特許第6670205号(P6670205)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670205
(24)【登録日】2020年3月3日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】低温空気供給装置及び環境試験装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20200309BHJP
   G01N 17/00 20060101ALI20200309BHJP
   F24F 3/052 20060101ALI20200309BHJP
   F25B 5/02 20060101ALI20200309BHJP
   F25B 47/02 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   F25B1/00 397C
   G01N17/00
   F24F3/052
   F25B5/02 C
   F25B47/02 540D
   F25B1/00 361J
   F25B1/00 371F
   F25B1/00 361D
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-163122(P2016-163122)
(22)【出願日】2016年8月23日
(65)【公開番号】特開2018-31501(P2018-31501A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2018年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】倉良 博伸
【審査官】 庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−024428(JP,U)
【文献】 特開2012−037108(JP,A)
【文献】 特開2010−121904(JP,A)
【文献】 特開平10−197111(JP,A)
【文献】 特開2014−066593(JP,A)
【文献】 特開平10−311615(JP,A)
【文献】 実開昭61−164959(JP,U)
【文献】 特開平02−219972(JP,A)
【文献】 特開2014−070790(JP,A)
【文献】 特開平01−107055(JP,A)
【文献】 米国特許第06272880(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 5/00
F25B 47/02
F24F 5/00
G01N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給対象に空気を一方的に供給する低温空気供給装置であって、
空気導入部から空気排出部に至る一連の通風路と、前記通風路を通過する空気を冷却可能な複数の冷却器を有し、
前記複数の冷却器は自身の温度を低下させて前記通風路を通過する空気と熱交換し、前記通風路を通過する空気の温度を低下させることが可能であり、
前記空気導入部から前記空気排出部に向かうにつれて自身の温度がより低い冷却器が配置され、
前記複数の冷却器のうち少なくとも二以上の冷却器が同時に駆動されるものであって、
要求される空気の温度に応じて運転する冷却器の数を変更することが可能であり、
前記運転する冷却器の数の変更が、前記要求される空気の温度に対して前記複数の冷却器の合計冷却能力が過剰である場合に、前記複数の冷却器のうち下流側の冷却器から休止することにより行われることを特徴とする低温空気供給装置。
【請求項2】
前記複数の冷却器は、冷却能力を変更可能なものを含み、条件に応じて冷却能力を変更することが可能であって、
前記冷却能力の変更が、運転される複数の冷却器のうち少なくとも最下流の冷却器の冷却能力を変更することにより行われることを特徴とする請求項1に記載の低温空気供給装置。
【請求項3】
供給対象に空気を一方的に供給する低温空気供給装置であって、
空気導入部から空気排出部に至る一連の通風路と、前記通風路を通過する空気を冷却可能な複数の冷却器を有し、
前記複数の冷却器は自身の温度を低下させて前記通風路を通過する空気と熱交換し、前記通風路を通過する空気の温度を低下させることが可能であり、
前記空気導入部から前記空気排出部に向かうにつれて自身の温度がより低い冷却器が配置され、
前記複数の冷却器のうち少なくとも二以上の冷却器が同時に駆動されるものであって、
前記複数の冷却器には冷却能力を変更可能なものを含み、条件に応じて冷却能力を変更することが可能であって、
前記冷却能力の変更が、運転される前記複数の冷却器のうち最下流の冷却器の冷却能力を変更することにより行われることを特徴とする低温空気供給装置。
【請求項4】
前記複数の冷却器であって同一の通風路を通過する空気と熱交換する冷却器を選択的に運転することが可能であり、要求される空気の温度に応じて運転する冷却器の数を変更することが可能であることを特徴とする請求項3に記載の低温空気供給装置。
【請求項5】
前記運転する冷却器の数の変更が、前記複数の冷却器のうち少なくとも最下流の冷却器を休止することにより行われることを特徴とする請求項4に記載の低温空気供給装置。
【請求項6】
前記一連の通風路と前記複数の冷却器を有する通風系統を複数系統有し、少なくとも一系統の通風系統を駆動して通風路を通過する空気の温度を低下させている間に、他の少なくとも一系統の通風系統の冷却器の除霜を行うことが可能であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の低温空気供給装置。
【請求項7】
前記冷却器は冷凍サイクルを構成する冷凍機の蒸発器であり、
前記冷凍機は、2以上の蒸発器を有し、前記2以上の蒸発器を切り換える切替え手段と、各蒸発器にホットガスを導入するホットガス導入回路を備え、
少なくとも一つの蒸発器が一系統の通風系統の冷却器として使用され、他の少なくとも一つの蒸発器が他の系統の通風系統の冷却器として使用されていることを特徴とする請求 項に記載の低温空気供給装置。
【請求項8】
一つの前記通風路に対して前記冷却器が3台以上設置されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の低温空気供給装置。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれかに記載の低温空気供給装置を備えた環境試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温の空気を大量に供給する低温空気供給装置に関するものである。本発明の低温空気供給装置は、環境試験を行う用途に適するものである。また本発明は、低温空気供給装置を備えた環境試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機械装置や電子機器等の被試験物の性能を調べる試験方法の一つに環境試験がある。
環境試験は、被試験物が実際に置かれる環境や、より過酷な環境を再現し、被試験物の状態を調べる。
例えば、被試験物が高緯度地方や極地で使用される物であれば、環境試験装置で低温環境を人工的に作り出し、その環境下に被試験物を晒して所望の試験を行う。
【0003】
ところで燃焼装置やエンジンの様に、空気を消費する機器がある。この様な空気を消費する機器を対象として環境試験を行う場合、単に高温や低温の試験室内に被試験物を置いて試験するだけでは足りず、絶えずフレッシュな空気を被試験物に供給し続けなければならない。
例えばバーナの極低温環境下における性能を調べるには、低温に冷却した空気を常にバーナに対して供給し続けなければならない。
エンジンについても同様であり、低温に冷却した空気をシリンダーに供給し続けなければならない。
【0004】
低温の空気を供給することができる装置の一つとして、特許文献1に開示された空調装置がある。
特許文献1に開示された空調装置は、空調流路内に冷却器が配されたものであり、空調流路を通過する空気を冷却器で冷却する。
特許文献1に開示された空調装置は、試験室との間で空気を循環させる場合に適するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−162973
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
市場において、摂氏マイナス30度という様な極寒の環境下で、バーナやエンジンの性能を試験したいという要求がある。
前記した特許文献1に開示された空調装置は、低温の空気を供給することができるものの、摂氏マイナス30度という様な極低温の空気を連続的に被試験物に供給することは困難な場合があった。
そこで本出願人らは、図5の様な低温空気供給装置100を試作した。
低温空気供給装置100は、ブラインによって通過空気を冷却するものである。
低温空気供給装置100は、本体装置101と、プレ除湿装置103及び、本除湿装置105によって構成されている。
【0007】
本体装置101は、通風路107とブライン供給装置102を有している。そして通風路107を、冷却ジャケット106が取り巻いている。
ブライン供給装置102は、ブライン槽110と冷凍機112を有し、ブライン槽110内のブラインを摂氏マイナス40度程度の低温に冷却することができる。
前記した本体装置101の冷却ジャケット106には、ブライン供給装置102から供給されるブラインが循環する。
【0008】
プレ除湿装置103は、水冷式の冷却通路であり、空気を軽度に除湿するものである。
これに対して本除湿装置105は、空気を徹底的に除湿するものである。
本除湿装置105には、デシカント式除湿機が利用されている。ここでデシカント式除湿機は、シリカゲル等の除湿剤を使用して空気中の水蒸気を吸着させるものである。デシカント式除湿機は、除湿剤によって空気中の水蒸気を吸着させるので、乾燥空気と言える程度の低湿度空気を生成することができる。
水蒸気を吸着した除湿剤は、加熱することにより再生させることができる。
なお本発明者は、低温空気供給装置100の要求に耐える除湿装置として、デシカント式除湿機以外の装置を知らない。
【0009】
低温空気供給装置100は、プレ除湿装置103と、本除湿装置105及び本体装置101がこの順番に直列に接続されている。そして送風機116によって、これらに通風される。
送風機116によって、低温空気供給装置100に送られた空気は、プレ除湿装置103によって除湿され、さらに本除湿装置105で徹底的に除湿される。
【0010】
そして略完全に除湿された空気が本体装置101に導入され、通風路107を通過する間にブラインと熱交換して冷却される。そして本体装置101から冷却された空気が排出され、所望の用途に供される。
【0011】
低温空気供給装置100によると、所望の低温空気を大量に連続供給することができる。低温空気供給装置100は、市場の要求品質を満足するものである。
【0012】
しかしながら、低温空気供給装置100は消費電力が過大であるという不満がある。
低温空気供給装置100は、本体装置101の消費電力が大きい。また低温空気供給装置100は、本除湿装置105の消費電力も大きい。
【0013】
以下、説明する。
試作した低温空気供給装置100では、ブライン供給装置102によって、ブラインをマイナス40度程度の極低温に冷却している。
ここで、冷凍機の効率は、一般に、目標温度が低いほど悪化する。冷凍機の効率を示す目安として、成績係数(COP Coefficient Of Performance)が知られている。例えば、マイナス40度程度の極低温を作る場合、成績係数は、1.0程度となり、かなり悪い。
【0014】
また本体装置101の通風路107に霜が付くと、空気を冷却する能力が極端に低下する。そのため低温空気供給装置100では、本体装置101に導入される空気を徹底的に除湿し、通風路107内における霜付きを防いでいる。
【0015】
ここでデシカント式除湿機は、除湿剤に空気中の水蒸気を吸着させるものであるから、空気を除湿する際にはエネルギーを要しない。しかしながら、デシカント式除湿機は、除湿剤を加熱して再生させる必要があり、除湿剤の再生に大きなエネルギーを要する。
そのためデシカント式除湿機は、全体として多くの電力を消費する。
【0016】
本発明は、上記した問題点に注目し、空気を消費する機器に対して連続的に低温空気を供給することができ、且つ消費電力が比較的少ない低温空気供給装置を開発することを課題とするものである。また空気を消費する機器を試験する環境試験装置であって、消費電力が比較的少ない環境試験装置を開発することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、空気導入部から空気排出部に至る一連の通風路と、空気を冷却可能な複数の冷却器を有し、前記複数の冷却器は自身の温度を低下させて前記通風路を通過する空気と熱交換し、前記通風路を通過する空気の温度を低下させることが可能であり、前記空気導入部から前記空気排出部に向かうにつれて自身の温度がより低い冷却器が配置され、前記複数の冷却器のうち少なくとも二以上の冷却器が同時に駆動されるものであることを特徴とする
即ち請求項1に記載の発明は、供給対象に空気を一方的に供給する低温空気供給装置であって、空気導入部から空気排出部に至る一連の通風路と、前記通風路を通過する空気を冷却可能な複数の冷却器を有し、前記複数の冷却器は自身の温度を低下させて前記通風路を通過する空気と熱交換し、前記通風路を通過する空気の温度を低下させることが可能であり、前記空気導入部から前記空気排出部に向かうにつれて自身の温度がより低い冷却器が配置され、前記複数の冷却器のうち少なくとも二以上の冷却器が同時に駆動されるものであって、要求される空気の温度に応じて運転する冷却器の数を変更することが可能であり、前記運転する冷却器の数の変更が、前記要求される空気の温度に対して前記複数の冷却器の合計冷却能力が過剰である場合に、前記複数の冷却器のうち下流側の冷却器から休止することにより行われることを特徴とする低温空気供給装置である。
同様の課題を解決するためのもう一つの発明は、供給対象に空気を一方的に供給する低温空気供給装置であって、空気導入部から空気排出部に至る一連の通風路と、前記通風路を通過する空気を冷却可能な複数の冷却器を有し、前記複数の冷却器は自身の温度を低下させて前記通風路を通過する空気と熱交換し、前記通風路を通過する空気の温度を低下させることが可能であり、前記空気導入部から前記空気排出部に向かうにつれて自身の温度がより低い冷却器が配置され、前記複数の冷却器のうち少なくとも二以上の冷却器が同時に駆動されるものであって、前記複数の冷却器には冷却能力を変更可能なものを含み、条件に応じて冷却能力を変更することが可能であって、前記冷却能力の変更が、運転される前記複数の冷却器のうち最下流の冷却器の冷却能力を変更することにより行われることを特徴とする低温空気供給装置である。
一つの前記通風路に対して前記冷却器が3台以上設置されていることが望ましい。
【0018】
本発明の低温空気供給装置は、空気導入部から空気排出部に至る一連の通風路を有し、通風路に空気を通過させて空気を冷却する。
ここで本発明の低温空気供給装置では、複数の冷却器を有している。冷却器は、例えば冷凍機の蒸発器やペルチェ素子の様に、自身の温度を低下させて対象物の温度を低下させるものである。
【0019】
本発明の低温空気供給装置では、複数の冷却器が設置されており、且つ下流に向かうにつれて自身の温度がより低い冷却器が配置されている。
そのため空気導入部に近い位置に配された冷却器(以下、上流側冷却器と称する)は、自身の温度が比較的高く、成績係数が高い。勿論、上流側冷却器であっても当該部分を通過する空気よりも自身の温度が低いので、通過する空気から熱を奪い、空気の温度を低下させることができる。
【0020】
上流側冷却器によって冷却された空気は、空気排出部に向かって流れる。そして次に設置された冷却器(以下、中流側冷却器と称する)と接する。通風路の中流部を流れる空気は、当初導入された空気よりも温度が低いが、中流側冷却器は、上流側冷却器よりも自身の温度が低いので、通過する空気から熱を奪い、空気の温度をさらに低下させることができる。
【0021】
中流側冷却器についても、自身の温度が最終的到達目標の温度よりも高い場合が多いので、成績係数は高い。
中流側冷却器によって冷却された空気は、さらに空気排出部に向かって流れる。そして次に設置された冷却器(以下、下流側冷却器と称する)と接する。通風路の下流部を流れる空気は、中流部を流れる空気よりも温度が低いが、下流側冷却器は、中流側冷却器よりも自身の温度が低いので、通過する空気から熱を奪い、空気の温度をさらに低下させることができる。
【0022】
下流側冷却器は、自身の温度が最終的到達目標の温度よりも低いので、成績係数は低い。しかしながら、本発明の低温空気供給装置では、他の流域に配された冷却器の成績係数が高いので、全体としての効率が高く、消費電力が少ない。
また通風路を通過する空気の温度と、各部に配された冷却器の温度が比較的近いので、局部的に霜付きすることが少ない。そのため通風路を通過させる前に行う除湿は、徹底したものである必要はない。
以上の説明は、通風路を上流側、中流側、下流側の3領域に分けて説明したが、もちろん本発明は、これに限定されるものではなく、上流側と下流側の2領域であってもよく、より多くに区分されていてもよい。
【0023】
請求項に記載の発明は、前記一連の通風路と複数の冷却器を有する通風系統を複数系統有し、少なくとも一系統の通風系統を駆動して通風路を通過する空気の温度を低下させている間に、他の少なくとも一系統の通風系統の冷却器の除霜を行うことが可能であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の低温空気供給装置である。
【0024】
本発明の低温空気供給装置によると、複数の通風系統を順番に使用することにより、長期に渡って連続的に低温空気を供給し続けることができる。
【0025】
除霜手段は任意であり、蒸発器にホットガスを導入してもよい。また別途ヒータを設け、ヒータによって除霜を行ってもよい。
また通風路に温風を通過させてもよい。単なる通風による除霜も可能である。
【0026】
請求項に記載の発明は、前記冷却器は冷凍サイクルを構成する冷凍機の蒸発器であり、前記冷凍機は、2以上の蒸発器を有し、前記2以上の蒸発器を切り換える切替え手段と、各蒸発器にホットガスを導入するホットガス導入回路を備え、少なくとも一つの蒸発器が一系統の通風系統の冷却器として使用され、他の少なくとも一つの蒸発器が他の系統の通風系統の冷却器として使用されていることを特徴とする請求項に記載の低温空気供給装置である。
【0027】
本発明によると、一系統の通風系統を駆動して通風路を通過する空気の温度を低下させている間に、他の少なくとも一系統の通風系統の冷却器の除霜を行うことができ、休止することなく連続的に低温空気を供給し続けることができる。
【0028】
前記複数の冷却器であって同一の通風路を通過する空気と熱交換する冷却器を選択的に運転することが可能であり、要求される空気の温度に応じて運転する冷却器の数を変更することが可能であることが望ましい。即ち請求項4に記載の発明は、前記複数の冷却器であって同一の通風路を通過する空気と熱交換する冷却器を選択的に運転することが可能であり、要求される空気の温度に応じて運転する冷却器の数を変更することが可能であることを特徴とする請求項3に記載の低温空気供給装置である。
【0029】
空気導入部から空気排出部に向かうにつれて自身の温度がより低い冷却器が配置された結果、最終的に要求される空気の設定温度が最も下流に配された冷却器の表面温度よりも高くなってしまう場合がある。要するに、要求される冷熱に対して低温空気供給装置の最大冷却能力が過剰である場合がある。
この様な場合には、冷却器のいくつかを停止する。例えば最上流の冷却器から、設定温度以下であり且つ設定温度に近い表面温度となる冷却器までを運転し、運転された冷却器で冷却された空気を吐出させる。
【0030】
請求項5に記載の発明は、運転する冷却器の数の変更が、前記複数の冷却器のうち少なくとも最下流の冷却器を休止することにより行われることを特徴とする請求項4に記載の低温空気供給装置である。
前記複数の冷却器であって同一の通風路を通過する空気と熱交換する冷却器は、冷却能力を変更可能なものを含み、条件に応じて冷却能力を変更することが可能であることが望ましい。
【0031】
「条件」には、例えば低温空気供給装置に要求される空気の温度の高低がある。低温空気供給装置に要求される空気の温度が比較的高い場合には冷却能力を増加させ、要求される空気の温度が比較的低い場合には冷却能力を低下させる。同様に要求される空気の量が比較的多い場合には冷却能力を増加させ、要求される空気の量が比較的少ない場合には冷却能力を低下させる。また外気温度が高く低温空気供給装置に導入される空気の温度が比較的高い場合には冷却能力を増加させ、外気温度が低い場合には冷却能力を低下させる。
本発明も、要求される冷熱に対して低温空気供給装置の最大冷却能力が過剰である場合に対応可能な低温空気供給装置である。
【0032】
冷却能力の変更が、運転する複数の冷却器のうち少なくとも最下流の冷却器の冷却能力を変更することにより行われることが望ましい。
請求項に記載の発明は、請求項1乃至のいずれかに記載の低温空気供給装置を備えた環境試験装置である。
【0033】
本発明によると、空気を消費する機器を被試験物とする環境試験を行うことができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の低温空気供給装置及び環境試験装置は、空気を消費する機器に対して連続的に低温空気を供給することができ、且つ消費電力が比較的少ない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の実施形態の環境試験装置の概念図である。
図2図1の環境試験装置の低温空気供給装置で採用する冷凍機の配管系統図である。
図3図2に示す冷凍機の配管系統図であり、第一系統の通風路を使用して低温の空気を供給する場合における冷媒の流れを示す。
図4図2に示す冷凍機の配管系統図であり、第二系統の通風路を使用して低温の空気を供給する場合における冷媒の流れを示す。
図5】試作した低温空気供給装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
図1に示す環境試験装置1は、試験室2と、低温空気供給装置3によって構成されている。試験室2は、被試験物を配置する部屋であり、図示しない空調装置によって所望の環境に調整することができる。試験室2には、被試験物(図示せず)が配置されている。被試験物は、例えばエンジンやバーナ等の空気を消費する機器である。
【0037】
低温空気供給装置3は、試験室2内の被試験物に低温の空気を供給するものである。
本実施形態では、低温空気供給装置3は、本体装置10と、プレ除湿装置11及び本除湿装置12を有している。また低温空気供給装置3に空気を供給する送風機13を有している。
【0038】
プレ除湿装置11は、前記したものと同じであり、水冷式の冷却通路であり、空気を軽度に除湿するものである。
本除湿装置12は、通常の冷却式の除湿機であり、内部に冷凍機15を内蔵している。本除湿装置12は、冷凍機15を備え、冷凍機15の蒸発器(図示せず)の表面温度を通過する空気の露点温度以下に制御し、蒸発器の表面で結露させて空気を除湿するものである。
本除湿装置12は、前記したデシカント式除湿装置ほど空気を低湿度にすることはできない。しかしながら本除湿装置12は、除湿量に対する消費電力が、デシカント式除湿装置に比べて少ない。
【0039】
次に本体装置10について説明する。
本体装置10は、合同空気導入部20と、合同空気排出部21があり、その中間が入り側分岐流路23と出側合流流路22によって二系統の通風路25a,25bに分かれている。以下、一方を第一通風路25aと称し、他方を第二通風路25bと称する。
二系統の通風路25a,25bは、それぞれ空気導入部26a,26bと空気排出部27a,27bがある。
通風路25a,25bはダクトや管によって形成された筒体であり、空気導入部26a,26bと空気排出部27a,27bを連通する細長い空間である。
本体装置10には、二系統の通風路25a,25bの切り換える流路切替え手段28が設けられている。流路切替え手段28は、入り側切替え手段30a,30bと、出側切替え手段31a,31bによって構成されている。
入り側切替え手段30a,30bは、それぞれの空気導入部26a,26bの近傍であって通風路25a,25bの上流端にある。一方、出側切替え手段31a,31bは、空気排出部27a,27bにあり、それぞれの通風路25a,25bの下流端にある。
本実施形態では、入り側切替え手段30a,30b及び出側切替え手段31a,31bは、バタフライ弁やダンパー弁等の開閉弁であり、モーター32によって開閉される。
通風路25a,25bは、いずれも図示しない断熱材で覆われている。
【0040】
本実施形態の本体装置10は、独立した4台の冷凍機35A,35B,35C,35Dを有している。
冷凍機35A,35B,35C,35Dの回路は、同一であり、それぞれ蒸発器40を2基備えている。
なお説明の便宜上、冷凍機35A,35B,35C,35Dに属する蒸発器には、大文字のA,B,C,Dを付する。またそれぞれの冷凍機35A,35B,35C,35Dに属する2個の蒸発器40を区別する場合には、小文字のa,bを付する。
本実施形態では、蒸発器40が通風路25a,25b内に挿入される冷却器として機能する。
【0041】
図2は、冷凍機35の冷凍回路を示している。冷凍機35は、圧縮機36、凝縮器37、膨張手段38及び第一蒸発器40a、第二蒸発器40bを有し、これらが冷媒配管によって繋がれ、内部に相変化する冷媒が充填されたものである。
本実施形態では、圧縮機36はインバータ制御されており、回転速度を変化させることができる。
【0042】
冷凍機35の冷媒配管は、主配管41と、分岐配管43及びホットガス導入配管46によって構成されている。
冷凍機35の主配管41は、圧縮機36、凝縮器37、膨張手段38及び蒸発機器部42を環状に繋ぐ配管である。なお蒸発機器部42は第一蒸発器40aと第二蒸発器40bが並列的に設けられた部分である。
【0043】
分岐配管43は、蒸発機器部42の第一蒸発器40aと第二蒸発器40bを切り換える配管であり、分岐配管43によって2台の蒸発器40a,40bが主配管41に対して並列に配管されている。
即ち膨張手段38の下流側が上流側分岐配管43a,43bによって分岐され、それぞれ蒸発器40a,40bに接続されている。上流側分岐配管43a,43bには、それぞれ蒸発器上流側開閉弁45a,45bが設けられている。
【0044】
また2台の蒸発器40a,40bの下流側にはそれぞれ下流側分岐配管43c,43dが接続され、両者が合流して圧縮機36の吸い込み側に接続されている。
下流側分岐配管43c,43dにはそれぞれ蒸発器下流側開閉弁47a,47bが設けられている。
本実施形態では、蒸発器上流側開閉弁45a,45bと蒸発器下流側開閉弁47a,47bによって2台の蒸発器40a,40bを切り換える切替え手段が構成されている。
【0045】
ホットガス導入配管46は、圧縮機36の吐出側と蒸発器40a,40bの導入側を接続し、蒸発器40a,40bの吐出側と圧縮機36の吸い込み側に接続するものである。
即ち圧縮機36の吐出側と凝縮器37の間が分岐され、さらにその先がホットガス分岐配管51a,51bによって分岐され、それぞれ蒸発器40a,40bに接続されている。上流側ホットガス分岐配管51a,51bには、それぞれホットガス開閉弁52a,52bが設けられている。
本実施形態では、ホットガス導入配管46によって2台の蒸発器40a,40bにホットガスを導入するホットガス導入回路が構成されている。
【0046】
冷凍機35は、圧縮機36を駆動して冷媒を循環させることにより、回路内で冷凍サイクルを実現し、蒸発器40a,40bの表面温度を低下させることができる。また蒸発器上流側開閉弁45a,45bと蒸発器下流側開閉弁47a,47bによって構成される切替え手段を切り換えることによって、いずれか一方の蒸発器40a,40bだけに冷媒(液相また気液混合相)を導入することができる。
【0047】
ホットガス導入配管46によって、蒸発器40a,40bにホットガスを導入することができる。またホットガス開閉弁52a,52bを切り換えることにより、いずれか一方の蒸発器40a,40bだけにホットガスを導入することができる。
【0048】
具体的に説明すると、図3の様に、分岐配管43の第一蒸発器40aに至る上流側分岐配管43aと、第一蒸発器40aから圧縮機36に戻る流路の蒸発器下流側開閉弁47aを開き、第一蒸発器40aを通過する一連の循環流路を開いて第一蒸発器40aに冷媒(液相また気液混合相)を導入し、第一蒸発器40aの表面温度を低下させることができる。
【0049】
またこのとき、ホットガス導入配管46の第二蒸発器40bに至るホットガス開閉弁52bを開いて第二蒸発器40bにホットガスを導入し、第二蒸発器40bの表面温度を上昇させて除霜を行うことができる。
【0050】
逆に、図4の様に、第二蒸発器40bを通過する一連の循環流路を開いて第二蒸発器40bに冷媒(液相また気液混合相)を導入し、第二蒸発器40bの表面温度を低下させることができる。
またこのとき、ホットガス導入配管46の第一蒸発器40aに至るホットガス開閉弁52aを開いて第一蒸発器40aにホットガスを導入し、第一蒸発器40aの表面温度を上昇させて除霜を行うことができる。
【0051】
本実施形態の本体装置10は、前記した様に独立した4台の冷凍機35A,35B,35C,35Dを有し、且つ各冷凍機35A,35B,35C,35Dは、それぞれ第一蒸発器40aと、第二蒸発器40bを有している。
本実施形態の本体装置10は、前記した様に二系統の通風路25a,25bを有している。そして各通風路25a,25bに前記した各冷凍機35A,35B,35C,35Dの蒸発器40が、一台ずつ内蔵されている。
具体的には、第一通風路25aには、各冷凍機35A,35B,35C,35Dの第一蒸発器40aが内蔵されている。また第二通風路25bには、各冷凍機35A,35B,35C,35Dの第二蒸発器40bが内蔵されている。
【0052】
ここで、本実施形態の本体装置10は、4台の冷凍機35A,35B,35C,35Dを有しており、各冷凍機35A,35B,35C,35Dの配管系統は同一であるが、冷凍機35ごとに蒸発器40の設定温度が異なっている。
即ち各冷凍機35A,35B,35C,35Dは、膨張手段38の開度等が異なり、蒸発器40内における冷媒の蒸発圧力が異なる。その結果、各蒸発器40は表面温度が相違する。
具体的には、各蒸発器40の設定温度は、異なっている。即ち、冷凍機35Aの設定温度が最も高く、次いで冷凍機35Bが高く、次いで冷凍機35Cが高く、冷凍機35Dは最も低い。
そして各冷凍機35A,35B,35C,35Dの蒸発器40は、それぞれの通風路25a,25b内において、下流側にあるもの程、設定温度が低く、自身の表面温度が低くなる様に配列されている。
【0053】
前記した様に、説明の便宜上、冷凍機35Aに属する蒸発器40を蒸発器40Aと表示する。同様に冷凍機35Bに属する蒸発器40を蒸発器40Bと表示し、冷凍機35Cに属するものを蒸発器40Cと表示し、冷凍機35Dに属するものを蒸発器40Dと表示する。
そして各冷凍機35の第一蒸発器を40Aa,40Ba,40Ca,40Daと表示する。また各冷凍機35の第二蒸発器を40Ab,40Bb,40Cb,40Dbと表示する。
第一通風路25aに内蔵された蒸発器40Aa,40Ba,40Ca,40Daに注目すると、空気導入部26aから空気排出部27aに向かうにつれて設定温度が低く、自身の温度がより低い蒸発器が配置されている。
具体的には、空気導入部26a側から順に、蒸発器40Aa,蒸発器40Ba,蒸発器40Ca,蒸発器40Daの順に配列されている。
各蒸発器40はいずれも第一通風路25a内にあり、通風路25aを通過する空気が直接触れて熱交換する。
【0054】
第二通風路25bも同様であり、第二通風路25bに内蔵された蒸発器40Ab,40Bb,40Cb,40Dbは、空気導入部26bから空気排出部27bに向かうにつれて設定温度が低く、自身の温度がより低い蒸発器40が配置されている。
【0055】
本実施形態の低温空気供給装置3は、前記した様に本体装置10と、プレ除湿装置11及び本除湿装置12を有している。
本実施形態の低温空気供給装置3は、上流側からプレ除湿装置11、本除湿装置12及び本体装置10が配置されたものである。プレ除湿装置11、本除湿装置12及び本体装置10の内部の通風路は繋がっている。
【0056】
次に本実施形態の低温空気供給装置3の機能について説明する。
仮に、エンジンやバーナ等の被試験物の試験に、マイナス40度の空気が必要であると仮定して各部の動作を説明する。
本実施形態では、それぞれの通風路25a,25b内において、下流側にあるもの程、自身の表面温度が低くなる様に配列されており、最下流に配された冷凍機35Dの蒸発器40Da,40Dbの表面温度が最も低い。そして最下流に配された蒸発器40Da,40Dbの表面温度が少なくとも空気の目標温度たるマイナス40度よりも低い温度となる様に、蒸発器40Da,40Dbの温度を設定する。例えば最下流に配された蒸発器40Da,40Dbの表面温度をマイナス45度に設定する。
例えば、空気導入部26a,26bに最も近い位置に配された上流側の蒸発器40Aa,40Abの表面温度をマイナス15度に設定し、中流側部の蒸発器40Ba,40Bbの表面温度をそれぞれマイナス25度とし、3番目の蒸発器40Ca,40Cbの表面温度をそれぞれマイナス35度とし、最下流の蒸発器40Da,40Dbの表面温度をマイナス45度に設定する。
【0057】
本実施形態の低温空気供給装置3は、通風路25a,25bを二系統有している。実際の環境試験に際しては、通風路25を一系統ずつ機能させ、他の一系統は除霜運転を行う。
仮に、第一通風路25aによって低温空気を供給するならば、入り側切替え手段30a,30bと、出側切替え手段31a,31bを切り換えて、合同空気導入部20と、第一通風路25aと、合同空気排出部21の三者を連通させ、第二通風路25bを閉塞する。
具体的には、第一通風路25aに属する入り側切替え手段30aと、出側切替え手段31aを開き、第二通風路25bに属する入り側切替え手段30bと、出側切替え手段31bを閉じる。
その結果、上流側からプレ除湿装置11、本除湿装置12、本体装置10の第一通風路25aが一連に通風路を構成する。
【0058】
そして各冷凍機35A,35B,35C,35Dは、図3の様に第一蒸発器40aに冷媒(液相又は気液混合相)を流す。なお試験開始直後は、第二蒸発器40bにホットガスを流す必要はない。
【0059】
この状態で、送風機13を起動し、プレ除湿装置11、本除湿装置12、本体装置10の第一通風路25aによって構成される一連の通風路に空気を流す。
送風機13から吐出された空気は、プレ除湿装置11に入り、除湿される。さらにプレ除湿装置11で除湿された空気は、本除湿装置12に流れ、本除湿装置12でさらに除湿される。
ここで本除湿装置12は、冷凍機15によって除湿する通常の冷却式の除湿機であるから、徹底的な除湿を行うことはできない。その反面、デシカント式除湿機に比べて、消費電力は少ない。
【0060】
本除湿装置12で除湿された空気は、低温空気供給装置3の第一通風路25aに入り、最も上流側に配された蒸発器40Aaと接する。そして通過する空気は、蒸発器40Aaと熱交換し、蒸発器40Aaの表面温度に近い温度に温度が低下する。
【0061】
最初の蒸発器40Aaを通過した空気は、下流側に流れ、二番目に設置された蒸発器40Baと接する。通風路の中流部を流れる空気は、当初導入された空気よりも温度が低いが、二番目に設置された蒸発器40Baの表面温度は、先の蒸発器40Aaの表面温度よりも低い。そのため二番目に設置された蒸発器40Baの表面温度は、そこを通過する空気の温度に比べて相当に低温であるから、通過する空気から熱を奪い、空気の温度をさらに低下させる。
【0062】
二番目の蒸発器40Baを通過した空気は、下流側に流れ、三番目に設置された蒸発器40Caと接する。通風路の中流部を流れる空気は、相当に温度が低下しているが、三番目に設置された蒸発器40Caの表面温度は、先の蒸発器40Baの表面温度よりも低い。そのため三番目に設置された蒸発器40Caの表面温度は、そこを通過する空気の温度に比べて相当に低温であり、通過する空気から熱を奪い、空気の温度をさらに低下させる。
【0063】
三番目の蒸発器40Caを通過した空気は、下流側に流れ、最下流に設置された蒸発器40Daと接する。通風路を流れる空気は、相当に温度が低下しているが、最下流に設置された蒸発器40Daの表面温度は、先の蒸発器40Caの表面温度よりも低い。そのため最下流に設置された蒸発器40Daの表面温度は、そこを通過する空気の温度に比べて相当に低温であり、通過する空気から熱を奪い、空気の温度をさらに低下させ、目標温度に至らせる。
この様に、本実施形態では、第一通風路25aを一方方向に流れる空気は、つぎつぎとそれよりも温度の低い蒸発器40と接し、次第に温度が低下していく。
【0064】
最下流の蒸発器40Daを通過した空気は、空気排出部27aから合同空気排出部21に至り、試験室2内の被試験物に供給される。
試験を実施し、時間が経過すると、第一通風路25a内の各蒸発器40aに霜が発生し、霜が成長する。ただし各蒸発器40は、その表面温度が、通過する空気に対して一定の温度だけ下回るものであり、通過する空気に対して過度に低くはない。そのため霜は、局部的に発生するのではなく、各蒸発器40に対して一様に付き、一様に成長する。そのため使用不能となるまで霜が成長するまでには、相当に時間が掛かり、比較的長い時間に渡って、第一通風路25aを使用することができる。
【0065】
霜が成長し、熱交換効率が低下した場合は、使用する通風路25を第二通風路25bに切り換える。
即ち入り側切替え手段30a,30bと、出側切替え手段31a,31bを切り換えて、合同空気導入部20と、第二通風路25bと、合同空気排出部27bの三者を連通させ、第一通風路25aを閉塞する。
具体的には、第二通風路25bに属する入り側切替え手段30bと、出側切替え手段31bを開き、第一通風路25aに属する入り側切替え手段30aと、出側切替え手段31aを閉じる。
【0066】
また各冷凍機35A,35B,35C,35Dは、図4の様に第二蒸発器40bに冷媒(液相又は気液混合相)を流す。さらに各冷凍機35A,35B,35C,35Dの第一蒸発器40aにホットガスを流す。
【0067】
この状態で、送風機13を起動し、一連の通風路に空気を流す。
送風機13から吐出された空気は、プレ除湿装置11から本除湿装置12を通過して低温空気供給装置3の第二通風路25bに入り、先の説明と同様に、各蒸発器40Ab,40Bb,40Cb,40Dbによって順次冷却され、目標の低温となって試験室2に送られる。
【0068】
また同時に、第一通風路25aに内蔵された各蒸発器40Aa,40Ba,40Ca,40Daにはホットガスが導入され、各蒸発器40Aa,40Ba,40Ca,40Daの表面温度が上昇するので、各蒸発器40Aa,40Ba,40Ca,40Daの表面に付着した霜が融ける。
霜が十分に融けたならば、ホットガスの導入を停止し、第一通風路25aを待機させる。
【0069】
本実施形態の低温空気供給装置3では、最も上流側の蒸発器40Aa,40Abは、表面温度が摂氏マイナス15度程度であるから、冷凍機35Aの成績係数は、1.5から2.0程度が期待できる。
また次の蒸発器40Ba,40Bbは、表面温度がマイナス25度であるから、冷凍機35Bの成績係数は、1.4から1.6程度が期待できる。
また三番目の蒸発器4Ca,40Cbは、表面温度がマイナス35度であるから、冷凍機35Cの成績係数は、1.2から1.4程度が期待できる。
最下流の蒸発器40Da,40Dbは、表面温度が低く、良好な成績係数は期待できない。
しかしながら、4台の冷凍機35A,35B,35C,35Dの内、3台の成績係数が良好であるから、全体としての効率は高く、消費電力の低下が見込まれる。
【0070】
また本実施形態では、デシカント除湿機を使用する必要が無いので、この点でも消費電力は低い。
【0071】
以上説明した実施形態では、冷凍機35A,35B,35C,35Dを4台備え、その冷凍機35A,35B,35C,35Dを全て使用したが、要求される空気の温度がさほど低くなければ、幾つかの冷凍機35A,35B,35C,35Dを使用し、幾つかを停止してもよい。
例えば、要求される空気の温度が、マイナス30度であるならば、冷凍機35A,35B,35Cの3台を駆動し、最下流の冷凍機35Dを休止させる。
また要求される温度は低いが、要求される風量が少ない場合には、上流側の冷凍機35Aを休止し、中流以下の冷凍機35B,35C,35Dを駆動してもよい。
もちろん中間部の冷凍機35だけを使用してもよい。
【0072】
要するに、要求される冷熱に対して各冷凍機35A,35B,35C,35Dの合計冷却能力が過剰である場合がある。
この様な場合には、終端に近い各冷凍機35のいくつかを停止する。例えば最上流の冷却器35Aから、蒸発器40の表面温度が低温空気供給装置3に要求される吐出空気の温度以下であり且つその表面温度が前記した要求される温度に最も近い温度となる冷凍機35までを運転し、運転された冷凍機群で冷却された空気を吐出させる。
【0073】
また本実施形態では、圧縮機36がインバータ制御されていて回転速度を変更することができるので、要求される温度や風量に応じて適切な冷凍能力を発揮する様に、圧縮機の出力を変更することができる。
なお、低温空気供給装置3から吐出される空気の温度の微調整は、駆動する冷凍機のうち最も下流側の冷凍機35の圧縮機36の出力を調節して行うことが望ましい。
【0074】
以上説明した実施形態では、通風路25内に冷却器たる蒸発器40を4台、直列的に並べたが、蒸発器40の数は任意であり、5台以上の蒸発器40が並べられていてもよい。
逆に蒸発器40の数は3台以下であってもよい。蒸発器40の数は2台以上であればよいが、3台以上の蒸発器40を有することが推奨される。
【0075】
以上説明した実施形態では、通風路25a,25b内に設置される冷却器は冷凍機35の蒸発器40であるが、ブラインを通過させて表面温度を設定温度に低下させる冷却器を使用してもよい。
【0076】
上記した実施形態では、通風路25a,25bはダクトや管体で形成されたものであるが、通風路25a,25bは断面が複数に仕切られていてもよい。例えば、通風路25a,25bは複数の細管の集合であってもよい。即ち通風路25a,25bは複数の管等が並列に配された管の束であってもよい。
【0077】
上記した実施形態の低温空気供給装置3は、通風路25a,25bを2系統有するものであるが、通風路25は一系統であってもよい。また3系統以上の通風路25を有していてもよい。
各通風路25を除霜する際に、通風路25を通風環境としてもよい。
【0078】
上記した実施形態では、休止中の蒸発器40にホットガスを流すことによって除霜を行ったが、除霜方法はホットガスによるものに限定されない。例えば蒸発器40にヒータを設け、ヒータによって除霜を行ってもよい。また通風路25に温風を通過させてもよい。通風路25に常温の空気を通過させることによって除霜することも可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 環境試験装置
2 試験室
3 低温空気供給装置
10 本体装置
25a 第一通風路
25b 第二通風路
35A,35B,35C,35D 冷凍機
40Aa,40Ba,40Ca,40Da 第一蒸発器
40Ab,40Bb,40Cb,40Db 第二蒸発器
45a,45b 蒸発器上流側開閉弁(切替え手段)
47a,47b 蒸発器下流側開閉弁(切替え手段)
図1
図2
図3
図4
図5