【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に関わる金属結合した金属微粒子の集まりからなる成形体を成形加工する際に用いる懸濁
液を製造する製造方法は、
カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物を、メタノールに分散し、該
カルボン酸金属化合物が分子状態で
メタノールに分散された
メタノール分散液を作成し、前記
メタノールに溶解ないしは混和する第一の性質と、前記
メタノールの粘度より20倍以上粘度が高い第二の性質と、沸点が前記
メタノールの沸点より高く、前記
カルボン酸金属化合物が熱分解を完了する温度より低い第三の性質を兼備する
芳香族カルボン酸エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類ないしはグリセリンに属するいずれか一種類の有機化合物を、前記
メタノール分散液に混合すると、該有機化合物が前記
メタノール分散液の
メタノールに溶解ないしは混和し、該
メタノール分散液の粘度が増大した混合液に前記
カルボン酸金属化合物が分子状態で分散した混合液が作成され
る、この後、該混合液を撹拌型の真空脱泡装置に投入すると、該混合液から前記
メタノールが気化し、前記有機化合物中に前記
カルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが析出するとともに、該混合液中に含まれる空胞が取り除かれ
、前記有機化合物中に前記
カルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが均一に分散した懸濁
液が製造される、金属結合した金属微粒子の集まりからなる成形体を成形加工する際に用いる懸濁
液を製造する製造方法である。
【0008】
つまり、本製造方法に依れば、第一に、熱分解で金属を析出する
カルボン酸金属化合物を
メタノールに分散すると、
カルボン酸金属化合物が分子状態で
メタノールに分散されて液相化する。第二に、
メタノール分散液に
芳香族カルボン酸エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類ないしはグリセリンに属するいずれか一種類の有機化合物を混合すると、有機化合物が
メタノールに溶解ないしは混和し、
メタノールの粘度より20倍以上粘度が高いため、粘度が20倍以上増大した液体に
カルボン酸金属化合物が分子状態で分散した混合液が得られる。従って、本製造方法に依って、金属結合した金属微粒子の集まりからなる成形体を製造する際の原料になる混合液が製造され、6段落に記載した第一の課題が解決される。
しかし、前記した製造方法で製造した混合液には、過剰な
メタノールが含まれるため粘度が低く粘り性が殆どない。この混合液を成形機で加圧しても混合液が崩れて成形体が加工できない。このため、混合液を撹拌型の真空脱泡装置に投入し、混合液を撹拌しながら、大気圧より低い圧力に低下させると、
メタノールが気化し、混合液の体積が著しく低下するとともに、粘度が20倍以上増大する。これによって、混合液は成形体に加工できる滑り性と粘り性とを兼備する。なお、有機化合物の沸点が
メタノールより高いため、有機化合物は気化せず、混合液に残存して滑り性と粘り性とを発揮する。
つまり、
カルボン酸金属化合物は
メタノールに分散するが有機化合物に分散しないため、混合液に分子状態で分散されていた
カルボン酸金属化合物は、
メタノールが気化すると、
カルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりを混合液中に析出する。従って、混合液を撹拌させながら
メタノールを気化させると、
カルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが、有機化合物に均一に分散した懸濁
液が得られる。この懸濁
液の粘度は、有機化合物の粘度と量とに依存するため、懸濁
液の粘度は自在に変えられる。このため、懸濁
液を成形機によって成形体に加工する際に、成形体を加工する成形機の制約を受けない。
なお、
カルボン酸金属化合物を熱分解した際に析出する金属微粒子の大きさは、
カルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに相当する。従って、
カルボン酸金属化合物を一旦
メタノールに分散させた後に、
メタノールを気化させるだけの簡単な処理で、金属微粒子を析出する原料が得られる。
いっぽう、前記した製造方法で混合液を作成する際に、空気が混合液に空胞として混入する。こうした空胞が成形体に残存すると、成形体が昇温された際に、ボイルシャルルの法則に従い、昇温された温度差に応じて空胞が体積膨張し、空胞の体積膨張で成形体にクラックが入る場合がある。このため、真空脱泡装置において混合液を撹拌すると、混合液に混入した不要な空胞を取り除くことができる。
この結果、本処理方法に依れば、金属結合した金属微粒子の集まりからなる成形体を製造する際の原料になる混合液を、撹拌型の真空脱泡装置で処理するだけの簡単な処理で、混合液が成形機で成形加工できる滑り性と粘り性とを兼備する懸濁
液になる。
従って、本製造方法に依れば、6段落に記載した第三の課題が解決される。
つまり、飽和脂肪酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンに、金属イオンが共有結合するカルボン酸金属化合物は、メタノールに10重量%近く分散し、大気雰囲気の290−430℃における1分程度の熱処理で、熱分解が完了して金属を析出する。このため、カルボン酸金属化合物は、前記した混合液の原料になる。また、金属を析出する温度は金属の融点より著しく低く、大気雰囲気での短時間の熱処理で金属を析出する。
すなわち、飽和脂肪酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合するカルボン酸金属化合物を構成するイオンの中で、金属イオンが最も大きい。従って、飽和脂肪酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長い。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理し、カルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が最初に分断され、カルボン酸と金属とに分離する。さらに、カルボン酸が飽和脂肪酸から構成される場合は、カルボン酸が気化熱を奪って1分程度で気化し、カルボン酸の気化が完了すると金属が析出する。こうしたカルボン酸金属化合物として、オクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物などがある。なお、オクチル酸の沸点は228℃で、ラウリン酸の沸点は296℃で、ステアリン酸の沸点は361℃である。従って、これらのカルボン酸金属化合物は、大気雰囲気の290−430℃における1分程度の熱処理で熱分解が完了して金属を析出する。つまり、カルボン酸金属化合物の熱分解反応は、構成する金属によらず、構成するカルボン酸の沸点で熱分解が始まる。このため、熱分解が完了して金属が析出する温度は、従来の金属の融点を超える温度で金属の原料を溶解して金属を精製する溶製材の製造温度に比べると著しく低い。
さらに、前記したカルボン酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、最も汎用的な無機物ないしは有機物であるカルボン酸を、強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成され、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属からなるカルボン酸金属化合物が合成される。従って、カルボン酸金属化合物は、7段落に記載した懸濁液の安価な原料になる。
なお、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物は、飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物に比べて、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、熱分解によって金属酸化物、例えば、オレイン酸銅の場合は、酸化第一銅Cu2Oと酸化第二銅CuOとが同時に析出し、酸化第一銅Cu2Oと酸化第二銅CuOとを銅に還元する処理費用を要する。特に、酸化第一銅Cu2Oは、大気雰囲気より酸素がリッチな雰囲気で一度酸化第二銅CuOに酸化させ、さらに、還元雰囲気で銅に還元させる必要があるため、処理費用がかさむ。
また、芳香族カルボン酸エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類ないしはグリセリンのいずれかに属する有機化合物に、メタノールに溶解ないしは混和する第一の性質と、メタノールの粘度より20倍以上粘度が高い第二の性質と、沸点がメタノールの沸点より高く、カルボン酸金属化合物が熱分解を完了する温度より低い第三の性質とを兼備する有機化合物がある。このような有機化合物は汎用的な工業用薬品である。このため、有機化合物は、7段落に記載した懸濁液の安価な原料になる。
従って、カルボン酸金属化合物をメタノールに分散すると、カルボン酸金属化合物がメタノールに分子状態で分散して液相化する。また、有機化合物がメタノールに溶解ないしは混和し、メタノールの粘度より20倍以上粘度が高いため、カルボン酸金属化合物のメタノール分散液に有機化合物を混合すると、20倍以上粘度が増大した液体にカルボン酸金属化合物が分子状態で分散した混合液が得られる。
さらに、この混合液を撹拌型の真空脱泡装置に投入し、混合液を撹拌しながら、大気圧より低い圧力に低下させると、メタノールが気化し、混合液の体積が著しく低下するとともに、粘度が20倍以上増大する。これによって、混合液は成形体に加工できる滑り性と粘り性とを兼備する。なお、有機化合物の沸点がメタノールより高いため、有機化合物は気化せず、混合液に残存して滑り性と粘り性とを発揮する。
つまり、カルボン酸金属化合物はメタノールに分散するが有機化合物に分散しないため、混合液に分子状態で分散されていたカルボン酸金属化合物は、メタノールが気化すると、カルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりを混合液中に析出する。従って、混合液を撹拌させながらメタノールを気化させると、カルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが、有機化合物に均一に分散した懸濁液が得られる。この懸濁液の粘度は、有機化合物の粘度と量とに依存するため、懸濁液の粘度は自在に変えられる。このため、懸濁液を成形機によって成形体に加工する際に、成形体を加工する成形機の制約を受けない。
いっぽう、前記した製造方法で混合液を作成する際に、空気が混合液に空胞として混入する。こうした空胞が成形体に残存すると、成形体が昇温された際に、ボイルシャルルの法則に従い、昇温された温度差に応じて空胞が体積膨張し、空胞の体積膨張で成形体にクラックが入る場合がある。このため、真空脱泡装置において混合液を撹拌すると、混合液に混入した不要な空胞を取り除くことができる。
この結果、本処理方法に依れば、金属結合した金属微粒子の集まりからなる成形体を製造する際の原料になる混合液を、撹拌型の真空脱泡装置で処理するだけの簡単な処理で、混合液が成形機で成形加工できる滑り性と粘り性とを兼備する懸濁液になる。
なお、本製造方法は、金属結合した金属微粒子の集まりからなる成形体を製造する際の原料になる混合液を、安価なカルボン酸金属化合物と安価な有機化合物で構成する。また、金属を析出する温度は金属の融点より著しく低く、大気雰囲気での短時間の熱処理で金属を析出する。従って、本製造方法に依れば、6段落に記載した第二の課題が解決される。
【0009】
(削除)
【0010】
(削除)
【0011】
本発明に関わる金属結合した合金微粒子の集まりからなる成形体を成形加工する際に用いる懸濁液を製造する製造方法は、7段落に記載した
カルボン酸金属化合物として、
同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合した複数種類のカルボン酸金属化合物を用い、該複数種類の
カルボン酸金属化合物をメタノールに分散し、該複数種類の
カルボン酸金属化合物が分子状態で
メタノールに分散された
メタノール分散液を作成し、前記
メタノールに溶解ないしは混和する第一の性質と、前記
メタノールの粘度より20倍以上粘度が高い第二の性質と、沸点が前記
メタノールの沸点より高く、前記複数種類の
カルボン酸金属化合物が同時に熱分解を完了する温度より低い第三の性質を兼備する
芳香族カルボン酸エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類ないしはグリセリンに属するいずれか一種類の有機化合物を、前記メタノール分散液に混合すると、該有機化合物が前記
メタノール分散液の
メタノールに溶解ないしは混和し、
該メタノール分散液の粘度が増大した混合液に前記複数種類の
カルボン酸金属化合物が分子状態で分散した混合液が作成され
る、この後、該混合液を撹拌型の真空脱泡装置に投入すると、該混合液から前記
メタノールが気化し、前記有機化合物中に前記複数種類の
カルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが析出するとともに、該混合液中に含まれる空胞が取り除かれ
、前記有機化合物中に前記複数種類の
カルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが均一に分散した懸濁
液が製造される、金属結合した合金微粒子の集まりからなる成形体を成形加工する際に用いる懸濁
液を製造する製造方法である。
【0012】
つまり、7段落に記載した混合液の製造方法に準じて、第一に、熱分解で互いに異なる複数種類の金属を同時に析出する複数種類の
カルボン酸金属化合物を
メタノールに分散すると、複数種類の
カルボン酸金属化合物が分子状態で
メタノールに分散して液相化される。第二に、
メタノール分散液に
芳香族カルボン酸エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類ないしはグリセリンに属するいずれか一種類の有機化合物を混合すると、有機化合物が
メタノールに溶解ないしは混和し、
メタノールの粘度より20倍以上粘度が高いため、20倍以上粘度が増大した液体に、複数種類の
カルボン酸金属化合物が分子状態で分散した混合液が得られる。従って、本製造方法に依れば、金属結合した合金微粒子の集まりからなる成形体を製造する際の原料になる混合液が製造され、6段落に記載した第一の課題が解決される。
しかし、前記した製造方法で製造した混合液には、過剰な
メタノールが含まれるため粘度が低く粘り性が殆どない。この混合液を成形機で加圧しても混合液が崩れて成形体が加工できない。このため、混合液を撹拌型の真空脱泡装置に投入し、混合液を撹拌しながら、大気圧より低い圧力に低下させると、
メタノールが気化し、混合液の体積が著しく低下するとともに、粘度が20倍以上増大する。これによって、混合液は成形体に加工できる滑り性と粘り性とを兼備する。なお、有機化合物の沸点が
メタノールより高いため、有機化合物は気化せず、混合液に残存して滑り性と粘り性とを発揮する。
つまり、
カルボン酸金属化合物は
メタノールに分散するが有機化合物に分散しないため、混合液に分子状態で分散されていた複数種類の
カルボン酸金属化合物は、
メタノールが気化すると、複数種類の
カルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりを混合液中に析出する。従って、混合液を撹拌させながら
メタノールを気化させると、複数種類の
カルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが、有機化合物に均一に分散した懸濁
液が得られる。この懸濁
液の粘度は、有機化合物の粘度と量とに依存するため、懸濁
液の粘度は自在に変えられる。このため、懸濁
液を成形機によって成形体に加工する際に、成形体を加工する成形機の制約を受けない。
なお、複数種類の
カルボン酸金属化合物を熱分解した際に析出する合金微粒子の大きさは、複数種類の
カルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに相当する。従って、複数種類の
カルボン酸金属化合物を一旦
メタノールに分散させた後に、
メタノールを気化させるだけの簡単な処理で、合金微粒子を析出する原料が得られる。
いっぽう、前記した製造方法で製造した混合液を作成する際に、空気が混合液に空胞として混入する。こうした空胞が成形体に残存すると、成形体が昇温された際に、ボイルシャルルの法則に従い、昇温された温度差に応じて空胞が体積膨張し、空胞の体積膨張で成形体にクラックが入る場合がある。このため、真空脱泡装置において混合液を撹拌すると、混合液に混入した不要な空胞を取り除くことができる。
この結果、本製造方法に依れば、金属結合した合金微粒子の集まりからなる成形体を製造する際の原料になる混合液を、撹拌型の真空脱泡装置で処理するだけの簡単な処理で、混合液が成形機で成形加工できる滑り性と粘り性とを兼備する懸濁
液になる。
従って、本製造方法に依れば、6段落に記載した第三の課題が解決される。
つまり、同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合した複数種類のカルボン酸金属化合物は、10段落で説明したカルボン酸金属化合物で構成されるため、大気雰囲気に置ける290−430℃の温度での1分程度の熱処理で同時に熱分解が完了し、複数種類のカルボン酸金属化合物のモル数の比率に応じた組成からなる合金を析出する。このため、複数種類のカルボン酸金属化合物は、11段落に記載した懸濁液の安価な原料になる。また、合金が析出する温度は、合金の融点より著しく低く、大気雰囲気での短時間の熱処理で合金を析出する。
すなわち、同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合する複数種類のカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、飽和脂肪酸の沸点を超える温度で、同一の飽和脂肪酸と互いに異なる金属とに同時に分解する。さらに昇温すると、飽和脂肪酸の気化が1分程度で進み、気化が完了した後に複数種類の金属が同時に析出し、これらの金属は不純物を持たない活性状態にあるため、析出した複数種類の金属の組成からなる合金が析出する。つまり、複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解反応は、構成する金属によらず、構成するカルボン酸の沸点で熱分解が始まる。このため、熱分解が完了して合金が析出する温度は、合金の融点を超える温度で合金の原料を溶解して合金を精製する溶製材の製造温度に比べると著しく低い。
また、芳香族カルボン酸エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類ないしはグリセリンの中に、メタノールに溶解ないしは混和する第一の性質と、メタノールの粘度より20倍以上粘度が高い第二の性質と、沸点がメタノールの沸点より高く、複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解を完了する温度より低い第三の性質とを兼備する有機化合物がある。このような有機化合物は汎用的な工業用薬品である。このため、有機化合物は、11段落に記載した懸濁液を構成する安価な原料になる。
従って、複数種類のカルボン酸金属化合物をメタノールに分散すると、複数種類のカルボン酸金属化合物が分子状態でメタノールに分散して液相化される。また、有機化合物がメタノールに溶解ないしは混和し、メタノールの粘度より20倍以上粘度が高いため、複数種類のカルボン酸金属化合物のメタノールの分散液に有機化合物を混合すると、20倍以上粘度が増大した液体に複数種類のカルボン酸金属化合物が分子状態で分散した混合液が得られる。これによって、11段落した混合液が製造される。
さらに、この混合液を撹拌型の真空脱泡装置に投入し、混合液を撹拌しながら、大気圧より低い圧力に低下させると、アルコールが気化し、混合液の体積が著しく低下するとともに、粘度が20倍以上増大する。これによって、混合液は成形体に加工できる滑り性と粘り性とを兼備する。なお、有機化合物の沸点がアルコールより高いため、有機化合物は気化せず、混合液に残存して滑り性と粘り性とを発揮する。
つまり、カルボン酸金属化合物はアルコールに分散するが有機化合物に分散しないため、混合液に分子状態で分散されていた複数種類のカルボン酸金属化合物は、アルコールが気化すると、複数種類のカルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりを混合液中に析出する。従って、混合液を撹拌させながらアルコールを気化させると、複数種類のカルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが、有機化合物に均一に分散した懸濁液が得られる。この懸濁液の粘度は、有機化合物の粘度と量とに依存するため、懸濁液の粘度は自在に変えられる。このため、懸濁液を成形機によって成形体に加工する際に、成形体を加工する成形機の制約を受けない。
いっぽう、前記した製造方法で混合液を作成する際に、空気が混合液に空胞として混入する。こうした空胞が成形体に残存すると、成形体が昇温された際に、ボイルシャルルの法則に従い、昇温された温度差に応じて空胞が体積膨張し、空胞の体積膨張で成形体にクラックが入る場合がある。このため、真空脱泡装置において混合液を撹拌すると、混合液に混入した不要な空胞を取り除くことができる。
この結果、本処理方法に依れば、金属結合した金属微粒子の集まりからなる成形体を製造する際の原料になる混合液を、撹拌型の真空脱泡装置で処理するだけの簡単な処理で、混合液が成形機で成形加工できる滑り性と粘り性とを兼備する懸濁液になる。
なお、本製造方法は、金属結合した合金微粒子の集まりからなる成形体を製造する際の原料になる混合液を、安価な複数種類のカルボン酸金属化合物と安価な有機化合物で構成する。また、合金が析出する温度は、合金の融点より著しく低く、大気雰囲気での短時間の熱処理で合金を析出する。従って、本製造方法に依れば、6段落に記載した第二の課題が解決される。
【0013】
(削除)
【0014】
(削除)
【0015】
7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、圧縮成形法に依って
金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法は、
7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填するキャビティを、前記懸濁液を構成する有機化合物の沸点に予め昇温し、前記懸濁液を圧縮する成形機を、前記懸濁液を構成する
カルボン酸金属化合物が熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、ないしは、前記懸濁液を構成する複数種類の
カルボン酸金属化合物が同時に熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、この後、前記キャビティに7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填し、さらに、前記成形機を前記キャビティに下ろし、該成形機によって、徐々に増大する加圧力を前記懸濁液に加え、前記キャビティと前記成形機との隙間に第一の成形体を形成する、この後、前記成形機による加圧を一旦中止し、前記キャビティと前記成形機とに吐き出た気体を、該キャビティと該成形機から抜け出させ、さらに、前記成形機によって、前記加圧力より大きい加圧力を前記第一の成形体に加える、
これによって、
7段落に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記キャビティに充填され、さらに、前記成形機による加圧力を受けると、該懸濁液が昇温し、該懸濁液を構成する
カルボン酸金属化合物が熱分解して粒状の金属微粒子の集まりが析出し、該金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりに、前記成形機によって増大した加圧力が加わり、該金属結合した金属微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記キャビティと前記成形機との隙間に形成され、さらに、該第一の成形体に、前記成形機によって、前記加圧力より大きい加圧力が加わり、前記第一の成形体を構成する金属結合した金属微粒子の集まりが前記キャビティに圧接され、該圧接された金属微粒子の集まりからなる第二の成形体が、前記キャビティと前記成形機との隙間に形成される、7段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、圧縮成形法に依って
金属結合した金属の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である、
ないしは、
11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液が、成形機による加圧力を受けると、該懸濁液が昇温し、該懸濁液を構成する複数種類の
カルボン酸金属化合物が同時に熱分解して粒状の合金微粒子の集まりが析出し、該合金微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した合金微粒子の集まりに、前記成形機によって増大した加圧力が加わり、該金属結合した合金微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記キャビティと前記成形機との隙間に形成され、さらに、該第一の成形体に、前記成形機によって、前記加圧力より大きい加圧力が加わり、前記第一の成形体を構成する金属結合した合金微粒子の集まりが前記キャビティに圧接され、該圧接された合金微粒子の集まりからなる第二の成形体が、前記キャビティと前記成形機との隙間に形成される、11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、圧縮成形法に依って
金属結合した合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である。
【0016】
つまり、本成形方法に依れば、圧縮成形法(コンプレッション成形法ともいう)で合成樹脂からなる成形品を製造する方法に近い方法で、7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する。なお、
カルボン酸金属化合物の熱分解反応は、
カルボン酸金属化合物を構成する
カルボン酸の沸点で、
カルボン酸金属化合物が金属と
カルボン酸とに分解し、さらに昇温されると、
カルボン酸が気化熱を奪って気化し、
カルボン酸の気化が完了すると、金属が析出して熱分解反応を終える。また、同一の
カルボン酸から構成される複数種類の
カルボン酸金属化合物の熱分解反応は、
カルボン酸の沸点で、複数種類の
カルボン酸金属化合物が、互いに異なる
複数種類の金属と
カルボン酸とに分解し、さらに昇温されると、
カルボン酸が気化熱を奪って気化し、
カルボン酸の気化が完了すると、複数種類の
カルボン酸金属化合物のモル数の比率からなる合金が析出して熱分解反応を終える。
すなわち、キャビティを有機化合物の沸点に予め昇温する。また、成形機を、
カルボン酸金属化合物が熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に、ないしは、複数種類の
カルボン酸金属化合物が同時に熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に、予め昇温する。このようなキャビティに懸濁液を充填すると、懸濁液から多くの有機化合物が気化し、懸濁液は粘り性を増大する。なお、気化した有機化合物は、回収機をキャビティの近くに設置し、回収機で吸引して再利用する。この後、成形機をキャビティに下し、成形機によって徐々に増大する加圧力を懸濁液に加える。この際、懸濁液が昇温するとともに、徐々に増大する加圧力が作用する。このため、残存した有機化合物が最初に気化する。この後、
カルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、ないしは、複数種類の
カルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、
カルボン酸が生成され、この
カルボン酸が気化する。いっぽう、懸濁液に作用する圧縮応力が徐々に増大するため、有機化合物の気体と、
カルボン酸からなる気体は、懸濁液に留まれず、懸濁液とキャビティとの隙間と、懸濁液と成形機との隙間とに吐き出る。この後、成形機の加圧を一旦中止し、気体をキャビティと成形機とから抜け出させ、抜け出た気体は回収機で吸引して再利用する。このため、熱処理された懸濁液の内部に空隙は形成されない。こうして、
カルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、ないしは、複数種類の
カルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、懸濁液を構成する
カルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じて、ないしは、懸濁液を構成する複数種類の
カルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じて、金属ないしは合金からなる40−60nmの大きさの粒状微粒子の集まりが析出し、粒状微粒子が不純物を持たない活性状態にあるため、互いに接触する部位で金属結合する。この金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる第一の成形体が、キャビティと成形機との隙間に形成される。この後、成形機によって、前記した加圧力より大きな加圧力を第一の成形体に加える。これによって、第一の成形体を構成する金属結合した金属ないしは合金の粒状微粒子の集まりが圧接され、高密度に圧接した粒状微粒子の集まりからなる第二の成形体が、キャビティと成形機との隙間に形成される。この第二の成形体は、不純物を持たない金属ないしは合金の微粒子が、互いに強固に圧接した微粒子の集まりで構成されるため、2m程度の高さからの落下衝撃によっては破壊されない機械的強度を持つ。この後、成形機を引き上げ、キャビティ内から成形体を取り出す。なお、
カルボン酸金属化合物のモル数と同じモル数で金属微粒子が析出し、ないしは、複数種類の
カルボン酸金属化合物のモル数と同じモル数で合金微粒子が析出するため、
カルボン酸金属化合物の熱分解に伴って、ないしは、複数種類の
カルボン酸金属化合物の熱分解に伴って体積の収縮は生じない。
なお、
7段落に記載したカルボン酸金属化合物を用い
るため、ないしは、
11段落に記載した同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合した複数種類のカルボン酸金属化合物を用い
るため、大気雰囲気の290−430℃に近い温度での1分程度の熱処理で、粒状の金属ないしは合金の微粒子の集まりが析出する。この熱処理温度は、MIMに用いる金属ないしは合金の粉末の融点より著しく低く、金属ないしは合金の粉末の焼結温度より著しく低い。また、熱処理時間はMIMの製法に比べて極めて短い。さらに、熱処理雰囲気が大気である。このため、熱処理費用が著しく安価で済む。
従って、本成形方法によって、6段落に記載した第四から第七の課題が解決される。
【0017】
7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、トランスファ成形法に依って
金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法は、
7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填するポットを、前記懸濁液を構成する有機化合物の沸点に予め昇温し、前記懸濁液が押し込まれるキャビティを、前記懸濁液を構成する
カルボン酸金属化合物が熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、ないしは、前記懸濁液を構成する複数種類の
カルボン酸金属化合物が同時に熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、この後、前記ポットに7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填し、さらに、前記ポットに設置されたプランジャーによって前記懸濁液を加圧し、該懸濁液を前記キャビティ内に押し込み、該キャビティ内に第一の成形体を形成し、この後、前記プランジャーに依る加圧を一旦中止し、前記キャビティに吐き出た気体を、該キャビティから抜け出させ、さらに、前記プランジャーによって、前記第一の成形体を形成する際に加えた加圧力より大きい加圧力を前記第一の成形体に加える、
これによって、
7段落に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記ポットに充填され、さらに、前記キャビティ内に押し込まれると、該懸濁液が昇温し、該懸濁液を構成する
カルボン酸金属化合物が熱分解して粒状の金属微粒子の集まりが析出し、該金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりに、前記プランジャーによる加圧力が加わり、該金属結合した金属微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記キャビティ内に形成され、さらに、該第一の成形体に、前記プランジャーによって、前記加圧力より大きい加圧力が加わり、前記第一の成形体を構成する金属結合した金属微粒子の集まりが前記キャビティに圧接され、該圧接された金属微粒子の集まりからなる第二の成形体が、前記キャビティ内に形成される、7段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、トランスファ成形法に依って
金属結合した金属の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である、
ないしは、
11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記ポットに充填され、さらに、前記キャビティ内に押し込まれると、該懸濁液が昇温し、該懸濁液を構成する複数種類の
カルボン酸金属化合物が同時に熱分解して粒状の合金微粒子の集まりが析出し、該合金微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した合金微粒子の集まりに、前記プランジャーによる加圧力が加わり、該金属結合した合金微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記キャビティ内に形成され、さらに、該第一の成形体に、前記プランジャーによって、前記加圧力より大きい加圧力が加わり、前記第一の成形体を構成する金属結合した合金微粒子の集まりが前記キャビティに圧接され、該圧接された合金微粒子の集まりからなる第二の成形体が、前記キャビティ内に形成される、11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、トランスファ成形法に依って
金属結合した合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である。
【0018】
つまり、本成形方法に依れば、トランスファ成形法で合成樹脂からなる成形品を製造する方法に近い方法で、7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する。なお、金属を析出する
カルボン酸金属化合物の熱分解反応は、ないしは、同一の
カルボン酸から構成される複数種類の
カルボン酸金属化合物の熱分解反応は、16段落で記載したので省略する。
すなわち、ポットを有機合物の沸点に予め昇温する。また、キャビティを
カルボン酸金属化合物が熱分解する温度より10℃以上高い温度に、ないしは、複数種類の
カルボン酸金属化合物が同時に熱分解する温度より10℃以上高い温度に、予め昇温する。このようなポットに懸濁液を充填すると、懸濁液から多くの有機化合物が気化し、懸濁液は粘り性を増大する。なお、気化した有機化合物は、回収機で吸引して再利用する。次に、ポットに充填された懸濁液をプランジャーで加圧し、スプール、ランチ、ゲートを通過させた後に、キャビティ内に押し込む。この際、押し込まれた懸濁液が昇温するとともに、プランジャーによる加圧力が懸濁液に作用する。このため、懸濁液に残留した有機化合物が気化するが、有機化合物の気体は、加圧力で懸濁液に留まれず、懸濁液とキャビティとの隙間と、懸濁液とプランジャーとの隙間とに吐き出される。この後、プランジャーの加圧を一旦中止して、気体をキャビティから抜け出させ、回収機で吸引して再利用する。この後、プランジャーによって、スプール、ランチ、ゲートを介して、キャビティ内に押し込まれた懸濁液に徐々に増大する加圧力を加え、第一の成形体をキャビティ内に作成する。この際、懸濁液の
カルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、ないしは、懸濁液の複数種類の
カルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、
カルボン酸が生成され、
カルボン酸が気化する。いっぽう、
カルボン酸からなる気体は、徐々に増大する加圧力によって懸濁液に留まれず、懸濁液とキャビティとの隙間と、懸濁液とプランジャーとの隙間とに吐き出る。この後、プランジャーの加圧を一旦中止して、気体はキャビティから抜け出させ、回収機で吸引して再利用する。このため、熱処理された懸濁液の内部に空隙は形成されない。こうして、
カルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、ないしは、複数種類の
カルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、懸濁液を構成する
カルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じて、ないしは、懸濁液を構成する複数種類の
カルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じて、金属ないしは合金の40−60nmの大きさからなる粒状微粒子の集まりが析出する。この粒状微粒子は、不純物を持たない活性状態にあるため、粒状微粒子が互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる第一の成形体が、キャビティ内に形成される。この後、プランジャーによって、第一の成形体を形成する際に加えた加圧力より大きな加圧力を第一の成形体に加える。これによって、第一の成形体を構成する金属結合した金属ないしは合金の粒状微粒子の集まりが互いに圧接され、高密度に圧接した粒状微粒子の集まりからなる第二の成形体が、キャビティ内に形成される。この第二の成形体は、不純物を持たない金属ないしは合金の微粒子が、互いに強固に圧接した微粒子の集まりで構成されるため、2m程度の高さからの落下衝撃によって破壊されない機械的強度を持つ。この後、プランジャーを引き上げ、キャビティを開いて成形体を取り出し、成形体から不要となるスプール、ランチ、ゲートを切断し、成形品を得る。なお、
カルボン酸金属化合物のモル数と同じモル数で金属微粒子が析出するため、ないしは、複数種類の
カルボン酸金属化合物のモル数と同じモル数で合金微粒子が析出するため、
カルボン酸金属化合物の熱分解に伴って、ないしは、複数種類の
カルボン酸金属化合物の熱分解に伴って体積の収縮は生じない。
なお、
7段落に記載したカルボン酸金属化合物を用い
るため、ないしは、
11段落に記載した同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合した複数種類のカルボン酸金属化合物を用い
るため、大気雰囲気の290−430℃に近い温度における1分程度の短い熱処理で粒状の金属ないしは合金の微粒子の集まりが析出する。この熱処理温度は、MIMに用いる金属ないしは合金の粉末の融点より著しく低く、MIMに依る金属ないしは合金の粉末の焼結温度より著しく低い。また、MIMの製法に比べて熱処理時間は極めて短い。さらに、熱処理雰囲気が大気である。このため、熱処理費用が著しく安価で済む。
従って、本成形方法によって、6段落に記載した第四から第七の課題が解決される。
【0019】
7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、射出成形法に依って
金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法は、
7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填するシリンダーを、前記懸濁液を構成する有機化合物の沸点に予め昇温し、前記懸濁液が射出される金型を、前記懸濁液を構成する
カルボン酸金属化合物が熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、ないしは、前記懸濁液を構成する複数種類の
カルボン酸金属化合物が同時に熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、この後、前記シリンダーに7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填し、さらに、前記シリンダー内に設置されたスクリューによって、徐々に増大する加圧力を前記懸濁液に加え、該懸濁液を前記金型内に射出する、この後、前記スクリューに依る加圧を一旦中止し、前記金型に吐き出た気体を、該金型から前記シリンダーに移動させ、該シリンダーから抜け出させる、さらに、前記スクリューによって、徐々に増大する加圧力を前記射出された懸濁液に加え、第一の成形体を前記金型内に形成する、この後、前記スクリューに依る加圧を一旦中止し、前記金型に吐き出た気体を、該金型から前記シリンダーに移動させ、該シリンダーから抜け出させる、さらに、前記スクリューによって、前記第一の成形体を形成する際に加えた加圧力より大きい加圧力を前記第一の成形体に加える、
これによって、
7段落に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記シリンダーに充填され、さらに、前記金型内に射出されると、該懸濁液が昇温し、該懸濁液を構成する
カルボン酸金属化合物が熱分解して粒状の金属微粒子の集まりが析出し、該金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりに、前記スクリューによる加圧力が加わり、該金属結合した金属微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記金型内に形成され、さらに、該第一の成形体に、前記スクリューによって、前記加圧力より大きい加圧力が加わり、前記第一の成形体を構成する金属結合した金属微粒子の集まりが前記金型に圧接され、該圧接された金属微粒子の集まりからなる第二の成形体が前記金型内に形成される、7段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、射出成形法に依って
金属結合した金属の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である、
ないしは、
11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記シリンダーに充填され、さらに、前記金型内に射出されると、該懸濁液が昇温し、該懸濁液を構成する複数種類の
カルボン酸金属化合物が同時に熱分解して粒状の合金微粒子の集まりが析出し、該合金微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した合金微粒子の集まりに、前記スクリューによる加圧力が加わり、該金属結合した合金微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記金型内に形成され、さらに、該第一の成形体に、前記スクリューによって、前記加圧力より大きい加圧力が加わり、前記第一の成形体を構成する金属結合した合金微粒子の集まりが前記金型に圧接され、該圧接された合金微粒子の集まりからなる第二の成形体が前記金型内に形成される、11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、射出成形法に依って
金属結合した合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である。
【0020】
つまり、本成形方法に依れば、射出成形法で合成樹脂からなる成形品を製造する方法に近い方法で、7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、金属結合した金属ないしは金属結合した合金の微粒子の集まりからなる成形体を金型内に製造する。なお、金属を析出する
カルボン酸金属化合物の熱分解反応は、ないしは、同一の
カルボン酸から構成される複数種類の
カルボン酸金属化合物の熱分解反応は、16段落で記載したので省略する。
すなわち、シリンダーを有機合物の沸点に予め昇温する。また、金型を
カルボン酸金属化合物が熱分解する温度より10℃以上高い温度に、ないしは、複数種類の
カルボン酸金属化合物が同時に熱分解する温度より10℃以上高い温度に、予め昇温する。このようなシリンダーに懸濁液を充填すると、懸濁液から多くの有機化合物が気化し、懸濁液は粘り性を増大する。なお、気化した有機化合物は、回収機で吸引して再利用する。次に、シリンダー内に設置されたスクリューの移動によって、徐々に増大する加圧力を懸濁液に加え、懸濁液をシリンダー内でスムースに移動させた後に、懸濁液を金型内に射出する。この際、金型に射出された懸濁液が昇温するとともに、一定の加圧力が懸濁液に作用する。このため、懸濁液から残留した有機化合物が優先して気化し、有機化合物の気体は、加圧力で懸濁液に留まれず、懸濁液と金型との隙間に吐き出される。この後、スクリューに依る加圧を一旦中止し、有機化合物の気体を、金型からシリンダーに移動させ、シリンダーから吐き出させ、吐き出た気体を回収機で吸引して再利用する。この後、スクリューを移動させ、徐々に増大する加圧力を金型内の懸濁液に加える。この際、懸濁液がさらに昇温されて、
カルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、ないしは、複数種類の
カルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、
カルボン酸が生成され、この
カルボン酸が気化する。この
カルボン酸からなる気体は、徐々に増大する加圧力によって、懸濁液に留まれず、懸濁液と金型との隙間に吐き出される。この後、スクリューに依る加圧を一旦中止し、気体を金型からシリンダーに移動させ、シリンダーから吐き出させ、吐き出た気体を回収機で吸引して再利用する。このため、熱処理された懸濁液の内部に空隙は形成されない。こうして、
カルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、ないしは、複数種類の
カルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、懸濁液を構成する
カルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じて、ないしは、懸濁液を構成する複数種類の
カルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じて、金属ないしは合金の40−60nmの大きさからなる粒状微粒子の集まりが析出する。この粒状微粒子は、不純物を持たない活性状態にあるため、互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属微粒子ないしは合金微粒子の集まりからなる第一の成形体が、金型内に形成される。さらに、スクリューの移動によって、第一の成形体を形成する際に加えた加圧力より大きな加圧力を第一の成形体に加える。これによって、第一の成形体を構成する金属結合した金属ないしは合金の粒状微粒子の集まりが金型に圧接され、高密度に圧接した粒状微粒子の集まりからなる第二の成形体が、金型内に形成される。この第二の成形体は、不純物を持たない金属ないしは合金の微粒子が、互いに強固に圧接した微粒子の集まりで構成されるため、2m程度の高さからの落下衝撃によって破壊されない機械的強度を持つ。この後、金型を開き、金型から成形体を取り出す。さらに、成形体から不要となるランナーを切断し成形品を得る。なお、
カルボン酸金属化合物のモル数と同じモル数で金属微粒子が析出するため、ないしは、複数種類の
カルボン酸金属化合物のモル数と同じモル数で合金微粒子が析出するため、
カルボン酸金属化合物の熱分解に伴って、ないしは、複数種類の
カルボン酸金属化合物の熱分解に伴って体積の収縮は生じない。
なお、
7段落に記載したカルボン酸金属化合物を用い
るため、ないしは、
11段落に記載した同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合した複数種類のカルボン酸金属化合物を用い
るため、大気雰囲気の290−430℃に近い温度での1分程度の熱処理で粒状の金属ないしは合金の微粒子の集まりが析出する。この熱処理温度は、MIMに用いる金属ないしは合金の粉末の融点より著しく低く、また、金属ないしは合金の粉末の焼結温度より著しく低い。また、熱処理時間はMIMの製法に比べて極めて短い。さらに、熱処理雰囲気が大気である。このため、熱処理費用が著しく安価で済む。
従って、本成形方法によって、6段落に記載した第四から第七の課題が解決される。
【0021】
7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、押出成形法に依って
金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法は、
7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填するシリンダーを、前記懸濁液を構成する有機化合物の沸点に予め昇温し、前記シリンダーの前方に設置されるダイを、前記懸濁液を構成する
カルボン酸金属化合物が熱分解する温度より10℃以上高い温度に
予め昇温し、ないしは、前記懸濁液を構成する複数種類の
カルボン酸金属化合物が同時に熱分解する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、かつ、該ダイの内部に形成される溝の長さは、前記懸濁液が該溝を通過する際に、該懸濁液を構成する
カルボン酸金属化合物が熱分解される長さに予め設定し、ないしは、該懸濁液を構成する複数種類の
カルボン酸金属化合物が同時に熱分解される長さに予め設定し、この後、前記シリンダーに7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填し、さらに、該シリンダー内に設置されたスクリューの移動によって前記懸濁液を加圧し、該懸濁液が前記ダイの溝を通過する際に、該懸濁液が継続して加圧されるとともに昇温され、該懸濁液は、前記溝の出口から該溝の形状からなる第一の成形体として押し出され、さらに、該第一の成形体を一対の金型で挟んだ後に一方の金型で加圧する、
これによって、
7段落に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記シリンダーに充填され、さらに、前記スクリューの移動によって、前記ダイの溝を通過する際に、該懸濁液が継続して加圧されるとともに昇温し、該懸濁液を構成する
カルボン酸金属化合物が熱分解し、粒状の金属微粒子の集まりが析出し、該金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりに継続して加圧力が加わり、該金属結合した金属微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記溝の出口から該溝の形状からなる成形体として押し出され、さらに、該第一の成形体が一対の金型で挟まれた後に、一方の金型で加圧され、前記第一の成形体を構成する金属結合した金属微粒子の集まりが前記金型に圧接され、該圧接された金属微粒子の集まりからなる第二の成形体が前記金型内に形成される、7段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、押出成形法に依って
金属結合した金属の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である、
ないしは、
11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記シリンダーに充填され、さらに、前記スクリューの移動によって、前記ダイの溝を通過する際に、該懸濁液が継続して加圧されるとともに昇温し、該懸濁液を構成する複数種類の
カルボン酸金属化合物が同時に熱分解して合金微粒子の集まりが析出し、該合金微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した合金微粒子の集まりに継続して加圧力が加わり、該金属結合した合金微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記溝の出口から該溝の形状からなる成形体として押し出され、さらに、該第一の成形体が一対の金型で挟まれた後に、一方の金型で加圧され、前記第一の成形体を構成する金属結合した合金微粒子の集まりが前記金型に圧接され、該圧接された合金微粒子の集まりからなる第二の成形体が前記金型内に形成される、11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、押出成形法に依って
金属結合した合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である。
【0022】
つまり、本成形方法に依れば、押出成形法で合成樹脂からなる成形品を製造する方法に近い方法で、7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体が、ダイ(金型)から押し出される。なお、金属を析出する
カルボン酸金属化合物の熱分解反応は、ないしは、同一の
カルボン酸から構成される複数種類の
カルボン酸金属化合物の熱分解反応は、16段落で記載したので省略する。
すなわち、シリンダーを有機化合物の沸点に予め昇温する。また、シリンダーの前方に設置されるダイは予め、
カルボン酸金属化合物が熱分解する温度より10℃以上高い温度に、ないしは、複数種類の
カルボン酸金属化合物が同時に熱分解する温度より10℃以上高い温度に昇温し、かつ、ダイの内部に形成された溝を懸濁液が通過する際に、
カルボン酸金属化合物が熱分解し、ないしは、複数種類の
カルボン酸金属化合物が同時に熱分解するのに必要な長さをダイが持つ。こうしたシリンダーに7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填すると、懸濁液から多くの有機化合物が気化し、懸濁液は粘り性を増大する。なお、気化した有機化合物は、回収機をシリンダーの近くに設置して、回収機で吸引して再利用する。この後、シリンダー内に設置されたスクリューの移動で懸濁液を加圧し、シリンダーの前方に設置されたダイの内部に形成された溝を、加圧された懸濁液が通過し、懸濁液が熱処理される。この際、懸濁液が昇温されるとともに、所定の長さを持つ溝を懸濁液が通過するために必要な加圧力が、懸濁液に継続して加わる。この結果、懸濁液に残存した有機化合物が最初に気化し、気化した有機化合物は加圧力で懸濁液に留まれず、ダイの出口から放出される。次に、懸濁液の
カルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、ないしは、懸濁液の複数種類の
カルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、
カルボン酸が生成され、
カルボン酸が気化する。この
カルボン酸からなる気体は加圧力で懸濁液に留まれず、ダイの出口から放出される。このため、熱処理された懸濁液の内部に空隙は形成されない。なお、ダイの出口から放出される気体は、回収機で吸引して再利用する。こうして、懸濁液が溝を通過する際に、
カルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、ないしは、複数種類の
カルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、懸濁液を構成する
カルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じて、ないしは、懸濁液を構成する複数種類の
カルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じて、金属ないしは合金の40−60nmの大きさからなる粒状微粒子の集まりが析出する。この粒状微粒子は、不純物を持たない活性状態にあるため、互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属ないしは合金の粒状微粒子の集まりからなる第一の成形体が、ダイの溝の形状からなるシートやチューブやパイプなどの成形体として、溝の出口から押し出される。さらに、押し出された第一の成形体を一対の金型で挟み、一方の金型によって成形体を加圧する。これによって、第一の成形体を構成する金属結合した金属ないしは合金の粒状微粒子の集まりが金型に圧接され、高密度に圧接した粒状微粒子の集まりからなる第二の成形体が形成される。この第二の成形体は、不純物を持たない金属ないしは合金の微粒子が、互いに強固に圧接した微粒子の集まりで構成されるため、2m程度の高さからの落下衝撃によって破壊されない機械的強度を持つ。この後、成形体を引き取り機で引き取り、あるいは、ローラーで巻き取る。なお、
カルボン酸金属化合物のモル数と同じモル数で金属微粒子が析出するため、ないしは、複数種類の
カルボン酸金属化合物のモル数と同じモル数で合金微粒子が析出するため、熱分解に伴って体積の収縮は生じない。
なお、
7段落に記載したカルボン酸金属化合物を用い
るため、ないしは、
11段落に記載した同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合した複数種類のカルボン酸金属化合物を用い
るため、大気雰囲気の290−430℃に近い温度での1分程度の熱処理で粒状の金属ないしは合金の微粒子の集まりが析出する。この熱処理温度は、MIMに用いる金属ないしは合金の粉末の融点より著しく低く、金属ないしは合金の粉末の焼結温度より著しく低い。また、MIMの製法に比べて熱処理時間は極めて短い。さらに、熱処理雰囲気が大気である。このため、熱処理費用が著しく安価で済む。
従って、本成形方法によって、6段落に記載した第四から第七の課題が解決される。
【0023】
7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、エアブロー成形法に依って
金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる中空の成形体を成形する方法は、
7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填するシリンダーを、前記懸濁液を構成する有機化合物の沸点に予め昇温し、チューブ状に押し出された前記懸濁液を挟む一対の金型を、前記懸濁液を構成する
カルボン酸金属化合物が熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、ないしは、前記懸濁液を構成する複数種類の
カルボン酸金属化合物が同時に熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、この後、前記シリンダーに7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填し、さらに、前記シリンダー内に設置されたスクリューの移動によって前記懸濁液を加圧し、該加圧された懸濁液が前記シリンダーの前方に設置されたダイの内部に形成された溝を通過し、該溝の出口からチューブ状の懸濁液として押し出され、該押し出されたチューブ状の懸濁液を一対の金型で挟み、さらに、該一対の金型を閉じた後に、エアブロー装置によって前記チューブ状の懸濁液の内部に、徐々に空気圧が増大する圧縮空気を供給し、該チューブ状の懸濁液を膨らませ、第一の中空の成形体を前記一対の金型内に形成する、この後、前記圧縮空気の供給を一旦停止し、前記第一の中空の成形体から気体を排出させ、さらに、前記エアブロー装置によって、前記第一の中空の成形体の内部に、前記圧縮空気より大きい空気圧からなる圧縮空気を送り込んで該第一の中空の成形体の内部を加圧する、
これによって、
7段落に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記シリンダーに充填され、さらに、前記スクリューの移動によって加圧され、該加圧された懸濁液が前記ダイの内部に形成された溝を通過し、該溝の出口からチューブ状の懸濁液として押し出され、この後、一対の金型で挟まれ、該チューブ状の懸濁液が昇温し、該チューブ状の懸濁液を構成する
カルボン酸金属化合物が熱分解して金属微粒子の集まりが析出し、該金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりからなるチューブ状の成形体が形成され、さらに、該チューブ状の成形体の内側が、前記エアブロー装置によって供給された圧縮空気によって膨らみ、該金属結合した金属微粒子の集まりからなる第一の中空の成形体が前記金型内に形成され、さらに、該第一の中空の成形体の内部が、前記エアブロー装置によって送り込まれた前記圧縮空気より大きい空気圧からなる圧縮空気で加圧され、前記第一の中空の成形体を構成する金属結合した金属微粒子の集まりが前記金型に圧接され、該圧接された金属微粒子の集まりからなる第二の中空の成形体が、前記金型内に形成される、7段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、エアブロー成形法に依って
金属結合した金属の微粒子の集まりからなる中空の成形体を成形する方法である、
ないしは、
11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記シリンダーに充填され、さらに、前記スクリューの移動によって加圧され、該加圧された懸濁液が前記ダイの内部に形成された溝を通過し、該溝の出口からチューブ状の懸濁液として押し出され、この後、一対の金型で挟まれ、該チューブ状の懸濁液が昇温し、該チューブ状の懸濁液を構成する複数種類の
カルボン酸金属化合物が同時に熱分解して合金微粒子の集まりが析出し、該合金微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した合金微粒子の集まりからなるチューブ状の成形体が形成され、さらに、該チューブ状の成形体の内側が、前記エアブロー装置によって供給された圧縮空気によって膨らみ、該金属結合した合金微粒子の集まりからなる第一の中空の成形体が前記金型内に形成され、さらに、該第一の中空の成形体の内部が、前記エアブロー装置によって送り込まれた前記圧縮空気より大きい空気圧からなる圧縮空気で加圧され、前記第一の中空の成形体を構成する金属結合した合金微粒子の集まりが前記金型に圧接され、該圧接された合金微粒子の集まりからなる第二の中空の成形体が、前記金型内に形成される、11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、エアブロー成形法に依って
金属結合した合金の微粒子の集まりからなる中空の成形体を成形する方法である。
【0024】
つまり、本成形方法に依れば、エアブロー成形法で合成樹脂の中空の成形品を製造する方法に近い方法で、7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる中空の成形体を製造する。なお、金属を析出する
カルボン酸金属化合物の熱分解反応は、ないしは、同一の
カルボン酸から構成される複数種類の
カルボン酸金属化合物の熱分解反応は、16段落で記載したので省略する。
すなわち、シリンダーを有機合物の沸点に予め昇温する。また、一対の金型を、
カルボン酸金属化合物が熱分解する温度より10℃以上高い温度に、ないしは、複数種類の
カルボン酸金属化合物が同時に熱分解する温度より10℃以上高い温度に、予め昇温する。このようなシリンダーに懸濁液を充填すると、懸濁液から多くの有機化合物が気化し、懸濁液は粘り性を増大する。なお、気化した有機化合物は、回収機で吸引して再利用する。この後、シリンダー内に設置されたスクリューの移動で懸濁液を加圧し、シリンダーの前方に設置されたダイの内部に形成された溝を通過させてチューブ状に押し出す。次に、チューブ状に押し出された懸濁液を一対の金型で挟む。この金型を閉じた後に、金型で挟まれたチューブの内側に、徐々に空気圧が増大する圧縮空気を供給してチューブを膨らませ、チューブを金型に密着させて第一の成形体を形成する。この際、チューブが昇温するにつれ、チューブを膨らませる応力が増大する。この結果、チューブに残存した有機化合物が最初に気化し、気化した有機化合物は増大する応力でチューブに留まれず、チューブから吐き出る。次に、チューブの
カルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、ないしは、チューブの複数種類の
カルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、
カルボン酸が生成され、生成された
カルボン酸が気化する。この
カルボン酸からなる気体は、増大する応力でチューブに留まれず、チューブから吐き出る。この後、圧縮空気の供給を一旦中止し、チューブ内の気体を回収機で吸引して再利用する。このため、熱処理された懸濁液の内部に空隙は形成されない。こうして、チューブの
カルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、ないしは、チューブの複数種類の
カルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、懸濁液を構成する
カルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じて、ないしは、懸濁液を構成する複数種類の
カルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じて、金属ないしは合金の40−60nmの大きさからなる粒状微粒子の集まりが析出する。この粒状微粒子は、不純物を持たない活性状態にあるため、互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属ないしは合金の粒状微粒子の集まりからなる第一の成形体が、金型内に形成される。この後、第一の成形体の内部に前記の空気圧より大きい空気圧からなる圧縮空気を送り込んで第一の成形体を加圧する。これによって、第一の成形体を構成する金属結合した金属ないしは合金の粒状微粒子の集まりが圧接され、高密度に圧接した粒状微粒子の集まりからなる第二の成形体が形成される。この第二の成形体は、不純物を持たない金属ないしは合金の微粒子が、互いに強固に圧接した微粒子の集まりで構成されるため、2m程度の高さからの落下衝撃によって破壊されない機械的強度を持つ。この後、金型を開き、金型から
金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を取り出す。なお、
カルボン酸金属化合物のモル数と同じモル数で金属微粒子が析出するため、ないしは、複数種類の
カルボン酸金属化合物のモル数と同じモル数で合金微粒子が析出するため、熱分解に伴って体積の収縮は生じない。
なお、
7段落に記載したカルボン酸金属化合物を用い
るため、ないしは、
11段落に記載した同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合した複数種類のカルボン酸金属化合物を用い
るため、大気雰囲気の290−430℃に近い温度での1分程度の熱処理で粒状の金属ないしは合金の微粒子の集まりが析出する。この金属ないしは合金の微粒子が析出する温度は、MIMに用いる金属ないしは合金の粉末の融点より著しく低く、金属ないしは合金の粉末の焼結温度より著しく低い。また、熱処理時間はMIMの製法に比べて極めて短い。さらに、熱処理雰囲気が大気である。このため、熱処理費用が著しく安価で済む。
従って、本成形方法によって、6段落に記載した第四から第七の課題が解決される。
【0025】
7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用い、サーモフォーミング成形法に依って
金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法は、
7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填するシリンダーを、前記懸濁液を構成する有機化合物の沸点に予め昇温し、シート状に押し出された前記懸濁液を圧縮する上方の金型と、真空ポンプの吸引ホースが繋がる下方の金型とを、前記懸濁液を構成する
カルボン酸金属化合物が熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、ないしは、前記懸濁液を構成する複数種類の
カルボン酸金属化合物が同時に熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、この後、7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を前記シリンダーに充填し、さらに、前記シリンダー内に設置されたスクリューによって前記懸濁液を加圧し、該懸濁液を前記シリンダーの前方に設置されたダイの内部に形成された溝を通過させ、該溝の出口からシート状の懸濁液として押し出し、該シート状の懸濁液を、前記上方の金型と前記下方の金型との間に挟む、この後、前記真空ポンプを稼働させるとともに、前記上方の金型を前記下方の金型に下ろし、該上方の金型によって、徐々に増大する加圧力を前記懸濁液に加え、該懸濁液を前記下方の金型に密着させるとともに、前記上方の金型で加圧して第一の成形体を前記金型内に形成する、この後、前記上方の金型による加圧を一旦中止し、前記第一の成形体から気体を排出させ、さらに、前記上方の金型によって、前記加圧力より大きい加圧力を前記第一の成形体に加える、
これによって、
7段落に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記シリンダーに充填され、さらに、前記スクリューの移動によって加圧され、該加圧された懸濁液が前記ダイの内部に形成された溝を通過し、該溝の出口からシート状の懸濁液として押し出され、この後、一対の金型で挟まれ、さらに、上方の金型で加圧されると、該シート状の懸濁液が昇温し、該シート状の懸濁液を構成する
カルボン酸金属化合物が熱分解して金属微粒子の集まりが析出し、該金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりが、前記上方の金型で加圧され、該金属結合した金属微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記上方の金型と前記下方の金型との隙間に形成され、さらに、該第一の成形体が、前記上方の金型で前記加圧力より大きい加圧力で加圧され、前記第一の成形体を構成する金属結合した金属微粒子の集まりが前記下方の金型に圧接され、該圧接された金属微粒子の集まりからなる第二の成形体が、前記上方の金型と前記下方の金型との隙間形成される、7段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用い、サーモフォーミング成形法に依って
金属結合した金属の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である、
ないしは、
11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記シリンダーに充填され、さらに、前記スクリューの移動によって加圧され、該加圧された懸濁液が前記ダイの内部に形成された溝を通過し、該溝の出口からシート状の懸濁液として押し出され、この後、一対の金型で挟まれ、さらに、上方の金型で加圧されると、該シート状の懸濁液が昇温し、該シート状の懸濁液を構成する複数種類の
カルボン酸金属化合物が同時に熱分解して合金微粒子の集まりが析出し、該合金微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した合金微粒子の集まりが、前記上方の金型で加圧され、該金属結合した合金微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記上方の金型と前記下方の金型との隙間に形成され、さらに、該第一の成形体が、前記上方の金型で前記加圧力より大きい加圧力で加圧され、前記第一の成形体を構成する金属結合した合金微粒子の集まりが前記下方の金型に圧接され、該圧接された合金微粒子の集まりからなる第二の成形体が、前記上方の金型と前記下方の金型との隙間に形成される、11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用い、サーモフォーミング成形法に依って
金属結合した合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である。
【0026】
つまり、本成形方法に依れば、サーモフォーミング成形法で合成樹脂からなる成形品を製造する方法に近い方法で、7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を製造する。なお、金属を析出する
カルボン酸金属化合物の熱分解反応は、ないしは、同一の
カルボン酸から構成される複数種類の
カルボン酸金属化合物の熱分解反応は、16段落で記載したので省略する。
なお、本成形方法は、15段落で記載した圧縮成形法に近い製法であるが、真空ポンプで懸濁液を金型に密着させるため、圧縮成形法に依る成形体より肉厚が薄い成形体を製造するのに適している。
すなわち、シリンダーを有機合物の沸点に予め昇温する。また、上方の金型と下方の金型との双方を、
カルボン酸金属化合物が熱分解する温度より10℃以上高い温度に、ないしは、複数種類の
カルボン酸金属化合物が同時に熱分解する温度より10℃以上高い温度に、予め昇温する。このようなシリンダーに懸濁液を充填すると、懸濁液から多くの有機化合物が気化し、懸濁液は粘り性を増大する。なお、気化した有機化合物は、回収機をシリンダーの近くに設置し、回収機で吸引して再利用する。この後、シリンダー内に設置されたスクリューの移動で懸濁液を加圧し、シリンダーの前方に設置されたダイの内部に形成された溝を通過させ、溝の出口からシート状に押し出す。次に、シート状に押し出された懸濁液を一対の金型に移動させ、一対の金型で挟む。この後、真空ポンプを稼働させ、懸濁液を下方の金型に密着させるとともに、上方の金型を下方の金型に下ろし、上方の金型によって徐々に増大する加圧力を懸濁液に加える。この際、懸濁液に残存した有機化合物が最初に気化し、気化した有機化合物は増大する加圧力によって懸濁液に留まれず、金型内に吐き出る。次に、懸濁液の
カルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、ないしは、懸濁液の複数種類の
カルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、
カルボン酸が生成され、生成された
カルボン酸が気化する。この
カルボン酸からなる気体は、増大する加圧力によって懸濁液に留まれず、金型内に吐き出る。この後、上方の金型の圧縮を中止し、金型内にある気体を回収機で吸引して回収する。このため、熱処理された懸濁液の内部に空隙が形成されない。こうして、懸濁液の
カルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、ないしは、懸濁液の複数種類の
カルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、懸濁液を構成する
カルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じて、ないしは、懸濁液を構成する複数種類の
カルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じて、金属ないしは合金の40−60nmの大きさからなる粒状微粒子の集まりが析出する。この粒状微粒子は、不純物を持たない活性状態にあるため、粒状微粒子が互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属ないしは合金の粒状微粒子の集まりからなる第一の成形体が、一対の金型の隙間に形成される。この後、上方の金型で、第一の成形体を形成する際に加えた加圧力より大きな加圧力を、第一の成形体に加える。これによって、金属結合した金属ないしは合金の粒状微粒子の集まりが互いに圧接され、高密度に圧接した粒状微粒子の集まりからなる第二の成形体が、一対の金型の隙間に形成される。この第二の成形体は、不純物を持たない金属ないしは合金の微粒子が、互いに強固に圧接した微粒子の集まりで構成されるため、2m程度の高さからの落下衝撃によって破壊されない機械的強度を持つ。この後、金型を開き、金型から成形体を取り出す。なお、
カルボン酸金属化合物のモル数と同じモル数で金属微粒子が析出するため、ないしは、複数種類の
カルボン酸金属化合物のモル数と同じモル数で合金微粒子が析出するため、熱分解に伴って体積の収縮は生じない。
なお、
7段落に記載したカルボン酸金属化合物を用い
るため、ないしは、
11段落に記載した同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合した複数種類のカルボン酸金属化合物を用い
るため、大気雰囲気の290−430℃に近い温度での1分程度の熱処理で粒状の金属ないしは合金の微粒子の集まりが析出する。この金属ないしは合金の微粒子が析出する温度は、MIMに用いる金属ないしは合金の粉末の融点より著しく低く、金属ないしは合金の粉末の焼結温度より著しく低い。また、熱処理時間はMIMの製法に比べて極めて短い。さらに、熱処理雰囲気が大気である。こため、熱処理費用が著しく安価で済む。
従って、本成形方法によって、6段落に記載した第四から第七の課題が解決される。
【0027】
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【0028】
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