(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基材の厚さ(T1)に対する前記接着剤層の厚さ(T2)の比(T2/T1)は、0.01以上、5.0以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の回路部材接続用シート。
前記接着剤層は、示差走査熱量分析法により昇温速度10℃/分で測定される発熱開始温度(TS)が、70℃〜150℃の範囲内であり、発熱ピーク温度(TP)が、TS+5〜60℃であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の回路部材接続用シート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔回路部材接続用シート〕
図1に示すように、本実施形態に係る回路部材接続用シート1(以下「接続用シート1」という場合がある。)は、基材11と、基材11の少なくとも一方の面側に積層された粘着剤層12と、粘着剤層12における基材11とは反対の面側に積層された接着剤層13とを備える。
【0027】
本実施形態に係る回路部材接続用シート1は、相対向する電極間に介在され、相対向する電極を電気的に接続するために用いられるものである。回路部材としては、回路に電極が形成された部材であれば特に限定されないが、例えば、半導体チップ、半導体ウエハのほか、リードフレーム、セラミック回路基板、ガラス回路基板などの無機回路基板、有機リジッド回路基板、フレキシブル回路基板などの有機回路基板、を挙げることができる。これらのなかでも、本実施形態に係る回路部材接続用シート1は、半導体チップと上述したような回路基板との間の接続、および半導体チップ同士の接続に使用することが好ましい。また、特に半導体チップおよび半導体ウエハについては、表面にバンプを有しているか、貫通電極を備えているか、またはバンプおよび貫通電極の両方を備えていることが好ましい。半導体チップまたは半導体ウエハがバンプと貫通電極との両方を備えている場合、バンプは、貫通電極の一端または両端に設けられていてもよい。また、半導体チップまたは半導体ウエハが貫通電極のみを備えている場合、貫通電極の一端または両端が、半導体チップまたは半導体ウエハの表面から突出していることが好ましい。
【0028】
1.接着剤層
(1)物性
本実施形態に係る回路部材接続用シート1において、接着剤層13は、硬化性を有する。ここで、硬化性を有するとは、接着剤層13が加熱等によって硬化し得ることをいう。すなわち、接着剤層13は、接続用シート1を構成している状態では未硬化である。接着剤層13は、熱硬化性であってもよく、または、エネルギー線硬化性であってもよい。しかしながら、接続用シート1を半導体装置の製造方法に用いる場合に硬化を良好に行うことができるという観点から、接着剤層13は、熱硬化性であることが好ましい。具体的には、接続用シート1を半導体装置の製造方法に用いる際、後述するように、接着剤層13は、半導体ウエハに貼付された状態で個片化される。これにより、半導体チップと個片化された接着剤層13との積層体が得られる。当該積層体は、その接着剤層13側の面が回路基板上や半導体チップの積層体上に貼付され、その状態で、接着剤層13の硬化が行われる。一般的に、回路基板や半導体チップはエネルギー線に対する透過性を有しないか、当該透過性が非常に低い場合が多く、そのような場合であっても、接着剤層13が熱硬化性を有するものであれば、接着剤層13を速やかに硬化させることが可能となる。
【0029】
(1−1)溶融粘度
本実施形態に係る回路部材接続用シート1において、接着剤層13を構成する材料は、硬化前における90℃での溶融粘度(以下、「90℃溶融粘度」ということがある。)が、上限値として5.0×10
5Pa・s以下であり、好ましくは1.0×10
5Pa・s以下であり、特に好ましくは5.0×10
4Pa・s以下である。90℃溶融粘度が上記上限値以下であると、接着剤層13を電極間に介在させたときに、チップや基板等の回路部材の表面の凹凸に良好に追従し、回路部材と接着剤層13との界面にボイドが発生するのを防止することができる。また、90℃溶融粘度は、下限値として1.0×10
0Pa・s以上であり、好ましくは1.0×10
1Pa・s以上であり、特に好ましくは1.0×10
2Pa・s以上である。90℃溶融粘度が上記下限値以上であると、接着剤層13を構成する材料がフローし過ぎることがなく、接着剤層13貼付時や回路接続時において装置の汚染を防止することができる。そのため、本実施形態に係る回路部材接続用シート1は、構成する材料の90℃溶融粘度が上記範囲にあることで、高い信頼性を有するものとなる。
【0030】
ここで、接着剤層13を構成する材料の90℃溶融粘度は、フローテスターを用いて測定した値であり、試験方法の詳細は後述する実施例にて示すとおりである。
【0031】
(1−2)平均線膨張係数
本実施形態において、接着剤層13を構成する材料は、硬化物の0〜130℃における平均線膨張係数(以下、単に「平均線膨張係数」ということがある。)が、上限値として45ppm以下であり、好ましくは35ppm以下であり、特に好ましくは25ppm以下である。平均線膨張係数が上記上限値以下であると、硬化物からなる接着剤層13と被着体(回路部材)との線膨張係数の差が小さくなり、かかる差に基づき接着剤層13と被着体との間で発生し得る応力を低減することができる。これにより、本実施形態に係る回路部材接続用シート1は、回路部材同士の接続信頼性を高いものとすることができ、特に実施例で示す温度サイクル試験において高い接続信頼性を示すものとなる。
【0032】
一方、平均線膨張係数の下限値は特に制限されないが、フィルム形成性の観点から、5ppm以上であることが好ましく、10ppm以上であることがより好ましい。
【0033】
ここで、接着剤層13を構成する材料の平均線膨張係数は、熱機械分析装置を用いて測定した値であり、試験方法の詳細は後述する実施例にて示すとおりである。
【0034】
(1−3)ガラス転移温度
本実施形態において、接着剤層13を構成する材料は、硬化物のガラス転移温度(Tg)が、下限値として150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがさらに好ましく、240℃以上であることが特に好ましい。硬化物のガラス転移温度が上記下限値以上であると、温度サイクル試験時に硬化物が変形せず、応力が発生しづらくなるため、好ましい。一方、硬化物のガラス転移温度の上限値は特に制限されないが、硬化物の脆化を抑制する観点から、350℃以下であることが好ましく、300℃以下であることがより好ましい。
【0035】
ここで、接着剤層13を構成する材料の硬化物のガラス転移温度は、動的粘弾性測定機器(ティー・エイ・インスツルメント社製,DMA Q800)を用い、周波数11Hz、振幅10μm、昇温速度3℃/分で、0℃から300℃まで昇温させて引張モードによる粘弾性を測定したときの、tanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)の最大点の温度である。ガラス転移温度の試験方法の詳細は後述する実施例にて示すとおりである。
【0036】
(1−4)5%質量減少温度
本実施形態に係る回路部材接続用シート1において、接着剤層13を構成する材料の硬化物は、熱重量測定による5%質量減少温度が、350℃以上であることが好ましく、特に360℃以上であることが好ましい。当該5%質量減少温度が350℃以上であることで、接着剤層13の硬化物が高温に対する耐性に優れたものとなる。そのため、半導体装置の製造等において、当該硬化物が高温に曝された場合であっても、当該硬化物の含有成分の分解に伴う揮発成分の発生等が抑制され、半導体装置の性能が良好に維持される。なお、当該5%質量減少温度の上限としては特に限定されないものの、当該5%質量減少温度は、通常500℃以下であることが好ましい。当該5%質量減少温度の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0037】
(1−5)貯蔵弾性率
本実施形態に係る回路部材接続用シート1において、接着剤層13の硬化後の23℃における貯蔵弾性率は、1.0×10
2MPa以上であることが好ましく、特に1.0×10
3MPa以上であることが好ましい。また、当該貯蔵弾性率は、1.0×10
5MPa以下であることが好ましく、特に1.0×10
4MPa以下であることが好ましい。当該貯蔵弾性率が上記範囲であることで、特に半導体チップを複数積層して積層回路を製造する場合に、半導体チップと個片化された接着剤層13とが交互に積層されてなる積層体が良好な強度を有するものとなる。その結果、さらに半導体チップを積層する場合や当該積層体を取り扱う際であっても、積層した状態が良好に維持され、優れた品質を有する積層回路を製造することができる。なお、当該貯蔵弾性率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0038】
(1−6)示差走査熱量分析法による発熱開始温度および発熱ピーク温度
本実施形態に係る回路部材接続用シート1において、硬化前における接着剤層13は、示差走査熱量分析(DSC)法により昇温速度10℃/分で測定される発熱開始温度(TS)が、70℃〜150℃の範囲内であることが好ましく、特に100℃〜150℃の範囲内であることが好ましく、さらには120℃〜150℃の範囲内であることが好ましい。当該発熱開始温度(TS)が上記範囲であることで、例えば、ダイシングブレードにより半導体ウエハをダイシングする際に生じる熱を受けた場合のような、意図しない段階において接着剤層13が硬化することが抑制されるとともに、接続用シート1の保存安定性にも優れる。特に、積層回路を作製するため、半導体チップを複数積層した後に、半導体チップ間に存在する複数の接着剤層13を一括で硬化させる場合には、半導体チップの積層が完了する前といった意図しない段階において接着剤層13が硬化することを抑制することができる。
【0039】
本実施形態に係る回路部材接続用シート1において、硬化前における接着剤層13は、示差走査熱量分析(DSC)法により昇温速度10℃/分で測定される発熱ピーク温度(TP)が、発熱開始温度(TS)+5〜60℃であることが好ましく、特にTS+5〜50℃であることが好ましく、さらにはTS+10〜40℃であることが好ましい。当該発熱ピーク温度(TP)が上述の範囲であることで、接着剤層13を硬化させる際に、硬化の始まりから完了までの時間が比較的短いものとなる。一般的に、NCFといった接着剤を使用して半導体装置を製造する場合、接着剤の硬化に時間を要する。そのため、半導体装置の製造におけるタクトタイムは、接着剤の硬化の時間によって規定されることが多い。したがって、上記の通り接着剤層13が硬化するまでの時間が短いことで、タクトタイムを効果的に短縮することが可能となる。また、半導体チップを複数積層して積層回路を製造する場合には、プロセスの効率化のために、半導体チップを複数積層(仮置き)した後に、半導体チップ間に存在する複数の接着剤層13を最後に一括で硬化させる場合がある。そのような場合であっても、当該発熱ピーク温度(TP)が上述の範囲であることで、半導体チップの積層が完了する前といった意図しない段階において、工程の初期に積層した半導体チップに付着した接着剤層13が硬化することを抑制することができる。
【0040】
なお、示差走査熱量分析法による発熱開始温度および発熱ピーク温度の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0041】
(1−7)接着剤層の厚さ等
本実施形態に係る回路部材接続用シート1において、接着剤層13の厚さ(T2)は、2μm以上であることが好ましく、特に5μm以上であることが好ましく、さらには10μm以上であることが好ましい。また、当該厚さ(T2)は、500μm以下であることが好ましく、特に300μm以下であることが好ましく、さらには100μm以下であることが好ましい。接着剤層13の厚さ(T2)が2μm以上であることで、回路部材に存在するバンプまたは貫通電極を、接着剤層13に良好に埋め込むことが可能となる。また、接着剤層13の厚さ(T2)が500μm以下であることで、半導体チップと基板とを接着剤層13によって接着する際や、貫通電極を有する半導体チップを、接着剤層13を介して接着する際に、接着剤層13が側面に染み出しすぎることがなく、信頼性の高い半導体装置を製造することができる。なお、接着剤層13の厚さ(T2)は、接続用シート1において、50mm間隔で合計100点を測定した際の平均値とする。
【0042】
本実施形態に係る回路部材接続用シート1において、接着剤層13の厚さ(T2)の標準偏差は、2.0μm以下であることが好ましく、特に1.8μm以下であることが好ましく、さらには1.6μm以下であることが好ましい。当該標準偏差が2.0μm以下であることで、接続用シート1を使用して、半導体ウエハのバンプを接着剤層13に埋め込むときにボイドの発生をより確実に防止することができ、均一な厚さを有し、品質の良好な半導体装置を効果的に製造することができる。特に、半導体チップを複数積層して積層回路を製造する場合には、得られる積層回路の厚さを均一にすることが困難となるが、接着剤層13の厚さの標準偏差が上記の範囲である接続用シート1を使用することで、半導体ウエハのバンプを接着剤層13に埋め込むときにボイドの発生をより確実に防止することができ、均一な厚さを有する積層回路を得やすくなる。なお、接着剤層13の厚さ(T2)の標準偏差の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0043】
本実施形態に係る回路部材接続用シート1において、基材11の厚さ(T1)に対する接着剤層13の厚さ(T2)の比(T2/T1)は、0.01以上であることが好ましく、特に0.1以上であることが好ましく、さらには0.4以上であることが好ましい。また、当該比(T2/T1)は、5.0以下であることが好ましく、特に2.0以下であることが好ましく、さらには1.5以下であることが好ましい。当該比(T2/T1)が上記範囲であることで、基材11と接着剤層13との厚さのバランスが良好なものとなり、回路部材に接続用シート1を貼付する際のハンドリング性が優れるとともに、当該貼付の際の貼付適性を調整することが容易となる。その結果、当該貼付を良好に行うことができ、優れた品質を有する半導体装置を製造することが可能となる。特に、当該比(T2/T1)が0.01以上であることで、接続用シート1における基材11の相対的な厚みが比較的小さいものとなり、接続用シート1の相対的な剛性が比較的低く抑えられる。その結果、接続用シート1を回路部材に貼付する時に、回路部材に存在するバンプまたは貫通電極を、接着剤層13に良好に埋め込み易くなる。一方、当該比(T2/T1)が5.0以下であることで、接続用シート1における基材11の相対的な厚みが比較的大きいものとなり、接続用シート1の相対的な剛性が比較的高く維持される。その結果、接続用シート1のハンドリング性が優れたものとなり、回路部材に接続用シート1を貼付し易くなる。なお、基材11の厚さ(T1)は、接続用シート1において、50mm間隔で合計100点を測定した際の平均値とする。
【0044】
(2)材料
本実施形態に係る回路部材接続用シート1において、接着剤層13は、前述した90℃溶融粘度および平均線膨張係数を満たす材料によって構成される。
【0045】
(2−1)熱硬化性成分
接着剤層13を構成する材料は、熱硬化性成分を含有することが好ましい。熱硬化性成分としては、半導体チップ等の回路部材の接続用に通常用いられる接着剤成分であれば特に限定されない。具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノキシ樹脂などが挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、接着性等の観点から、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂が好ましく、エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0046】
エポキシ樹脂は、加熱を受けると三次元網状化し、強固な硬化物を形成する性質を有する。このようなエポキシ樹脂としては、従来より公知の種々のエポキシ樹脂が用いられるが、具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシノール、フェニルノボラック、クレゾールノボラック等のフェノール類のグリシジルエーテル;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテル;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等のカルボン酸のグリシジルエーテル;アニリンイソシアヌレート等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したグリシジル型もしくはアルキルグリシジル型のエポキシ樹脂;ビニルシクロヘキサンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−ジシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン等のように、分子内の炭素−炭素二重結合を例えば酸化することによりエポキシが導入された、いわゆる脂環型エポキシドを挙げることができる。その他、ビフェニル骨格、ジシクロヘキサジエン骨格、ナフタレン骨格等を有するエポキシ樹脂を用いることもできる。これらエポキシ樹脂は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
接着剤層13を構成する材料における上記熱硬化性成分の含有量は、接着剤層13を構成する材料の合計量を基準として、下限値が5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、上記熱硬化性成分の含有量は、上限値が75質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがさらに好ましい。上記熱硬化性成分の含有量が、上記範囲であることで、前述した発熱開始温度および発熱ピーク温度を前述した範囲に調整し易くなる。
【0048】
(2−2)硬化剤・硬化触媒
接着剤層13を構成する材料が前述した熱硬化性成分を含有する場合、当該材料はさらに硬化剤および硬化触媒を含有することが好ましい。
【0049】
硬化剤としては、特に限定されないが、フェノール類、アミン類、チオール類等が挙げられ、前述した熱硬化成分の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、硬化性成分としてエポキシ樹脂を使用する場合には、エポキシ樹脂との反応性等の観点から、フェノール類が好ましい。
【0050】
フェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ジアリルビスフェノールA、ビフェノール、ビスフェノールF、ジアリルビスフェノールF、トリフェニルメタン型フェノール、テトラキスフェノール、ノボラック型フェノール、クレゾールノボラック樹脂等が挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
また、硬化触媒としては、特に限定されないが、イミダゾール系、リン系、アミン系等が挙げられ、前述した熱硬化成分等の種類に応じて適宜選択することができる。また、硬化触媒として、所定の条件下においては活性化せず、ハンダを溶融させる高温の圧着温度以上に加熱されたときに活性化する潜在性硬化触媒を使用することが好ましい。さらに、当該潜在性硬化触媒は、マイクロカプセル化した潜在性硬化触媒として使用することも好ましい。
【0052】
例えば、硬化性成分としてエポキシ樹脂を使用する場合には、エポキシ樹脂との反応性、保存安定性、硬化物の物性、硬化速度等の観点から、硬化触媒として、イミダゾール系硬化触媒を使用することが好ましい。イミダゾール系硬化触媒としては、公知ものが使用できるが、優れた硬化性、保存安定性及び接続信頼性の観点から、トリアジン骨格を有するイミダゾール触媒が好ましい。これらは単独で用いてもよく、または2種以上を併用して用いてもよい。また、これらはマイクロカプセル化した潜在性硬化触媒として用いてもよい。イミダゾール系硬化触媒の融点は、優れた硬化性、保存安定性および接続信頼性の観点から、200℃以上であることが好ましく、特に250℃以上であることが好ましい。
【0053】
本実施形態において、接着剤層13を構成する材料における硬化触媒の含有量は、接着剤層13を構成する材料の合計量を基準として、下限値が0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがさらに好ましく、0.4質量%以上であることが特に好ましい。また、上記硬化触媒の含有量は、上限値が10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましく、3質量%以下であることが特に好ましい。接着剤層13を構成する材料において、硬化触媒の含有量が上記下限値以上であると、熱硬化性成分を十分に硬化させることができる。一方、硬化触媒の含有量が上記上限値以下であると、接着剤層13の保存安定性が良好となる。
【0054】
(2−3)高分子量成分
上記接着剤層13を構成する材料は、前述した熱硬化性成分以外の高分子量成分を含有することが好ましい。当該高分子量成分を含有することで、当該材料の90℃溶融粘度と、平均線膨張係数とが、前述した数値範囲を満たしやすくなる。
【0055】
当該高分子量成分としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、シロキサン変性ポリイミド樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリプロピレン樹脂、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、ポリアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂をはじめとするポリビニルアセタール樹脂、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ナイロン等が挙げられ、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。「(メタ)アクリル系樹脂」等の他の類似用語についても同様である。
【0057】
前述した高分子量成分の中でも、ポリビニルアセタール樹脂、およびポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂からなる群より選択される1種以上を用いることが好ましい。上記接続用シートを構成する材料は、これらの高分子量成分を含有することで、90℃溶融粘度および平均線膨張係数が、ともに低い値となり、その結果これらの値を前述した数値範囲内とすることが容易になる。
【0058】
ここで、ポリビニルアセタール樹脂は、ポリ酢酸ビニルを鹸化することにより得られるポリビニルアルコールを、アルデヒドによりアセタール化して得られるものである。アセタール化に用いられるアルデヒドとしては、n−ブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−バレルアルデヒド等が挙げられる。ポリビニルアセタール樹脂としては、n−ブチルアルデヒドを用いてアセタール化したポリビニルブチラール樹脂を用いることも好ましい。
【0059】
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンオキサレート樹脂等のジカルボン酸成分およびジオール成分を重縮合して得られるポリエステル樹脂;これらにポリイソシアネート化合物を反応させて得るウレタン変性ポリエステル樹脂等の変性ポリエステル樹脂;アクリル樹脂および/またはビニル樹脂をグラフト化したポリエステル樹脂などが挙げられ、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
また、接着剤層13を構成する材料は、上記高分子量成分としてポリビニルアセタール樹脂、またはポリエステル樹脂を含有する場合、さらにフェノキシ樹脂を含有することが特に好ましい。フェノキシ樹脂をさらに含有する場合、接着剤層13を構成する材料は、90℃溶融粘度および平均線膨張係数が前述した数値範囲をさらに満たしやすくなる。
【0061】
フェノキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールAタイプ、ビスフェノールFタイプ、ビスフェノールA/ビスフェノールF共重合タイプ、ビフェノールタイプ、ビフェニルタイプ等が例示される。
【0062】
上記高分子量成分は、軟化点の下限値が50℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがさらに好ましく、120℃以上であることが特に好ましい。また、上記高分子量成分は、軟化点の上限値が200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがさらに好ましく、150℃以下であることが特に好ましい。軟化点が上記下限値以上である高分子量成分を含有させることにより、接着剤層13を構成する材料の平均線膨張係数を低減させることができ、前述した数値範囲を満たしやすくなる。また、軟化点が上記上限値以下であると、接着剤層13の脆化を抑制することができる。なお、軟化点は、ASTM D1525に基づいて測定した値とする。
【0063】
上記高分子量成分は、ガラス転移温度の下限値が50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがさらに好ましく、80℃以上であることが特に好ましい。また、上記高分子量成分は、ガラス転移温度の上限値が250℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがさらに好ましく、180℃以下であることが特に好ましい。ガラス転移温度が上記下限値以上である高分子量成分を含有させることにより、接着剤層13を構成する材料の平均線膨張係数を低減させることができ、前述した数値範囲を満たしやすくなる。また、ガラス転移温度が上記上限値以下であると、他の材料との相溶性に優れたものとなる。なお、高分子量成分のガラス転移温度は、示差走査熱量分析計を用いて測定した値である。
【0064】
上記高分子量成分は、重量平均分子量が1万以上であることが好ましく、3万以上であることがさらに好ましく、5万以上であることが特に好ましい。また、上限値が100万以下であることが好ましく、70万以下であることがさらに好ましく、50万以下であることが特に好ましい。重量平均分子量が上記下限値以上であると、フィルム形成性を維持しつつ、溶融粘度も低下させることが可能なため、好ましい。また、重量平均分子量が上記上限値以下であると、熱硬化性分等の低分子量成分との相溶性が向上するため、好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0065】
接着剤層13を構成する材料における上記高分子量成分の含有量は、接着剤層13を構成する材料の合計量を基準として、下限値が3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましく、7質量%以上であることが特に好ましい。また、上記高分子量成分の含有量は、上限値が95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましく、80質量%以下であることが特に好ましい。上記高分子量成分の含有量が、上記下限値以上であると、接着剤層13を構成する材料の90℃溶融粘度をさらに低い値とすることができ、前述した数値範囲を満たしやすくなる。一方、上記高分子量成分の含有量が上記上限値以下であると、接着剤層13を構成する材料の平均線膨張係数をさらに低減することができ、前述した数値範囲を満たしやすくなる。
【0066】
(2−4)無機フィラー
接着剤層13を構成する材料は、無機フィラーを含有することが好ましい。接着剤層13を構成する材料は、無機フィラーを含有することで、平均線膨張係数が低い値となるため、本実施形態に係る回路部材接続用シート1を用いたときに、回路部材同士の接続信頼性を高いものとすることができる。
【0067】
本実施形態において使用し得る無機フィラーは、特に限定されないが、シリカ、アルミナ、ガラス、酸化チタン、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ほう酸アルミウイスカ、窒化ほう素、結晶性シリカ、非晶性シリカ、ムライト、コージェライト等の複合酸化物、モンモリロナイト、スメクタイト等を例示することができ、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でもシリカフィラーが好ましい。シリカフィラーの形状としては、球状が好ましい。
【0068】
上記無機フィラーの平均粒径は、下限値が10nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがさらに好ましく、30nm以上であることが特に好ましい。また、上記無機フィラーの平均粒径は、上限値が200nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがさらに好ましく、100nm以下であることが特に好ましい。無機フィラーの平均粒径が上記下限値以上であると、シートの透明性と低い溶融粘度とを両立することができる。また、無機フィラーの平均粒径が上記上限値以下であると、接着剤層13を構成する材料における90℃溶融粘度を低い値に維持することができる。
【0069】
また、上記無機フィラーの最大粒子径は、1000nm以下であることが好ましく、500nm以下であることがさらに好ましい。無機フィラーの最大粒子径が1000nm以下であることで、接着剤層13中に無機フィラーを充填し易くなり、結果として、接着剤層13を構成する材料の平均線膨張係数が前述した数値範囲を満たし易く、シートの透明性と低い溶融粘度とを両立することができる。また、無機フィラーの最大粒子径が1000nm以下であることで、回路基板と半導体チップとが電気的に接続し易くなり、高い信頼性を有する積層回路を効果的に製造することができる。
【0070】
また、接着剤層13を構成する材料における無機フィラーの含有量は、接着剤層13を構成する材料の合計量を基準として、下限値が35質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。また、上記無機フィラーの含有量は、上限値が64質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましく、56質量%以下であることが特に好ましい。接着剤層13を構成する材料において、無機フィラーの含有量が上記下限値以上であると、当該材料の平均線膨張係数をより低減することができ、前述した数値範囲を満たしやすくなる。一方、無機フィラーの含有量が上記上限値以下であると、当該材料の90℃溶融粘度を低い値に維持することができ、前述した数値範囲を満たしやすくなる。
【0071】
(2−5)フラックス機能を有する成分
本実施形態において、回路部材の電極が半田で接合される場合、接着剤層13を構成する材料は、フラックス機能を有する成分(以下「フラックス成分」ということがある。)を含有することが好ましい。フラックス成分は、電極表面に形成された金属酸化膜を除去する作用を有するものであり、半田による電極間の電気的接続をより確実なものとし、半田接合部における接続信頼性を高めることができる。
【0072】
フラックス成分としては、特に限定されないが、フェノール性水酸基および/またはカルボキシル基を有する成分であることが好ましく、カルボキシル基を有する成分であることが特に好ましい。カルボキシル基を有する成分は、フラックス機能を有するとともに、後述するエポキシ樹脂を熱硬化性成分として用いた場合に硬化剤としての作用をも有する。そのため、カルボキシル基を有する成分は、半田接合が完了した後は硬化剤として反応し消費されるため、過剰のフラックス成分に起因した不具合を抑制することができる。
【0073】
具体的なフラックス成分としては、例えば、グルタル酸、2−メチルグルタル酸、オルトアニス酸、ジフェノール酸、アジピン酸、アセチルサリチル酸、安息香酸、ベンジル酸、アゼライン酸、ベンジル安息香酸、マロン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、サリチル酸、o−メトキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、コハク酸、2,6−ジメトキシメチルパラクレゾール、安息香酸ヒドラジド、カルボヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、チオカルボヒドラジド、ベンゾフェノンヒドラゾン、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ロジン誘導体などが挙げられ、これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
ロジン誘導体としてはガムロジン、トールロジン、ウッドロジン、重合ロジン、水素添加ロジン、ホルミル化ロジン、ロジンエステル、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキド樹脂、などが挙げられる。
【0075】
これらの中でも、2−メチルグルタル酸、アジピン酸およびロジン誘導体から選択される少なくとも1つを使用することが特に好ましい。2−メチルグルタル酸およびアジピン酸は、接着剤層13を構成する材料において、分子量が比較的小さいながらも分子内にカルボキシル基を2つ有するため、少量の添加であってもフラックス機能に優れ、本実施形態では特に好適に用いることができる。ロジン誘導体は軟化点が高く、低線膨張係数化を維持しつつ、フラックス性を付与することが出来るため、本実施形態では特に好適に用いることができる。
【0076】
フラックス成分の融点および軟化点の少なくとも一方は、80℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、130℃以上がさらに好ましい。フラックス成分の融点および軟化点の少なくとも一方が上記範囲であると、より優れたフラックス機能を得ることができ、アウトガスなども低減できるため好ましい。なお、フラックス成分の融点および軟化点の上限値は特に限定されないものの、例えば半田の融点以下であればよい。
【0077】
本実施形態において、接着剤層13を構成する材料におけるフラックス成分の含有量は、接着剤層13を構成する材料の合計量を基準として、下限値が1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがさらに好ましく、5質量%以上であることが特に好ましい。また、上記フラックス成分の含有量は、上限値が20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。接着剤層13を構成する材料において、フラックス成分の含有量が上記下限値以上であると、半田による電極間の電気的接続をより確実なものとし、半田接合部における接続信頼性をさらに高めることができる。一方、フラックス成分の含有量が上記上限値以下であると、過剰のフラックス成分に起因するイオンマイグレーション等の不具合を防止することができる。
【0078】
(2−6)その他の成分
接着剤層13は、当該接着剤層13を構成する材料として、さらに、可塑剤、安定剤、粘着付与材、着色剤、カップリング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、導電性粒子等を含有してもよい。
【0079】
例えば、接着剤層13を構成する材料が導電性粒子等を含有することで、回路部材接続用シート1に異方導電性が付与されると、半田接合を補完する態様にて、または半田接合とは異なる態様にて、回路部材同士を電気的に接合することができる。
【0080】
2.粘着剤層
(1)材料
本実施形態に係る回路部材接続用シート1において、粘着剤層12は、非硬化性粘着剤から構成されてもよく、または硬化性粘着剤から構成されてもよい。後述する通り、本実施形態に係る回路部材接続用シート1を半導体装置の製造方法に使用する場合、接着剤層13が、基材11と粘着剤層12との積層体から剥離される。そのため、当該剥離を容易に行う観点から、粘着剤層12は、硬化性粘着剤から構成され、硬化により粘着力が低下するものであることが好ましい。
【0081】
粘着剤層12が硬化性粘着剤から構成される場合、当該粘着剤は、エネルギー線硬化性粘着剤であってもよく、または熱硬化性粘着剤であってもよい。ここで、粘着剤層12と接着剤層13とは異なる段階で硬化させるものであるため、接着剤層13が熱硬化性を有する場合には、粘着剤層12はエネルギー線硬化性粘着剤から構成されることが好ましく、接着剤層13がエネルギー線硬化性を有する場合には、粘着剤層12は熱硬化性粘着剤から構成されることが好ましい。しかしながら、接着剤層13は前述した理由から熱硬化性を有することが好ましいため、粘着剤層12は、エネルギー線硬化性粘着剤から構成されることが好ましい。
【0082】
上記非硬化性粘着剤としては、所望の粘着力および再剥離性を有するものが好ましく、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等を使用することができる。これらの中でも、ダイシング工程といった意図しない段階における、粘着剤層12と接着剤層13との界面での剥離を効果的に抑制する観点から、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0083】
上記エネルギー線硬化性粘着剤としては、エネルギー線硬化性を有するポリマーを主成分とするものであってもよいし、非エネルギー線硬化性ポリマー(エネルギー線硬化性を有しないポリマー)と少なくとも1つ以上のエネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物を主成分とするものであってもよい。また、エネルギー線硬化性を有するポリマーと非エネルギー線硬化性ポリマーとの混合物であってもよいし、エネルギー線硬化性を有するポリマーと少なくとも1つ以上のエネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとの混合物であってもよいし、それら3種の混合物であってもよい。
【0084】
上記エネルギー線硬化性を有するポリマーは、側鎖にエネルギー線硬化性を有する官能基(エネルギー線硬化性基)が導入された(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体であることが好ましい。この重合体は、官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体と、その官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物とを反応させて得られるものであることが好ましい。
【0085】
上記少なくとも1つ以上のエネルギー線硬化性基を有するモノマーおよび/またはオリゴマーとしては、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル等を使用することができる。
【0086】
非エネルギー線硬化性ポリマー成分としては、例えば、前述した官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体を使用できる。
【0087】
(2)物性等
本実施形態に係る回路部材接続用シート1において、粘着剤層12の23℃における貯蔵弾性率は、1×10
3Pa以上であることが好ましく、特に1×10
4Pa以上であることが好ましい。また、当該貯蔵弾性率は、1×10
9Pa以下であることが好ましく、特に1×10
8Pa以下であることが好ましい。なお、当該貯蔵弾性率は、粘着剤層12が硬化性粘着剤から構成される場合には硬化前の貯蔵弾性率をいうものとする。粘着剤層12の23℃における貯蔵弾性率が上記範囲であることで、回路部材に接続用シート1を貼付する際に、回路部材に存在するバンプまたは貫通電極を、接着剤層13に良好に埋め込むことが可能となる。また、接続用シート1を使用して、半導体ウエハのバンプが形成されていない面をバックグラインドする場合には、半導体ウエハの反りやディンプルの発生を抑制することができる。なお、粘着剤層12の23℃における貯蔵弾性率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0088】
粘着剤層12の厚さは、特に限定されないものの、例えば、1μm以上であることが好ましく、特に10μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、例えば、100μm以下であることが好ましく、特に50μm以下であることが好ましい。粘着剤層12の厚さが1μm以上であることで、粘着剤層12が良好な粘着力を発揮することができる。また、当該厚さが100μm以下であることで、粘着剤層12が不要な厚さとなることが抑制され、コストを低減することが可能となる。
【0089】
3.基材
(1)材料
本実施形態に係る回路部材接続用シート1において、基材11を構成する材料としては、特に限定されない。しかしながら、接続用シート1を、ダイシングシート一体型接着シートとする場合、基材11を構成する材料は、ダイシングシートを構成する基材に一般的に使用される材料であることが好ましい。例えば、このような基材11の材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、ビニルポリイソプレン、ポリカーボネート、ポリオレフィン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物を用いることができる。
【0090】
また、接続用シート1を、バックグラインドシート一体型接着シートとする場合、基材11を構成する材料は、バックグラインドシートを構成する基材に一般的に使用される材料であることが好ましい。例えば、このような基材11の材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等の樹脂からなるものが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物を用いることができる。
【0091】
基材11の粘着剤層12側の面は、粘着剤層12との密着性を高めるために、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理が施されてもよい。
【0092】
(2)物性等
本実施形態に係る回路部材接続用シート1において、基材11の23℃における引張弾性率は、100MPa以上であることが好ましく、特に200MPa以上であることが好ましく、さらには300MPa以上であることが好ましい。また、当該引張弾性率は、5000MPa以下であることが好ましく、特に4000MPa以下であることが好ましく、さらには3000MPa以下であることが好ましい。基材11の23℃における引張弾性率が上記範囲内であることで、回路部材に接続用シート1を貼付する際に、回路部材に存在するバンプまたは貫通電極を、接着剤層13に良好に埋め込むことが可能となる。なお、基材11の23℃における引張弾性率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0093】
基材11の厚さ(T1)は、特に限定されないものの、例えば、10μm以上であることが好ましく、特に15μm以上であることが好ましい。また、当該厚さ(T1)は、例えば、500μm以下であることが好ましく、特に100μm以下であることが好ましい。基材11の厚さ(T1)が上記範囲であることで、前述した、基材11の厚さ(T1)に対する接着剤層12の厚さ(T2)の比(T2/T1)の値を、前述の範囲に設定し易くなり、回路部材に接続用シート1を貼付する際のハンドリング性が優れたものとなる。その結果、品質に優れた半導体装置を効果的に製造することが可能となる。なお、前述の通り、基材11の厚さ(T1)は、接続用シート1において、50mm間隔で合計100点を測定した際の平均値とする。
【0094】
4.剥離シート
本実施形態に係る回路部材接続用シート1は、さらに剥離シートが積層されていてもよい。この場合、剥離シートの構成は任意であり、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンフィルムなどのプラスチックフィルムが挙げられる。これらの剥離面(接続用シート1の接着剤層13と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等の剥離剤が挙げられる。
【0095】
剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20μm以上、250μm以下である。
【0096】
5.回路部材接続用シートの製造方法
本実施形態に係る回路部材接続用シート1は、従来の回路部材接続用シート1と同様に製造することができる。例えば、接着剤層13と剥離シートとの積層体、および粘着剤層12と基材11との積層体をそれぞれ作製し、接着剤層13と粘着剤層12とが接するようにこれらの積層体を貼合することで、接続用シート1を得ることができる。
【0097】
接着剤層13と剥離シートとの積層体は、接着剤層13を構成する材料、および所望によりさらに溶媒または分散媒を含有する塗工液を調製し、剥離シートの剥離面上に、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、スリットコーター、ナイフコーター等によりその塗工液を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させることで得ることができる。塗工液は、塗布を行うことが可能であればその性状は特に限定されず、接着剤層13を形成するための成分を溶質として含有する場合もあれば、分散質として含有する場合もある。この積層体における剥離シートは工程材料として剥離してもよいし、接続用シート1を回路部材に貼付するまでの間、接続用シート1を保護していてもよい。
【0098】
上記溶媒としては、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトンの有機溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒を配合して、適度な固形分濃度の溶液とすることで、接着剤層13の厚さ(T2)のばらつきを抑制し、厚さ(T2)について前述の標準偏差を有する接着剤層13を形成することが容易となる。特に、塗工液の固形分濃度は、塗工液を均一に塗工する観点から、5質量%以上であることが好ましく、特に10質量%以上であることが好ましい。また、同様の観点から、当該固形分濃度は、55質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることが好ましい。当該固形分濃度が5質量%以上であることで、塗膜を形成する際にハジキ等の発生が抑制されるとともに、溶媒を十分乾燥させ易くなり、接着剤層13の厚さや物性のばらつきをより抑制し易くなる。また、当該固形分濃度が55質量%以下であることで、塗工液中のフィラーの凝集が抑制され、塗工液を送液し易くなり、塗布方向に垂直な方向に連続して発生する塗布ムラ(横段ムラ)の発生が抑制され、接着剤層13の厚さのばらつきの発生をより抑制することができる。上記塗工液のB型粘度計により測定される25℃における粘度は、20mPa・s以上であることが好ましく、特に25mPa・s以上であることが好ましい。また、当該粘度は、500mPa・s以下であることが好ましく、特に100mPa・s以下であることが好ましい。
【0099】
粘着剤層12と基材11との積層体は、粘着剤層12を構成する材料、および所望によりさらに溶媒または分散媒を含有する塗工液を調製し、上述した塗布方法によって、基材11の片面に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させることで得ることができる。また、粘着剤層12と基材11との積層体の別の作製方法として、工程用剥離シートの剥離面上に粘着剤層12を形成し、その後、当該粘着剤層12を基材11の片面に転写し、工程用剥離シートを粘着剤層12から剥離することで、粘着剤層12と基材11との積層体を得てもよい。
【0100】
〔半導体装置の製造方法〕
本実施形態に係る回路部材接続用シート1を使用して、半導体装置を製造することができる。特に、本実施形態に係る回路部材接続用シート1は、フリップチップ実装方式による半導体装置の製造に用いることが好ましい。また、本実施形態に係る回路部材接続用シート1は、貫通電極を有する半導体チップを複数積層することによる積層回路の製造に用いることが好ましい。
【0101】
1.フリップチップ実装方式
まず、フリップチップ実装方式により、バンプを備えた半導体チップと回路基板とを接着する場合を説明する。特に、本実施形態に係る回路部材接続用シート1をバックグラインドシート一体型接着シートとして使用する態様(第1の態様)、および本実施形態に係る回路部材接続用シート1をダイシングシート一体型接着シートとして使用する態様(第2の態様)について説明する。
【0102】
(1)第1の態様
最初に、回路および半田バンプが形成された半導体ウエハの回路面に、本実施形態に係る回路部材接続用シート1を貼付する。具体的には、回路部材接続用シート1の接着剤層13側の面を、半導体ウエハの回路面に貼付する。これにより、半導体ウエハの回路面は回路部材接続用シート1により保護された状態となる。ここで、本実施形態に係る回路部材接続用シート1は、接着剤層13を構成する材料の硬化前における90℃溶融粘度が1.0×10
0〜5.0×10
5Pa・sであるため、回路面の凹凸に良好に追従し、接着剤層13と回路面との界面におけるボイドの発生を抑制することができる。
【0103】
次いで、接続用シート1が半導体ウエハに貼付された状態で、半導体ウエハの回路面とは反対側の面を研磨して、半導体ウエハを薄厚化する(バックグラインド工程)。なお、必要に応じて、バックグラインド工程以外の裏面加工を行ってもよい。
【0104】
次に、薄厚化された半導体ウエハの研磨面をダイシングシートに貼り付け、接続用シート1と半導体ウエハとダイシングシートとが順に積層されてなる積層体を得る。さらに、当該積層体から、接続用シート1における基材11と粘着剤層12との積層体を剥離することで、接着剤層13と半導体ウエハとダイシングシートとが順に積層されてなる積層体が得られる。続いて、当該積層体において、半導体ウエハを個別のチップに切断する(ダイシング工程)。このとき、半導体ウエハとともに、接着剤層13も切断する。ウエハの切断方法は特に限定されず、従来公知の種々のダイシング方法により行われる。例えば、ダイシングブレードを用いて半導体ウエハを切断する方法が挙げられる。また、レーザーダイシング等の他のダイシング方法を採用してもよい。
【0105】
ダイシング工程の後、半導体チップをダイシングシートからピックアップする。上記ダイシング工程においては、接着剤層13が、半導体ウエハにおけるダイシングシートとは反対側の面に貼付された状態で、半導体ウエハとともに個片化される。そのため、ピックアップされる半導体チップには、個片化された接着剤層13が貼付されている。なお、粘着剤層12がエネルギー線硬化性粘着剤から構成される場合には、ピックアップの前に、粘着剤層12に対してエネルギー線を照射することが好ましい。これにより当該粘着剤の粘着力が低下するため、半導体チップのピックアップが容易となる。また、必要に応じて、ピックアップの前に、ダイシングシートをエキスパンドすることにより、半導体チップ同士の間隔を拡げてもよい。
【0106】
続いて、接着剤層付き半導体チップを、回路基板上に載置する。接着剤層付き半導体チップは、フリップチップボンダーを用い、半導体チップ側の電極と回路基板上の電極とが対向するように位置合わせされ、回路基板上に載置される。
【0107】
さらに、フリップチップボンダーを用い、接着剤層付き半導体チップと回路基板とを加熱・加圧した後、冷却する。これにより、半導体チップと回路基板とが、接着剤層13を介して接着され、半導体チップの電極と回路基板におけるチップ搭載部の電極とが、半導体チップに形成された半田バンプを介し、電気的に接合される。半田接合の条件は、使用する金属組成物にもよるが、例えばSn−Agの場合、200〜300℃で1〜30秒間加熱することが好ましい。
【0108】
半田接合が行われたら、半導体チップと回路基板との間に介在する接着剤層13を硬化させる。硬化は、例えば、100〜200℃で1〜120分間加熱することにより行うことができる。また、かかる硬化工程は、加圧条件下で行ってもよい。また、かかる硬化工程は、上述の半田接合の工程で接着剤層13の硬化が終了する場合には省略してもよい。
【0109】
このようにして、半導体チップと回路基板とが接着剤層13の硬化物で接着された積層体を得ることができる。かかる積層体においては、接着剤層13の硬化物の平均線膨張係数が45ppm以下であるため、半導体チップや回路基板と接着剤層13の硬化物との間の応力発生が抑制される。そのため、例えば温度サイクル試験等の長期信頼性試験に付した後であっても、接続部での接続抵抗が変化し難く、高い信頼性を有するものとなる。
【0110】
(2)第2の態様
上述した第1の態様では、回路部材接続用シート1を半導体ウエハに貼付した状態でバックグラインド工程を行っているのに対し、第2の態様では、予めバックグラインド工程が施された薄厚化された半導体ウエハを用いる。
【0111】
まず、本実施形態に係る回路部材接続用シート1を、薄厚化された半導体ウエハの回路および半田バンプが形成された面に貼付する。ここで、本実施形態に係る回路部材接続用シート1は、接着剤層13を構成する材料の硬化前における90℃溶融粘度が1.0×10
0〜5.0×10
5Pa・sであるため、半導体ウエハの貫通電極による凹凸に良好に追従し、接着剤層13と半導体ウエハとの界面におけるボイドの発生を抑制することができる。
【0112】
なお、バックグラインド工程が施された薄厚化された半導体ウエハは、強度が弱い場合がある。そのため、仮固定材を介してサポートガラス等の支持体に固定することで、半導体ウエハを補強してもよい。この場合は、半導体ウエハと回路部材接続用シート1とを貼り合わせた後に、仮固定材とともに支持体を剥離する。
【0113】
次に、半導体ウエハを個別のチップに切断する(ダイシング工程)。このとき、半導体ウエハとともに、接着剤層13も切断する。ウエハの切断方法は特に限定されず、例えば上述した方法を使用することができる。その後、半導体チップをピックアップする。このとき、当該半導体チップは、個片化された接着剤層13が貼付した状態でピックアップされる。すなわち、接着剤層13が貼付した半導体チップが、回路部材接続用シート1の粘着剤層12から剥離されることになる。また、必要に応じて、ピックアップの前に、ダイシングシートをエキスパンドすることにより、半導体チップ同士の間隔を拡げてもよい。
【0114】
続いて、第1の態様と同様に、接着剤層付き半導体チップを、回路基板上に載置した後、半導体チップと回路基板との間に介在する接着剤層13を硬化させる。このようにして得られた半導体装置は、第1の態様により得られる半導体装置と同様に、温度サイクル試験等の長期信頼性試験に付した後であっても、接続部での接続抵抗が変化し難く、高い信頼性を有するものとなる。
【0115】
2.積層回路の製造
次に、貫通電極を有する半導体チップを複数積層して、積層回路を製造する場合を説明する。この製造方法では、本実施形態に係る回路部材接続用シート1は、ダイシングシート一体型接着シートとして使用される。
【0116】
最初に、貫通電極を有する半導体ウエハの片面に、本実施形態に係る回路部材接続用シート1を貼付する。具体的には、回路部材接続用シート1の接着剤層13側の面を、半導体ウエハの片面に貼付する。ここで、本実施形態に係る回路部材接続用シート1は、接着剤層13を構成する材料の硬化前における90℃溶融粘度が1.0×10
0〜5.0×10
5Pa・sであるため、半導体ウエハの貫通電極による凹凸に良好に追従し、接着剤層13と半導体ウエハとの界面におけるボイドの発生を抑制することができる。
【0117】
なお、貫通電極を有する半導体ウエハは、強度が弱い場合がある。そのため、仮固定材を介してサポートガラス等の支持体に固定することで、半導体ウエハを補強してもよい。この場合は、貫通電極を有する半導体ウエハと回路部材接続用シート1とを貼り合わせた後に、仮固定材とともに支持体を剥離する。
【0118】
次に、半導体ウエハを個別のチップに切断する(ダイシング工程)。このとき、半導体ウエハとともに、接着剤層13も切断する。ウエハの切断方法は特に限定されず、例えば上述した方法を使用することができる。その後、半導体チップをピックアップする。このとき、当該半導体チップは、個片化された接着剤層13が貼付した状態でピックアップされる。すなわち、接着剤層13が貼付した半導体チップが、回路部材接続用シート1の粘着剤層12から剥離されることになる。また、必要に応じて、ピックアップの前に、ダイシングシートをエキスパンドすることにより、半導体チップ同士の間隔を拡げてもよい。
【0119】
続いて、上述したフリップチップ実装方式と同様に、接着剤層付き半導体チップを、回路基板上に載置した後、回路基板の電極と半導体チップの貫通電極との間で半田接合を行い、さらに、半導体チップと回路基板との間に介在する接着剤層13を硬化させる。
【0120】
続いて、上記のように回路基板上に接着された半導体チップ上に、新たな接着剤層付き半導体チップを積層する。このとき、新たな接着剤層付き半導体チップにおける接着剤層13側の面と、回路基板上に積層された半導体チップにおける回路基板とは反対側の面とが接触し、且つ2つの半導体チップの貫通電極同士が電気的に接続されるように積層する。その後、新たに積層された半導体チップの貫通電極と、回路基板上に積層された半導体チップの貫通電極との間で半田接合を行い、さらに、これらの半導体チップ間に介在する接着剤層13を硬化させる。このときの半田接合および接着剤層13の硬化は、上述した方法および条件によって行うことができる。これにより、回路基板上に2つの半導体チップが積層されてなる積層体が得られる。
【0121】
以上のような、回路基板上に積層された半導体チップ上に接着剤層付き半導体チップを積層し、半田接合および接着剤層13の硬化を行う手順を繰り返して、複数の半導体チップが接着剤層13の硬化物で接着された半導体チップ積層体を得ることができる。かかる積層体においては、接着剤層13の硬化物の平均線膨張係数が45ppm以下であるため、半導体チップや回路基板と接着剤層13の硬化物との間の応力発生が抑制される。そのため、例えば温度サイクル試験等の長期信頼性試験に付した後であっても、接続部での接続抵抗が変化し難く、高い信頼性を有するものとなる。
【0122】
なお、以上説明した製造方法では、半導体チップを1つ積層するごとに、半田接合および接着剤層13の硬化を行っているが、プロセスの効率化のために、半導体チップを複数積層した後に、これらの半導体チップ間における半田接合およびこれらの半導体チップ間に介在する接着剤層13の硬化を最後に一括で行ってもよい。
【0123】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0124】
例えば、上記の実施形態に、回路部材接続用シートの使用方法として、半導体チップと回路基板との接続、および半導体チップと半導体チップとの接続を例として説明したが、本実施形態の回路部材接続用シートにより接続される回路部材はこの組み合わせに限定されない。例えば、半導体ウエハと半導体ウエハとの組み合わせ、半導体チップと半導体ウエハとの組み合わせ、半導体チップとフレキシブル回路基板との組み合わせ等を挙げることができる。
【実施例】
【0125】
以下、実施例および試験例等を示すことにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の試験例等に何ら限定されるものではない。
【0126】
〔実施例1〜7,比較例1〕
表1に示す構成成分を含有する組成物を、メチルエチルケトンにて固形分濃度が40質量%となるように希釈し、塗工液を得た。当該塗工液の25℃における粘度を、B型粘度計を用いて測定したところ、50mPa・sであった。当該塗工液を、シリコーン処理された剥離フィルム(リンテック社製,SP−PET381031)上に塗布し、得られた塗膜をオーブンにて100℃で1分間乾燥することで、厚さ45μmの接着剤層と剥離フィルムとからなる第1の積層体を得た。
【0127】
2−エチルヘキシルアクリレート80質量部、メチルアクリレート10質量部および2−ヒドロキシエチルアクリレート10質量部を共重合してなるアクリル共重合体(重量平均分子量:70万)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、イソシアネート系架橋剤(ポリウレタン工業社製,コロネートL)10質量部とを混合し、粘着剤組成物を調製した。
【0128】
実施例1〜5および7、ならびに比較例1については、上記のように得られた粘着剤組成物を、基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ:100μm,引張弾性率:2600MPa)の片面に塗布し、塗膜を形成した。また、実施例6については、上記のように得られた粘着剤組成物を、基材としてのポリオレフィンフィルム(厚さ:100μm,引張弾性率:230MPa)の片面に塗布し、塗膜を形成した。その後、塗膜を100℃で1分間乾燥させた。これにより、厚さ10μmの粘着剤層と基材とからなる第2の積層体を得た。
【0129】
続いて、第1の積層体における接着剤層側の面と、第2の積層体における粘着剤層側の面とを貼り合わせることで、回路部材接続用シートを得た。
【0130】
〔比較例2〕
表1に示す構成成分を含有する組成物を、メチルエチルケトンにて固形分濃度が55質量%となるように希釈し、塗工液を得た。当該塗工液の25℃における粘度を、B型粘度計を用いて測定したところ、150mPa・sであった。当該塗工液を使用して接着剤層を形成した以外は、比較例1と同様にして回路部材接続用シートを得た。
【0131】
ここで、表1に示す構成成分の詳細は以下の通りである。
高分子量成分
・ポリビニルアセタール樹脂:ガラス転移温度86℃,重量平均分子量13万
・ポリビニルブチラール樹脂:ガラス転移温度71℃,重量平均分子量11万
・ポリエステル樹脂:ガラス転移温度83℃,重量平均分子量4万
・ビスフェノールA(BisA)型フェノキシ樹脂:ガラス転移温度84℃,重量平均分子量6万
・ビスフェノールA(BPA)/ビスフェノールF(BPF)共重合型フェノキシ樹脂:東都化成社製,製品名「ZX−1356−2」,ガラス転移温度71℃,重量平均分子量6万
・ポリアクリル酸エステル:ガラス転移温度−28℃,重量平均分子量80万
熱硬化性成分
・ビスフェノールA(BisA)型エポキシ樹脂:エポキシ当量180−190g/eq
・エポキシ樹脂1:トリス(ヒドロキシフェニル)メタン型固形エポキシ樹脂,ジャパンエポキシレジン社製,製品名「E1032H60」,5%重量減少温度350℃,固形,融点60℃
・エポキシ樹脂2:Bis−F型液状エポキシ樹脂,ジャパンエポキシレジン社製,製品名「YL−983U」,エポキシ当量184
・エポキシ樹脂3:長鎖Bis−F変性型エポキシ樹脂,ジャパンエポキシレジン社製,製品名「YL−7175」
・トリフェニルメタン型エポキシ樹脂:トリフェニルメタン型エポキシ樹脂,日本化薬社製,製品名「EPPN−502H」,エポキシ当量168
硬化触媒
・イミダゾール系熱硬化触媒:2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール,四国化成工業社製,製品名「2PHZ−PW」,融点230℃
・2MZA−PW:2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン,四国化成工業社製,製品名「2MZA−PW」,融点250℃
無機フィラー
・表面修飾シリカフィラー:平均粒径100nm,最大粒子径450nm
【0132】
ここで、上記高分子量成分のガラス転移温度(Tg)は、パーキンエルマー社製DSC(PYRIS Diamond DSC)を用い、昇降温速度10℃/分で−70℃から150℃の温度プロファイルでの測定を実施し、変曲点を確認しガラス転移温度を求めたものである。また、上記構成成分の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー社製,HLC−8020)を用い、下記条件にて測定(GPC測定)した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0133】
<GPC測定条件>
・カラム :「TSK guard column HXL−L」、「TSK gel G2500HXL」、「TSK gel G2000HXL」、「TSK gel G1000HXL」(いずれも東ソー社製)を順次連結したもの
・カラム温度:40℃
・展開溶媒 :テトラヒドロフラン
・流速 :1.0mL/min
・検出器 :示差屈折計
・標準試料 :ポリスチレン
【0134】
〔試験例1〕90℃溶融粘度の測定
実施例および比較例で作製した第1の積層体を使用して、接着剤層を複数積層することにより、厚さ15mmの測定用サンプルを作製した。得られた測定用サンプルについて、フローテスター(島津製作所社製,CFT−100D)を用い、荷重50kgf、温度範囲50〜120℃、昇温速度10℃/minの条件で溶融粘度を測定した。90℃における溶融粘度の値を表2に示す。
【0135】
〔試験例2〕平均線膨張係数の測定
実施例および比較例で作製した第1の積層体を、15×4.5mmに切断し、測定用サンプルとした。得られたサンプルを160℃で1時間処理することにより接着剤層を硬化させた。得られた硬化物について、熱機械分析装置(ブルカー・エイエックス社製,TMA4030SA)を用い、荷重2g、温度範囲0〜300℃、昇温速度5℃/minの条件にて線膨張係数を測定した。得られた結果より、0〜130℃での平均線膨張係数を算出した。結果を表2に示す。
【0136】
〔試験例3〕硬化物のガラス転移温度の測定
実施例および比較例で作製した第1の積層体を、5×20mmに切断し、測定用サンプルとした。得られたサンプルを160℃で1時間処理することにより接着剤層を硬化させた。得られた硬化物について、動的粘弾性測定機器(ティー・エイ・インスツルメント社製,DMA Q800)を使用し、周波数11Hz、振幅10μm、昇温速度3℃/分で、0℃から300℃まで昇温させたときの引張モードによる粘弾性を測定し、この測定で得られたtanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)の最大点の温度をガラス転移温度(Tg)とした。測定結果を表2に示す。
【0137】
〔試験例4〕5%質量減少温度の測定
実施例および比較例で作製した第1の積層体を、15×4.5mmに切断し、測定用サンプルとした。得られたサンプルを160℃で1時間処理することにより接着剤層を硬化させた。得られた硬化物について、JIS K7120:1987に準拠して、示差熱・熱重量同時測定装置(島津製作所社製,DTG−60)を用い、流入ガスを窒素として、ガス流入速度100ml/min、昇温速度20℃/minで、40℃から550℃まで昇温させて熱重量測定を行った。得られた熱重量曲線に基づいて、温度100℃での質量に対して質量が5%減少する温度(5%質量減少温度)を求めた。結果を表2に示す。
【0138】
〔試験例5〕接着剤層の厚さおよび当該厚さの標準偏差の測定
実施例および比較例で作製した第1の積層体について、接着剤層の厚さ(T2)を、50mm間隔で合計100点測定した。この測定結果に基づいて、厚さ(T2)の平均値(μm)および厚さ(T2)の標準偏差(μm)を算出した。結果を表2に示す。
【0139】
〔試験例6〕接着剤層の硬化後の23℃における貯蔵弾性率の測定
試験例3における、硬化後の接着剤層の粘弾性の測定結果から、接着剤層の硬化後の23℃における貯蔵弾性率(MPa)を読み取った。結果を表2に示す。
【0140】
〔試験例7〕粘着剤層の23℃における貯蔵弾性率の測定
実施例および比較例で作製した第2の積層体を使用して、粘着剤層を複数積層することにより、厚さ800μmの粘着剤層の積層体を得た。この粘着剤層の積層体を直径10mmの円形に打ち抜き、これを測定用試料とした。
【0141】
動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント社製,ARES)により、周波数1Hz、測定温度範囲−50〜150℃、昇温速度3℃/minの条件で貯蔵弾性率(Pa)を測定した。結果を表2に示す。
【0142】
〔試験例8〕基材の23℃における引張弾性率の測定
実施例および比較例で用いた基材を15mm×140mmの試験片に裁断し、JIS K7127:1999に準拠して、23℃における引張弾性率を測定した。具体的には、上記試験片を、引張試験機(島津製作所社製,オートグラフAG−IS 500N)にて、チャック間距離100mmに設定した後、200mm/minの速度で引張試験を行い、引張弾性率(MPa)を測定した。結果を表2に示す。
【0143】
〔試験例9〕示差走査熱量分析法による発熱開始温度および発熱ピーク温度の測定
実施例および比較例で作製した第1の積層体を使用して、接着剤層を複数積層することにより、厚さ15mmの測定用サンプルを作製した。得られた測定用サンプルを、示差走査熱量計(TAインスツルメント社製,Q2000)を用いて、昇温速度10℃/分で常温から300℃まで加熱した。これにより得られるDSC曲線から、発熱が開始する温度(発熱開始温度)(TS)、および発熱ピーク温度(TP)を求めた。結果を表2に示す。
【0144】
〔試験例10〕温度サイクル試験
8インチウエハ(ウォルツ社製,WALTS−TEG MB50−0101JY_TYPE−B,ポリイミド膜有り,厚さ:725μm)を準備した。このウエハ上に形成された各個片化予定領域上には、544個のパッドが存在する。それらの各パッドに対して、30μmの高さの銅(Cu)ピラーを形成し、更にそれらの銅(Cu)ピラー上にSn−Agはんだを15μmの高さで設け、合計高さ45μmのバンプとした。以上の手順により、フリップチップ型ウエハを模した評価用ウエハを用意した。
【0145】
評価用ウエハのバンプ設置面に対して、実施例および比較例で得た回路部材接続用シートを、フルオートバックグラインドテープ用テープラミネーター(リンテック社製,RAD−3510F/12)を用いてラミネートした。
【0146】
次いで、ウエハバックグラインド装置(ディスコ社製,DGP8760)を用いて、評価用ウエハにおける接続用シートとは反対側の面について研磨及びドライポリッシュ処理を行い、評価用ウエハの厚さを100μmとした。その後、フルオートマルチウエハマウンタ(リンテック社製,RAD−2700F/12)を用いて、評価用ウエハのドライポリッシュした面に紫外線(UV)硬化型ダイシングテープ(リンテック社製,Adwill D−678)を貼付し、さらに、当該ダイシングテープをリングフレームに固定した。
【0147】
続いて、同装置により、接続用シートと評価用ウエハとダイシングテープとが順に積層してなる積層体から、基材と粘着層との積層体を剥離し、接着剤層を露出させた。その後、フルオートダイシングソー(ディスコ社製,DFD651)を用いて、接着剤層とともに評価用ウエハをダイシングし、平面視で7.3mm×7.3mmのサイズを有するチップに個片化した。
【0148】
整列したチップが付着したダイシングテープに対して、セミオートUV照射装置(リンテック社製,RAD−2000m/12)を用いて、UV照射を行い(照度:230mW/cm
2,光量:180mJ/cm
2,窒素雰囲気下)、ダイシングテープの粘着力を低下させた。
【0149】
次いで、フリップチップボンダー(東レエンジニアリング社製,FC3000W)を用いて、個片化された接着剤層とともにチップをピックアップした後、基板にフリップチップボンディングし、半導体装置を製造した。
【0150】
得られた半導体装置を、−55℃,10分および125℃,10分を1サイクルとする環境下に1000サイクル付す温度サイクル試験を行った。当該試験前後の半導体装置について、半導体チップと回路基板との間の接続抵抗値をデジタルマルチメーターで測定し、試験前の半導体装置における接続抵抗値に対する、試験後の半導体装置における接続抵抗値の変化率を測定した。そして、以下の評価基準に従って接続信頼性を評価した。結果を表2に示す。
○:接続抵抗値の変化率が20%以下である。
×:接続抵抗値の変化率が20%超である。
【0151】
〔試験例11〕埋込性の評価
試験例10に記載される方法により半導体装置を複数製造した。これらの半導体装置から無作為に選択した5個の半導体装置の4側面をデジタル顕微鏡で観察し、バンプにおけるクラックの発生の有無、および接着剤層へのバンプの埋め込みの状態を確認するとともに、それぞれの面における積層方向の厚さを測定した。これらの結果に基づいて、以下の評価基準に従って、実施例および比較例で得た回路部材接続用シートにおけるバンプの埋込性を評価した。結果を表2に示す。
○:5個の半導体装置全てにおいて、バンプにクラックが発生しておらず、バンプが接着剤層に良好に埋め込まれており、積層方向の厚さが4側面間で同一である。
×:5個の半導体装置のうち、バンプにクラックが発生しているか、接着剤層へのバンプの埋め込みが不十分であるか、または積層方向の厚さが4側面間で同一でないものがある。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
表2から分かるように、実施例で得られた回路部材接続用シートは、温度サイクル試験の結果が良好であり、高い接続信頼性を有するものであった。また、実施例で得られた回路部材接続用シートは、バンプの埋込性にも優れていた。