特許第6670072号(P6670072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670072
(24)【登録日】2020年3月3日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】交通信号システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/017 20060101AFI20200309BHJP
   G08G 1/04 20060101ALI20200309BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   G08G1/017
   G08G1/04 C
   H04N7/18 D
   H04N7/18 U
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-200103(P2015-200103)
(22)【出願日】2015年10月8日
(65)【公開番号】特開2017-73019(P2017-73019A)
(43)【公開日】2017年4月13日
【審査請求日】2018年8月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194146
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 明
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(74)【代理人】
【識別番号】100141324
【弁理士】
【氏名又は名称】小河 卓
(72)【発明者】
【氏名】山越 基玄
【審査官】 上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−227256(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104732764(CN,A)
【文献】 特開昭62−164200(JP,A)
【文献】 特開平06−251285(JP,A)
【文献】 特開2013−164803(JP,A)
【文献】 特開昭63−024499(JP,A)
【文献】 特開2017−091244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
H04N 7/18
G06T 1/00−1/40
3/00−5/50
9/00−9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号灯器と、前記信号灯器を制御する交通信号制御機と、前記信号灯器が設置されている交差点を撮影する撮影装置と、を備える交通信号システムであって、
前記交通信号制御機は、
前記信号灯器のオン・オフを制御すると共に、電流及び電圧から前記信号灯器の異常の有無を検知する灯器開閉部と、
前記信号灯器を制御する際に用いる階梯情報を、当該階梯情報における階梯ステップの切り替わったときに、前記撮影装置に送信する制御部と、を備え、
前記撮影装置は、
前記信号灯器を含んで前記交差点を撮影するように設置されており、前記階梯情報を前記交通信号制御機から取得して、前記階梯情報を取得したタイミングを基準に撮影し、前記灯器開閉部により前記信号灯器に異常があると検知された場合には、その旨を前記交通信号制御機から受信し、前記階梯情報及び検知された異常状態に関する情報撮影した画像に付加する
ことを特徴とする交通信号システム。
【請求項2】
前記交通信号制御機は、電源周波数を基準として動作タイミングを設定していることを特徴とする請求項1に記載の交通信号システム。
【請求項3】
前記撮影装置は、前記階梯情報を付加した画像を保存する記憶部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の交通信号システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通信号システムに係り、交差点の状況を撮影する撮影装置を備える交通信号システムに関する。
【背景技術】
【0002】
交差点における状況を確認する際には、現地交差点にて確認作業が必要となる。例えば、交差点で事故が発生した場合、信号灯器が点灯していたかどうか、主道路および従道路で、どの灯器色が点灯していたかを把握する必要がある。
【0003】
そこで、交差点の状況を撮影し、交差点の状況を把握可能とする技術がある(例えば、特許文献1参照)。具体的には、信号無視した違反車両を自動的に検出して記録し、その車両の前面部が撮影された画像にその時点の時刻を含む交通情報(信号現示状態等)を重畳する。さらに、違反車両を検出した時点を含む前後所定時間内の道路交差点の交通流の画像を、時刻を含む交通情報が重畳された画像で得ることで、優れた証拠能力を確保することを目指している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−234774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、信号機の情報とカメラで撮影した画像とを連動させ優れた証拠能力を確保するには、信号灯器の点灯タイミングと画像との整合性を確実にする必要がある。カメラの1秒のカウントは、つまり、カメラの内部時計の計時基準は、水晶振動子やソフト等の内部時計によって構成される。しかし、信号機の内部時計の計時基準は、例えば管轄官庁の仕様によって信号機に供給される商用の交流電力の50Hzまたは60Hzの電源周波数を使っている。商用電力の周波数には変動があるため、カメラの内部時計との間に差が発生する。したがって、例えばカメラが撮影した交通事故現場の画像から事故の発生時刻を確定し、その時刻をもとに信号機が点灯していた灯器色を確定するが、ここで確定した灯器色は実は違う時刻の灯器色である場合が生じ、事故現場を撮影した画像と信号機が点灯していた灯器色との整合性が取れない。すなわち、交差点等に於いて信頼性の高い画像を確保するには、灯器の点灯開始タイミングに適切にリンクした画像を取得する必要がある。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みなされたものであって、上記課題を解決する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、信号灯器と、前記信号灯器を制御する交通信号制御機と、前記信号灯器が設置されている交差点を撮影する撮影装置と、を備える交通信号システムであって、前記交通信号制御機は、前記信号灯器のオン・オフを制御すると共に、電流及び電圧から前記信号灯器の異常の有無を検知する灯器開閉部と、前記信号灯器を制御する際に用いる階梯情報を、当該階梯情報における階梯ステップの切り替わったときに、前記撮影装置に送信する制御部と、を備え、前記撮影装置は、前記信号灯器を含んで前記交差点を撮影するように設置されており、前記階梯情報を前記交通信号制御機から取得して、前記階梯情報を取得したタイミングを基準に撮影し、前記灯器開閉部により前記信号灯器に異常があると検知された場合には、その旨を前記交通信号制御機から受信し、前記階梯情報及び検知された異常状態に関する情報撮影した画像に付加する。
また、前記交通信号制御機は、電源周波数を基準として動作タイミングを設定していてもよい。
また、前記撮影装置は、前記階梯情報を付加した画像を保存する記憶部を備えてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、信号機を含めて交差点を撮影した場合に、点灯している灯器(灯色)を把握可能な画像を得ることができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る、主道路と従道路が交差するある交差点における交通信号システムの信号灯器の配置を示す図である。
図2】本実施形態に係る、交通信号システムの概略構成を示す機能ブロック図である。
図3】本実施形態に係る、図2の交差点における現示階梯表の例である。
図4】本実施形態に係る、撮影装置の撮影動作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。
【0011】
図1は、主道路と従道路が交差するある交差点における交通信号システム1の信号灯器50の配置を示す。図2は、本実施形態に係る交通信号システム1の概略構成を示す機能ブロック図である。図3は、その交差点における現示階梯表の例である。
【0012】
交通信号システム1は、交通信号制御機10と、交通信号制御機10に動作制御される信号灯器50と、交通信号制御機10に接続し信号灯器50に連動して交差点の状況を撮影する複数の撮影装置60とを備える。図1では、撮影装置60は、交差点の左下側及び右上側に設置されている。
【0013】
なお、撮影装置60は、信号灯器50を含めて交差点の状況を撮影する。したがって、ある撮影のタイミングに於いて、全ての信号灯器50の点灯状況が把握できるように、表と裏の両側に灯器がある信号機であったり、レンズの性能や向きを考慮して設置台数が定まる。したがって、レンズが広角レンズや魚眼レンズのような場合には、設置台数を少なくすることができる。
【0014】
信号灯器50は、一般的な構成を有するもので、青灯器51、黄灯器52及び赤灯器53を備える。青灯器51、黄灯器52及び赤灯器53は、例えば、それぞれの信号色に対応したLED又は電灯を備えて構成されている。
【0015】
交通信号制御機10は、制御部12と、信号機計時部17と、電源部18と、灯器開閉部20と、通信制御部24とを備える。
【0016】
制御部12は、現示階梯表部15と、撮影制御部16とを備える。制御部12は、各構成要素を統括的に制御するとともに、現示階梯表部15に予め記憶している現示階梯表に基づいて時間の経過とともにステップ番号に従って灯器開閉部20の動作を制御する。
【0017】
現示階梯表には、図3に示すように、階梯情報として、ステップ番号、表示秒数、主道路と従道路の灯器の表示色が記録されている。例えば、ステップ番号「1」では、表示秒数が「20秒」、主道路の灯器色が「青」、従道路の灯器色が「赤」となっている。
【0018】
また、制御部12の撮影制御部16は、階梯ステップが切り替わるときに、撮影装置60に対してステップ番号を含む階梯情報を通知する。言い換えると、撮影制御部16は、撮影装置60へ階梯情報を送ることで撮影開始のタイミングを通知する。
【0019】
信号機計時部17は、電源部18の交流電力の周波数をもとに現在時刻や指定タイミングからの時間経過を計時し、計時した現時刻や経過時間をもとに、信号灯器50等を動作させる。
【0020】
電源部18は、外部の商用の交流電力から電力を取得し、各構成要素に動作用の電力を供給すると共に、灯器開閉部20を介して信号灯器50へ点灯用の電力を供給する。
【0021】
灯器開閉部20は、リレーユニットやブレーカー、配電盤を備え、信号灯器50の青灯器51、黄灯器52及び赤灯器53を、制御部12の制御のもと点灯動作させる。また、灯器開閉部20は、電流・電圧センサを備え、信号灯器50の青灯器51、黄灯器52及び赤灯器53に接続される各信号線の電流及び電圧を計測して信号灯器50の異常状態を検知し、異常状態を検知した場合は制御部12を介して撮影装置60の画像処理部64に情報を送る。
【0022】
通信制御部24は、外部の装置との通信インタフェイスであって、専用回線またはインターネット回線を介して中央装置90と通信をする。中央装置90は、例えば交通管制センター等のような所定の地域の交通管制を行う基地局や交通信号機を保守するための車両に搭載された装置である。回線は、有線又は無線を問わない。
【0023】
撮影装置60は、交通信号制御機10に連動して交差点の状況を撮影する。具体的、には、撮影装置60は、カメラ部62と、画像処理部64と、記憶部66と、カメラ計時部68とを備える。
【0024】
カメラ部62は、CMOSセンサ等の撮像素子と、MPU等の制御ユニットと、通信ユニットを備え、所定のタイミングで撮影方向、すなわち交差点を、所定の撮影間隔で撮影する。ここで、撮影される画像は、信号灯器50の点灯状況が分かるように撮影される。撮影間隔は、カメラ計時部68の計測時間に基づく。
【0025】
また、カメラ部62は、交通信号制御機10の制御部12から階梯情報を受信すると、階梯情報をトリガーに撮影を行うとともに、撮影間隔の計時をリセットして再びカウントを開始する。これによって、撮影タイミングを交通信号制御機10の動作に適切に連動させる。すなわち、交通信号制御機10の信号機計時部17の時刻にずれが生じて撮影装置60のカメラ計時部68の時刻との間に差がある場合でも、信号灯器50の灯色が変わる動作タイミングに合わせて撮影され、正確な時刻を計測するカメラ計時部66の時刻を撮影時刻として時刻情報を画像データに付与する。撮影間隔は、1秒または1秒の整数分の1で除した値とする。これは、図3に示すように、各ステップの表示秒数が「1秒単位」であり、階梯ステップの切り替わりのタイミングを適切に撮影タイミングに反映させるためである。このようにすることで、例えば階梯ステップの切り替るタイミングで撮影開始となり、信号灯器50が切り替わる直前をカメラ部62が撮影をして連続した撮影をしてしまうことを防止することができる。
【0026】
画像処理部64は、交通信号制御機10の制御部12から受信した階梯情報を保存している記憶部66から階梯情報を取得するとともに、撮影した交差点の画像に、撮影時点の階梯情報及び時刻情報を付与して画像データを作成する。時刻情報は一般的なデジタルカメラで撮影した場合でも、画像データのプロパティに含まれる。また、交通信号制御機10の灯器開閉部20で異常状態を検出した情報があれば画像データに付与する。本実施形態では、画像データに、撮影画像及び時刻情報に加えて、信号灯器50の異常状態、階梯情報(例えば、当該ステップ番号)または記憶部66に保存している現示階梯表が図として追加される。なお、画像データは、交通信号制御機10の制御部12及び通信制御部24を介して中央制御90に送信される。
【0027】
記憶部66は、画像処理部64で作成した画像データを記録・保存する。なお、所定の期間保存して期限が過ぎると画像データは消去される。また、予め現示階梯表を保存している。なお、交通信号制御機10の制御部12から階梯情報を受信した場合は、階梯情報を保存する。
【0028】
カメラ計時部68は、例えば水晶振動子を用いた時計機能を有し、撮影した画像に時刻情報を付与する際に、時刻情報をカメラ部62に与える。また、カメラ計時部68は、内部タイマとしての機能を有し、交通信号制御機10からの階梯情報の取得タイミングを基準とした経過時間の計測を行う。
【0029】
なお、画像処理部64やカメラ計時部68は、それぞれの撮影装置60に設けられたが、複数のカメラ部62に共通に設けられてもよい。
【0030】
以上の構成による交通信号システム1における撮影動作について、図4に示す撮影装置60の撮影動作のフローチャートを参照して説明する。ここでは、撮影間隔は1秒とする。撮影装置60において、カメラ部62は、交通信号制御機10の制御部12から階梯情報を受信すると(S10のY)、階梯情報を記憶部66へ保存し(S12)、撮影を行うと共に(S14)、カメラ計時部68の内部タイマをリセットし初期化する(S16)。階梯情報の受信が無い場合(S10のN)、受信処理を継続する。
【0031】
つづいて、画像処理部64は、記憶部66から階梯情報を取得し、階梯情報または異常状態を検出した情報を撮影した画像に付加して画像データを作成し(S18)、作成した画像データを記憶部66へ保存する(S20)。さらに、画像処理部64は、交通信号制御機10を介して中央装置90へ撮影した画像データを送信する(S22)。
【0032】
画像データの送信が終了すると、カメラ部62は、交通信号制御機10の制御部12から階梯情報を受信したかを確認する(S24)。
【0033】
未受信の場合(S24のN)、内部タイマが撮影間隔(1秒カウント)を経過したかを確認する(S26)。内部タイマが撮影間隔を経過していない場合は(S26のN)、交通信号制御機10の制御部12から階梯情報を受信したかを確認する(S24)。また、内部タイマが撮影間隔を経過した場合は(S26のY)、同じ階梯情報を有した状態で、カメラ部62は撮影を行う(S14)。なお、交通信号制御機10の制御部12から階梯情報を受信したことを確認した場合は(S24のY)、階梯情報を記憶部66へ保存して書き換えを行う。(S12)
【0034】
以上、本実施形態によると、信号灯器50の青灯器51、黄灯器52、赤灯器53の点灯開始に確実にリンクした画像を取得できる。特に、交通信号システム1が、交通信号制御機10が中央装置90と通信しないスタンドアロンの構成の場合、交通信号制御機10の信号機計時部17に大きな誤差が発生していても修正ができない。このため、従来では出来なかった、撮影タイミングと信号灯器50の切り替わったタイミングのリンクが、高い精度で実現できる。
【0035】
また、ステップ番号を撮影した画像に追加するため、撮影時の信号灯器50の点灯状況を把握するのが容易となる。すなわち、交差点を通過する車両が事故を起こした場合や違反した場合において、それらの状況の正確な把握が容易となる。
【0036】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、また、そうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0037】
例えば、制御部12の撮影制御部16が通知する階梯情報に、その時のステップ番号の表示秒数を加えて通知する場合は、記憶部66がステップ番号を基にして、そのステップ番号の表示秒数の書き替えを行い最新の現示階梯表を保存することができる。すなわち、最新の現示階梯表を備えた画像データとなり、その時間帯に交通信号制御機10の制御部12が正常に動作していたかを確認することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 交通信号システム
10 交通信号制御機
12 制御部
15 現示階梯表部
16 撮影制御部
17 信号機計時部
18 電源部
20 灯器開閉部
24 通信制御部
50 信号灯器
51 青灯器
52 黄灯器
53 赤灯器
60 撮影装置
62 カメラ部
64 画像処理部
66 記憶部
68 カメラ計時部
90 中央装置
図1
図2
図3
図4