特許第6670173号(P6670173)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6670173乱流形成具及びそれを用いた熱交換器並びに給湯装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670173
(24)【登録日】2020年3月3日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】乱流形成具及びそれを用いた熱交換器並びに給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F28F 13/12 20060101AFI20200309BHJP
   F28F 1/40 20060101ALI20200309BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20200309BHJP
   F24H 9/00 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   F28F13/12 C
   F28F1/40 K
   F28D7/16 D
   F24H9/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-103215(P2016-103215)
(22)【出願日】2016年5月24日
(65)【公開番号】特開2017-211115(P2017-211115A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】根木 英尚
(72)【発明者】
【氏名】長坂 敏充
(72)【発明者】
【氏名】中越 貴章
【審査官】 庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】 韓国登録特許第10−1438350(KR,B1)
【文献】 特開平11−108458(JP,A)
【文献】 特開昭62−013958(JP,A)
【文献】 米国特許第02688986(US,A)
【文献】 特開平07−265985(JP,A)
【文献】 実開平07−041270(JP,U)
【文献】 実開昭56−173882(JP,U)
【文献】 特開2000−245628(JP,A)
【文献】 特開昭54−020448(JP,A)
【文献】 米国特許第04727907(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 13/12
F28F 1/02,1/40
F28D 7/00,7/16
F28D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面略楕円形状の伝熱管内に流路方向に挿入される平板部材からなり、前記平板部材の表裏両面に突出させた複数の突出片によって、前記伝熱管内を流れる流体を乱流させる乱流形成具であって、
前記平板部材の、前記流路方向に沿った両側辺のうち、少なくとも一方の側辺に、前記平板部材に対して所定の角度を有するように設けられ且つ先端が前記伝熱管の管壁内周面に接触して前記平板部材の伝熱管内での回転を阻止する回転阻止片が設けられ、
前記回転阻止片と前記管壁内周面との間に、流体が流通可能な空間が形成されており、
前記回転阻止片は、前記平板部材の前記側辺を折り曲げて形成される起立片とし、
前記起立片は、前記側辺の長手方向に沿って、表側に折り曲げてなる表起立片と、裏側に折り曲げてなる裏起立片とが交互に位置するように設けられている乱流形成具。
【請求項2】
請求項1に記載の乱流形成具において、
前記起立片は、前記平板部材から略直角方向に起立する第1起立片と、前記第1起立片の先端から、管壁内周面に向かう方向に延びる第2起立片とからなり、前記第2起立片の先端が管壁内周面に接触する長さに設定されている乱流形成具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の乱流形成具において、
前記起立片は、前記平板部材の、前記流路方向に沿った両側辺に設けられ、
各側辺に設けられた前記表起立片と前記裏起立片との境界部は、一方の側辺と他方の側辺とで、前記平板部材の長手方向にて相互にずれた位置に設けられている乱流形成具。
【請求項4】
請求項1からのいずれかに記載の乱流形成具が挿入された伝熱管を備えた熱交換器。
【請求項5】
請求項4に記載の熱交換器を備えた給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝熱管内を流れる流体に乱流を生じさせるために前記伝熱管内に挿入させる乱流形成具及びそれを用いた熱交換器並びに給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱交換器を構成している伝熱管は、ガスバーナの燃焼排ガスによって加熱されることにより、内部の流体を昇温させる。伝熱管内の流体の局部沸騰の抑制及び、熱交換を促進させて熱効率を向上させるために、伝熱管内の流体に乱流を生じさせる乱流形成具を伝熱管内に挿入することが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
前記乱流形成具(33)としては、例えば、図8に示すように、平板部材(3)に切起こし曲げ加工を施すことにより、複数の切起こし片(31a)(31b)(31c)を、平板部材(3)の表裏両面に突出させた構成のものがある。このものでは、伝熱管内を流れる流体が、切起こし片(31a)(31b)(31c)に当たることにより、矢印で示すように、流体の乱流化が促進され、局部沸騰を効率的に抑制することを可能としている。
この種の乱流形成具を、断面楕円形の伝熱管(4)内の所定位置にセットした状態で不用意に回転することがないように、図9に示すように、平板部材(3)の流路方向に沿った両側辺を折り曲げて、この折り曲げ部(32)を伝熱管(4)の管壁内周面(40)に接触させることにより、乱流形成具の回転阻止手段として機能させている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−108458号公報
【特許文献1】特開昭62−13958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、平板部材(3)の前記両側辺を折り曲げて構成した折り曲げ部(32)は、平板状であるから、断面円形または楕円形の伝熱管(4)の曲面からなる管壁内周面(40)に密着させることができず、折り曲げ部(32)と管壁内周面(40)との間には、僅かな隙間(30)が生じてしまう。
この隙間(30)は極僅かであるため流路抵抗が大きく流体は流れ難く、隙間(30)内で流体の滞留が発生する上に、さらに、隙間(30)内に塵埃等の異物が流れ込んで堆積すると隙間(30)内で流体がより一層滞留してしまうので、伝熱管(4)が隙間(30)の部分から隙間腐食を発生させるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記従来の乱流形成具の問題点を解消し、乱流形成具と伝熱管の管壁内周面との間に形成される隙間への流体の滞留を防止して、隙間腐食を生じさせないようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために講じた本発明の解決手段は、
断面略楕円形状の伝熱管内に流路方向に挿入される平板部材からなり、前記平板部材の表裏両面に突出させた複数の突出片によって、前記伝熱管内を流れる流体を乱流させる乱流形成具であって、
前記平板部材の、前記流路方向に沿った両側辺のうち、少なくとも一方の側辺に、前記平板部材に対して所定の角度を有するように設けられ且つ先端が前記伝熱管の管壁内周面に接触して前記平板部材の伝熱管内での回転を阻止する回転阻止片が設けられ、
前記回転阻止片と前記管壁内周面との間に、流体が流通可能な空間が形成されており、
前記回転阻止片は、前記平板部材の前記側辺を折り曲げて形成される起立片とし、
前記起立片は、前記側辺の長手方向に沿って、表側に折り曲げてなる表起立片と、裏側に折り曲げてなる裏起立片とが交互に位置するように設けられていることである。
【0008】
上記技術的手段は次のように作用する。
平板部材の少なくとも一方の側辺に設けられた回転阻止片の先端が、伝熱管の管壁内周面に接触するように平板部材を伝熱管内に挿入すると、前記平板部材は、回転阻止片によって、伝熱管内での回転が阻止された状態で伝熱管内の所定位置にセットされ、この状態は保持される。伝熱管内を流れる流体は、平板部材の表裏に突出する突出片によって乱流させられると共に、前記回転阻止片と前記管壁内周面との間に形成された空間内に入り込む。前記空間は、流体が流通するに十分な大きさに設定されているから、前記空間内にて流路抵抗は生じず、流体が滞留することはない。また、空間に異物が侵入しても流体で押し出され、空間内に滞留することはない。
【0009】
また、平板部材の側辺に、表起立片と裏起立片とを交互に設け、その各々の先端が管壁内周面に接するように、平板部材を伝熱管内にセットすることにより、平板部材は、表裏両側から支持されることとなり、効果的な回転抑制効果を得ることができる。また、表起立片と裏起立片を交互に設けることにより、各起立片と管壁内周面との間に形成される空間が連続する距離を短くすることができるので、流体は、前記空間内を容易に通過することができ、前記空間内における流体の滞留を一層防止することができる。

【0010】
上記乱流形成具において、望ましくは、前記起立片は、前記平板部材から略直角方向に起立する第1起立片と、前記第1起立片の先端から、管壁内周面に向かう方向に延びる第2起立片とからなり、前記第2起立片の先端が管壁内周面に接触する長さに設定されていることである。
第1起立片と管壁内周面との間には、第2起立片が介在された態様となり、前記空間は、第1起立片、第2起立片及び管壁内周面とで囲まれた範囲で構成されるので、前記空間をより広い流路として機能させることができる。
【0011】
上記乱流形成具において、望ましくは、前記起立片は、前記平板部材の、前記流路方向に沿った両側辺に設けられ、
各側辺に設けられた前記表起立片と前記裏起立片との境界部は、一方の側辺と他方の側辺とで、前記平板部材の長手方向にて相互にずれた位置に設けられている。
起立片を、平板部材の両側辺に設けることで、管壁内周面との接点が増え、回転抑制効果を向上させることができる。また、前記表起立片と前記裏起立片との境界部を、平板部材の両側辺にて相互に対向する位置ではなく、長手方向にずれた位置に設けることにより、境界部を平板部材を介して同一線上に位置させない構成とした。これにより、平板部材の捩じり方向に対する強度を向上させることができる。
【0012】
本発明の熱交換器は、上記いずれかの乱流形成具が挿入された伝熱管を備えたことを特徴とする。
上記いずれかの乱流形成具を伝熱管に備えることで、安定した熱効率を備え、耐久性を向上させた熱交換器が得られる。
【0013】
本発明の給湯装置は、上記の熱交換器を備えたことを特徴とする。
上記いずれかの乱流形成具が挿入された伝熱管を備えた熱交換器を用いることで、安定した熱効率を備え、耐久性を向上させた給湯装置が得られる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、乱流形成具としての平板部材を伝熱管内に回転阻止状態にセットするために設けた回転阻止片と、伝熱管の管壁内周面との間の空間は、流体が流通するに十分な大きさに設定されているから、流路抵抗を生じさせることなく、流体を前記空間内にスムーズに流通させることができる。
前記空間内に塵埃等の異物が入り込んでも、流体によって下流側へ押し流すことができるので、空間内に異物が堆積することもない。よって、空間が異物で詰まることによる前記空間内における流体の滞留を確実に防止でき、前記空間部分にて伝熱管の隙間腐食を発生させる不都合を抑制することができる。
上記乱流形成具が挿入された伝熱管を備えた熱交換器、並びに、前記熱交換器を備えた給湯装置では、熱効率を安定させることができ、耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1番目の実施の形態に係る乱流形成具を伝熱管内に装着した状態を示す斜視図である。
図2図1のX‐X断面図である。
図3】本発明の第2番目の実施の形態に係る乱流形成具を伝熱管内に装着した状態を示す断面図である。
図4】本発明の第3番目の実施の形態に係る乱流形成具を伝熱管内に装着した状態を示す断面図である。
図5】本発明の第4番目の実施の形態に係る乱流形成具を伝熱管内に装着した状態を示す断面図である。
図6】本発明の実施の形態に係る乱流形成具を備えた熱交換器の一部切欠斜視図である。
図7図6に示した熱交換器を備えた給湯装置の模式図である。
図8】従来の乱流形成具の一部を示す拡大斜視図である。
図9】従来の乱流形成具を伝熱管内に装着した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記した本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳述する。
図1は、本発明の第1番目の実施の形態に係る乱流形成具を伝熱管(2)内に挿入した状態を示す斜視図であり、図2図1のX−X断面図である。
第1番目の実施の形態の乱流形成具は、図1図2に示すような、縦長断面楕円形状の伝熱管(2)内に装着させるもので、伝熱管(2)を構成する楕円の長径の中心線に沿って、セット可能な横幅を有し且つ伝熱管(2)の長さに略一致する長尺のステンレス製の平板部材(1)から構成されている。
この平板部材(1)の長手方向に沿って、多数の切起こし曲げ加工を施すことにより、切起こし孔からなる多数の貫通孔(1c)と、切起こし片からなる多数の突出片(1a)(1b)を、平板部材(1)の表裏両面に突出させている。
なお、伝熱管(2)の材質は、ステンレス製や銅製などが採用可能である。
【0017】
略矩形状に形成される一つの貫通孔(1c)の対向する上流側辺及び下流側辺の各々から、突出片(1a)(1b)を相互に並列するように切り抜いて形成し、一つの貫通孔(1c)に設けられた一対の突出片(1a)(1b)の基端部を平板部材(1)に対して同方向に折り曲げて、一つの貫通孔(1c)に、先端相互が交差する方向に傾斜させた一対の突出片(1a)(1b)を形成する。
一対の突出片(1a)(1b)の突出方向は、隣接する貫通孔(1c)で表裏逆方向とすることにより、平板部材(1)の表面側に突出する一対の突出片(1a)(1b)と、裏面側に突出する一対の突出片(1a)(1b)とが、平板部材(1)の長手方向に沿って交互に形成される態様となる。
上記構成の平板部材(1)を、図2に示すように、断面楕円形状の伝熱管(2)内に、長径の中心線上に位置するように装着させることにより、伝熱管(2)内の流路は、平板部材(1)の表面側の上部域(21)と、裏面側の下部域(22)に区画されることとなり、突出片(1a)(1b)は上部域側(21)及び下部域側(22)へそれぞれ均等に突出している。
【0018】
平板部材(1)の長手方向に沿った両側辺(10a)(10b)には、両側辺(10a)(10b)に対して直角方向に複数の切込み(15a)〜(15d)が設けられ、各切込み(15a)〜(15d)の前後(平板部材(1)の長手方向両側)にて逆方向に切り起こすことにより、平板部材(1)の表裏に交互に突出する複数の表裏起立片(13)(14)が形成される。
具体的には、平板部材(1)の一方の側辺(10a)にて、図1にて、左側の一端と切込み(15a)との間を表側に切起こして表起立片(13)を形成し、切込み(15a)と切込み(15b)との間を、裏側へ切起こして裏起立片(14)を形成し、切込み(15b)と右側の他端との間を表側に切起こして表起立片(13)を形成している。
他方の側辺(10b)においては、前記一端から切込み(15c)との間を表側に切起こして表起立片(13)を形成し、切込み(15c)と切込み(15d)との間を、裏側へ切起こして裏起立片(14)を形成し、切込み(15d)と他端との間を表側に切起こして表起立片(13)を形成している。
【0019】
表起立片(13)及び裏起立片(14)の各々は、図2に示すように、平板部材(1)に対して略直角に起立する第1起立片(11)と、その先端から伝熱管(2)の管壁内周面(20)側へ向かって斜めに屈曲させられた第2起立片(12)とから構成されており、第2起立片(12)の先端が伝熱管(2)の管壁内周面(20)に接触するように、第1、第2起立片(11)(12)の長さはそれぞれ設定されている。
第2起立片(12)の先端を伝熱管(2)の管壁内周面(20)に接触させた状態に、平板部材(1)を伝熱管(2)内に収容すると、平板部材(1)は伝熱管(2)内にて、回転やズレが防止された状態で、所定位置に設置され、その状態は保持される。
これら第1、第2起立片(11)(12)からなる表起立片(13)及び裏起立片(14)が、乱流形成具の回転阻止片として機能する。
【0020】
表起立片(13)及び裏起立片(14)は、それぞれ、平板部材(1)に対して略直角方向に突出している第1起立片(11)と、第1起立片(11)の先端から伝熱管(2)の管壁内周面(20)へ向かって屈曲させられた第2起立片(12)からなり、第1起立片(11)と管壁内周面(20)との間に、第2起立片(12)が斜めに介在された構成となっているため、表起立片(13)と管壁内周面(20)との間、及び、裏起立片(14)と管壁内周面(20)との間には、それぞれ、下方又は上方に開放する比較的広い空間(23)が形成される。
空間(23)の広さを、流体が流通するに十分な大きさに設定しておくことにより、伝熱管(2)内を流れる流体は、上部域(21)と下部域(22)のほかに、空間(23)内にもスムーズに流れることとなり、流路抵抗が大きくなることがない。また、空間(23)に流れ込んだ塵や埃等の異物は、空間(23)を流れる流体によって押し出されるから、空間(23)内に堆積することがない。よって、空間(23)内に流体が滞留して、空間(23)を構成している表裏起立片(13)(14)や伝熱管(2)が腐食する不都合はない。
【0021】
また、回転阻止片として、表起立片(13)及び裏起立片(14)を、平板部材(1)の両側辺(10a)(10b)に、流路方向に沿って、平板部材(1)の表裏に交互に突出するように形成したから、第1番目の実施の形態の乱流形成具は、平板部材(1)を中心に、伝熱管(2)内の上部域(21)側の管壁内周面(20)にも、下部域(22)側の管壁内周面(20)にも、第2起立片(12)の先端が接触することとなり、伝熱管(2)内において平板部材(1)の回転やズレを確実に防止することができる。
また、一つの表起立片(13)又は裏起立片(14)と伝熱管(2)の管壁内周面(20)との間に形成される空間(23)は、伝熱管(2)の流路方向に沿って短く分断されて形成されているから、流体は一つの空間(23)を容易に通過することができ、空間(23)が流路抵抗となったり、空間(23)内に異物が堆積したりする不都合を一層防止することを可能としている。
【0022】
なお、空間(23)の大きさを、流体が流通するに十分な大きさとするには、管壁内周面(20)と第1起立片(11)との隙間は1mm以上に設定されているものとする。
さらに、平板部材(1)の一方の側辺(10a)に形成された切込み(15a)(15b)と、他方の側辺(10b)に形成された切込み(15c)(15d)とは、平板部材(1)を介して相互に対向する位置になく、流路方向に相互にずれた位置に形成されている。
これにより、平板部材(1)に捩じり方向の力が加わっても、平板部材(1)が変形したり、割れたりする不都合はなく、平板部材(1)の強度を向上させることができる。
【0023】
図3に示すものは、第2番目の実施の形態に係る乱流形成具の説明図であり、上記した第1番目の実施の形態と同様に、平板部材(1)の両側辺(10a)(10b)に、平板部材(1)に対して略直角に、第1起立片(11)を起立させると共に、その先端近傍を、第1起立片(11)に対して直角に折り曲げて、第2起立片(12a)としたものである。このものでは、第1起立片(11)を、伝熱管(2)の管壁内周面(20)から、第2起立片(12a)の長さ分離反して位置させることができ、表起立片(13)と管壁内周面(20)との間、裏起立片(14)と管壁内周面(20)との間にそれぞれ、下方又は上方に開放する略矩形状の空間(23)が形成されることとなる。
【0024】
図4に示すものは、第3番目の実施の形態に係る乱流形成具の説明図である。
このものでは、平板部材(1)に対して直角方向に切起こした起立片(11a)のみで、表起立片(13)及び裏起立片(14)を構成するようにしたもので、起立片(11a)の先端が伝熱管(2)の管壁内周面(20)の所定個所に当接するまで延長させることにより、起立片(11a)と伝熱管(2)の管壁内周面(20)との間に、細長い空間(23)が形成されるようにしたものである。このものでは、平板部材(1)の両側辺(10a)(10b)を表裏に折り曲げるだけで良いから製造が簡単である。
【0025】
図5に示すものは、第4番目の実施の形態に係る乱流形成具の説明図であり、表起立片(13)及び裏起立片(14)として、平板部材(1)の両側辺(10a)(10b)から伝熱管(2)の管壁内周面(20)へ向かって傾斜する傾斜片(16)を形成したものである。このものでは、表起立片(13)及び裏起立片(14)と伝熱管(2)の管壁内周面(20)との間に、それぞれ、下方又は上方に開放する略三角形状の空間(23)が形成されることとなる。
【0026】
なお、表起立片(13)及び裏起立片(14)は、伝熱管(2)の管壁内周面(20)との間に、流体が流通するに十分な大きさの空間が確保できれば、その形状は限定されるものではない。
また、上記各実施の形態のものでは、回転阻止手段として、表起立片(13)及び裏起立片(14)を、平板部材(1)の長手方向に沿った両側辺(10a)(10b)に設けたが、どちらか一方の側辺にのみに設ける構成としても良い。
【0027】
上述の第1〜4番目の各実施形態で説明した乱流形成具は、図6に示すような熱交換器を構成する伝熱管(2)内に挿入されて使用される。
同図に示す熱交換器は、ケース体(5)内に、吸熱用の銅板やステンレス板からなる板状フィン(50)が多数並列されていると共に、この板状フィン(50)を貫通するように、断面楕円形状の複数の直管からなる伝熱管(2)が、楕円の短径が水平に位置するように、ケース体(5)の両側壁間に架設されている。伝熱管(2)の両端は、前記側壁を貫通しており、伝熱管(2)の端縁を二つずつ囲むように、ケース体(5)の側壁に、カバー部(5a)が固定されている。これにより、伝熱管(2)に通水される流体は、カバー部(5a)を介して、蛇行しながら流れて行く。
乱流形成具の平板部材(1)は、伝熱管(2)内に、長手方向に沿って水平に位置するように挿入されている。
【0028】
上記した熱交換器は、図7の模式図に示す、潜熱回収型ガス給湯装置の顕熱熱交換器として使用される。
この給湯装置では、上部域に下向きの燃焼面(33a)を有するバーナ(33)を具備させた器体(53)と、これに連通し且つ空気と燃料ガスの混合気を器体(53)内のバーナ(33)に送り込むファン(34a)が収容されたファンケース(34)とが、ケーシング(55)内に設けられているもので、器体(53)内におけるバーナ(33)の下方には、バーナ(33)からの燃焼排気で加熱される給湯用の第1、第2熱交換器(51)(52)が設置され、ファンケース(34)の上流側には、空気と燃料ガスとを混合させる混合装置(35)が連設されている。混合装置(35)には、空気が送られてくる給気路(36)と燃料ガスが流れてくるガス供給路(37)が連通している。
【0029】
バーナ(33)は、給気路(36)から混合装置(35)内に送り込まれる空気のすべてを一次空気として燃料ガスと混合させて燃焼させる全一次空気燃焼式のバーナであり、混合装置(35)内で生成される混合気における空気の量と燃料ガスのガス量は、ファン(34a)を回転させるモータ(M)の回転数により決定される。
【0030】
第1熱交換器(51)は、器体(53)の中間部に設置された顕熱回収型の熱交換器であり、ケース体(5)は、器体(53)の一部を構成している。また、第2熱交換器(52)は、第1熱交換器(51)の下部に連続する潜熱回収型の熱交換器であり、第2熱交換器(52)の上流側に連なる給水管(38)からの水を第2熱交換器(52)において、バーナ(33)からの燃焼排気の潜熱で加熱した後、第1熱交換器(51)において、燃焼排気の顕熱で加熱し、第1熱交換器(51)の下流側に連なる出湯管(39)から、所定の設定温度に加熱された温水が出湯される構成となっている。
なお、第2熱交換器(52)を通過した燃焼排気は、排気ダクト(54)を介してケーシング(55)の外部に排出されるとともに、第2熱交換器(52)で発生したドレンはドレン受け(322)に回収されて中和器(323)で処理された後、外部へ排出される。
【0031】
第1熱交換器(51)の通水パイプとしての伝熱管(2)内には、乱流形成具を挿入させているから、第2熱交換器(52)から送られてくる加熱水は、第1熱交換器(51)の伝熱管(2)を通過する際に、平板部材(1)の表裏に突出させた多数の突出片(1a)(1b)に当たることにより、流れに変化が生じて乱流が促進する。これにより、伝熱管(2)内における熱交換率が安定する。
また、伝熱管(2)内にて、平板部材(1)は不用意に回転しないように回転阻止片が設けられていると共に、回転阻止片と伝熱管(2)の管壁内周面との間には、流体が流通可能な空間が形成されるようにして、流体が滞留することによる隙間腐食は生じ難くしてあるから、第1熱交換器(51)、さらには、これを備えた給湯装置の耐久性は向上する。
【符号の説明】
【0032】
(1) ・・・・・・・平板部材
(1a)(1b)・・・・・突出片
(10a)(10b)・・・・両側辺
(13)(14)・・・・・表裏起立片(回転阻止片)
(2) ・・・・・・・伝熱管
(20)・・・・・・・管壁内周面
(23)・・・・・・・空間
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