培地は、以下の成分比率で構成した。
MS培地 1L
6−ベンジルアミノプリン(6BA) 0.5mg
コルヒチン 20mg
ショ糖 30g
寒天 8g
【0057】
第2培地はpH=5.8〜6.0であった。また、前記第3培地は以下の成分比率で構成した。
MS培地 1L
1−ナフチル酢酸 0.03mg
コルヒチン 5mg
ショ糖 20g
寒天 8g
【0058】
第3培地はpH=5.8〜6.0であった。また、上記の浸漬用緩衝液は以下の成分比率で構成した。
水 1L
ファモキサドン又はシモキサニル 0.6g
1−ナフチル酢酸 0.5mg
【0059】
【表1】