(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態では、時計として、アナログクォーツ式の時計を一例として説明する。
一般に、時計の駆動部分を含む機械体を「ムーブメント」と称する。このムーブメントに文字板、指針を取り付けて、時計ケースの中に入れて完成品にした状態を時計の「コンプリート」と称する。
時計の基板を構成する地板の両側のうち、時計ケースのガラスのある方の側、すなわち、文字板のある方の側をムーブメントの「裏側」と称する。また、地板の両側のうち、時計ケースのケース裏蓋のある方の側、すなわち、文字板と反対の側をムーブメントの「表側」と称する。
【0027】
図1は、実施形態に係る時計の外観図であって、10時8分0秒を示している。
図1に示すように、時計1のコンプリートは、ケース裏蓋(不図示)およびガラス2からなる時計ケース3の内側に、ムーブメント10、文字板11、時針12、分針13を備えている。さらに、ムーブメント10は、初期位置と終端位置との間を秒針(第1小秒針16A〜第6小秒針16F(指示部))が往復移動して秒に関する時間情報を表示する6個の秒表示部15(表示部)と、第1小秒針16A〜第6小秒針16Fを移動(運針)させるレトログラード機構24(
図2参照)と、を有する表示機構22備えている。
【0028】
文字板11は、時分に関する情報を示す目盛りと、各秒表示部15に対応して設けられた秒に関する情報を示す目盛りと、を有する。各秒表示部15の目盛りは、それぞれ時針12および分針13の回転方向に沿うように11個並んで配置されている。各秒表示部15の各小秒針16A〜16Fは、初期位置において各秒表示部15の目盛りのうち前記回転方向最上流に位置する目盛りを指し、終端位置において各秒表示部15の目盛りのうち前記回転方向最下流に位置する目盛りを指す。第1小秒針16Aは、毎分1秒から10秒の間で初期位置から終端位置へ向けて移動(以下、「正転移動」という。)して時間を表示する。第2小秒針16Bは、毎分10秒から20秒の間で正転移動して時間を表示する。第3小秒針16Cは、毎分20秒から30秒の間で正転移動して時間を表示する。第4小秒針16Dは、毎分30秒から40秒の間で正転移動して時間を表示する。第5小秒針16Eは、毎分40秒から50秒の間で正転移動して時間を表示する。第6小秒針16Fは、毎分50秒から60秒の間で正転移動して時間を表示する。
【0029】
図2は、実施形態に係るムーブメントの断面図である。
図2に示すように、ムーブメント10は、地板20と、地板20の表側に配置された第1輪列受28と、地板20の裏側に配置された第2輪列受29と、を備える。第2輪列受29の裏側には、上述した文字板11がガラス2(いずれも
図1参照)を通じて視認可能に配置される。
第2輪列受29の表側には、電池4や水晶ユニット(不図示)、回路基板(不図示)、ステップモータ35(駆動源)、輪列機構23等が配設される。
【0030】
水晶ユニット(不図示)は、内部に所定の周波数で発振する水晶振動子を有するとともに、上述した回路基板に接続される。
電池4は、そのプラス極と回路基板のプラスパターンとが電池プラス端子(不図示)を介して導通し、マイナス極と回路基板のマイナスパターンとが電池マイナス端子(不図示)を介して導通する。
回路基板は、例えばCMOS、またはPLAで構成されており、水晶振動子の振動に基づいて基準信号を出力する発振部(オシレータ)と、この発振部の出力信号を分周する分周部(デバイダ)と、分周部の出力信号に基づいてステップモータ35を駆動するモータ駆動信号を出力する駆動部(ドライバ)と、を内部に有する。
【0031】
ステップモータ35は、コイルブロック30と、コイルブロック30の磁心に接触するように配置されたステータ31と、このステータ31のロータ穴31a内に配置され、ロータ磁石32aが組み込まれたロータ32と、を備える。
【0032】
ロータ32は、地板20および第1輪列受28に対して回転可能に支持されている。すなわち、ロータ32の上軸部32bが第1輪列受28の軸受部に軸支され、ロータ32の下軸部32cが地板20の軸受部に軸支されている。
ロータ32は、1秒ごとに1ステップ(本実施形態では180°)回転するようになっており、ロータかな32dを介して後述する五番車40に回転力を付与する。
【0033】
輪列機構23は、ロータ32の回転に基づいて回転する五番車40と、五番車40の回転に基づいて回転する四番車41と、四番車41の回転に基づいて回転する三番車42と、三番車42の回転に基づいて回転する二番車43と、二番車43の回転に基づいて回転する図示しない日の裏車と、日の裏車の回転に基づいて回転する筒車44と、五番車40の回転に基づいて回転する秒中間車45と、秒中間車45の回転に基づいて回転する秒伝達車50と、を備える。
【0034】
五番車40は、五番歯車40a、五番上かな40bおよび五番下かな40cを有している。五番車40は、地板20および第1輪列受28に対して回転可能に支持されている。五番上かな40b、五番歯車40aおよび五番下かな40cは、表側から裏側に向けて順に配設されている。五番歯車40aは、ロータ32のロータかな32dに噛み合っている。これにより、五番車40はロータ32の回転に伴って回転する。
【0035】
四番車41は、五番車40と三番車42との間に配置され、地板20および第1輪列受28に対して回転可能に支持されている。四番車41は、60秒に1回転するように構成されている。
三番車42は、四番車41と二番車43との間に配置され、地板20および第1輪列受28に対して回転可能に支持されている。
【0036】
二番車43は、車軸60を有している。車軸60は、中心軸O(第1軸)と同軸となるように延びるとともに、中心パイプ25内に回転可能に挿通されている。中心パイプ25は、中心軸Oと同軸となるように延びるとともに、地板20に保持されている。車軸60の上端部60aは、第1輪列受28に配設されたほぞ枠63に軸支されている。車軸60の下端部60bは、中心パイプ25よりも下方に突出している。車軸60の下端部60bには、分針13が取り付けられている。二番車43は、60分に1回転するように構成されている。
なお、以下の説明では、中心軸Oに沿う方向を軸方向といい、中心軸Oと直交する方向を径方向といい、中心軸O周りに周回する方向を周方向(所定方向)という。また、周方向のうち、中心軸O周りに時計回りに周回する方向をCW方向といい、中心軸O周りに反時計回りに周回する方向をCCW方向という。
【0037】
筒車44は、二番車43の中心軸Oと同軸となるように配置され、中心パイプ25に回転可能に外挿されている。筒車44は、日の裏車(不図示)等を介して二番車43に噛み合う筒歯車44aを有する。筒車44の下端部には、時針12が取り付けられている。筒車44は、12時間に1回転するように構成されている。なお、時針12は、分針13よりも文字板11(
図1参照)側に位置する。
【0038】
秒中間車45は、五番車40と秒伝達車50との間に配置され、地板20の裏側において地板20に回転可能に支持されている。秒中間車45は、秒中間歯車45aを有している。秒中間歯車45aは、五番車40の五番下かな40cに噛み合っている。これにより、秒中間車45は、五番車40の回転に伴って回転する。
【0039】
秒伝達車50は、二番車43の中心軸Oと同軸となるように配置され、筒車44に回転可能に外挿されている。秒伝達車50は、一体に形成された秒伝達歯車50aおよび秒駆動カム51(カム)を有している。秒伝達歯車50aは、秒中間車45の秒中間歯車45aに噛み合っている。これにより、秒伝達車50は、ステップモータ35に連結され、秒中間車45の回転に伴ってCW方向に回転する。秒伝達車50は、60秒に1回転するように構成されている。
【0040】
ここで、レトログラード機構24は、上述した秒駆動カム51と、秒駆動カム51の周囲に配置された第1小秒車71〜第6小秒車76と、秒駆動カム51と各小秒車71〜76との間に配置されたレバー(第1レバー81〜第6レバー86)と、を備えている。以下、レトログラード機構24について詳述する。
【0041】
図3は、実施形態に係るムーブメントを裏側から見た平面図であって、
図1に対応する状態を示している。
図4は、実施形態に係る秒伝達車を裏側から見た斜視図である。
図3および
図4に示すように、秒駆動カム51は、軸方向から見て周方向に沿う円弧状の外周縁を一部に備える板状に形成されている。秒駆動カム51は、軸方向における同じ厚さを有する第1カム部54から第6カム部59を備え、各カム部54〜59が軸方向表側から裏側に向けて順に一体的に積層された構成とされている。以下、各カム部54〜59について説明する。
【0042】
図4に示すように、第1カム部54は、第1作動面54aと、第1保持面54bと、第1段差面54cと、により構成された外周面を備えている。第1作動面54aは、CW方向下流側から上流側に向かって中心軸Oからの距離(半径)が大きくなるように形成されている。周方向における第1作動面54aの両端部間の中心角は、60°程度となっている。第1保持面54bは、第1作動面54aよりもCW方向上流側に設けられ、第1作動面54aのCW方向上流側の端部と連なっている。第1保持面54bは、中心軸Oからの距離が一定となるように形成されている。周方向における第1保持面54bの両端部間の中心角は、300°程度となっている。第1段差面54cは、第1作動面54aのCW方向下流側の端部、および第1保持面54bのCW方向上流側の端部と連なっている。第1段差面54cは、径方向に沿うように延びている。本実施形態では、第1段差面54cは、軸方向から見てCW方向に向かって僅かに窪むように湾曲している。
【0043】
第2カム部55は、第2作動面55aと、第2保持面55bと、第2段差面55cと、第2退避面55dと、により構成された外周面を備えている。第2作動面55aは、軸方向から見て第1カム部54の第1作動面54aと一致するように形成されている。第2保持面55bは、第2作動面55aよりもCW方向上流側に設けられ、第2作動面55aのCW方向上流側の端部と連なっている。第2保持面55bは、中心軸Oからの距離が一定となるように形成されている。周方向における第2保持面55bの両端部間の中心角は、240°程度となっている。第2段差面55cは、第2保持面55bのCW方向上流側の端部から径方向内側に向かって、径方向に沿うように延びている。第2段差面55cの径方向内側の端部は、第2作動面55aのCW方向下流側の端部と径方向における同じ位置に形成されている。本実施形態では、第2段差面55cは、第1カム部54の第1段差面54cと同一形状に形成されている。第2退避面55dは、第2作動面55aのCW方向下流側の端部、および第2段差面55cの径方向内側の端部と連なり、周方向に沿って延びている。
【0044】
第3カム部56は、第3作動面56aと、第3保持面56bと、第3段差面56cと、第3退避面56dと、により構成された外周面を備えている。第3作動面56aは、軸方向から見て第1カム部54の第1作動面54aと一致するように形成されている。第3保持面56bは、第3作動面56aよりもCW方向上流側に設けられ、第3作動面56aのCW方向上流側の端部と連なっている。第3保持面56bは、中心軸Oからの距離が一定となるように形成されている。周方向における第3保持面56bの両端部間の中心角は、180°程度となっている。第3段差面56cは、第3保持面56bのCW方向上流側の端部から径方向内側に向かって、径方向に沿うように延びている。第3段差面56cの径方向内側の端部は、第3作動面56aのCW方向下流側の端部と径方向における同じ位置に形成されている。本実施形態では、第3段差面56cは、第1カム部54の第1段差面54cと同一形状に形成されている。第3退避面56dは、第3作動面56aのCW方向下流側の端部、および第3段差面56cの径方向内側の端部と連なり、周方向に沿って延びている。
【0045】
第4カム部57は、第4作動面57aと、第4保持面57bと、第4段差面57cと、第4退避面57dと、により構成された外周面を備えている。第4作動面57aは、軸方向から見て第1カム部54の第1作動面54aと一致するように形成されている。第4保持面57bは、第4作動面57aよりもCW方向上流側に設けられ、第4作動面57aのCW方向上流側の端部と連なっている。第4保持面57bは、中心軸Oからの距離が一定となるように形成されている。周方向における第4保持面57bの両端部間の中心角は、120°程度となっている。第4段差面57cは、第4保持面57bのCW方向上流側の端部から径方向内側に向かって、径方向に沿うように延びている。第4段差面57cの径方向内側の端部は、第4作動面57aのCW方向下流側の端部と径方向における同じ位置に形成されている。本実施形態では、第4段差面57cは、第1カム部54の第1段差面54cと同一形状に形成されている。第4退避面57dは、第4作動面57aのCW方向下流側の端部、および第4段差面57cの径方向内側の端部と連なり、周方向に沿って延びている。
【0046】
第5カム部58は、第5作動面58aと、第5保持面58bと、第5段差面58cと、第5退避面58dと、により構成された外周面を備えている。第5作動面58aは、軸方向から見て第1カム部54の第1作動面54aと一致するように形成されている。第5保持面58bは、第5作動面58aよりもCW方向上流側に設けられ、第5作動面58aのCW方向上流側の端部と連なっている。第5保持面58bは、中心軸Oからの距離が一定となるように形成されている。周方向における第5保持面58bの両端部間の中心角は、60°程度となっている。第5段差面58cは、第5保持面58bのCW方向上流側の端部から径方向内側に向かって、径方向に沿うように延びている。第5段差面58cの径方向内側の端部は、第5作動面58aのCW方向下流側の端部と径方向における同じ位置に形成されている。本実施形態では、第5段差面58cは、第1カム部54の第1段差面54cと同一形状に形成されている。第5退避面58dは、第5作動面58aのCW方向下流側の端部、および第5段差面58cの径方向内側の端部と連なり、周方向に沿って延びている。
【0047】
第6カム部59は、第6作動面59aと、第6段差面59cと、第6退避面59dと、により構成された外周面を備えている。第6作動面59aは、軸方向から見て第1カム部54の第1作動面54aと一致するように形成されている。第6段差面59cは、第6作動面59aのCW方向上流側の端部から径方向内側に向かって、径方向に沿うように延びている。第6段差面59cの径方向内側の端部は、第6作動面59aのCW方向下流側の端部と径方向における同じ位置に形成されている。本実施形態では、第6段差面59cは、第1カム部54の第1段差面54cと同一形状に形成されている。第6退避面59dは、第6作動面59aのCW方向下流側の端部、および第6段差面59cの径方向内側の端部と連なり、周方向に沿って延びている。
【0048】
図3に示すように、第1小秒車71〜第6小秒車76は、軸方向から見た秒伝達車50の周囲において、CW方向にこの順で等間隔に配置されている。
第1小秒車71は、中心軸Oから見て文字板11の1時を示す位置に設けられている。
図2に示すように、第1小秒車71は、第1小秒かな71a、第1小秒上軸部71bおよび第1小秒下軸部71cを有している。第1小秒車71は、第1小秒上軸部71bが地板20に軸支され、第1小秒下軸部71cが第2輪列受29に軸支されることで、軸方向に沿う軸回りに回動可能に支持されている。第1小秒下軸部71cは、第2輪列受29よりも下方に突出している。第1小秒下軸部71cの先端部には、第1小秒針16Aが取り付けられている。
【0049】
図3に示すように、第1小秒車71には、第1復針ばね77A(付勢部材)が取り付けられている。第1復針ばね77Aは、ぜんまいばねであって、中心側の一端部が第1小秒車71に固定されるとともに、外周側の他端部が地板20に固定されている。第1復針ばね77Aは、第1小秒車71を裏側から見て反時計回りに付勢している。
【0050】
図2および
図3に示すように、第2小秒車72〜第6小秒車76は、それぞれ第1小秒車71と同様に構成され、小秒かな(第2小秒かな72a〜第6小秒かな76a)、小秒上軸部(第2小秒上軸部〜第5小秒上軸部(不図示)、第6小秒上軸部76b)、および小秒下軸部(第2小秒下軸部72c〜第6小秒下軸部76c)を有している。各小秒下軸部72c〜76cの先端部には、それぞれ小秒針(第2小秒針16B〜第6小秒針16F)が取り付けられている。各小秒車72〜76は、第1小秒車71と同様に、復針ばね(第2復針ばね77B〜第2復針ばね77F(付勢部材))により裏側から見て反時計回りに付勢されている。
【0051】
図3に示すように、第1レバー81〜第6レバー86は、中心軸Oとは異なる軸回りに回動可能に支持され、各小秒針16A〜16Fに各別に連結されている。各レバー81〜86は、CW方向にこの順で等間隔に配置され、秒駆動カム51の外周面に接触可能に設けられている。
【0052】
第1レバー81は、軸方向に厚みを有する板状に形成されている。第1レバー81は、秒伝達車50の第1カム部54よりも薄く形成され、軸方向において第1カム部54と同じ位置に配置されている。第1レバー81は、第1レバー回動軸P1回りに回動可能に支持されている。第1レバー回動軸P1は、軸方向から見て秒伝達車50よりも径方向の外側に位置している。第1レバー81は、軸方向から見て扇状に形成された本体部81aと、本体部81aからCW方向に向かって延びる従節81bと、本体部81aの基端部からCCW方向に向かって延びる規制部81cと、を備えている。本体部81aの基端部には、軸部81dが圧入されている。軸部81dは、第1レバー回動軸P1と同軸に配置され、軸方向両端部において地板20および第2輪列受29に軸支されている。
【0053】
本体部81aの外周面には、歯部81eが形成されている。歯部81eには、第1小秒車71の第1小秒かな71aが噛み合っている。ここで、第1小秒車71は、第1復針ばね77Aにより裏側から見て反時計回り側に向けて付勢されている。このため、第1レバー81は、第1小秒車71が第1復針ばね77Aにより付勢されることで、裏側から見て第1レバー回動軸P1回りに時計回りに付勢されている。
【0054】
従節81bの先端部には、径方向の内側に向かって突出する爪部81fが形成されている。爪部81fは、秒駆動カム51のうち、第1カム部54の外周面に摺接可能に設けられている。爪部81fは、第1カム部54の第1作動面54aおよび第1保持面54bに摺接する。爪部81fは、第1小秒車71に取り付けられた第1小秒針16Aが終端位置(
図1に示す位置)に位置する状態で、第1保持面54bに摺接するように形成されている。
【0055】
規制部81cは、裏側から見て第1レバー81が第1レバー回動軸P1回りに時計回りに回転したとき、第1位置決めピン87Aに当接可能とされている。第1位置決めピン87Aは、地板20から裏側に向けて立設されている。規制部81cは、爪部81fが第1カム部54の第1作動面54aおよび第1保持面54bに摺接するとき、第1位置決めピン87Aから離間している。規制部81cは、第1小秒車71に取り付けられた第1小秒針16Aが初期位置に位置する状態で、第1位置決めピン87Aに当接するように形成されている。
【0056】
第2レバー82〜第6レバー86は、それぞれ第1レバー81と同様に構成され、軸方向から見て秒伝達車50よりも径方向の外側に位置する回動軸(第2レバー回動軸P2〜第6レバー回動軸P6)回りにそれぞれ回動可能に支持されている。各レバー82〜86は、本体部(本体部82a〜86a)と、従節(従節82b〜86b)と、規制部(規制部82c〜86c)と、を備えている。各本体部82a〜86aの基端部には、軸部(軸部82d〜86d)が圧入されている。各軸部82d〜86dは、各レバー回動軸P2〜P6と同軸に配置され、軸方向両端部において地板20および第2輪列受29に軸支されている。各本体部82a〜86aの外周面には、歯部(歯部82e〜86e)が形成されている。各歯部82e〜86eには、各小秒車72〜76の小秒かな72a〜76aが噛み合っている。各従節82b〜86bの先端部には、径方向の内側に向かって突出する爪部(爪部82f〜86f)が形成されている。
【0057】
第2レバー82は、軸方向において第2カム部55と同じ位置に配置されている。第2レバー82は、第2復針ばね77Bにより裏側から見て第2レバー回動軸P2回りに時計回りに付勢されている。爪部82fは、第2カム部55の第2作動面55aおよび第2保持面55bに摺接する。爪部82fは、第2小秒車72に取り付けられた第2小秒針16Bが終端位置(
図1に示す位置)に位置する状態で、第2保持面55bに摺接するように形成されている。
【0058】
第2レバー82の規制部82cは、第2レバー82が裏側から見て第2レバー回動軸P2回りに時計回りに回転したとき、第2位置決めピン87Bに当接可能とされている。第2位置決めピン87Bは、地板20から裏側に向けて立設されている。規制部82cは、爪部82fが第2カム部55の第2作動面55aおよび第2保持面55bに摺接するとき、第2位置決めピン87Bから離間している。規制部82cは、爪部82fが第2カム部55の第2退避面55dから僅かに離間し、かつ第2小秒車72に取り付けられた第2小秒針16Bが初期位置(
図5に示す位置)に位置する状態で、第2位置決めピン87Bに当接するように形成されている。
【0059】
第3レバー83は、軸方向において第3カム部56と同じ位置に配置されている。第3レバー83は、第3復針ばね77Cにより裏側から見て第3レバー回動軸P3回りに時計回りに付勢されている。爪部83fは、第3カム部56の第3作動面56aおよび第3保持面56bに摺接する。爪部83fは、第3小秒車73に取り付けられた第3小秒針16Cが終端位置(
図1に示す位置)に位置する状態で、第3保持面56bに摺接するように形成されている。
【0060】
第3レバー83の規制部83cは、第3レバー83が裏側から見て第3レバー回動軸P3回りに時計回りに回転したとき、第3位置決めピン87Cに当接可能とされている。第3位置決めピン87Cは、地板20から裏側に向けて立設されている。規制部83cは、爪部83fが第3カム部56の第3作動面56aおよび第3保持面56bに摺接するとき、第3位置決めピン87Cから離間している。規制部83cは、爪部83fが第3カム部56の第3退避面56dから僅かに離間し、かつ第3小秒車73に取り付けられた第3小秒針16Cが初期位置(
図5に示す位置)に位置する状態で、第3位置決めピン87Cに当接するように形成されている。
【0061】
第4レバー84は、軸方向において第4カム部57と同じ位置に配置されている。第4レバー84は、第4復針ばね77Dにより裏側から見て第4レバー回動軸P4回りに時計回りに付勢されている。爪部84fは、第4カム部57の第4作動面57aおよび第4保持面57bに摺接する。爪部84fは、第4小秒車74に取り付けられた第4小秒針16Dが終端位置(
図1に示す位置)に位置する状態で、第4保持面57bに摺接するように形成されている。
【0062】
第4レバー84の規制部84cは、第4レバー84が裏側から見て第4レバー回動軸P4回りに時計回りに回転したとき、第4位置決めピン87Dに当接可能とされている。第4位置決めピン87Dは、地板20から裏側に向けて立設されている。規制部84cは、爪部84fが第4カム部57の第4作動面57aおよび第4保持面57bに摺接するとき、第4位置決めピン87Dから離間している。規制部84cは、爪部84fが第4カム部57の第4退避面57dから僅かに離間し、かつ第4小秒車74に取り付けられた第4小秒針16Dが初期位置(
図5に示す位置)に位置する状態で、第4位置決めピン87Dに当接するように形成されている。
【0063】
第5レバー85は、軸方向において第5カム部58と同じ位置に配置されている。第5レバー85は、第5復針ばね77Eにより裏側から見て第5レバー回動軸P5回りに時計回りに付勢されている。爪部85fは、第5カム部58の第5作動面58aおよび第5保持面58bに摺接する。爪部85fは、第5小秒車75に取り付けられた第5小秒針16Eが終端位置(
図1に示す位置)に位置する状態で、第5保持面58bに摺接するように形成されている。
【0064】
第5レバー85の規制部85cは、第5レバー85が裏側から見て第5レバー回動軸P5回りに時計回りに回転したとき、第5位置決めピン87Eに当接可能とされている。第5位置決めピン87Eは、地板20から裏側に向けて立設されている。規制部85cは、爪部85fが第5カム部58の第5作動面58aおよび第5保持面58bに摺接するとき、第5位置決めピン87Eから離間している。規制部85cは、爪部85fが第5カム部58の第5退避面58dから僅かに離間し、かつ第5小秒車75に取り付けられた第5小秒針16Eが初期位置(
図5に示す位置)に位置する状態で、第5位置決めピン87Eに当接するように形成されている。
【0065】
第6レバー86は、軸方向において第6カム部59と同じ位置に配置されている。第6レバー86は、第6復針ばね77Fにより裏側から見て第6レバー回動軸P6回りに時計回りに付勢されている。爪部86fは、第6カム部59の第6作動面59aに摺接する。爪部86fは、第6小秒車76に取り付けられた第6小秒針16Fが終端位置(
図1に示す位置)に位置する状態で、第6作動面59aのCW方向上流側の端部に摺接するように形成されている。
【0066】
第6レバー86の規制部86cは、第6レバー86が裏側から見て第6レバー回動軸P6回りに時計回りに回転したとき、第6位置決めピン87Fに当接可能とされている。第6位置決めピン87Fは、地板20から裏側に向けて立設されている。規制部86cは、爪部86fが第6カム部59の第6作動面59aに摺接するとき、第6位置決めピン87Fから離間している。規制部86cは、爪部86fが第6カム部59の第6退避面59dから僅かに離間し、かつ第6小秒車76に取り付けられた第6小秒針16Fが初期位置(
図5に示す位置)に位置する状態で、第6位置決めピン87Fに当接するように形成されている。
【0067】
以下、本実施形態の時計1の動作について説明する。以下の説明では、10時8分0秒を経過した後、10時9分1秒までの間の動作について説明する。
図3に示すように、10時8分0秒〜1秒の間には、第1レバー81〜第5レバー85の爪部81f〜85fは、第1保持面54b〜第5保持面58bのCW方向上流側の端部に摺接している。また、第6レバー86の爪部86fは、第6作動面59aのCW方向上流側の端部に摺接している。各復針ばね77A〜77Fにより付勢された各レバー81〜86は、第1保持面54b〜第5保持面58b、または第6作動面59aにより径方向内側への変位が規制されている。
【0068】
図5は、実施形態に係る時計の外観図であって、10時8分1秒を示している。
図6は、実施形態に係るムーブメントを裏側から見た平面図であって、
図5に対応する状態を示している。
図3に示す状態から、
図6に示すように、秒伝達車50がCW方向に回転し、10時8分1秒〜2秒の間となると、第1レバー81〜第5レバー85の爪部81f〜85fは、第1段差面54c〜第5段差面58cを通過して、第1保持面54b〜第5保持面58bから離間する。また、第6レバー86の爪部86fは、第6段差面59cを通過して、第6作動面59aから離間する。各レバー81〜86は、径方向内側へ向けて変位する。このとき、各レバー81〜86の歯部81e〜86eと噛み合う各小秒車71〜76は反時計回りに回動し、各小秒車71〜76に取り付けられた各小秒針16A〜16Fは、終端位置から初期位置へ向けて一斉に移動(帰零)する。
【0069】
上述した10時8分1秒〜2秒の間には、第1レバー81の爪部81fは、第1作動面54aのCW方向下流側の端部に摺接している。また、第1レバー81に連結された第1小秒針16Aは、1秒を示す位置に位置している(
図5参照)。第2レバー82〜第6レバー86の規制部82c〜86cは、各位置決めピン87B〜87Fに当接している。第2レバー82〜第6レバー86の爪部82f〜86fは、第2退避面55d〜第6退避面59dから僅かに離間している。第2レバー82〜第6レバー86に連結された第2小秒針16B〜第6小秒針16Fは、初期位置に位置している(
図5参照)。
【0070】
図7は、実施形態に係る時計の外観図であって、10時8分10秒を示している。
図8は、実施形態に係るムーブメントを裏側から見た平面図であって、
図7に対応する状態を示している。
図6に示す状態から、
図8に示すように、秒伝達車50がCW方向に回転し、10時8分10秒を経過すると、第1レバー81の爪部81fは、第1作動面54aのCW方向上流側の端部に摺接する。また、第1レバー81に連結された第1小秒針16Aは、終端位置に位置している(
図7参照)。第2レバー82〜第6レバー86は、規制部82c〜86cが各位置決めピン87B〜87Fに当接した状態を維持している。
【0071】
図9は、実施形態に係る時計の外観図であって、10時8分11秒を示している。
図10は、実施形態に係るムーブメントを裏側から見た平面図であって、
図9に対応する状態を示している。
図8に示す状態から、
図10に示すように、秒伝達車50がCW方向に回転し、10時8分11秒〜12秒の間となると、第1レバー81の爪部81fと第1カム部54との接触位置は、第1作動面54aと連なる第1保持面54bに移動する。また、第1レバー81に連結された第1小秒針16Aは、10秒を示す位置に留まっている(
図9参照)。第2レバー82の爪部82fは、第2作動面55aのCW方向側の端部に摺接している。また、第2レバー82に連結された第2小秒針16Bは、初期位置から1目盛り分移動している(
図9参照)。第3レバー83〜第6レバー86は、規制部83c〜86cが各位置決めピン87C〜87Fに当接した状態を維持している。
【0072】
図10に示す状態から秒伝達車50がCW方向にさらに回転し、10時8分20秒を経過すると、第3レバー83の爪部83fが第3作動面56aに摺接し、第3小秒針16Cが正転移動する。第1レバー81の爪部81fは、第1保持面54bに摺接し、第1小秒針16Aが終端位置に留まる。第2レバー82の爪部82fは、第2保持面55bに摺接し、第2小秒針6Bが終端位置に留まる。
10時8分30秒を経過すると、第4レバー84の爪部84fが第4作動面57aに摺接し、第4小秒針16Dが正転移動する。第1レバー81〜第3レバー83の爪部81f〜83fは第1保持面54b〜第3保持面56bに摺接し、第1小秒針16A〜第3小秒針16Cが終端位置に留まる。
【0073】
10時8分40秒を経過すると、第5レバー85の爪部85fが第5作動面58aに摺接し、第5小秒針16Eが正転移動する。第1レバー81〜第4レバー84の爪部81f〜84fは第1保持面54b〜第4保持面57bに摺接し、第1小秒針16A〜第4小秒針16Dが終端位置に留まる。
10時8分50秒を経過すると、第6レバー86の爪部86fが第6作動面59aに摺接し、第6小秒針16Fが正転移動する。第1レバー81〜第5レバー85の爪部81f〜85fは第1保持面54b〜第5保持面58bに摺接し、第1小秒針16A〜第5小秒針16Eが終端位置に留まる。
【0074】
そして、10時9分0秒を経過すると、各小秒針16A〜16Fが全て終端位置に位置する状態となる。続いて、10時9分0秒から10時9分1秒までの間に、各小秒針16A〜16Fは、終端位置から初期位置へ向けて一斉に帰零する。
以上により、第1小秒針16A〜第5小秒針16Eは、第1小秒針16A〜第6小秒針16Fのうち少なくとも1つの小秒針が初期位置から終端位置へ向けて移動する間、終端位置に留まる構成となる。
【0075】
このように、本実施形態では、第1レバー81〜第5レバー85の爪部81f〜85fは、CW方向の下流側から上流側に向かって半径が大きくなるように形成された各作動面54a〜58aと、各作動面54a〜58aよりもCW方向下流側に設けられ、半径が一定となるように形成された各保持面54b〜58bと、に摺接する構成とした。これにより、秒駆動カム51を回転させることで、第1レバー81〜第5レバー85は、爪部81f〜85fが中心軸Oから離間するように回動した後、爪部81f〜85fから中心軸Oまでの距離が一定となる位置に留まる。これにより、第1レバー81〜第5レバー85と連結された第1小秒針16A〜第5小秒針16Eを正転移動後にそのまま終端位置へ留めることができる。そして、第1レバー81〜第5レバー85の爪部81f〜85fは、他のレバー(第2レバー82〜第6レバー86)の爪部82f〜86fのうち少なくとも1つが作動面55a〜59aに摺接しているとき、保持面54b〜58bに摺接しているので、第1レバー81〜第5レバー85と連結された第1小秒針16A〜第5小秒針16Eを終端位置に留めた状態で、他のレバー(第2レバー82〜第6レバー86)と連結された第2小秒針16B〜第6小秒針16Fを正転移動させることができる。しかも、各レバー81〜86の爪部81f〜86fは、秒駆動カム51の外周面において、軸方向における異なる位置に摺接しているので、1つの秒駆動カム51により、複数のレバー81〜86を動作させることができる。
【0076】
そして、本実施形態によれば、一の秒表示部15における小秒針16A〜16F(例えば第1小秒針16A)は、他の秒表示部15のうち少なくとも1つの秒表示部15における小秒針16A〜16F(第2小秒針16B)の正転移動中に、終端位置に留まるので、正転移動中の小秒針と、終端位置に留まる小秒針と、により時間情報を表示することができる。したがって、使用者に秒表示部15が表示する時間を瞬時かつ正確に判別させることができる。
【0077】
また、第2レバー82〜第6レバー86の爪部82f〜86fは、第2レバー82〜第6レバー86が位置決めピン87B〜87Fに接触した状態で、秒駆動カム51から離間している。この構成によれば、第2レバー82〜第6レバー86と連結された各小秒針16B〜16Fが初期位置に位置する状態で、第2レバー82〜第6レバー86の規制部82c〜86cを位置決めピン87B〜87Fに接触させることで、秒駆動カム51に爪部82f〜86fが摺接して回転抵抗が増加することを防止できる。
【0078】
また、各小秒針16A〜16Fが各復針ばね77A〜77Fにより付勢されているので、各レバー81〜86と各小秒針16A〜16Fとの間のバックラッシュ等により各小秒針16A〜16Fがふらつくことを防止できる。したがって、各小秒針16A〜16Fによる時刻表示をより正確に行うことができ、使用者に秒表示部15が表示する時間をより正確に判別させることができる。
【0079】
また、一の秒表示部15における小秒針(第2小秒針16B〜第6小秒針16F)は、CW方向上流側に隣り合って配置された他の秒表示部15における小秒針(第1小秒針16A〜第5小秒針16E)の正転移動中に、終端位置に留まるので、使用者はいずれの秒表示部15が正転移動しているかを容易に判断することができる。したがって、使用者に秒表示部15が表示する時間をより瞬時に判別させることができる。
【0080】
また、各小秒針16A〜16Fの終端位置から初期位置へ向けた移動が、全ての秒表示部15において一連の駆動が行われる1周期(本実施形態では60秒)毎に一斉に行われるので、一周期毎の時間の判別をより容易に行うことができる。したがって、使用者に秒表示部15が表示する時間をより瞬時に判別させることができる。
【0081】
そして、本実施形態によれば、使用者に秒表示部15が表示する時間を瞬時かつ正確に判別させることができるムーブメント10および時計1を提供できる。
【0082】
なお、上記実施形態では、秒表示部15は、秒針(第1小秒針16A〜第6小秒針16F)が初期位置と終端位置との間を往復移動して秒に関する時間情報を表示しているが、これに限定されない。
図11は、実施形態の第1変形例に係る時計の外観図である。
図12は、実施形態の第1変形例に係るムーブメントを裏側から見た平面図である。なお、
図1から
図3に示す実施形態と同様の構成については、同一符号を付して詳細な説明を省略する(以下の変形例についても同様)。
図11に示すように、文字板111には、各秒表示部115に対応して、6個のゲージ孔118が形成されている。各ゲージ孔118は、各小秒車71〜76の回動中心を中心とする扇状に形成されている。
【0083】
図12に示すように、各小秒車71〜76の小秒下軸部71c〜76cの先端部には、秒表示板(第1秒表示板119A〜第6秒表示板119F(指示部))が取り付けられている。各秒表示板119A〜119Fは、各小秒車71〜76の回動中心を中心とする扇状に形成されている。各秒表示板119A〜119Fは、軸方向から見て各ゲージ孔118から退避した位置を初期位置とし、各ゲージ孔118を閉塞する位置を終端位置とするように構成されている。
【0084】
このように構成することで、各秒表示部115において各秒表示板119A〜119Fがゲージ孔118を徐々に塞いでいくことにより時間の進行を表現することができるので、秒に関する時間情報を表示することが可能となる。
【0085】
また、上記実施形態では、第2小秒針16B〜第6小秒針16Fの正転移動中には、既に正転移動が完了した全ての小秒針が、終端位置に留まる。そして、各小秒針16A〜16Fは、終端位置から初期位置へ向けて一斉に移動する。しかしながら、これに限定されず、小秒針16A〜16Fは、終端位置に一定期間留まった後、順次初期位置へ向けて移動してもよい。以下、上記動作を実現する構成について説明する。
【0086】
図13は、実施形態の第2変形例に係る秒伝達車を裏側から見た斜視図である。
図13に示すように、秒伝達車150は、一体に形成された秒伝達歯車50a(
図2参照)および秒駆動カム151を有している。秒駆動カム151は、第1実施形態と同様に、同じ軸方向における厚さを有する第1カム部154から第6カム部159を備え、各カム部154〜159が軸方向表側から裏側に向けて順に一体的に積層された構成とされている。
【0087】
第1カム部154は、第1作動面154aと、第1保持面154bと、第1段差面154cと、第1退避面154dと、により構成された軸方向に沿う外周面を備えている。第1作動面154aは、第1実施形態における第1作動面54aと同様に形成され、CW方向下流側から上流側に向かって中心軸Oからの距離が大きくなるように形成されている。第1保持面154bは、第1作動面154aよりもCW方向上流側に設けられ、第1作動面154aのCW方向上流側の端部と連なっている。第1保持面154bは、中心軸Oからの距離が一定となるように形成されている。周方向における第1保持面154bの両端部間の中心角は、120°程度となっている。第1段差面154cは、第1保持面154bのCW方向上流側の端部から径方向内側に向かって、径方向に沿うように延びている。第1段差面154cの径方向内側の端部は、第1作動面154aのCW方向下流側の端部と径方向における同じ位置に形成されている。第1段差面154cは、軸方向から見てCW方向に向かって僅かに窪むように湾曲している。第1退避面154dは、第1作動面154aのCW方向下流側の端部、および第1段差面154cの径方向内側の端部と連なり、周方向に沿って延びている。
【0088】
第2カム部155〜第6カム部159は、軸方向から見て第1カム部154と同一形状に形成されている。すなわち、秒駆動カム151は、第1カム部154が軸方向に沿って表側から裏側に向かって延在した形状となっている。秒駆動カム151は、第1作動面154aが軸方向に沿って延びた作動面151aと、第1保持面154bが軸方向に沿って延びた保持面151bと、第1段差面154cが軸方向に沿って延びた段差面151cと、第1退避面154dが軸方向に沿って延びた退避面151dと、を備えている。
【0089】
以下、本変形例の時計の動作について説明する。なお、上述した実施形態と同様の動作については、詳細な説明を省略する。
10時8分1秒〜10秒の間には、第1レバー81の爪部81fは、作動面151aに摺接し、第1小秒針16Aが正転移動する。第5レバー85の爪部85f、および第6レバー86の爪部86fは、保持面151bに摺接し、第5小秒針16Eおよび第6小秒針16Fが終端位置に留まる。第2レバー82〜第4レバー84は、規制部82c〜84cが各位置決めピン87B〜87Dに当接した状態を維持し、第2小秒針16B〜第4小秒針16Dが初期位置に位置している。
【0090】
10時8分10秒を経過すると、第5レバー85の爪部85fは、段差面151cを通過して、保持面151bから離間する。第5レバー85は、径方向内側へ向けて変位する。第5小秒針16Eは、終端位置から初期位置へ向けて移動する。また、第2レバー82の爪部82fは、作動面151aに摺接する。
【0091】
10時8分11秒〜20秒の間には、第2レバー82の爪部82fは、作動面151aに摺接し、第2小秒針16Bが正転移動する。第1レバー81の爪部81f、および第6レバー86の爪部86fは、保持面151bに摺接し、第1小秒針16Aおよび第6小秒針16Fが終端位置に留まる。第3レバー83〜第5レバー85は、規制部83c〜85cが各位置決めピン87C〜87Eに当接した状態を維持し、第3小秒針16C〜第5小秒針16Eが初期位置に位置している。
【0092】
10時8分20秒を経過すると、第6レバー86の爪部86fは、段差面151cを通過して、保持面151bから離間する。第6レバー86は、径方向内側へ向けて変位する。第6小秒針16Fは、終端位置から初期位置へ向けて移動する。また、第3レバー83の爪部83fは、作動面151aに摺接する。その後、他の各レバーについても、上述した動作と同様に動作する。
以上により、各小秒針16A〜16Fが終端位置に一定期間(本変形例では20秒)留まった後、順次初期位置へ向けて移動する構成とすることができる。
【0093】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態においては、表示機構22は秒に関する時間情報を表示しているが、これに限定されず、表示機構は、時や分に関する時間情報を表示するように構成されていてもよい。
【0094】
また、上記実施形態においては、秒駆動カム51,151は、各カム部54〜59,154〜159が軸方向表側から裏側に向けて順に一体的に積層された構成とされているが、これに限定されない。秒駆動カムは、別体で形成された各カム部に対応する部材が積層された構成であってもよい。
【0095】
また、上記実施形態においては、秒表示部15,115が6個設けられているが、これに限定されず、秒表示部は複数個設けられていればよい。
【0096】
また、上記実施形態においては、各小秒針16A〜16Fは、終端位置から初期位置へ向けて一斉、または周方向に沿って順次移動する構成とされているが、これに限定されない。各小秒針16A〜16Fは、終端位置に所定期間留まった後、終端位置から初期位置へ向けて戻るタイミングは任意に設定可能である。
【0097】
また、上記実施形態においては、時計の一例としてアナログクォーツ式の時計に本発明を適用した例を説明したが、ぜんまいを動力源としたいわゆる機械式時計に適用することも可能である。
機械式時計は、その一例として、上述したステップモータ35の代わりに不図示の香箱車を設け、この香箱車のぜんまいを動力源として、時針、分針、および秒針が取り付けられた複数の歯車(二番車、三番車、四番車等)を、不図示の調速脱進機によってそれぞれ所定の周期で回転させることにより、時刻を表示するようになっている。
この様な機械式時計に本発明を適用した一例として、例えば、上述した機械式時計における複数の歯車の輪列の中の四番車(60秒に1回転する)の代わりに秒伝達車50を設けるようにすればよい。その他の構成は、上述したアナログクォーツ式の時計と同一である。
【0098】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。