(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記接触処理槽は、曝気装置、撹拌装置及び有機汚泥注入切り換え弁の少なくとも1つを具備し、当該曝気装置、当該撹拌装置及び当該有機汚泥注入切り換え弁の少なくとも1つは前記制御装置に電気的に接続されている、請求項3に記載の有機汚泥の処理装置。
【背景技術】
【0002】
下水処理場から発生する余剰汚泥は、下水道の普及に伴って増加している。その多くはメタン発酵を行うなどして有効活用されてはいるが、未だ活用できていない汚泥については、脱水処理後に最終処分場で埋め立て処分されている。近年では、最終処分場の確保が難しくなってきたという社会的な問題がある。また、メタン発酵によって発生する嫌気性処理汚泥の多くは難脱水性汚泥であり、脱水処理するために凝集剤を多量に必要とするため運転コストが高という問題がある。その上、得られる脱水ケーキの含水率も高い為、燃焼処理できない脱水ケーキは、未活用の汚泥と同様に最終処分場の確保が難しいという問題を抱えている。
【0003】
嫌気性処理汚泥の脱水性を改善する方法として、有機性廃棄物をメタン発酵して得られる発酵残液およびその他の嫌気性有機化合物含有液をpH5.5以下、好ましくは4.5〜3.5に調整するとともに酸化剤と接触させた後の処理液を固液分離する方法が提案されている(特許文献1)。pH調整は、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸を添加して行うことが開示されている。酸化剤との接触については、空気や酸素を曝気によって強制的に発酵残液中に導入してアンモニア成分を液外に放散させるか、次亜塩素酸や次亜塩素酸塩などを添加することが開示されている。また、発酵残液のpHを5.5以下に調整することで二酸化炭素に由来する激しい発泡が生じることも記載されている。
【0004】
メタン発酵が可能な有機性廃棄物を嫌気性消化処理し、消化残物を酸素含有ガスで曝気処理したのち機械脱水して得た脱水ケーキを曝気ブロワーの吐出空気の熱で乾燥させる方法が提案されている(特許文献2)。特許文献2には、曝気処理のみでは不十分な脱水を熱による乾燥で補うことが開示されている。
【0005】
嫌気性消化汚泥に曝気を行った後余剰汚泥を混合し、金属塩を添加し、両性有機高分子凝集剤を添加した後、脱水する嫌気性消化汚泥の脱水方法が提案されている(特許文献3)。特許文献3には、嫌気性消化汚泥を曝気して、溶解している炭酸ガスを脱気することにより、凝集剤を添加する際の炭酸ガスの発泡による凝集阻害を防止することができたが、曝気を行わなかった場合には発泡による凝集阻害により脱水ケーキの含水率が高くなったことが開示されている。
【0006】
有機性汚泥を嫌気性消化し、固液分離した後、消化汚泥にオゾン又は過酸化水素を添加して可溶化した後、さらに嫌気性消化する有機性汚泥の減量化方法が提案されている(特許文献4)。従来のオゾン酸化処理法よりはオゾンの使用量を削減できるが、それでもなお高額なオゾン酸化処理を行う方法であり、コスト削減の課題は残る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、オゾンなどの高価な酸化剤を使用せずに、また大型のブロアなどの追加設備を設ける必要なく、運転コストを抑制し、脱水率を向上させて、有機性汚泥の減容化を達成できる、簡易な有機汚泥の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、有機汚泥中の粘性物質が濃縮されることによって難脱水化することを知見し、有機汚泥の脱水処理に際して、有機汚泥の凝集処理前に、有機汚泥中の粘性物質を分解して粘度を低減することにより、脱水処理を容易に行い得ることに想到した。
【0010】
本発明によれば、以下の態様の有機汚泥の処理方法及び処理装置が提供される。
[1]有機汚泥の凝集及び脱水処理前に、鉄化合物を含む有機汚泥を酸素と接触させてヒドロキシラジカルを発生させ、当該有機汚泥の粘度をB型回転粘度計で35℃、60rpmで計測した場合に20mPa・s/h以上の粘度低減速度で低減させる有機汚泥の処理方法。
[2]有機汚泥中の鉄化合物の総量[Fe(mg/L)]と、TS(total solid:蒸発残留物質)[TS(mg/L)]と、酸素移動容量係数(kLa(h
−1))との間に、下記式(1):
【0011】
【数1】
【0012】
が成立するように、酸素移動容量係数又は鉄注入量を制御する、[1]に記載の有機汚泥の処理方法。
[3]有機汚泥前駆体又は有機汚泥への鉄化合物の注入量を
(i)酸素移動容量係数(kLa(h
−1))が0.12h
−1未満の場合には、有機汚泥中のTS(total solid:蒸発残留物質)当たりの鉄化合物の総量の比[Fe(mg/L)]/[TS(mg/L)]が1.6以上2.9以下となるように、
(ii)酸素移動容量係数(kLa(h
−1))が0.12h
−1以上0.28h
−1未満の場合には、有機汚泥中のTS(total solid:蒸発残留物質)当たりの鉄化合物の総量の比[Fe(mg/L)]/[TS(mg/L)]が0.9以上2.9以下となるように、
(iii)酸素移動容量係数(kLa(h
−1))が0.28h
−1以上5.7h
−1以下の場合には、有機汚泥中のTS(total solid:蒸発残留物質)当たりの鉄化合物の総量の比[Fe(mg/L)]/[TS(mg/L)]が0.6以上2.9以下となるように、有機汚泥への鉄注入量を制御する、[1]に記載の有機汚泥の処理方法。
[4]鉄化合物を含む有機汚泥を酸素と接触させてヒドロキシラジカルを発生させ、当該有機汚泥の粘度を20mPa・s/h以上の粘度低減速度で低減させる有機汚泥の処理方法を実施するための処理装置であって、
有機汚泥前駆体又は有機汚泥に鉄化合物を注入する鉄化合物注入手段と、
鉄化合物を含有する有機汚泥と酸素を接触させる酸素接触処理槽と、
当該酸素接触処理槽から排出される有機汚泥を凝集させる凝集槽と、
凝集した有機汚泥を脱水する脱水機と、
当該酸素接触処理槽内若しくは当該酸素接触処理槽と当該凝集槽との間に設けられている粘度計と、
当該接触処理槽の酸素移動容量係数又は鉄注入量を制御する制御装置と、
を具備する、有機汚泥の処理装置。
[5]前記接触処理槽は、曝気装置、撹拌装置及び有機汚泥注入切り換え弁の少なくとも1つを具備し、当該曝気装置、当該撹拌装置及び当該有機汚泥注入切り換え弁の少なくとも1つは前記制御装置に電気的に接続されている、[4]に記載の有機汚泥の処理装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、有機汚泥の凝集及び脱水処理前に、鉄化合物を含む有機汚泥を酸素と接触させて、鉄の自動酸化を起因として発生させたヒドロキシラジカルにより、当該有機汚泥中の粘性物質を分解して、当該有機汚泥の粘度を低減させることが可能となる。有機汚泥中に粘性物質が濃縮すると有機汚泥が難脱水化するため、粘度を低減させることで難脱水化を防止することができる。
【0014】
また、酸素移動容量係数を増加させることが難しい状況下においては、有機汚泥前駆体又は有機汚泥への鉄化合物の注入量を増量することでヒドロキシラジカルの発生量を高めることができ、有機汚泥中の粘性物質の分解速度を高めることが可能となる。
【0015】
さらには、鉄の自動酸化によって生成したFe(III)の一部は、例えば嫌気性処理汚泥が持つ還元力によってFe(II)へと還元させることができるため、理論的に必要な量以下の鉄化合物の注入を行える様になり、鉄化合物の使用量を削減することが可能となる。
【0016】
また、鉄の自動酸化によって生成したFe(III)による凝集反応や酸素による酸化反応も同時に起こすことができることから、有機汚泥の粘度をより安定的に低減させることが可能となる。
【0017】
さらに、副次的な効果として、脱水処理、排水処理、脱硫処理、脱臭処理への負荷を低減できる。より詳しくは下記のような効果がある。
(1)有機汚泥と酸素を接触させることにより、有機汚泥中に含まれるFe(II)を酸化させることによって、Fe(III)を凝集剤として利用することができ、後段の凝集工程における凝集剤の注入量を削減することが可能となる。
(2)有機汚泥と酸素を接触させることにより、例えば、多糖類、タンパク質、糖タンパク質、核酸、リン脂質、フミン酸などの高分子物質などの嫌気性処理汚泥に含有されている凝集阻害物質を分解させることができるので、高価なアミジン系高分子凝集剤でしか凝集させることができない嫌気性処理汚泥に対して、安価な非アミジン系高分子凝集剤又はアミジン系高分子凝集剤に安価な非アミジン系高分子凝集剤を混合したブレンド品を凝集剤として使用することができ、凝集コストを低減することが可能となると共に、脱水効率が向上し、脱水ケーキの含水率を低減することが可能となる。
(3)鉄化合物を過剰に注入することにより、有機物に含まれる硫黄分と鉄が結合して、硫化水素の発生を抑制することができ、後段の脱硫処理や脱臭処理における負荷を低減することが可能となる。
(4)酸素移動容量係数を増加させる場合には、嫌気性処理汚泥に溶存している炭酸ガスを除去することができるので、後段の凝集工程で凝集剤を注入した際の発泡現象を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0020】
本発明は、有機汚泥の凝集及び脱水処理前に、鉄化合物を含む有機汚泥を酸素と接触させてヒドロキシラジカルを発生させ、当該有機汚泥の粘度をB型回転粘度計で35℃、60rpmで計測した場合に20mPa・s/h以上の粘度低減速度で低減させる有機汚泥の処理方法である。
【0021】
図1は本発明の有機汚泥の処理方法の流れを示すフローチャートであり、
図2は本発明の有機汚泥の処理方法を実施するための装置構成の概略図、
図3〜5は代表的な嫌気性処理及び好気性処理における本発明の有機汚泥の処理方法を実施するための装置構成の概略図である。
【0022】
本発明の処理方法は、
図1に示すように、通常の有機汚泥の凝集及び脱水処理に先立ち、鉄化合物を含む有機汚泥を酸素と接触させる酸素接触処理工程を含む。
図1における「有機汚泥発生工程」は、たとえば
図3に示す嫌気性処理槽で嫌気性消化汚泥が形成されるまでの工程、
図4に示す生物反応槽及び後処理槽で余剰汚泥が形成されるまでの工程、
図5に示す下水処理の最終沈殿池で余剰汚泥が形成されるまでの工程を意味する。
図1における「酸素接触工程」は、たとえば
図3に示す凝集槽の前段で嫌気性消化汚泥を酸素と接触させる工程、
図4に示す凝集槽の前段で余剰汚泥を酸素と接触させる工程、
図5に示す凝集槽の前段で余剰汚泥を酸素と接触させる工程を意味する。
【0023】
本発明において「有機汚泥」とは、嫌気性処理による消化汚泥、及び好気性処理による余剰汚泥の両者を含み、嫌気性処理及び好気性処理のいずれかに限定されない。また、「有機汚泥前駆体」とは、嫌気性処理又は好気性処理によって有機汚泥を形成する物質であればよく、たとえば嫌気性処理の場合には下水処理で発生する初沈汚泥や余剰汚泥、各種産業排水処理で発生する余剰汚泥、食品製造残渣や生ゴミ及びこれらの可溶化液などが挙げられ、たとえば好気性処理の場合には下水、消化汚泥脱離液や各種産業排水などが挙げられる。一般的に、嫌気性処理又は好気性処理されて形成される有機汚泥は、少量の鉄化合物を含むことが多い。しかし、本発明の処理方法においては、有機汚泥が後述する一定量の鉄濃度を有することが必要である。酸素接触処理の際に有機汚泥が十分な鉄濃度を有していない場合には、前記有機汚泥前駆体又は有機汚泥に鉄化合物を追加で注入してもよく、遅くとも酸素接触処理中若しくは酸素接触処理前の有機汚泥に対して注入することができればよい。例えば、
図3に示す嫌気性処理汚泥に対して注入する場合には、凝集槽の前段の可溶化槽、可溶化物貯槽、嫌気性処理槽、酸素接触処理槽及びこれらの間の配管の任意の箇所で鉄化合物を注入することができる。例えば、
図4に示す生物処理を含む好気性処理汚泥に対して注入する場合には、生物反応槽の後段で凝集槽の前段の後処理槽及び酸素接触処理槽及びこれらの間の配管の任意の箇所で鉄化合物を注入することができる。例えば、
図5に示す下水処理の場合には、生物反応槽の後段で凝集槽の前段の最終沈殿池及び酸素接触処理槽及びこれらの間の配管の任意の箇所で鉄化合物を注入することができる。
【0024】
本発明において「鉄化合物」とは、特に限定されず、塩化第二鉄、塩化第一鉄、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄、ポリ硫酸第二鉄、ポリ硫酸第一鉄などが挙げられるが、酸素によるFe(II)からFe(III)への自動酸化によりヒドロキシラジカルを発生させることができる硫酸第二鉄、塩化第二鉄などの二価の鉄の塩であることが好ましい。
【0025】
鉄化合物を含む有機汚泥と酸素を接触させることによって、酸素による有機汚泥中の粘性物質の分解に加え、鉄の自動酸化により発生するヒドロキシラジカルによる有機汚泥中の粘性物質の分解が生じ、粘性物質の分解が促進される。有機性汚泥が硝化脱窒素処理後の余剰汚泥や生物脱臭処理後の汚泥などである場合には、種々の好気性微生物群が高分子成分の分解活性は高くないが多数生存している。これらの好気性微生物群は、嫌気性処理工程において汚泥中に残留する粘着質成分を生育源として摂取し分解することが可能であるため、酸素と接触させて部分的に好気性雰囲気とすることによって高分子成分の分解活性を高めることができる。汚泥中の残留有機物と無機物とが架橋作用で結合して生じた粘着物、有機物同士が会合して生じた粘着物、及び高分子系粘着物などは、好気性微生物群による生物的反応及びヒドロキシラジカルによる化学的反応で分解される。特に、消化汚泥中に残留する分子量100万〜200万以上の高分子物質が分解されることにより汚泥粘度は大きく低減される。
【0026】
また、有機汚泥中の鉄化合物と酸素との接触により、Fe(II)は自動酸化されてFe(III)となる。鉄の自動酸化により生じるFe(III)は、マイナスに帯電している分解した粘性物質を含む有機汚泥により取り囲まれ(凝結)、基礎フロックを形成する凝結剤としても作用する。基礎フロックは、後段の凝集工程において凝集フロックへと成長する。
【0027】
本発明において、酸素は、酸素を含む気体として有機汚泥に導入することができればよい。たとえば、純粋酸素、空気、難脱水性消化汚泥が形成される処理施設内のごみ受入ピットやごみ選別設備などから発生する悪臭成分を含む低濃度系および高濃度系の臭気ガス、汚水の活性汚泥処理設備から発生する曝気排ガスなどを用いることができる。また、脱水処理工程の後段に脱水分離液の硝化工程を含む場合には、硝化工程からの排気ガスを酸素含有気体として再利用することができる。硝化工程からの排気ガスは、通常の空気よりも酸素含有量は低いが、本発明における酸素接触処理に用いるためには十分な酸素を含む。撹拌による気液接触による液中への酸素溶解、マイクロバブル発生器や曝気装置による液中への気体の導入など、公知の種々の手段を用いて有機汚泥中へ酸素を導入することができる。しかし、本発明の処理方法においては、後述する一定量の酸素と接触させることが必要であり、溶存酸素(DO)濃度としては1.0mg/L以下に維持できる量とすることが好ましい。
【0028】
有機汚泥中の鉄化合物と酸素との量的関係については、下記式(1):
【0030】
(式中、kLa(h
−1)は酸素移動容量係数であり、[Fe(mg/L)]は有機汚泥中の鉄化合物の総量であり、[TS(mg/L)]は有機汚泥のTS(total solid:蒸発残留物質)である。)
が成立するように、酸素移動容量係数又は鉄注入量を制御する。
【0031】
酸素移動容量係数kLa(h
−1)は、気相から液相への酸素供給能力を示す指標であり、曝気量、撹拌速度、液位、酸素分圧などの実効制御因子により制御することができる。曝気量の制御は、たとえば曝気装置の風量を制御することにより行うことができる。撹拌速度の制御は、酸素接触処理槽に設けられている撹拌手段、たとえば撹拌翼の回転数を制御することにより行うことができる。液位の制御は、酸素接触処理槽へ導入する有機汚泥の流量又は酸素接触処理槽からの排出量を制御することにより行うことができる。酸素分圧の制御は、たとえば酸素源となる気体中の酸素量を制御することにより行うことができる。
【0032】
より簡易な方法としては、酸素接触処理槽の酸素移動容量係数の設計値、有機汚泥のTS及び鉄濃度の実測値に基づいて、下記のように有機汚泥前駆体又は有機汚泥への鉄化合物の注入量を制御することもできる。ここで、[Fe(mg/L)]/[TS(mg/L)]は、有機汚泥中のTS(total solid:蒸発残留物質)当たりの鉄化合物の総量の比である。
(i)酸素移動容量係数(kLa(h
−1))が0.12h
−1未満の場合には、[Fe(mg/L)]/[TS(mg/L)]が1.6以上2.9以下となる鉄注入量。
(ii)酸素移動容量係数(kLa(h
−1))が0.12h
−1以上0.28h
−1未満の場合には、[Fe(mg/L)]/[TS(mg/L)]が0.9以上2.9以下となる鉄注入量。
(iii)酸素移動容量係数(kLa(h
−1))が0.28h
−1以上5.7h
−1以下の場合には、[Fe(mg/L)]/[TS(mg/L)]が0.6以上2.9以下となる鉄注入量。
【0033】
本発明の処理方法により、酸素移動容量係数又は鉄注入量の粘度低減速度をB型回転粘度計で35℃、60rpmで計測した場合に20mPa・s/h以上、好ましくは30mPa・s/h以上、より好ましくは45mPa・s/h以上とすることで、有機汚泥の難脱水化を阻止することができる。粘度低減速度が高いほど、短時間の接触処理で有機汚泥の粘度低減が可能となり、あるいは長時間の接触処理でより低い粘度まで低減することが可能となる。粘度の測定は、酸素接触槽内若しくは酸素接触槽と凝集槽との間の配管内で行うことが好ましい。
【0034】
本発明の処理方法により低粘度化された汚泥は、次いで、凝集槽における凝集処理、及び脱水機における脱水処理により脱水ケーキとされる。凝集処理及び脱水処理は特に限定されず、通常の処理を行うことができるが、凝集剤の添加量は通常の処理の場合の必要量の約90%以下でよい。
【0035】
次に、
図3〜5の各装置構成の概略を説明する。
【0036】
図3は、嫌気性処理汚泥に本発明の処理方法を適用する場合の装置構成の概略である。有機物が可溶化槽にて可溶化され、嫌気性処理槽にて嫌気性処理されて形成される嫌気性処理汚泥は、凝集処理される前に、酸素接触処理槽に導入される。鉄化合物は、可溶化処理前の有機物、可溶化槽、可溶化物貯槽、嫌気性処理槽、酸素接触処理槽及びこれらの間の配管の任意の箇所で注入され得る。
【0037】
図4は、好気性処理の余剰汚泥に発明の処理方法を適用する場合の装置構成の概略である。有機性排水が前処理及び生物反応槽にて好気性処理されて形成される余剰汚泥、及び生物反応槽からの処理水を後処理する際に形成される余剰汚泥は、凝集処理される前に、酸素接触処理槽に導入される。鉄化合物は、生物反応槽からの余剰汚泥及び後処理槽からの余剰汚泥又は酸素接触処理槽に注入され得る。なお、前処理はなくてもよい。
【0038】
図5は、下水処理汚泥発明の処理方法を適用する場合の装置構成の概略である。下水又は有機性排水が沈砂池及び最初沈殿池で固液分離され、上澄液が生物反応槽に送られて好気性処理され、次いで最終沈殿池にて固液分離された余剰汚泥は、凝集処理される前に、酸素接触処理槽に導入される。鉄化合物は、最終沈殿池、余剰汚泥又は酸素接触処理槽に注入され得る。
【0039】
酸素接触処理槽には、有機汚泥を供給する手段、酸素含有気体を供給するための曝気手段、酸素接触処理後の汚泥の引き抜き手段を備える。曝気手段としては、散気式、機械撹拌式、散気式と機械撹拌式の併用式などが挙げられる。散気式の曝気装置は、散気装置とブロアから構成される。散気装置としては、散気板、散気管、多孔管、スパージャなどが挙げられる。曝気手段は、曝気槽底部から曝気槽内の汚泥に気泡を供給できるように設けることが好ましい。また、曝気槽には、運転管理する計測機器としてpH計、DO計、ORP計、粘度計を備えることが好ましい。また、曝気槽の汚泥のpHを制御するため、酸注入手段やアルカリ注入手段を備えることが好ましい。
【0040】
凝集槽は、酸素接触処理した後の有機汚泥を供給する手段、凝集剤を注入する手段、有機汚泥と凝集剤を混合する手段、凝集汚泥の引き抜き手段を備える。また、2つ以上の凝集槽を設けて、凝集剤を分割注入してもよい。例えば、凝集槽を2つ以上設ける場合、第1の凝集槽では無機凝集剤を注入し、第2以降の凝集槽では高分子凝集剤を注入し、凝集汚泥を形成してもよいし、第1の凝集槽でも高分子凝集剤を注入し、第2以降の凝集槽でも高分子凝集剤を注入してもよい。また、凝集槽を3つ以上設ける場合、第1の凝集槽に無機凝集剤を分割注入し、第2の凝集槽及び第3以降の凝集槽に高分子凝集剤を分割注入してもよい。凝集剤の注入量及び注入回数は、処理すべき汚泥の性状及び凝集槽の数に応じて適宜設定することができる。
【0041】
脱水装置としては特に限定されず、凝集汚泥又は濃縮汚泥へ圧力を付与する手段と、固形物と脱水分離液とに分離する手段を具備することが好ましい。脱水装置としては、ベルトプレス、スクリュープレス、遠心脱水機、フィルタープレス、多重円板型脱水機、多重円盤型スクリュープレス、ロータリープレスなどが挙げられる。また、凝集槽と一体型の脱水装置に設けられていてもよい。このような脱水装置としては、一部の遠心脱水機が挙げられ、このような遠心脱水機は、内部に凝集槽に相当する領域を備えており、遠心力により汚泥と凝集剤を混合し、凝集汚泥を形成する。
【実施例】
【0042】
実施例及び比較例により、本発明を具体的に説明する。
【0043】
[実施例1]
TS34800mg/Lの消化汚泥250mL(鉄濃度232mg/L)が入った500mLポリ瓶に、鉄濃度換算で120g/LのFeSO
4水溶液を調製し、注入鉄濃度が0mg/L(総鉄濃度232mg/L、[Fe]/[TS]=0.6)、40mg/L(総鉄濃度272mg/L、[Fe]/[TS]=0.8)、及び80mg/L(総鉄濃度312mg/L、[Fe]/[TS]=0.9)の3種類について、振とう速度をそれぞれ120rpm(kLa=0.12h
−1)及び200rpm(kLa=3.28h
−1)として2種類の酸素移動容量係数のサンプルとして、温度35℃で振とう撹拌し、任意の撹拌経過時間でサンプルを採取して粘度の計測を行った。粘度の計測は、B型回転粘度計を使用し、35℃、60rpmで測定した(以下の実施例において同じ)。粘度低減速度は初期粘度と5時間で採取したサンプルの粘度とから求めた。結果を表1及び
図6に示す。
【0044】
酸素移動容量係数kLaが0.12h
−1の場合には、有機汚泥中のTS(total solid:蒸発残留物質)当たりの鉄化合物の総量の比[Fe(mg/L)]/[TS(mg/L)]が0.6及び0.8では粘度低減速度が20mPa・s/h未満であったが、[Fe(mg/L)]/[TS(mg/L)]が0.9で粘度低減速度が20mPa・s/h以上となった。酸素移動容量係数kLaが3.28h
−1の場合には、[Fe(mg/L)]/[TS(mg/L)]が0.6、0.8及び0.9のいずれも粘度低減速度が20mPa・s/h以上となった。
【0045】
【表1】
【0046】
[実施例2]
TS34800mg/Lの消化汚泥250mL(鉄濃度232mg/L)が入った500mLポリ瓶に、鉄濃度換算で120g/L及び240mg/LのFeSO
4水溶液(それぞれFe(FeSO
4)120ppm及びFe(FeSO
4)240ppmと称す)及び60mg/L及び120mg/Lのポリ硫酸第二鉄水溶液(それぞれFe(P)60ppm及びFe(P)120ppmと称す)を調製し、注入鉄濃度が0mg/L(総鉄濃度232mg/L、[Fe]/[TS]=0.6)、60mg/L(総鉄濃度292mg/L、[Fe]/[TS]=0.8)、120mg/L(総鉄濃度352mg/L、[Fe]/[TS]=1.0)、及び240mg/L(総鉄濃度472mg/L、[Fe]/[TS]=1.4)となるようにそれぞれ注入した。振とう速度200rpm(kLa=3.28h
−1)、温度35℃で振とう撹拌し、任意の撹拌時間でサンプルを採取し、粘度の計測を行った。粘度低減速度は初期粘度と4時間で採取したサンプルの粘度とから求めた。表2及び
図7に、対照として鉄を注入せず且つ振とう撹拌しなかった場合(総鉄濃度232mg/L、[Fe]/[TS]=0.6、kLa=0h
−1)の粘度測定結果を合わせて示す。なお、振とう撹拌しなかった場合には、気液接触界面における気相から液相への酸素の溶解が生じている可能性はあるが、界面下の液体中への酸素の移動は生じていないため、酸素移動容量係数は0h
−1として扱う。
【0047】
酸素移動容量係数kLa=3.28h
−1の場合には、[Fe(mg/L)]/[TS(mg/L)]が0.6、0.8、1.0及び1.4のいずれも粘度低減速度が20mPa・s/h以上となった。一方、酸素移動容量係数kLa=0h
−1の場合には、鉄が存在していても、粘度は400mPa・S/h以上のまま維持され、低減しなかった。
【0048】
【表2】
【0049】
撹拌なしの場合に、鉄の注入量を増やして鉄注入量のみの影響を検討したところ、2時間経過後に採取したサンプルで鉄注入量の増量による粘度低減効果は認められなかった。
【0050】
[実施例3]
実施例2の14時間目で採取した各サンプル200mLに、凝集剤:エバグロース(登録商標)CS−374D(水ing(株)製)を135mL投入(対TS注入率4.9%)し、凝集フロックを形成させ、ベルトプレス脱水機で脱水処理して、各サンプルの脱水ケーキを作製した。脱水試験にはベルトプレス回分脱水テスト機を用いて、脱水条件は実機DRP−P型デハイロール(登録商標、水ing(株)製)のろ布緊張力=4.9kN/m、ろ布スピード=1.0m/min相当に設定した。注入した鉄濃度(又はFe/TS)とSS回収率及び脱水ケーキ含水率の関係を表3及び
図8に示す。注入鉄濃度の増加と共にSS回収率及び脱水性が向上することが確認できた。
【0051】
【表3】
【0052】
[実施例4]
実施例3と同様にして、鉄無注入系及び鉄注入系(鉄換算で120mg/LのFeSO
4を注入)のサンプルに対し、高分子凝集剤:エバグロース(登録商標)CS−374D(水ing(株)製)(2.5g/L)の注入率を変化させた場合のSS回収率及び脱水ケーキ含水率を求め、
図9及び
図10に示す。ベルトプレス試験機ベースであるが、鉄を注入することで、脱水工程における高分子凝集剤の使用量を約1割削減できることが確認できた。
【0053】
[実施例5]
実施例2の14時間目で採取したサンプルを10倍希釈してから2種類のフィルターでろ過し、フィルター画分3種(酸素接触処理汚泥、7μm以下の濾過液、0.45μm以下の濾過液)を調製し、粒度分布変化を計測した。表4に酸素接触処理前後の消化汚泥のフィルター画分の識別子を示し、
図11に各フィルター画分の粒子径平均値の変化、
図12に各フィルター画分の粒子径中央値の変化を示す。フィルター画分中の粒径の平均値、中央値とも酸素接触処理によって小さくなっており、鉄を注入した系ではさらに小さくなっており、鉄及び酸素接触により、消化汚泥が分解され、微細化し、凝集していないことが明らかとなった。
【0054】
【表4】
【0055】
[実施例6]
実施例5のサンプルのフィルター画分の励起蛍光マトリクスを計測し、いずれのフィルター画分も、酸素接触処理の際に鉄を注入した場合の励起蛍光マトリクスの変化は、鉄を注入しない場合に比べて大きく変化していることが確認できた。また、微細なフィルター画分ほど励起蛍光マトリクスの変化が大きいことが確認できた。別途で、溶解性のTOC(全有機炭素)、COD(化学的酸素要求量)、及びKj−N(ケルダール窒素:有機体窒素とアンモニウム態窒素の和)の値も増加している結果も得られていることから、消化汚泥に対して所定量の鉄の存在下で酸素接触処理を行うことにより、有機汚泥中の蛋白質、多糖、核酸、腐食酸等の有機性物質が溶出したと考えられる。
【0056】
[実施例7]
テレフタル酸を化学プローブとして用いたヒドロキシラジカル検出系を構築し、終濃度が1mMとなるようにテレフタル酸を消化汚泥に注入して、酸素接触処理を実施し、任意の経過時間でサンプリングを行い、励起蛍光マトリクス計測を行った。2−ヒドロキシテレフタル酸の検出が確認されたことから、鉄を含む消化汚泥の酸素接触処理によりヒドロキシラジカルが発生していることが確認できた。なお、2−ヒドロキシテレフタル酸は消化汚泥中で20時間は安定であることを確認した。
【0057】
実施例5〜7の結果に基づき、有機汚泥を所定量の鉄及び酸素の存在下で処理することによって、Fe(II)からFe(III)へと自動酸化されると共にヒドロキシラジカルが発生し、有機汚泥中の蛋白質、多糖、核酸、腐食酸等の有機性物質を分解して溶出させ、Fe(III)が凝結剤として作用して微細な凝結フロックを形成させ、有機汚泥の粘度が急激に低下すると考えられる。