特許第6670136号(P6670136)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6670136シャープペンシルユニット及び該シャープペンシルユニットを具備した出没式筆記具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670136
(24)【登録日】2020年3月3日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】シャープペンシルユニット及び該シャープペンシルユニットを具備した出没式筆記具
(51)【国際特許分類】
   B43K 21/00 20060101AFI20200309BHJP
   B43K 24/12 20060101ALI20200309BHJP
   B43K 24/18 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   B43K21/00 H
   B43K24/12
   B43K24/18 100
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-46991(P2016-46991)
(22)【出願日】2016年3月10日
(65)【公開番号】特開2017-159579(P2017-159579A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2019年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108328
【氏名又は名称】ゼブラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】月岡 之博
(72)【発明者】
【氏名】阿部 成雄
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−123689(JP,A)
【文献】 特開2013−252661(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0039243(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 21/00
B43K 24/10−24/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持筒と、該保持筒の前側開口部に挿通されて該保持筒の前端から前方へ突出するとともに該保持筒に対し進退可能に支持されたホルダーと、該ホルダーに挿通される鉛芯を前方へ繰り出す鉛芯繰出し機構と、前記鉛芯から前記ホルダーに加わる径方向の力により前記ホルダーを前記保持筒及び前記鉛芯に相対し前進させる運動方向変換機構とを備え、前記鉛芯繰出し機構は、前記ホルダー及び前記運動方向変換機構よりも後方側に設けられていることを特徴とするシャープペンシルユニット。
【請求項2】
前記ホルダーの内周面には、その前端側で鉛芯の外周面に摺接する鉛芯摺接面と、該鉛芯摺接面よりも後側で鉛芯の外周面に近接する鉛芯ガイド面とが形成されていることを特徴とする請求項1記載のシャープペンシルユニット。
【請求項3】
前記保持筒は、前記ホルダーを前方へ突出させるようにして内在する第1の筒部と、該第1の筒部に対しその後方側に接続された第2の筒部とを具備し、
前記ホルダー及び前記運動方向変換機構は、第1の筒部内に設けられ、前記鉛芯繰出し機構は、第2の筒部内に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のシャープペンシルユニット。
【請求項4】
軸筒内に備えた複数のリフィールを選択的に出没させるようにした出没式筆記具において、
前記複数のリフィールのうちの少なくとも一つとして、請求項1乃至3何れか1項記載のシャープペンシルユニットを具備したことを特徴とする出没式筆記具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャープペンシル用リフィールやシャープペンシル等を構成するシャープペンシルユニット、及び該シャープペンシルユニットを具備した出没式筆記具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、過剰な筆圧等により鉛芯が折れてしまうのを防止するようにしたシャープペンシルには、例えば特許文献1に記載される発明がある。この発明では、軸筒と、該軸筒の前側開口部に挿通されて該軸筒の前端から前方へ突出する略筒状のホルダーと、該ホルダーに挿通されて前方へ突出する鉛芯とを備え、前記軸筒と前記ホルダーの間に、前記ホルダーに加わる径方向の力により前記ホルダーを前進させる運動方向変換手段を設け、軸筒内には前記鉛芯を挟持するチャックを前記軸筒に対し前方へ付勢するように鉛芯付勢部材を設けている。
このシャープペンシルによれば、鉛芯のホルダーから突出した部分に、筆圧等により径方向の力が加わると、ホルダーが軸筒及び鉛芯に相対し前進するために、このホルダーによって鉛芯の前側を覆い、鉛芯の損傷等を防ぐことができる。
また、突出した鉛芯に対し軸方向に沿う後方への押圧力が加わった際には、鉛芯を挟持するチャックが鉛芯付勢部材の付勢力に抗して後退するため、このことによっても鉛芯の損傷等を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−123689号公報
【特許文献2】特開2014−198439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術によれば、前記ホルダーの内部に、鉛芯を挟持するチャックや該チャックを収容する筒状部材等を、径方向に重ね合わせるように具備しているため、外径が太くなり易く、各リフィールが比較的細身な出没式筆記具等(例えば特許文献2参照)において、シャープペンシル用リフィールとして適用するのは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
保持筒と、該保持筒の前側開口部に挿通されて該保持筒の前端から前方へ突出するとともに該保持筒に対し進退可能に支持されたホルダーと、該ホルダーに挿通される鉛芯を前方へ繰り出す鉛芯繰出し機構と、前記鉛芯から前記ホルダーに加わる径方向の力により前記ホルダーを前記保持筒及び前記鉛芯に相対し前進させる運動方向変換機構とを備え、前記鉛芯繰出し機構は、前記ホルダー及び前記運動方向変換機構よりも後方側に設けられているように設けられていることを特徴とするシャープペンシルユニット。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、外径を細くすることができ、出没式筆記具におけるシャープペンシル用リフィールとしての適用が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係るシャープペンシルユニットの一例を示す半断面図である。
図2】第3の筒部の一例を示し、(a)は全断面図、(b)は後端面図である。
図3】接続部の一例を示し、(a)は半断面図、(b)は後端面図である。
図4】同シャープペンシルユニットを具備した出没式筆記具の一例を示す内部構造図であり、軸筒のみを全断面で示している。
図5】鉛芯を繰り出すための動作を(a)(b)に順次に示す全断面図であり、前の状態から移動した部分のみをハッチングで示している。
図6図5に引き続き、鉛芯を繰り出すための動作を(c)(d)に順次に示す全断面図であり、前の状態から移動した部分のみをハッチングで示している。
図7】後方への押圧力により鉛芯が後退する様子を(a)(b)に順次に示す全断面図であり、前の状態から移動した部分のみをハッチングで示している。
図8】鉛芯に加わる径方向の力によりホルダーが前進する様子を(a)(b)に順次に示す全断面図であり、前の状態から移動した部分のみをハッチングで示している。
図9】鉛芯に加わる後方及び径方向の力によりホルダーが前進するとともに鉛芯が後退する様子を(a)(b)に順次に示す全断面図であり、前の状態から移動した部分のみをハッチングで示している。
図10図1のシャープペンシルユニットにおいて、ホルダーが芯ブレーカに当接する様子を(a)(b)に順次に示す全断面図であり、芯ブレーカ以外は前の状態から移動した部分のみをハッチングで示している。
図11】芯ブレーカの他例を具備したシャープペンシルユニットにおいて、ホルダーが芯ブレーカに当接する様子を(a)(b)に順次に示す全断面図であり、芯ブレーカ以外は前の状態から移動した部分のみをハッチングで示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態のシャープペンシルユニットにおける特徴の一つは、保持筒と、該保持筒の前側開口部に挿通されて該保持筒の前端から前方へ突出するとともに該保持筒に対し進退可能に支持されたホルダーと、該ホルダーに挿通される鉛芯を前方へ繰り出す鉛芯繰出し機構と、前記鉛芯から前記ホルダーに加わる径方向の力により前記ホルダーを前記保持筒及び前記鉛芯に相対し前進させる運動方向変換機構とを備え、前記鉛芯繰出し機構は、前記ホルダー及び前記運動方向変換機構よりも後方側に設けられている(図1及び図8参照)。
【0009】
他の特徴として、前記ホルダーの内周面には、その前端側で鉛芯の外周面に摺接する鉛芯摺接面と、該鉛芯摺接面よりも後側で鉛芯の外周面に近接する鉛芯ガイド面とが形成されている(図1及び図8参照)。
【0010】
他の特徴として、前記保持筒は、前記ホルダーを前方へ突出させるようにして内在する第1の筒部と、該第1の筒部に対しその後方側に接続された第2の筒部とを具備し、前記ホルダー及び前記運動方向変換機構は、第1の筒部内に設けられ、前記鉛芯繰出し機構は、第2の筒部内に設けられている(図1参照)。
【0011】
他の特徴としては、軸筒内に備えた複数のリフィールを選択的に出没させるようにした出没式筆記具において、前記複数のリフィールのうちの少なくとも一つとして、上記シャープペンシルユニットを具備した(図4参照)。
【0012】
<実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、本明細書中、軸方向とは、保持筒又は軸筒の中心線の延びる方向を意味する。また、「前」とは、前記軸方向の一方側であって鉛芯が繰り出される方向を意味する。また、「後」とは、前記軸方向の前記一方側に対する逆方向側を意味する。また、「径方向」とは、前記軸方向に対し直交する方向を意味する。また、「径外方向」とは、前記径方向に沿って軸心から離れる方向を意味する。「径内方向」とは、前記径方向に沿って軸心へ近づく方向を意味する。
【0013】
図1に示すシャープペンシルユニット1は、保持筒10、保持筒10内に挿通されて該保持筒10の前端から前方へ突出するとともに該保持筒10に対し進退可能に支持されたホルダー20、チャック部40により挟持された鉛芯xを進退運動によって繰出す鉛芯繰出し機構M2、保持筒10とホルダー20の間でホルダー20に加わる径方向の力によりホルダー20を保持筒10及び鉛芯xに相対し前進させる運動方向変換機構M1と、鉛芯繰出し機構M2に対し後方側から鉛芯xを供給する芯タンク部60等を具備している。
【0014】
保持筒10は、前記ホルダーを前方へ突出させるようにして内在する第1の筒部11と、該第1の筒部の後端側に同芯状に接続された第2の筒部12と、該第2の筒部12の後端側に同芯状に接続された第3の筒部13とから一体筒状に構成される。
【0015】
第1の筒部11は、前後端部を開口した円筒状の部材であり、運動方向変換機構M1及びホルダー付勢部材23等を内在している。
この第1の筒部11の内周面には、ホルダー付勢部材23の前端部を係止するための段状の係止部11bが設けられる。
第1の筒部11の外周面の前端側には、第1の筒部11の出没式筆記具の軸筒a1(図4参照)の前端開口縁に係止するための係止段部11cが形成される。
【0016】
ホルダー付勢部材23は、図示例によれば圧縮コイルスプリングであり、その前端部を係止部11bに当接し、後端部を受け部22に当接してホルダー20を後方へ付勢している。
【0017】
ホルダー20は、ホルダー本体部21と、ホルダー本体部21の後側に接続された受け部22とから一体に構成され、保持筒10に対し進退可能に支持される。
ホルダー本体部21は、保持筒10内に挿通されるとともに該保持筒10の前側開口部11aから前方へ突出する略円筒状の部材である。このホルダー本体部21の外周部には、第1の筒部11の前端開口縁に摺接する環状のカム斜面21aが設けられている。
【0018】
カム斜面21aは、図示例によれば、前方へ向かって拡径する円錐面状に形成され、ホルダー20に加わる径方向の力により該ホルダー20を保持筒10及び鉛芯xに相対し前進させる運動方向変換機構M1を構成する。
【0019】
また、ホルダー本体部21の内周面には、その前端側で鉛芯xの外周面に摺接する鉛芯摺接面21bと、鉛芯摺接面21bよりも後側で鉛芯xの外周面に対し若干の隙間を置いて近接する鉛芯ガイド面21cとが形成されている。
【0020】
そして、ホルダー本体部21の後端側には、ホルダー付勢部材23の後端を受ける受け部22が一体的に接続されている。
この受け部22は、外周面にホルダー付勢部材23を受ける段部22aを有する略円筒状に形成される。この受け部22の後端面の中心側には、前方へ向かって徐々に縮径する環状傾斜面22b(図10(a)参照)が形成される。この環状傾斜面22bは、後方から鉛芯xが挿通された際に該鉛芯の前端部を受け部22の中心部へ導き、また受け部22が後退した際には後述する芯ブレーカ31の前端部に当接する。
なお、受け部22は、図示例によればホルダー本体部21と別体の部材であるが、他例としては、ホルダー本体部21の後端側に一体に形成された部位とすることも可能である。
【0021】
また、第2の筒部12は、第1の筒部11の後端側に、螺合や嵌合等の接続手段によって接続された円筒状の部材である。この第2の筒部12の内周面には、その前端寄りに径内方向へ突出する環状凸部12aが形成される。
【0022】
芯ブレーカ31は、弾性材料から略円筒状に形成され、その内周面を、挿通される鉛芯xの外周面に緩圧接するとともに、その前端面によって後退した際のホルダー20を受ける。
【0023】
この芯ブレーカ31の外周面には、その前半部側に、段状に縮径された縮径部31aが形成される。この縮径部31aは、第2の筒部12の前端側の環状凸部12aの内周面に嵌め合せられ挿通される。そして、縮径部31aの前端側は、第2の筒部12の前端よりも前方へ突出している。
また、芯ブレーカ31外周面における縮径部31aよりも後ろ側の大径部分は、第2の筒部12に弾性的に嵌り合って、芯ブレーカ31が第2の筒部12に対し後退しないようにしている。
【0024】
また、第2の筒部12内において、芯ブレーカ31よりも後ろ側には、進退可能に支持されたチャック部40と、チャック部40に対し環状に嵌り合ったクラッチリング33とが設けられる。
【0025】
チャック部40は、チャック本体41と、チャック本体41の後端側に接続された受け部42とから一体的に構成される。
【0026】
チャック本体41は、周方向に間隔を置いて環状に配置した複数(例えば2〜4程度)の長尺片をその後端側で一体に連結してなる。そして、このチャック本体41は、前記複数の長尺片を径内方向へ弾性変形させ、これら長尺片前端側の爪部により鉛芯xを挟持する。
【0027】
クラッチリング33は、挟持状態のチャック本体41に嵌り合い、チャック本体41と共に前進した際に保持筒10内面の段状の係止部12cに当接して複数の前記爪部から外れ、チャック本体41の前端側を解放する。これらチャック本体41及びクラッチリング33の構造は、周知のものと略同様である。
【0028】
前述したチャック部40、クラッチリング33、係止部12c、及び芯ブレーカ31等は、鉛芯繰出し機構M2を構成している。
この鉛芯繰出し機構M2は、ホルダー20及び運動方向変換機構M1よりも後方側において第2の筒部12内に設けられる。
【0029】
また、第2の筒部12内において、クラッチリング33の後ろ側には、第2の筒部12内で所定量進退するように、略円筒状のクラッチ受け34が設けられる。
このクラッチ受け34は、その中心側にチャック本体41を遊挿している。
クラッチ受け34の外周部には、前後方向の中央寄りから径外方向へ突出するように環状突部34aが設けられる。この環状突部34aは、第2の筒部12内周面の段状の被当接部12dに対し後方から当接する。被当接部12dは、前記当接により、クラッチ受け34全体の前方への移動を規制する。
環状突部34aの後端部は、後述する第3の付勢部材51bの前端部を受けている。
そして、クラッチ受け34の最前端部は、クラッチリング33の後端部を受けている。
なお、このクラッチ受け34は、保持筒10内に所定量進退するように設けられ、クラッチリング33を後方側から受け、且つ第3の付勢部材51bによって前方へ付勢される構成であればよく、図示例以外の形状とすることも可能である。
【0030】
また、受け部42は、略円筒状の部材であり、その外周面の後端側に、第3の付勢部材51bを受ける段部42aを有する。この受け部42は、保持筒10内にてチャック本体41と共に一体的に進退する。
なお、受け部42は、図示例によればチャック本体41と別体に構成されるが、チャック本体41の後端側に一体的に形成された部位とすることも可能である。
【0031】
また、第3の筒部13は、図2に例示するように、前後端部を開口した略長尺円筒状の部材である。詳細に説明すれば、この第3の筒部13は、円筒状の筒部本体13aと、該筒部本体13aの後端縁から径内方向へ突出する係合部13bとから構成される。
係合部13bは、周方向に間隔を置いて複数設けられる。各係合部13bは、図2に示す一例によれば、筒部本体13a周円の接線に略平行な直線の突片状に形成される。この係合部13bは、後述する芯タンク部60における接続部61に対し進退するように係合する。
【0032】
ここで、第2の筒部12及び第3の筒部13内に設けられた複数の付勢部材について詳細に説明する。
第2の筒部12及び第3の筒部13内には、チャック部40を前方と後方へ異なる付勢力で付勢するチャック部付勢部材51と第2の付勢部材52が設けられている。
図示例のチャック部付勢部材51は、第1の付勢部材51aと、該第1の付勢部材51aの前側に連続する第3の付勢部材51bとから一体に構成された二段スプリングである。
なお、第1の付勢部材51aと第3の付勢部材51bは、他例として後述するように、それぞれ独立したスプリングとすることも可能である。
【0033】
第1の付勢部材51aの付勢力は、芯タンク部60に相対し、チャック部40を、予め設定された筆圧よりも強い付勢力で前方へ付勢するように設定される。前記筆圧は、通常の筆記姿勢で鉛芯xに加わる後方向きの力であり、実験又は計算等により予め求められる。
第1の付勢部材51aを構成するコイルバネの外径は、第3の付勢部材51bを構成するコイルバネの外径よりも大きく設定され、第3の付勢部材51bの付勢力は、第1の付勢部材51aの付勢力よりも大きく設定される。
【0034】
第1の付勢部材51aの後端部は、後述する芯タンク部60に当接している。また、第1の付勢部材51aは、その前端側部分を受け部42に係合させて、受け部42を前方へ付勢している。
第3の付勢部材51bは、後端部が受け部42の段部42aに受けられ、前端部がクラッチ受け34の環状突部34aに当接しており、クラッチ受け34に相対しチャック部40を後方へ付勢する。
【0035】
また、第2の付勢部材52は、第1の付勢部材51aよりも付勢力が小さいコイルバネである。この第2の付勢部材52の付勢力は、芯ブレーカ31と鉛芯xとの間の摩擦等による進退方向の抵抗力よりも大きく設定されている。
この第2の付勢部材52は、前端部を保持筒10の内面の段部(詳細には第2の筒部12の後端部)に当接し、後端部を第1の付勢部材51aの前端部に当接することで、第1の付勢部材51aの前端部に相対し保持筒10全体を前方へ付勢している。
【0036】
また、芯タンク部60は、鉛芯繰出し機構M2に対し後方側から鉛芯xを供給するように保持筒10の後端側に進退可能に接続されている。
この芯タンク部60は、接続部61と、接続部61の後端側に接続されたタンク本体62とから一体的に構成される。
【0037】
接続部61は、図3に例示するように、略円筒状の部材であり、その外周面の後部側に、第3の筒部13の係合部13b(図2参照)に対し進退可能に係合する被係合部61aを有する。
被係合部61aは、前後に延設された平坦面状のガイド面61a1と、該ガイド面61a1の前端から径外方向へ突出して係合部13bの前方への移動を規制する前側規制部61a2とを具備してなる。
また、接続部61の後部側の内周面は、タンク本体62の前端側外周面に嵌り合う円筒状に形成される。図3中、符号61bはタンク本体62の外周面に圧接される突部61b、符号61cは鉛芯xを一本ずつ前方へ導くガイド孔である。
【0038】
上記形状の接続部61によれば、複数のガイド面61a1を多角形状(図3(b)の一例によれば三角形状)に形成しているため、仮に該ガイド面61a1を円筒面状に形成した場合と比較し、係合部13bが引っ掛かる面積を大きくし、薄肉部分を減少でき、高強度な構造にすることができる。
なお、他例としては、係合部13bを径内方向へ突出する部分的な突起とし、被係合部61aを、前記突起に嵌り合って該突起を前後方向へ案内する溝とすることも可能である。
【0039】
タンク本体62は、前後端部を開口した長尺円筒状の部材であり、その前端側が接続部61に挿入され嵌合固定される。
なお、図示例によれば、接続部61とタンク本体62を別体の部材から構成しているが、他例としては、これら接続部61とタンク本体62を一体の部材により構成することも可能である。
【0040】
そして、上記構成のシャープペンシルユニット1は、例えば、図4に示す多機能出没式筆記具Aに装着することが可能である。
多機能出没式筆記具Aは、軸筒a1の後端側で外部に露出する複数の駒a2,a3を、選択的に前進させる操作により、前進した駒a2(又はa3)に接続されたリフィールの前端筆記部を、軸筒a1前端から前方へ突出させる。前記リフィールは、図示例によれば、シャープペンシルユニット1又はボールペンリフィール2である。
例えば、図4に示すように、開閉機能付きクリップa6を有する駒a2が、コイルスプリングa4の付勢力に抗して前進操作され、この駒a2に接続されたシャープペンシルユニット1(リフィール)の前端筆記部が、軸筒a1の前端開口部から前方へ突出すると、駒a2が軸筒a1周壁の係止部a5に係止され、この突出状態が維持される。
この突出状態において、所定の操作(具体的には、クリップa6を前進させる操作、又は尾栓a7を前進させる操作)を行えば、シャープペンシルユニット1の前端から鉛芯xが繰り出される。
なお、この多機能出没式筆記具Aの基本構造は、特許文献2に示すものと略同様である。
【0041】
次に、シャープペンシルユニット1及び多機能出没式筆記具Aについて、その特徴的な作用効果について説明する。
先ず、鉛芯xを繰り出す際の動作を、図5(a)(b)及び図6(c)(d)に沿って詳細に説明する。
図4に示す筆記部の突出状態において、駒a2を前進させると、図5(a)に示すように、保持筒10前端側の係止段部11cが、軸筒a1の前端開口縁に係止され、保持筒10の前方への移動が規制される。
【0042】
この規制状態において、さらに駒a2を前進させると、図5(b)に示すように、駒a2と一体的に芯タンク部60(ハッチング部分)が前進する。この前進の際、チャック部40の位置が、第3の付勢部材51bの後方向きの付勢力によって保持され、第3の付勢部材51bよりも付勢力の小さい第1の付勢部材51aのみが収縮する。
したがって、チャック部40と芯タンク部60の間隔Wが狭まり、芯タンク部60の前端がチャック部40の後端に当接する。
【0043】
次に、駒a2に対する操作により、さらに芯タンク部60が前進すると、図6(c)に示すように、鉛芯xを挟持したチャック部40が、芯タンク部60に押圧されて前進し、クラッチリング33が係止部12cに当接する。
そして、さらにチャック部40が前進すると、図6(d)に示すように、係止部12cに当接したクラッチリング33が、チャック部40前端側の爪部から外れ、チャック部40が弾性的に開動し鉛芯xを解放する。解放された鉛芯xは、芯ブレーカ31に緩圧接されているので進退せずに保持される。
次に、芯タンク部60に対する押圧力が除去されると、チャック部40が後退してクラッチリング33に嵌り合うとともに鉛芯xを挟持し、図5(a)に示す状態に戻る。
したがって、芯タンク部60の進退運動により鉛芯を繰り出すことができる。
【0044】
次に、鉛芯xに対し後方への過剰な押圧力が加わった際の動作を、図7(a)(b)に沿って詳細に説明する。
図7(a)は、シャープペンシルユニット1が軸筒a1から突出して係止された状態(図4参照)を示している。この突出状態において、芯タンク部60は、多機能出没式筆記具Aの駒a2によって後退不能に保持されている。
この突出状態において、筆記等により鉛芯xに対し軸方向に沿う後方への過剰な力が加わった場合、図7(b)に示すように、鉛芯x及び該鉛芯xを挟持しているチャック部40が、第1の付勢部材51aを収縮させるとともに第2の付勢部材52を弾性的な復元により伸長させて後退する。このため、鉛芯xの折れや損傷を防ぐことができる。
【0045】
なお、本実施の形態の好ましい一例では、第1の付勢部材51aよりも付勢力の小さい第2の付勢部材52によりチャック部40に相対し保持筒10を前方へ付勢しているため、チャック部40の前記後退につられて保持筒10も後退するようなことを阻み、後退した際の鉛芯xをホルダー20及び保持筒10内へ確実に収納することができる。
また、チャック部40の後退量は、チャック部40の受け部42が、芯タンク部60の接続部61に当接することで規制されるようになっている。
【0046】
次に、鉛芯xに対し径方向への過剰な押圧力が加わった際の動作を、図8(a)(b)に沿って詳細に説明する。
図8(a)は、図7(a)と同様に、シャープペンシルユニット1が軸筒a1から突出して係止された状態(図4参照)を示している。
この突出状態において、筆記等により鉛芯xに対し径方向への過大な力が加わった場合、図8(b)に示すように、ホルダー20のカム斜面21aが保持筒10の前側開口部11aに摺接して、ホルダー20がやや傾斜して前進する。このため、前進した際のホルダー20が、チャック部40によって挟持された鉛芯xの前端側を覆って、鉛芯xの折れや損傷等を防ぐ。
【0047】
また、鉛芯xに対し後方及び径方向への過剰な押圧力が加わった場合は、上述した図7(a)(b)の動作と図8(a)(b)の動作が双方共行われることになる。
すなわち、図9(a)(b)に示すように、鉛芯x及びチャック部40が後退するとともに、ホルダー20が前進して鉛芯xの前端側を覆う。したがって、鉛芯xの折れや損傷等を防ぐことができる。
【0048】
また、鉛芯xに対する径方向の過剰な押圧力によりホルダー20が前進した場合(図8及び図9参照)、この後、前記径方向の過剰な押圧力が除去されると、図10(a)(b)に示すように、ホルダー付勢部材23の付勢力によりホルダー20が後退することになる。
この際、ホルダー20後端側の受け部22が、芯ブレーカ31前端側の突出部分31bに当接し、芯ブレーカ31が弾性変形するため、この際の当接音を軽減することができる。
【0049】
なお、芯ブレーカ31の他例としては、図11に例示する芯ブレーカ31’のようにしてもよい。
芯ブレーカ31’は、芯ブレーカ31において保持筒10前端よりも突出する部分に拡径部31cを形成することで、芯ブレーカ31前端側における拡径部31cよりも後側の外周部を環状凹部31dとし、この環状凹部31dを、保持筒10側の環状凸部12aに嵌め合せるようにしている。
この芯ブレーカ31’を用いたシャープペンシルユニット1及び多機能出没式筆記具Aによれば、図11(a)(b)に示すように、拡径部31cによって芯ブレーカ31’が保持筒10に対し後方へ脱落するのを防ぐことができる上、比較的外径の大きい拡径部31cより消音効果を向上することができる。
【0050】
また、上記実施態様によれば、複数のリフィールを具備する多機能出没式筆記具について、複数のリフィールのうちの一部にシャープペンシルユニット1を適用するようにしたが、他例としては、単数のリフィールを出没させるようにした出没式シャープペンシルにおいて、この単数のリフィールにシャープペンシルユニット1を適用した態様や、リフィールを出没させることのないシャープペンシルにおいて、該リフィールにシャープペンシルユニット1を適用した態様等とすることも可能である。
【0051】
また、上記実施態様によれば、保持筒10を独立した三つの筒部(第1の筒部11,第2の筒部12及び第3の筒部13)から一体的に構成したが、他例としては、これらのうちの一部又は全部を一体の単一部材とすることも可能である。さらに、他例としては、保持筒10を、四つ以上の独立した部材から一体的に構成することも可能である。
【0052】
また、上記実施態様によれば、特に生産性の良好な好ましい態様として、第1の付勢部材51aと第3の付勢部材51bを二段スプリングとして一体に構成したが、他例としては、第1の付勢部材51aと第3の付勢部材51bをそれぞれ別体のコイルスプリングとすることも可能である。
この場合、第1の付勢部材51aは、チャック部40を前方へ付勢するように、チャック部40と一体の受け部42に対し係合する。この係合構造は、例えば、第1の付勢部材51aの前端側を受け部42に対し嵌合した態様や、受け部42に鍔部を設けて該鍔部の後端面に第1の付勢部材51aの前端部を当接させるとともに同鍔部の前端面に第2の付勢部材52の後端部を当接させた態様等とすることが可能である。
【0053】
また、上記実施態様によれば、運動方向変換機構M1によって後退するホルダー20を、芯ブレーカ31に当接させる構成としたが、他例としては、運動方向変換機構M1を具備せずに進退するホルダー(パイプ状のものを含む)を有するシャープペンシル構造において、該ホルダーを芯ブレーカ31に当接させて、その当接音を軽減する態様とすることも可能である。
【0054】
また、上記実施態様によれば、特に好ましい態様として、芯ブレーカ31全体を弾性材料から形成したが、他例としては、芯ブレーカ31の前端側部分のみを部分的に弾性材料から形成した態様とすることも可能である。
【0055】
また、上記実施態様に加える好ましい構成として、チャック部40における受け部42の後端側に、後方へ突出して芯タンク部60の接続部61に対しスライド可能に嵌り合うガイド部材を設けて、チャック部40の直進安定性をより向上することも可能である。
【0056】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0057】
10:保持筒
11:第1の筒部
12:第2の筒部
13:第3の筒部
20:ホルダー
21:ホルダー本体部
22:受け部
23:ホルダー付勢部材
31,31’:芯ブレーカ
31d:環状凹部
33:クラッチリング
34:クラッチ受け
40:チャック部
41:チャック本体
42:受け部
51:チャック部付勢部材
51a:第1の付勢部材
51b:第3の付勢部材
52:第2の付勢部材
60:芯タンク部
61:接続部
62:タンク本体
A:多機能出没式筆記具
M1:運動方向変換機構
M2:鉛芯繰出し機構
x:鉛芯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11