(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部品には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0022】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る加熱試験装置10について、
図1〜
図10を参照して説明する。
図1は加熱試験装置10の斜視図である。また、
図2〜
図4はそれぞれ加熱試験装置10の高温側の側面図、平面図および断面図である。また、
図5〜
図7はそれぞれ比較例としての加熱試験装置10の高温側の側面図、平面図および断面図である。また、
図8は加熱試験装置10の低温側の側面図である。また、
図9および
図10は加熱試験装置10の制御の説明図である。なお、
図8では、高温側と低温側とでクランプされるワークWの様子も併せて示している。ワークWとしては、例えば、温度差で発電を行う熱電モジュールが挙げられる。
【0023】
加熱試験装置10は、
図1に示すように、筐体12(本体部)と、筐体12内に設けられる高温側プレート14および低温側プレート16とを備え、筐体12内において高温側プレート14と低温側プレート16とでワークW(
図8参照)をクランプして温度差を与えて加熱試験を行うものである。加熱試験の際にはワークW(
図8参照)をクランプするため、高温側プレート14がクランプ面14a(ワークWとの接触面)を有し、低温側プレート16がクランプ面16a(ワークWとの接触面)を有している。また、加熱試験装置10は、高温側プレート14に熱的に接続されるヒータ28と、低温側プレート16を支持し、高温側プレート14に対して低温側プレート16を接離動させるステージ32(クランプ機構)とを備えている。
図1では、1つの高温側プレート14に対して2つの低温側プレート16が設けられる場合を示しているが、1つの高温側プレート14に対して1つの低温側プレート16が設けられる場合であってもよい。低温側プレート16が複数設けられる場合、互いに独立な構造として設けることで、例えば、複数のワークW(同じ種類でもよいし、異なる種類であってもよい。)を同時に加熱試験することができる。
【0024】
高温側プレート14には、例えば、金属プレートとして板状の純銅(無酸素銅)が用いられる。高温側プレート14に熱伝導率の高い純銅を用いることで、温度分布を均一なものとすることができる。また、高温側プレート14には、耐熱性を重視した金属材料(例えば、合金)を用いることもできる。また、高温側プレート14には、酸化防止のために、耐熱のめっき処理が施され、その表面にめっき膜が形成されている。例えば、ニッケルを主成分とするめっき液を用いたニッケルめっき処理が施される。この他の酸化防止のめっき処理としては、硬質クロムめっき液を用いることもできるが、純銅との熱膨張係数差が大きくなるため、高温側プレート14に純銅を用いる場合には、ニッケルめっき処理が好ましい。低温側プレート16には、高温側プレート14ほど耐熱性が要求されないため、例えば、アルマイト処理が施されたアルミニウム合金を用いることができ、後述のヒートシンク42(冷却フィン)と一体に形成されたプレートを用いている。
【0025】
また、加熱試験装置10は、
図2〜
図4に示すように、高温側プレート14のクランプ面14aとは反対側の裏面14bから高温側プレート14を支持するスペーサ18を備え、高温側プレート14と筐体12(筐体12を構成する筐体側部品20)との間にスペースS(断熱材または単にエアギャップによる)を設けている(
図4参照)。スペースSを設けることで、高温側プレート14の熱を筐体12側へ拡散させてしまうのを防止することができる。また、スペーサ18は、例えば、柱状のステンレスであり、平面視長方形状の高温側プレート14の四隅にそれぞれ一本ずつ設けられる。スペーサ18に柱状のもの(支柱)を用いることで、高温側プレート14の熱を筐体12側へ拡散させてしまうのを防止することができる。また、高温側プレート14に純銅を用いた場合、スペーサ18に純銅よりも塑性変形強度の高いステンレスを用いることで、ワークWをクランプする際の荷重(クランプ力)に対する耐久性に優れた加熱試験装置10を提供することができる。
【0026】
このスペーサ18に対してはネジ止めされる留め具22、24(
図4参照)を加熱試験装置10は備えている。この留め具22、24には雄ネジ22a、24aが形成され、スペーサ18にも留め具22、24がネジ止めされる雌ネジ18a、18b(タップ穴)が形成されている。加熱試験装置10では、留め具22によって筐体12(筐体側部品20)にスペーサ18が直接ネジ止めして固定され、留め具24によって高温側プレート14がスペーサ18に間接ネジ止めして固定されている。ネジ止めされる高温側プレート14は、クランプ面14aおよび裏面14bに通じる貫通孔14c(
図2では破線で示す。)を有しており、貫通孔14cに挿入される段付きの留め具24によってスペーサ18に固定されている。この貫通孔14cを含む高温側プレート14の表面には、前述のめっき処理が施されている。これによれば、貫通孔14c内の酸化を防止して耐久性に優れた加熱試験装置10を提供することができる。また、高温側プレート14に純銅を用いる場合、スペーサ18および留め具24に純銅よりも塑性変形強度の高いステンレスを用いることで、ワークWをクランプする際の荷重(クランプ力)に対する耐久性に優れた加熱試験装置10を提供することができる。
【0027】
また、高温側プレート14がクランプ面14aに形成された貫通孔14cのザグリ14d(凹部)を有し、また、段付きの留め具24が軸部に対する鍔24b(ネジ頭)を有しており、ザグリ14dに鍔24bを収納してスペーサ18と留め具24とがネジ止めされている。これによれば、高温側プレート14のクランプ面14aから留め具24を突出させずに高温側プレート14がスペーサ18に固定されるので、薄いワークWであっても加熱試験することができる汎用性に優れた加熱試験装置10を提供することができる。もちろん、鍔24bを有する留め具24(段付きネジ)とすることで高温側プレート14に応力を掛けないようにすることができるので、ザグリ14dは必須ではない。すなわち、留め具24の段付き部(雄ネジ24aを除く)の長さを高温側プレート14の厚み以上として、高温側プレート14に応力を掛けないようにしている。
【0028】
ところで、
図5〜
図7に示すように、雌ネジ26a(タップ穴)、雄ネジ26bを有するスペーサ26に対して高温側プレート14を直接ネジ止めして固定する場合も考えられる。具体的には、雌ネジ26aが留め具22の雄ネジ22aに対応してスペーサ26が筐体12(筐体側部品20)に直接ネジ止めして固定される。また、高温側プレート14に形成された雌ネジ14e(タップ穴)にスペーサ26の雄ネジ26bが対応してスペーサ26に高温側プレート14が直接ネジ止めして固定される。このような場合では、高温となる高温側プレート14と、スペーサ26との接続信頼性が低下することが考えられる。この点、
図2〜
図4を参照して説明したように、高温側プレート14を直接スペーサ18に固定させるのではなく、留め具24を用いて接続することで、高温による接続箇所の耐久性(接続信頼性)に優れた加熱試験装置10を提供することができる。
【0029】
また、
図5〜
図7に示す高温側プレート14では、雌ネジ14e(タップ穴)内にめっき膜が付きにくい形状(袋小路形状)となっている。このため、雌ネジ14eの山頂、谷底のネジ山箇所や、タップ穴の深い箇所にはめっき液が入り難く、めっき膜が所望の厚さに形成されず、めっきが弱い部分が発生してしまうおそれがある。ワークWに高温を加える加熱試験装置10では、めっきが弱い部分のプレート表面から高温酸化(腐食)が始まり、徐々に進行してしまう。そして、高温側プレート14の局所的な変形の他に、高温酸化した箇所が脆くなり剥がれ落ちたり、強度が不足したりするといった症状が発生してしまう場合がある。この場合、ワークWに効率よく熱を伝える高温側プレート14としての機能、性能を満たさなくなってしまう。このような高温側プレート14は寿命として、交換が必要となってしまう。この点、高温側プレート14に雌ネジ14eを形成せずに、留め具24が挿入されるよう内壁面が滑らかな貫通孔14c(通し穴)を形成することで、貫通孔14c内にめっきが弱い部分が発生するのを防止することができる。
【0030】
また、加熱試験装置10は、
図1に示すように、高温側プレート14に熱的に接続されるヒータ28と、高温側プレート14の温度を測定する熱電対30(温度センサ)と、低温側プレート16の温度を測定する熱電対31とを備えている。ヒータ28は、高温側プレート14の内部に設けられ(内蔵され)、直接高温側プレート14を加熱する。すなわち、高温側プレート14はホットプレートとなる。ヒータ28には、例えば、カートリッジヒータが用いられる。また、高温側プレート14の正面から内部へ延伸される熱電対30は、接点部が高温側プレート14の内部中央に設けられている。他方、低温側プレート16は、高温側プレート14を加熱するヒータ28のようにヒータが内蔵されておらず、ワークWを介した高温(例えば、600℃程度)の高温側プレート14からの熱を冷却機構によって冷却して低温(例えば、100℃程度)を保つよう構成されている。また、低温側プレート16の背面から内部へ延伸される熱電対31は、接点部が低温側プレート16の内部中央に設けられている。
【0031】
ヒータ28および熱電対30が内部に設けられる高温側プレート14は、クランプ面14aと交差して対向する側面14f(
図1では正面となる。)、側面14g(
図1では背面となる。)に通じる側面貫通孔14h、14i(
図2、
図3参照)を有している。そして、側面貫通孔14hにヒータ28(カートリッジヒータ)が挿入され、側面貫通孔14iに熱電対30が挿入される。ヒータ28が挿入される側面貫通孔14hは径が大きいため一度に穿孔して貫通させることができるが、熱電対30が挿入される側面貫通孔14iは径が小さいため側面14f、14gのそれぞれから穿孔して貫通させたものである。
【0032】
ここで、側面貫通孔14h、14i内を含む高温側プレート14の表面には、前述のめっき処理が施されている。これによれば、側面貫通孔14h、14i内の酸化を防止して耐久性に優れた加熱試験装置10を提供することができる。側面貫通孔14h、14iの耐久性を確保することで、それぞれに設けられるヒータ28および熱電対30の性能も確保することができる。
【0033】
ところで、熱電対30の接点部が高温側プレート14の内部中央に設けられるのであれば、
図5および
図6に示すように、高温側プレート14には、対向する側面14f、14gに貫通させずに一方の側面14fのみで開口する止まり穴14jを形成する場合も考えられる。例えば、高温側プレート14が難削材の純銅の場合、深穴加工が困難である(粘いため、ドリル加工の切り子が排出され難い)ため、止まり穴14jとすることも考えられる。しかしながら、この止まり穴14jは、めっき液がのりにくい(めっき膜が付きにくい)袋小路の形状となっている。このため、止まり穴14jの深い奥部にはめっき液が入り難く、めっき膜が所望の厚さに形成されず、前述の雌ネジ14e(タップ穴)と同様に、めっきが弱い部分が発生してしまうおそれがある。この点、高温側プレート14に止まり穴14jを形成せずに、側面貫通孔14iを形成することで、側面貫通孔14i内にめっきが弱い部分が発生するのを防止することができる。
【0034】
なお、側面14f、14gからの穿孔が通じて形成される側面貫通孔14iは、めっき液が行き渡るように貫通していればよい。このため、互いの穿孔が同心となるような高い精度まで必要でなく(ドリル先端の位置精度を出さなくともよく)、本実施形態では、熱電対30が挿入される側の側面14f側の穿孔径よりも側面14gの穿孔径を若干大きくしている。
【0035】
また、加熱試験装置10は、
図1、
図8に示すように、低温側プレート16のクランプ面16aとは反対側の裏面16bから低温側プレート16を支持し、高温側プレート14に対して低温側プレート16を接離動させるステージ32を備えている。このステージ32は、低温側プレート16のクランプ面16aに載置されたワークWを高温側プレート14に対してクランプしたり解除したりするために、鉛直方向A(第1方向)に低温側プレート16を移動させるジャッキ構造部を備えている。また、ステージ32は、ワークWの個数、種類によって高温側プレート14に対してワークWのクランプ位置(当接位置)を調整するために、水平面方向B(第1方向と交差する第2方向)に低温側プレート16を移動させるシフト構造部を備えている。ジャッキ構造部は、ハンドル34を有して、このハンドル34を手動で回すことで昇降する手動式のジャッキ(パンダグラフジャッキ)であり、低温側プレート16を昇降させることができる。シフト構造部は、ジャッキ構造部が固定される載置板36およびこれを筐体12に固定するつまみネジ38を有しており、つまみネジ38を外してジャッキ構造部が搭載されている載置板36をずらすことによって、低温側プレート16をシフトさせることができる。
【0036】
また、加熱試験装置10は、
図8に示すように、低温側プレート16の裏面16bに設けられるヒートシンク42(冷却フィン)と、ヒートシンク42に対向して設けられ、ヒートシンク42に送風するファン44とを備え、空冷仕様に構成されている。本実施形態では、ヒートシンク42と低温側プレート16とは一体に形成されたものを用いている。また、低温側プレート16は、ファン44が回転することによって発生したエアをヒートシンク42へ吹き付けて冷却するよう構成されている。このように、低温側プレート16では、ワークWを介した高温側プレート14からの熱をエアで冷却する空冷仕様の冷却機構を用いており、例えば、高温(例えば、600℃程度)の高温側プレート14よりも低温(例えば、100℃程度)となるようにファン44が調節されることとなる。
【0037】
また、加熱試験装置10は、
図8に示すように、低温側プレート16の周囲でステージ32(ステージ側部品40)に低温側プレート16の厚み方向(鉛直方向A)に起立して設けられる複数のコイルばね46を備えている。このコイルばね46の内部には、コイルばね46が鉛直方向Aに起立するよう支持する支柱が設けられている。また、加熱試験装置10は、ヒートシンク42とファン44との間で挟まれて取り付けられる第1部48aと、第1部48aから折り曲げられてヒートシンク42を囲む第2部48bと、第2部48bから折り曲げられてコイルばね46の先端に取り付けられる第3部48cとを有する取り付け板48を備えている。これによれば、例えばネジによって低温側プレート16と取り付け板とを直接固定するものではないため、押付荷重をその接続箇所(ネジのせん断方向)で受けることなく耐荷重を向上させることができる。また、低温側プレート16が、取り付け板48を介してコイルばね46によって支持されているので、ワークWに対する押付荷重(負荷)をコイルばね46で受けることができ、ワークWの片当たりを防止して信頼性に優れた加熱試験装置10を提供することができる。
【0038】
また、加熱試験装置10は、
図1に示すように、水平面方向Bに隣接する低温側プレート16、16の間に設けられるゲージ50と、隣接する低温側プレート16、16のそれぞれに設けられるゲージ針52、52とを備えている。ゲージ50は、短冊状に構成されて短手両側に長手方向に沿って目盛りが振られており、鉛直方向Aへ延在するよう設けられている。また、ゲージ針52は、コイルばね46の伸縮によって鉛直方向Aに移動する低温側プレート16と共に移動するよう低温側プレート16に設けられていればよい。ゲージ針52としては、例えば、取り付け板48が有する第3部48cから折り曲げられてゲージ50に掛かる第4面48dに形成された切欠部を用いることができる。このようなゲージ50およびゲージ針52によれば、クランプ時のコイルばね46の撓み量を目視で確認することができ、コイルばね46の撓み量とそのばね定数から間接的にワークWへの押しつけ荷重(クランプ力)を測定することができる。
【0039】
また、加熱試験装置10は、
図1に示すように、その正面に取手54によって筐体12に開閉可能に設けられ、のぞき窓56を有する扉58を備えている。扉58を開くことにより、ワークWを出し入れすることができる。また、扉58を閉めて加熱試験を行っている最中には、のぞき窓56からワークWを観測することができる。また、加熱試験装置10は、筐体12を支持する複数のアジャスト脚60と、筐体12の上面(天板)に設けられ、加熱試験装置10を持ち運ぶ際に用いることができる一対の取手62とを備えている。
【0040】
また、加熱試験装置10は、筐体12の両側面に高温側プレート14のクランプ面14aの位置(周囲領域)にエアを吹き付け可能に設けられた強制冷却ファン64を備え、空冷仕様に構成されている。例えば、高温側プレート14および低温側プレート16でワークWをクランプして加熱試験しているときに、通常の停止を行う場合や異常が発生した場合には、強制冷却ファン64を駆動させることで、特に高温側プレート14やワークWを強制的に冷却することができる。
【0041】
また、加熱試験装置10は、筐体12の外部に設けられる操作部66を備えている。操作部66は、筐体12内の各電気部品と電気的に接続されており、それらの状態を監視、制御する。操作部66は、電源スイッチ68と、タッチパネル70と、運転開始ボタン72と、強制冷却ボタン74とを備えている。例えば、電源スイッチ68の切り替えによって加熱試験装置10が外部電源からの電力供給を受けた状態で、タッチパネル70によって試験条件を設定することができる。そして、
図9に示すように、運転開始ボタン72によって加熱試験を開始し、強制冷却ボタン74(内部警報)によって強制冷却ファン64を駆動させながら試験を停止させることができる。また、加熱試験装置10の安全性向上のために、操作部66に外部信号入力端子を設け、例えば、UPS(Uninterruptible Power Supply)やチラーなどの外部機器(オプション機器としてもよい)からの異常信号入力時に強制冷却運転を開始させてもよい。例えば、UPSからのUPS異常信号、チラーからの異常信号やモニタリングされる循環水流量および温度の計測器数値によって強制冷却運転を行うことができる。
【0042】
操作部66は、内部にPLC(Programmable Logic Controller)を備え、タッチパネル70での高温側設定温度(例えば、600℃)となるように、高温側プレート14の温度(熱電対30の測定値)をモニターしながら(タッチパネル70でも表示される)、複数のヒータ28の温度をPID(Proportional Integral Derivative)制御している。また、操作部66は、内部にアナログ信号入力によるファン制御基板を備え、
図10に示すように、タッチパネル70でのファン44の設定回転数となるように、PLCからのアナログ出力を基にファン制御基板にてファン44の回転数をPWM(Pulse Width Modulation)制御している。この際、操作部66は、低温側プレート16の温度(熱電対31の測定値)をモニター(タッチパネル70でも表示される)しているので、タッチパネル70での低温側設定温度(例えば、100℃)となるように、回転数自動調節による温調制御を行ってもよい。ファン制御基板を用いることで、繰り返しの試験時におけるファン44の回転数の再現性を向上させることができる。
【0043】
なお、加熱試験装置10(PLC)とPC(Personal Computer)とをOPCサーバなどの標準通信仕様の通信ソフトウエア(通信ドライバ)を介して接続することもできる。これにより、例えば、加熱試験装置10と各種外部計測器とを接続して制御ソフトウエアや計測器選択の幅を広げてPC制御による自動計測をしたり、PCによって複数の加熱試験装置10を一括管理したりすることができる。各種外部計測器としては、熱電モジュールの出力を測定するための電子負荷装置や電流電圧源、または内部抵抗を測定するための低抵抗計(バッテリハイテスタ)などがある。OPCサーバを用いることで、PCでの加熱試験装置10を制御する制御プログラムの開発の自由度をユーザに提供することができ、制御ソフトウエア開発のみで様々な計測用途に用いることができる。この際、OPCサーバと加熱試験装置10内のプログラムで制限をかけることで、誤動作を防ぎ、安全性を確保することができる。
【0044】
(実施形態2)
本発明の実施形態2では、高温側プレート14の伝熱抵抗を低減するため、高荷重を加えることのできる加熱試験装置10について、
図11〜
図13を参照して説明する。
図11および
図12はそれぞれ異なる本実施形態に係る加熱試験装置10の高温側の側面図である。また、
図13は比較例としての加熱試験装置10の高温側の側面図である。なお、
図11〜
図13には、高温側プレート14に加えられる荷重方向を矢印で示している。
【0045】
本実施形態に係る加熱試験装置10は、前記実施形態1(
図1参照)と同様に、筐体12と、筐体12内に設けられる高温側プレート14および低温側プレート16とを備え、筐体12内において高温側プレート14と低温側プレート16とでワークW(
図8参照)をクランプして温度差を与えて加熱試験を行うものである。また、加熱試験装置10は、
図11に示すように、高温側プレート14と筐体12(筐体側部品20)との間にスペースSを設けて、高温側プレート14の裏面14bから高温側プレート14を支持するスペーサ18と、高温側プレート14の裏面14bに設けられ、高温側プレート14(例えば、純銅)よりも塑性変形強度の高い補強部品76(例えば、ステンレス)とを備えている。補強部品76を用いることで、ワークWに対して均等に、高荷重でクランプすることができ、伝熱抵抗を低減して温度特性に優れた加熱試験装置10を提供することができる。
【0046】
ところで、補強部品76を設けない場合に荷重が一定量を超えると、筐体12(筐体側部品20)側に凸状となるよう高温側プレート14(純銅)が長手方向に反ってしまい、中央部の変形が大きくなってしまうことが本発明者らの検討により判明している。そこで、補強部品76を、留め具22によって筐体12(筐体側部品20)に固定された柱状部品とし、裏面14bの中央部に接している。この柱状の補強部品76(ステンレス)の周りには、平面視長方形状の高温側プレート14(純銅)の四隅のそれぞれに設けられる柱状のスペーサ18(ステンレス)が設けられている。補強部品76をスペーサ18と同じ長さ(スペースSにおける長さ)で同じ材質(ステンレス)からなる柱状とすることで、高温側プレート14の熱でスペーサ18と補強部品76が同様に膨張し、高温側プレート14の反り(塑性変形)の発生を防止することができる。また、柱状の補強部品76を用いることで、補強部品76からの熱拡散を防止することができる。なお、補強部品76から熱が逃げてしまうことによる昇温上限、温度昇降スピード低下などを考慮しながら、補強部品76の太さ、位置、本数は、設定する荷重の位置や大きさに応じて設定する必要がある。
【0047】
また、異なる形態として加熱試験装置10は、
図12に示すように、柱状の補強部品76の代わりに板状の補強部品78を備えてもよい。補強部品78は、高温側プレート14とスペーサ18との間に挟まれる板状部品(例えば、ステンレス)である。そして、ヒータ28が、補強部品78の内部(貫通孔78h)に設けられる。これによれば、より荷重を加えてワークWをクランプすることができ、伝熱抵抗を低減して温度特性に優れた加熱試験装置10を提供することができる。また、高温側プレート14の内部(貫通孔14i)に設けられる熱電対30の他に、補強部品78の内部(貫通孔78i)に別の熱電対を設け、高温側プレート14の温度調節に用いることもできる。
【0048】
ところで、
図13に示すように、単に高温側プレート14とスペーサ18との間に挟まれる板状の補強部品80(例えば、ステンレス)を設けることも考えられる。しかしながら、高温側プレート14に純銅を用い、補強部品80にステンレスを用いて、高温側プレート14よりも塑性変形強度の高い補強部品80を設けたとしても、ステンレスは純銅に比べて熱伝導率が低く、熱膨張係数が大きいため、高温側プレート14の反り(変形)の原因となるおそれがある。これは、高温プレート14側から補強部品80が片面のみ加熱され、筐体12(筐体側部品20)側に凹状となるよう反りが発生してしまうからである。この点、
図12を参照して説明したように、ステンレスからなる板状の補強部品78の内部にヒータ28を設けることで、補強部品78の反りを防止し、ワークWに対して均等に高荷重でクランプすることができ、伝熱抵抗を低減して温度特性に優れた加熱試験装置10を提供することができる。
【0049】
なお、補強部品76、78としては、ステンレスの他にインコネル・ハステロイを用いることもできる。
【0050】
(実施形態3)
本発明の実施形態3では、高温側プレート14の温度昇降速度を向上させることのできる加熱試験装置10について、
図14〜
図16を参照して説明する。
図14および
図15はそれぞれ本実施形態に係る加熱試験装置10の高温側の断面図および平面図である。また、
図16は高温側プレート14の説明図であり、(a)が平面図、(b)が側面図である。
【0051】
加熱試験装置10は、前記実施形態1ではヒータ28としてカートリッジヒータを備えていたが、本実施形態ではヒータ電極82aおよびヒータ温度モニター用の熱電対82bを有するセラミックヒータ82(例えば、窒化アルミニウムヒータ)を備えている。このため、高温側プレート14には、裏面14bから窪むセラミックヒータ82が収納される凹部14kと、熱電対82bを引き出す通し穴14lとが形成されている。高温側プレート14には前記実施形態1で説明したように純銅を用いることもできるが、純銅よりも塑性変形強度が高く、高温耐熱材料のオーステナイト系ステンレスや、ステンレスの中でも比較的熱伝導率が大きく、熱膨張係数の小さいフェライト系ステンレスを用いることも考えられる。熱電対82bは、セラミックヒータ82の温度も直接測定し、高温側プレート14の熱電対30による温度測定とあわせて温度過昇をモニタリングしている。
【0052】
また、本実施形態に係る加熱試験装置10は、セラミックヒータ82に接して設けられるクッション部品84と、ヒータ電極82aとの干渉を避ける逃げ86aを有し、セラミックヒータ82を押さえる押さえ板86とを備え、凹部14kに収納されたセラミックヒータ82を、クッション部品84を介して押さえ板86で押さえ付けている。クッション部品84は、耐熱性を有するセラミックペーパ(セラミックウールをシート状に形成したもの)である。なお、クッション部品84としてはロックウールなどを用いてもよい。
【0053】
これによれば、カートリッジヒータよりも電力密度の高いセラミックヒータ82を用いて昇降温度速度を向上させると共に、高温側プレート14とセラミックヒータ82の熱膨張係数差による変形を緩和して温度特性に優れた加熱試験装置10を提供することができる。また、カートリッジヒータ(ヒータ28)の使用時に比べて高温側プレート14の体積も小さくできるため、降温速度も向上させることができる。
【0054】
(実施形態4)
本発明の実施形態4では、低温側の温度を安定して保持することのできる加熱試験装置10について、
図17を参照して説明する。
図17は本実施形態に係る加熱試験装置10の低温側の側面図である。
【0055】
加熱試験装置10は、前記実施形態1では、低温側プレート16としてヒートシンク42と一体のプレートを用い、ヒータ28によって加熱された高温プレート14の熱を受ける低温側プレート16の温調機構(冷却機構)として、ファン44の回転数のみによって調節するものである。この点、本実施形態では、低温側プレート16Aとしてヒートシンク42とは別のプレート88と、低温側プレート16Aに熱的に接続され、室温よりも高温であってヒータ28よりも低温に調節される低温ヒータ90と、低温側プレート16Aの温度を測定する熱電対92とを備え、低温側の温度を安定して保持している。
【0056】
低温側プレート16A(プレート88)は、例えば、高温側プレート14と同様に、ニッケルめっき処理が施された板状の純銅(無酸素銅)から構成される。また、低温ヒータ90は、低温側プレート16Aの内部に設けられ(内蔵され)、直接低温側プレート16Aを加熱する。すなわち、低温側プレート16Aはホットプレートとなる。低温ヒータ90には、例えば、カートリッジヒータが用いられる。また、低温側プレート16Aの背面から内部へ延伸される熱電対92は、接点部が低温側プレート16Aの内部中央に設けられている。
【0057】
このような低温側プレート16Aを用いることで、より安定させて温度(低温)を保持し、温度特性に優れた加熱試験装置10を提供することができる。ところで、低温側プレート16の温調機構としては、前記実施形態1で説明した空冷仕様よりも冷却性能の高いものとして、水冷ユニットとチラーを組み合わせた水冷仕様も考えられる。しかしながら、水冷仕様は高価であり、場所を確保する必要がある。この点、低温ヒータ90によって温調制御される低温側プレート16A(ホットプレート)を、前記実施形態1で説明した空冷仕様に追加することで、水冷仕様に比べて低コストかつ省スペースで温調機構を実現することができる。また、この温調機構によれば、水冷仕様での難易度の高い100℃以上での温調も行うことができる。
【0058】
(実施形態5)
本発明の実施形態5では、押付荷重(クランプ力)を自動制御することのできる加熱試験装置10について、
図18を参照して説明する。
図18は本実施形態に係る加熱試験装置10の側面図(正面図)である。なお、本実施形態では、低温側プレート16は1つ構成であるが前記実施形態1と同様に2つ構成であってもよく、また、押付荷重を自動制御するのでゲージ50を設けなくともよい。
【0059】
加熱試験装置10は、前記実施形態1では、ステージ32として手動式のジャッキを用いてワークWに対して押付荷重(クランプ力)を加えるものである。この点、本実施形態では、電動ステージ32Aと、電動ステージ32Aに設けられ、ワークWをクランプする荷重を測定する電子はかり94と、電子はかり94からの測定値を基に電動ステージ32Aの位置を制御する操作部66とを備え、荷重フィードバックにより自動位置制御するものである。また、操作部66は、電子はかり94からの荷重表示やゼロ設定などを表示する表示部96(デジタル指示計)と、電動ステージ32Aを昇降させる上昇ボタン98および下降ボタン100とを備えている。
【0060】
電動ステージ32Aは、例えば、サーボモーターやステッピングモータで駆動され、「荷重」ではなく「位置」が制御される。そこで、本実施形態では、電子はかり94(例えば、ロードセル)と組み合わせて、電子はかり94で測定した押付荷重を基に電動ステージ32Aの位置制御にフィードバックしている。ところで、低温側プレート16に載置されたワークWが高温プレート14に押し当たった瞬間に押付荷重が急激に増加してしまい、荷重測定から位置制御が間に合わないおそれがある。その対策として、低温側プレート16と電動ステージ32Aとの間に作用するよう設けられるコイルばね46を用いて、電動ステージ32Aの位置上昇から押付荷重の増加を緩やかにし、フィードバック制御するための余裕(遊び)を設けている。このような電動ステージ32Aや電子はかり94を用いることで、押付荷重(クランプ力)を自動制御することのできる加熱試験装置10を提供することができる。
【0061】
(実施形態6)
本発明の実施形態6では、耐久性が高く、保守が容易な加熱試験装置10について、
図19を参照して説明する。
図19は本実施形態に係る加熱試験装置10の高温側周辺の側面図である。
【0062】
図19に示すように、加熱試験装置10は、高温側プレート14と、低温側プレート16と、高温側プレート14の内部(側面貫通孔14i)に設けられる熱電対30(温度センサ)と、を備える。高温側プレート14は、ワークWをクランプするクランプ面14a(ワーク接触面)を有する。また、低温側プレート16は、ワークWをクランプするクランプ面16a(ワーク接触面)を有する。
【0063】
本実施形態では、高温側プレート14を筐体12(筐体側部品20)には固定せず、低温側プレート16のクランプ面16aに載置されたワークWの上に高温側プレート14を積み重ねた状態でワークWをクランプする構成としている。すなわち、高温側プレート14は低温側プレート16のクランプ面16a上にワークWを介して設けられる。この点で
図12に示した高温側プレート14を筐体12に固定する構成とは相違する。
【0064】
このため、高温側プレート14はワークWと共に挟み込まれる(
図19では荷重方向を上向きの矢印で示す)。このとき、高温側プレート14には熱電対30が設けられているので、ワークWに加えられる温度(クランプ面14aの温度)を正確に測定することができる。
【0065】
また、加熱試験装置10は、高温側プレート14に接するように設けられ、高温側プレート14よりも塑性変形強度の高い板状の補強部品78(板状部品)を備える。高温側プレート14には熱伝導率の高い例えば純銅を用いることで、ワークWに対して温度特性に優れたものとしている。また、補強部品78には塑性変形強度の高い例えばステンレスを用いることで、クランプに対して耐久性が高いものとしている。
【0066】
また、高温側プレート14には、クランプ面14aに対してワークWと同じか少し大きいもの(同程度のもの)を用いている。これによれば、高温側プレート14(例えば純銅)のプレートサイズが小さくなるため、保守交換費用を低減することができる。これに合わせて熱電対30(温度センサ)の配線をコネクタ化することで交換作業も容易となる。
【0067】
また、加熱試験装置10は、高温側プレート14に熱的に接続されるヒータ28を備える。補強部品78には貫通孔78hが形成されており、この貫通孔78h内、すなわち補強部品78の内部にヒータ28が設けられる。このヒータ28は高温側プレート14を加熱することができる。また、補強部品78には貫通孔78iが形成されており、この貫通孔78i内、すなわち補強部品78の内部に熱電対29(温度センサ)が設けられる。この熱電対29は熱電対30と共に高温側プレート14の温度調節に用いることができる。
【0068】
また、加熱試験装置10は、高温側プレート14と筐体12の筐体側部品20との間にスペースSを設けるスペーサ26を備える。このスペーサ26は、筐体側部品20に対して留め具22によって固定され、補強部品78に対して直接ネジ止めして固定される。このため、高温側プレート14と筐体側部品20との間では補強部品78を介してスペースSが設けられる。スペースSを設けることで、高温側プレート14の熱を筐体12側へ拡散させてしまうのを防止することができる。
【符号の説明】
【0069】
10 加熱試験装置; 12 筐体; 14 高温側プレート;
14a クランプ面; 14b 裏面; 14c 貫通孔;
14d ザグリ; 14e 雌ネジ; 14f、14g 側面;
14h、14i 側面貫通孔; 14j 止まり穴;
14k 凹部; 14l 通し穴;
16、16A 低温側プレート; 18 スペーサ;
18a、18b 雌ネジ; 20 筐体側部品; 22 留め具;
22a 雄ネジ; 24 留め具; 24a 雄ネジ;
24b 鍔; 26 スペーサ; 26a 雌ネジ;
26b 雄ネジ; 28 ヒータ; 29、30、31 熱電対;
32 ステージ; 32A 電動ステージ; 34 ハンドル;
36 載置板; 38 つまみネジ; 40 ステージ側部品;
42 ヒートシンク; 44 ファン; 46 コイルばね;
48 取り付け板; 48a 第1部; 48b 第2部;
48c 第3部; 48d 第4部; 50 ゲージ;
52 ゲージ針; 54 取手; 56 のぞき窓;
58 扉; 60 アジャスト脚; 62 取手;
64 強制冷却ファン; 66 操作部; 68 電源スイッチ;
70 タッチパネル; 72 運転開始ボタン; 74 強制冷却ボタン;
76 補強部品; 78 補強部品; 78h、78i 貫通孔;
80 補強部品; 82 セラミックヒータ; 82a ヒータ電極;
82b 熱電対; 84 クッション部品; 86 押さえ板;
86a 逃げ; 88 プレート; 90 低温ヒータ;
92 熱電対; 94 電子はかり; 96 表示部;
98 上昇ボタン; 100 下降ボタン; S スペース;
W ワーク。