特許第6670176号(P6670176)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670176
(24)【登録日】2020年3月3日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】車両用電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/04 20060101AFI20200309BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20200309BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20200309BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20200309BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20200309BHJP
   H02P 9/04 20060101ALI20200309BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20200309BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20200309BHJP
   H01M 2/10 20060101ALN20200309BHJP
   H02P 101/25 20150101ALN20200309BHJP
   H02P 101/45 20150101ALN20200309BHJP
【FI】
   H02J7/04 L
   H01M10/48 301
   H01M10/44 P
   H02J7/00 P
   H02J7/00 302C
   H02J7/02 J
   H02P9/04 M
   B60R16/03 A
   B60R16/04 W
   !H01M2/10 S
   H02P101:25
   H02P101:45
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-106618(P2016-106618)
(22)【出願日】2016年5月27日
(65)【公開番号】特開2017-212855(P2017-212855A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2019年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星澤 昌寿
【審査官】 辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−034288(JP,A)
【文献】 特開2013−211980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00− 7/12
7/34− 7/36
H01M 10/44,10/48
H01M 2/10
B60R 16/03,16/04
H02P 9/04
H02P 101/25,101/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車両用電源装置であって、
エンジンに連結される発電機と、
前記発電機に接続される第1蓄電体と、
前記第1蓄電体と並列に前記発電機に接続される第2蓄電体と、
前記発電機と前記第1蓄電体とを接続する導通状態と、前記発電機と前記第1蓄電体とを切り離す遮断状態と、に制御される通電スイッチと、
前記第1蓄電体の温度を検出する温度センサと、
前記第1蓄電体の温度が閾値を上回る場合に、前記通電スイッチを遮断状態と導通状態とに交互に切り替えるスイッチングモードを実行するスイッチ制御部と、
を有し、
前記スイッチ制御部は、前記スイッチングモードを実行する場合に、前記第1蓄電体の温度が前記閾値に到達する前の前記第1蓄電体の温度の上昇速度に基づいて、前記通電スイッチの遮断時間と導通時間との少なくともいずれか一方を設定する、
車両用電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用電源装置において、
前記スイッチ制御部は、前記第1蓄電体の温度の上昇速度が速いほどに、前記スイッチングモードにおける前記通電スイッチの遮断時間を長く設定する、
車両用電源装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両用電源装置において、
前記スイッチ制御部は、前記第1蓄電体の温度の上昇速度が速いほどに、前記スイッチングモードにおける前記通電スイッチの導通時間を短く設定する、
車両用電源装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用電源装置において、
前記スイッチ制御部は、前記第1蓄電体の温度が前記閾値を下回る場合に、前記通電スイッチを導通状態に保持する、
車両用電源装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両用電源装置において、
前記第1蓄電体の内部抵抗は、前記第2蓄電体の内部抵抗よりも小さい、
車両用電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるエンジンには、モータジェネレータ、オルタネータ或いはISG(integrated starter generator)等の発電機が連結されている。エンジンに連結される発電機は、エンジン動力によって発電駆動されるだけでなく、車両の燃費性能を向上させる観点から、車両制動時やコースト走行時においても発電状態に制御されることが多い。このように、車両制動時やコースト走行時などにおいて、発電機を発電状態に制御した場合には、発電機の発電電力がバッテリ等の蓄電体に対して蓄えられる。ところで、バッテリ等の蓄電体を充放電させる際には、蓄電体を保護する観点から、適切な温度範囲で充放電させることが求められている。そして、蓄電体の温度が所定の温度範囲を超えて上昇した場合には、リレー等を用いて充放電電流を遮断することにより、蓄電体の過度な温度上昇が抑制される(特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−27826号公報
【特許文献2】特開2008−204867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、蓄電体の温度が大きく上昇する状況において、単に蓄電体の充放電電流を遮断することは、発電機の発電機会を減少させる要因であった。すなわち、温度上昇に伴って蓄電体の充放電電流が遮断されていた場合には、ブレーキペダルが踏まれて車両を減速させる場合であっても、発電機を発電させることができずに車両のエネルギー効率を低下させる要因であった。このため、蓄電体の温度が上昇する状況であっても、発電機の発電機会を確保することにより、車両のエネルギー効率を向上させることが求められている。
【0005】
本発明の目的は、車両のエネルギー効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用電源装置は、車両に搭載される車両用電源装置であって、エンジンに連結される発電機と、前記発電機に接続される第1蓄電体と、前記第1蓄電体と並列に前記発電機に接続される第2蓄電体と、前記発電機と前記第1蓄電体とを接続する導通状態と、前記発電機と前記第1蓄電体とを切り離す遮断状態と、に制御される通電スイッチと、前記第1蓄電体の温度を検出する温度センサと、前記第1蓄電体の温度が閾値を上回る場合に、前記通電スイッチを遮断状態と導通状態とに交互に切り替えるスイッチングモードを実行するスイッチ制御部と、を有し、前記スイッチ制御部は、前記スイッチングモードを実行する場合に、前記第1蓄電体の温度が前記閾値に到達する前の前記第1蓄電体の温度の上昇速度に基づいて、前記通電スイッチの遮断時間と導通時間との少なくともいずれか一方を設定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1蓄電体の温度が閾値を上回る場合に、通電スイッチを遮断状態と導通状態とに交互に切り替えるスイッチングモードを実行する。これにより、第1蓄電体の温度上昇を抑制しつつ、発電機の発電機会を確保することができ、車両のエネルギー効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施の形態である車両用電源装置を備えた車両の構成例を示す概略図である。
図2】電源回路の一例を示す回路図である。
図3】スタータジェネレータを発電状態に制御したときの電力供給状況を示す図である。
図4】スタータジェネレータを発電休止状態に制御したときの電力供給状況を示す図である。
図5】スタータジェネレータを力行状態に制御したときの電力供給状況を示す図である。
図6】スイッチングモードの実行状況の一例を示す図である。
図7】(a)はスイッチが遮断状態に制御された電源回路を示す図であり、(b)はスイッチが導通状態に制御された電源回路を示す図である。
図8】スイッチングモードの有無によるバッテリ温度の変化を示す比較図である。
図9】(a)および(b)は、スイッチの開閉タイミングの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態である車両用電源装置10を備えた車両11の構成例を示す概略図である。図1に示すように、車両11には、動力源であるエンジン12を備えたパワーユニット13が搭載されている。エンジン12のクランク軸14には、ベルト機構15を介してスタータジェネレータ(発電機)16が機械的に連結されている。また、エンジン12にはトルクコンバータ17を介して変速機構18が連結されており、変速機構18にはデファレンシャル機構19等を介して車輪20が連結されている。なお、エンジン12には、インジェクタ、イグナイタおよびスロットルバルブ等の各種装置21を制御するため、コンピュータ等からなるエンジンコントローラ22が接続されている。
【0010】
エンジン12に連結されるスタータジェネレータ16は、発電機および電動機として機能する所謂ISG(integrated starter generator)である。スタータジェネレータ16は、クランク軸14に駆動される発電機として機能するだけでなく、所謂アイドリングストップ制御においてクランク軸14を始動回転させる電動機として機能する。スタータジェネレータ16は、ステータコイルを備えたステータ30と、フィールドコイルを備えたロータ31と、を有している。また、スタータジェネレータ16には、ステータコイルやフィールドコイルの通電状態を制御するため、インバータ、レギュレータおよびコンピュータ等からなるISGコントローラ32が設けられている。ISGコントローラ32によってフィールドコイルやステータコイルの通電状態を制御することにより、発電機として機能するスタータジェネレータ16の発電トルク等を制御することや、電動機として機能するスタータジェネレータ16の駆動トルク等を制御することができる。
【0011】
[電源回路]
車両用電源装置10が備える電源回路40について説明する。図2は電源回路40の一例を示す回路図である。図2に示すように、電源回路40は、スタータジェネレータ16に電気的に接続されるリチウムイオンバッテリ(第1蓄電体)41と、これと並列にスタータジェネレータ16に電気的に接続される鉛バッテリ(第2蓄電体)42と、を備えている。なお、リチウムイオンバッテリ41を積極的に放電させるため、リチウムイオンバッテリ41の端子電圧は、鉛バッテリ42の端子電圧よりも高く設計されている。また、リチウムイオンバッテリ41を積極的に充放電させるため、リチウムイオンバッテリ41の内部抵抗は、鉛バッテリ42の内部抵抗よりも小さく設計されている。
【0012】
リチウムイオンバッテリ41の正極端子41aには正極ライン43が接続され、鉛バッテリ42の正極端子42aには正極ライン44が接続され、スタータジェネレータ16の正極端子16aには正極ライン45が接続される。これらの正極ライン43〜45は、接続点46を介して互いに接続されている。また、リチウムイオンバッテリ41の負極端子41bには負極ライン47が接続され、鉛バッテリ42の負極端子42bには負極ライン48が接続され、スタータジェネレータ16の負極端子16bには負極ライン49が接続される。これらの負極ライン47〜49は、基準電位点50に接続されている。
【0013】
リチウムイオンバッテリ41に接続される負極ライン47には、導通状態と遮断状態とに切り替えられるスイッチ(通電スイッチ)SW1が設けられている。このスイッチSW1を導通状態に制御することにより、スタータジェネレータ16とリチウムイオンバッテリ41とを接続することができる。一方、スイッチSW1を遮断状態に制御することにより、スタータジェネレータ16とリチウムイオンバッテリ41とを切り離すことができる。また、鉛バッテリ42に接続される正極ライン44には、導通状態と遮断状態とに切り替えられるスイッチSW2が設けられている。これらのスイッチSW1,SW2は、MOSFET等の半導体素子によって構成されるスイッチであっても良く、電磁力等を用いて接点を機械的に開閉させるスイッチであっても良い。なお、スイッチSW1,SW2は、リレーやコンタクタ等とも呼ばれている。
【0014】
電源回路40には、バッテリモジュール51が設けられている。バッテリモジュール51には、リチウムイオンバッテリ41が組み込まれるとともに、スイッチSW1,SW2が組み込まれている。また、バッテリモジュール51には、リチウムイオンバッテリ41の温度を検出する温度センサ52が設けられている。さらに、バッテリモジュール51には、コンピュータ等からなるバッテリコントローラ53が設けられている。このバッテリコントローラ53は、リチウムイオンバッテリ41の充電状態、電流、電圧、温度等を監視する機能や、スイッチSW1,SW2を制御する機能を有している。つまり、バッテリコントローラ53は、スイッチSW1を制御するスイッチ制御部として機能している。なお、正極ライン44には、電気機器54等を保護するヒューズ55が設けられている。
【0015】
[バッテリ充放電制御]
リチウムイオンバッテリ41の充放電制御について説明する。リチウムイオンバッテリ41の充放電制御を行うため、車両用電源装置10にはコンピュータ等からなるメインコントローラ56が設けられている。メインコントローラ56や前述した各コントローラ22,32,53は、CANやLIN等の車載ネットワーク57を介して互いに通信自在に接続されている。メインコントローラ56は、リチウムイオンバッテリ41の充電状態SOCに基づいて、スタータジェネレータ16を発電状態または発電休止状態に制御することにより、リチウムイオンバッテリ41の充放電を制御する。なお、充電状態SOC(state of charge)とは、バッテリの設計容量に対する蓄電量の比率である。この充電状態SOCは、バッテリコントローラ53からメインコントローラ56に送信される。
【0016】
図3はスタータジェネレータ16を発電状態に制御したときの電力供給状況を示す図である。図4はスタータジェネレータ16を発電休止状態に制御したときの電力供給状況を示す図である。図5はスタータジェネレータ16を力行状態に制御したときの電力供給状況を示す図である。なお、スタータジェネレータ16の発電状態として、エンジン動力によってスタータジェネレータ16を回転駆動する燃焼発電状態と、車両減速時の運動エネルギーによってスタータジェネレータ16を回転駆動する回生発電状態とがある。
【0017】
図3に示すように、例えばリチウムイオンバッテリ41の蓄電量が枯渇している場合には、スタータジェネレータ16が燃焼発電状態に制御される。つまり、リチウムイオンバッテリ41の充電状態SOCが所定の下限値を下回る場合には、リチウムイオンバッテリ41を充電して充電状態SOCを高めるため、スタータジェネレータ16が燃焼発電状態に制御される。スタータジェネレータ16を燃焼発電状態に制御する際には、スタータジェネレータ16の発電電圧がリチウムイオンバッテリ41の端子電圧よりも引き上げられる。これにより、図3に黒塗りの矢印で示すように、スタータジェネレータ16から、リチウムイオンバッテリ41、電気機器54および鉛バッテリ42等に対して電力が供給されるため、スタータジェネレータ16によってリチウムイオンバッテリ41が充電される。
【0018】
図4に示すように、例えばリチウムイオンバッテリ41の蓄電量が十分に確保されている場合には、スタータジェネレータ16が発電休止状態に制御される。つまり、リチウムイオンバッテリ41の充電状態SOCが所定の上限値を上回る場合には、リチウムイオンバッテリ41の放電を促してエンジン負荷を低減するため、スタータジェネレータ16は発電休止状態に制御される。スタータジェネレータ16を発電休止状態に制御する際には、スタータジェネレータ16の発電電圧がリチウムイオンバッテリ41の端子電圧よりも引き下げられる。これにより、図4に黒塗りの矢印で示すように、リチウムイオンバッテリ41から電気機器54等に対して電力が供給されるため、スタータジェネレータ16の発電を抑制することができ、エンジン負荷を低減することができる。
【0019】
前述したように、スタータジェネレータ16は、充電状態SOCに基づき燃焼発電状態や発電休止状態に制御されるが、車両11の燃費性能を向上させる観点から、車両減速時にはスタータジェネレータ16が回生発電状態に制御される。これにより、車両の運動エネルギーを電気エネルギーに変換して回収することができ、車両のエネルギー効率を向上させることができる。スタータジェネレータ16の回生発電を実行するか否かについては、アクセルペダルやブレーキペダルの操作状況等に基づいて決定される。例えば、アクセルペダルの踏み込みが解除された場合や、ブレーキペダルが踏み込まれた場合には、スタータジェネレータ16の発電電圧がリチウムイオンバッテリ41の端子電圧よりも引き上げられ、図3に示すように、スタータジェネレータ16が回生発電状態に制御される。なお、図3および図4に示すように、スタータジェネレータ16を燃焼発電状態、回生発電状態および発電休止状態に制御する際に、スイッチSW1,SW2は導通状態に保持される。
【0020】
また、図5に示すように、スタータジェネレータ16を力行状態に制御する際には、スイッチSW2が導通状態から遮断状態に切り替えられる。つまり、スタータジェネレータ16によってエンジン12を始動回転させる場合や、スタータジェネレータ16によってエンジン12をアシスト駆動する場合には、スイッチSW2が導通状態から遮断状態に切り替えられる。すなわち、スイッチSW2を遮断することにより、鉛バッテリ42および電気機器54等からなる電源回路と、リチウムイオンバッテリ41およびスタータジェネレータ16等からなる電源回路と、が互いに切り離される。これにより、リチウムイオンバッテリ41からスタータジェネレータ16に大電流が供給された場合であっても、電気機器54等に対する瞬間的な電圧低下つまり瞬低を防止することができる。
【0021】
[スイッチングモード]
以下、スイッチSW1のスイッチングモードについて説明する。リチウムイオンバッテリ41の温度を過度に上昇させてしまうと、リチウムイオンバッテリ41を劣化させてしまう虞がある。そこで、バッテリコントローラ53は、リチウムイオンバッテリ41の温度に基づいて、スイッチSW1を遮断状態と導通状態とに交互に切り替えるスイッチングモードを実行する。このスイッチングモードを実行することにより、後述するように、リチウムイオンバッテリ41の温度上昇を抑制するとともに、スタータジェネレータ16の回生機会を確保することができる。なお、スイッチングモードにおいて、スイッチSW2は導通状態に保持される。
【0022】
図6はスイッチングモードの実行状況の一例を示す図である。なお、図6には、スイッチSW1の導通状態がONで示されており、スイッチSW1の遮断状態がOFFで示されている。また、図7(a)はスイッチSW1が遮断状態に制御された電源回路40を示す図であり、図7(b)はスイッチSW1が導通状態に制御された電源回路40を示す図である。
【0023】
図6に示すように、リチウムイオンバッテリ41には、各種温度条件として、上限温度Tmaxが設定され、上限温度Tmaxよりも低い第1閾値(閾値)T1が設定され、第1閾値T1よりも低い第2閾値T2が設定される。上限温度Tmaxとは、リチウムイオンバッテリ41を保護する観点から、リチウムイオンバッテリ41の充放電が禁止される温度である。また、第1閾値T1とは、スイッチングモードを開始する温度であり、第2閾値T2とは、スイッチングモードを終了させる温度である。
【0024】
リチウムイオンバッテリ41の温度(以下、バッテリ温度と記載する。)が第1閾値T1を下回る場合、つまりバッテリ温度が正常範囲内で推移する場合(符号a1)には、スイッチSW1が導通状態に保持される(符号b1)。その後、例えば短期間に充放電が繰り返されてバッテリ温度が上昇し、バッテリ温度が第1閾値T1に到達した場合(符号a2)には、スイッチSW1を開閉するスイッチングモードが開始される。前述したように、スイッチングモードとは、スイッチSW1を遮断状態と導通状態とに交互に切り替える制御モードである。
【0025】
図7(a)に示すように、スイッチSW1を遮断することにより、リチウムイオンバッテリ41が電源回路40から切り離される。これにより、リチウムイオンバッテリ41の充放電を停止させることができるため、バッテリ温度の上昇を抑制することができる。一方、図7(b)に示すように、スイッチSW1を導通させることにより、リチウムイオンバッテリ41が電源回路40に接続される。これにより、リチウムイオンバッテリ41の充放電が可能になるため、車両減速等の回生機会が発生した場合には、リチウムイオンバッテリ41に回生電力を充電することができる。すなわち、スイッチングモードを実行することにより、バッテリ温度の上昇を抑制するとともに、エネルギー効率の低下を抑制することができる。このように、バッテリ温度の上昇を抑制するスイッチングモードが実行され、その後、バッテリ温度が第2閾値T2まで低下すると(符号a3)、スイッチングモードを終了させてスイッチSW1が再び導通状態に保持される(符号b2)。なお、バッテリ温度が上限温度Tmaxに到達した場合には、リチウムイオンバッテリ41の温度上昇を止める必要があるため、スイッチングモードを止めてスイッチSW1が遮断状態に保持される。
【0026】
続いて、スイッチングモードの有無によるバッテリ温度の変化について説明する。図8はスイッチングモードの有無によるバッテリ温度の変化を示す比較図である。図8には、実施例としてスイッチングモードを実行した場合の温度推移が実線を用いて示されており、比較例としてスイッチングモードを実行しない場合の温度推移が破線を用いて示されている。
【0027】
図8に示すように、実施例においては、バッテリ温度が第1閾値T1に到達すると(符号c1)、スイッチSW1のスイッチングモードが開始される。これにより、リチウムイオンバッテリ41の充放電を制限することができるため、バッテリ温度の上昇を抑制することができる。一方、比較例においては、バッテリ温度が第1閾値T1を上回る場合であっても、スイッチSW1が導通状態に保持される(符号d1)。その後、バッテリ温度が上限温度Tmaxに到達すると(符号e1)、スイッチSW1が導通状態から遮断状態に切り替えられ、スイッチSW1が遮断状態に保持される(符号d2)。このように、比較例においては、バッテリ温度の上昇が早期に進行することから、スイッチSW1が遮断状態に保持され易くなる。
【0028】
このように、スイッチSW1が遮断状態に保持された場合には、例えば期間Xで示すように、車両減速等の回生機会が訪れた場合であっても、スタータジェネレータ16の回生発電によってリチウムイオンバッテリ41を充電することができないため、車両のエネルギー効率が低下することになる。これに対し、実施例として示したように、スイッチSW1のスイッチングモードを実行していた場合には、符号f1,f2で示すように、通常時に比べて回生電力は制限されるものの、スタータジェネレータ16の回生発電によってリチウムイオンバッテリ41を充電することができるため、車両のエネルギー効率を向上させることができる。
【0029】
[スイッチSW1の開閉タイミング]
続いて、スイッチングモードにおけるスイッチSW1の開閉タイミングの設定方法、つまりスイッチングモードにおけるスイッチSW1の遮断時間と導通時間との設定方法について説明する。ここで、図9(a)および(b)はスイッチSW1の開閉タイミングの一例を示す図である。図9(a)にはバッテリ温度の上昇速度が大きい場合の開閉タイミングが示されており、図9(b)にはバッテリ温度の上昇速度が小さい場合の開閉タイミングが示されている。なお、図9に示したΔTemp1,ΔTemp2は、所定時間Δtにおけるバッテリ温度の上昇分を示している。
【0030】
図9(a)および(b)に示すように、スイッチングモードにおいては、所定周期TaでスイッチSW1の開閉が繰り返される。また、図9(a)に示すように、バッテリ温度の上昇速度(ΔTemp1/Δt)が大きい場合には、スイッチSW1を遮断状態に保持する遮断時間Tb1が長く設定され、スイッチSW1を導通状態に保持する導通時間Tc1が短く設定される。一方、図9(b)に示すように、バッテリ温度の上昇速度(ΔTemp2/Δt)が小さい場合には、スイッチSW1を遮断状態に保持する遮断時間Tb2が長く設定され、スイッチSW1を導通状態に保持する導通時間Tc2が短く設定される。
【0031】
このように、バッテリコントローラ53は、バッテリ温度の上昇速度が速いほどに、スイッチングモードにおけるスイッチSW1の遮断時間を長く設定する。また、バッテリコントローラ53は、バッテリ温度の上昇速度が速いほどに、スイッチングモードにおけるスイッチSW1の導通時間を短く設定する。これにより、バッテリ温度の上昇速度が速い場合、つまりバッテリ温度が上限温度Tmaxに到達し易い場合には、バッテリ温度の上昇を抑制するように、スイッチングモードを適切に制御することできる。一方、バッテリ温度の上昇速度が遅い場合、つまりバッテリ温度が上限温度Tmaxに到達し難い場合には、リチウムイオンバッテリ41に対して多くの回生電力を充電するように、スイッチングモードを適切に制御することできる。
【0032】
前述の説明では、バッテリ温度の上昇速度に基づいて、スイッチSW1の遮断時間と導通時間との双方を変化させているが、これに限られることはない。例えば、バッテリ温度の上昇速度に基づいて、スイッチSW1の遮断時間だけを変化させ、スイッチSW1の導通時間を一定に保持しても良い。また、バッテリ温度の上昇速度に基づいて、スイッチSW1の導通時間だけを変化させ、スイッチSW1の遮断時間を一定に保持しても良い。また、図9に示す例では、バッテリ温度が第1閾値T1に到達する直前の上昇速度に基づいて、スイッチングモードでの遮断時間や導通時間を設定しているが、これに限られることはなく、例えば、バッテリ温度が第1閾値T1に到達する迄の上昇速度の平均値に基づいて、スイッチングモードでの遮断時間や導通時間を設定しても良い。
【0033】
前述の説明では、スイッチSW1を一定の周期Taで開閉させているが、これに限られることはなく、スイッチSW1の開閉周期を変化させても良い。また、前述の説明では、スイッチングモードの実行過程において、スイッチSW1の遮断時間や導通時間を変化させても良い。例えば、第1閾値T1と上限温度Tmaxとの間に第3閾値を設定し、スイッチングモードの実行中にバッテリ温度が第3閾値に到達した場合には、バッテリ温度の上昇速度に基づいて遮断時間や導通時間を再設定しても良い。
【0034】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、リチウムイオンバッテリ41の負極ライン47にスイッチSW1を設けているが、これに限られることはない。例えば、図2に一点鎖線で示すように、リチウムイオンバッテリ41の正極ライン43にスイッチSW1を設けても良い。また、前述の説明では、第1蓄電体としてリチウムイオンバッテリ41を採用し、第2蓄電体として鉛バッテリ42を採用しているが、これに限られることはなく、他の種類のバッテリを採用しても良く、キャパシタを採用しても良い。また、第1蓄電体と第2蓄電体とは、異なる種類の蓄電体に限られることはなく、同じ種類の蓄電体であっても良いことはいうまでもない。
【0035】
前述の説明では、発電機としてISGであるスタータジェネレータ16を採用しているが、これに限られることはなく、発電機としてオルタネータを採用しても良く、ハイブリッド車両の動力源であるモータジェネレータを発電機として採用しても良い。また、前述の説明では、バッテリコントローラ53をスイッチ制御部として機能させているが、これに限られることはなく、メインコントローラ56等の他のコントローラをスイッチ制御部として機能させても良い。
【符号の説明】
【0036】
10 車両用電源装置
12 エンジン
16 スタータジェネレータ(発電機)
41 リチウムイオンバッテリ(第1蓄電体)
42 鉛バッテリ(第2蓄電体)
52 温度センサ
53 バッテリコントローラ(スイッチ制御部)
SW1 スイッチ(通電スイッチ)
T1 第1閾値(閾値)
Tb1,Tb2 遮断時間
Tc1,Tc2 導通時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9