(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670144
(24)【登録日】2020年3月3日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】電力量計結線器
(51)【国際特許分類】
G01R 35/00 20060101AFI20200309BHJP
G01R 11/04 20060101ALI20200309BHJP
G01R 11/00 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
G01R35/00 F
G01R11/04 B
G01R11/00 H
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-61173(P2016-61173)
(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公開番号】特開2017-173198(P2017-173198A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000180313
【氏名又は名称】四国計測工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(72)【発明者】
【氏名】片岡 忠
(72)【発明者】
【氏名】峰久 浩二
(72)【発明者】
【氏名】川又 早人
(72)【発明者】
【氏名】河田 康臣
【審査官】
田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−235527(JP,A)
【文献】
特開2008−185402(JP,A)
【文献】
特開2015−075476(JP,A)
【文献】
特開2013−185896(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第102819005(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 11/00−11/66、
21/00−22/10、
35/00−35/06、
1/00−1/04、
1/08−5/00、
5/10−9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の結線機構と、
同一直線上に配置された板状の外部端子を複数備える電力量計を載置するための載置部を有する基台と、
前記複数個の結線機構の間隔を調節可能とするスライド機構と、
前記スライド機構に取り付けられ、電力量計の計器固定部に当接するガイド部材とを備え、
前記結線機構のそれぞれが、通電部材と、少なくとも前記電力量計の外部端子と接触する部分が絶縁材により構成された押付部材と、押付部材の通電部材への押し付けを解除する第一位置と押付部材を通電部材へ押し付ける第二位置を有する押圧装置とを備えることを特徴とする電力量計結線器。
【請求項2】
前記複数個の結線機構が、通電部材の上部側の間隔が狭く、通電部材の下部側の間隔が広くなるように放射配置されることを特徴とする請求項1に記載の電力量計結線器。
【請求項3】
前記複数個の結線機構が、4個の結線機構からなり、4個のうち1個の結線機構が前記押付部材に固設された第二通電部材を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の電力量計結線器。
【請求項4】
前記第二通電部材が設けられた結線機構が、左から三番目または四番目に位置する結線機構であり、
前記第二通電部材が、外部端子との当接時に弾性変形する金属板を含んで構成されることを特徴とする請求項3に記載の電力量計結線器。
【請求項5】
前記通電部材が、前記外部端子の最も広い面と面接触する最広面を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の電力量計結線器。
【請求項6】
前記載置部が、前記基台に対して傾動可能であり、前記基台から離れる方向に付勢されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の電力量計結線器。
【請求項7】
前記押圧装置が、押付部材を50N以上の力で通電部材に押し付けることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の電力量計結線器。
【請求項8】
前記スライド機構が、ガイドシャフトと、ガイドシャフトに挿通されたリニアブッシュを備えて構成されることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の電力量計結線器。
【請求項9】
複数種類の電力量計の外部端子の配置のうち、選択された一の配置に前記複数個の結線機構の位置決めをする位置決め機構を備えることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の電力量計結線器。
【請求項10】
前記位置決め機構が、電力量計の種類を入力する入力装置を有し、入力された電力量計の種類に応じて自動で位置決めをすることを特徴とする請求項9に記載の電力量計結線器。
【請求項11】
前記電力量計結線器が、複数台並べて配置された電力量計結線器からなり、
前記位置決め機構が、前記複数台の電力量計結線器の結線機構を同時に位置決めすることを特徴とする請求項9または10に記載の電力量計結線器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子配置が異なる複数種類の電力量計を試験装置に結線するための結線器に関する。
【背景技術】
【0002】
電力量計の出荷前には試験装置を用いた試験が行われており、試験装置の電源部と電力量計の外部端子を結線するために結線器が用いられている。
従来の機械式電力量計および電子式電力量計は、電線にて接続するための端子ブロックが、電力量計本体と一体化した形状であった。この電力量計(以下、「端子ブロック一体電力量計」という場合がある)の端子ブロックには、
図12に示すように、外部端子52、試験端子53および通信コネクタ54が設けられている。
【0003】
この端子ブロック一体電力量計の検定を行うための結線器としては、例えば、端子ブロックに取り付けられた試験端子に対して結線器の端子を前面より押し当て、端子ブロックの底面に配置された外部端子に割端子を挿入し、割端子を開いて電力量計の外部端子と接触させ、結線する方法が知られている(特許文献1)。この結線器は、電力量計に対応する位置決めブロックを固定フレームに取付け、スライド機構の左右方向の位置決めをすることにより、複数種類の電力量計に対応することが可能とされている。
【0004】
ところで、近年、スマートメータと定義される電力量計が普及しつつある。初期タイプのスマートメータは、
図11に示すように、試験時には端子ブロックが分離されており、4個の電流端子11a〜11dおよび3個の電圧端子12a〜12cが電力量計本体10の底面から突出する形で配置されている。この端子の配列を有するスマートメータ(以下、「虚負荷試験型スマートメータ」という場合がある)は、電圧源および電流源を別々に接続し、電圧源から試験電圧を供給し、電流源から試験電流を供給する、虚負荷試験を行うことが可能である。
【0005】
上述の端子ブロック一体電力量計の結線器は、端子形状が相違することから、
図11に示すスマートメータで利用することはできない。そこで、出願人は、定格により異なる端子配置の虚負荷試験型スマートメータに結線を行うべく、複数種類の結線器を搭載する自動結線器ユニットを備える電力量計自動検査装置を提案した(特許文献2)。
【0006】
しかしながら、昨今、電流端子と電圧端子とが同一直線上に配置されるタイプのスマートメータ(以下、「実負荷試験型スマートメータ」という場合がある)が販売されるようになった。
図1は、実負荷試験型スマートメータの構成例である。
図1(a)に示すスマートメータ20は、単相2線式の定格30Aの電力量計であり、3個の外部端子21a〜21cと、2個の計器固定部22a,22bとを備えている。
図1(b)に示すスマートメータ30は、単相3線式または三相3線式の定格60Aの電力量計であり、5個の外部端子31a〜31eと、2個の計器固定部32a,32bとを備えている。
図1(c)に示すスマートメータ40は、単相3線式または三相3線式の定格120Aの電力量計であり、5個の外部端子41a〜41eと、2個の計器固定部42a,42bとを備えている。
【0007】
実負荷試験型スマートメータに対応する結線器としては、例えば、異なる位置に配置された複数の接触部を有する電気接続端子を備え、電力量計の種類に応じて外部端子と接触する接触部を切り替える自動結線装置が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−185402号公報
【特許文献2】特開2014−59153号公報
【特許文献3】特開2015−75476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来から、相線式、定格電圧、定格電流の違いにより外部端子の数や配置が異なる複数種類の電力量計に対応可能な結線器が求められており、実負荷試験型スマートメータにおいても同様のニーズがある。
【0010】
出願人が提案した特許文献2に記載の結線器を実負荷試験型スマートメータに適用することも考えられるが、このタイプの結線器は、複数種類の結線器をユニット化しているため、部品点数が増えることによるコスト増の問題、装置の大形化による設置スペースの問題、メンテナンスの困難性の問題などがあった。
【0011】
また、スマートメータを含む電力量計の試験時に、外部端子に金属部材を押圧させることで傷がつき、中古品であると誤解されるおそれがある。試験時に外部端子に傷がつくことを防ぐことができる電力量計結線器が求められている。
さらには、スマートメータを含む電力量計の外部端子に当接する部分は、定期的な保守作業が必要である。部品交換が容易な電力量計結線器が求められている。
【0012】
そこで、本発明は、上記課題を解決することのできる電力量計結線器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
[1]複数個の結線機構と、同一直線上に配置された板状の外部端子を複数備える電力量計を載置するための載置部を有する基台と、前記複数個の結線機構の間隔を調節可能とするスライド機構と、前記スライド機構に取り付けられ、電力量計の計器固定部に当接する ガイド部材とを備え、前記結線機構のそれぞれが、通電部材と、少なくとも前記電力量計の外部端子と接触する部分が絶縁材により構成された押付部材と、押付部材の通電部材への押し付けを解除する第一位置と押付部材を通電部材へ押し付ける第二位置を有する押圧装置とを備えることを特徴とする電力量計結線器。
[2]前記複数個の結線機構が、通電部材の上部側の間隔が狭く、通電部材の下部側の間隔が広くなるように放射配置されることを特徴とする[1]に記載の電力量計結線器。
[3]前記複数個の結線機構が、4個の結線機構からなり、4個のうち1個の結線機構が前記押付部材に固設された第二通電部材を備えることを特徴とする[1]または[2]に記載の電力量計結線器。
[4]前記第二通電部材が設けられた結線機構が、左から三番目または四番目に位置する結線機構であり、前記第二通電部材が、外部端子との当接時に弾性変形する金属板を含んで構成されることを特徴とする[3]に記載の電力量計結線器。
[5]前記通電部材が、前記外部端子の最も広い面と面接触する最広面を備えることを特徴とする[1]ないし[4]のいずれかに記載の電力量計結線器。
[6]前記載置部が、前記基台に対して傾動可能であり、前記基台から離れる方向に付勢されていることを特徴とする[1]ないし[5]のいずれかに記載の電力量計結線器。
【0014】
[7]前記押圧装置が、押付部材を50N以上の力で通電部材に押し付けることを特徴とする[1]ないし[6]のいずれかに記載の電力量計結線器。
[8]前記スライド機構が、ガイドシャフトと、ガイドシャフトに挿通されたリニアブッシュを備えて構成されることを特徴とする[1]ないし[7]のいずれかに記載の電力量計結線器。
[9]複数種類の電力量計の外部端子の配置のうち、選択された一の配置に前記複数個の結線機構の位置決めをする位置決め機構を備えることを特徴とする[1]ないし[8]のいずれかに記載の電力量計結線器。
[10]前記位置決め機構が、電力量計の種類を入力する入力装置を有し、入力された電力量計の種類に応じて自動で位置決めをすることを特徴とする[9]に記載の電力量計結線器。
[11]
前記電力量計結線器が、複数台並べて配置された電力量計結線器からなり、前記位置決め機構が、
前記複数台の電力量計結線器の結線機構を同時に位置決めすることを特徴とする[9]または[10]に記載の電力量計結線器。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外部端子の数や配置が異なる複数種類の電力量計に対応することのできる電力量計結線器を提供することが可能となる。
また、試験時に外部端子に傷がつくことを防ぐことができる。
さらには、定期的な保守作業が必要な部分である結線機構が、一体的に構成されていないことから、保守作業の負荷を低減させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実負荷試験型スマートメータの正面図であり、(a)は単相2線式定格30A、(b)は単相3線式または三相3線式定格60A、(c)は単相3線式または三相3線式定格120Aの正面図である。
【
図2】実施形態例に係る電力量計結線器の正面図である。
【
図3】実施形態例に係る電力量計結線器の正面側からの斜視図である。
【
図4】実施形態例に係る電力量計結線器の側面側からの斜視図である。
【
図5】(a)は結線機構の斜視図、(b)は押付部材が第一位置にある結線機構の側面図、(c)は押付部材が第二位置にある結線機構の側面図である。
【
図6】第二通電部材を備える結線機構の側面図である。
【
図7】(a)は端子間ピッチが小さい場合の結線機構の配置を示す正面図であり、(b)は端子間ピッチが大きい場合の配置を示す正面図である。
【
図8】定格30Aのスマートメータの結線状態を示す正面図である。
【
図9】定格60Aのスマートメータの結線状態を示す正面図である。
【
図10】定格120Aのスマートメータの結線状態を示す正面図である。
【
図11】虚負荷試験型スマートメータの(a)正面図、(b)底面図である。
【
図12】端子ブロック一体電力量計の(a)正面図、(b)底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態例に係る電力量計結線器を説明する。
実施形態例に係る電力量計結線器100は、スマートメータと定義される電力量計を結線するための結線器である。実施形態例の電力量計結線器100が結線対象とするのは、最大面積面が正面側および背面側に向くように配置された複数の板状外部端子が、幅方向に配置されたスマートメータであり、典型的には
図1に例示される実負荷試験型スマートメータが結線対象となる。
【0018】
<構成>
図2は、実施形態例に係る電力量計結線器100の正面図であり、
図3は正面側からの斜視図であり、
図4は側面側からの斜視図である。
電力量計結線器100は、基台101と、載置部102と、スライド機構110と、保持部材120と、結線機構130とを備えて構成される。
【0019】
基台101は、各部材を支持する電力量計よりも一回り大きい板であり、スライド機構110等の各種部品が配置される。
図2および
図4に示すように、基台101の下半部には2個の略矩形状の開口部101A,101Bが設けられており、裏面に向けて開口部101Aからはピン115a,115bが、開口部101Bからはピン115cが突出している(
図4参照)。基台101は、電力量計結線器100に電力量計を設置しやすいよう、フレーム(図示せず)に傾斜した状態で固定される。なお、基台101は、水平に設置してもよいし、垂直に設置してもよい。
【0020】
基台101は、電力量計を載置するための平面部位である載置部102を備えている。載置部102は、基台101の一部である隆起部として構成される(すなわち、基台101の形状を側面から視て略L字形とする)場合もあれば、基台101に別の部材(例えば、導電性を有する金属板)を取り付けることにより構成される場合もある。なお、載置部102は、金属以外の材料により構成することも可能であり、更に電力量計を係止するための係止部材(フック等)を載置部に設けてもよい。実施形態例の載置部102は、四隅近傍に設けられた4個の弾性部材103a〜103dおよび一対の支持柱104a,104bにより基台101の上半部に傾動可能に支持されている。4個の弾性部材103a〜103dは、例えば、金属製のバネであり、載置部102を基台101から離れる方向に付勢し、ガイド部材121a,121bと協働して電力量計をガイドする。また、4個の弾性部材103a〜103dを独立して伸縮することを可能とすることで、電力量計の寸法誤差や外部端子の傾きを吸収して、外部端子と結線機構130の接触を確実にしている。
支持柱104a,104bには、図示しない突出片(マシンキー)の上部を突出するための長溝を設けており、突出片の上部で載置部102を支持している。
【0021】
スライド機構110は、結線機構130を平行移動させるための機構であり、基台101の下半部に設けられている。スライド機構110は、水平方向に延びる2本のガイドシャフト111a,111bと、3組のリニアブッシュ(112a〜112c,113a〜113c)と、支持部材114a〜114dと、3個のピン115a〜115cと、を備えて構成される。
2本のガイドシャフト111a,111bは、同一長のロッド状部材であり、基台101に配置された支持部材114a〜114dによりそれぞれ両端を固定されている。支持部材114a〜114dは、ねじ等の固定具により、基台101に固定されている。
【0022】
リニアブッシュ(112a〜112c,113a〜113c)は、後述する保持部材(120a,120b,120d)をスライド自在にする部材であり、上下に対をなして2本のガイドシャフト111a,111bに摺動可能に挿通されている。より詳細には、リニアブッシュ112aと113aとが連結部材122aにより架橋連結され、リニアブッシュ112bと113bとが連結部材122bにより架橋連結され、リニアブッシュ112cと113cとが連結部材122cにより架橋連結されている。リニアブッシュ(112a〜112c,113a〜113c)は、摺動面の摩擦力を低減してガイドシャフト111a,111bに沿っての摺動を容易とするための多数のボール備えている。
【0023】
図4に示すように、3組のリニアブッシュ(112a〜112c,113a〜113c)を架橋連結する3つの連結部材(122a〜122c)の背面側には、ピン115a〜115cがそれぞれ設けられている。ピン115a〜115cには、図示しない位置決め機構が連結され、この位置決め機構によりリニアブッシュ(112a〜112c,113a〜113c)を位置決めすることができる。この位置決め機構は、入力装置から電力量計の種類を入力すれば機械が自動で位置決めを行う構成(例えば、ボールねじとステッピングモータ)を採用してもよいし、人が手動で位置決めを行う構成(例えば、スライド位置目盛りおよびピン連結具を搭載するスライダ)を採用してもよい。
【0024】
保持部材120a〜120dは、結線機構130a〜130dが配置される板状ないしは直方体状の絶縁部材である(
図5および
図6参照)。4つの保持部材のうち、外側にある2つの保持部材(120a,120d)は、ガイド部材121a,121bと連結されている。実施形態例では、保持部材120a〜120dの全体を樹脂(例えば、エンジニアリングプラスチック)により構成しているが、結線機構130a〜130dとスライド機構110を絶縁することができれば、保持部材120a〜120dの全体を絶縁材により構成する必要は無い。
【0025】
4つの保持部材のうち、3つの保持部材(120a,120b,120d)は、リニアブッシュ(112a〜112c,113a〜113c)によりスライド自在とされた板状体であるが、直方体状の保持部材120cは2本のガイドシャフト111a,111bが挿通されているものの固定されている。保持部材120cを固定位置としているのは、これを位置決め時の基準として用いるためである。実施形態例は、保持部材120cが保持する結線機構130cと電力量計の特定の端子の位置を合わせ、残りの結線機構(130a,130b,130d)を移動して残りの端子の位置を合わせる仕様である。
【0026】
ガイド部材121a,121bは、保持部材120a,120dの上部に設けられた柱状部材であり、電力量計の計器固定部をガイドし、左右の位置決めをするための突起部を有している。保持部材120a,120dを左右に摺動することでガイド部材121a,121bの間隔を調整できるので、様々な種類の電力量計(スマートメータ)に対応することが可能である。実施形態例では、ガイド部材121a,121bの全体を樹脂(例えば、エンジニアリングプラスチック)により構成しているが、少なくとも電力量計が当接する可能性がある部分を絶縁材により構成すれば足り、ガイド部材121a,121bの全部を絶縁材により構成する必要はない。
【0027】
結線機構130a〜130dは、電力量計の外部端子(21,31,41)を狭圧し、試験装置と電力量計とを電気的に接続する。結線機構130a〜130dは、通電部材131a〜131d、押付部材132a〜132dおよび押圧装置133a〜133dを備えて構成され、通電部材131a〜131dおよび押付部材132a〜132dにより外部端子(21,31,41)を狭圧する。
【0028】
通電部材131a〜131dは、金属材からなる板状部材であり、最広面で電力量計の外部端子(21,31,41)と接触する。通電部材131a〜131dは、外部端子との接触面積をかせぎながら狭い空間に配列しなくてはならないため、外部端子と実質的に同幅(同幅、外部端子よりも僅かに幅狭、または僅かに幅広)に構成することが好ましく、例えば、12〜14mmの幅に構成される。
【0029】
通電部材131a〜131dは、大電流印加時の過加熱や測定精度の低下を抑えるために低抵抗の金属材により構成することが好ましく、例えば、銅板にメッキを施して構成される。また、挟圧時の変形を抑えるべく、十分な厚さ(例えば、5〜15mm)を有することが好ましい。
通電部材131a〜131dの先端部分(上端部分)は、角部を有しない円弧状などの形状とすることが好ましい。
通電部材131a〜131dは、保持部材120a〜120dの上端から上方に突出するように配置されており、下端部には電線136a〜136dがボルト等で接続されている(
図5参照)。保守作業時には電線136を固定するボルトを外し、通電部材131を保持部材120に固定するねじ等の固定具を外すことにより、通電部材131を容易に交換することが可能である。
【0030】
押付部材132a〜132dは、絶縁材により構成された側面視略三角形状の板材であり、通電部材131a〜131dと対向するように配設される。
図5に示すように、押付部材132a〜132dは、上端部に通電部材131a〜131dに突出する円弧状の突出部1321a〜1321dを有しており、この突出部1321a〜1321dを電力量計の外部端子に押圧して外部端子を狭圧する。正面側から見た押付部材132a〜132dの幅は、通電部材131a〜131dと実質的に同幅(僅かに幅狭)である。
【0031】
実施形態例では、押付部材132の全部を樹脂(例えば、エンジニアリングプラスチック)により構成しているが、少なくとも外部端子が当接する可能性がある部分を絶縁材により構成すれば足り、押付部材132の全部を絶縁材により構成する必要はない。押付部材132により外部端子に傷が付くことを防ぐとの観点からは、少なくとも外部端子が当接する部分(実施形態例の突出部1321に対応する部分)を樹脂により構成することが好ましい。
押付部材132の通電部材131側の角部は、保持部材120に設けられた一対の支持部材134により揺動可能に支持されている。押付部材132の通電部材131から最も遠くに位置する角部は、押圧装置133のピストン1331の先端部に連結されており、ピストン1331の伸縮移動により外部端子(21,31,41)に当接したり、離間したりする。
【0032】
結線機構130cは、通電部材131cの右側に並んで配置される第二通電部材135を備えている。第二通電部材135は、正面視L字形の金属板であり、電力量計の外部端子に正面側から押しつけられると弾性変形する。
図6に示すように、第二通電部材135は、押付部材132cの側面に固定されており、押圧装置133が第二位置を取ると、板バネの如く屈曲することで所定の接触荷重をもって外部端子に当接する。第二通電部材135は、図示しない電線により試験装置に接続されており、通電部材131cが当接する外部端子(例えば、31c)の右隣の外部端子(例えば、31d)に通電する。第二通電部材135が当接する外部端子は電圧端子であり、大電流は印加されないため、他の外部端子のように十分な接触面積を確保する必要は無い。そのため、第二通電部材135は、他の結線機構のように外部端子を狭圧することなく、正面側からの押しつけにより外部端子に当接される。
なお、実施形態例とは異なり、結線機構130dに第二通電部材を設けてもよい。
【0033】
押圧装置133は、ピストン1331とシリンダ1332とを備えて構成され、ピストン1331を後退させて押付部材132を外部端子(21,31,41)から離間させる第一位置(
図5(b)参照)と、ピストン1331を進出させて押付部材132を外部端子(21,31,41)に当接させる第二位置(
図5(c)参照)とを取る。シリンダ1332は、例えばエアシリンダにより構成される。実施形態例では、結線機構130a〜130dが備えるシリンダ1332a〜1332dは同一仕様であり、一つのエア供給源から四つに分岐して圧縮エアを供給する構成としている。通電部材131と外部端子との接触面積を十分に確保するためには押付部材132を一定以上の力で押圧する必要があり、例えば、数十N〜百数十Nの力で押圧する。一定以上の力で押圧することにより、通電部材131に外部端子をフィットさせるのみならず、ミクロな凹凸等による非接触を解消することで接触面積が確保される。ここで、外部端子との接触面積が足らない場合とは、大電流(例えば、30A〜120A)を流した際に、JIS等の試験規格外の過加熱が生じる場合をいう。
【0034】
結線機構130a〜130dは、それぞれ一つの押圧装置133a〜133dを備えており、1つの押圧装置で押付部材132a〜132dの全部を押圧する構成と比べ、外部端子の位置や厚みのばらつきを吸収することができるので、全ての外部端子について十分な接触面積を確保することが可能である。押付部材132a〜132dおよび押圧装置133a〜133dは、手前側に露出して配置されているため、交換等の作業も容易である。
【0035】
結線機構130a〜130dは、上部の間隔が狭く、下部の間隔が広い放射状に配置されている。電力量計の外部端子の間隔は、最も小さい場所では数mm程度しか無いため、放射状に配置しないと結線機構130a〜130dを狭い空間内に配置することができないからである。上述したように、通電部材131と外部端子との接触面積を確保するためには押付部材132を一定以上の力で押圧する必要があり、押圧装置133の小型化には制約がある。そのため、押付部材132と押圧装置133とを一対一で対応させる構成を取る場合、結線機構130a〜130dを放射状に配置する必要がある。
【0036】
<結線動作>
結線機構130a〜130dの結線動作について説明する。
図7(a)は、外部端子間ピッチが狭い電力量計に結線する場合の結線機構130a〜130dの配置を示す正面図である。まずは、固定されている通電部材132cおよび第二通電部材135に電流端子および電圧端子が当接するように電力量計を載置部102上に仮設置し、位置合わせをする。この際、結線機構130a〜130dは、押付部材132a〜132dが開状態となる第一位置としておく。
続いて、結線機構130b,130dをスライドして位置決めし、最後に結線機構13aをスライドして位置決めする。全ての結線機構130の位置決めが完了すると、電力量計を載置部102上に設置する。この際、電力量計の外部端子は導電部材131と押付部材132との間に位置している(
図5(b)参照)。
【0037】
続いて、押圧装置133a〜133dを一斉に駆動し、押付部材132a〜132dを第二位置とすることで、外部端子を通電部材131a〜131dと協働して狭圧する。押付部材132cを第二位置とすることにより、第二通電部材135も外部端子(電圧端子)に当接される(
図6参照)。
以上により、通電部材131と外部端子との結線動作が完了する。所定の試験の完了後は、押圧装置133a〜133dを駆動して押付部材132a〜132dを第一位置とすることで、結線が解除される(
図5(b)参照)。
【0038】
図8は、単相2線式定格30Aの実負荷試験型スマートメータ20と結線した電力量計結線器100の正面図である。載置台102に載置されたマートメータ20は、ガイド部材121a,121bにより計器固定部22a,22bがガイドされた状態にある。結線機構130aは外部端子21aを挟圧し、結線機構130dは外部端子21cを挟圧し、結線機構130cの第二通電部材135は外部端子21bに当接している。結線機構130bと結線機構130cの通電部材131cは使用しない。
【0039】
図9は、単相3線式または三相3線式定格60Aの実負荷試験型スマートメータ30と結線した電力量計結線器100の正面図である。載置台102に載置されたマートメータ30は、ガイド部材121a,121bにより計器固定部32a,32bがガイドされた状態にある。結線機構130aは外部端子31aを挟圧し、結線機構130bは外部端子31bを挟圧し、結線機構130cは外部端子31cを挟圧するのと共に第二通電部材135を外部端子31dに当接させ、結線機構130dは外部端子31eを挟圧している。スマートメータ20の場合と比べ、結線機構130aが左側に位置している。
【0040】
図10は、単相3線式または三相3線式定格120Aの実負荷試験型スマートメータ40と結線した電力量計結線器100の正面図である。載置台102に載置されたマートメータ40は、ガイド部材121a,121bにより計器固定部42a,42bがガイドされた状態にある。結線機構130aは外部端子41aを挟圧し、結線機構130bは外部端子41bを挟圧し、結線機構130cは外部端子41cを挟圧するのと共に第二通電部材135を外部端子41dに当接させ、結線機構130dは外部端子41eを挟圧している。結線機構130aが支持柱104aと至近距離にあり、結線機構130dが支持柱104bと至近距離にある。
【0041】
以上に説明した実施形態例の電力量計結線器100は、複数台並べて配置され、同時に同一種類の複数台(例えば、2〜40台)の電力量計(スマートメータ)を結線することができるように構成される。複数台並べて配置する場合は、対応する結線機構130のピン115を連結し、同時に複数台の位置決めをできるように構成することが好ましい。例えば、第一の電力量計結線器100の結線機構130a〜130d、第二の電力量計結線器100の結線機構130a〜130d、第三の電力量計結線器100の結線機構130a〜130dの対応する連結機構をそれぞれ連結部材で連結することで、各電力量計結線器100の結線機構130a〜130dの位置決めを同時に行うことが開示される。
【0042】
以上に説明した実施形態例の電力量計結線器100によれば、結線機構130のピッチを可変とすることができるので、定格や端子間ピッチの異なる複数種類の電力量計(スマートメータ)に対応することができる。また、押付部材132が樹脂により構成され、通電部材131が最広面で外部端子と面接触するので、結線時に電力量計(スマートメータ)の外部端子を傷つけるおそれがない。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
10:虚負荷試験型スマートメータ
11a〜11d:電流端子
12a〜12c:電圧端子
20:実負荷試験型スマートメータ(単相2線式定格30A)
21a〜21c:外部端子
22a,22b:計器固定部
30:実負荷試験型スマートメータ(単相3線式または三相3線式定格60A)
31a〜31e:外部端子
32a,32b:計器固定部
40:実負荷試験型スマートメータ(単相3線式または三相3線式定格120A)
41a〜41e:外部端子
42a,42b:計器固定部
100:電力量計結線器
101:基台
102:載置部
103a〜103d:弾性部材
104a,104b:支持柱
110:スライド機構
111a,111b:ガイドシャフト
112a〜112c:(上段)リニアブッシュ
113a〜113c:(下段)リニアブッシュ
114a〜114d:支持部材
115a〜115c:ピン
120a〜120d:保持部材
121a,121b:ガイド部材
122a〜122c:連結部材
130a〜130d:結線機構
131a〜131d:通電部材
132a〜132d:押付部材
133a〜133d:押圧装置
134:支持部材
135:第二通電部材
136a〜136d:電線