特許第6670105号(P6670105)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6670105金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670105
(24)【登録日】2020年3月3日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/00 20060101AFI20200309BHJP
   B22F 9/30 20060101ALI20200309BHJP
   B22F 3/02 20060101ALI20200309BHJP
   B22F 3/20 20060101ALI20200309BHJP
   C22C 38/00 20060101ALN20200309BHJP
【FI】
   B22F9/00 B
   B22F9/30 Z
   B22F3/02 S
   B22F3/02 M
   B22F3/02 A
   B22F3/20 D
   !C22C38/00 304
【請求項の数】8
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2015-257857(P2015-257857)
(22)【出願日】2015年12月24日
(65)【公開番号】特開2017-115233(P2017-115233A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年12月17日
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】512150358
【氏名又は名称】小林 博
(72)【発明者】
【氏名】小林 博
【審査官】 中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−294408(JP,A)
【文献】 特開平05−064804(JP,A)
【文献】 特開2006−316259(JP,A)
【文献】 特開2009−209387(JP,A)
【文献】 特開2015−229772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/00−9/30
B22F 3/00
B22F 3/20
B22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属結合した金属微粒子の集まりからなる成形体を成形加工する際に用いる懸濁を製造する製造方法は、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物を、メタノールに分散し、該カルボン酸金属化合物が分子状態でメタノールに分散されたメタノール分散液を作成し、前記メタノールに溶解ないしは混和する第一の性質と、前記メタノールの粘度より20倍以上粘度が高い第二の性質と、沸点が前記メタノールの沸点より高く、前記カルボン酸金属化合物が熱分解を完了する温度より低い第三の性質を兼備する芳香族カルボン酸エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類ないしはグリセリンに属するいずれか一種類の有機化合物を、前記メタノール分散液に混合すると、該有機化合物が前記メタノール分散液のメタノールに溶解ないしは混和し、該メタノール分散液の粘度が増大した混合液に前記カルボン酸金属化合物が分子状態で分散した混合液が作成され、この後、該混合液を撹拌型の真空脱泡装置に投入すると、該混合液から前記メタノールが気化し、前記有機化合物中に前記カルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが析出するとともに、該混合液中に含まれる空胞が取り除かれ前記有機化合物中に前記カルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが均一に分散した懸濁が製造される、金属結合した金属微粒子の集まりからなる成形体を成形加工する際に用いる懸濁を製造する製造方法。
【請求項2】
金属結合した合金微粒子の集まりからなる成形体を成形加工する際に用いる懸濁液を製造する製造方法は、請求項1に記載したカルボン酸金属化合物として、同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合した複数種類のカルボン酸金属化合物を用い、該複数種類のカルボン酸金属化合物をメタノールに分散し、該複数種類のカルボン酸金属化合物が分子状態でメタノールに分散されたメタノール分散液を作成し、前記メタノールに溶解ないしは混和する第一の性質と、前記メタノールの粘度より20倍以上粘度が高い第二の性質と、沸点が前記メタノールの沸点より高く、前記カルボン酸金属化合物が熱分解を完了する温度より低い第三の性質を兼備する芳香族カルボン酸エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類ないしはグリセリンに属するいずれか一種類の有機化合物を、前記メタノール分散液に混合すると、該有機化合物が前記メタノール分散液のメタノールに溶解ないしは混和し、該メタノール分散液の粘度が増大した混合液に前記複数種類のカルボン酸金属化合物が分子状態で分散した混合液が作成される、この後、該混合液を撹拌型の真空脱泡装置に投入すると、該混合液から前記メタノールが気化し、前記有機化合物中に前記複数種類のカルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが析出するとともに、該混合液中に含まれる空胞が取り除かれ、前記有機化合物中に前記複数種類のカルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが均一に分散した懸濁液が製造される、金属結合した合金微粒子の集まりからなる成形体を成形加工する際に用いる懸濁液を製造する製造方法
【請求項3】
請求項1ないしは請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、圧縮成形法に依って金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法は、
請求項1ないしは請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填するキャビティを、前記懸濁液を構成する有機化合物の沸点に予め昇温し、前記懸濁液を圧縮する成形機を、前記懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物が熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、ないしは、前記懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、この後、前記キャビティに、請求項1ないしは請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填し、さらに、前記成形機を前記キャビティに下ろし、該成形機によって、徐々に増大する加圧力を前記懸濁液に加え、前記キャビティと前記成形機との隙間に第一の成形体を形成する、この後、前記成形機による加圧を一旦中止し、前記キャビティと前記成形機とに吐き出た気体を、該キャビティと該成形機から抜け出させ、さらに、前記成形機によって、前記加圧力より大きい加圧力を前記第一の成形体に加える、
これによって、
請求項1に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記キャビティに充填され、さらに、前記成形機による加圧力を受けると、該懸濁液が昇温し、該懸濁液を構成する前記カルボン酸金属化合物が熱分解して粒状の金属微粒子の集まりが析出し、該金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりに、前記成形機によって増大した加圧力が加わり、該金属結合した金属微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記キャビティと前記成形機との隙間に形成され、さらに、該第一の成形体に、前記成形機によって、前記加圧力より大きい加圧力が加わり、前記第一の成形体を構成する金属結合した金属微粒子の集まりが前記キャビティに圧接され、該圧接された金属微粒子の集まりからなる第二の成形体が、前記キャビティと前記成形機との隙間に形成される、請求項1に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、圧縮成形法に依って金属結合した金属の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である
ないしは、
請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記キャビティに充填され、さらに、前記成形機による加圧力を受けると、該懸濁液が昇温し、該懸濁液を構成する前記複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解して粒状の合金微粒子の集まりが析出し、該合金微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した合金微粒子の集まりに、前記成形機によって増大した加圧力が加わり、該金属結合した合金微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記キャビティと前記成形機との隙間に形成され、さらに、該第一の成形体に、前記成形機によって、前記加圧力より大きい加圧力が加わり、前記第一の成形体を構成する金属結合した合金微粒子の集まりが前記キャビティに圧接され、該圧接された合金微粒子の集まりからなる第二の成形体が、前記キャビティと前記成形機との隙間に形成される、請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、圧縮成形法に依って金属結合した合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である
【請求項4】
請求項1ないしは請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、トランスファ成形法に依って金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法は、
請求項1ないしは請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填するポットを、前記懸濁液を構成する有機化合物の沸点に予め昇温し、前記懸濁液が押し込まれるキャビティを、前記懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物が熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、ないしは、前記懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、この後、前記ポットに請求項1ないしは請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填し、さらに、前記ポットに設置されたプランジャーによって前記懸濁液を加圧し、該懸濁液を前記キャビティ内に押し込み、該キャビティ内に第一の成形体を形成し、この後、前記プランジャーに依る加圧を一旦中止し、前記キャビティに吐き出た気体を、該キャビティから抜け出させ、さらに、前記プランジャーによって、前記第一の成形体を形成する際に加えた加圧力より大きい加圧力を前記第一の成形体に加える、
これによって、
請求項1に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記ポットに充填され、さらに、前記キャビティ内に押し込まれると、該懸濁液が昇温し、該懸濁液を構成する前記カルボン酸金属化合物が熱分解して粒状の金属微粒子の集まりが析出し、該金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりに、前記プランジャーによる加圧力が加わり、該金属結合した金属微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記キャビティ内に形成され、さらに、該第一の成形体に、前記プランジャーによって、前記加圧力より大きい加圧力が加わり、前記第一の成形体を構成する金属結合した金属微粒子の集まりが前記キャビティに圧接され、該圧接された金属微粒子の集まりからなる第二の成形体が、前記キャビティ内に形成される、請求項1に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、トランスファ成形法に依って金属結合した金属の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である
ないしは、
請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記ポットに充填され、さらに、前記キャビティ内に押し込まれると、該懸濁液が昇温し、該懸濁液を構成する前記複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解して粒状の合金微粒子の集まりが析出し、該合金微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した合金微粒子の集まりに、前記プランジャーによる加圧力が加わり、該金属結合した合金微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記キャビティ内に形成され、さらに、該第一の成形体に、前記プランジャーによって、前記加圧力より大きい加圧力が加わり、前記第一の成形体を構成する金属結合した合金微粒子の集まりが前記キャビティに圧接され、該圧接された合金微粒子の集まりからなる第二の成形体が、前記キャビティ内に形成される、請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、トランスファ成形法に依って金属結合した合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である
【請求項5】
請求項1ないしは請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、射出成形法に依って金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法は、
請求項1ないしは請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填するシリンダーを、前記懸濁液を構成する有機化合物の沸点に予め昇温し、前記懸濁液が射出される金型を、前記懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物が熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、ないしは、前記懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、この後、前記シリンダーに請求項1ないしは請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填し、さらに、前記シリンダー内に設置されたスクリューによって、徐々に増大する加圧力を前記懸濁液に加え、該懸濁液を前記金型内に射出する、この後、前記スクリューに依る加圧を一旦中止し、前記金型に吐き出た気体を、該金型から前記シリンダーに移動させ、該シリンダーから抜け出させる、さらに、前記スクリューによって、徐々に増大する加圧力を前記射出された懸濁液に加え、第一の成形体を前記金型内に形成する、この後、前記スクリューに依る加圧を一旦中止し、前記金型に吐き出た気体を、該金型から前記シリンダーに移動させ、該シリンダーから抜け出させる、さらに、前記スクリューによって、前記第一の成形体を形成する際に加えた加圧力より大きい加圧力を前記第一の成形体に加える、
これによって、
請求項1に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記シリンダーに充填され、さらに、前記金型内に射出されると、該懸濁液が昇温し、該懸濁液を構成する前記カルボン酸金属化合物が熱分解して粒状の金属微粒子の集まりが析出し、該金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりに、前記スクリューによる加圧力が加わり、該金属結合した金属微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記金型内に形成され、さらに、該第一の成形体に、前記スクリューによって、前記加圧力より大きい加圧力が加わり、前記第一の成形体を構成する金属結合した金属微粒子の集まりが前記金型に圧接され、該圧接された金属微粒子の集まりからなる第二の成形体が前記金型内に形成される、請求項1に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、射出成形法に依って金属結合した金属の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である、
ないしは、
請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記シリンダーに充填され、さらに、前記金型内に射出されると、該懸濁液が昇温し、該懸濁液を構成する前記複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解して粒状の合金微粒子の集まりが析出し、該合金微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した合金微粒子の集まりに、前記スクリューによる加圧力が加わり、該金属結合した合金微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記金型内に形成され、さらに、該第一の成形体に、前記スクリューによって、前記加圧力より大きい加圧力が加わり、前記第一の成形体を構成する金属結合した合金微粒子の集まりが前記金型に圧接され、該圧接された合金微粒子の集まりからなる第二の成形体が前記金型内に形成される、請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、射出成形法に依って金属結合した合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である
【請求項6】
請求項1ないしは請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、押出成形法に依って金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法は、
請求項1ないしは請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填するシリンダーを、前記懸濁液を構成する有機化合物の沸点に予め昇温し、前記シリンダーの前方に設置されるダイを、前記懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物が熱分解する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、ないしは、前記懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、かつ、該ダイの内部に形成される溝の長さは、前記懸濁液が該溝を通過する際に、該懸濁液を構成する前記カルボン酸金属化合物が熱分解される長さに予め設定し、ないしは、該懸濁液を構成する前記複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解される長さに予め設定し、この後、前記シリンダーに請求項1ないしは請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填し、さらに、該シリンダー内に設置されたスクリューの移動によって前記懸濁液を加圧し、該懸濁液が前記ダイの溝を通過する際に、該懸濁液が継続して加圧されるとともに昇温され、該懸濁液は、前記溝の出口から該溝の形状からなる第一の成形体として押し出され、さらに、該第一の成形体を一対の金型で挟んだ後に一方の金型で加圧する、
これによって、
請求項1に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記シリンダーに充填され、さらに、前記スクリューの移動によって、前記ダイの溝を通過する際に、該懸濁液が継続して加圧されるとともに昇温し、該懸濁液を構成する前記カルボン酸金属化合物が熱分解し、粒状の金属微粒子の集まりが析出し、該金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりに継続して加圧力が加わり、該金属結合した金属微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記溝の出口から該溝の形状からなる成形体として押し出され、さらに、該第一の成形体が一対の金型で挟まれた後に、一方の金型で加圧され、前記第一の成形体を構成する金属結合した金属微粒子の集まりが前記金型に圧接され、該圧接された金属微粒子の集まりからなる第二の成形体が前記金型内に形成される、請求項1に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、押出成形法に依って金属結合した金属の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である
ないしは、
請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記シリンダーに充填され、さらに、前記スクリューの移動によって、前記ダイの溝を通過する際に、該懸濁液が継続して加圧されるとともに昇温し、該懸濁液を構成する前記複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解して合金微粒子の集まりが析出し、該合金微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した合金微粒子の集まりに継続して加圧力が加わり、該金属結合した合金微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記溝の出口から該溝の形状からなる成形体として押し出され、さらに、該第一の成形体が一対の金型で挟まれた後に、一方の金型で加圧され、前記第一の成形体を構成する金属結合した合金微粒子の集まりが前記金型に圧接され、該圧接された合金微粒子の集まりからなる第二の成形体が前記金型内に形成される、請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、押出成形法に依って金属結合した合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である
【請求項7】
請求項1ないしは請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、エアブロー成形法に依って金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる中空の成形体を成形する方法は、
請求項1ないしは請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填するシリンダーを、前記懸濁液を構成する有機化合物の沸点に予め昇温し、チューブ状に押し出された前記懸濁液を挟む一対の金型を、前記懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物が熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、ないしは、前記懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、この後、前記シリンダーに請求項1ないしは請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填し、さらに、前記シリンダー内に設置されたスクリューの移動によって前記懸濁液を加圧し、該加圧された懸濁液が前記シリンダーの前方に設置されたダイの内部に形成された溝を通過し、該溝の出口からチューブ状の懸濁液として押し出され、該押し出されたチューブ状の懸濁液を一対の金型で挟み、さらに、該一対の金型を閉じた後に、エアブロー装置によって前記チューブ状の懸濁液の内部に、徐々に空気圧が増大する圧縮空気を供給し、該チューブ状の懸濁液を膨らませ、第一の中空の成形体を前記一対の金型内に形成する、この後、前記圧縮空気の供給を一旦停止し、前記第一の中空の成形体から気体を排出させ、さらに、前記エアブロー装置によって、前記第一の中空の成形体の内部に、前記圧縮空気より大きい空気圧からなる圧縮空気を送り込んで該第一の中空の成形体の内部を加圧する、
これによって、
請求項1に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記シリンダーに充填され、さらに、前記スクリューの移動によって加圧され、該加圧された懸濁液が前記ダイの内部に形成された溝を通過し、該溝の出口からチューブ状の懸濁液として押し出され、この後、一対の金型で挟まれ、該チューブ状の懸濁液が昇温し、該チューブ状の懸濁液を構成する前記カルボン酸金属化合物が熱分解して金属微粒子の集まりが析出し、該金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりからなるチューブ状の成形体が形成され、さらに、該チューブ状の成形体の内側が、前記エアブロー装置によって供給された圧縮空気によって膨らみ、該金属結合した金属微粒子の集まりからなる第一の中空の成形体が前記金型内に形成され、さらに、該第一の中空の成形体の内部が、前記エアブロー装置によって送り込まれた前記圧縮空気より大きい空気圧からなる圧縮空気で加圧され、前記第一の中空の成形体を構成する金属結合した金属微粒子の集まりが前記金型に圧接され、該圧接された金属微粒子の集まりからなる第二の中空の成形体が、前記金型内に形成される、請求項1に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、エアブロー成形法に依って金属結合した金属の微粒子の集まりからなる中空の成形体を成形する方法である、
ないしは、
請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記シリンダーに充填され、さらに、前記スクリューの移動によって加圧され、該加圧された懸濁液が前記ダイの内部に形成された溝を通過し、該溝の出口からチューブ状の懸濁液として押し出され、この後、一対の金型で挟まれ、該チューブ状の懸濁液が昇温し、該チューブ状の懸濁液を構成する前記複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解して合金微粒子の集まりが析出し、該合金微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した合金微粒子の集まりからなるチューブ状の成形体が形成され、さらに、該チューブ状の成形体の内側が、前記エアブロー装置によって供給された圧縮空気によって膨らみ、該金属結合した合金微粒子の集まりからなる第一の中空の成形体が前記金型内に形成され、さらに、該第一の中空の成形体の内部が、前記エアブロー装置によって送り込まれた前記圧縮空気より大きい空気圧からなる圧縮空気で加圧され、前記第一の中空の成形体を構成する金属結合した合金微粒子の集まりが前記金型に圧接され、該圧接された合金微粒子の集まりからなる第二の中空の成形体が、前記金型内に形成される、請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、エアブロー成形法に依って金属結合した合金の微粒子の集まりからなる中空の成形体を成形する方法である
【請求項8】
請求項1ないしは請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液を用い、サーモフォーミング成形法に依って金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法は、
請求項1ないしは請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填するシリンダーを、前記懸濁液を構成する有機化合物の沸点に予め昇温し、シート状に押し出された前記懸濁液を圧縮する上方の金型と、真空ポンプの吸引ホースが繋がる下方の金型とを、前記懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物が熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、ないしは、前記懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、この後、請求項1ないしは請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液を前記シリンダーに充填し、さらに、前記シリンダー内に設置されたスクリューによって前記懸濁液を加圧し、該懸濁液を前記シリンダーの前方に設置されたダイの内部に形成された溝を通過させ、該溝の出口からシート状の懸濁液として押し出し、該シート状の懸濁液を、前記上方の金型と前記下方の金型との間に挟む、この後、前記真空ポンプを稼働させるとともに、前記上方の金型を前記下方の金型に下ろし、該上方の金型によって、徐々に増大する加圧力を前記懸濁液に加え、該懸濁液を前記下方の金型に密着させるとともに、前記上方の金型で加圧して第一の成形体を前記金型内に形成する、この後、前記上方の金型による加圧を一旦中止し、前記第一の成形体から気体を排出させ、さらに、前記上方の金型によって、前記加圧力より大きい加圧力を前記第一の成形体に加える、
これによって、
請求項1に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記シリンダーに充填され、さらに、前記スクリューの移動によって加圧され、該加圧された懸濁液が前記ダイの内部に形成された溝を通過し、該溝の出口からシート状の懸濁液として押し出され、この後、一対の金型で挟まれ、さらに、上方の金型で加圧されると、該シート状の懸濁液が昇温し、該シート状の懸濁液を構成する前記カルボン酸金属化合物が熱分解して金属微粒子の集まりが析出し、該金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりが、前記上方の金型で加圧され、該金属結合した金属微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記上方の金型と前記下方の金型との隙間に形成され、さらに、該第一の成形体が、前記上方の金型で前記加圧力より大きい加圧力で加圧され、前記第一の成形体を構成する金属結合した金属微粒子の集まりが前記下方の金型に圧接され、該圧接された金属微粒子の集まりからなる第二の成形体が、前記上方の金型と前記下方の金型との隙間形成される、請求項1に記載した製造方法で製造した懸濁液を用い、サーモフォーミング成形法に依って金属結合した金属の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である、
ないしは、
請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記シリンダーに充填され、さらに、前記スクリューの移動によって加圧され、該加圧された懸濁液が前記ダイの内部に形成された溝を通過し、該溝の出口からシート状の懸濁液として押し出され、この後、一対の金型で挟まれ、さらに、上方の金型で加圧されると、該シート状の懸濁液が昇温し、該シート状の懸濁液を構成する前記複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解して合金微粒子の集まりが析出し、該合金微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した合金微粒子の集まりが、前記上方の金型で加圧され、該金属結合した合金微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記上方の金型と前記下方の金型との隙間に形成され、さらに、該第一の成形体が、前記上方の金型で前記加圧力より大きい加圧力で加圧され、前記第一の成形体を構成する金属結合した合金微粒子の集まりが前記下方の金型に圧接され、該圧接された合金微粒子の集まりからなる第二の成形体が、前記上方の金型と前記下方の金型との隙間に形成される、請求項2に記載した製造方法で製造した懸濁液を用い、サーモフォーミング成形法に依って金属結合した合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱分解で金属を析出するカルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりで懸濁を構成し、この懸濁を成形機で加圧して熱処理し、圧接された金属微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である。あるいは、熱分解で互いに異なる複数種類の金属を同時に析出する複数種類のカルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりで懸濁を構成し、この懸濁を成形機で加圧して熱処理し、圧接された合金微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である。
【背景技術】
【0002】
本発明に最も近い従来技術として、金属粉末射出成形法(MIM:Metal Injection Moldingという)による成形体を製造する技術がある。つまり、金属ないしは合金の粉末を、樹脂やワックスなどの有機バインダーと共に混合し、この混合物を射出成形機に充填し、有機バインダーが流動性を持つ温度まで昇温し、昇温された混合物を射出成形機によって金型に射出する。この後、成形体から有機バインダーを気化させ、さらに、金属ないしは合金の融点に近い温度に昇温し、金属ないしは合金の粉末を焼結して成形体を製造する。
【0003】
例えば、特許文献1には、チタン−ゲルマニウム合金からなる成形体をMIMによって製造する技術が記載されている。すなわち、チタン粉末とゲルマニウム粉末と第三金属粉末と有機バインダーとを混錬して混合物を製造し、この混合物を造粒し、射出成型機で造粒した混合物を金型に射出して成形体を製造し、この成形物を昇温して有機バインダーを気化させ、さらに昇温して3種類の金属粉を真空焼結炉で予備焼結と本燒結とを行ない、チタン−ゲルマニウム合金からなる成形体を製造する。
また、特許文献2は、金属粉末が自溶合金で構成されることを特徴とするMIMによる金属焼結体の製造が記載されている。特許文献2における成形体を製造する工程は、特許文献1における予備焼結がないことと、本燒結がアルゴンガスなどの不活性ガスや水素ガスの雰囲気で行われることを除くと、特許文献1と同様の工程を踏む。
【0004】
しかし、MIMに依る成形体の製造は、成形体の内部にひけや巣が発生する頻度が高い。このため、射出した成形体に含まれる有機バインダーを気化する脱脂工程に十分な時間をかけ、空胞などが残存しないようにする。さらに、粉末を焼結する焼結工程において、未燒結部などの欠陥が発生しないように、十分な時間をかけて粉末の焼結を進める。こうした粉末の焼結は、真空や不活性ガスや水素ガスなどの雰囲気で、粉末の融点に近い高温で長い時間をかけて行われる。例えば、特許文献1では、脱脂工程は真空焼結炉において400℃で1時間をかけて行い、焼結工程は真空焼結炉において1050℃で4時間をかけて行う。また、特許文献2では、脱脂工程は真空焼結炉において450℃で1時間をかけて行い、焼結工程はアルゴンガス雰囲気において1000℃で3時間をかけて行う。従って、MIMに依る成形体の製造は、熱処理に高い費用が掛かる。さらに、粉末の焼結の際に10−20%の割合で体積が収縮するため、焼結品を再加工して寸法精度を高める。これによって、MIMに依る成形体の製造費用はさらに高まる。
いっぽう、金属ないしは合金の粉末を直接結合させて成形体が形成できれば、成形体の製造工程が著しく簡略化でき、安価な成形体が製造できる。また、粉末の焼結に伴う体積の収縮もない。しかし、焼結以外の方法で、粉末を直接結合する技術はこれまでに存在しない。同様に、粉末を直接結合させて成形体を形成する技術もこれまでに存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−052092号公報
【特許文献2】特開2000−096101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
MIMに変わる安価な製法で、金属ないしは合金からなる成形体が製造できる技術が求められている。このため、金属ないしは合金の微粒子が生成される際に、微粒子が互いに金属結合し、この金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりを加圧して圧接し、圧接した微粒子の集まりが成形体を形成する技術になりえるかを検討した。
この全く新たな技術で成形体を形成するには、次の6つの技術が必要になる。第一に、金属ないしは合金の微粒子を生成する原料が、成形機で加圧することで、様々な形状の成形体に加工できる。第二に、成形体は、金属ないしは合金の融点より著しく低い温度で、かつ、大気雰囲気での短時間の熱処理で、金属ないしは合金の微粒子が析出する。第三に、成形体を熱処理すると、金属ないしは合金の微粒子が析出し、この微粒子が互いに金属結合し、さらに、この金属結合した微粒子の集まりを加圧して圧接すると、圧接された金属ないしは合金の微粒子の集まりが成形体を形成する。第四に、成形体は一定の機械的強度を持つ。第五に、微粒子が析出する際に成形体の収縮がない。第六に、金属ないしは合金の微粒子を生成する原料が安価である。
こうした6つの技術を実現するには、成形体を製作する工程に順じて、次の7つの技術課題が発生する。第一に、金属ないしは合金を析出する原料が液相化でき、液相化された原料が、高い粘度を持つ液体に分散された混合液になる。第二に、金属ないしは合金を析出する原料が安価で、金属ないしは合金の融点より著しく低い温度で、かつ、大気雰囲気での短時間の熱処理で金属ないしは合金を析出する。第三に、前記した混合液は、簡単な処理で成形体に加工できる滑り性と粘り性とを兼備する懸濁に変えられる。第四に、懸濁を成形体に加工する成形機の制約を受けず、様々な形状の成形体に加工できる。第五に、この成形体を、金属ないしは合金の融点より著しく低い温度で、かつ、大気雰囲気で短時間熱処理すると、金属ないしは合金の微粒子の集まりが析出し、この微粒子が互いに金属結合する、さらに、金属結合した微粒子の集まりを加圧して圧接すると、圧接された金属ないしは合金の微粒子の集まりが成形体を形成する。第六に、成形体は一定の機械的強度を持つ。第七に、成形体が形成される際に体積の収縮がなく、再加工が不要になる。
これらの7つの課題が解決できれば、前記した6つの技術が実現でき、これによって、MIMに変わる全く新たな製法で、金属ないしは合金からなる成形体が、MIMに依る製法より著しく安価に製造できる。本発明は、これら7つの課題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に関わる金属結合した金属微粒子の集まりからなる成形体を成形加工する際に用いる懸濁を製造する製造方法は、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合する第一の特徴と、前記カルボン酸が飽和脂肪酸からなる第二の特徴とを兼備するカルボン酸金属化合物を、メタノールに分散し、該カルボン酸金属化合物が分子状態でメタノールに分散されたメタノール分散液を作成し、前記メタノールに溶解ないしは混和する第一の性質と、前記メタノールの粘度より20倍以上粘度が高い第二の性質と、沸点が前記メタノールの沸点より高く、前記カルボン酸金属化合物が熱分解を完了する温度より低い第三の性質を兼備する芳香族カルボン酸エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類ないしはグリセリンに属するいずれか一種類の有機化合物を、前記メタノール分散液に混合すると、該有機化合物が前記メタノール分散液のメタノールに溶解ないしは混和し、該メタノール分散液の粘度が増大した混合液に前記カルボン酸金属化合物が分子状態で分散した混合液が作成され、この後、該混合液を撹拌型の真空脱泡装置に投入すると、該混合液から前記メタノールが気化し、前記有機化合物中に前記カルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが析出するとともに、該混合液中に含まれる空胞が取り除かれ前記有機化合物中に前記カルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが均一に分散した懸濁が製造される、金属結合した金属微粒子の集まりからなる成形体を成形加工する際に用いる懸濁を製造する製造方法である。
【0008】
つまり、本製造方法に依れば、第一に、熱分解で金属を析出するカルボン酸金属化合物をメタノールに分散すると、カルボン酸金属化合物が分子状態でメタノールに分散されて液相化する。第二に、メタノール分散液に芳香族カルボン酸エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類ないしはグリセリンに属するいずれか一種類の有機化合物を混合すると、有機化合物がメタノールに溶解ないしは混和し、メタノールの粘度より20倍以上粘度が高いため、粘度が20倍以上増大した液体にカルボン酸金属化合物が分子状態で分散した混合液が得られる。従って、本製造方法に依って、金属結合した金属微粒子の集まりからなる成形体を製造する際の原料になる混合液が製造され、6段落に記載した第一の課題が解決される。
しかし、前記した製造方法で製造した混合液には、過剰なメタノールが含まれるため粘度が低く粘り性が殆どない。この混合液を成形機で加圧しても混合液が崩れて成形体が加工できない。このため、混合液を撹拌型の真空脱泡装置に投入し、混合液を撹拌しながら、大気圧より低い圧力に低下させると、メタノールが気化し、混合液の体積が著しく低下するとともに、粘度が20倍以上増大する。これによって、混合液は成形体に加工できる滑り性と粘り性とを兼備する。なお、有機化合物の沸点がメタノールより高いため、有機化合物は気化せず、混合液に残存して滑り性と粘り性とを発揮する。
つまり、カルボン酸金属化合物はメタノールに分散するが有機化合物に分散しないため、混合液に分子状態で分散されていたカルボン酸金属化合物は、メタノールが気化すると、カルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりを混合液中に析出する。従って、混合液を撹拌させながらメタノールを気化させると、カルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが、有機化合物に均一に分散した懸濁が得られる。この懸濁の粘度は、有機化合物の粘度と量とに依存するため、懸濁の粘度は自在に変えられる。このため、懸濁を成形機によって成形体に加工する際に、成形体を加工する成形機の制約を受けない。
なお、カルボン酸金属化合物を熱分解した際に析出する金属微粒子の大きさは、カルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに相当する。従って、カルボン酸金属化合物を一旦メタノールに分散させた後に、メタノールを気化させるだけの簡単な処理で、金属微粒子を析出する原料が得られる。
いっぽう、前記した製造方法で混合液を作成する際に、空気が混合液に空胞として混入する。こうした空胞が成形体に残存すると、成形体が昇温された際に、ボイルシャルルの法則に従い、昇温された温度差に応じて空胞が体積膨張し、空胞の体積膨張で成形体にクラックが入る場合がある。このため、真空脱泡装置において混合液を撹拌すると、混合液に混入した不要な空胞を取り除くことができる。
この結果、本処理方法に依れば、金属結合した金属微粒子の集まりからなる成形体を製造する際の原料になる混合液を、撹拌型の真空脱泡装置で処理するだけの簡単な処理で、混合液が成形機で成形加工できる滑り性と粘り性とを兼備する懸濁になる。
従って、本製造方法に依れば、6段落に記載した第三の課題が解決される。
つまり、飽和脂肪酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンに、金属イオンが共有結合するカルボン酸金属化合物は、メタノールに10重量%近く分散し、大気雰囲気の290−430℃における1分程度の熱処理で、熱分解が完了して金属を析出する。このため、カルボン酸金属化合物は、前記した混合液の原料になる。また、金属を析出する温度は金属の融点より著しく低く、大気雰囲気での短時間の熱処理で金属を析出する
すなわち、飽和脂肪酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに共有結合するカルボン酸金属化合物を構成するイオンの中で、金属イオンが最も大きい。従って、飽和脂肪酸のカルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの距離が、他のイオン同士の距離より長い。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理し、カルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンと金属イオンとの結合部が最初に分断され、カルボン酸と金属とに分離する。さらに、カルボン酸が飽和脂肪酸から構成される場合は、カルボン酸が気化熱を奪って1分程度で気化し、カルボン酸の気化が完了すると金属が析出する。こうしたカルボン酸金属化合物として、オクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物などがある。なお、オクチル酸の沸点は228℃で、ラウリン酸の沸点は296℃で、ステアリン酸の沸点は361℃である。従って、これらのカルボン酸金属化合物は、大気雰囲気の290−430℃における1分程度の熱処理で熱分解が完了して金属を析出する。つまり、カルボン酸金属化合物の熱分解反応は、構成する金属によらず、構成するカルボン酸の沸点で熱分解が始まる。このため、熱分解が完了して金属が析出する温度は、従来の金属の融点を超える温度で金属の原料を溶解して金属を精製する溶製材の製造温度に比べると著しく低い
さらに、前記したカルボン酸金属化合物は、容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、最も汎用的な無機物ないしは有機物であるカルボン酸を、強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成され、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、様々な金属からなるカルボン酸金属化合物が合成される。従って、カルボン酸金属化合物は、7段落に記載した懸濁液の安価な原料になる
なお、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物は、飽和脂肪酸からなるカルボン酸金属化合物に比べて、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、熱分解によって金属酸化物、例えば、オレイン酸銅の場合は、酸化第一銅CuOと酸化第二銅CuOとが同時に析出し、酸化第一銅CuOと酸化第二銅CuOとを銅に還元する処理費用を要する。特に、酸化第一銅CuOは、大気雰囲気より酸素がリッチな雰囲気で一度酸化第二銅CuOに酸化させ、さらに、還元雰囲気で銅に還元させる必要があるため、処理費用がかさむ
また、芳香族カルボン酸エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類ないしはグリセリンのいずれかに属する有機化合物に、メタノールに溶解ないしは混和する第一の性質と、メタノールの粘度より20倍以上粘度が高い第二の性質と、沸点がメタノールの沸点より高く、カルボン酸金属化合物が熱分解を完了する温度より低い第三の性質とを兼備する有機化合物がある。このような有機化合物は汎用的な工業用薬品である。このため、有機化合物は、7段落に記載した懸濁液の安価な原料になる
従って、カルボン酸金属化合物をメタノールに分散すると、カルボン酸金属化合物がメタノールに分子状態で分散して液相化する。また、有機化合物がメタノールに溶解ないしは混和し、メタノールの粘度より20倍以上粘度が高いため、カルボン酸金属化合物のメタノール分散液に有機化合物を混合すると、20倍以上粘度が増大した液体にカルボン酸金属化合物が分子状態で分散した混合液が得られる
さらに、この混合液を撹拌型の真空脱泡装置に投入し、混合液を撹拌しながら、大気圧より低い圧力に低下させると、メタノールが気化し、混合液の体積が著しく低下するとともに、粘度が20倍以上増大する。これによって、混合液は成形体に加工できる滑り性と粘り性とを兼備する。なお、有機化合物の沸点がメタノールより高いため、有機化合物は気化せず、混合液に残存して滑り性と粘り性とを発揮する
つまり、カルボン酸金属化合物はメタノールに分散するが有機化合物に分散しないため、混合液に分子状態で分散されていたカルボン酸金属化合物は、メタノールが気化すると、カルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりを混合液中に析出する。従って、混合液を撹拌させながらメタノールを気化させると、カルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが、有機化合物に均一に分散した懸濁液が得られる。この懸濁液の粘度は、有機化合物の粘度と量とに依存するため、懸濁液の粘度は自在に変えられる。このため、懸濁液を成形機によって成形体に加工する際に、成形体を加工する成形機の制約を受けない
いっぽう、前記した製造方法で混合液を作成する際に、空気が混合液に空胞として混入する。こうした空胞が成形体に残存すると、成形体が昇温された際に、ボイルシャルルの法則に従い、昇温された温度差に応じて空胞が体積膨張し、空胞の体積膨張で成形体にクラックが入る場合がある。このため、真空脱泡装置において混合液を撹拌すると、混合液に混入した不要な空胞を取り除くことができる
この結果、本処理方法に依れば、金属結合した金属微粒子の集まりからなる成形体を製造する際の原料になる混合液を、撹拌型の真空脱泡装置で処理するだけの簡単な処理で、混合液が成形機で成形加工できる滑り性と粘り性とを兼備する懸濁液になる
なお、本製造方法は、金属結合した金属微粒子の集まりからなる成形体を製造する際の原料になる混合液を、安価なカルボン酸金属化合物と安価な有機化合物で構成する。また、金属を析出する温度は金属の融点より著しく低く、大気雰囲気での短時間の熱処理で金属を析出する。従って、本製造方法に依れば、6段落に記載した第二の課題が解決される
【0009】
(削除)
【0010】
(削除)
【0011】
本発明に関わる金属結合した合金微粒子の集まりからなる成形体を成形加工する際に用いる懸濁液を製造する製造方法は、7段落に記載したカルボン酸金属化合物として、同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合した複数種類のカルボン酸金属化合物を用い、該複数種類のカルボン酸金属化合物をメタノールに分散し、該複数種類のカルボン酸金属化合物が分子状態でメタノールに分散されたメタノール分散液を作成し、前記メタノールに溶解ないしは混和する第一の性質と、前記メタノールの粘度より20倍以上粘度が高い第二の性質と、沸点が前記メタノールの沸点より高く、前記複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解を完了する温度より低い第三の性質を兼備する芳香族カルボン酸エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類ないしはグリセリンに属するいずれか一種類の有機化合物を、前記メタノール分散液に混合すると、該有機化合物が前記メタノール分散液のメタノールに溶解ないしは混和し、該メタノール分散液の粘度が増大した混合液に前記複数種類のカルボン酸金属化合物が分子状態で分散した混合液が作成され、この後、該混合液を撹拌型の真空脱泡装置に投入すると、該混合液から前記メタノールが気化し、前記有機化合物中に前記複数種類のカルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが析出するとともに、該混合液中に含まれる空胞が取り除かれ前記有機化合物中に前記複数種類のカルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが均一に分散した懸濁が製造される、金属結合した合金微粒子の集まりからなる成形体を成形加工する際に用いる懸濁を製造する製造方法である。
【0012】
つまり、7段落に記載した混合液の製造方法に準じて、第一に、熱分解で互いに異なる複数種類の金属を同時に析出する複数種類のカルボン酸金属化合物をメタノールに分散すると、複数種類のカルボン酸金属化合物が分子状態でメタノールに分散して液相化される。第二に、メタノール分散液に芳香族カルボン酸エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類ないしはグリセリンに属するいずれか一種類の有機化合物を混合すると、有機化合物がメタノールに溶解ないしは混和し、メタノールの粘度より20倍以上粘度が高いため、20倍以上粘度が増大した液体に、複数種類のカルボン酸金属化合物が分子状態で分散した混合液が得られる。従って、本製造方法に依れば、金属結合した合金微粒子の集まりからなる成形体を製造する際の原料になる混合液が製造され、6段落に記載した第一の課題が解決される。
しかし、前記した製造方法で製造した混合液には、過剰なメタノールが含まれるため粘度が低く粘り性が殆どない。この混合液を成形機で加圧しても混合液が崩れて成形体が加工できない。このため、混合液を撹拌型の真空脱泡装置に投入し、混合液を撹拌しながら、大気圧より低い圧力に低下させると、メタノールが気化し、混合液の体積が著しく低下するとともに、粘度が20倍以上増大する。これによって、混合液は成形体に加工できる滑り性と粘り性とを兼備する。なお、有機化合物の沸点がメタノールより高いため、有機化合物は気化せず、混合液に残存して滑り性と粘り性とを発揮する。
つまり、カルボン酸金属化合物はメタノールに分散するが有機化合物に分散しないため、混合液に分子状態で分散されていた複数種類のカルボン酸金属化合物は、メタノールが気化すると、複数種類のカルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりを混合液中に析出する。従って、混合液を撹拌させながらメタノールを気化させると、複数種類のカルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが、有機化合物に均一に分散した懸濁が得られる。この懸濁の粘度は、有機化合物の粘度と量とに依存するため、懸濁の粘度は自在に変えられる。このため、懸濁を成形機によって成形体に加工する際に、成形体を加工する成形機の制約を受けない。
なお、複数種類のカルボン酸金属化合物を熱分解した際に析出する合金微粒子の大きさは、複数種類のカルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに相当する。従って、複数種類のカルボン酸金属化合物を一旦メタノールに分散させた後に、メタノールを気化させるだけの簡単な処理で、合金微粒子を析出する原料が得られる。
いっぽう、前記した製造方法で製造した混合液を作成する際に、空気が混合液に空胞として混入する。こうした空胞が成形体に残存すると、成形体が昇温された際に、ボイルシャルルの法則に従い、昇温された温度差に応じて空胞が体積膨張し、空胞の体積膨張で成形体にクラックが入る場合がある。このため、真空脱泡装置において混合液を撹拌すると、混合液に混入した不要な空胞を取り除くことができる。
この結果、本製造方法に依れば、金属結合した合金微粒子の集まりからなる成形体を製造する際の原料になる混合液を、撹拌型の真空脱泡装置で処理するだけの簡単な処理で、混合液が成形機で成形加工できる滑り性と粘り性とを兼備する懸濁になる。
従って、本製造方法に依れば、6段落に記載した第三の課題が解決される。
つまり、同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合した複数種類のカルボン酸金属化合物は、10段落で説明したカルボン酸金属化合物で構成されるため、大気雰囲気に置ける290−430℃の温度での1分程度の熱処理で同時に熱分解が完了し、複数種類のカルボン酸金属化合物のモル数の比率に応じた組成からなる合金を析出する。このため、複数種類のカルボン酸金属化合物は、11段落に記載した懸濁液の安価な原料になる。また、合金が析出する温度は、合金の融点より著しく低く、大気雰囲気での短時間の熱処理で合金を析出する
すなわち、同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合する複数種類のカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、飽和脂肪酸の沸点を超える温度で、同一の飽和脂肪酸と互いに異なる金属とに同時に分解する。さらに昇温すると、飽和脂肪酸の気化が1分程度で進み、気化が完了した後に複数種類の金属が同時に析出し、これらの金属は不純物を持たない活性状態にあるため、析出した複数種類の金属の組成からなる合金が析出する。つまり、複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解反応は、構成する金属によらず、構成するカルボン酸の沸点で熱分解が始まる。このため、熱分解が完了して合金が析出する温度は、合金の融点を超える温度で合金の原料を溶解して合金を精製する溶製材の製造温度に比べると著しく低い
また、芳香族カルボン酸エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類ないしはグリセリンの中に、メタノールに溶解ないしは混和する第一の性質と、メタノールの粘度より20倍以上粘度が高い第二の性質と、沸点がメタノールの沸点より高く、複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解を完了する温度より低い第三の性質とを兼備する有機化合物がある。このような有機化合物は汎用的な工業用薬品である。このため、有機化合物は、11段落に記載した懸濁液を構成する安価な原料になる
従って、複数種類のカルボン酸金属化合物をメタノールに分散すると、複数種類のカルボン酸金属化合物が分子状態でメタノールに分散して液相化される。また、有機化合物がメタノールに溶解ないしは混和し、メタノールの粘度より20倍以上粘度が高いため、複数種類のカルボン酸金属化合物のメタノールの分散液に有機化合物を混合すると、20倍以上粘度が増大した液体に複数種類のカルボン酸金属化合物が分子状態で分散した混合液が得られる。これによって、11段落した混合液が製造される
さらに、この混合液を撹拌型の真空脱泡装置に投入し、混合液を撹拌しながら、大気圧より低い圧力に低下させると、アルコールが気化し、混合液の体積が著しく低下するとともに、粘度が20倍以上増大する。これによって、混合液は成形体に加工できる滑り性と粘り性とを兼備する。なお、有機化合物の沸点がアルコールより高いため、有機化合物は気化せず、混合液に残存して滑り性と粘り性とを発揮する
つまり、カルボン酸金属化合物はアルコールに分散するが有機化合物に分散しないため、混合液に分子状態で分散されていた複数種類のカルボン酸金属化合物は、アルコールが気化すると、複数種類のカルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりを混合液中に析出する。従って、混合液を撹拌させながらアルコールを気化させると、複数種類のカルボン酸金属化合物の微細結晶の集まりが、有機化合物に均一に分散した懸濁液が得られる。この懸濁液の粘度は、有機化合物の粘度と量とに依存するため、懸濁液の粘度は自在に変えられる。このため、懸濁液を成形機によって成形体に加工する際に、成形体を加工する成形機の制約を受けない
いっぽう、前記した製造方法で混合液を作成する際に、空気が混合液に空胞として混入する。こうした空胞が成形体に残存すると、成形体が昇温された際に、ボイルシャルルの法則に従い、昇温された温度差に応じて空胞が体積膨張し、空胞の体積膨張で成形体にクラックが入る場合がある。このため、真空脱泡装置において混合液を撹拌すると、混合液に混入した不要な空胞を取り除くことができる
この結果、本処理方法に依れば、金属結合した金属微粒子の集まりからなる成形体を製造する際の原料になる混合液を、撹拌型の真空脱泡装置で処理するだけの簡単な処理で、混合液が成形機で成形加工できる滑り性と粘り性とを兼備する懸濁液になる
なお、本製造方法は、金属結合した合金微粒子の集まりからなる成形体を製造する際の原料になる混合液を、安価な複数種類のカルボン酸金属化合物と安価な有機化合物で構成する。また、合金が析出する温度は、合金の融点より著しく低く、大気雰囲気での短時間の熱処理で合金を析出する。従って、本製造方法に依れば、6段落に記載した第二の課題が解決される
【0013】
(削除)
【0014】
(削除)
【0015】
7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、圧縮成形法に依って金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法は、
7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填するキャビティを、前記懸濁液を構成する有機化合物の沸点に予め昇温し、前記懸濁液を圧縮する成形機を、前記懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物が熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、ないしは、前記懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、この後、前記キャビティに7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填し、さらに、前記成形機を前記キャビティに下ろし、該成形機によって、徐々に増大する加圧力を前記懸濁液に加え、前記キャビティと前記成形機との隙間に第一の成形体を形成する、この後、前記成形機による加圧を一旦中止し、前記キャビティと前記成形機とに吐き出た気体を、該キャビティと該成形機から抜け出させ、さらに、前記成形機によって、前記加圧力より大きい加圧力を前記第一の成形体に加える、
これによって、
7段落に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記キャビティに充填され、さらに、前記成形機による加圧力を受けると、該懸濁液が昇温し、該懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物が熱分解して粒状の金属微粒子の集まりが析出し、該金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりに、前記成形機によって増大した加圧力が加わり、該金属結合した金属微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記キャビティと前記成形機との隙間に形成され、さらに、該第一の成形体に、前記成形機によって、前記加圧力より大きい加圧力が加わり、前記第一の成形体を構成する金属結合した金属微粒子の集まりが前記キャビティに圧接され、該圧接された金属微粒子の集まりからなる第二の成形体が、前記キャビティと前記成形機との隙間に形成される、7段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、圧縮成形法に依って金属結合した金属の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である、
ないしは、
11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液が、成形機による加圧力を受けると、該懸濁液が昇温し、該懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解して粒状の合金微粒子の集まりが析出し、該合金微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した合金微粒子の集まりに、前記成形機によって増大した加圧力が加わり、該金属結合した合金微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記キャビティと前記成形機との隙間に形成され、さらに、該第一の成形体に、前記成形機によって、前記加圧力より大きい加圧力が加わり、前記第一の成形体を構成する金属結合した合金微粒子の集まりが前記キャビティに圧接され、該圧接された合金微粒子の集まりからなる第二の成形体が、前記キャビティと前記成形機との隙間に形成される、11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、圧縮成形法に依って金属結合した合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である。
【0016】
つまり、本成形方法に依れば、圧縮成形法(コンプレッション成形法ともいう)で合成樹脂からなる成形品を製造する方法に近い方法で、7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する。なお、カルボン酸金属化合物の熱分解反応は、カルボン酸金属化合物を構成するカルボン酸の沸点で、カルボン酸金属化合物が金属とカルボン酸とに分解し、さらに昇温されると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了すると、金属が析出して熱分解反応を終える。また、同一のカルボン酸から構成される複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解反応は、カルボン酸の沸点で、複数種類のカルボン酸金属化合物が、互いに異なる複数種類の金属とカルボン酸とに分解し、さらに昇温されると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了すると、複数種類のカルボン酸金属化合物のモル数の比率からなる合金が析出して熱分解反応を終える。
すなわち、キャビティを有機化合物の沸点に予め昇温する。また、成形機を、カルボン酸金属化合物が熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に、ないしは、複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に、予め昇温する。このようなキャビティに懸濁液を充填すると、懸濁液から多くの有機化合物が気化し、懸濁液は粘り性を増大する。なお、気化した有機化合物は、回収機をキャビティの近くに設置し、回収機で吸引して再利用する。この後、成形機をキャビティに下し、成形機によって徐々に増大する加圧力を懸濁液に加える。この際、懸濁液が昇温するとともに、徐々に増大する加圧力が作用する。このため、残存した有機化合物が最初に気化する。この後、カルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、ないしは、複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、カルボン酸が生成され、このカルボン酸が気化する。いっぽう、懸濁液に作用する圧縮応力が徐々に増大するため、有機化合物の気体と、カルボン酸からなる気体は、懸濁液に留まれず、懸濁液とキャビティとの隙間と、懸濁液と成形機との隙間とに吐き出る。この後、成形機の加圧を一旦中止し、気体をキャビティと成形機とから抜け出させ、抜け出た気体は回収機で吸引して再利用する。このため、熱処理された懸濁液の内部に空隙は形成されない。こうして、カルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、ないしは、複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じて、ないしは、懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じて、金属ないしは合金からなる40−60nmの大きさの粒状微粒子の集まりが析出し、粒状微粒子が不純物を持たない活性状態にあるため、互いに接触する部位で金属結合する。この金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる第一の成形体が、キャビティと成形機との隙間に形成される。この後、成形機によって、前記した加圧力より大きな加圧力を第一の成形体に加える。これによって、第一の成形体を構成する金属結合した金属ないしは合金の粒状微粒子の集まりが圧接され、高密度に圧接した粒状微粒子の集まりからなる第二の成形体が、キャビティと成形機との隙間に形成される。この第二の成形体は、不純物を持たない金属ないしは合金の微粒子が、互いに強固に圧接した微粒子の集まりで構成されるため、2m程度の高さからの落下衝撃によっては破壊されない機械的強度を持つ。この後、成形機を引き上げ、キャビティ内から成形体を取り出す。なお、カルボン酸金属化合物のモル数と同じモル数で金属微粒子が析出し、ないしは、複数種類のカルボン酸金属化合物のモル数と同じモル数で合金微粒子が析出するため、カルボン酸金属化合物の熱分解に伴って、ないしは、複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解に伴って体積の収縮は生じない。
なお、段落に記載したカルボン酸金属化合物を用いるため、ないしは、11段落に記載した同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合した複数種類のカルボン酸金属化合物を用いるため、大気雰囲気の290−430℃に近い温度での1分程度の熱処理で、粒状の金属ないしは合金の微粒子の集まりが析出する。この熱処理温度は、MIMに用いる金属ないしは合金の粉末の融点より著しく低く、金属ないしは合金の粉末の焼結温度より著しく低い。また、熱処理時間はMIMの製法に比べて極めて短い。さらに、熱処理雰囲気が大気である。このため、熱処理費用が著しく安価で済む。
従って、本成形方法によって、6段落に記載した第四から第七の課題が解決される。
【0017】
7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、トランスファ成形法に依って金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法は、
7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填するポットを、前記懸濁液を構成する有機化合物の沸点に予め昇温し、前記懸濁液が押し込まれるキャビティを、前記懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物が熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、ないしは、前記懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、この後、前記ポットに7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填し、さらに、前記ポットに設置されたプランジャーによって前記懸濁液を加圧し、該懸濁液を前記キャビティ内に押し込み、該キャビティ内に第一の成形体を形成し、この後、前記プランジャーに依る加圧を一旦中止し、前記キャビティに吐き出た気体を、該キャビティから抜け出させ、さらに、前記プランジャーによって、前記第一の成形体を形成する際に加えた加圧力より大きい加圧力を前記第一の成形体に加える、
これによって、
7段落に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記ポットに充填され、さらに、前記キャビティ内に押し込まれると、該懸濁液が昇温し、該懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物が熱分解して粒状の金属微粒子の集まりが析出し、該金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりに、前記プランジャーによる加圧力が加わり、該金属結合した金属微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記キャビティ内に形成され、さらに、該第一の成形体に、前記プランジャーによって、前記加圧力より大きい加圧力が加わり、前記第一の成形体を構成する金属結合した金属微粒子の集まりが前記キャビティに圧接され、該圧接された金属微粒子の集まりからなる第二の成形体が、前記キャビティ内に形成される、7段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、トランスファ成形法に依って金属結合した金属の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である、
ないしは、
11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記ポットに充填され、さらに、前記キャビティ内に押し込まれると、該懸濁液が昇温し、該懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解して粒状の合金微粒子の集まりが析出し、該合金微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した合金微粒子の集まりに、前記プランジャーによる加圧力が加わり、該金属結合した合金微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記キャビティ内に形成され、さらに、該第一の成形体に、前記プランジャーによって、前記加圧力より大きい加圧力が加わり、前記第一の成形体を構成する金属結合した合金微粒子の集まりが前記キャビティに圧接され、該圧接された合金微粒子の集まりからなる第二の成形体が、前記キャビティ内に形成される、11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、トランスファ成形法に依って金属結合した合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である。
【0018】
つまり、本成形方法に依れば、トランスファ成形法で合成樹脂からなる成形品を製造する方法に近い方法で、7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する。なお、金属を析出するカルボン酸金属化合物の熱分解反応は、ないしは、同一のカルボン酸から構成される複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解反応は、16段落で記載したので省略する。
すなわち、ポットを有機合物の沸点に予め昇温する。また、キャビティをカルボン酸金属化合物が熱分解する温度より10℃以上高い温度に、ないしは、複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解する温度より10℃以上高い温度に、予め昇温する。このようなポットに懸濁液を充填すると、懸濁液から多くの有機化合物が気化し、懸濁液は粘り性を増大する。なお、気化した有機化合物は、回収機で吸引して再利用する。次に、ポットに充填された懸濁液をプランジャーで加圧し、スプール、ランチ、ゲートを通過させた後に、キャビティ内に押し込む。この際、押し込まれた懸濁液が昇温するとともに、プランジャーによる加圧力が懸濁液に作用する。このため、懸濁液に残留した有機化合物が気化するが、有機化合物の気体は、加圧力で懸濁液に留まれず、懸濁液とキャビティとの隙間と、懸濁液とプランジャーとの隙間とに吐き出される。この後、プランジャーの加圧を一旦中止して、気体をキャビティから抜け出させ、回収機で吸引して再利用する。この後、プランジャーによって、スプール、ランチ、ゲートを介して、キャビティ内に押し込まれた懸濁液に徐々に増大する加圧力を加え、第一の成形体をキャビティ内に作成する。この際、懸濁液のカルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、ないしは、懸濁液の複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、カルボン酸が生成され、カルボン酸が気化する。いっぽう、カルボン酸からなる気体は、徐々に増大する加圧力によって懸濁液に留まれず、懸濁液とキャビティとの隙間と、懸濁液とプランジャーとの隙間とに吐き出る。この後、プランジャーの加圧を一旦中止して、気体はキャビティから抜け出させ、回収機で吸引して再利用する。このため、熱処理された懸濁液の内部に空隙は形成されない。こうして、カルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、ないしは、複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じて、ないしは、懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じて、金属ないしは合金の40−60nmの大きさからなる粒状微粒子の集まりが析出する。この粒状微粒子は、不純物を持たない活性状態にあるため、粒状微粒子が互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる第一の成形体が、キャビティ内に形成される。この後、プランジャーによって、第一の成形体を形成する際に加えた加圧力より大きな加圧力を第一の成形体に加える。これによって、第一の成形体を構成する金属結合した金属ないしは合金の粒状微粒子の集まりが互いに圧接され、高密度に圧接した粒状微粒子の集まりからなる第二の成形体が、キャビティ内に形成される。この第二の成形体は、不純物を持たない金属ないしは合金の微粒子が、互いに強固に圧接した微粒子の集まりで構成されるため、2m程度の高さからの落下衝撃によって破壊されない機械的強度を持つ。この後、プランジャーを引き上げ、キャビティを開いて成形体を取り出し、成形体から不要となるスプール、ランチ、ゲートを切断し、成形品を得る。なお、カルボン酸金属化合物のモル数と同じモル数で金属微粒子が析出するため、ないしは、複数種類のカルボン酸金属化合物のモル数と同じモル数で合金微粒子が析出するため、カルボン酸金属化合物の熱分解に伴って、ないしは、複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解に伴って体積の収縮は生じない。
なお、段落に記載したカルボン酸金属化合物を用いるため、ないしは、11段落に記載した同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合した複数種類のカルボン酸金属化合物を用いるため、大気雰囲気の290−430℃に近い温度における1分程度の短い熱処理で粒状の金属ないしは合金の微粒子の集まりが析出する。この熱処理温度は、MIMに用いる金属ないしは合金の粉末の融点より著しく低く、MIMに依る金属ないしは合金の粉末の焼結温度より著しく低い。また、MIMの製法に比べて熱処理時間は極めて短い。さらに、熱処理雰囲気が大気である。このため、熱処理費用が著しく安価で済む。
従って、本成形方法によって、6段落に記載した第四から第七の課題が解決される。
【0019】
7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、射出成形法に依って金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法は、
7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填するシリンダーを、前記懸濁液を構成する有機化合物の沸点に予め昇温し、前記懸濁液が射出される金型を、前記懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物が熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、ないしは、前記懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、この後、前記シリンダーに7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填し、さらに、前記シリンダー内に設置されたスクリューによって、徐々に増大する加圧力を前記懸濁液に加え、該懸濁液を前記金型内に射出する、この後、前記スクリューに依る加圧を一旦中止し、前記金型に吐き出た気体を、該金型から前記シリンダーに移動させ、該シリンダーから抜け出させる、さらに、前記スクリューによって、徐々に増大する加圧力を前記射出された懸濁液に加え、第一の成形体を前記金型内に形成する、この後、前記スクリューに依る加圧を一旦中止し、前記金型に吐き出た気体を、該金型から前記シリンダーに移動させ、該シリンダーから抜け出させる、さらに、前記スクリューによって、前記第一の成形体を形成する際に加えた加圧力より大きい加圧力を前記第一の成形体に加える、
これによって、
7段落に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記シリンダーに充填され、さらに、前記金型内に射出されると、該懸濁液が昇温し、該懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物が熱分解して粒状の金属微粒子の集まりが析出し、該金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりに、前記スクリューによる加圧力が加わり、該金属結合した金属微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記金型内に形成され、さらに、該第一の成形体に、前記スクリューによって、前記加圧力より大きい加圧力が加わり、前記第一の成形体を構成する金属結合した金属微粒子の集まりが前記金型に圧接され、該圧接された金属微粒子の集まりからなる第二の成形体が前記金型内に形成される、7段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、射出成形法に依って金属結合した金属の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である、
ないしは、
11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記シリンダーに充填され、さらに、前記金型内に射出されると、該懸濁液が昇温し、該懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解して粒状の合金微粒子の集まりが析出し、該合金微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した合金微粒子の集まりに、前記スクリューによる加圧力が加わり、該金属結合した合金微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記金型内に形成され、さらに、該第一の成形体に、前記スクリューによって、前記加圧力より大きい加圧力が加わり、前記第一の成形体を構成する金属結合した合金微粒子の集まりが前記金型に圧接され、該圧接された合金微粒子の集まりからなる第二の成形体が前記金型内に形成される、11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、射出成形法に依って金属結合した合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である。
【0020】
つまり、本成形方法に依れば、射出成形法で合成樹脂からなる成形品を製造する方法に近い方法で、7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、金属結合した金属ないしは金属結合した合金の微粒子の集まりからなる成形体を金型内に製造する。なお、金属を析出するカルボン酸金属化合物の熱分解反応は、ないしは、同一のカルボン酸から構成される複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解反応は、16段落で記載したので省略する。
すなわち、シリンダーを有機合物の沸点に予め昇温する。また、金型をカルボン酸金属化合物が熱分解する温度より10℃以上高い温度に、ないしは、複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解する温度より10℃以上高い温度に、予め昇温する。このようなシリンダーに懸濁液を充填すると、懸濁液から多くの有機化合物が気化し、懸濁液は粘り性を増大する。なお、気化した有機化合物は、回収機で吸引して再利用する。次に、シリンダー内に設置されたスクリューの移動によって、徐々に増大する加圧力を懸濁液に加え、懸濁液をシリンダー内でスムースに移動させた後に、懸濁液を金型内に射出する。この際、金型に射出された懸濁液が昇温するとともに、一定の加圧力が懸濁液に作用する。このため、懸濁液から残留した有機化合物が優先して気化し、有機化合物の気体は、加圧力で懸濁液に留まれず、懸濁液と金型との隙間に吐き出される。この後、スクリューに依る加圧を一旦中止し、有機化合物の気体を、金型からシリンダーに移動させ、シリンダーから吐き出させ、吐き出た気体を回収機で吸引して再利用する。この後、スクリューを移動させ、徐々に増大する加圧力を金型内の懸濁液に加える。この際、懸濁液がさらに昇温されて、カルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、ないしは、複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、カルボン酸が生成され、このカルボン酸が気化する。このカルボン酸からなる気体は、徐々に増大する加圧力によって、懸濁液に留まれず、懸濁液と金型との隙間に吐き出される。この後、スクリューに依る加圧を一旦中止し、気体を金型からシリンダーに移動させ、シリンダーから吐き出させ、吐き出た気体を回収機で吸引して再利用する。このため、熱処理された懸濁液の内部に空隙は形成されない。こうして、カルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、ないしは、複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じて、ないしは、懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じて、金属ないしは合金の40−60nmの大きさからなる粒状微粒子の集まりが析出する。この粒状微粒子は、不純物を持たない活性状態にあるため、互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属微粒子ないしは合金微粒子の集まりからなる第一の成形体が、金型内に形成される。さらに、スクリューの移動によって、第一の成形体を形成する際に加えた加圧力より大きな加圧力を第一の成形体に加える。これによって、第一の成形体を構成する金属結合した金属ないしは合金の粒状微粒子の集まりが金型に圧接され、高密度に圧接した粒状微粒子の集まりからなる第二の成形体が、金型内に形成される。この第二の成形体は、不純物を持たない金属ないしは合金の微粒子が、互いに強固に圧接した微粒子の集まりで構成されるため、2m程度の高さからの落下衝撃によって破壊されない機械的強度を持つ。この後、金型を開き、金型から成形体を取り出す。さらに、成形体から不要となるランナーを切断し成形品を得る。なお、カルボン酸金属化合物のモル数と同じモル数で金属微粒子が析出するため、ないしは、複数種類のカルボン酸金属化合物のモル数と同じモル数で合金微粒子が析出するため、カルボン酸金属化合物の熱分解に伴って、ないしは、複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解に伴って体積の収縮は生じない。
なお、段落に記載したカルボン酸金属化合物を用いるため、ないしは、11段落に記載した同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合した複数種類のカルボン酸金属化合物を用いるため、大気雰囲気の290−430℃に近い温度での1分程度の熱処理で粒状の金属ないしは合金の微粒子の集まりが析出する。この熱処理温度は、MIMに用いる金属ないしは合金の粉末の融点より著しく低く、また、金属ないしは合金の粉末の焼結温度より著しく低い。また、熱処理時間はMIMの製法に比べて極めて短い。さらに、熱処理雰囲気が大気である。このため、熱処理費用が著しく安価で済む。
従って、本成形方法によって、6段落に記載した第四から第七の課題が解決される。
【0021】
7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、押出成形法に依って金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法は、
7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填するシリンダーを、前記懸濁液を構成する有機化合物の沸点に予め昇温し、前記シリンダーの前方に設置されるダイを、前記懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物が熱分解する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、ないしは、前記懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、かつ、該ダイの内部に形成される溝の長さは、前記懸濁液が該溝を通過する際に、該懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物が熱分解される長さに予め設定し、ないしは、該懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解される長さに予め設定し、この後、前記シリンダーに7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填し、さらに、該シリンダー内に設置されたスクリューの移動によって前記懸濁液を加圧し、該懸濁液が前記ダイの溝を通過する際に、該懸濁液が継続して加圧されるとともに昇温され、該懸濁液は、前記溝の出口から該溝の形状からなる第一の成形体として押し出され、さらに、該第一の成形体を一対の金型で挟んだ後に一方の金型で加圧する、
これによって、
7段落に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記シリンダーに充填され、さらに、前記スクリューの移動によって、前記ダイの溝を通過する際に、該懸濁液が継続して加圧されるとともに昇温し、該懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物が熱分解し、粒状の金属微粒子の集まりが析出し、該金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりに継続して加圧力が加わり、該金属結合した金属微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記溝の出口から該溝の形状からなる成形体として押し出され、さらに、該第一の成形体が一対の金型で挟まれた後に、一方の金型で加圧され、前記第一の成形体を構成する金属結合した金属微粒子の集まりが前記金型に圧接され、該圧接された金属微粒子の集まりからなる第二の成形体が前記金型内に形成される、7段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、押出成形法に依って金属結合した金属の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である、
ないしは、
11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記シリンダーに充填され、さらに、前記スクリューの移動によって、前記ダイの溝を通過する際に、該懸濁液が継続して加圧されるとともに昇温し、該懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解して合金微粒子の集まりが析出し、該合金微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した合金微粒子の集まりに継続して加圧力が加わり、該金属結合した合金微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記溝の出口から該溝の形状からなる成形体として押し出され、さらに、該第一の成形体が一対の金型で挟まれた後に、一方の金型で加圧され、前記第一の成形体を構成する金属結合した合金微粒子の集まりが前記金型に圧接され、該圧接された合金微粒子の集まりからなる第二の成形体が前記金型内に形成される、11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、押出成形法に依って金属結合した合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である。
【0022】
つまり、本成形方法に依れば、押出成形法で合成樹脂からなる成形品を製造する方法に近い方法で、7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体が、ダイ(金型)から押し出される。なお、金属を析出するカルボン酸金属化合物の熱分解反応は、ないしは、同一のカルボン酸から構成される複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解反応は、16段落で記載したので省略する。
すなわち、シリンダーを有機化合物の沸点に予め昇温する。また、シリンダーの前方に設置されるダイは予め、カルボン酸金属化合物が熱分解する温度より10℃以上高い温度に、ないしは、複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解する温度より10℃以上高い温度に昇温し、かつ、ダイの内部に形成された溝を懸濁液が通過する際に、カルボン酸金属化合物が熱分解し、ないしは、複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解するのに必要な長さをダイが持つ。こうしたシリンダーに7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填すると、懸濁液から多くの有機化合物が気化し、懸濁液は粘り性を増大する。なお、気化した有機化合物は、回収機をシリンダーの近くに設置して、回収機で吸引して再利用する。この後、シリンダー内に設置されたスクリューの移動で懸濁液を加圧し、シリンダーの前方に設置されたダイの内部に形成された溝を、加圧された懸濁液が通過し、懸濁液が熱処理される。この際、懸濁液が昇温されるとともに、所定の長さを持つ溝を懸濁液が通過するために必要な加圧力が、懸濁液に継続して加わる。この結果、懸濁液に残存した有機化合物が最初に気化し、気化した有機化合物は加圧力で懸濁液に留まれず、ダイの出口から放出される。次に、懸濁液のカルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、ないしは、懸濁液の複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、カルボン酸が生成され、カルボン酸が気化する。このカルボン酸からなる気体は加圧力で懸濁液に留まれず、ダイの出口から放出される。このため、熱処理された懸濁液の内部に空隙は形成されない。なお、ダイの出口から放出される気体は、回収機で吸引して再利用する。こうして、懸濁液が溝を通過する際に、カルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、ないしは、複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じて、ないしは、懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じて、金属ないしは合金の40−60nmの大きさからなる粒状微粒子の集まりが析出する。この粒状微粒子は、不純物を持たない活性状態にあるため、互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属ないしは合金の粒状微粒子の集まりからなる第一の成形体が、ダイの溝の形状からなるシートやチューブやパイプなどの成形体として、溝の出口から押し出される。さらに、押し出された第一の成形体を一対の金型で挟み、一方の金型によって成形体を加圧する。これによって、第一の成形体を構成する金属結合した金属ないしは合金の粒状微粒子の集まりが金型に圧接され、高密度に圧接した粒状微粒子の集まりからなる第二の成形体が形成される。この第二の成形体は、不純物を持たない金属ないしは合金の微粒子が、互いに強固に圧接した微粒子の集まりで構成されるため、2m程度の高さからの落下衝撃によって破壊されない機械的強度を持つ。この後、成形体を引き取り機で引き取り、あるいは、ローラーで巻き取る。なお、カルボン酸金属化合物のモル数と同じモル数で金属微粒子が析出するため、ないしは、複数種類のカルボン酸金属化合物のモル数と同じモル数で合金微粒子が析出するため、熱分解に伴って体積の収縮は生じない。
なお、段落に記載したカルボン酸金属化合物を用いるため、ないしは、11段落に記載した同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合した複数種類のカルボン酸金属化合物を用いるため、大気雰囲気の290−430℃に近い温度での1分程度の熱処理で粒状の金属ないしは合金の微粒子の集まりが析出する。この熱処理温度は、MIMに用いる金属ないしは合金の粉末の融点より著しく低く、金属ないしは合金の粉末の焼結温度より著しく低い。また、MIMの製法に比べて熱処理時間は極めて短い。さらに、熱処理雰囲気が大気である。このため、熱処理費用が著しく安価で済む。
従って、本成形方法によって、6段落に記載した第四から第七の課題が解決される。
【0023】
7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、エアブロー成形法に依って金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる中空の成形体を成形する方法は、
7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填するシリンダーを、前記懸濁液を構成する有機化合物の沸点に予め昇温し、チューブ状に押し出された前記懸濁液を挟む一対の金型を、前記懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物が熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、ないしは、前記懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、この後、前記シリンダーに7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填し、さらに、前記シリンダー内に設置されたスクリューの移動によって前記懸濁液を加圧し、該加圧された懸濁液が前記シリンダーの前方に設置されたダイの内部に形成された溝を通過し、該溝の出口からチューブ状の懸濁液として押し出され、該押し出されたチューブ状の懸濁液を一対の金型で挟み、さらに、該一対の金型を閉じた後に、エアブロー装置によって前記チューブ状の懸濁液の内部に、徐々に空気圧が増大する圧縮空気を供給し、該チューブ状の懸濁液を膨らませ、第一の中空の成形体を前記一対の金型内に形成する、この後、前記圧縮空気の供給を一旦停止し、前記第一の中空の成形体から気体を排出させ、さらに、前記エアブロー装置によって、前記第一の中空の成形体の内部に、前記圧縮空気より大きい空気圧からなる圧縮空気を送り込んで該第一の中空の成形体の内部を加圧する、
これによって、
7段落に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記シリンダーに充填され、さらに、前記スクリューの移動によって加圧され、該加圧された懸濁液が前記ダイの内部に形成された溝を通過し、該溝の出口からチューブ状の懸濁液として押し出され、この後、一対の金型で挟まれ、該チューブ状の懸濁液が昇温し、該チューブ状の懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物が熱分解して金属微粒子の集まりが析出し、該金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりからなるチューブ状の成形体が形成され、さらに、該チューブ状の成形体の内側が、前記エアブロー装置によって供給された圧縮空気によって膨らみ、該金属結合した金属微粒子の集まりからなる第一の中空の成形体が前記金型内に形成され、さらに、該第一の中空の成形体の内部が、前記エアブロー装置によって送り込まれた前記圧縮空気より大きい空気圧からなる圧縮空気で加圧され、前記第一の中空の成形体を構成する金属結合した金属微粒子の集まりが前記金型に圧接され、該圧接された金属微粒子の集まりからなる第二の中空の成形体が、前記金型内に形成される、7段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、エアブロー成形法に依って金属結合した金属の微粒子の集まりからなる中空の成形体を成形する方法である、
ないしは、
11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記シリンダーに充填され、さらに、前記スクリューの移動によって加圧され、該加圧された懸濁液が前記ダイの内部に形成された溝を通過し、該溝の出口からチューブ状の懸濁液として押し出され、この後、一対の金型で挟まれ、該チューブ状の懸濁液が昇温し、該チューブ状の懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解して合金微粒子の集まりが析出し、該合金微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した合金微粒子の集まりからなるチューブ状の成形体が形成され、さらに、該チューブ状の成形体の内側が、前記エアブロー装置によって供給された圧縮空気によって膨らみ、該金属結合した合金微粒子の集まりからなる第一の中空の成形体が前記金型内に形成され、さらに、該第一の中空の成形体の内部が、前記エアブロー装置によって送り込まれた前記圧縮空気より大きい空気圧からなる圧縮空気で加圧され、前記第一の中空の成形体を構成する金属結合した合金微粒子の集まりが前記金型に圧接され、該圧接された合金微粒子の集まりからなる第二の中空の成形体が、前記金型内に形成される、11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、エアブロー成形法に依って金属結合した合金の微粒子の集まりからなる中空の成形体を成形する方法である。
【0024】
つまり、本成形方法に依れば、エアブロー成形法で合成樹脂の中空の成形品を製造する方法に近い方法で、7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる中空の成形体を製造する。なお、金属を析出するカルボン酸金属化合物の熱分解反応は、ないしは、同一のカルボン酸から構成される複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解反応は、16段落で記載したので省略する。
すなわち、シリンダーを有機合物の沸点に予め昇温する。また、一対の金型を、カルボン酸金属化合物が熱分解する温度より10℃以上高い温度に、ないしは、複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解する温度より10℃以上高い温度に、予め昇温する。このようなシリンダーに懸濁液を充填すると、懸濁液から多くの有機化合物が気化し、懸濁液は粘り性を増大する。なお、気化した有機化合物は、回収機で吸引して再利用する。この後、シリンダー内に設置されたスクリューの移動で懸濁液を加圧し、シリンダーの前方に設置されたダイの内部に形成された溝を通過させてチューブ状に押し出す。次に、チューブ状に押し出された懸濁液を一対の金型で挟む。この金型を閉じた後に、金型で挟まれたチューブの内側に、徐々に空気圧が増大する圧縮空気を供給してチューブを膨らませ、チューブを金型に密着させて第一の成形体を形成する。この際、チューブが昇温するにつれ、チューブを膨らませる応力が増大する。この結果、チューブに残存した有機化合物が最初に気化し、気化した有機化合物は増大する応力でチューブに留まれず、チューブから吐き出る。次に、チューブのカルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、ないしは、チューブの複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、カルボン酸が生成され、生成されたカルボン酸が気化する。このカルボン酸からなる気体は、増大する応力でチューブに留まれず、チューブから吐き出る。この後、圧縮空気の供給を一旦中止し、チューブ内の気体を回収機で吸引して再利用する。このため、熱処理された懸濁液の内部に空隙は形成されない。こうして、チューブのカルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、ないしは、チューブの複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じて、ないしは、懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じて、金属ないしは合金の40−60nmの大きさからなる粒状微粒子の集まりが析出する。この粒状微粒子は、不純物を持たない活性状態にあるため、互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属ないしは合金の粒状微粒子の集まりからなる第一の成形体が、金型内に形成される。この後、第一の成形体の内部に前記の空気圧より大きい空気圧からなる圧縮空気を送り込んで第一の成形体を加圧する。これによって、第一の成形体を構成する金属結合した金属ないしは合金の粒状微粒子の集まりが圧接され、高密度に圧接した粒状微粒子の集まりからなる第二の成形体が形成される。この第二の成形体は、不純物を持たない金属ないしは合金の微粒子が、互いに強固に圧接した微粒子の集まりで構成されるため、2m程度の高さからの落下衝撃によって破壊されない機械的強度を持つ。この後、金型を開き、金型から金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を取り出す。なお、カルボン酸金属化合物のモル数と同じモル数で金属微粒子が析出するため、ないしは、複数種類のカルボン酸金属化合物のモル数と同じモル数で合金微粒子が析出するため、熱分解に伴って体積の収縮は生じない。
なお、段落に記載したカルボン酸金属化合物を用いるため、ないしは、11段落に記載した同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合した複数種類のカルボン酸金属化合物を用いるため、大気雰囲気の290−430℃に近い温度での1分程度の熱処理で粒状の金属ないしは合金の微粒子の集まりが析出する。この金属ないしは合金の微粒子が析出する温度は、MIMに用いる金属ないしは合金の粉末の融点より著しく低く、金属ないしは合金の粉末の焼結温度より著しく低い。また、熱処理時間はMIMの製法に比べて極めて短い。さらに、熱処理雰囲気が大気である。このため、熱処理費用が著しく安価で済む。
従って、本成形方法によって、6段落に記載した第四から第七の課題が解決される。
【0025】
7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用い、サーモフォーミング成形法に依って金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法は、
7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を充填するシリンダーを、前記懸濁液を構成する有機化合物の沸点に予め昇温し、シート状に押し出された前記懸濁液を圧縮する上方の金型と、真空ポンプの吸引ホースが繋がる下方の金型とを、前記懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物が熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、ないしは、前記懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解を完了する温度より10℃以上高い温度に予め昇温し、この後、7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を前記シリンダーに充填し、さらに、前記シリンダー内に設置されたスクリューによって前記懸濁液を加圧し、該懸濁液を前記シリンダーの前方に設置されたダイの内部に形成された溝を通過させ、該溝の出口からシート状の懸濁液として押し出し、該シート状の懸濁液を、前記上方の金型と前記下方の金型との間に挟む、この後、前記真空ポンプを稼働させるとともに、前記上方の金型を前記下方の金型に下ろし、該上方の金型によって、徐々に増大する加圧力を前記懸濁液に加え、該懸濁液を前記下方の金型に密着させるとともに、前記上方の金型で加圧して第一の成形体を前記金型内に形成する、この後、前記上方の金型による加圧を一旦中止し、前記第一の成形体から気体を排出させ、さらに、前記上方の金型によって、前記加圧力より大きい加圧力を前記第一の成形体に加える、
これによって、
7段落に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記シリンダーに充填され、さらに、前記スクリューの移動によって加圧され、該加圧された懸濁液が前記ダイの内部に形成された溝を通過し、該溝の出口からシート状の懸濁液として押し出され、この後、一対の金型で挟まれ、さらに、上方の金型で加圧されると、該シート状の懸濁液が昇温し、該シート状の懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物が熱分解して金属微粒子の集まりが析出し、該金属微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した金属微粒子の集まりが、前記上方の金型で加圧され、該金属結合した金属微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記上方の金型と前記下方の金型との隙間に形成され、さらに、該第一の成形体が、前記上方の金型で前記加圧力より大きい加圧力で加圧され、前記第一の成形体を構成する金属結合した金属微粒子の集まりが前記下方の金型に圧接され、該圧接された金属微粒子の集まりからなる第二の成形体が、前記上方の金型と前記下方の金型との隙間形成される、7段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用い、サーモフォーミング成形法に依って金属結合した金属の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である、
ないしは、
11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液が、前記シリンダーに充填され、さらに、前記スクリューの移動によって加圧され、該加圧された懸濁液が前記ダイの内部に形成された溝を通過し、該溝の出口からシート状の懸濁液として押し出され、この後、一対の金型で挟まれ、さらに、上方の金型で加圧されると、該シート状の懸濁液が昇温し、該シート状の懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解して合金微粒子の集まりが析出し、該合金微粒子同士が互いに接触する部位で金属結合し、該金属結合した合金微粒子の集まりが、前記上方の金型で加圧され、該金属結合した合金微粒子の集まりからなる第一の成形体が、前記上方の金型と前記下方の金型との隙間に形成され、さらに、該第一の成形体が、前記上方の金型で前記加圧力より大きい加圧力で加圧され、前記第一の成形体を構成する金属結合した合金微粒子の集まりが前記下方の金型に圧接され、該圧接された合金微粒子の集まりからなる第二の成形体が、前記上方の金型と前記下方の金型との隙間に形成される、11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用い、サーモフォーミング成形法に依って金属結合した合金の微粒子の集まりからなる成形体を成形する方法である。
【0026】
つまり、本成形方法に依れば、サーモフォーミング成形法で合成樹脂からなる成形品を製造する方法に近い方法で、7段落ないしは11段落に記載した製造方法で製造した懸濁液を用いて、金属結合した金属ないしは合金の微粒子の集まりからなる成形体を製造する。なお、金属を析出するカルボン酸金属化合物の熱分解反応は、ないしは、同一のカルボン酸から構成される複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解反応は、16段落で記載したので省略する。
なお、本成形方法は、15段落で記載した圧縮成形法に近い製法であるが、真空ポンプで懸濁液を金型に密着させるため、圧縮成形法に依る成形体より肉厚が薄い成形体を製造するのに適している。
すなわち、シリンダーを有機合物の沸点に予め昇温する。また、上方の金型と下方の金型との双方を、カルボン酸金属化合物が熱分解する温度より10℃以上高い温度に、ないしは、複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に熱分解する温度より10℃以上高い温度に、予め昇温する。このようなシリンダーに懸濁液を充填すると、懸濁液から多くの有機化合物が気化し、懸濁液は粘り性を増大する。なお、気化した有機化合物は、回収機をシリンダーの近くに設置し、回収機で吸引して再利用する。この後、シリンダー内に設置されたスクリューの移動で懸濁液を加圧し、シリンダーの前方に設置されたダイの内部に形成された溝を通過させ、溝の出口からシート状に押し出す。次に、シート状に押し出された懸濁液を一対の金型に移動させ、一対の金型で挟む。この後、真空ポンプを稼働させ、懸濁液を下方の金型に密着させるとともに、上方の金型を下方の金型に下ろし、上方の金型によって徐々に増大する加圧力を懸濁液に加える。この際、懸濁液に残存した有機化合物が最初に気化し、気化した有機化合物は増大する加圧力によって懸濁液に留まれず、金型内に吐き出る。次に、懸濁液のカルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、ないしは、懸濁液の複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解が始まり、カルボン酸が生成され、生成されたカルボン酸が気化する。このカルボン酸からなる気体は、増大する加圧力によって懸濁液に留まれず、金型内に吐き出る。この後、上方の金型の圧縮を中止し、金型内にある気体を回収機で吸引して回収する。このため、熱処理された懸濁液の内部に空隙が形成されない。こうして、懸濁液のカルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、ないしは、懸濁液の複数種類のカルボン酸金属化合物の熱分解が完了し、懸濁液を構成するカルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じて、ないしは、懸濁液を構成する複数種類のカルボン酸金属化合物の微細結晶の大きさに応じて、金属ないしは合金の40−60nmの大きさからなる粒状微粒子の集まりが析出する。この粒状微粒子は、不純物を持たない活性状態にあるため、粒状微粒子が互いに接触する部位で金属結合し、金属結合した金属ないしは合金の粒状微粒子の集まりからなる第一の成形体が、一対の金型の隙間に形成される。この後、上方の金型で、第一の成形体を形成する際に加えた加圧力より大きな加圧力を、第一の成形体に加える。これによって、金属結合した金属ないしは合金の粒状微粒子の集まりが互いに圧接され、高密度に圧接した粒状微粒子の集まりからなる第二の成形体が、一対の金型の隙間に形成される。この第二の成形体は、不純物を持たない金属ないしは合金の微粒子が、互いに強固に圧接した微粒子の集まりで構成されるため、2m程度の高さからの落下衝撃によって破壊されない機械的強度を持つ。この後、金型を開き、金型から成形体を取り出す。なお、カルボン酸金属化合物のモル数と同じモル数で金属微粒子が析出するため、ないしは、複数種類のカルボン酸金属化合物のモル数と同じモル数で合金微粒子が析出するため、熱分解に伴って体積の収縮は生じない。
なお、段落に記載したカルボン酸金属化合物を用いるため、ないしは、11段落に記載した同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合した複数種類のカルボン酸金属化合物を用いるため、大気雰囲気の290−430℃に近い温度での1分程度の熱処理で粒状の金属ないしは合金の微粒子の集まりが析出する。この金属ないしは合金の微粒子が析出する温度は、MIMに用いる金属ないしは合金の粉末の融点より著しく低く、金属ないしは合金の粉末の焼結温度より著しく低い。また、熱処理時間はMIMの製法に比べて極めて短い。さらに、熱処理雰囲気が大気である。こため、熱処理費用が著しく安価で済む。
従って、本成形方法によって、6段落に記載した第四から第七の課題が解決される。
【0027】
(削除)
【0028】
(削除)
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】圧接されたアルミニウム微粒子の集まりで、成形品が形成されていることを模式的に説明する図である。
図2】ヒートシンクの形状を説明する図である。
図3】EIコアの形状を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
実施形態1
本実施形態は、段落と12段落とに記載したカルボン酸金属化合物の実施形態である。本発明における熱分解で金属を析出する金属化合物は、第一にアルコールに分散し、第二に熱分解で金属を析出する2つの性質を兼備する。ここでは金属をアルミニウムとし、2つの性質を兼備するアルミニウム化合物として、カルボン酸アルミニウム化合物が適切であることを導く過程を説明する。
塩化アルミニウムは水に溶け、水酸化アルミニウムと塩酸に加水分解する。また、水酸化アルミニウムはアルコールに分散しない。さらに、硫酸アルミニウムはアルコールに溶解し、アルミニウムイオンが溶出してしまい、多くのアルミニウムイオンがアルミニウムの析出に参加できなくなる。また、酸化アルミニウムは、アルコールに分散しない。このため、これらの無機アルミニウム化合物は、アルミニウム化合物として適切でない。
アルミニウム化合物はアルミニウムを析出する。アルミニウム化合物からアルミニウムを析出する最も簡単な化学反応に熱分解反応がある。つまり、アルミニウム化合物を大気雰囲気で昇温するだけでアルミニウムが析出する。さらに、アルミニウム化合物の合成が容易でれば、アルミニウム化合物が安価に製造できる。こうした性質を兼備するアルミニウム化合物にカルボン酸アルミニウム化合物がある。
つまり、カルボン酸アルミニウム化合物を構成するイオンの中で、最も大きいイオンはアルミニウムイオンである。従って、カルボン酸アルミニウム化合物におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、アルミニウムイオンと共有結合すれば、アルミニウムイオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの距離が、イオン同士の距離の中で最も長い。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸アルミニウム化合物を大気雰囲気で昇温させると、カルボン酸の沸点において、カルボン酸とアルミニウムとに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸で構成されれば、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後にアルミニウムが析出する。従って、飽和脂肪酸の沸点が低いほど、カルボン酸アルミニウム化合物の熱分解が始まる温度は低く、飽和脂肪酸の分子量が小さいほど飽和脂肪酸の気化が進み、アルミニウムが析出する温度は低い。つまり、カルボン酸金属化合物の熱分解反応は、構成する金属の金属元素によらず、構成するカルボン酸の沸点で熱分解が始まる。このため、熱分解が完了して金属が析出する温度は、従来の金属の融点を超える温度で金属の原料を溶解して金属を精製する溶製材の製造温度に比べると著しく低くなる。
一方、カルボン酸が不飽和脂肪酸であれば、炭素原子が水素原子に対して過剰になるため、不飽和脂肪酸からなるカルボン酸アルミニウム化合物が熱分解すると、アルミニウムの酸化物が析出する。さらに、カルボン酸アルミニウム化合物の中で、カルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子となってアルミニウムイオンに近づいて配位結合するカルボン酸アルミニウム化合物では、アルミニウムイオンと酸素イオンとの距離が短くなり、反対に、酸素イオンがアルミニウムイオンと反対側で結合するイオンとの距離が最も長くなる。このようなカルボン酸アルミニウム化合物の熱分解反応では、酸素イオンがアルミニウムイオンと反対側で結合するイオンとの結合部が最初に分断され、この結果、酸化アルミニウムが析出する。このようなカルボン酸アルミニウム化合物は、酸化アルミニウムを析出する原料になる。
さらに、カルボン酸アルミニウム化合物は合成が容易で、安価な有機アルミニウム化合物である。つまり、カルボン酸を水酸化ナトリウムなどの強アルカリ溶液中で反応させると、カルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。このカルボン酸アルカリ金属化合物を、硫酸アルミニウムなどの無機アルミニウム化合物と反応させると、カルボン酸アルミニウム化合物が生成される。以下に、カルボン酸アルミニウム化合物の実施形態を説明する。
【0031】
飽和脂肪酸からなるカルボン酸アルミニウム化合物の組成式は、Al(RCOO)で表わせられる。Rはアルカンで、この組成式はCである(ここでmとnとは整数)。カルボン酸アルミニウム化合物を構成する物質の中で、組成式の中央に位置するアルミニウムイオンAl3+が最も大きい。従って、アルミニウムイオンAl3+とカルボキシル基を構成する酸素イオンOとが共有結合するカルボン酸アルミニウム化合物は、アルミニウムイオンAl3+と酸素イオンOとの距離が最大になる。ちなみに、アルミニウムイオン原子の共有結合半径は121±4pmであり、酸素イオン原子の共有結合半径は66±2pmであり、炭素原子の共有結合半径は73pmである。このため、カルボン酸アルミニウム化合物が昇温すると、カルボン酸の沸点を超えると、結合距離が最も長いアルミニウムイオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとの結合部が最初に分断され、アルミニウムとカルボン酸とに分離する。さらに昇温すると、カルボン酸が飽和脂肪酸であれば、カルボン酸が気化熱を奪いながら気化し、カルボン酸の気化が完了した後にアルミニウムが析出する。こうしたカルボン酸アルミニウム化合物として、オクチル酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウムなどがある。
さらに、飽和脂肪酸の沸点が低いほど低い温度で熱分解が始まり、飽和脂肪酸の分子量が小さいほど飽和脂肪酸の気化が進み、アルミニウムが析出する温度は低い。飽和脂肪酸を構成する炭化水素が長鎖構造である場合は、長鎖が長いほど、つまり、飽和脂肪酸の分子量が大きいほど、飽和脂肪酸の沸点は高い。ちなみに、分子量が200.3であるラウリン酸の大気圧での沸点は296℃で、分子量が284.5であるステアリン酸の大気圧での沸点は361℃である。従って、長鎖構造の飽和脂肪酸の分子量が相対的に小さい飽和脂肪酸からなるカルボン酸アルミニウム化合物は、熱分解温度が相対的に低い。なお、ラウリン酸アルミニウムは大気雰囲気の360℃で熱分解が完了し、ステアリン酸アルミニウムは大気雰囲気の430℃で熱分解が完了する。
また、飽和脂肪酸が分岐鎖構造の飽和脂肪酸である場合は、直鎖構造の飽和脂肪酸より鎖の長さが短く、沸点がさらに低くなり、アルミニウムが析出する温度も低くなる。さらに、分岐鎖構造の飽和脂肪酸は極性を持ち、分岐鎖構造の飽和脂肪酸からなるカルボン酸アルミニウム化合物も極性を持ち、相対的に高い割合で極性物質であるアルコールに分散する。こうした分岐構造の飽和脂肪酸としてオクチル酸がある。オクチル酸は構造式がCH(CHCH(C)COOHで示され、CHでCH(CHとCとのアルカンに分岐され、CHにカルボキシル基COOHが結合する。オクチル酸の大気圧での沸点は228℃であり、ラウリン酸より沸点が68℃低い。このため、オクチル酸アルミニウムはカルボン酸アルミニウム化合物の中で最も低い温度で熱分解する。ちなみに、オクチル酸アルミニウムは、大気雰囲気において290℃で熱分解が完了してアルミニウムが析出し、メタノールやn−ブタノールなどに10重量%近くまで分散する。
以上に説明したように、オクチル酸金属化合物、ラウリン酸金属化合物、ステアリン酸金属化合物は金属微粒子の原料になる。また、これらのカルボン酸金属化合物は、様々な金属元素からなる金属化合物が存在し、金属微粒子を構成する金属元素は制約されない。
さらに、同一の飽和脂肪酸におけるカルボキシル基を構成する酸素イオンが、互いに異なる金属イオンに共有結合する複数種類のカルボン酸金属化合物を大気雰囲気で熱処理すると、飽和脂肪酸の沸点を超えると、複数種類のカルボン酸金属化合物が同時に飽和脂肪酸と互いに異なる複数種類の金属とに分解され、さらに、飽和脂肪酸の分子量に応じて飽和脂肪酸の気化が進み、気化が完了した後に互いに異なる複数種類の金属が同時に析出する。これら複数種類の金属はいずれも不純物を持たない活性状態にあるため、カルボン酸金属化合物のモル数に応じた金属の比率からなる合金が生成される。このため、複数種類のオクチル酸金属化合物、複数種類のラウリン酸金属化合物ないしは複数種類のステアリン酸金属化合物は、合金微粒子の原料になる。
【0032】
実施形態2
本実施形態は、第一にメタノールに溶解ないしは混和し、第二にメタノールの粘度より20倍以上粘度が高く、第三に沸点がメタノールより高く、カルボン酸金属化合物が熱分解を完了する温度より低い、3つの性質を兼備する有機化合物に関する。このような有機化合物に、芳香族カルボン酸エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類ないしはグリセリンに属する有機化合物がある。なお、カルボン酸金属化合物は290−430℃で熱分解を完了する。また、メタノールの粘度は20℃で0.59mPa秒である。さらに、グリセリンはメタノールに溶解し、沸点が290℃で、20℃の粘度が1499 mPa秒と大きな値を持つ。
【0033】
最初に芳香族カルボン酸エステル類の中で、次の芳香族カルボン酸エステルは前記した3つの性質を兼備する。フタル酸ジエチルは沸点が295℃で、粘度が20℃で13 mPa秒である。フタル酸ジブチルは沸点が340℃で、粘度が38℃で10mPa秒である。フタル酸ジ2−エチルヘキシルは沸点が386℃で、粘度が20℃で81mPa秒である。フタル酸ジイソノニルは沸点が403℃で、20℃の粘度が78mPa秒である。
従って、これらの芳香族カルボン酸エステルは、カルボン酸金属化合物のメタノール分散液と均一に混ざり合って、粘度が高い混合液を構成する。また、こうした芳香族カルボン酸エステルは、合成樹脂、ラッカー、接着剤、塗料、工業用インクなどの可塑剤として使用されている汎用的な工業用薬品である。
【0034】
次に、グリコール類の中で、次のグリコール類は前記した3つの性質を兼備する。
モノエチレングリコールは沸点が197℃で、粘度が20℃で21mPa秒である。ジエチレングリコールは沸点が244℃で、粘度が20℃で36mPa秒である。トリエチレングリコールは沸点が288℃で、粘度が20℃で48mPa秒である。テトラエチレングリコールは沸点が329℃で、粘度が20℃で55mPa秒である。
モノプロピレングリコールは沸点が188℃で、粘度が20℃で56mPa秒である。ジプロピレングリコールは沸点が232℃で、粘度が25℃で75mPa秒である。トリプロピレングリコールは沸点が265℃で、粘度が20℃で57mPa秒である。
従って、これらのグリコール類は、カルボン酸金属化合物のメタノール分散液と均一に混ざり合って、粘度が高い混合液を構成する。また、こうしたグリコール類は、保湿剤、潤滑剤、乳化剤、不凍液、溶媒などに使用されている汎用的な工業用薬品である。
【0035】
最後に、グリコールエーテル類の中で、次のグリコールエーテル類は前記した3つの性質を兼備する。フェニルジグリコールは沸点が245℃で、粘度が20℃で31mPa秒である。ベンジルジグリコールは沸点が302℃で、粘度が20℃で19mPa秒である。フェニルプロピレングリコールは沸点が243℃で、粘度が20℃で23mPa秒である。
従って、これらのグリコールエーテルは、カルボン酸金属化合物のメタノール分散液と均一に混ざり合って、粘度が高い混合液を構成する。また、こうしたグリコールエーテル類は、塗料、インキ、染料、写真複写液、洗浄剤、電解液、ソリュブルオイル、作動油、ブレーキ液、冷媒、凍結防止剤等に使用されている汎用的な工業用薬品である。
【0036】
実施例1
本実施例では、ラウリン酸アルミニウムAl(C1123COO)とグリセリンC(OH)とを原料として用い、様々な成形体を製造する。この成形体がアルミニウムに近い導電性を持てば、軽量で熱伝導性と導電性とに優れた様々な成形体になる。なお、アルミニウムは、銀、銅、金に次いで優れた熱伝導率(236W/mK)と優れた導電率(電気抵抗率が26.5×10−8Ωm)とを有し、比重が2.70と小さい。
最初に、ラウリン酸アルミニウムのメタノール分散液とグリセリンとの混合液を作成する。ラウリン酸アルミニウム(三津和化学薬品株式会社の製品)の6.25kg(10モルに相当する)が10重量%になるようにメタノールに分散し、この分散液にグリセリン(阪本薬品工業株式会社の製品)の92g(1モルに相当する)を混合して混合液を作成した。
なお、ラウリン酸アルミニウムは金属石鹸として用いられている安価な工業用薬品であり、大気雰囲気の360℃で熱分解しアルミニウムを析出する。また、グリセリンは食品添加物、医薬品、化粧品や不凍液の原料として用いられている汎用の工業用薬品であり、比重が1.26で、沸点が290℃で、メタノールに溶解し、20℃の粘度が1499 mPa秒で、メタノールの2540倍の粘度を持つ糖蜜状の液体である。
【0037】
次に、混合液からメタノールを気化させて懸濁液を作成する。このため、混合液を撹拌型の真空脱泡装置(例えば、倉敷紡績株式会社の製品KK−V3500)に投入した。なお、メタノールの蒸気圧は20℃で88.7mmHgで、グリセリンの蒸気圧が25℃で7.5×10−5mmHgであるため、真空脱泡装置を短時間稼働させるだけで、混合液からメタノールのみが気化し、グリセリンは残留する。メタノールが気化すると、メタノールに分散していたラウリン酸アルミニウムの微細結晶の集まりが、撹拌されているグリセリンに析出し、混合液は、ラウリン酸アルミニウムの微細結晶の集まりがグリセリンに均一に分散した懸濁になる。
【0038】
次に、前記した懸濁を原料として用い、圧縮成形法に依って高さが1cmで外径が1cmで肉厚が2mmの円筒容器の複数個を製作した。このため、円筒容器の外径の形状を持つキャビティを、グリセリンの沸点である290℃に予め昇温した。また、円筒容器の内径の形状を持つ成形機を、ラウリン酸アルミニウムの熱分解温度より20℃高い380℃に予め昇温した。このキャビティに前記した懸濁を充填し、成形機をキャビティに下ろし、成形機による加圧力が30秒間に10MPaまで昇圧する加圧力を懸濁液に加え、この後30秒間放置した。この後、成形機の加圧力を抜いた。さらに、成形機によって20MPaの加圧力を加えた。この後、成形機を引き上げて、キャビティ内の円筒容器を取り出した。
【0039】
次に成形品の一部を試料として切り出し、表面と切断面とを電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社が所有する極低加速電圧SEMを用いた。この装置は100Vからの極低加速電圧による表面観察が可能で、さらに導電性の被膜を形成せずに直接試料の表面が観察できる。
最初に、試料の表面と切断面とについて、900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。試料の表面と切断面のいずれの部位も、大きさが100nmより小さい扁平な微粒子が互いに積層して結合した微粒子の集まりが形成されていた。
次に、試料の表面と切断面とからの反射電子線について、900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡で微粒子の材質を観察した。いずれの微粒子にも濃淡が認められず、単一原子から構成されていることが分かった。
さらに、試料の表面と切断面とからの特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素の種類を分析した。微粒子はアルミニウム原子のみで構成されていたため、アルミニウム微粒子である。
以上の観察結果から、成形品はアルミニウム微粒子が圧接されて結合した微粒子の集まりで形成されていることが分かった。図1にこの状態を拡大して模式的に示す。1はアルミニウム微粒子で、このアルミニウム微粒子の集まりで成形品が形成された。
さらに、試料表面の複数個所の表面抵抗を、表面抵抗計(例えば、シムコジャパン株式会社の表面抵抗計ST−4)によって測定した。表面抵抗値は1×10Ω/□未満であったため、試料はアルミニウムに近い表面抵抗を有した。
また、円筒容器からなる成形品の4個を、2mの高さから落下させたが、僅かな打痕が形成されるだけで、円筒容器はいずれも壊れなかった。このため、アルミニウム微粒子が圧接されて結合した微粒子の集まりからなる成形品は、一定の機械的強度を持つ。
以上の結果から、アルミニウム微粒子の集まりからなる円筒容器は、アルミニウムに近い導電性を持つ。この結果、本実施例で製作した容器は、軽量で熱伝導性と電気導電性とに優れた容器になる。なお、本実施例は一例に過ぎない。金属微粒子の原料として、様々な金属元素からなるラウリン酸金属化合物を用いれば、様々な金属元素からなる金属微粒子が圧接されて結合した微粒子の集まりから成形体が、様々な形状を持つ成形体として、圧縮成形法に依って製造できる。
【0040】
次に、37段落に記載した懸濁を成形の原料として用い、トランスファ成形法でヒートシンクの複数個を製作した。製作したヒートシンクの形状を図2に図示する。なお、懸濁を押し込む一対の金型からなるキャビティは、その内側がヒートシンクの形状を持つ。
最初に、トランスファ成形機のポットをグリセリンの沸点である290℃に予め昇温した。また、懸濁を押し込むキャビティを、ラウリン酸アルミニウムの熱分解温度より20℃高い380℃に予め昇温した。次に、ポットに懸濁液を充填した。さらに、ポット内に設置されたプランジャーによって、懸濁を型締めされたキャビティ内に40MPaの加圧力で押し込んだ。この後、プランジャーの加圧を一旦中止し、キャビティ内のガスを放出させた。さらに、プランジャーによって、加圧力が30秒間に60MPaまで昇圧する加圧力をキャビティ内にある懸濁液に加え、この後30秒間放置した。この後、プランジャーの加圧を一旦中止し、キャビティ内のガスを放出させた。さらに、プランジャーによって80MPaの加圧力を加えた。この後、プランジャーを引き上げ、キャビティ内のヒートシンクを取り出した。
【0041】
次に、39段落で記載した同様の方法で、成形品の一部を試料として切り出し、電子顕微鏡で試料の表面と切断面とを観察した。圧縮成形品と同様に、成形品はアルミニウム微粒子が圧接されて結合した微粒子の集まりで形成されていることが分かった。
さらに、39段落で記載した同様の方法で、試料表面の複数個所の表面抵抗を測定した。表面抵抗値は1×10Ω/□未満であったため、試料はアルミニウムに近い表面抵抗を有した。また、成形品の4個を2mの高さから落下させたが、僅かな打痕が形成されるだけで、角ピン形状フィンはいずれも壊れなかった。このため、アルミニウム微粒子が圧接されて結合した微粒子の集まりからなる成形体は、一定の機械的強度を持つ。
以上の結果から、アルミニウム微粒子の集まりからなるヒートシンクは、アルミニウムに近い熱伝導性を持つ。この結果、本実施例で製作したヒートシンクは、軽量で熱伝導性と電気導電性とに優れる。なお、本実施例は一例に過ぎない。金属微粒子の原料として、様々な金属元素からなるラウリン酸金属化合物を用いれば、様々な金属元素からなる金属微粒子が圧接されて結合した微粒子の集まりから成形体が、様々な形状を持つ成形体として、トランスファ成形法に依って製造できる。
【0042】
実施例2
本実施例では、ラウリン酸アルミニウムとグリセリンとを原料として、様々な成形体を製造するが、36段落に記載した混合液について、グリセリンの混合割合を2倍に増やし、粘度を2倍に増やした混合液を成形体の原料として用いる。このため、ラウリン酸アルミニウムの6.25kg(10モルに相当する)が10重量%になるようにメタノールに分散し、この分散液にグリセリンの184g(2モルに相当する)を混合して混合液を作成した。次に、37段落で記載した方法で、混合液からメタノールを気化させて懸濁液を作成した。
【0043】
この懸濁を用いて、サーモフォーミング成形法で、高さが1cmで外径が1cmで肉厚が0.5mmの円筒容器の複数個を製作した。つまり、38段落で記載した圧縮成形法で成形した円筒容器の肉厚の1/4に相当する円筒容器を製作する。
最初に、押出成形機のシリンダーをグリセリンの沸点である290℃に予め昇温した。また、シート状に押し出された懸濁を挟む一対の金型を、ラウリン酸アルミニウムの熱分解温度より10℃高い370℃に予め昇温した。なお、一対の金型のうち下方の金型は、円筒容器の外径の形状を持ち、下部の一部が真空ポンプの吸引ホースに繋がる。また、一対の金型うち上方の金型は、円筒容器の内径の形状を持つ。次に、シリンダーに懸濁液を充填し、シリンダー内のスクリューを移動させ、シリンダーの前方にあるダイの溝から、幅が3.1cmで厚みが0.6mmのシートとして押出した。さらに、シートを一対の金型の間に挟んだ。この後、真空ポンプを稼働させ、上方の金型を下方の金型に対して0.5mmの距離まで下ろすとともに、加圧力が30秒間に10MPaまで昇圧する加圧力を、上方の金型によってシートに加え、この後30秒間放置した。この後、上方の金型の加圧を中止した。さらに、上方の金型によって20MPaの加圧力を加えた。この後、上方の金型を引き上げて、下方の金型内の円筒容器を取り出した。
【0044】
次に、39段落で記載した同様の方法で、成形品の一部を試料として切り出し、電子顕微鏡で試料の表面と切断面とを観察した。圧縮成形品と同様に、成形品はアルミニウム微粒子が圧接されて結合した微粒子の集まりで形成されていることが分かった。
さらに、39段落で記載した同様の方法で、試料表面の複数個所の表面抵抗を測定した。表面抵抗値は1×10Ω/□未満であったため、試料はアルミニウムに近い表面抵抗を有した。また、成形品の4個を2mの高さから落下させたが、僅かな打痕が形成されるだけで、円筒容器はいずれも壊れなかった。このため、アルミニウム微粒子が圧接されて結合した微粒子の集まりからなる成形品は、一定の機械的強度を持つ。
以上の結果から、アルミニウム微粒子の集まりからなる円筒容器は、アルミニウムに近い導電性を持つ。この結果、本実施例で製作した容器は、軽量で熱伝導性と電気導電性とに優れた容器になる。なお、本実施例は一例に過ぎない。金属微粒子の原料として、様々な金属元素からなるラウリン酸金属化合物を用いれば、様々な金属元素からなる金属微粒子が圧接されて結合した微粒子の集まりから成形体が、様々な形状を持つ成形体として、サーモフォーミング成形法に依って製造できる。
【0045】
次に、42段落に記載した懸濁を成形の原料として用い、エアブロー成形法で薄肉の中空容器を製作した。中空容器の形状は高さが5cmで、口部の大きさは外径が1cmで高さが1cmで、肉厚が0.5mmからなる。
最初に、押出成形機のシリンダーをグリセリンの沸点である290℃に予め昇温した。また、チューブ状に押し出された懸濁を挟む一対の金型を、ラウリン酸アルミニウムの熱分解温度より10℃高い370℃に予め昇温した。なお、一対の金型が閉じられた際に、金型の内側は、製作する容器の外側の形状になる。次に、シリンダーに懸濁液を充填し、シリンダー内のスクリューを移動させ、シリンダーの前方にあるダイの溝から、外径が1cmで肉厚が0.17cmのチューブとして押し出した。このチューブを一対の金型で挟み、金型を閉じた後に、エアブロー装置によってチューブの内側に、30秒間に25MPaまで昇圧する圧縮空気を供給し、チューブを一対の金型に張り付けさせ、この後30秒間放置した。この後、圧縮空気の供給を中止し、膨らんだチューブから気体を排出させた。さらに、エアブロー装置によって、膨らんだチューブの内側に、60MPaの圧縮空気を送り込んで膨らんだチューブを加圧した。この後、金型を開いて中空容器を取り出した。
【0046】
次に、39段落で記載した同様の方法で、成形品の一部を試料として切り出し、電子顕微鏡で試料の表面と切断面とを観察した。圧縮成形品と同様に、成形品はアルミニウム微粒子が圧接されて結合した微粒子の集まりで形成されていることが分かった。
さらに、39段落で記載した同様の方法で、試料表面の複数個所の表面抵抗を測定した。表面抵抗値は1×10Ω/□未満であったため、試料はアルミニウムに近い表面抵抗を有した。また、成形品の4個を2mの高さから落下させたが、僅かな打痕が形成されるだけで、中空容器はいずれも壊れなかった。このため、アルミニウム微粒子が圧接されて結合した微粒子の集まりからなる中空の成形体は、一定の機械的強度を持つ。
以上の結果から、アルミニウム微粒子の集まりからなる中空容器は、アルミニウムに近い導電性を持つ。この結果、本実施例で製作した中空容器は、軽量で熱伝導性と電気導電性とに優れた容器になる。なお、本実施例は一例に過ぎない。金属微粒子の原料として、様々な金属元素からなるラウリン酸金属化合物を用いれば、様々な金属元素からなる金属微粒子が圧接されて結合した微粒子の集まりから中空の成形体が、様々な形状を持つ中空の成形体として、エアブロー成形法に依って製造できる。
【0047】
実施例3
本実施例は、オクチル酸銅Cu(C15COO)とジプロピレングリコール(CHOHCOとを原料として用い、射出成型法に依って成形体を製作する。従って、成形体が銅に近い導電性を持てば、熱伝導性と電気導電性とに優れた様々な形状の成形体になる。
最初に、オクチル酸銅のメタノール分散液とジプロピレングリコールとの混合液を作成する。このため、オクチル酸銅(三津和化学薬品株式会社の製品)の3.5kg(10モルに相当する)が10重量%になるようにメタノールに分散し、この分散液にジプロピレングリコール(株式会社ADEKAの製品)の402g(3モルに相当する)を混合して混合液を作成した。
なお、オクチル酸銅は金属石鹸として用いられている安価な工業用薬品であり、大気雰囲気の290℃で熱分解が完了して銅を析出する。また、ジプロピレングリコールはポリエステル樹脂の中間原料や水圧機器の作動油、不凍液、印刷インキ原料として用いられている安価な工業用薬品であり、沸点が232℃で粘度が25℃で75mPa秒で、メタノールの粘度の135倍の粘度を持つ。
【0048】
次に、37段落で記載した同様の方法で、混合液を撹拌型の真空脱泡装置に投入し、混合液からメタノールを気化させた。この結果、混合液は、ジプロピレングリコールにオクチル酸銅の微細結晶の集まりが均一に分散した懸濁になる。
【0049】
この懸濁を用いて、射出成形法で薄肉の台座付きの円筒容器を製作した。台座付きの円筒容器の形状は、高さが5cmで、円筒の外径が1cmで、台座が直径3cmの円板からなり、肉厚はいずれも0.5mmである。
最初に、懸濁を充填するシリンダーを、ジプロピレングリコールの沸点である232℃に予め昇温した。また、懸濁が射出される金型を、オクチル酸銅の熱分解が完了する温度より10℃高い300℃に予め昇温した。なお、金型の内側は、製作する成形体の外側の形状を持つ。次に、懸濁をシリンダーに充填し、この後、シリンダー内に設置されたスクリューの移動によって、4段階に分けて10MPaずつ加圧力を連続して増やし、40MPaの加圧力を懸濁に加え、懸濁を金型内に射出した。この後、スクリューに依る加圧を一旦中止する。さらに、スクリューの移動によって、加圧力が30秒間に60MPaまで昇圧する加圧力を射出された懸濁に加え、この後30秒間放置した。この後、スクリューに依る加圧を一旦中止する。さらに、スクリューによって、80MPaの加圧力を射出された懸濁に加えた。この後、金型を開いて台座付きの円筒容器を取り出した。
【0050】
次に、39段落で記載した同様の方法で、成形品の一部を試料として切り出し、電子顕微鏡で試料の表面と切断面とを観察した。圧縮成形品、トランスファ成形品、サーモフォーミング成形品、およびエアブロー成型品と同様に、射出成形品は銅微粒子からなる微粒子が圧接されて結合した微粒子の集まりで形成されていることが分かった。
さらに、39段落で記載した同様の方法で、試料表面の複数個所の表面抵抗を測定した。表面抵抗値は1×10Ω/□未満であったため、試料は銅に近い表面抵抗を有した。また、成形品の4個を2mの高さから落下させたが、僅かな打痕が形成されるだけで、台座付きの円筒容器はいずれも壊れなかった。このため、銅微粒子が圧接されて結合した微粒子の集まりからなる台座付きの円筒容器は、一定の機械的強度を持つ。
以上の結果から、銅微粒子の集まりからなる台座付きの円筒容器は、銅に近い導電性を持つ。この結果、本実施例で製作した台座付きの円筒容器は、熱伝導性と電気導電性とに優れた容器になる。なお、本実施例は一例に過ぎない。金属微粒子の原料として、様々な金属元素からなるオクチル酸金属化合物を用いれば、様々な金属元素からなる金属微粒子が圧接されて結合した微粒子の集まりから成形体が、様々な形状を持つ成形体として、射出成形法に依って製造できる。
【0051】
実施例4
本実施例は、パーマロイと呼ばれるニッケルと鉄とを主成分とする合金微粒子からなる成形体を射出成型法で製作する。なお、本実施例におけるパーマロイは、モル比がニッケル47、鉄53の割合からなるPBパーマロイである。このPBパーマロイの直流磁気特性は、初透磁率が4,500、最大透磁率が45,000、飽和磁束密度が1.5テスラ、保持力が12A/m、固有抵抗が0.45μΩmの特性を持つ。このため、電流センサコア、小型通信機用変成コア、高感度リレー用鉄芯、スイッチ用板片などに用いられている。本実施例では、トランス用のEIコアの薄体を射出成形で製作する。図3に、製作するEIコアの形状を図示する。
なお、従来のPBパーマロイからなる薄体は、パーマロイを水素雰囲気の1100℃で磁気焼鈍し、表面の酸化膜や内部に存在する不純物としての酸化物を除去し、さらに、圧延して箔状に引き伸ばした後に、加工に伴う歪を除去する歪取焼鈍を行う。これに対し本実施例では、2種類の金属化合物の熱分解でニッケルと鉄とを同時に析出させ、不純物を持たない合金を生成するため、従来のPBパーマロイの製造における水素焼鈍と歪取焼鈍との双方が不要になる。
【0052】
ニッケルと鉄の原料となるオクチル酸金属化合物は市販されていないため次の製法で精製した。組成式がC15COOHで表されるオクチル酸(協和発酵ケミカル株式会社の製品)を水酸化ナトリウムNaOH(試薬一級品)の水溶液と反応させると、オクチル酸のカルボキシル基COOHを構成する水素が電離し、電離したカルボキシル基にナトリウムが結合し、オクチル酸ナトリウムC15COONaが析出する。このオクチル酸ナトリウムを水洗して、オクチル酸ナトリウムを精製する。次に、オクチル酸ナトリウムを硫酸ニッケル(試薬一級品)ないしは硫酸鉄(試薬一級品)の水溶液と反応させると、オクチル酸ニッケルNi(C15COO)ないしはオクチル酸鉄Fe(C15COO)が析出する。析出したオクチル酸ニッケルないしはオクチル酸鉄を水洗して、オクチル酸ニッケルないしはオクチル酸鉄を精製する。また、粘度の高い有機化合物として実施例3のジプロピレングリコールを用いた。
オクチル酸ニッケルの1.62kg(4.7モルに相当する)とオクチル酸鉄の2.57kg(5.3モルに相当する)との各々がメタノールに10重量%になるように分散した後、両者を混合した。さらに、このメタノール分散液にジプロピレングリコールの402g(3モルに相当する)を混合して混合液を作成した。
【0053】
次に、37段落で記載した同様の方法で、混合液を撹拌型の真空脱泡装置に投入し、混合液からメタノールを気化させた。この結果、混合液は、ジプロピレングリコールにオクチル酸ニッケルとオクチル酸鉄との微細結晶の集まりが均一に分散した懸濁になる。
【0054】
この懸濁を用いて、射出成形法でEIコアの複数個を製作した。最初に、懸濁を充填するシリンダーを、ジプロピレングリコールの沸点である232℃に予め昇温した。また、懸濁が射出される金型を、オクチル酸銅の熱分解が完了する温度より20℃高い310℃に予め昇温した。なお、金型の内側は、製作する成形体の外側の形状を持つ。次に、懸濁をシリンダーに充填し、この後、シリンダー内に設置されたスクリューの移動によって、4段階に分けて10MPaずつ加圧力を連続して増やし、40MPaの加圧力を懸濁に加え、懸濁を金型内に射出した。この後、スクリューに依る加圧力を一旦抜く。さらに、スクリューの移動によって、加圧力が30秒間に70MPaまで昇圧する加圧力を、射出された懸濁に加え、この後30秒間放置した。この後、スクリューに依る加圧力を一旦抜く。さらに、スクリューによって、100MPaの加圧力を射出された懸濁に加えた。この後、金型を開いて台座付きの円筒容器を取り出した。
【0055】
次に、39段落で記載した同様の方法で、成形品の一部を試料として切り出し、電子顕微鏡で試料の表面と切断面とを観察した。
最初に、試料の表面と断面からの反射電子線について、900−1000Vの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。表面と切断面とはいずれの部位も、大きさが100nmより小さい扁平な微粒子が互いに積層して結合した微粒子の集まりが形成されていた。
次に、試料の表面と断面とからの反射電子線について、900−1000Vの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡で粒子の材質を分析した。いずれの粒状微粒子にも濃淡が認められたため、複数種類の原子から構成されていることが分かった。
さらに、試料の表面と断面とからの特性エックス線のエネルギーとその強度を画像処理し、微粒子を構成する元素の種類を分析した。ニッケル原子と鉄原子とで構成されていた。使用したオクチル酸金属化合物のモル比から、微粒子はニッケル47、鉄53の割合からなる。
以上の観察結果から、成形品はPBパーマロイ微粒子が圧接されて結合した微粒子の集まりで形成されていることが分かった。
また、実施例3と同様に、試料表面の複数個所の表面抵抗を表面抵抗計で測定した。表面抵抗値は1×10Ω/□未満であり、試料はPBパーマロイに近い表面抵抗を有した。なお、PBパーマロイの比抵抗は0.45μΩmであり、鉄の比抵抗0.1μΩmに近い値を持つ。
また、また、成形品の4個を2mの高さから落下させたが、僅かな打痕が形成されるだけで、EIコアはいずれも壊れなかった。このため、ニッケル・鉄合金が圧接されて結合した微粒子の集まりからなるEIコアは、一定の機械的強度を持つ。
以上の結果から、ニッケル・鉄合金の粒子の集まりからなるEIコアは、PBパーマロイの性質を持つ。この結果、製作したEIコアは、トランス用コアとして用いることができる。なお、本実施例は一例に過ぎない。合金微粒子の原料として、複数種類のオクチル酸金属化合物を用いれば、様々な組成からなる合金微粒子が圧接されて結合した微粒子の集まりから成形体が、様々な形状を持つ成形体として、射出成形法に依って製造できる。
【0056】
以上に説明した様々な実施例は一部の事例に過ぎない。つまり、31段落で説明したカルボン酸金属化合物を用い、32−35段落で説明した有機化合物を用いることで、液相化された様々な金属ないしは様々な合金の原料が、高い粘度を持つ液体に分散された混合液が製造できる。この混合液を撹拌型の真空脱泡装置で処理するだけで、滑り性と粘り性とを有する懸濁液が製造できる。さらに、有機化合物の粘度と混合液における混合割合を変えれば、懸濁液の滑り性と粘り性とが自在に変えられる。これによって、懸濁を成形機によって成形体に加工する際に、成形体を加工する成形機の制約を受けない。このため、懸濁からなる成形体を加圧して熱処理することで、様々な金属からなる金属微粒子が圧接されて結合した微粒子の集まりから成形体が、ないしは、様々な組成からなる合金の合金微粒子が圧接されて結合した微粒子の集まりから成形体が、合成樹脂の成形体を成形する様々な成形法を用いて、様々な形状の成形体が製作できる。
本発明は、様々な形状の成形体を、金属ないしは合金の融点より著しく低い温度で、かつ、大気雰囲気での短時間の熱処理で成形体が製造でき、成形体は一定の機械的強度を持ち、また、成形体が形成される際に体積の収縮がなく、成形体の再加工が不要になる。従って、本発明は、MIMに変わる全く新たな製法で、金属ないしは合金からなる成形体が、MIMに依る製法より著しく安価に製造できる技術である。
【符号の説明】
【0057】
1 アルミニウム微粒子 2 ヒートシンク 3 EIコア
図1
図2
図3