(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のようにセパレータと正極及び負極の少なくとも一方とが一体化された電極体では、一体化されていない電極体に比べて、剛性が高い。そのため、電池ケース内に封入された状態で、該電池ケースに衝撃が加わると、電極体に局所的に大きな衝撃が加わりやすい。
【0007】
すなわち、セパレータと正極及び負極の少なくとも一方とが一体化されていない電極体では、該電極体が収納された電池ケースに衝撃が加わった場合でも、その衝撃を、電極体の正極、負極及びセパレータの変形によって吸収することができる。これに対し、セパレータと正極及び負極の少なくとも一方とが一体化された電極体では、各部材の変形が許容されにくいため、前記電池ケースに加わった衝撃が電極体の内部に伝わりやすい。
【0008】
そうすると、正極及び負極の強度によっては、電極体の内部で正極または負極が損傷を受ける場合がある。一般的に電極体の最外周側に位置する正極は、電極体に衝撃が加わった際に損傷を受けやすい。
【0009】
本発明では、接着層を有するセパレータが、正極及び負極とともに重ね合わされた状態で巻回されるとともに、前記正極及び負極の少なくとも一方と一体化された電極体と、該電極体を封入する電池ケースとを備えた密閉型電池において、前記電池ケースに加わる衝撃によって正極が損傷を受けるのを防止可能な構成を得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らの鋭意研究の結果、正極、負極及びセパレータを厚み方向に重ね合わせた状態で巻回された電極体において、セパレータと正極及び負極の少なくとも一方とが一体化されている場合、電極体の最外周側に位置する正極の集電体の厚みが11μm以下であると、電池ケースに加わった衝撃によって、電極体が損傷を受けやすいことを見出した。すなわち、後述の実施例の表1に示すように、集電体の厚みが11μmよりも大きければ、該集電体が十分な厚みを有するため、電池ケースに衝撃が加わった場合でも、電極体の損傷を防止することができる。これに対し、集電体の厚みが11μm以下の場合には、該集電体の強度が低下するため、電池ケースに衝撃が加わった場合に、電極体が損傷を受けやすい。
【0011】
本発明者らは、上述のように、セパレータと正極及び負極の少なくとも一方とが一体化されている構成において、正極の集電体の厚みが11μm以下の場合に電極体が損傷を受ける理由について鋭意検討した。その結果、本発明者らは、集電体の厚みが薄いと、集電体上に電極層を形成した場合の方が、集電体だけの場合に比べて損傷を受けやすいことに気づいた。すなわち、本発明者らは、厚みが薄い集電体上に電極層を形成することにより、集電体単体に比べて強度が低下することを見出した。
【0012】
具体的には、集電体上に電極層を形成すると、集電体単体の場合に比べて、単位面積当たりの強度が低下する。例えば、集電体だけの場合と集電体上に電極層を形成した場合とでそれぞれ引張強さ試験(JIS Z 2241に準拠)を行うと、集電体だけの場合の引張強さに対し、集電体上に電極層を形成した場合の引張強さは約80%である。
【0013】
一般的に、集電体上に電極層を形成する場合、集電体上に塗膜を形成した後、ローラ等によって塗膜に圧力をかける。このように、集電体上の塗膜の密度を高めることにより、電極層を得る。本発明者らは、上述のように集電体上に電極層を形成することにより強度が低下する理由として、塗膜に圧力をかけることにより得られた電極層が、電極(正極)の強度を、集電体の強度よりも低下させていることが一因であると考えた。
【0014】
以上の点を考慮して、本発明者らは、以下のような構成に想到した。
【0015】
本発明の一実施形態にかかる密閉型電池は、それぞれシート状に形成された正極、負極及びセパレータが厚み方向に積層された状態で巻回された電極体と、内部に前記電極体が封入される電池ケースとを備える。前記正極及び前記負極は、それぞれ、金属箔からなる集電体と、該集電体の少なくとも一方の面上に形成された電極層とを有する。前記セパレータは、多孔質層と、該多孔質層の厚み方向の少なくとも一方の面上に形成された接着層とを有する。前記電極体は、前記巻回された状態で径方向に潰れた扁平状であり、且つ、幅方向の両側に幅方向外方にそれぞれ突出する一対の屈曲部を有する。前記セパレータの前記接着層は、前記正極及び前記負極の少なくとも一方に接着されている。前記正極は、前記集電体が11μm以下の厚みを有するとともに、前記電極体の最外周側で且つ前記一対の屈曲部のうち少なくとも一方の屈曲部において前記幅方向外方に最も突出した部分に対応する位置に、前記集電体上に前記電極層が形成されていない電極層非形成領域を有する(第1の構成)。
【0016】
以上の構成により、セパレータと正極及び負極の少なくとも一方とが一体化された扁平状の電極体において、前記正極の集電体の厚みが11μm以下の場合でも、電池ケースに加わった衝撃によって、前記正極が損傷を受けるのを防止できる。
【0017】
すなわち、前記正極は、電極体の最外周側で且つ電極体の幅方向両側に位置する一対の屈曲部のうち少なくとも一方の屈曲部において前記幅方向外方に最も突出した部分に対応する位置に、集電体上に電極層が形成されていない電極層非形成領域を有する。これにより、電極体の最外周側で且つ電極体の屈曲部において前記幅方向外方に最も突出した部分に対応する位置で、前記正極の強度低下を抑制することができる。
【0018】
したがって、電池ケースに対し、電極体の屈曲部に対応する位置に衝撃が加わった場合でも、該電極体の最外周側に位置する正極が損傷を受けるのを防止できる。
【0019】
ここで、屈曲部において幅方向外方に最も突出した部分に対応する位置とは、正極において、前記最も突出した部分の電極体内方の位置を意味する。すなわち、電極層非形成領域は、正極において、屈曲部の幅方向外方に最も突出した部分を構成する位置に設けられている。
【0020】
前記第1の構成において、前記電極層非形成領域は、前記正極に、前記電極体の最外周側で且つ前記幅方向外方に最も突出した部分に対応する位置から、巻き終り側の端部まで形成されている(第2の構成)。
【0021】
この構成により、正極の集電体に、電極体の最外周側で且つ屈曲部の幅方向外方に最も突出した部分に対応する位置から、巻き終り側の端部まで、電極層を形成する必要がない。よって、電極層非形成領域を容易に形成することができる。
【0022】
前記第1の構成において、前記電極層非形成領域は、前記正極に、前記電極体の最外周側で且つ前記一対の屈曲部のうち少なくとも一方の屈曲部に対応する範囲に形成されている(第3の構成)。
【0023】
これにより、正極の集電体に、該電極体の最外周側で且つ屈曲部に対応する範囲には電極層が形成されない。よって、電池ケースに対して屈曲部に対応する位置に衝撃が加わった場合でも、電極体の最外周側に位置する正極が損傷を受けるのを防止できる。
【0024】
ここで、屈曲部に対応する範囲とは、正極において、前記屈曲部の電極体内方の範囲を意味する。すなわち、電極層非形成領域は、正極において、屈曲部を構成する範囲に設けられている。
【0025】
前記第1から第3の構成のうちいずれか一つの構成において、前記セパレータは、前記電極体の最外周に位置するように、前記正極及び前記負極と積層された状態で巻回されている(第4の構成)。
【0026】
このように、セパレータを電極体の最外周に位置付けることにより、該セパレータが該電極体に加わる衝撃を緩衝する緩衝材としての役割を果たすとともに、電極体が電池ケース内で移動するのを抑制することができる。すなわち、セパレータの弾性復元力及び表面の摩擦によって、電池ケース内で電極体が移動するのを抑制することができる。
【0027】
これにより、密閉型電池が衝撃を受けた場合に、電池ケース内で電極体が移動して該電極体が大きな衝撃を受けるのを防止することができる。したがって、正極が損傷を受けるのをより確実に防止できる。
【0028】
前記第4の構成において、前記セパレータの前記接着層は、前記電極体の外表面に位置する面に形成されている(第5の構成)。これにより、セパレータが電池ケース内で移動するのをより確実に防止することができる。よって、密閉型電池が衝撃を受けた場合に、電池ケース内で電極体が移動するのをより確実に防止することができる。したがって、正極が損傷を受けるのをさらに確実に防止できる。
【0029】
前記第1から第5の構成のうちいずれか一つの構成において、密閉型電池は、前記電極体の巻き終り部分を止める巻止めテープをさらに備える。前記巻止めテープは、前記電極体における前記一対の屈曲部のうち一方の屈曲部の少なくとも一部を覆うように前記電極体上に貼られている。前記電極層非形成領域は、前記正極に、前記電極体の最外周側で且つ前記一対の屈曲部のうち他方の屈曲部において前記幅方向外方に最も突出した部分に対応する位置に、形成されている(第6の構成)。
【0030】
電極体の幅方向両側に位置する一対の屈曲部のうち、電極体の巻き終り部分を止めるための巻止めテープが貼られている一方の屈曲部では、電池ケースが衝撃を受けた場合に、該巻止めテープが緩衝材として機能する。そのため、巻止めテープが貼られている屈曲部では、正極は、電池ケースが衝撃を受けても損傷を受けにくい。
【0031】
一方、巻止めテープが貼られていない他方の屈曲部では、電池ケースが衝撃を受けた場合に、正極が損傷を受けやすい。そのため、上述の第1から第5の構成を適用することにより、電池ケースが衝撃を受けた際に、正極が損傷を受けるのを防止できる。
【0032】
すなわち、上述の第1から第5の構成は、巻止めテープが貼られていない屈曲部において、正極に適用することがより効果的である。
【0033】
前記第1から第6の構成のうちいずれか一つの構成において、前記屈曲部は、前記幅方向の外方に向かって突出する半円状に形成されている(第7の構成)。このような形状を有する屈曲部では、電池ケースに対して該屈曲部に対応する位置に衝撃が加わった場合に、電極体の幅方向外方に最も突出した部分が最も大きな衝撃を受ける。
【0034】
したがって、電極体の屈曲部が上述のような形状を有する場合には、上述の第1から第6の構成を、正極に適用することが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明の一実施形態に係る密閉型電池によれば、セパレータと正極及び負極の少なくとも一方とが一体化された扁平状の電極体において、前記正極は、集電体が11μm以下の厚みを有するとともに、電極体の最外周側で且つ屈曲部において幅方向外方に最も突出した部分に対応する位置に、前記集電体上に電極層が形成されていない電極層非形成領域を有する。これにより、電池ケースに加わる衝撃によって正極が損傷を受けるのを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0038】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る密閉型電池1の概略構成を示す斜視図である。
図2は、
図1におけるII−II線断面図である。この密閉型電池1は、有底筒状の外装缶10と、該外装缶10の開口部を覆う蓋板20と、該外装缶10内に収納される電極体30とを備えている。外装缶10の開口部を蓋板20によって覆った状態で該開口部と蓋板20の外周部とを溶接(接続)することによって、内部に空間を有する柱状の電池ケース2が構成される。電池ケース2は、幅方向(
図1の左右方向)の寸法が厚み方向(
図1の紙面方向)の寸法よりも大きい扁平状に形成されている。
【0039】
なお、この電池ケース2内には、電極体30以外に非水電解液(以下、単に電解液という)等も封入されている。
【0040】
電極体30は、
図3に示すように、それぞれシート状に形成された正極31及び負極32を、例えば正極31を挟み込むとともに正極31と負極32との間にセパレータ33がそれぞれ位置するように重ね合わせた状態で、中心軸Pを中心に渦巻状に巻回することによって形成された巻回電極体である。なお、
図3は、正極31、負極32及びセパレータ33を厚み方向に重ね合わせた状態で巻回して電極体を構成する様子を模式的に示す図である。
【0041】
電極体30は、正極31、負極32及びセパレータ33を重ね合わせた状態で巻回した後、熱プレスによって押しつぶすことにより扁平状に形成される。電極体30の詳しい構成は、後述する。
【0042】
図2及び
図3に示すように、電極体30の正極31には、正極リード34が接続されている一方、負極32には負極リード35が接続されている。正極リード34及び負極リード35は、電極体30の外部に引き出されている。そして、この正極リード34の先端側は、蓋板20に接続されている。一方、負極リード35の先端側は、後述するように、接続板27を介して負極端子22に接続されている。
【0043】
なお、
図2には、電極体30の外周側の数層分しか図示していない。しかしながら、この
図2では電極体30の内周側部分の図示を省略しているだけであり、当然のことながら、電極体30の内周側にも正極31、負極32及びセパレータ33が存在する。
【0044】
外装缶10は、アルミニウム合金製の有底筒状部材であり、蓋板20とともに電池ケース2を構成する。外装缶10は、
図1に示すように、長方形の短辺側が円弧状に形成された底面11を有する有底筒状の部材である。詳しくは、外装缶10は、底面11と、滑らかな曲面を有する扁平筒状の側壁12とを備えている。すなわち、外装缶10は、底面11の短辺方向に対応する厚み方向の寸法が、底面11の長辺方向に対応する幅方向よりも小さくなる(例えば、厚みが幅の1/10程度になる)ように、扁平形状に形成されている。また、この外装缶10は、後述するように正極リード34に接続される蓋板20と接合されているため、密閉型電池1の正極端子も兼ねている。
【0045】
図2に示すように、外装缶10の内側の底部には、該外装缶10を介して電極体30の正極31と負極32との間で短絡が発生するのを防止するためのポリエチレンシートからなる底部絶縁体15が配置されている。上述の電極体30は、該底部絶縁体15上に一方の端部が位置付けられるように配置されている。
【0046】
蓋板20は、外装缶10の開口部を覆った状態で、外周部が該外装缶10の開口部に溶接によって接続されている。この蓋板20は、外装缶10と同様、アルミニウム合金製の部材からなり、該外装缶10の開口部の内側に嵌合可能なように長方形の短辺側が円弧状に形成されている。
【0047】
蓋板20には、その長手方向の中央部分に貫通孔20aが形成されているとともに、該貫通孔20aを挟んで蓋板20の長手方向に開裂ベント40及び注入口24が形成されている。すなわち、蓋板20には、開裂ベント40、貫通孔20a及び注入口24が、蓋板20の長手方向に並んで設けられている。
【0048】
図2に示すように、前記蓋板20の貫通孔20a内には、ポリプロピレン製の絶縁パッキング21及びステンレス鋼製の負極端子22(端子)が挿通されている。具体的には、概略柱状の負極端子22が挿通された概略円筒状の絶縁パッキング21が貫通孔20aの周縁部に嵌合されている。
【0049】
負極端子22は、円柱状の軸部の両端に平面部がそれぞれ一体形成された構成を有している。負極端子22は、平面部が外部に露出する一方、該軸部が絶縁パッキング21内に位置付けられるように、該絶縁パッキング21に対して配置されている。
【0050】
負極端子22は、軸部が、ニッケル製の接続板27を貫通することにより、該接続板27と電気的に接続されている。接続板27は、長方形状の板部材であり、蓋板20の長手方向、すなわち負極端子22から開裂ベント40に向かって延びるように、負極端子22に接続されている。これにより、負極端子22は、接続板27、負極リード35を介して、電極体30の負極32に電気的に接続されている。
【0051】
接続板27と蓋板20との間には、両者を電気的に絶縁するための平面視で長方形状の絶縁板26が配置されている。この絶縁板26も、接続板27と同様、負極端子22の軸部によって貫通されているとともに、開裂ベント40に向かって延びるように配置されている。すなわち、負極端子22の軸部は、蓋板20を貫通するとともに、絶縁板26及び接続板27を貫通している。
【0052】
蓋板20に形成された注入口24は、電池ケース2内に電解液を注入するための貫通孔である。注入口24は、平面視で略円形状に形成されている。この注入口24は、
図2に示すように、断面T字状の封止栓25によって封止されている。電池ケース2内に電解液を注入した後に、封止栓25と注入口24の周縁部との間に隙間が生じないように、該封止栓25の鍔部の外周部分と蓋板20とはレーザー溶接によって接合される。
【0053】
図1に示すように、開裂ベント40は、蓋板20の平面視で、すなわち電池ケース2を上方から見て、蓋板20の長手方向に長い長円状に形成されている。開裂ベント40は、蓋板20の他の部分の厚みよりも小さい厚みを有する平面視で長円状の薄肉弁体41と、該薄肉弁体41の外周を囲むように蓋板20の上面側に溝が設けられた薄肉部42とを有する。
【0054】
以上のように、薄肉弁体41を囲むように薄肉部42を設けることにより、電池ケース2内の圧力が上昇した際に、電池ケース2の内圧上昇による該電池ケース2の変形及び内圧によって、蓋板20において厚みが最も小さい薄肉部42が破断する。そうすると、薄肉弁体41は蓋板20に対して上方に押し上げられるため、電池ケース2内のガス等が外部に放出される。これにより、電池ケース2が内圧上昇によって破損するのを防止できる。
【0055】
(電極体)
次に、電極体30の構成を、
図3から
図5を用いて以下で詳細に説明する。
図4は、電極体30の概略構成を示す斜視図である。
図5は、電極体30の巻回構造を模式的に示す図である。すなわち、
図5は、説明のために、正極31、負極32及びセパレータ33を巻回した状態を模式的に示している。
【0056】
上述のように、電極体30は、それぞれシート状に形成された正極31、負極32及びセパレータ33を厚み方向に積層した状態で、中心軸Pを中心に渦巻状に巻回されることにより形成されている。
【0057】
本実施形態では、電極体30は、正極31及び負極32よりも長手方向に長い一対のセパレータ33を有する。該一対のセパレータ33は、正極31を挟み込むとともに、該正極31と負極32との間に位置するように、正極31及び負極32に対して厚み方向に重ね合わされている。
【0058】
また、本実施形態では、厚み方向に重ね合わされた正極31、負極32及び一対のセパレータ33は、該一対のセパレータ33のうち正極31と負極32との間に位置していないセパレータ33が外周側に位置するように、巻回される。これにより、電極体30の外表面には、セパレータ33が位置付けられる。
【0059】
本実施形態では、電極体30は、径方向に熱プレスさせることによって、扁平状に形成されている。後述するように、本実施形態では、セパレータ33が接着性樹脂層を有するため、熱プレスによって該接着性樹脂層が溶融して正極31及び負極32の少なくとも一方に接着される。これにより、電極体30は、正極31、負極32及びセパレータ33が一体化した略直方体状に形成されている。
【0060】
電極体30は、上述のように扁平状に形成されることにより、
図4に示すように、幅方向(
図4における左右方向)の両側に、幅方向外方に突出する一対の屈曲部30a,30bを有する。一対の屈曲部30a,30bは、正極31、負極32及びセパレータ33を巻回する際の中心軸Pの軸線方向から電極体30を見て、前記幅方向の外方に突出する円弧状に形成されている。すなわち、一対の屈曲部30a,30bは、電極体30の幅方向の両側に形成されたR部である。
【0061】
一対の屈曲部30a,30bのうち一方の屈曲部30aには、電極体30のセパレータ33の巻き終りを止めるための巻止めテープ36の一部が貼られている。この巻止めテープ36は、PP(ポリプロピレン)等によって構成されている。
【0062】
ここで、電極体30の正極31、負極32及びセパレータ33は、上述のとおり、該セパレータ33の長手方向の長さが正極31及び負極32の長手方向の長さよりも長い。すなわち、セパレータ33の長手方向の長さは、正極31及び負極32とともに巻回した状態で、電極体30の外表面を覆うような長さを有する。これにより、電極体30の外表面は、セパレータ33によって覆われている。
【0063】
正極31は、正極活物質を含有する正極活物質層31b(電極層)を、アルミニウム等の金属箔製の正極集電体31a(集電体)上に設けたものである。詳しくは、正極31は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能なリチウム含有酸化物である正極活物質、導電助剤及びバインダなどを含む正極合剤を、アルミニウム箔などからなる正極集電体31a上に塗布して乾燥させた後、ローラ等によって厚み方向に加圧することによって形成される。なお、正極集電体31aの厚みは、例えば10μmである。
【0064】
すなわち、正極31は、正極集電体31aと、該正極集電対31a上に形成された正極活物質層31bとを有する。正極活物質層31bは、正極集電体31aの少なくとも一方の面に形成されている。
【0065】
正極活物質であるリチウム含有酸化物としては、例えば、LiCoO
2などのリチウムコバルト酸化物やLiMn
2O
4などのリチウムマンガン酸化物、LiNiO
2などのリチウムニッケル酸化物等のリチウム複合酸化物を用いるのが好ましい。なお、正極活物質として、1種類の物質のみを用いてもよいし、2種類以上の物質を用いてもよい。また、正極活物質は、上述の物質に限られない。
【0066】
図5に示すように、正極31において、電極体30の巻き始め側(中心側)及び巻き終わり側(外周側)には、正極集電体31a上に正極活物質層31bが形成されていない。特に、正極31は、電極体30の巻き終わり側に、該電極体30の屈曲部30bに対応して、正極集電体31a上に正極活物質層31bが形成されていない電極層非形成領域31cを有する。電極層非形成領域31cは、正極31のうち少なくとも電極体30の屈曲部30bを構成する部分及び、当該部分から巻き終り側の端部まで形成されている。
【0067】
ここで、電極体30の屈曲部30bに対応するとは、電極体30のうち屈曲部30bを構成する部分を意味する。すなわち、電極層非形成領域31cは、電極体30の外周側に位置する正極31のうち、屈曲部30bを構成する部分に設けられている。なお、屈曲部30bとは、平面状の正極31が折り返すように厚み方向に変位を生じている部分を意味する。
【0068】
正極31は、電極層非形成領域31cよりも電極体30の巻き始め側に、正極集電体31aの片面のみに正極活物質層31bが形成された片面形成領域31dと、該片面形成領域31dよりもさらに電極体30の巻き始め側に、正極集電体33の両面に正極活物質層31bが形成された両面形成領域31eとを有する。
【0069】
本実施形態では、電極体30の最外周に位置するセパレータ33の内周側に、正極31が位置している。すなわち、正極31の巻き終り側の端部は、負極32の巻き終り側の端部よりも電極体30の外周側に位置している。また、上述のように、正極31において、電極層非形成領域31cは、電極体30の屈曲部30bに対応して形成されている。
【0070】
これにより、正極31及び負極32のうち屈曲部30bの外周側に位置する正極31には、正極集電体31a上に正極活物質層31bが形成されていない。
【0071】
ここで、発明者らの鋭意研究の結果、正極集電体31aの厚みが11μm以下の場合に、正極集電体31a上に正極活物質層31bが形成されていると、正極集電体31a自体の強度に比べて強度が低下することが分かった。これは、正極集電体31a上に正極活物質層31bを形成する際に、正極集電体31a上に塗布して乾燥させた正極合剤を、ローラ等によって加圧して、正極活物質層31bと正極集電体31aとを一体化させているためと考えられる。このように、正極活物質層31bと正極集電体31aとが一体化されると、正極31の強度が正極活物質層31bの強度の影響を受けるため、正極31の強度が正極集電体31aの強度よりも低下すると考えられる。
【0072】
そのため、電極体30の屈曲部30bにおいて、外周側に位置する正極31が正極活物質層31bを有すると、正極31の屈曲部30bに対応する部分で強度が低下する。そうすると、密閉型電池1における屈曲部30b側に衝撃が加わった際に、該屈曲部30bの外周側に位置する正極31が損傷を受ける可能性がある。
【0073】
これに対し、上述のように、電極体30の屈曲部30bの外周側に位置する正極31に、電極層非形成領域31cを設けることにより、正極活物質層31bが存在しないため、正極31の強度低下を抑制することができる。よって、密閉型電池1が上述のような衝撃を受けた場合でも、電極体30の屈曲部30bの外周側に位置する正極31が損傷を受けるのを防止できる。
【0074】
なお、電極体30の屈曲部30aには、既述のように、巻止めテープ36が貼られているため、密閉型電池1における屈曲部30a側に衝撃が加わった場合、巻止めテープ36が緩衝材としての機能を果たす。そのため、正極31において屈曲部30aの外周側に位置する部分に正極活物質層31bが存在していても、密閉型電池1に対して上述のような衝撃が加わった場合に、正極31は損傷を受けない。
【0075】
負極32は、負極活物質を含有する負極活物質層32bを、銅等の金属箔製の負極集電体31a上に設けたものである。詳しくは、負極32は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極活物質、導電助剤及びバインダなどを含む負極合剤を、銅箔などからなる負極集電体31a上に塗布して乾燥させた後、ローラ等によって厚み方向に加圧することによって形成される。
【0076】
すなわち、負極32は、負極集電体32aと、該負極集電体32a上に形成された負極活物質層32bとを有する。負極活物質層32bは、負極集電体32aの少なくとも一方の面に形成されている。
【0077】
本実施形態の場合、
図5に示すように、負極32において、電極体30の巻き始め側(中心側)及び巻き終わり側(外周側)には、負極集電体32a上に負極活物質層32bが形成されていない。
【0078】
なお、負極32は、電極体30の巻き始め側に形成された電極層非形成領域32cと、該電極層非形成領域32cよりも電極体20の巻き終わり側に位置する片面形成領域32dと、該片面形成領域32dよりも電極体20の巻き終わり側に位置する両面形成領域32eとを有する。
【0079】
負極活物質としては、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な炭素材料(黒鉛類、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類など)を用いるのが好ましい。負極活物質は、上述の物質に限られない。
【0080】
セパレータ33は、樹脂多孔質層(多孔質層)と、接着性樹脂層(接着層)とを有している。接着性樹脂層は、樹脂多孔質層の厚み方向の両側に形成されている。セパレータ33は、例えば11μmの厚みを有する。
【0081】
樹脂多孔質層は、従来から知られているリチウム二次電池などの電気化学素子で使用されているポリオレフィン製の微多孔質膜などを用いることができる。すなわち、樹脂多孔質層は、従来の一般的なセパレータの樹脂多孔質層と同様の材料によって構成されているとともに、従来の樹脂多孔質層と同様の構造を有するため、詳しい説明を省略する。
【0082】
接着性樹脂層は、加熱プレスによって接着性が発現し、相手材に対して密着する材料によって構成されている。すなわち、接着性樹脂層を構成する材料は、樹脂多孔質層の主成分である樹脂の融点よりも低い温度で、接着性が発現するような材料である。このような材料の具体例としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ−α−オレフィン[PP、ポリブテン−1など]、ポリアクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、これらの樹脂を構成するモノマーなどから得られる共重合体[エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−ブチルアクリレート共重合体(EBA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、アイオノマー樹脂など]などが挙げられる。
【0083】
また、上述の各樹脂や、SBR、ニトリルゴム(NBR)、フッ素ゴム、エチレンープロピレンゴムなどの室温で粘着性を示す樹脂をコアとし、融点や軟化点が60℃以上120℃以下の範囲内にある樹脂をシェルとしたコアシェル構造の樹脂を、接着性樹脂層に用いてもよい。この場合、シェルには、各種アクリル樹脂やポリウレタンなどを用いてもよい。さらに、接着性樹脂層に、一液型のポリウレタンやエポキシ樹脂などのうち、60℃以上120℃以下の範囲で接着性を示す材料を用いてもよい。
【0084】
なお、接着性樹脂層には、上述のように例示した樹脂を1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0085】
上述のような接着性樹脂層を有するセパレータ33を用いることにより、電極体30を扁平状になるように熱プレスした際に、セパレータ33が正極31及び負極32に接着される。これにより、電極体30は、正極31、負極32及びセパレータ33が一体となる。
【0086】
以上の構成のように、電極体30の幅方向一方に形成された屈曲部30bに対応するように、該電極体30の外周側に位置する正極31に、電極層非形成領域31cを形成することにより、正極31のうち屈曲部30bの外周側に位置する部分の強度低下を抑制することができる。これにより、密閉型電池1に対して電極体20の屈曲部30b側に衝撃が加わった場合でも、該屈曲部30bの外周側に位置する正極31が損傷を受けるのを防止できる。
【0087】
特に、正極31の正極集電体31aの厚みが11μm以下の場合には、該正極集電体31a上に正極活物質層31bを形成することにより、正極31の強度が低下する。そのため、電極体30の屈曲部30bの外周側に位置する正極31において、正極集電体31a上に正極活物質層31bを形成しない電極層非形成領域31cを設けることにより、密閉型電池1に対して上述のような衝撃が加わった場合に、正極31が損傷を受けるのを防止できる。
【0088】
また、本実施形態のように、屈曲部30bが、電極体30の幅方向外方に向かって突出する半円状に形成されている場合には、密閉型電池1に対して屈曲部30bに対応する位置に衝撃が加わった場合に、電極体の30幅方向外方に最も突出した部分が最も大きな衝撃を受ける。よって、屈曲部30bの前記幅方向外方に最も突出している部分を含む範囲で、電極体30の外周側に位置する正極31に、電極層非形成領域31cを形成することにより、密閉型電池1に対して上述のような衝撃が加わった場合に、正極31が損傷を受けるのを防止できる。
【0089】
電極体30の屈曲部30aには、外表面に巻止めテープ36が貼られているため、密閉型電池1に上述のような衝撃が加わった場合に、該巻止めテープ36が緩衝材としての役割を果たす。したがって、電極体30の一対の屈曲部30a,30bのうち、巻止めテープ36が貼られていない屈曲部30bにおいて、正極31に上述のような電極層非形成領域31cを設けることにより、密閉型電池1に対して屈曲部30a,30bのいずれの側に衝撃が加わった場合でも、正極31が損傷を受けるのを防止できる。
【0090】
また、本実施形態では、電極層非形成領域31cは、正極31において、電極体30の屈曲部30bに対応する部分から巻き終り側の端部まで形成されている。これにより、正極31に電極層非形成領域31cを容易に形成することができる。
【0091】
電極体30の外表面には、セパレータ33が位置付けられるため、該セパレータ33が電極体30に加わる衝撃を緩衝する緩衝材としての役割を果たすとともに、電極体30が電池ケース2内で移動するのを抑制することができる。すなわち、セパレータ33の弾性復元力及び表面の摩擦によって、電池ケース2内で電極体30が移動するのを抑制することができる。
【0092】
これにより、密閉型電池1が衝撃を受けた場合に、電池ケース2内で電極体30が移動して該電極体30が大きな衝撃を受けるのを防止することができる。したがって、電極体30の外周側に位置する正極31が損傷を受けるのをより確実に防止できる。
【0093】
しかも、セパレータ33は、外表面に接着性樹脂層を有する。これにより、電極体30が電池ケース2の内面に対してより移動しにくくなる。
【0094】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0095】
前記実施形態では、電極体30の屈曲部30bにおいて外周側に位置する正極31に、該屈曲部30bに対応して電極層非形成領域31cが設けられている。しかしながら、屈曲部30bのうち電極体30の幅方向外方に最も突出している部分のみに、電極層非形成領域31cを設けてもよい。屈曲部30bのうち電極体30の幅方向外方に最も突出している部分は、密閉型電池1に対して屈曲部30b側に衝撃が加わった際に最も衝撃を受けやすいため、当該部分に電極層非形成領域31cを設けるのが効果的である。
【0096】
なお、電極層非形成領域31cは、屈曲部30bのうち電極体30の幅方向外方に最も突出している部分を含んでいれば、当該部分から正極31の巻き終り側の端部まで電極層非形成領域31cが設けられていてもよいし、屈曲部30bに対応する部分のみに電極層非形成領域31cが設けられていてもよい。
【0097】
前記実施形態では、電極体30の幅方向両側に位置する一対の屈曲部30a,30bのうち、屈曲部30bに対応するように、電極体30の外周側に位置する正極31に電極層非形成領域31cが設けられている。しかしながら、一対の屈曲部30a,30bの両方に対応するように、正極31に電極層非形成領域31cが設けられていてもよい。このように、一対の屈曲部30a,30bの両方に対応するように、正極31に電極層非形成領域31cが設けることにより、密閉型電池1における一対の屈曲部30a,30bのいずれの側に衝撃が加わった際でも、電極体30の外周側に位置する正極31が損傷を受けるのを防止できる。
【0098】
前記実施形態では、一対の屈曲部30a,30bは、電極体30の幅方向外方に突出する半円状に形成されている。しかしながら、一対の屈曲部30a,30bの形状は、扁平状の電極体を構成可能な形状であれば、どのような形状であってもよい。
【0099】
前記実施形態では、正極31及び負極32において、正極活物質層31b及び負極活物質層32bが、
図5に示すように形成されている。しかしながら、正極活物質層31b及び負極活物質層32bを、正極集電体31a及び負極集電体32aの片面及び両面にそれぞれ形成する位置は、前記実施形態以外の位置であってもよい。すなわち、電極体30の屈曲部30bにおいて外周側に位置する電極に、電極層非形成領域が設けられていれば、電極の構成はどのような構成であってもよい。
【0100】
前記実施形態では、電極体30は、外表面にセパレータ33が位置付けられるように、正極31、負極32及びセパレータ33が厚み方向に重ね合わされた状態で巻回されている。しかしながら、電極体は、外表面に正極31または負極32が位置付けられるように、正極31、負極32及びセパレータ33が厚み方向に重ね合わされた状態で巻回されていてもよい。
【0101】
前記実施形態では、セパレータ33の樹脂多孔質層の厚み方向の両側に接着性樹脂層が形成されている。しかしながら、樹脂多孔質層の厚み方向の一方側のみに接着性樹脂層を形成してもよい。この場合には、セパレータ33は、正極31または負極32のいずれか一方と一体化される。また、一対のセパレータ33のうち一方における厚み方向両側に接着性樹脂層を設けるとともに、他方における厚み方向片側のみに接着性樹脂層を設けてもよい。なお、この場合でも、電池ケース2内での電極体30の移動を効果的に抑制するという観点から、セパレータ33の電極体30の外表面に位置するセパレータ33の面に接着性樹脂層を設けるのが好ましい。
【0102】
前記実施形態では、密閉型電池1はリチウムイオン電池である。しかしながら、密閉型電池1はリチウムイオン電池以外の電池であってもよい。
【実施例】
【0103】
上述の構成を有する密閉型電池1の効果を確認するための試験を行った。具体的には、以下のような実施例1,2、比較例及び参考例のリチウムイオン電池を作製して、該リチウムイオン電池の落下試験を行った後、正極の損傷の有無を確認した。
【0104】
(実施例1)
<正極の作製>
正極活物質であるコバルト酸リチウム96質量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を10質量%の濃度で含むN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液20質量部と、導電助剤である人造黒鉛1質量部およびケッチェンブラック1質量部とを、二軸混練機を用いて混練し、更にNMPを加えて粘度を調節して、正極合剤含有ペーストを調製した。
【0105】
前記正極合剤含有ペーストを、厚みが10.3μmのアルミニウム箔(正極集電体)の両面に塗布した後、乾燥を行って、アルミニウム箔の両面又は片面に正極活物質層を形成した。このとき、前記正極合剤含有ペーストは、正極、負極およびセパレータを厚み方向に積層した状態で巻回した場合に、正極のアルミニウム箔に対して
図5に示すような位置に正極活物質層が形成されるように、該アルミニウム箔上に塗布した。その後、正極活物質層のプレス処理を行うことにより、該正極活物質層の厚みおよび密度を調節するとともに、アルミニウム箔の露出部にニッケル製のリード体を溶接して、長さ540mm、幅70mmの帯状の正極を作製した。
【0106】
<負極の作製>
平均粒子径Dの50%が16μmである負極活物質の黒鉛97.5質量部と、結着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR):1.5質量部と、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース(CMC):1質量部とに、水を加えて混合し、負極合剤含有ペーストを調製した。
【0107】
前記負極合剤含有ペーストを、厚みが6μmの銅箔(負極集電体)の両面に塗布した後、乾燥を行って、銅箔の両面に負極合剤層(負極活物質層)を形成した。その後、負極活物質層のプレス処理を行うことにより、該負負極活物質層の厚みおよび密度を調節するとともに、銅箔の露出部にニッケル製のリード体を溶接して、長さ530mm、幅74mmの帯状の負極を作製した。
【0108】
<非水電解質の調製>
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との容積比3:7の混合溶媒に、LiPF6を1.1mol/Lの濃度で溶解させて、フルオロエチレンカーボネート(FEC)を2.0質量%となる量、およびビニレンカーボネート(VC)を2.0質量%となる量で、それぞれ添加して、非水電解質を調製した。
【0109】
<電池の組み立て>
前記帯状の正極を、厚みが11μmのセパレータ(9μmの多孔質層の両面に接着層が1μmずつ設けられているセパレータ)を間に挟みこむように前記帯状の負極に重ねた状態で、巻回した後、扁平状になるように加圧して
図5に示すような構造の電極体を得た。次に、外寸が厚み4.3mm、幅39mm、高さ79mmのアルミニウム合金製の角形の電池ケース内に前記電極体を挿入し、リード体の溶接を行うとともに、アルミニウム合金製の蓋板を電池ケースの開口端部に溶接した。その後、蓋板に設けられた注入口から前記非水電解質を注入し、1時間静置した後、注入口を封止した。その後、活性化工程を経て、
図1に示す構造のリチウムイオン電池を得た。
【0110】
(実施例2)
正極の集電体を厚みが11μmのアルミニウム箔に変更した以外は実施例1と同様にして正極を作製し、この正極を使用した以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン電池を作製した。
【0111】
(比較例)
正極の正極活物質層を、正極、負極およびセパレータを厚み方向に重ね合わせた状態で巻回した場合に、正極のアルミニウム箔に対して
図6に示すような位置に形成した以外は実施例1と同様に正極を作製し、この正極を使用した以外は実施例1と同様にリチウムイオン電池を作製した。すなわち、この比較例では、
図6に示すように、電極体の屈曲部において、該電極体の最外周側に位置する正極にはアルミニウム箔に正極活物質層が形成されている。
【0112】
なお、
図6に示す電極体130は、正極131の構造のみが
図5に示す電極体30と異なる。具体的には、正極131は、電極体130の屈曲部130bにおいて最外周側に位置する部分で、正極集電体131a上の屈曲部130bに対応する位置に正極活物質層131bが形成されている。電極体130は、正極131の構成以外は、
図5に示す電極体30の構成と同様なので、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0113】
(参考例)
正極の集電体を厚みが12μmのアルミニウム箔に変更するとともに、正極の正極活物質層を、正極、負極およびセパレータを厚み方向に重ね合わせた状態で巻回した場合に、正極のアルミニウム箔に対して
図6に示すような位置に形成した以外は、実施例1と同様に正極を作成し、この正極を使用した以外は実施例1と同様にリチウムイオン電池を作成した。
【0114】
(落下試験)
上述のように作製した実施例1、実施例2、比較例及び参考例のリチウムイオン電池をそれぞれ5つ用意し、各リチウムイオン電池について落下試験を行った。落下試験は、各リチウムイオン電池を、該電池の6面がそれぞれ衝撃を受けるように、高さ1.5mの位置から平面上に落下させて、電極体の屈曲部において最外周側に位置する正極の破断の有無を確認した。正極の破断の有無は落下試験後に電池を分解して目視により行った。試験結果を表1に示す。
【表1】
【0115】
表1に示すように、正極集電体の厚みが11μmよりも大きい場合(参考例:正極集電体の厚みが12μm)には、正極は破断しなかった。一方、正極集電体の厚みが11μm以下の場合には、
図6に示すように、電極体の屈曲部において最外周側に位置する正極の正極集電体に正極活物質層が形成されていると、正極は破断した(比較例)。
【0116】
正極集電体の厚みが11μm以下の場合であっても、
図5に示すように、電極体の屈曲部において最外周側に位置する正極に、正極活物質層が形成されていなければ、正極は破断しなかった(実施例1、2)。
【0117】
したがって、正極集電体の厚みが11μm以下の場合、電極体の屈曲部において最外周側に位置する正極に、正極活物質層が形成されていない電極層非形成領域を設けることにより、リチウムイオン電池に衝撃が加わっても、前記正極が損傷を受けるのを防止できることを確認できた。