(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670196
(24)【登録日】2020年3月3日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】圧縮式冷凍機の気液分離器
(51)【国際特許分類】
F25B 43/00 20060101AFI20200309BHJP
F25B 43/02 20060101ALI20200309BHJP
F25B 1/047 20060101ALI20200309BHJP
F25B 1/053 20060101ALI20200309BHJP
B04C 5/06 20060101ALI20200309BHJP
B01D 45/12 20060101ALI20200309BHJP
B01D 45/08 20060101ALI20200309BHJP
B04C 5/28 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
F25B43/00 A
F25B43/02 A
F25B1/047 T
F25B1/053 Z
B04C5/06
B01D45/12
B01D45/08 Z
B04C5/28
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-145316(P2016-145316)
(22)【出願日】2016年7月25日
(65)【公開番号】特開2018-17407(P2018-17407A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年3月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】503164502
【氏名又は名称】荏原冷熱システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】山田 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】仙田 卓寛
(72)【発明者】
【氏名】石山 健
【審査官】
山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】
特開平9−243209(JP,A)
【文献】
特開2004−176968(JP,A)
【文献】
特開2016−8780(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0056379(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0297740(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮式冷凍機の気液分離器において、
冷媒蒸気と、冷媒液および/または油とを含む気液混合流体が流入する容器と、
前記容器内に配置され、前記容器内に流入した前記気液混合流体が衝突して前記気液混合流体中の液体を一次分離するバッフルと、
前記容器内に配置され、前記一次分離後の気液混合流体に旋回流を与えて前記気液混合流体中の液体を二次分離する軸流サイクロンと、
前記軸流サイクロンのケーシング外周部と前記気液分離器の容器内面から構成される前記軸流サイクロン入口開口部へ向かう上方流路と、
前記ケーシング内面と前記蒸気流出筒外壁面で流路が構成され、前記軸流サイクロンの旋回流により気液の分離を行う下方流路とを備え、
前記気液混合流体は、前記上方流路、前記下方流路を通ることにより気液を分離することを特徴とする圧縮式冷凍機の気液分離器。
【請求項2】
前記容器内の下部に配置され、分離された液体を前記容器の底部に貯留するための空間を形成する仕切板からなり、
前記一次分離するバッフルと前記気液混合流体の流入口の間の略下方にある該仕切板の部分には開口がなく、
前記分離された液体を前記空間に導くための開口を有した下部バッフル板を備えることを特徴とする請求項1記載の圧縮式冷凍機の気液分離器。
【請求項3】
前記下部バッフル板の前記開口は、切欠または穴からなることを特徴とする請求項2記載の圧縮式冷凍機の気液分離器。
【請求項4】
前記容器は、上部に冷媒蒸気の流出口、底部に冷媒液および/または油の流出口、中段部に前記気液混合流体の流入口を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の圧縮式冷凍機の気液分離器。
【請求項5】
前記一次分離用のバッフルは、前記軸流サイクロンのケーシングの外周面からなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の圧縮式冷凍機の気液分離器。
【請求項6】
前記軸流サイクロンの液出口は、軸中心に設けるかまたは外周側に設けることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の圧縮式冷凍機の気液分離器。
【請求項7】
前記軸流サイクロンの底部は、軸中心に設けた液出口に向かって傾斜していることを特徴とする請求項6記載の圧縮式冷凍機の気液分離器。
【請求項8】
前記容器は縦型の円筒容器であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の圧縮式冷凍機の気液分離器。
【請求項9】
前記容器は横型の円筒容器であり、該円筒容器内に複数の軸流サイクロンを備えたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の圧縮式冷凍機の気液分離器。
【請求項10】
前記気液分離器は、ターボ冷凍機のエコノマイザであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の圧縮式冷凍機の気液分離器。
【請求項11】
前記気液分離器は、スクリュー冷凍機の油分離器であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の圧縮式冷凍機の気液分離器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュー冷凍機やターボ冷凍機等の圧縮式冷凍機において、冷媒蒸気(冷媒ガス)と、冷媒液および/または油とを含む気液混合流体を気体と液体とに分離する気液分離器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スクリュー冷凍機はスクリュー圧縮機を備えるが、スクリュー圧縮機のロータや軸受等の摺動部は潤滑油による潤滑が必要である。この場合の潤滑油は、一般に冷媒と相溶性のあるものが選定される。このようにすると、潤滑油が冷媒に溶解することで、冷媒系統に漏洩した潤滑油は冷媒とともに機内を循環するので、回収が容易となるからである。スクリュー圧縮機から吐出された冷媒ガスを油分離器に送り込み、油分離器により冷媒ガス中の潤滑油を分離するようにしている。
【0003】
また、圧縮機として冷媒ガスを多段の羽根車によって多段に圧縮する多段圧縮機を用
いたターボ冷凍機は、凝縮器と蒸発器の間の冷媒配管中に設置した中間冷却器であるエコノマイザを備えており、エコノマイザにおいて、冷媒液と冷媒ガスとを分離し、分離した冷媒ガスを多段圧縮機の中間段(多段の羽根車の中間部分)に導入することにより冷凍サイクル全体としての冷凍効果を増加させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−209276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、スクリュー冷凍機においては、油分離器で冷媒ガス(冷媒蒸気)と潤滑油との気液分離を行っている。ターボ冷凍機においては、エコノマイザで冷媒ガス(冷媒蒸気)と冷媒液との気液分離を行っている。スクリュー冷凍機の油分離器およびターボ冷凍機のエコノマイザは、大きな気液分離空間とデミスタで構成されることが多い。
しかしながら、確実に気液分離を実現するため、気液分離空間が大きくなるという問題点がある。また、スクリュー冷凍機の場合、サイクロン式油分離器を採用する場合もある。しかし、油分離器に導入される冷媒ガスと液状油の混合流体中の液状油の量が多く、サイクロンで分離しきれない問題点がある。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、高い気液分離性能を有し、気液分離に必要な空間を大幅に減少させることができる圧縮式冷凍機の気液分離器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明の圧縮式冷凍機の気液分離器は、冷媒蒸気と、冷媒液および/または油とを含む気液混合流体が流入する容器と、前記容器内に配置され、前記容器内に流入した前記気液混合流体が衝突して前記気液混合流体中の液体を一次分離するバッフルと、前記容器内に配置され、前記一次分離後の気液混合流体に旋回流を与えて前記気液混合流体中の液体を二次分離する軸流サイクロンと、前記軸流サイクロンのケーシング外周部と前記気液分離器の容器内面から構成される前記軸流サイクロン入口開口部へ向かう上方流路と、前記ケーシング内面と前記蒸気流出筒外壁面で流路が構成され、前記軸流サイクロンの旋回流により気液の分離を行う下方流路とを備え、前記気液混合流体は、前記上方流路、前記下方流路を通ることにより気液を分離することを特徴とする。
【0008】
本発明の好ましい態様によれば、前記容器内の下部に配置され、分離された液体を前記容器の底部に貯留するための空間を形成する仕切板からなり、前記一次分離するバッフルと前記気液混合流体の流入口の間の略下方にある該仕切板の部分には開口がなく、前記分離された液体を前記空間に導くための開口を有した下部バッフル板を備えることを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記下部バッフル板の前記開口は、切欠または穴からなることを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記容器は、上部に冷媒蒸気の流出口、底部に冷媒液および/または油の流出口、中段部に前記気液混合流体の流入口を備えることを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記一次分離用のバッフルは、前記軸流サイクロンのケーシングの外周面からなることを特徴とする。
【0009】
本発明の好ましい態様によれば、前記軸流サイクロンの液出口は、軸中心に設けるかまたは外周側に設けることを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記軸流サイクロンの底部は、軸中心に設けた液出口に向かって傾斜していることを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記容器は縦型の円筒容器であることを特徴とする。
【0010】
本発明の好ましい態様によれば、前記容器は横型の円筒容器であり、該円筒容器内に複数の軸流サイクロンを備えたことを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記気液分離器は、ターボ冷凍機のエコノマイザであることを特徴とする。
本発明の好ましい態様によれば、前記気液分離器は、スクリュー冷凍機の油分離器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以下に列挙する効果を奏する。
1)バッフルからなる一次分離部により、気液混合流体中の大部分の液体を分離することができる。
2)二次分離部は軸流サイクロンを採用することで、分離空間が減少し、分離器がコンパクトになる。
3)容器の下部に液面バッフルを設置することで、液面を安定化し、液面制御が容易になる。冷媒蒸気のバイパスを防止するための液封高さが低減することで、液体保有量を低減できる。
4)気液分離器における外部圧力や内部圧力の受圧面は円筒形容器と皿状鏡板になるため、外部圧力、内部圧力両方に強い構造で、板厚が薄くなり、重量が減少する。内部構造も薄板で製作でき、更に重量を減らせる。
5)横型気液分離器は、冷凍機構成上、熱交換器の上部や下部などに設置可能になる。したがって、冷凍機の高さ低減が可能になる。
6)横型気液分離器は、内部流体流路を確保でき、複数の軸流サイクロンへの流体配分が容易になり、処理流量の偏りによる個別サイクロンのキャリオーバーを防げる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明に係る気液分離器を備えたスクリュー冷凍機を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る気液分離器を備えたターボ冷凍機を示す模式図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す油分離器および
図2に示すエコノマイザに適用される気液分離器を示す図であり、気液分離器の容器の前面を外して見た正面図である。
【
図6】
図6は、
図3乃至
図5に示すように構成された気液分離器による気液混合流体の気液分離工程を説明する図である。
【
図7】
図7(a),(b)は、本発明の気液分離器の変形例を示す図であり、気液分離器の容器の前面を外して見た正面図である。
【
図8】
図8は、本発明の気液分離器の他の実施形態を示す横型気液分離器の容器の前面を外して見た正面図である。
【
図10】
図10は、横型気液分離器の容器の前面を外して見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る圧縮式冷凍機の気液分離器の実施形態を
図1乃至
図12を参照して説明する。
図1乃至
図12において、同一または相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。本実施形態においては、圧縮式冷凍機として、スクリュー圧縮機を用いたスクリュー冷凍機およびターボ圧縮機を用いたターボ冷凍機を示すが、レシプロ式、スクロール式等の圧縮機を用いた冷凍機であってもよい。
【0014】
図1は、本発明に係る気液分離器を備えたスクリュー冷凍機を示す模式図である。
図1に示すように、スクリュー冷凍機は、冷媒を圧縮するスクリュー圧縮機1と、スクリュー圧縮機1から吐出された気液混合流体を冷媒ガス(冷媒蒸気)と潤滑油とに気液分離を行う油分離器2と、圧縮された冷媒ガスを冷却水(冷却流体)で冷却して凝縮させる凝縮器3と、冷水(被冷却流体)から熱を奪って冷媒が蒸発し冷凍効果を発揮するクーラ4とを備え、これら各機器を冷媒が循環する冷媒配管5によって連結して構成されている。スクリュー冷凍機は、油分離器2で分離された潤滑油を回収し、回収された潤滑油をスクリュー圧縮機1に供給する油タンク6を備えている。油分離器2は、本発明に係る気液分離器から構成されている。
【0015】
図2は、本発明に係る気液分離器を備えたターボ冷凍機を示す模式図である。
図2に示すように、ターボ冷凍機は、冷媒を圧縮するターボ圧縮機11と、圧縮された冷媒ガスを冷却水(冷却流体)で冷却して凝縮させる凝縮器12と、冷水(被冷却流体)から熱を奪って冷媒が蒸発し冷凍効果を発揮する蒸発器13と、凝縮器12と蒸発器13との間に配置される中間冷却器であるエコノマイザ14とを備え、これら各機器を冷媒が循環する冷媒配管15によって連結して構成されている。ターボ圧縮機11は、多段ターボ圧縮機から構成されている。ターボ圧縮機11は、冷媒配管15によってエコノマイザ14と接続されており、エコノマイザ14で冷媒ガス(冷媒蒸気)と冷媒液との気液分離が行われ、分離された冷媒ガスは多段ターボ圧縮機の多段の圧縮段(この例では2段)の中間部分(この例では一段目と二段目の間の部分)に導入されるようになっている。エコノマイザ14は、本発明に係る気液分離器から構成されている。
【0016】
図3および
図4は、
図1に示す油分離器2および
図2に示すエコノマイザ14に適用される本発明の気液分離器を示す図である。
図3は本発明の気液分離器の容器の前面を外して見た正面図であり、
図4は本発明の気液分離器の平面図である。
図3および
図4に示すように、気液分離器20は、冷媒蒸気と液体(油或いは冷媒液)とを含む気液混合流体が流入する円筒状容器21を備えている。
図3に示すように、円筒状容器21は、その軸心が垂直方向に位置するように縦型に配置されている。円筒状容器21は、下部に気液混合流体が流入する流入口21aを有し、頂部に気液分離後の冷媒蒸気(冷媒ガス)が流出する気体流出口21bを有し、底部に気液分離後の液体(油或いは冷媒液)が流出する液体流出口21cを有している。
【0017】
図3に示すように、円筒状容器21の内部には、軸流サイクロン22が設置されている。軸流サイクロン22は、円筒容器状のケーシング23と、ケーシング23の上部に収容されるとともに外周面に複数の螺旋状の羽根24vを有した蒸気流出筒24とを備えている。ケーシング23は、その軸心が垂直方向に位置するように縦型に配置されている。ケーシング23の上端部と蒸気流出筒24の外壁とは、軸流サイクロン入口開口部22aを構成している。ケーシング23の底部は底板23aにより閉塞されており、底板23aに気液分離後の液体(油或いは冷媒液)が流出する流出口23bが形成されている。流出口23bはケーシング23の軸中心に位置している。円筒状容器21の上部および下部には、それぞれ仕切板からなる上部バッフル板25と下部バッフル板26とが配置されている。これら上下部バッフル板25,26と、円筒状容器21の内周面とケーシング23の外周面とで囲まれた空間は、円筒状容器21の流入口21aから流入した気液混合流体が軸流サイクロン入口開口部22aに向かって上方に流れる上方流路FP
Uを構成している。
【0018】
図3および
図4に示すように、蒸気流出筒24は、円筒の外周面に複数の螺旋状の羽根24vを備えた構造になっており、気液混合流体が複数の螺旋状の羽根24vを通過することにより旋回流が形成されるようになっている。ケーシング23の内面と蒸気流出筒24の外壁面で流路が構成され、軸流サイクロン22の旋回流により気液の分離を行う下方流路FP
Lが構成されている。気液混合流体は、下方流路FP
Lにおける旋回流による遠心分離作用により液体(油或いは冷媒液)と冷媒蒸気とに分離され、液体(油或いは冷媒液)はケーシング23の下端の流出口23bから空間S1に流出し、冷媒蒸気は蒸気流出筒24の上端の流出口24aより空間S2に流出する。
【0019】
図5は、
図3のV−V線断面図である。
図5に示すように、円筒状容器21の下部側にある下部バッフル板26は、外周側に複数の開口部(図示例では3個の開口部)26aを備えている。開口部26aは切欠または穴からなる。これら開口部26aは、円筒状容器21の流入口21aより流入した気液混合流体がケーシング23の外周面に衝突して気液分離された液体(油或いは冷媒液)を空間S1に流出させるためのものである。下部バッフル板26は液面バッフルを構成している。このように、容器21の下部に液面バッフルを設置することで、空間S1内の液面を安定化し、液面制御が容易になる。冷媒蒸気のバイパスを防止するための液封高さが低減することで、液体保有量を低減できる。
【0020】
次に、
図3乃至
図5に示すように構成された気液分離器20による気液混合流体の気液分離工程を
図6を参照して説明する。
図6に示すように、気液混合流体は、円筒状容器21の下部にある流入口21aより容器内に流入して軸流サイクロン22のケーシング23の外周面に衝突する。この衝突により、気液混合流体中の液体は一次分離され、分離された液体は下方に流れて下部バッフル板26の開口部26a(
図5参照)を通って空間S1に流入する。すなわち、ケーシング23の外周面からなるバッフルの一次分離作用により、流入口21aより流入した気液混合流体中の液体の大部分が分離され、分離された液体は下部バッフル板26の開口部26aを通って空間S1へ流れる。一次分離するバッフル(ケーシング23の外周面)と気液混合流体の流入口21aの間の略下方にある分離された液体が落下する下部バッフル板26の部分に開口部26aがある場合には、分離した液体が開口部26aから底部の貯留部に勢いを保ったまま流入し、液面が乱れ、ガスのバイパスが生じてしまい、液面の制御もできなくなる。この部分に開口部がないので、分離した液体が下部バッフル板26の上で流れ、分離された液体を下部空間S1に導くための開口部26aから下部に流入するため、液体の流入による液面の乱れが抑えられる。
一次分離後の冷媒蒸気および冷媒蒸気中に同伴している少量の液体は、円筒状容器21の内周面とケーシング23の外周面との間の上方流路FP
Uを通って上方へ流れ、上部バッフル板25の手前でターンして下方に流れて軸流サイクロン入口開口部22aから下方流路FP
Lに流入する。このように屈曲した流路構成により、気液分離が促進され、軸流サイクロン22に流入する液滴を減らすことができる。軸流サイクロン22におけるケーシング23の内周面と蒸気流出筒24の外周面との間の下方流路FP
Lに流入した冷媒蒸気および冷媒蒸気中に同伴している液体は、複数の螺旋状の羽根24vを通過することにより旋回流を形成する。この旋回流による遠心分離作用により冷媒蒸気と液体とが分離され、冷媒蒸気は蒸気流出筒24の内部を通って上部バッフル板25の上方の空間S2に流入し、気体流出口21bから外部へ流出し、液体はケーシング23の底部の流出口23bから流出して空間S1に流入し、液体流出口21cから外部へ流出する。
【0021】
図3乃至
図6に示す気液分離器20によれば、以下に列挙する作用が得られる。
1)気液分離器20の入口にあるバッフル(ケーシング23の外周面からなる一次分離部)による一次分離作用で気液混合流体中の大部分の液体を分離させ、大部分の液体が除去された後の気液混合流体が軸流サイクロン22に入る。したがって、軸流サイクロン22に流入する気液混合流体中の液滴が少なくなる。
2)円筒状容器21の内部に軸流サイクロン22(2次分離部)を設置することで、分離に必要な空間が大幅に減少する。また、1次分離部(バッフル)で液体の大部分を分離することより、軸流サイクロン22におけるサイクロン分離効率が向上する。
3)気液分離器20の下部に液面バッフル(下部バッフル板26からなる)を設置することで、入口混合流体による液面の乱れや蒸気のバイパスを抑制できる。また、必要な液封高さ低減や制御安定性が図れる。
4)円筒状容器21が外部圧力や内部圧力の受圧面になるため、円筒状容器21内にある内部構造は薄板で製作可能であり、重量およびコストを削減できる。また、気液分離性能が高く、コンパクトな気液分離器となる。
【0022】
図7(a),(b)は、本発明の気液分離器の変形例を示す図であり、気液分離器の容器の前面を外して見た正面図である。
図3に示す例においては、ケーシング23の底板23aに形成された流出口23bは、ケーシング23の軸中心に位置していたが、
図7(a)に示す例においては、ケーシング23の底板23aに形成された流出口23bは、軸中心から偏心して外周側に位置している。
また、
図7(b)に示す例においては、ケーシング23の底板23aは逆円錐台状に傾斜した板から構成され、流出口23bは逆円錐台状の板の下端に形成されるとともにケーシング23の軸中心に位置している。
【0023】
図8および
図9は、本発明の気液分離器の他の実施形態を示す図である。
図8は本発明の横型気液分離器の容器の前面を外して見た正面図であり、
図9は
図8のIXの矢視図である。
図8および
図9に示すように、横型気液分離器20は、冷媒蒸気と液体(油或いは冷媒液)とを含む気液混合流体が流入する円筒状容器21を備えている。円筒状容器21は、その軸心が水平方向に位置するように横型に配置されている。円筒状容器21は、側部に気液混合流体が流入する流入口21aを有し、頂部に気液分離後の冷媒蒸気(冷媒ガス)が流出する気体流出口21bを有し、底部に気液分離後の液体(油或いは冷媒液)が流出する液体流出口21cを有している。円筒状容器21内には、流入口21aに対向するように板状のバッフル30が設置されており、流入口21aより円筒状容器21内に流入した気液混合液体が板状のバッフル30に衝突し、気液混合流体中の液体が一次分離される。バッフル30の上端部は円筒状容器21の鏡板部に固定されている(
図8参照)。板状のバッフル30において、流入口21aに対向しており気液混合流体が衝突する部分は、矩形状の板から構成されている(
図9参照)。
【0024】
図8に示すように、円筒状容器21の内部には、円筒状容器21の軸心方向に複数の軸流サイクロン22が並列して設置されている。各軸流サイクロン22は、
図3に示す軸流サイクロンと同一の構成であり、円筒容器状のケーシング23と、ケーシング23の上部に収容されるとともに外周面に複数の螺旋状の羽根24vを有した蒸気流出筒24とを備えている。ケーシング23は、その軸心が垂直方向に位置するように縦型に配置されている。ケーシング23の上端部と蒸気流出筒24の外壁とは、軸流サイクロン入口開口部22aを構成している。ケーシング23の底部は底板23aにより閉塞されており、底板23aに気液分離後の液体(油或いは冷媒液)が流出する流出口23bが形成されている。流出口23bはケーシング23の軸中心に位置している。円筒状容器21の上部および下部には、それぞれ仕切板からなる上部バッフル板25と下部バッフル板26とが配置されている。これら上下部バッフル板25,26と、前記バッフル30と、ケーシング23の外周面とで囲まれた空間は、円筒状容器21の流入口21aから流入した気液混合流体がバッフル30に衝突した後に軸流サイクロン入口開口部22aに向かって上方に流れる上方流路FP
Uを構成している。
【0025】
図8に示すように、各蒸気流出筒24は、円筒の外周面に複数の螺旋状の羽根24vを備えた構造になっており、気液混合流体が複数の螺旋状の羽根24vを通過することにより旋回流が形成されるようになっている。各ケーシング23の内面と各蒸気流出筒24の外壁面で流路が構成され、各軸流サイクロン22の旋回流により気液の分離を行う下方流路FP
Lが構成されている。気液混合流体は、下方流路FP
Lにおける旋回流による遠心分離作用により液体(油或いは冷媒液)と冷媒蒸気とに分離され、液体(油或いは冷媒液)は各ケーシング23の下端の流出口23bから空間S1に流出し、冷媒蒸気は各蒸気流出筒24の上端の流出口24aより空間S2に流出する。
【0026】
次に、
図8および
図9に示すように構成された気液分離器20による気液混合流体の気液分離工程を説明する。
図8に示すように、気液混合流体は、円筒状容器21の側部にある流入口21aより容器内に流入して板状のバッフル30に衝突する。この衝突により、気液混合流体中の液体は一次分離され、分離された液体は下方に流れて下部バッフル板26の複数の開口部26aを通って空間S1に流入する。すなわち、バッフル30の一次分離作用により、流入口21aより流入した気液混合流体中の液体の大部分が分離され、分離された液体は空間S1へ流れる。一次分離後の冷媒蒸気および冷媒蒸気中に同伴している少量の液体は、板状のバッフル30の背面とケーシング23の外周面との間の上方流路FP
Uを通って上方へ流れ、上部バッフル板25の手前でターンして下方に流れて各軸流サイクロン入口開口部22aから下方流路FP
Lに流入する。このように屈曲した流路構成により、気液分離が促進され、軸流サイクロン22に流入する液滴を減らすことができる。各軸流サイクロン22におけるケーシング23の内周面と蒸気流出筒24の外周面との間の下方流路FP
Lに流入した冷媒蒸気および冷媒蒸気中に同伴している液体は、複数の螺旋状の羽根24vを通過することにより旋回流を形成する。この旋回流による遠心分離作用により冷媒蒸気と液体とが分離され、冷媒蒸気は各蒸気流出筒24の内部を通って上部バッフル板25の上方の空間S2に流入し、気体流出口21bから外部へ流出し、液体は各ケーシング23の底部の流出口23bから流出して空間S1に流入し、液体流出口21cから外部へ流出する。
【0027】
図10乃至
図12は、本発明の横型気液分離器の変形例を示す図である。
図10は本発明の横型気液分離器の容器の前面を外して見た正面図であり、
図11は
図10のXI矢視図であり、
図12は
図10のXII−XII線断面図である。
図8および
図9に示す横型気液分離器20においては、流入口21aに対向して設置された板状のバッフル30は、気液混合流体が衝突する部分を矩形状の板で構成し、板状のバッフル30の両側縁と円筒状容器21の内周面との間および板状のバッフル30の下端と下部バッフル板26との間に流体が流れる空間を形成していたが、
図10乃至
図12に示す横型気液分離器20においては、流入口21aに対向して設置された板状のバッフル30は、気液混合流体が衝突する部分を略半円形の板で構成し、板状のバッフル30の両側縁と円筒状容器21の内面とを接触させ、板状のバッフル30の下端と下部バッフル板26との間のみに流体が流れる空間を形成している。
また、
図8および
図9に示す横型気液分離器20においては、上部バッフル板25は円筒状容器21の一側端から他側端まで延設されていたが、
図10乃至
図12に示す横型気液分離器においては、上部バッフル板25は板状のバッフル30の背面から円筒状容器21の他側端まで延設されている。
図10乃至
図12に示す横型気液分離器のその他の構成は、
図8および
図9に示す横型気液分離器と同様である。
【0028】
図8乃至
図12に示す横型気液分離器20によれば、以下に列挙する作用が得られる。
1)横型気液分離器は、冷凍機構成上、熱交換器の上部空間や下部空間などに配置可能になる。したがって、冷凍機全体の高さを抑えられる。
2)横型気液分離器入口のバッフルで大部分の液体を分離させ、軸流サイクロンに入る混合流体中の液滴が少なくなる。
3)横型気液分離器内に高さを抑えた複数の軸流サイクロンを設置することにより、充分な処理流量を確保できる。
【0029】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
1 スクリュー圧縮機
2 油分離器
3 凝縮器
4 クーラ
5 冷媒配管
11 ターボ圧縮機
12 凝縮器
13 蒸発器
14 エコノマイザ
15 冷媒配管
20 気液分離器
21 円筒状容器
21a 流入口
21b 気体流出口
21c 液体流出口
22 軸流サイクロン
22a 軸流サイクロン入口開口部
23 ケーシング
23a 底板
23b 流出口
24 蒸気流出筒
24a 流出口
25 上部バッフル板
26 下部バッフル板
26a 開口部
S1,S2 空間
FP
U 上方流路
FP
L 下方流路