(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ロスバスタチンまたは薬学的に許容可能なその塩を含有する固形製剤であって、層中18%以上の酸化チタンを含有するアンダーコーティングと、層中0.1〜10%の酸化チタンを含有するオーバーコーティングを施してなる、二重フィルムコーティング錠。
ロスバスタチンまたは薬学的に許容可能なその塩を含有する固形製剤であって、内層のフィルムコーティング中に18%以上の酸化チタンを含有し、外層のフィルムコーティング中に約0.1%〜約10%の酸化チタンを含有することを特徴とする固形製剤の表面にレーザーを照射することによるマーキング方法。
【背景技術】
【0002】
ロスバスタチンカルシウム (モノカルシウム ビス((3R,5S,6E)−7−{4−(4−フルオロフェニル)−6−イソプロピル−2−[メタンスルホニル(メチル)アミノ]ピリミジン−5−イル}−3,5−ジヒドロキシヘプト−6−エノエート; Monocalcium bis ((3R,5S,6E)-7-{4-(4-fluorophenyl)-6-isopropyl-2-[methanesulfonyl (methyl) amino] pyrimidin-5-yl}-3,5-dihydroxyhept-6-enoate) は、HMG CoAレダクターゼ阻害作用を有するスタチン系の脂質異常症治療薬であり、現在、本邦では、塩野義製薬(株)から「クレストール」(登録商標)の販売名で、「高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症」を効能・効果とする1日1回経口投与の錠剤が市販されている。(非特許文献1)
ロスバスタチンカルシウムは、特許文献1〜4に記載の方法で合成されることが報告されている。
また、非晶質ロスバスタチンカルシウムの製造方法は、特許文献5に記載されている。
ところで、非特許文献1には、混入する可能性がある類縁物質(分解生成物)として、ラクトン体((3R,5S)ラクトン)及びケト誘導体(炭素−炭素二重結合に隣接しているヒドロキシ基が酸化されたケトン体)を挙げている。
特許文献6には、通常の貯蔵条件で十分安定な医薬製剤として、ケイ化微結晶セルロースとトウモロコシデンプンを含み、アルカリ剤が添加されていないロスバスタチンカルシウム含有医薬組成物が記載されている。
また、特許文献7には、ロスバスタチンカルシウム含有層を含む医薬製剤の製造方法が報告されており、ロスバスタチンカルシウムを含有するコーティング層には、安定剤を加えることができ、その安定剤として乳酸カルシウムなどの有機酸の医薬的に許容しうるカルシウム塩を挙げている。しかしながら、特許文献7では、ロスバスタチンカルシウムは、素錠中でなく、打錠後のコーティング層にのみ存在し、また具体的に乳酸カルシウムを安定化剤として使用した実施例等は開示されていない。なお特許文献7では、コア上に水中にロスバスタチンカルシウムとコーティングポリマーを含む溶液を噴霧コーティングすることにより錠剤を得ているので、ロスバスタチンカルシウムは水分で分解が促進される可能性があることから、製剤中の水分含量の管理が必要となる。
また特許文献8〜10にはHMG CoAレダクターゼ阻害剤の安定化剤として、乳酸カルシウムが例示されているが、HMG CoAレダクターゼ阻害剤としてロスバスタチンカルシウムは例示されておらず、また具体的に乳酸カルシウムを安定化剤として使用した実施例等は開示されていない。
一方、特許文献11〜13によれば、従来のスタチン系製剤には、安定性向上のため、組成物の水溶液または水性分散液のpHを少なくとも8にするアルカリ性媒体(炭酸塩、重炭酸塩)の存在を必要とするが(特許文献14)、ロスバスタチンカルシウムにおいては、調剤中のPHを調整することのみによって安定性を改善することは充分ではなく、カチオンが多価の無機塩である三塩基リン酸塩等を添加することで安定性が向上する旨、報告されている。
即ち、ロスバスタチンカルシウムを有効成分として含有する新規な安定な製剤を提供する為には、更なる安定化剤に関する鋭意研究を行うことが必要となる。
【0003】
最近、薬剤師等の調剤行為時や患者の服用時におけるミスを防止する観点から、錠剤には、包装容器のみならず錠剤自体にも文字等の識別記号等を付すことが要望されている。
従来、錠剤の表面に識別記号等を表示する方法として、刻印や、オフセット印刷、インクジェット印刷が行われてきた。しかしながら、刻印では、マーキングできる情報量が少なく、また打刻不良を生じることがある。一方、オフセット印刷、インクジェット印刷では、インク汚れ・文字切れ等の不具合を生じることがある。
最近、錠剤表面にレーザー照射することで、錠剤表面に「識別記号」、「一般名」、「含量」、「会社名」をマーキングするUVレーザー印刷方法が各種文献等で紹介され、実際UVレーザー印刷を用いた製品も上市されている。(特許文献15〜17)
UVレーザー印刷方法では、変色誘起酸化物(酸化チタン)が錠剤表面に存在することで識別記号等を灰色にマーキングがすることが可能となる。
そして、印字メカニズムとして、UVレーザー照射を受けた酸化チタンから酸素が脱離することでチタン原子の存在比率が変化し、酸化チタンは白から灰色に変色することが報告されている。(非特許文献2)
ところで、有効成分の種類によっては、光に不安定なものがあり、かかる有効成分の製剤化においては着色剤として酸化チタンを使用することがある。フィルムコーティング錠において、コーティング層中の酸化チタンの量が少ない場合、光安定化効果が期待できないので、フィルムコーティング錠中の酸化チタンの割合が25%を超える場合もあるが、かかる場合にUVレーザー印刷方法を使用すると印字が不鮮明となり、UVレーザー印刷方法の使用を断念することもある。
なお特許文献18には、レーザー光の曝露から光に対して不安定な薬物を保護し得るレーザー印刷用錠剤が記載されている。前記の錠剤では、異なる濃度の変色誘起組成物を含有する2層のコーティング錠を提案している。しかしながら、該文献の印字性評価は光に対して不安定な薬物を含有しないプラセボを用いて行っており、光に対して不安定な薬物を用いた場合、鮮明な印字が得られるか不明である。更に、該文献記載の素錠の1錠あたりの重量の記載がなく、素錠中の添加剤の種類や含有量、類縁物質が何であるか等の記載は一切ない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を更に詳細に説明する。
(1)
本発明は、ロスバスタチンまたは薬学的に許容可能なその塩を含有する固形製剤であって、乳酸のアルカリ土類金属塩もしくはアルカリ金属塩を含有することを特徴とする固形製剤に関する。
(2)
本発明は、ロスバスタチンカルシウムと乳酸カルシウムを含有する混合物を打錠してなる錠剤に関する。
(3)
本発明は、ロスバスタチンカルシウムと乳酸カルシウムを重量比 1:10〜5:1の割合で混合して得られる混合物を用いる上記(2)記載の錠剤に関する。
(4)
本発明は、ロスバスタチンカルシウムと乳酸カルシウムを重量比 1:1〜1:5の割合で混合して得られる混合物を用いる上記(2)記載の錠剤に関する。
(5)
本発明は、添加剤として、賦形剤、崩壊剤及び滑沢剤を含有する上記(2)〜(4)の何れか1項記載の錠剤に関する。
(6)
本発明は、ロスバスタチンカルシウムを錠剤の1〜40重量%含有している上記(5)記載の錠剤に関する。
(7)
本発明は、賦形剤を錠剤の30〜90重量%含有している上記(5)記載の錠剤に関する。
(8)
本発明は、崩壊剤を錠剤の2〜10重量%含有している上記(5)記載の錠剤に関する。
(9)
本発明は、滑沢剤を錠剤の0.5〜3重量%含有している上記(5)記載の錠剤に関する。
(10)
本発明は、賦形剤が乳糖、結晶セルロール、マンニトール、デンプンから選択される1又は2以上のものである上記(5)記載の錠剤に関する。
(11)
本発明は、崩壊剤がクロスポピドン、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウムから選択される1又は2以上のものである上記(5)記載の錠剤に関する。
(12)
本発明は、滑沢剤がステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、タルクから選択される1又は2以上のものである上記(5)記載の錠剤に関する。
(13)
本発明は、ロスバスタチンカルシウムがアモルファスである上記(2)〜(12)の何れか1項記載の錠剤に関する。
(14)
本発明は、素錠にフィルムコーティングが施されている上記(2)〜(13)の何れか1項記載の錠剤に関する。
(15)
本発明は、フィルム層に酸化チタン、三二酸化鉄及び/又は黄色三二酸化鉄を含有する上記(14)記載の錠剤に関する。
(16)
本発明は、ロスバスタチンカルシウム、乳酸カルシウム、賦形剤、崩壊剤及び滑沢剤を混合した後、直打法によるロスバスタチンカルシウムを有効成分として含有する錠剤の製造方法に関する。
(17)
本発明は、素錠にフィルムコーティングを施す上記(16)記載の製造方法に関する。
(18)
本発明は、フィルム層に酸化チタン、三二酸化鉄及び/又は黄色三二酸化鉄を含有する上記(17)記載の製造方法に関する。
【0012】
(19)
本発明は、フィルムコーティングを有する固形製剤であって、素錠部分に光安定化剤を含有し、フィルムコーティング中に約0.1%〜約10%の酸化チタンを含有することを特徴とする固形製剤に関する。
(20)
本発明は、二重フィルムコーティングを有する固形製剤であって、内層のフィルムコーティング中に光安定化剤を含有し、外層のフィルムコーティング中に約0.1%〜約10%の酸化チタンを含有することを特徴とする固形製剤に関する。
(21)
本発明は、光分解性の有効成分を含有する素錠に、層中18%以上の酸化チタンを含有するアンダーコーティングと層中0.1〜10%の酸化チタンを含有するオーバーコーティングを施してなるフィルムコーティング錠に関する。
(22)
本発明は、光分解性の有効成分を含有する素錠に、層中20〜40%の酸化チタンを含有するアンダーコーティングと層中0.5〜5%の酸化チタンを含有するオーバーコーティングを施してなるフィルムコーティング錠に関する。
(23)
本発明は、10〜500Nの硬度を有する上記(2)〜(15)及び(19)〜(22)の何れか1項記載の錠剤に関する。
(24)
本発明は、フィルムコーティングを有する固形製剤であって、素錠部分に光安定化剤を含有し、フィルムコーティング中に約0.1%〜約10%の酸化チタンを含有することを特徴とする固形製剤の表面にレーザーを照射することによるマーキング方法に関する。
(25)
本発明は、二重フィルムコーティングを有する固形製剤であって、内層のフィルムコーティング中に光安定化剤を含有し、外層のフィルムコーティング中に約0.1%〜約10%の酸化チタンを含有することを特徴とする固形製剤の表面にレーザーを照射することによるマーキング方法に関する。
(26)
本発明は、光分解性の有効成分を含有する素錠に最も外側にあるコーティング層に0.1〜10%の酸化チタンを含有する、複数のコーティングを施してなるフィルムコーティング錠の錠剤表面にレーザーを照射することによるマーキング方法に関する。
(27)
本発明は、光分解性の有効成分を含有する素錠に、層中18%以上の酸化チタンを含有するアンダーコーティングと層中0.1〜10%の酸化チタンを含有するオーバーコーティングを施し、次いで該フィルムコーティング錠の錠剤表面にレーザーを照射することによるマーキング方法に関する。
(28)
本発明は、光分解性の有効成分を含有する素錠に、層中20〜40%の酸化チタンを含有するアンダーコーティングと層中0.5〜5%の酸化チタンを含有するオーバーコーティングを施し、次いで該フィルムコーティング錠の錠剤表面にレーザーを照射することによるマーキング方法に関する。
(29)
本発明は、UVレーザー光の波長が350〜360nmで、出力が0.1〜10Wであるレーザー出力装置による上記(24)〜(28)記載の錠剤のマーキング方法に関する。
(30)
本発明は、フィルムコーティングを有する固形製剤であって、素錠部分に光安定化剤を含有し、フィルムコーティング中に約0.1%〜約10%の酸化チタンを含有することを特徴とする上記(14)又は(15)の何れかに記載の製剤に関する。
(31)
本発明は、二重フィルムコーティングを有する固形製剤であって、内層のフィルムコーティング中に光安定化剤を含有し、外層のフィルムコーティング中に約0.1%〜約10%の酸化チタンを含有することを特徴とする上記(14)又は(15)の何れかに記載の製剤に関する。
(32)
本発明は、光分解性の有効成分を含有する素錠に、層中18%以上の酸化チタンを含有するアンダーコーティングと層中0.1〜10%の酸化チタンを含有するオーバーコーティングを施してなるフィルムコーティング錠である、上記(14)又は(15)の何れかに記載の製剤に関する。
(33)
本発明は、光分解性の有効成分を含有する素錠に、層中20〜40%の酸化チタンを含有するアンダーコーティングと層中0.5〜5%の酸化チタンを含有するオーバーコーティングを施してなるフィルムコーティング錠である、上記(14)又は(15)の何れかに記載の製剤に関する。
(34)
本発明は、フィルムコーティング層に可塑剤としてトリアセチンを含有する上記(14)、(15)又は(30)〜(33)の何れかに記載の製剤に関する。
(35)
本発明は、10〜500Nの硬度を有する上記(30)〜(34)の何れかに記載の製剤に関する。
(36)
本発明は、フィルムコーティング層に可塑剤としてトリアセチンを含有する上記(14)又は(15)の何れかに記載の製剤に関する。
(37)
本発明は、フィルムコーティング層に可塑剤を含有する上記(14)、(15)、(19)〜(23)又は(30)〜(33)の何れかに記載の製剤に関する。
(38)
本発明は、フィルムコーティング層に可塑剤を含有する上記(17)、(18)、(24)〜(29)の何れかに記載の方法に関する。
【0013】
本発明の保存安定性が向上したロスバスタチンカルシウムを有効成分として含有する錠剤の一般的な製法を次に示す。
(1)ロスバスタチンカルシウム、賦形剤、崩壊剤及び乳酸カルシウム水和物を混合機に入れ、混合する。
(2)次いで得られた混合物に滑沢剤を入れ、さらに混合する。
(3)得られた混合物を、打錠機を用い打錠する。
(4)得られた錠剤にフィルムコーティングを施す。
【0014】
ロスバスタチンカルシウムは、錠剤(素錠)の1〜40重量%、好ましくは2.5〜10重量%含有する。
安定化剤である乳酸カルシウム水和物は、錠剤(素錠)の3〜30重量%、好ましくは5〜20重量%含有する。
賦形剤としては、乳糖、結晶セルロール、マンニトール、デンプンから選択される1又は2以上のものを用いることができ、好ましくは乳糖、結晶セルロールが挙げられる。
崩壊剤としては、クロスポピドン、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウムから選択される1又は2以上のものを用いることができ、好ましくはクロスポピドンが挙がられる。
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、タルクからから選択される1又は2以上のものを用いることができ、好ましくはステアリン酸マグネシウムが挙げられる。
可塑剤としては、PEG、トリアセチン、クエン酸トリエチル、グリセリン等が使用できる。
その他、ポビドン等の結合剤、ブチルヒドロキシトルエン等の安定化剤も使用することもできる。
光安定化剤としては、酸化チタン、酸化鉄(黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄)、タール系色素(食用黄色5号、黄色4号、それらのアルミニウムレーキ)等が挙げられる。
光安定化剤の量は、素錠中(例えば、上記(19)、(24)及び(30)〜(37)の素錠中)に含有する場合は、主薬や他の添加剤の種類や含量によるが、素錠中、0.01〜40重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30重量%である。例えば、光安定化剤の量は、素錠中1〜3重量%であっても、20〜30重量%であってもよい。
光安定化剤が内層(アンダーコーティング)のフィルムコーティング中(例えば、上記(20)〜(22)、(25)〜(28)及び(31)〜(37)の内層のフィルムコーティング中)に含有する場合は、光安定化剤の量は、内層のコーティング層中に存在する他の添加剤の種類や含量によるが、内層のフィルムコーティング中、5〜70重量%が好ましく、より好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは15〜25重量%である。例えば、内層は、酸化チタンと酸化鉄(例えば、黄色三二酸化鉄及び/又は三二酸化鉄)を10〜35重量%、好ましくは10〜30重量%、より好ましくは15〜25重量%含んでもよい。そして、酸化鉄の含量は、酸化チタンの含量に対して、2〜20重量%、好ましくは3〜12重量%であってもよい。また、例えば、内層は、酸化チタンを10〜40重量%、好ましくは15〜25重量%、及び/又は酸化鉄(例えば、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄)を0.1〜5重量%、好ましくは1〜2重量%含んでもよい。
光安定化剤が外層(オーバーコーティング)中(例えば、上記(20)〜(22)、(25)〜(28)及び(31)〜(37)の外層中)に含まれる場合は、光安定化剤の量は、外層のコーティング層中に存在する他の添加剤の種類や含量によるが、外層のフィルムコーティング中、1〜15重量%が好ましく、より好ましくは1〜10重量%、さらに好ましくは3〜10重量%である。例えば、外層は、酸化チタンと酸化鉄(例えば、黄色三二酸化鉄及び/又は三二酸化鉄)を1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%、より好ましくは4〜6重量%含んでもよい。そして、酸化鉄の含量は、酸化チタンの含量に対して、1〜40重量%、好ましくは3〜40重量%、例えば、3〜10重量%又は15〜40重量%であってもよい。また、例えば、外層は、酸化チタンを1〜10重量%、好ましくは2〜5重量%、より好ましくは3〜5重量%、及び/又は酸化鉄(例えば、黄色三二酸化鉄及び/又は三二酸化鉄)を0.1〜3重量%、好ましくは1〜2重量%含んでもよい。
外層が黄色三二酸化鉄又は三二酸化鉄を含む場合、錠剤内部の黄変が分かりにくく、酸化チタンを用いたレーザー印刷時に印字が見えやすくなる。この目的で、外層は1〜3重量%、好ましくは1〜2重量%の黄色三二酸化鉄又は三二酸化鉄を含んでもよい。
フィルムコーティング層の量は当業者が適宜設定でき、素錠中の光分解性の有効成分の光安定性を高めることができる。例えば、フェイルコーティング層の量は、錠剤の2.5重量%〜20重量%、好ましくは3重量%〜10重量%、より好ましくは3.2重量%〜6.3重量%であり得る。フィルムコーティングが多層の場合、各層の重量は同じであっても異なってもよく、例えば2層の場合、外層と内層の重量は同じであっても異なってもよい。外層と内層の膜厚は特に限定されず、例えば、1μm以上100μm以下であり得る。錠剤中の有効成分がロスバスタチンの場合、コーティング層が錠剤の2.0%では120万luxの光暴露により光分解物が見られたが、コーティング層が錠剤の3.2%及び6.3%では光分解物は検出されなかった。
上記の素錠は湿式造粒、直打法等で製造できるが、直打法で製造することが好ましい。
得られた素錠には、ロスバスタチンカルシウムが光に対し不安定であることから着色料を含有したフィルムコーティングを施すことが好ましい。
かかるフィルムコーティング層には、HPC、ヒプロメロース等のコーティング剤、PEG、トリアセチン等の可塑剤、タルク、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄等の着色剤、カルナウバロウ等の光沢剤を含有することができる。
次に本発明の保存安定性試験の結果を示す。
実施例1,2、3(表1〜3参照)で得られた本発明の錠剤は、実施例4及び参考例1記載のように類縁物質であるケトン体、ラクトン体の生成が抑制された優れた保存安定性を有することが明らかになった。(表5〜8参照)
なお、参考例1で、炭酸水素ナトリウムも比較的良好な保存安定性を有することが明らかになった。
また、本発明の錠剤(2層のフィルムコーティング錠)に関し、各種pHにおいて溶出試験を行った結果、市販製剤と同様な溶出パターンを示した。
更に、本発明の錠剤(2層のフィルムコーティング錠)に関し光安定試験を行った結果、市販製剤と同等又はそれ以上の光安定化効果を示した。
本発明の錠剤において、素錠を直打法により製造する場合、水を用いる湿式造粒法や特許文献7のような水分含量の慎重な管理を必要としない。
実施例12から明らかなようにロスバスタチンを素錠中に含むフィルムコーティング錠において、酸化チタンの量は、10%では遮光の効果が低く、30%では錠剤の表面が荒れ、約20%が好ましい。
実施例13から明らかなようにロスバスタチンを素錠中に含むフィルムコーティング錠において、可塑剤としては、PEGは好ましくなく、トリアセチンを用いることが好ましい。
【0015】
次に本発明のレーザー照射によるフィルムコーティング錠の印字方法について述べる。 通常のフィルムコーティング錠のマーキングに関しては、酸化チタンがフィルム組成中の0.5〜5%程度が最も発色が良く、25%以上になると、ヒュームが発生し、発色が悪くなる傾向にある。しかしながら、光に弱い製剤では、酸化チタンが20%を超える、例えば、25〜35%加えることもあり、配合割合が多い製剤においてもレーザー照射によるフィルムコーティング錠のマーキングを行うことができる印字方法は有用である。
本発明では、光分解性の有効成分を含有する素錠に、層中18%以上の酸化チタンを含有するアンダーコーティングと層中0.〜10%の酸化チタンを含有するオーバーコーティングを施してなるフィルムコーティング錠、好ましくは光分解性の有効成分を含有する素錠に、層中15〜30%の酸化チタンを含有するアンダーコーティングと層中1〜5%の酸化チタンを含有するオーバーコーティングを施してなるフィルムコーティング錠に対し、レーザー照射することでマーキングすることができる。
また、本発明では、(1)光分解性の有効成分を含有する素錠に最も外側にあるコーティング層に0.3〜10%の酸化チタンを含有する、複数のコーティングを施してなるフィルムコーティング錠の錠剤表面にレーザーを照射すること、好ましくは、(2)光分解性の有効成分を含有する素錠に、層中13%以上の酸化チタンを含有するアンダーコーティングと層中0.3〜10%の酸化チタンを含有するオーバーコーティングを施し、次いで該フィルムコーティング錠の錠剤表面にレーザーを照射すること、更に好ましくは、(3)光分解性の有効成分を含有する素錠に、層中15〜30%の酸化チタンを含有するアンダーコーティングと層中1〜5%の酸化チタンを含有するオーバーコーティングを施し、次いで該フィルムコーティング錠の錠剤表面にレーザーを照射することによるマーキングすることができる。
なお、素錠中の有効成分や添加剤、コーティング層中の添加剤の種類やレーザー照射によるマーキング方法等を調整することで、光分解性の有効成分を含有する素錠に、層中20%を超える酸化チタンを含有するアンダーコーティングと層中0.1〜20%の酸化チタンを含有するオーバーコーティングを施し、次いで該フィルムコーティング錠の錠剤表面にレーザーを照射することによるマーキングすることができる場合がある。
ところで、変色誘起酸化物(酸化チタン)をフィルムコーティング層に加えることは、引張強度が低下しコーティング膜が破れることが前記特許文献18に記載されているが、引張強度を上げるため可塑剤のトリアセチンは有用である。
例えば、コーティング層(例えば、外層及び/又は内層)に遮光目的で酸化チタンを含ませる場合、15〜25重量%含ませることができる。しかしながら、この量の酸化チタンを含ませることによりフィルム工程中に錠剤が割けることや、錠剤表面が荒れることがあり、それを防ぐために可塑剤を添加する。可塑剤を添加しない遮光目的のコーティング層を有する錠剤の製造は難しい為、当業者は、素錠中の有効成分(原薬)と相性の良い可塑剤をコーティング層(例えば、外層及び/又は内層)中に含ませることができる。素錠中の有効成分がロスバスタチンの場合、可塑剤としてトリアセチンをコーティング層(例えば、外層及び/又は内層)中に含ませることが好ましい。
本発明方法を使用できる光分解性の有効成分としては、ニフェジピン、ニソルジピン、アムロジピン、アゼルニジピン等のジヒドロピリジン骨格を有するCa拮抗剤、オフロキサシン、レボフロキサシン、シプロフロキサシン等のニューキノロン系抗菌剤、メコバラミン等の各種ビタミン類、シメチジン、ピタバスタチンカルシウム、メキタジン、モンテルカスト、ロスバスタンカルシウム等が挙げられる。
その他、オランザピン、ドネペジル、エバスチン、セレギリン、ファモチジン、イルソグラジン、ブロチゾラム、オランザピン、ランソプラゾール、ベポタスチン、ラモセトロン、タムスロシン、ナフトピジル、ポラプレジンク、ボグリボース、リザトリプタン、ミドドリン、リスペリドン、オンダンセトロン、ロラタジン、モンテルカスト、アズレンスルホン酸、エチゾラム、エナラプリル、カプトプリル、グリベンクラミド、クロルマジノン酢酸エステル、ドキサゾシン、トリアゾラム、ドンペリドン、ケトチフェン、ブロムペリドール、プラバスタチン、シンバスタチン、ピタバスタチン、アトルバスタチン、ロペラミド、リシノプリル、リルマザホン、アルファカルシドール、ブロモクリプチンおよびプラミペキソールなどの光分解性の有効成分にも用いることが出来る。
本発明で使用されるUVレーザーとしては、UVレーザーマーキング装置 LIS−250D(クオリカプス株式会社)が挙げられる。
UVレーザー光の波長が350〜360nmが好ましく、出力が0.1〜10Wが好ましい。
走査方式としては、ガルバノミラー型、レゾナントスキャン型、ポリゴンミラー型等が挙げられる。
本発明のレーザー照射によるマーキングにおいて、用いるフィルムコーティング層中の酸化チタンは、アナターゼ型、ルチル型の何れも用いることが出来る。
次に 素錠にコーティングを施し、フィルコーティング錠(1層)を製造し、これにレーザー照射によるマーキングを行った測定結果を示す。
図1からコーティング層中の酸化チタンの量が1%、3%の時、鮮明なマーキングが得られることが明らかになった。更にコーティング層中に0.56%の三二酸化鉄または0.56%の黄色三二酸化鉄を含有していても酸化チタンの量が3%の場合、鮮明なマーキングが得られることが明らかになった。(実施例7)
次に、素錠に、タルク、PEG−6000を含有し、ヒプロメロースと酸化チタンの量を変化させた(酸化チタンの量が0%〜40%)フィルコーティング層(1層)を有するフィルコーティング錠を製造し、これにレーザー照射によるマーキングを行った結果を示す。
図2からコーティング層中の酸化チタンの量が1%、3%の時、鮮明なマーキングが得られることが明らかになった。(実施例8)
実施例9でフィルム層が2層であるフィルムコーティング錠について、レーザー照射によるマーキングを行ったところ、
図3から明らかなように本発明のレーザー照射によるマーキング方法により、フィルム層が2層であるフィルムコーティング錠の錠剤表面に、レーザー照射により鮮明なマーキングが得られることが明らかになった。
実施例10では、レーザー照射回数を変化させた場合のフィルムコーティング錠のマーキングの鮮明度を観察したところ、レーザーを1回照射に比べ、2回照射した場合がより鮮明なマーキングが得られた。従って、レーザー出力、スキャンスピード、レーザー照射回数等を調整することにより、より鮮明なマーキングが得られることが期待できる。
【0016】
本発明のUVレーザー印刷方法を用いることで、光不安定物質を有効成分として含有するフィルムコーティング錠についても、鮮明な識別記号等のマーキングが可能となる。
次に実施例、参考例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【実施例】
【0017】
(実施例1)
1錠中、ロスバスタチンカルシウム5mg含有する錠剤(素錠)
乳糖水和物、ロスバスタチンカルシウム、結晶セルロース、クロスポピドン及び乳酸カルシウム水和物をV型混合機に入れ、10分間混合した。次いでステアリン酸マグネシウムを入れ、さらに混合した。
得られた混合物をロータリー打錠機を用い、硬度30N以上、1錠質量146 mgとなるように打錠した。
有効成分のロスバスタチンカルシウム及び添加物の含有量は表1記載の通りである。
【0018】
【表1】
【0019】
(実施例2)
1錠中、ロスバスタチンカルシウム5mg含有する錠剤(素錠)
実施例1と同様にして表2記載の錠剤を得た。
【0020】
【表2】
【0021】
(実施例3)
1錠中、ロスバスタチン5mg含有する錠剤(フィルムコーティング錠)
実施例1で得られた素錠をコーティング装置に入れ、コーティング液Iを給気温度65℃でスプレーした後、乾燥した。(錠質量から4.5mg増加。)更にコーティング液IIを給気温度65℃でスプレーした後、乾燥した。次いでカルナウバロウで艶だしコーティングを行った。
【0022】
【表3】
【0023】
コーティング液I
精製水1296 gに、ヒプロメロース86.4 g、トリアセチン21.6 gを投入し、溶解するまで撹拌混合し得られた溶液に、精製水324 gに酸化チタン27.0 g及び黄色三二酸化鉄2.16 gを投入し超音波分散させた液を投入し攪拌混合する。
コーティング液II
精製水1036.8 gに、ヒプロメロース87.5 g、トリアセチン16.2 gを投入し、溶解するまで撹拌混合し、得られた溶液に、精製水259.2 gに酸化チタン4.3 g及び黄色三二酸化鉄1.62 gを投入し超音波分散させた液を投入し,攪拌混合する。
(実施例4)
(安定性試験1)
実施例3で得られた製剤に関し、安定化剤の種類と量代え、40℃75%RH1週間の保存安定性試験を行った。比較製剤として、市販製剤及びステアリン酸Caを用いた。
その結果を表4及び5に示す。
ケトン体及びラクトン体の量は以下のHPLC条件で測定した。
HPLC条件
・試料溶液(5mg錠):錠剤3錠を取り、アセトニトリル/水混液(1:3)22mlを加える。
・カラム:内径3.0 mm,長さ15cmのステンレス管に3μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充填する。
・カラム温度:40℃
・移動相
移動相A:1%v/vトリフルオロ酢酸水溶液:アセトニトリル:水=1:29:70
移動相B:1%v/vトリフルオロ酢酸水溶液:アセトニトリル:水=1:75:24
【0024】
【表4】
【0025】
・流速:0.75ml/min(ロスバスタチンカルシウムの保持時間が約25分)
・測定波長:242nm
・RRt:ラクトン体 約1,7、ケトン体 約1.5
・含有率の計算方法
それぞれの類縁物質に関して、標準溶液のロスバスタチンを基準とする。
ケトン体は、求めたピーク面積に2.1を乗じた値とする。
(ケトン体の生成量)
【0026】
【表5】
【0027】
(ラクトン体の生成量)
【0028】
【表6】
【0029】
(試験結果)
安定化剤として乳酸カルシウムを使用した本発明製剤は、安定化剤なし、比較製剤に比べ、類縁物質であるケトン体及びラクトン体の生成が少なかった。
(参考例1)
(安定性試験2)
実施例1で得られた素錠に関し、安定化剤の種類を代え、40℃75%RH、1週間、1ヶ月の保存安定性試験を行った。
その結果を表4及び5に示す。
(ケトン体の生成量)
【0030】
【表7】
【0031】
(ラクトン体の生成量)
【0032】
【表8】
【0033】
(試験結果)
炭酸水素ナトリウムは保存安定性試験において、ケトン体及びラクトン体の生成も抑制され、良好な保存安定性を示した。
炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、メグルミンはopenで錠剤が壊れやすいことが明らかになった。
(実施例5)
1錠中、ロスバスタチンカルシウム2.5mg含有する錠剤(素錠)
実施例1と同様にして表8記載の錠剤を製造できる。
【0034】
【表9】
【0035】
(実施例6)
1錠中、ロスバスタチンカルシウム2.5mg含有する錠剤(素錠)
実施例1と同様にして表10記載の錠剤を製造できる。
【0036】
【表10】
【0037】
(実施例7)
タルクを0.36mg、PEG−6000を0.9mg含有し、ヒプロメロース、酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄の量を変化させ合計9mgのフィルコーティング層(1層)を有するフィルコーティング錠(235mg)を製造し、これにレーザー照射によるマーキングを行った。
レーザー照射は、レーザー照射装置(クオリカプス社性、UVレーザーマーキング装置LIS―250)を用い、レーザー波長355nm、平均出力3.0W〜3.5W、周波数30kHz、パルスエナジー30%、エキスパンダ位置11〜13.0mmの照射条件で行った。
【0038】
(測定結果)
図1からコーティング層中の酸化チタンの量が1%、3%の時、鮮明なマーキングが得られることが明らかになった。さらに、0.56%の三二酸化鉄または0.56%の黄色三二酸化鉄を含有していても酸化チタンの量が3%の場合、鮮明なマーキングが得られることが明らかになった。
(実施例8)
タルクを0.36mg、PEG−6000を0.9mg含有し、ヒプロメロースと酸化チタンの量を変化させ合計9mgのフィルコーティング層(1層)を有するフィルコーティング錠(235mg)を製造し、これにレーザー照射によるマーキングを行った。
レーザー照射条件は実施例7と同じ。
【0039】
(測定結果)
図2からコーティング層中の酸化チタンの量が1%、3%の時、鮮明なマーキングが得られることが明らかになった。
(実施例9)
素錠(乳糖98.8%、ステアリン酸マグネシウム1.2%含有)に、表11記載の添加剤を含有するアンダーコーティングと表12記載の添加剤を含有するオーバーコーティングを施したフィルムコーティング錠を製造し、これにレーザー照射によるマーキングを行った。レーザー照射条件は実施例7と同じ。
【0040】
【表11】
【0041】
【表12】
【0042】
A:
図3の錠剤において、1.5%黄色三二酸化鉄 4%酸化チタンと表記
B:
図3の錠剤において、1.8%黄色三二酸化鉄 4%酸化チタンと表記
C:
図3の錠剤において、1.8%黄色三二酸化鉄 8%酸化チタンと表記
D:
図3の錠剤において、1.8%黄色三二酸化鉄 1%酸化チタンと表記
【0043】
(測定結果)
図3から明らかなように本発明のレーザー照射によるマーキング方法により、有効成分を含有するフィルムコーティング錠(フィルム層が2層)の錠剤表面に、レーザー照射により鮮明なマーキングが得られた。
(実施例10)
ロスバスタチンを含有する素錠に酸化チタン、黄色三二酸化鉄を含有するフィルムコーティングを施したフィルムコーティング錠の錠剤表面に、1回、2回レーザー照射を行い、照射回数によるマーキングを観察した。レーザー照射条件は照射回数を以外は実施例7と同じ。
1) フィルム層中、0.8%三二酸化鉄含有製剤
素錠部
【0044】
【表13】
【0045】
フィルム層
【0046】
【表14】
【0047】
2) フィルム層中、1.2%三二酸化鉄含有製剤
素錠部
【0048】
【表15】
【0049】
フィルム層
【0050】
【表16】
【0051】
(測定結果)
図4から明らかなようにフィルムコーティング錠に1回レーザー照射した場合に比べ、2回レーザー照射した場合はより鮮明なマーキングが得られた。
(実施例11)
実施例3記載のロスバスタチンカルシウムのフィルムコーティング錠の錠剤表面に、実施例7記載のレーザー照射条件でレーザー照射でマーキングを行うことで、鮮明なマーキングが得られる。
従って、実施例3記載のロスバスタチンカルシウムのフィルムコーティング錠は、製造時及び保存時に類縁物質の生成が抑制でき、しかも優れた光安定性を有し、更にレーザー照射でマーキングを行うことで、鮮明なマーキングが得られる。
【0052】
(実施例12)
ロスバスタチンを含有する素錠に酸化チタンの含有量が10,20,30%含有する1層のコーティング層を有する錠剤と、2層のコーティング層を有する錠剤について、光安定性試験を行った。
1.試験製剤
素錠部は表15と同じ。
A:フィルム層が1層のフィルム層の処方
【0053】
【表17】
【0054】
B;フィルム層が2層のフィルム層の処方
【0055】
【表18】
【0056】
(測定結果)
表17及び表18記載の錠剤について、120万lux・hr曝露後の類縁物質量(RT41.3)を測定した。
類縁物質量は実施例4記載のHPLC条件(RRt:約1,5)で同様な方法で行った。
その試験結果を表19に示す。
【0057】
【表19】
【0058】
表中の数字は光分解物量(RT41.3)を示す。(単位は%)
表19から明らかなように1層で酸化チタンの含量が10%の場合、120万lux・hr曝光後の類縁物質の量が多く、1層で酸化チタンの含量が30%及び2層の場合、類縁物質の量は少なかった。
また、上記の錠剤についてレーザー印字を行ったところ1層で酸化チタンの含量が10%の場合、印刷は薄く、一方、2層は鮮明な印字が得られる。
また、フィルム層の量が1.5mg(素錠は75mg 表15と同じ)の1層のフィルムコーティング錠について、光安定性試験を実施したところ、開始時の光分解物量は、開始時が0.035であったが、120万lux・hrs曝光後は0.562と光遮光効果が低いことが明らかになった。
【0059】
(実施例13) 可塑剤の検討
A:配合変化試験
ロスバスタチン(以下、原薬ということもある)とPEG6000及びHPCとの配合変化試験(ラクトン体)を行い、結果を表20に示す。
試験は、4.5gの原薬と4.5gの可塑剤を乳鉢で混ぜて試験を行った。
加速試験は40℃75%で行った。
ラクトン量は、実施例4記載のHPLC条件と同様な方法で測定した。
【0060】
【表20】
【0061】
表中の数字はラクトン体の生成量を示す。(単位は%)
表20から、ロスバスタチンは、PEG6000により配合変化を起こすことが明らかになった。特に60℃、4週間では、HPCでは僅かに配合変化を起こすが、PEGは著しく分解物量が増大した。
B:フィルム処方の検討(ケト体の生成量)
素錠中にロスバスタチンを含有し、フィルムコーティング層中に可塑剤として、トリアセチン、PEGを含む1層錠と2層錠について、加速試験を行った。
素錠は表15記載のものを使用し、フィルム層の1層錠(トリアセチン)のフィルムコーティング層は表16記載のものを使用し、PEGはトリアセチンに代えて製造した。2層錠のフィルムコーティング層は、表11及び表12記載のものを使用した。
ケト体量は、実施例4記載のHPLC条件と同様な方法で測定した。
類縁物質(ケト体)を測定し、その結果を表21に示す。
【0062】
【表21】
【0063】
表中の数字はケト体の生成量を示す。(単位は%)
PEGを可塑剤として含むコーティング層を有するフィルムコーティング錠は、加速試験で分解物量(ケト体)が増大した。(表21参照)
一方、トリアセチンを可塑剤として含むコーティング層を有するフィルムコーティング錠、並びに2層錠は2週間後の分解物量の増加量は極めて少量であった。
C:フィルム処方の検討(ラクトン体の生成量)
素錠中にロスバスタチンを含有し、フィルムコーティング層中に可塑剤として、トリアセチン、PEGを含む1層錠と2層錠について、加速試験を行った。
素錠は表15記載のものを使用し、フィルム層の1層錠(トリアセチン)のフィルムコーティング層は表16記載のものを使用し、PEGはトリアセチンに代えて製造した。2層錠のフィルムコーティング層は、表11及び表12記載のものを使用した。
ラクトン量は、実施例4記載のHPLC条件と同様な方法で測定した。
類縁物質(ラクトン体)を測定し、その結果を表22に示す。
【0064】
【表22】
【0065】
表中の数字はラクトン体の生成量を示す。(単位は%)
表22からPEGを可塑剤として含むコーティング層を有するフィルムコーティング錠は、加速試験で分解物量(ラクトン体)が増大した。
一方、トリアセチンを可塑剤として含むコーティング層を有するフィルムコーティング錠、並びに2層錠は2週間後の分解物量の増加量は極めて少量であった。
上記のA,B,Cからロスバスタチン原薬はPEGと配合変化を起こし、またPEGを可塑剤として含有するフィルムコーティング錠は加速試験で分解物量が増大した。
一方、トリアセチンを可塑剤として含むコーティング層を有するフィルムコーティング錠、並びに2層錠は加速試験で比較的安定であった。