(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1から3のいずれか一項に記載のカラーフィルタ用ガラス基板の洗浄液を用いて、前記ガラス基板に付着した異物を除去する洗浄工程を有するガラス基板の洗浄方法であって、
前記洗浄工程の前に、前記ガラス基板は、間に再生紙が挟み込まれて積層され、
前記異物は、前記再生紙に含まれる物質に由来する粘着異物である、
ことを特徴とするカラーフィルタ用ガラス基板の洗浄方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のガラス板(ガラス基板、シートガラス)の製造方法について本実施形態に基づいて詳細に説明する。
本実施形態で製造されるガラス板は、液晶表示装置用ディスプレイに用いるガラス基板であり、例えば厚さが0.3〜0.7mmであり、2200mm×2500mm(縦×横)のサイズの薄板である。
【0017】
なお、本実施形態で製造されるガラス板は、上記に限定されず、携帯電話機などの電子機器の表示画面に用いられるカバーガラスや、プラズマ・ディスプレイ・パネル、有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)などのフラットパネルディスプレイ(Flat Panel Display:FPD)に用いられる板状ガラスであってもよい。
【0018】
本実施形態で製造されるガラス板は、特に限定されないが、例えば、以下の組成比率のガラス板に適用され得る。例えば、Li、Na、及びKのいずれの成分も含有されていないか、あるいは、Li、Na、及びKのいずれか少なくとも1つの成分が含有されているとしても、Li、Na、及びKの内含有する成分の合計量が、0.5質量%以下であるガラス組成を有することが好ましい。ガラス組成は、以下に示すものが好適に例示される。
(a)SiO
2:50〜70質量%、
(b)B2O
3:5〜18質量%、
(c)Al
2O
3:10〜25質量%、
(d)MgO:0〜10質量%、
(e)CaO:0〜20質量%、
(f)SrO:0〜20質量%、
(g)BaO:0〜10質量%、
(h)RO:5〜20質量%(ただしRはMg、Ca、SrおよびBaから選ばれる少なくとも1種であり、ROは、MgO、CaO、SrOおよびBaOのうち含有する成分の合計)、
(i)R’
2O:0.05質量%を超え0.5質量%以下(ただしR’はLi、NaおよびKから選ばれる少なくとも1種であり、R’
2OはLi
2O、Na
2O及びK
2Oのうち含有する成分の合計)、
(j)酸化錫と、酸化鉄および酸化セリウムなどから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を合計で0.05〜1.5質量%。
なお、上記(i),(j)の組成は必須ではないが、(i),(j)の組成を含むことが好ましい。上記のガラスには、As
2O
3、Sb
2O
3およびPbOを実質的に含まず、SnO
2が含まれている。
また、本実施形態のガラス板に用いるガラスは、(i)のR’
2Oの含有が実質的に0質量%である無アルカリガラスであっても構わない。すなわち、本実施形態のガラス板に用いるガラスは、(i)の組成を含むアルカリ微量含有ガラスまたは無アルカリガラスである。
【0019】
図1は、本実施形態のガラス板の製造方法の流れを示すフローチャートである。
図1に示すように、熔融されたガラスが、例えばダウンドロー法あるいはフロート法により、所定の厚さの帯状ガラスであるガラスシートに成形される(ステップS1)。
次に、成形されたガラスシートがスクライブおよび切断され、所定のサイズの素板ガラスが得られる(ステップS2)。得られた素板ガラスは、素板ガラスを保護する紙と交互に積層された積層体として、素板ガラスを収容して搬送するためのパレットに積載される(ステップS3)。
【0020】
素板ガラスは切断工程に搬送され、ガラス板と紙とを交互に積層した積層体から素板ガラスが取り出される。取り出された素板ガラスはスクライブおよび切断され、製品サイズのガラス基板が得られる(ステップS4)。得られたガラス基板には、端面の研削、研磨およびコーナカットを含む端面加工が行われる(ステップS5)。上記スクライブでは、ダイヤモンドカッター等を用いて、ガラスに微小のスジ状の傷である切り込み線(スクライブ線)が形成される。素板ガラスおよび製品サイズのガラス基板を含むガラス板の切断は、スクライブ線に沿って機械あるいはマニュアルにより切断される。あるいは、レーザ光によるスクライブおよび熱衝撃によりガラス板を切断することもできる。
【0021】
この後、ガラス基板の洗浄が行われる(ステップS6)。洗浄されたガラス板はキズ、塵、汚れあるいは光学欠陥を含む傷が無いか、光学的検査が行われる(ステップS7)。検査により品質の適合したガラス板は、ガラス板を保護する紙と交互に積層された積層体としてパレットに積載されて梱包される(ステップS8)。梱包されたガラス板は納入先業者に出荷される(ステップS9)。出荷されるガラス板に挟みこまれてガラス板の表面を保護する紙は、ガラス板の表面の汚染を防止する観点から、再生紙を含まないパルプ紙が用いられる。
【0022】
なお、素板ガラスは、パレットへの積載(ステップS3)および梱包が行われた後、例えば、数週間から数ヶ月以上の長期間に亘って輸送および保管される場合がある(ステップS10)。保管される素板ガラスの間に挟みこまれて素板ガラスの表面を保護する紙は、コストおよび環境保護の観点から再生紙が用いられる。このように長期間に亘って保管された素板ガラスは、その後、上記と同様に切断(ステップS4)から梱包(ステップS8)までの工程を経て、出荷される(ステップS9)。
【0023】
また、ガラス基板は、梱包(ステップS8)が行われた後、例えば、数週間から数ヶ月以上の長期間に亘って輸送および保管される場合がある(ステップS10)。保管されるガラス基板の間に挟みこまれてガラス基板の表面を保護する紙は、コストおよび環境保護の観点から再生紙が用いられる。このように長期間に亘って保管されたガラス基板は、素板ガラスと同様に切断(ステップS4)から梱包(ステップS8)までの工程を経て、出荷(ステップS9)される。
【0024】
図2は、パレットに積載されたガラス板を模式的に示す図である。
図2に示すように、素板ガラスおよびガラス基板を含むガラス板Gは、パレット100の積載部に斜めに立て掛けられた状態で、合紙Pと交互に積層される。これによりガラス板Gの間には、合紙Pが挟みこまれた状態になる。このような状態では、パレット100の積載部に先に積載されたガラス板Gに、後から積載されたガラス板Gの荷重がかかる。そのため、先に積載されたガラス板Gほど、合紙Pをガラス板Gに押し付ける荷重が大きくなる。
【0025】
合紙Pが再生紙である場合には、再生紙に含まれる例えばインクなどの樹脂成分に由来する粘着性を有する粘着異物が、ガラス板Gの表裏面に付着する場合がある。そのため、上記のような荷重がかかると、先に積載されたガラス板Gほど、粘着異物が大きな荷重を受けて、ガラス板Gの表面に強固に付着する傾向がある。このような荷重を受けてガラス板Gに付着した異物は、従来の洗浄剤を希釈した希釈液を用いた洗浄によっては、十分に除去することができない。
【0026】
また、上記のような粘着異物が付着したガラス板Gが、
図1に示すように長期の保管(ステップ10)を経て洗浄される場合には、上記の粘着異物が時間の経過により変質して、粘着性を増し、あるいは固化し、従来の洗浄剤を希釈した希釈液を用いた洗浄によっては、十分に除去することができない。
【0027】
ガラス板Gのスクライブと切断(ステップS2,S4)、およびガラス板Gの端面加工(ステップS5)等の機械加工により、ガラスの微小片が発生し、ガラス板Gの表面に塵となって付着する。あるいは、上記機械加工時に、工具や治具等に付着した汚れがガラス板Gの表面に付着する場合もある。
【0028】
以上のようなガラス板Gの表面に付着した塵、汚れ、粘着異物などを除去するために、ガラス基板の洗浄(S5)が行われる。特に、液晶表示装置用ディスプレイに用いられるガラス基板は、表面に半導体素子を形成するため、高い洗浄度が求められる。
【0029】
以下、本実施形態の洗浄工程について、より詳細に説明する。
図3は、本実施形態の洗浄工程の例を説明するフローチャートである。
まず、
図3に示す希釈液を生成する工程(S61)において、ガラス基板用の洗浄剤を水によって希釈して希釈液を生成する。ガラス基板用の洗浄剤としては、無機アルカリ系の洗浄剤、例えば、パーカーコーポレーション社製のPK−LCGシリーズ、あるいは横浜油脂工業株式会社製のセミクリーンシリーズなどを用いることができる。これらの洗浄剤を用いる場合、洗浄剤を例えば1wt%から5wt%の範囲の濃度になるように水で希釈して希釈液を生成する。より好ましくは、洗浄剤を1.5wt%以上から4wt%以下の範囲の濃度になるように水で希釈して希釈液を生成する。
【0030】
洗浄剤を希釈する水は、イオン交換処理、EDI(Electrodeionization)処理、逆浸透膜によるフィルタ処理、及び脱炭酸ガス装置を通した脱炭酸ガス処理を施した純水または超純水であることが、ガラス基板の表面を清浄に保つ点で好ましい。溶解性異物の除去には、さらに活性炭を通すことが好ましい。具体的には、フィルタを用いて微粒子等の異物を水から除去し、この後、活性炭を透過させて有機物を除去した後、イオン交換処理、EDI(Electrodeionization)処理、逆浸透膜によるフィルタ処理、及び脱炭酸ガス装置を通した脱炭酸ガス処理を施すことが好ましい。
【0031】
イオン交換処理では、水に含まれるイオン性物質、例えば、塩素イオンやナトリウムイオン等を、イオン交換樹脂膜を用いて水から除去する。EDI処理では、イオン交換樹脂膜を用い、かつ電極に電位を与えて形成された電位勾配を利用して、水からイオン性物質をより精度良く除去する。さらに、逆浸透膜(RO膜)によるフィルタ処理では、イオン性物質、塩類、あるいは有機物を水から除去する。さらに、脱炭酸ガス処理では、脱炭酸ガス装置を用いて炭酸ガスを水から除去する。
【0032】
上記のように洗浄剤を水で希釈して生成した希釈液のアルカリ成分の濃度は、水酸化カリウム(KOH)の濃度に換算して、例えば、0.02wt%から0.15wt%程度になる。
図3に示すように、本実施形態では、この希釈液に、KOH、NaOH、
EDTA−4Na、EDTA−4K、Na
4P
2O
7、K
4P
2O
7から選択される1種以上のアルカリ成分を濃度の合計が、0.2wt%以上から1wt%以下になるように添加して洗浄液を生成する(S62)。上記のアルカリ成分は、その他のアルカリ成分と比較して、ガラスのエッチング性が高く、かつ溶解性に優れている。特に、エッチング性と溶解性、およびガラス基板に形成される薄膜トランジスタに対する悪影響を防止する観点から、上記のアルカリ成分としてKOHを単独で用いることが好ましい。KOHおよびNaOHは、その他のアルカリ成分と比較して、排水処理の点で有利である。
【0033】
本実施形態では、洗浄剤を水で希釈しただけの希釈液と、その希釈液に上記アルカリ成分を添加した洗浄液とを明確に区別している。なお、希釈液への上記アルカリ成分の添加は、洗浄剤の水による希釈と同時にまたは並行して行うことができる。
【0034】
なお、本実施形態の洗浄液の上記アルカリ成分の濃度の合計は、できるだけ高い方が、粘着異物を除去する洗浄力の点で好ましい。しかし、上記アルカリ成分の濃度が高くなりすぎると、ガラス基板表面に塗布するブラックマトリックス樹脂の高い密着性を保てなくなり、また、装置を腐食させたり、洗浄液中で結晶が生成されたりするなどの問題がある。
【0035】
本実施形態では、洗浄剤を水で希釈した希釈液に上記アルカリ成分を添加した洗浄液を、曇点により示す。ここで、曇点とは、洗浄剤の濃度とアルカリ成分の濃度とによって一義的に定まる指標であり、洗浄液の温度変化によって相分離が起き、洗浄液に溶解した洗浄剤、アルカリ成分の一部成分が析出し始める温度である。洗浄剤にKOHなどのアルカリ成分を添加すると、界面活性剤と水との水素結合が切れて、水溶解度が急激に下がるため、洗浄剤が不透明になる。この不透明となる温度が曇点である。曇点以上である洗浄液をガラス基板の洗浄に用いると、析出した洗浄剤、アルカリ成分がガラス基板に付着するおそれがある。ガラス基板の洗浄(S5)において、洗浄液を用いて、ガラス基板の表面に付着した塵、汚れ、粘着異物などを除去できたとしても、ガラス基板の表面に、洗浄剤、アルカリ成分が残留していると、ガラス基板の表面に残留している洗浄剤、アルカリ成分に起因して、ガラス基板表面に塗布するブラックマトリックス樹脂の高い密着性を実現できないという問題が生じる。このため、ガラス基板の表面に付着した塵、汚れ、粘着異物などを除去でき、かつ、洗浄剤、アルカリ成分を残留させない洗浄液を用いて、ガラス基板を洗浄する必要がある。塵、汚れ、粘着異物などを除去しつつ、洗浄剤、アルカリ成分を残留させないことにより、ガラス基板表面へのブラックマトリックス樹脂の高い密着性を実現することができる。
【0036】
本実施形態の洗浄液は、曇点が75℃以上になるように洗浄剤の濃度とアルカリ成分の濃度とを設定する。洗浄剤の濃度は、上記のように、1.5wt%以上から4wt%以下の範囲の濃度になるようにする。洗浄剤の濃度が4wt%を超えると、この洗浄剤を用いてガラス基板を洗浄した際に、ガラス基板の表面に残留する洗剤残渣が増えるため、ブラックマトリックス樹脂の密着性が低下する。このため、洗浄剤の濃度が4wt%以下になるように、洗浄剤の濃度を定める。一方、洗浄剤の濃度が1.5wt%を下回ると、この洗浄剤を用いてガラス基板を洗浄した際に、ガラス基板の表面に付着した塵、汚れ、粘着異物などが除去できない。このため、洗浄剤の濃度が1.5wt%以上になるように、洗浄剤の濃度を定める。
【0037】
洗浄液におけるアルカリ成分の濃度は、上記のように、曇点が75℃以上の範囲の濃度になるようにする。ここで、アルカリ成分は、エッチング性と溶解性、およびガラス基板に形成される薄膜トランジスタに対する悪影響を防止する観点から、アルカリ成分としてKOHが好ましい。曇点が75℃未満となると、この洗浄剤を用いてガラス基板を洗浄した際に、ガラス基板の表面に残留するアルカリ成分由来の有機物が増えるため、ブラックマトリックス樹脂の密着性が低下する。このため、曇点が75℃以上になるように、アルカリ成分の濃度を定める。一方、アルカリ成分の濃度が0.2wt%を下回ると、この洗浄剤を用いてガラス基板を洗浄した際に、ガラス基板の表面に付着した塵、汚れ、粘着異物などが除去できない。このため、アルカリ成分の濃度が0.2wt%以上になるように、アルカリ成分の濃度を定める。
【0038】
1.5wt%以上から4wt%以下の範囲の濃度を有する洗浄剤に、洗浄液の曇点が75℃以上になるようにKOHを添加して、本実施形態の洗浄液を生成する。パーカーコーポレーション社製のPK−LCGシリーズ、あるいは横浜油脂工業株式会社製のセミクリーンシリーズを洗浄剤として用いて、この洗浄剤の濃度を1.5wt%以上から4wt%以下の範囲の濃度になるよう希釈し、希釈した洗浄剤に、0.2wt%以上から1wt%以下の範囲の濃度であるKOHを添加することにより、曇点が
75℃以上となる本実施形態の洗浄液を生成することができる。
【0039】
上記のように生成した洗浄液は、
図3に示すブラシ洗浄(S63)およびスポンジ洗浄(S64)を含むガラス板Gの枚葉洗浄、バッチ洗浄において用いられる。以下では、本実施形態の洗浄液を、枚葉洗浄に用いる方法を説明するが、バッチ洗浄でも用いることができる。
【0040】
以下、枚葉洗浄に用いられる洗浄システムについて説明する。
図4(a),(b)は、枚葉洗浄を行う一ラインの枚葉洗浄システム10の概略を示す図であり、
図4(a)は平面図であり、
図4(b)は、側面図である。
図4(a),(b)において、ガラス板Gを搬送する搬送装置の図示は省略している。
【0041】
枚葉洗浄システム10は、
図4(a)に示すように、ブラシユニット12と、スポンジユニット14と、シャワーユニット16と、を備えている。これらの装置は、ガラス板Gの搬送方向の上流側からこの順番に配置されている。また、枚葉洗浄システム10は、
図4(b)に示すように、洗浄液タンク18と、純水タンク20とを備えている。
【0042】
洗浄液タンク18は、ガラス基板用の洗浄剤の希釈液にKOHを所定の濃度で添加することで生成した上記の洗浄液を、所定の温度に保温した状態で貯留する。本実施形態では、洗浄液タンク18は、洗浄液の温度を調節する例えばヒーターなどの温度調節手段を備え、洗浄液を50℃から80℃の範囲の一定の温度に加熱して保温する。より好ましくは、洗浄液を60℃から75℃の範囲の温度に保温する。
【0043】
ノズル18a,18bは、洗浄液タンク18から供給される洗浄液を、ブラシユニット12内のガラス板Gの表裏面に噴射して供給するように設けられている。ノズル18c,18dは、洗浄液タンク18から供給される洗浄液を、スポンジユニット14内のガラス板Gの表裏面に噴射して供給するように設けられている。
【0044】
純水タンク20は、上記のように生成した純水または超純水を貯留する。
ノズル20a,20bは、純水タンク20から供給される純水または超純水を、シャワーユニット16内のガラス板Gの表裏面に噴射して供給するように設けられている。
【0045】
ブラシユニット12は、洗浄ブラシ列12a,12bを備えている。
【0046】
洗浄ブラシ列12a,12bは、ガラス板Gの搬送方向において異なる位置、すなわち上流側の位置と下流側の位置に配置されている。洗浄ブラシ列12a,12bは、それぞれガラス板Gの表裏面を洗浄可能に上下に配置され、ガラス板Gを間に挟み込んで洗浄するように設けられている。
【0047】
洗浄ブラシ列12a,12bは、それぞれガラス板Gの搬送方向を横切る方向に複数の洗浄ブラシを備えている。ブラシユニット12は、洗浄ブラシを回転させることにより、ガラス板Gの表裏面を洗浄する。図示の例では、洗浄ブラシ列12a,12bは2列が設けられているが、3列以上が設けられてもよく、1列のみが設けられていてもよい。
【0048】
スポンジユニット14は、洗浄スポンジ列14a,14bを備えている。
【0049】
洗浄スポンジ列14a,14bは、ガラス板Gの搬送方向において異なる位置、すなわち上流側の位置と下流側の位置に配置されている。洗浄スポンジ列14a,14bは、それぞれガラス板Gの表裏面を洗浄可能に上下に配置され、ガラス板Gを間に挟み込んで洗浄するように設けられている。
【0050】
洗浄スポンジ列14a,14bは、それぞれガラス板Gの搬送方向を横切る方向に複数の洗浄スポンジを備えている。スポンジユニット14は、洗浄スポンジを回転させることにより、ガラス板Gの表裏面を洗浄する。図示の例では、洗浄スポンジ列14a,14bは2列が設けられているが、3列以上が設けられてもよく、1列のみが設けられていてもよい。
【0051】
次に、枚葉洗浄システム10におけるガラス板Gの洗浄の流れについて説明する。
洗浄液は、洗浄液タンク18において、ヒーター等の温度調節手段により60℃から80、より好ましくは60℃から75℃の範囲の所定の温度に保温される。
【0052】
ブラシユニット12では、
図3に示すブラシ洗浄(S63)が行われる。
洗浄液タンク18から供給された洗浄液はノズル18a,18cから噴射され、搬送装置によってブラシユニット12内に搬送されたガラス板Gの表裏面に供給される。ガラス板Gの表裏面に供給される洗浄液は、例えば60℃から75℃、より好ましくは65℃から75℃の範囲の所定の温度に加熱されている。
【0053】
ガラス板Gは、ブラシユニット12において、表裏面に例えば60℃から75℃、より好ましくは65℃から75℃の範囲の所定の温度の洗浄液が存在する状態で、表裏面が洗浄ブラシ列12a,12bの複数の洗浄ブラシによって洗浄される。その後、ガラス板Gは、搬送装置によってスポンジユニット14に搬送される。
【0054】
スポンジユニット14では、
図3に示すスポンジ洗浄(S64)が行われる。
洗浄液タンク18から供給された洗浄液はノズル18c,18dから噴射され、搬送装置によってスポンジユニット14内に搬送されたガラス板Gの表裏面に供給される。ガラス板Gの表裏面に供給される洗浄液は、例えば60℃から75℃、より好ましくは65℃から75℃の範囲の所定の温度に加熱される。
【0055】
ガラス板Gは、スポンジユニット14において、表裏面に例えば60℃から75℃、より好ましくは65℃から75℃の所定の温度の洗浄液が存在する状態で、表裏面が洗浄スポンジ列14a,14bの複数の洗浄スポンジによって洗浄される。その後、ガラス板Gは、搬送装置によってシャワーユニット16に搬送される。
【0056】
純水タンク20から供給された純水または超純水はノズル20a,20bから噴射され、搬送装置によってシャワーユニット16内に搬送されたガラス板Gの表裏面に供給される。これにより、ガラス板Gが純水または超純水ですすがれて、洗浄液の成分が洗い流される。
【0057】
シャワーユニット16から搬出されたガラス板Gは、
図3に示すバッチ洗浄(S65)を行うバッチ洗浄システムに送られる。バッチ洗浄(S65)では、複数枚のガラス板Gがカセットに収容されて、複数の液槽に、順次、浸漬されて洗浄される。
なお、枚葉洗浄システム10の構成によっては、バッチ洗浄(S65)を行わない場合もある。その場合、ガラス板Gはエアーナイフまたは加熱乾燥工程を経て乾燥され、
図1に示す検査(S7)へと送られる。
【0058】
次に、本実施形態のガラス板Gの洗浄方法の作用について説明する。
本実施形態では、上記のように、洗浄剤を水で希釈して生成した1.5wt%以上から4wt%以下の濃度範囲の希釈液に、KOH等のアルカリ成分を加えて洗浄液を生成する。このように、洗浄剤の希釈液にKOH等のアルカリ成分を0.2wt%以上の濃度で添加して洗浄液を生成することで、曇点が75℃以上となる洗浄液が得られる。
【0059】
本実施形態では、KOH等のアルカリ成分の濃度が曇点75℃以上の洗浄液を用いて、ガラス板Gを洗浄している。KOH等のアルカリ成分の濃度が曇点75℃以上であっても、ガラス板Gをパレットに積載した順序によらず、ガラス板Gの表面に付着した再生紙由来の粘着異物を除去することが可能になる。すなわち、本実施形態の洗浄液によれば、荷重を受けてガラス板Gの表面に付着した粘着異物、ガラス片、塵を含む異物の除去効果が得られる。また、曇点が75℃以上である洗浄液を、65℃〜75℃の温度範囲で使用することにより、洗浄液に溶解した洗浄剤、アルカリ成分が析出することがないため、洗浄剤、アルカリ成分に基づく有機物の残渣が抑制され、ガラス板G表面へのブラックマトリックス樹脂の高い密着性を実現することができる。
【0060】
上記のように、洗浄剤の希釈液にKOH等のアルカリ成分を曇点75℃以上になる濃度で添加した洗浄液は、洗浄液によるガラス板Gのエッチング性が従来の洗浄剤の希釈液よりも向上し、ガラス片、塵を含む異物のみならず、荷重を受けた状態でガラス板Gの表面に付着した粘着異物をガラス板Gの表面から剥離させて除去する効果が得られるようになる。また、曇点を有する洗浄液を、曇点以下の温度で使用することにより、洗浄剤等に基づく有機物の残渣が抑制され、ガラス板Gの表面へのブラックマトリックス樹脂の高い密着性を実現することができる。
【0061】
加えて、洗浄剤の希釈液にKOH等のアルカリ成分を添加することで得られる洗浄液の表面張力は、従来の希釈液よりも低くなる。すなわち、界面活性剤を含む洗浄剤の希釈液にKOH等のアルカリ成分を添加することで、KOH等のアルカリ成分を単独で純水に添加する場合ではほとんど得られない、洗浄剤の表面張力を低下させる効果を得ることができる。これにより、洗浄剤が粘着異物とガラス板との間に従来よりも浸透しやすくなり、洗浄剤によるガラス板Gのエッチング性の向上との相乗効果により、粘着異物、ガラス片、塵を含むガラス板Gに付着した異物がより効果的に除去される。
【0062】
さらに、洗浄剤の希釈液に添加するKOH等のアルカリ成分の濃度を高くしていくことで、数週間から数ヶ月以上の長期に亘って保管されたガラス板の表面に付着した粘着異物の除去効果が高くなる。例えば、洗浄剤を純水で1.5wt%〜5wt%に希釈した希釈液に、KOH等のアルカリ成分を曇点が75℃以上になる濃度で添加した洗浄液を用いることで、時間の経過により変質して硬化または粘着性を増した再生紙由来の粘着異物を、上記の相乗効果により除去する効果がより顕著になる。
【0063】
なお、洗浄液のKOH等のアルカリ成分の濃度はより高い方が粘着異物の除去効果は向上するが、洗浄液に由来する有機物の残渣を抑制する観点、及び、洗浄装置への負担を低減し、洗浄液成分の結晶化を防止し、洗浄液の取り扱いを容易にする観点から、洗浄剤のKOH等のアルカリ成分の濃度は曇点が75℃以上であることが好ましい。アルカリ成分の濃度を曇点75℃以上にすることにより、洗浄液の効果が得られやすい60℃〜75℃の温度範囲において洗浄液を使用しても、洗浄液に溶解した界面活性剤が析出することがないため、界面活性剤に基づく有機物の残渣を抑制することができる。
【0064】
また、枚葉洗浄およびバッチ洗浄の少なくとも一方で、洗浄液の温度を例えば
60℃から75℃、より好ましくは65℃から75℃の範囲で用いることで、粘着異物を軟化、膨張させることができる。この粘着異物の軟化、膨張効果と、上記希釈液へのKOH等のアルカリ成分の添加の効果との相乗効果により、ガラス板Gの表裏面に付着して荷重を受けた粘着異物や時間経過により変質した粘着異物を、より効果的に除去することができる。また、洗浄液の温度が75℃以下で使用することにより、洗浄液が相分離して、洗浄剤、アルカリ成分の一部成分が析出するのを防ぐことができるため、洗浄剤、アルカリ成分の残渣量が低減されて、ガラス板Gの表面へのブラックマトリックス樹脂の高い密着性を実現することができる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態の洗浄液、及び、洗浄液を使用したガラス板Gの洗浄方法によれば、ガラス板Gに付着した種々の異物の除去効果が向上するだけでなく、荷重を受けてガラス板Gの表面に付着した再生紙由来の粘着異物や、時間の経過により変質した粘着異物を、ガラス板Gの表裏面から効果的に除去することができる。また、洗浄後の洗浄剤の残渣が抑制されるため、ガラス板Gの表面へのブラックマトリックス樹脂の高い密着性を実現することができる。
【0066】
(実施例1)
洗浄剤の濃度、及び、アルカリ成分の濃度を変化させて、洗浄液の曇点を測定した。洗浄剤として横浜油脂工業株式会社製の無機アルカリ性洗浄剤であるセミクリーンKG、アルカリ成分としてKOHを用いて、セミクリーンKGを純水で希釈して希釈液を得て、希釈液にKOHを添加して洗浄液を得た。
図5は、洗浄剤の濃度、及び、アルカリ成分の濃度によって変化する曇点を示した図である。洗浄剤のKGの濃度、及び、アルカリ成分であるKOHの濃度を変化させることにより、同図に示すように、洗浄液の曇点は変化し、洗浄剤の濃度とアルカリ成分の濃度とによって曇点が一義的に定まることが確認された。一義的に定まった曇点以下となる温度範囲において洗浄液を使用することにより、洗浄液の相分離を防ぎ、洗浄液に由来する有機物の残渣を抑制することができる。
【0067】
(実施例2)
以下、本発明を適用した実施例と、本発明を適用しない比較例とを説明する。
本実施例では、ガラス板の洗浄後に、ガラス板の表面に付着した付着物の数を計測し、洗浄力の比較を行った。以下、具体的な手順について説明する。
【0068】
パーティクル除去評価に使用した試料
(1)洗浄剤:横浜油脂工業株式会社製の無機アルカリ性洗浄剤であるセミクリーンKG
(2)アルカリ成分:KOH
(3)ガラス板:無アルカリガラス
(4)付着物:研磨用CeO
2 粒径1μm〜4μm
すべての実施例と比較例において、セミクリーンKGを純水で希釈して希釈液を得て、希釈液にKOHを添加して洗浄液を得た。
粘着異物除去評価に使用した試料
(1)洗浄剤:横浜油脂工業株式会社製の無機アルカリ性洗浄剤であるセミクリーンKG
(2)アルカリ成分:KOH
(3)ガラス板:無アルカリガラス
(4)付着物:PVC手袋
すべての実施例と比較例において、セミクリーンKGを純水で希釈して希釈液を得て、希釈液にKOHを添加して洗浄液を得た。
【0069】
まず、1つのサンプルは研磨用CeO
2を純水に分散させスラリー状にして、このスラリー状のCeO
2を清浄なガラス板に擦り付ける。スラリー状のCeO
2が擦り付けられたガラス板Gの表面を純水で洗浄し、過剰なCeO
2を落とす。次に、
図2に示すガラス板Gが合紙Pと交互に積層され、合紙Pがガラス板Gに押し付けられたことによりガラス板Gに付着させたものであり、パーティクルに相当する。また、もう1つのサンプルは清浄なガラス板にクリーンルームで使用されるPVC手袋跡を付け、クリーンオーブンにて170℃、60秒焼成したものであり、粘着異物に相当する。以下の表1、表2に示す洗浄剤の濃度、アルカリ成分(KOH)の濃度、洗浄液の温度、曇点がそれぞれ異なる洗浄液を用いて、ガラス板Gをスポンジ洗浄した。スポンジ洗浄後、ガラス板Gを純水で洗浄した後、乾燥させた。そして、洗浄、乾燥が終了したガラス板Gの表面に付着したパーティクルの数を光学式自動検査器により計測した。また、パーティクル評価サンプルの洗浄後ガラス板G表面に残っている有機物量をGC−MSにて計測した。粘着異物サンプルは集光機を用いて目視確認した。ここで、表1、表2に示すパーティクルは、CeO
2やガラス片、塵、汚れなどの付着物であり、有機物は、合紙P成分や洗剤残渣の付着物であり、粘着異物は、PVCの付着物である。
【0072】
ただし、
パーティクル除去状態 ○=98%以上、△=95%以上98%未満、×=95%未満。
有機物残渣状態(1cm
2当たりの残渣) ◎=0.05ng以上0.10ng未満、○=0.10ng以上0.25ng未満、△=0.25ng以上0.50ng未満、×=0.50ng以上。
粘着異物除去状態 ○=残渣なし、△=わずかな残渣、×=残渣多数。
【0073】
表1の実施例1〜6に示す洗浄液は、洗浄剤の濃度が1.5wt%から4wt%の範囲で、曇点が75℃以上であり、ガラス板に付着した粘着異物を軟化、膨張させることができる洗浄液の温度60℃から75℃の範囲で洗浄液を使用することにより、洗浄液の相分離を防ぐことができ、洗浄液由来の残渣を抑制することができたため、有機物残渣を0.50ng未満とすることができた。また、パーティクルの除去状態についても、95%以上となった。表1の実施例1〜6に示す洗浄液は、パーティクルを除去しつつ、有機物残渣を抑制できることを確認できた。以上のことから、洗浄剤の濃度が1.5wt%から4wt%であり、KOHのアルカリ成分を含み、曇点が75℃以上となる洗浄液は、有機物残渣を抑制できるため、ブラックマトリックス樹脂が表面に形成されるカラーフィルタ用ガラス基板の洗浄に適することが確認できた。
【0074】
表2の比較例1、2に示す洗浄液は、洗浄剤あるいはKOHの濃度が低い為、洗浄力が弱く、パーティクルあるいは粘着異物を十分に除去できないことが確認できた。
表2の比較例3〜6に示す洗浄液は、曇点が75℃未満であり、ガラス板に付着した粘着異物を軟化、膨張させることができる洗浄液の温度60℃から75℃の範囲で洗浄液を使用すると、洗浄液の相分離が発生する。洗浄後でも有機物残渣が0.50ng以上となることが確認できた。このため、曇点が75℃未満となる洗浄液は、有機物残渣によりブラックマトリックス樹脂の密着性を低下させるため、ブラックマトリックス樹脂が表面に形成されるカラーフィルタ用ガラス基板の洗浄に適さないことが確認できた。
【0075】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。例えば、上述の実施形態では、ガラス板としてFPD用のガラス板を用いて説明したが、本発明はFPD用のガラス板に限定されない。