特許第6670210号(P6670210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 第一大宮株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6670210-包装用容器及びその製造方法 図000002
  • 特許6670210-包装用容器及びその製造方法 図000003
  • 特許6670210-包装用容器及びその製造方法 図000004
  • 特許6670210-包装用容器及びその製造方法 図000005
  • 特許6670210-包装用容器及びその製造方法 図000006
  • 特許6670210-包装用容器及びその製造方法 図000007
  • 特許6670210-包装用容器及びその製造方法 図000008
  • 特許6670210-包装用容器及びその製造方法 図000009
  • 特許6670210-包装用容器及びその製造方法 図000010
  • 特許6670210-包装用容器及びその製造方法 図000011
  • 特許6670210-包装用容器及びその製造方法 図000012
  • 特許6670210-包装用容器及びその製造方法 図000013
  • 特許6670210-包装用容器及びその製造方法 図000014
  • 特許6670210-包装用容器及びその製造方法 図000015
  • 特許6670210-包装用容器及びその製造方法 図000016
  • 特許6670210-包装用容器及びその製造方法 図000017
  • 特許6670210-包装用容器及びその製造方法 図000018
  • 特許6670210-包装用容器及びその製造方法 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670210
(24)【登録日】2020年3月3日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】包装用容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/42 20060101AFI20200309BHJP
   B65D 5/20 20060101ALI20200309BHJP
   B65D 6/28 20060101ALI20200309BHJP
   B65D 6/36 20060101ALI20200309BHJP
   B31B 50/60 20170101ALI20200309BHJP
   B31B 50/64 20170101ALI20200309BHJP
   B29C 65/20 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   B65D5/42 D
   B65D5/20 B
   B65D6/28 Z
   B65D6/36
   B31B50/60
   B31B50/64
   B29C65/20
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-171511(P2016-171511)
(22)【出願日】2016年9月2日
(65)【公開番号】特開2018-34876(P2018-34876A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2018年3月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391065781
【氏名又は名称】第一大宮株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100070507
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 俊男
(72)【発明者】
【氏名】松岡 貴峰
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−250710(JP,A)
【文献】 特開2008−221826(JP,A)
【文献】 特開2010−001066(JP,A)
【文献】 特開2009−196681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/42
B65D 5/20
B65D 6/28
B65D 6/36
B31B 50/60
B31B 50/64
B29C 65/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無発泡若しくは低発泡の合成樹脂からなる底板と該底板の周縁に一体に形成される各側板とを備え、相互に隣接する一方の側板の側端部には袖片部を備え、隣接する他方の側板の側端部には前記袖片部と当接可能な接合端部を備え、各側板の袖片部と接合端部とが当接する境界ラインに間隙部を備える包装用容器において、
前記底板及び各側板は、無発泡若しくは発泡倍率8倍以下の前記低発泡合成樹脂として、
各側板のうち接合端部を有する一の側板を前方に位置する前側板とし、該前側板に対向する側板を後方に位置する後側板とし、
前側板側から後側板側を見て右側の側板を右方に位置する右側板とし、前側板側から後側板側を見て左側の側板を左方に位置する左側板とし、
前記袖片部は、その端面において基端側から傾斜する傾斜面と該傾斜面に連続する垂直面を有し、
前記接合端部は、その端面において基端側から傾斜する他の傾斜面と該他の傾斜面に連続する他の垂直面を有し、
前記袖片部の前記傾斜面と前記接合端部の前記他の傾斜面とによって予め形成される第一の切欠部を構成し、
前側板における左方、右方の第一の切欠部における、傾斜面と他の傾斜面とが接続される先端よりも後方位置を通るラインと、後側板における左方、右方の第一の切欠部における、傾斜面と他の傾斜面とが接続される先端よりも前方位置を通るラインとを、夫々第一の仮想ラインとし、
前記第一の切欠部の近接部並びに当該第一の切欠部と前記第一の仮想ラインとの間の位置に予め形成される余剰部を備え、前記余剰部が溶融され、前記袖片部と前記接合端部が溶融接合されることで
前記境界ラインの少なくとも外面側又は内面側のいずれかに、前記溶融した余剰部が間隙部に充填してなる充填部を有する、畝状の閉塞部を形成したことを特徴とする包装用容器。
【請求項2】
対向する一対の側板は、その両端の下方部側に、前記袖片部を備え、且つ、当該袖片部の上方位置から隣接する側面へ連続する側支片部を備え、前記隣接する側面には、前記側支片部の内面に固着される第二側板を備えたことを特徴とする請求項1記載の包装用容器。
【請求項3】
前記第二側板は、二枚の構成板間に複数の平行なリブを有するプラスチック段ボールからなり、当該リブの長手方向を上下方向に配置した構成としたことを特徴とする請求項2記載の包装用容器。
【請求項4】
上端部を補強する補強枠部及び補強角部を備えたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の包装用容器。
【請求項5】
底板と該底板の周縁に一体に形成される各側板とを備える低発泡合成樹脂若しくは無発泡合成樹脂シートの隣接する側板の相互の端面を加熱溶融して接合する包装用容器の製造方法において、
前記合成樹脂シートは、発泡倍率8倍以下の低発泡合成樹脂若しくは無発泡合成樹脂シートとし、
相互に隣接する一方の側板の側端部には袖片部を備え隣接する他方の側板の側端部には前記袖片部と当接可能な接合端部を備え、
前記袖片部は、その端面において基端側から傾斜する傾斜面と該傾斜面に連続する垂直面を有し、
前記接合端部は、その端面において基端側から傾斜する他の傾斜面と該他の傾斜面に連続する他の垂直面を有し、
前記袖片部の前記傾斜面と前記接合端部の前記他の傾斜面とによって、予め形成される第一の切欠部を構成し、
複数の第一の切欠部のうちV字先端が同一方向となる二箇所の第一の切欠部に対して、当該二箇所のV字先端よりも中央寄り位置を通るラインを第一の仮想ラインとし、
該第一の切欠部の近接部並びに当該第一の切欠部と前記第一の仮想ラインとの間の位置に予め形成される余剰部を備えたシートとし、
前記第一の仮想ラインにおいて加熱溶融して、溶融状態でない第一の切欠部及び余剰部を含む側板、袖片部及び接合端部を起立させるとともに、前記第一の切欠部より下方であって、前記第一の切欠部の近接部並びに当該第一の切欠部の下方に位置する前記第一の仮想ラインの間に、溶融状態でない前記余剰部を確保する前工程と、
前記第一の切欠部と前記余剰部が形成された前記シートにおける前記第一の仮想ラインに直交し、且つ対向する二箇所の第一の切欠部を通る第二の仮想ラインにおいて加熱溶融して前記袖片部と接合端部を溶着し、且つ、溶融した前記余剰部を前記側板の少なくとも外側又は内側へはみ出させる第一工程と、
はみ出した溶融状態の前記余剰部を、前記側板の少なくとも外側又は内側の一方から押圧し、充填部として境界ラインの間隙部を埋め、畝状の閉塞部を形成する第二工程と、を備えたことを特徴とする包装用容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として搬送や包装に用いる合成樹脂製の容器及びその製造方法に関し、特には液密性を有する合成樹脂製の容器(例えば、防錆用のオイルが塗布された機械部品や、水分が供給された観賞用生花等のように、液体が付着・浸漬等された収容物を搬送若しくは包装するための箱体やトレイ等。以下、本発明において「包装用容器」という。)、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製品若しくは部品の搬送及び/又は包装等を目的として、熱可塑性樹脂からなる板状シートを使用し、底板及び側板等の構成部同士を熱融着して形成した包装用容器が公知である。
【0003】
このような包装用容器としては、例えば、熱可塑性及び熱融合性を有するプラスチック段ボールシートを用い、該プラスチック段ボールシートの裁断された端部同士を接合した接合部を少なくとも1箇所有しているプラスチック段ボール箱において、該接合部が、該プラスチック段ボールシートの互いに接合すべき両裁断端部の上面又は下面の表面上に該プラスチック段ボールシートの熱可塑性を利用した塑性変形により該表面から始まり少なくとも該プラスチック段ボールシートの構造部材であるライナーに挟まれた中空領域の厚さ全体にまたがる斜面をそれぞれ設け、該斜面上には該斜面が設けられた側のプラスチック段ボールシート表面のライナーが該塑性変形により延伸されて該裁断端部の断面に露出する該中空領域を覆うライナー被覆層を設け、該ライナー被覆層の表面部分を加熱して融解することにより該表面部分にプラスチック融解層を形成し、該両斜面上の該融解層同士を互いに接触して該プラスチック段ボールシートの熱融合性を利用して融合させ、該融合した融解層を冷却固化して該斜面同士を融着することによって形成されていることを特徴とするプラスチック段ボール箱が公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
上記特許文献1に係る包装用箱(プラスチック段ボール箱)は、構成部同士が熱融着されて強固となるため、接合部に金属製留め具等を用いることなく、外観上の体裁を良好とすることができる点において優れる。しかしながら、当該包装用箱にあっては、隣接する全ての側板のテーパ端面同士を確実に突合せて接合しなければ、各角部が直角とならないものである。このため、製品の精度の確保にも困難性を伴う。また、当該角部を直角に接合する為には、底板に対して側板を折曲させる工程のみならず、別途テーパ端面同士を接合させる工程が必要であり、組み立て作業が煩雑になる虞がある。更に、井桁状の熱板にて板状シートを溶融するので、包装用箱における展開図の大きさに伴って、大きさの異なる熱板が必要となり、製造コストの増大に繋がる虞もあった。
【0005】
このため、本出願人はこのような問題点を解決し、水密性、耐久性、耐荷重性を備える包装用箱であって、特に各角部の精度を向上させるとともに、容易に組み立てることができる包装用箱及びその製造方法として、四隅を切り欠いた1枚の熱可塑性樹脂板における左右両端部から所定位置に接合片を確保し、底板と第1側板の境界に熱溶融による折曲溝を設けて、前記第1側板を前記底板の上方へ折曲させ融着させる第1折曲工程と、前記第1側板の左右両端面及び前記接合片の端面を溶融させ、且つ前記底板及び前記接合片に熱溶融による折曲溝を設けて、前記第2側板を形成するとともに前記底板の上方へ折曲させ前記折曲溝の端面同士、前記第1側板の左右両端面と前記接合片の端面を融着して接合させる第2折曲工程と、を備える包装用箱の製造方法、及びその製造物である包装用箱を提供している(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−285212号公報
【特許文献2】特許第5269947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2に係る包装用箱の製造方法によれば、一応の水密性、耐久性、耐荷重性を備える包装用箱の提供を実現するに至っている。
しかしながら、その一方で、当該特許文献2に係る包装用箱においては、一応の水密性が認められるものの、より長期間に亘る確実性の高い水密性が求められている。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、より液密性の確実性を高めることができる包装用容器及びその製造方法の提供を、上記課題を解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、無発泡若しくは低発泡の合成樹脂からなる底板と該底板の周縁に一体に形成される各側板とを備え、相互に隣接する一方の側板の側端部には袖片部を備え、隣接する他方の側板の側端部には前記袖片部と当接可能な接合端部を備え、各側板の袖片部と接合端部とが当接する境界ラインに間隙部を備える包装用容器において、前記底板及び各側板は、無発泡若しくは発泡倍率8倍以下の前記低発泡合成樹脂として、各側板のうち接合端部を有する一の側板を前方に位置する前側板とし、該前側板に対向する側板を後方に位置する後側板とし、前側板側から後側板側を見て右側の側板を右方に位置する右側板とし、前側板側から後側板側を見て左側の側板を左方に位置する左側板とし、前記袖片部は、その端面において基端側から傾斜する傾斜面と該傾斜面に連続する垂直面を有し、前記接合端部は、その端面において基端側から傾斜する他の傾斜面と該他の傾斜面に連続する他の垂直面を有し、前記袖片部の前記傾斜面と前記接合端部の前記他の傾斜面とによって予め形成される第一の切欠部を構成し、前側板における左方、右方の第一の切欠部における、傾斜面と他の傾斜面とが接続される先端よりも後方位置を通るラインと、後側板における左方、右方の第一の切欠部における、傾斜面と他の傾斜面とが接続される先端よりも前方位置を通るラインとを、夫々第一の仮想ラインとし、前記第一の切欠部の近接部並びに当該第一の切欠部と前記第一の仮想ラインとの間の位置に予め形成される余剰部を備え、前記余剰部が溶融され、前記袖片部と前記接合端部が溶融接合されることで前記境界ラインの少なくとも外面側又は内面側のいずれかに、前記溶融した余剰部が間隙部に充填してなる充填部を有する、畝状の閉塞部を形成したことを特徴とする包装用容器を、上記課題を解決するための手段とする。
【0010】
また本発明は、上記発明の構成を前提として、対向する一対の側板は、その両端の下方部側に、前記袖片部を備え、且つ、当該袖片部の上方位置から隣接する側面へ連続する側支片部を備え、前記隣接する側面には、前記側支片部の内面に固着される第二側板を備えたことを特徴とする包装用容器を、上記課題を解決するための手段とする。
【0011】
また本発明は、上記発明の構成を前提として、前記第二側板は、二枚の構成板間に複数の平行なリブを有するプラスチック段ボールからなり、当該リブの長手方向を上下方向に配置した構成としたことを特徴とする包装用容器を、上記課題を解決するための手段とする。
【0012】
また本発明は、上記いずれかの発明の構成を前提として、上端部を補強する補強枠部及び補強角部を備えたことを特徴とする包装用容器を、上記課題を解決するための手段とする。
【0013】
また本発明は、底板と該底板の周縁に一体に形成される各側板とを備える低発泡合成樹脂若しくは無発泡合成樹脂シートの隣接する側板の相互の端面を加熱溶融して接合する包装用容器の製造方法において、前記合成樹脂シートは、発泡倍率8倍以下の低発泡合成樹脂若しくは無発泡合成樹脂シートとし、相互に隣接する一方の側板の側端部には袖片部を備え隣接する他方の側板の側端部には前記袖片部と当接可能な接合端部を備え、前記袖片部は、その端面において基端側から傾斜する傾斜面と該傾斜面に連続する垂直面を有し、前記接合端部は、その端面において基端側から傾斜する他の傾斜面と該他の傾斜面に連続する他の垂直面を有し、前記袖片部の前記傾斜面と前記接合端部の前記他の傾斜面とによって、予め形成される第一の切欠部を構成し、複数の第一の切欠部のうちV字先端が同一方向となる二箇所の第一の切欠部に対して、当該二箇所のV字先端よりも中央寄り位置を通るラインを第一の仮想ラインとし、該第一の切欠部の近接部並びに当該第一の切欠部と前記第一の仮想ラインとの間の位置に予め形成される余剰部を備えたシートとし、前記第一の仮想ラインにおいて加熱溶融して、溶融状態でない第一の切欠部及び余剰部を含む側板、袖片部及び接合端部を起立させるとともに、前記第一の切欠部より下方であって、前記第一の切欠部の近接部並びに当該第一の切欠部の下方に位置する前記第一の仮想ラインの間に、溶融状態でない前記余剰部を確保する前工程と、前記第一の切欠部と前記余剰部が形成された前記シートにおける前記第一の仮想ラインに直交し、且つ対向する二箇所の第一の切欠部を通る第二の仮想ラインにおいて加熱溶融して前記袖片部と接合端部を溶着し、且つ、溶融した前記余剰部を前記側板の少なくとも外側又は内側へはみ出させる第一工程と、はみ出した溶融状態の前記余剰部を、前記側板の少なくとも外側又は内側の一方から押圧し、充填部として境界ラインの間隙部を埋め、畝状の閉塞部を形成する第二工程と、を備えたことを特徴とする包装用容器の製造方法を、上記課題を解決するための手段とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、無発泡若しくは低発泡の合成樹脂からなる底板と該底板の周縁に一体に形成される各側板とを備え、相互に隣接する一方の側板の側端部には袖片部を備え、隣接する他方の側板の側端部には前記袖片部と当接可能な接合端部を備え、各側板の袖片部と接合端部とが当接する境界ラインに間隙部を備える包装用容器において、前記底板及び各側板は、無発泡若しくは発泡倍率8倍以下の前記低発泡合成樹脂とし、前記境界ラインの少なくとも外面側又は内面側のいずれかに、間隙部に充填される充填部を有する畝状の閉塞部を有することから、畝状の閉塞部が境界ラインに形成される微小な間隙部を閉塞することで、流体の外部への漏えいを防止して、液密性を保持できる。
【0015】
また本発明によれば、上記構成を備えた上に、前記閉塞部における充填部は、前記低発泡合成樹脂若しくは無発泡合成樹脂からなる少なくともいずれかの側板の袖片部又は接合端部に有する余剰部からなるものとしたから、余剰部が加熱溶融によって間隙部に溶融一体として充填されるため、加工が容易であるとともに、間隙を確実に閉塞でき、液密性を保持できる。
【0016】
また本発明によれば、上記構成を備えた上に、前記余剰部は、前記袖片部と接合端部に亘って形成される第一の切欠部の近接部並びに当該第一の切欠部の下方に位置する第一の仮想ラインの間に備えたことから、第一の切欠部から第一の仮想ライン間の高さまで余剰部を確保できることで、充填部を構成するために十分な樹脂量を確保でき、間隙を確実に閉塞でき、液密性を保持できる。また、第一の切欠部を設けることによって、溶融される樹脂の量を削減しつつ、溶着に必要な樹脂量を溶融できる。
【0017】
また本発明によれば、上記いずれかの構成を備えた上に、対向する一対の側板は、その両端の下方部側に、前記袖片部を備え、且つ、当該袖片部の上方位置から隣接する側面へ連続する側支片部を備え、前記隣接する側面には、前記側支片部の内面に固着される第二側板を備えたことから、境界ラインを閉塞する畝状の閉塞部によって液密性を保持できる高さを確保しつつ、収納量を確保することができる利点を有する。
【0018】
また本発明によれば、上記構成を備えた上に、前記第二側板は、二枚の構成板間に複数の平行なリブを有するプラスチック段ボールからなり、当該リブの長手方向を上下方向に配置した構成としたことから、当該第二側板により側板の強度を高めることができ、本発明に係る包装用容器全体の座屈強度を高めることができる。
【0019】
また本発明によれば、上記いずれかの構成を備えた上に、上端部を補強する補強枠部及び補強角部を備えたことから、側板相互間の歪みを上端部の当該補強枠部及び補強角部で規制するため、本発明に係る包装容器全体の強度を高めることができる。また、複数の当該包装用容器を積み重ねることができる。
【0020】
また本発明によれば、熱可塑性合成樹脂からなり隣接する側板の相互の端面を加熱溶融して接合する包装用容器の製造方法において、前記熱可塑性樹脂が発泡倍率8倍以下の低発泡合成樹脂若しくは無発泡合成樹脂であり、少なくとも一方の側板の前記端面を含む接合部分に余剰部を備え、溶融状態の前記接合部分相互を当接して前記余剰部を前記側板の少なくとも外側又は内側へはみ出させる第一工程と、はみ出した溶融状態の余剰部を、前記側板の少なくとも外側又は内側の一方から押圧し、充填部として境界ラインの間隙部を埋め、畝状の閉塞部を形成する第二工程と、を備えた包装用容器の製造方法としたことから、当該余剰部によって境界ラインの間隙部を埋める十分な樹脂量を確保して、間隙部を埋めて形成される充填部を一体に形成でき、当該充填部を有する畝状の閉塞部によって、液密性を確保することができる。
【0021】
底板と該底板の周縁に一体に形成される各側板とを備える低発泡合成樹脂若しくは無発泡合成樹脂シートの隣接する側板の相互の端面を加熱溶融して接合する包装用容器の製造方法において、前記合成樹脂シートは、発泡倍率8倍以下の低発泡合成樹脂若しくは無発泡合成樹脂シートとし、相互に隣接する一方の側板の側端部には袖片部を備え隣接する他方の側板の側端部には前記袖片部と溶着可能な接合端部を備え、前記袖片部と接合端部に亘ってV字状の第一の切欠部を形成したシートとし、複数の第一の切欠部のうちV字先端が同一方向となる二箇所の第一の切欠部に対して、当該二箇所のV字先端よりも中央寄り位置を通る第一の仮想ラインにおいて加熱溶融して、第一の切欠部を含む側板、袖片部及び接合端部を起立させるとともに第一の切欠部より下方に溶融状態でない余剰部を確保し、前記第一の仮想ラインに直交し、且つ対向する二箇所の第一の切欠部を通る第二の仮想ラインにおいて加熱溶融して前記袖片部と接合端部を溶着し、且つ、溶融した前記余剰部を前記側板の少なくとも外側又は内側へはみ出させる第一工程と、はみ出した前記溶融状態の余剰部を、前記側板の少なくとも外側又は内側の一方から押圧し、充填部として境界ラインの間隙部を埋めて、畝状の閉塞部を形成する第二工程と、を備えたことを特徴とする包装用容器の製造方法としたから、あらかじめ前記合成樹脂シートに形成した第一の切欠部のV字状に合わせて、当該余剰部によって境界ラインの間隙部を埋めるために必要十分な樹脂量を確保して、熱板を当接することで溶融した余剰部を効率よく形成し、間隙部を埋めて形成される充填部を一体に形成でき、当該充填部を有する畝状の閉塞部によって、液密性を確保することができる。また、この際に、当該余剰部によって境界ラインの間隙部を埋めるために必要十分な樹脂量としていることから、時間短縮につながり、生産性を向上させることができる。また、V字状の第一の切欠部が熱板の先端を案内することで寸法精度を確保し、安定した溶着性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例1に係る包装用容器の斜視図である。
図2】本発明の実施例1に係る包装用容器の展開図である。
図3】本発明の実施例1に係る包装用容器を構成する低発泡合成樹脂シートの第一の仮想ラインに対して熱板を押圧させる状態を示す斜視図である。
図4】本発明の実施例1に係る包装用容器を構成する低発泡合成樹脂シートにおける(a)前側板及び後側板を起立させた状態を示す斜視図、並びに熱板、(b)余剰部を示す一部拡大説明図である。
図5】本発明の実施例1に係る包装用容器を構成する低発泡合成樹脂シートにおける(a)第一の切欠部に対して熱板を押し当てた状態を示す説明図(b)熱板の押圧によって余剰部が溶融状態となった第一の切欠部を有する低発泡合成樹脂シートを示す斜視図である。
図6】本発明の実施例1に係る包装用容器における閉塞部を形成する過程を示す簡略図であり(a)未加熱状態の袖片部と接合端部との関係を示す簡略図、(b)溶融状態の袖片部と接合端部との関係を示す簡略図、(c)溶融状態の袖片部と接合端部とを当接させた状態であり、間隙部が生じた状態を示す簡略図、(d)間隙部に対して余剰部を埋め込み、充填部を形成した状態を示す簡略図、(e)片側の間隙部に対してのみ余剰部を埋め込み、充填部を形成した状態を示す簡略図である。
図7】本発明の実施例1に係る包装用容器について、補強枠部及び補強角部を取着した形態とした包装用容器の斜視図である。
図8】本発明の実施例2に係る包装用容器における容器本体を構成する低発泡合成樹脂シートの展開図である。
図9】本発明の実施例2に係る包装用容器における(a)一の形態の第二側板部、(b)他の形態の第二側板部を示す説明図である。
図10】本発明の実施例2に係る包装用容器を構成する低発泡合成樹脂シートの第一の仮想ラインに対して熱板を押圧させる状態を示す斜視図である。
図11】本発明の実施例2に係る包装用容器における容器本体の組立状態を示す斜視図であって、第一の仮想ラインにおいて第一右側板、第一左側板、各袖片部を、熱板を用いて熱曲げにより起立させた後、当該熱板によって第二の仮想ラインに熱罫線を形成する前の状態を示す斜視図である。
図12】本発明の実施例2に係る包装用容器における容器本体の組立状態を示す斜視図であって、熱板によって第二の仮想ラインに熱罫線を形成する状態を示す斜視図である。
図13】本発明の実施例2に係る包装用容器における容器本体の組立状態を示す斜視図であって、熱板の押圧によって余剰部が溶融状態となった状態を示す低発泡合成樹脂シートを示す斜視図である。
図14図13の状態において、前側板を起立させ、袖片部と接合端部とを溶着し、閉塞部を形成した状態を示す斜視図である。
図15図14の状態において、後側板を起立させ、袖片部と接合端部とを溶着し、閉塞部を形成した状態を示す斜視図である。
図16】本実施例2に係る包装用容器に取着される補強角部を示す(a)斜視図(b)正面図(c)右側面図(d)底面図である。
図17】容器本体に対して第二側板(第二右側板及び第二左側板)を取着する状態を示す斜視図である。
図18】本発明の実施例2に係る包装用容器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の各実施例の詳細について説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更、公知技術の付加等が可能である。
【実施例1】
【0024】
本発明の実施例1に係る包装用容器1は、図1に示すように、主として搬送用として使用するものであり、液密性を有するトレイ等として使用できるものである。
【0025】
本実施例1に係る包装用容器1は、図2及び図3に示すように、主として一枚の低発泡合成樹脂シートから構成されるものである。当該低発泡合成樹脂シートは、底板2と、該底板2に夫々連続する前側板3、後側板4、右側板5、左側板6の各側板を有する。
【0026】
隣接する前記側板相互は、袖片部5A、6A又はこれに対応する接合端部3A、4Aを有する。具体的には、相互に対向する前記右側板5及び前記左側板6には、夫々の両端部における上端から下端に亘り前記袖片部5A、6Aを連続して有する。また相互に対向する前側板3及び後側板4には、夫々の両端に前記袖片5A、6Aと溶着するための接合端部3A、4Aを有する。
【0027】
前記袖片部5Aは、その端面において基端側から傾斜する傾斜面50と該傾斜面50に連続する垂直面51を有する。前記袖片部6Aは、その端面において基端側から傾斜する傾斜面60及び該傾斜面60に連続する垂直面61を有する。
【0028】
前記接合端部3Aは、その端面において基端側から傾斜する傾斜面30と該傾斜面30に連続する垂直面31を有する。前記接合端部4Aは、その端面において基端側から傾斜する傾斜面40及び該傾斜面40に連続する垂直面41を有する。展開状態における前記接合端部3A、4Aと袖片部5A、6Aの夫々隣接する傾斜面間のなす角度は概ね90°としてある。
【0029】
また、図2図3図4(b)に示すように、上記接合端部3A、4A、袖片部5A、6Aの各傾斜面50、60及び垂直面51、61に沿う内面及び外面を余剰部70としてある。
【0030】
前記袖片部5A、6Aと接合端部3A、4Aとは溶着によって液密性を確保した状態で接合されている。
即ち、当該接合部分として境界ラインが表れる側板(前側板3及び後側板4)の内面側、外面側、及び上端面において、当該境界ラインに生じる間隙8に対して、前記余剰部70aが溶融状態で充填部71として埋め込まれた構成となることで、当該境界ラインが液密に閉塞される畝状の閉塞部7を構成するものである。尚、本発明において、合成樹脂の「溶融状態」とは、加熱された合成樹脂の少なくとも一部が溶融され他物との接触により変形可能な状態であり、且つ、溶融により合成樹脂自体が流失しない程度に保持されている状態をいう。
【0031】
上記実施例1に係る包装用容器1は以下の手順によって製造できる。
先ず、平面視四角形状の低発泡合成樹脂シートに対して、その四隅及び他の部分を切除する。また、前記第一の切欠部12a、12bにおけるV字状の先端位置よりも前後方向において中央よりとなる位置を通り左右方向に連続する仮想ラインを、第一の仮想ライン100とする。前記第一の仮想ライン100は、底面2と前側板3及び後側板4を区画し、右側板5と袖片部5Aを区画し、左側板6と袖片部6Aを区画するための仮想ラインである。
【0032】
また、前記四隅の切除によって形成された切欠部分は、図2及び図3に示すように、各側板相互を分離し且つ袖片部5A、6A及び接合端部3A、4Aを形成する範囲となる。
当該四隅の切除によって、袖片部5A、6A及び接合端部3A、4Aの各下端側に傾斜面30、40、50、60を夫々形成するためにV字状に切り込まれた第一の切欠部12a、12bが形成される。
また、前記第一の仮想ライン100の両端位置に頂点を有するV字状の切欠部13(以下、第二の切欠部13)を形成する。
【0033】
次に、図3に示すように、断面V字輪郭を有し所定温度に加熱された長尺の熱板Pを、前記低発泡合成樹脂シートの第一の仮想ライン100に対して押し当てることにより、当該低発泡合成樹脂シートを溶融させて熱罫線を形成して底板2と前側板3及び後側板4を区画し、右側板5と袖片部5Aを区画し、左側板6と袖片部6Aを区画する。前記長尺の熱板Pの所定温度は、素材の融点以上であり、且つ、当該素材の変色や分解等を生じない温度とすることができる。例えば、低発泡合成樹脂シートの素材がポリプロピレンである場合には、170℃以上、ポリエチレンである場合には、120℃〜130℃以上とすることができる。
【0034】
ここで上記熱板Pを前記低発泡合成樹脂シートの第一の仮想ライン100に対して押し当てる際には、当該第一の仮想ライン100自体が何ら形成されていないところ、当該熱板Pの断面V字となるその先端p1を、図2及び図3に示す前記二箇所の第二の切欠部13に合わせて配置することで当該第一の仮想ライン100上に位置決めできる。
【0035】
熱板Pの下降によって形成された熱罫線が溶融状態であるうちに、当該熱罫線を基準として当該側板を底板2から起立させる。この際に、前側板3若しくは後側板4に加えて、当該各側板の各両端位置となる袖片部5A、6Aも起立させる(図4(a)参照。)。
底板2に対して前側板3、後側板4、袖片部5A、6Aが夫々起立した状態で溶着され、その後自然冷却され、固定される。
【0036】
この一連の動作によって、当初の四隅の切除によって形成された第一の切欠部12a、12bは、図4に示すように、袖片部5A、6Aの下端部及び接合端部3A、4Aの下端部として上方に開口するV字溝となる。
【0037】
次に、底板2と左側板6若しくは右側板5を区画する。区画は、断面V字の輪郭を含む熱板Pを使用する。前記V字溝間を通る第二の仮想ライン101に対して熱板Pを配置して熱罫線L(図5(b)参照。)を形成する。
【0038】
この熱罫線Lの形成に伴って、当該熱罫線Lのみならず、V字溝とこれに連続する袖片部5A、6Aの端面、接合端部3A、4Aの端面は溶融状態となる。
形成された熱罫線Lが加熱されて溶融した状態において、当該熱罫線Lを基準として当該左側板6若しくは右側板5(これらの袖片部5A、6Aを含む。)を起立させ、袖片部5A、6Aの各端面と接合端部3A、4Aの各端面とを押し付けて、固着させる。
【0039】
ここで、前記第一の仮想ライン100は、第一の切欠部12a、12bにおけるV字状の先端位置よりも前後方向において中央よりとなる位置を通り左右方向に連続するものとしたから、前記余剰部70は図4(b)に示すように、第一の切欠部12a、12bにおけるV字形状に沿う部分、及びこれに連続して当該V字形状の先端位置と第一の仮想ライン100との間となる部分、及び接合端部3A、4Aに沿う部分において確保され、袖片部5A、6Aと、接合端部3A、4Aとの溶着において、前記余剰部70から溶融した余剰の樹脂が発生する。
【0040】
各側板は、プラスチック段ボールではなく低発泡合成樹脂シートで形成されていることから、溶融した余剰部70aは、当該低発泡合成樹脂シート内に入り込むことができず、当該袖片部5A、6Aと接合端部3A、4Aとの境界ラインから膨出する(図5図6(a)〜(d)参照。)。
【0041】
続けて、膨出した余剰部70aの樹脂が冷却しないうちに、前側板3及び後側板4の内側及び外側から当該膨出した余剰部70aの樹脂を任意の押圧手段によって押圧し、境界ラインの一部に生じた間隙部に対して当該膨出した樹脂を充填部71として埋め込んで一体とし、当該前側板3及び後側板4の内側、外側、上端部に連続する畝状の閉塞部7を形成する。この閉塞部7の形成によって、本実施例1に係る包装用容器1が完成する(図1参照。)。
【0042】
当該閉塞部7はその表面が押圧され、図6(d)に示すように嵩h2を抑えた形状となることで、不用意に他物が当該閉塞部7に引っ掛かることを抑制できる。
また、併せて外観体裁を向上させることができる。また閉塞部7の形成に伴って境界ラインにおける樹脂の密度を高めて強度を向上させることができる。
【0043】
また、図7に示すように、本実施例1に係る包装用容器1の上部に対して公知の補強枠部R1及び補強角部R2を取付けて包装用容器1の強度を向上させることもできる。
更に、輸送時、保管時等においても安定的な段積み(重ね積み)を行うこともできる。
【実施例2】
【0044】
次に本発明の実施例2に係る包装用容器1(図18参照。)について説明する。
尚、上記実施例1についても共通する本発明の主要な畝状の閉塞部7を用いた液密構造を嵩高い箱に対して形成するためには、溶融箇所の長さに応じた大型の熱板が必要となる。このため、実施例1に開示した包装用容器1を嵩高とすべく、大型の熱板を用いて嵩高に形成した包装用容器1、及びその製造方法も本発明に含まれる。しかし一方で、以下に示す本実施例2に係る包装用容器1の構造及びその製造方法は、実施例1と共通した比較的小型の熱板Pを用いて、実施例1と共通する液密性の構成を備えた上、収容量を大幅に向上できるものである。この結果、以下に示す実施例2に係る包装用容器1及びその製造方法によれば、嵩高の包装用容器1について大型の熱板を用いずに、上記実施例1と同程度の液密構造及びその製造方法を実現でき、収容量を確保した上で、製造コスト及び製品の低廉化が可能となる利点を有する。
【0045】
本実施例2に係る包装用容器1は、図8図9(a)に示すように、容器本体10を低発泡合成樹脂シートからなるものとし、対向する一対の側板の一部を構成する第二側板部11(第二右側板11a及び第二左側板11b)を、前記容器本体10とは別体として中空プラスチック段ボール板で形成し、これらを組み合わせて構成したものである。
尚、図9(b)は二つ折りとして利用するバリエーションの第二側板部11であり、より座屈強度を高めたものである。また中空プラスチックダンボール板を二つ折り構造とすることによって、折り返し部分から当該中空プラスチックダンボール板内への水の浸入を抑えるとともに、水上がり(毛細管現象に伴う中空プラスチックダンボール板内での水の上昇)を防止できるものである。
【0046】
底板2から概ね5cm〜6cm程度の高さ位置までとなる底部1a(図15図18参照。)は、実施例1と概ね同様の液密構造を有している。即ち、底板2と、該底板2に夫々連続する前側板3、後側板4、第一右側板55、第一左側板65の各側板を有しており、前記第一右側板55及び第一左側板65には、夫々の両端に前記袖片部5A、6Aを連続して設けてある。当該袖片部5A、6Aは、前記第一右側板55若しくは前記第一左側板65の下端から上端に亘って形成されている(図13参照。)。
【0047】
また相互に対向する前側板3及び後側板4には、夫々の両端に前記袖片部5A、6Aと溶着するための接合端部5B、6Bを備えている。
前記袖片部5A、6Aと接合端部5B、6Bは溶着によって接合してある。当該接合部分として境界ラインが表れる側板(前側板3及び後側板4)の内面側、外面側、及び上端面には、当該境界ラインに形成される僅かな間隙部8に対して樹脂を充填部71として埋め込んで一体とし、当該間隙部8を閉塞した畝状の閉塞部7を備えている。
【0048】
そして前記底部1aの上方に連続する中央部1bにおいては、前側面及び後側面側については、前側板3及び後側板4が夫々底部1aから上方へ連続して延設されており、概ね30cmの高さを確保してある。これに対して右側面及び左側面側においては、前側板3及び後側板4の側端から連続し前記第一右側板55若しくは第一左側板65の上端に当接する側支片部14を備えている。そして右側面の二つの側支片部14の内側面は第二右側板11aの外側面と固着されている。
また左側面の二つの側支片部14の内側面は第二左側板11bの外側面と固着されている。
更に底部1aにおける第一右側板55の内側面と第二右側板11aの外側面、第一左側板65の内側面と第二左側板11bの外側面は当接した構成である。
【0049】
上記実施例2に係る包装用容器1は以下の手順によって製造できる(図8図17参照。)。
尚、上記実施例1に係る包装用容器1では一枚の低発泡合成樹脂シートから、底板2、前後左右の各側板5、6を一体として得るものであったが、本実施例2に係る包装用容器1においては、当該一枚の低発泡合成樹脂シートから底板2、嵩高の前側板3及び後側板4と、嵩の低い第一右側板55及び第一左側板65、各側支片部14、各袖片部5A、6Aを得るものとしており、上記実施例2に係る包装用容器1で示したように嵩高となる第二右側板11a、第二左側板11bは別に構成する。
【0050】
先ず、図8に示すように、平面視四角形状の低発泡合成樹脂シートに対して、四隅等において、側支片部14、袖片部5A、6A、第一右側板55、第一左側板65を形成するために不要な部分を切除する。
尚、この状態においては、図中の仮想ライン(第一の仮想ライン100、第二の仮想ライン101)は罫線等としては形成されていない。
【0051】
図8において、中央に位置する底板2の上端に連続して後側板4を有する。前記底板2の下端に連続して前側板3を有する。前記底板2の右端に連続して第一右側板55を有する。前記側板の左端に連続して第一左側板65を有する。
また、前側板3及び後側板4の各右端及び左端に、側支片部14及び袖片部5A、6Aを有する。袖片部5A、6Aは側支片部14よりも底板2側に配置され、且つ、第一右側板55若しくは第一左側板65に連続している。
【0052】
第一右側板55と袖片部5Aとの連続部分となる位置、及び第一左側板65と袖片部6Aとの連続部分となる位置に、夫々、V字状に切り込まれた第一の切欠部12a、12bを形成する。
また、各側支片部14と袖片部5A、6Aとの境界には直線状の切込15を設けてある。
切込15の先端位置は、前記第一の切欠部12a、12bのV字先端位置よりも当該低発泡合成樹脂シートの幅方向における中央寄り位置としてある。これによって、切込15の先端位置150相互を通る仮想ラインを形成すると、前記第一切欠部のV字先端位置150に隣接して余剰部70を確保することができる。
【0053】
また前側板3、後側板4の夫々の上端部位置に、補強角部R2を取り付けるための第三の切欠部107及び第一の舌片部109と補強枠部R1を取り付けるための延設部103を形成する。延設部103の基端(即ち、前側板3及び後側板4との境界ライン)として、切込線102を設けてある。当該切込線102は浅目(概ね当該低発泡合成樹脂シートの厚みに対して半分未満程度の深さであり、当該低発泡膨性樹脂シートを折り返しできる限度の深さ)の切込としている。当該深さの切込とすることによって、当該切込線102の形成に伴う不慮の切断を防止するとともに、折曲後の反発弾性を確保してある。
【0054】
次に、実施例1と同様に、断面V字輪郭を有し且つ所定温度(即ち、素材の融点以上で当該素材の変色や分解等を生じない温度で当該素材を加工可能な温度)に加熱された長尺の熱板を、前記低発泡合成樹脂シートにおける左右の側支片部14及び袖片部5A、6Aを区画する第一の仮想ライン100に対して押し当てることにより、当該低発泡合成樹脂シートを溶融させて熱罫線を形成する。当該第一の仮想ライン100は、前記各切込15の前記先端位置150を結ぶラインとすることができる。
【0055】
当該第一の仮想ライン100を設定することにより、当該第一の仮想ライン100と前記第一の切欠部12a、12bのV字先端位置との間に一定の距離が保持される。これによって、余剰部70が確保される。
【0056】
形成された熱罫線が溶融した状態において、当該熱罫線を基準として第一右側板55、第一左側板65、及び袖片部5A、6Aを底板2、前側板3及び後側板4から起立させ、当該底板2、前側板3及び後側板4に固着させる。
【0057】
そして当該状態において自然冷却し、固定する。この一連の動作によって、第一の切欠部12a、12bは、図11に示すように、袖片部5A、6Aの下端位置及び接合端部の下端位置において上方に開口するV字溝となる。
【0058】
次に、図12及び図13に示すように、所定温度に加熱された前記長尺の熱板を、前記低発泡合成樹脂シートにおける第二の仮想ライン101に対して押し当てることにより、当該低発泡樹脂シートを溶融させて熱罫線を形成する。
当該第二の仮想ライン101は、前記第一の切欠部12a、12bによって形成されたV字溝を結ぶラインとすることができる。
【0059】
この熱罫線の形成に伴って、袖片部5A、6Aの各端面(傾斜面50、60及び垂直面51、61)、並びに、第一右側板55及び第一左側板65における各接合端部5B、6Bの端面(傾斜面550、650及び垂直面551、651)が溶融状態となる。
形成された熱罫線が溶融した状態において、図14に示すように、当該熱罫線を基準として当該前側板3及び後側板4(これらの袖片部5A、6Aを含む。)を起立させ、前記袖片部5A、6Aの各端面(各傾斜面50、60及び垂直面51、61)と第一右側板55及び第一左側板65の前記各接合端部5B、6B(特に、各傾斜面550、650及び垂直面551、651)とを押し付けて、固着させる。
【0060】
本実施例2においては、前記第一の仮想ライン100と前記第一の切欠部12a、12bのV字先端位置との間に一定の距離が保持されていることで、溶融状態でない余剰部70が確保されており、前記袖片部5A、6Aは、第一右側板55及び第一左側板65における各接合端部5B、6Bとの溶着において、溶融した余剰の樹脂が発生することとなる(図6参照。ここで、本実施例2においては、図6の参照に際して符号3Aを5Bに読み替える。)。
【0061】
本実施例2においても、各側板は低発泡合成樹脂シートで形成されているため、溶融した余剰部70aは、当該低発泡合成樹脂シート内に入り込むことができず、当該袖片部5A、6Aと接合端部5B、6Bとの境界ラインから膨出することとなる。
【0062】
続けて、膨出した樹脂が冷却しないうちに、各袖片部5A、6Aと前記第一右側板55及び第一左側板65における内側及び外側から当該膨出した樹脂部分を押圧手段によって押圧し、境界ラインの一部に生じた間隙部8を当該膨出した樹脂を埋め込み一体とし、当該第一右側板55若しくは第一左側板65と各袖片部5A、6Aとの境界ラインに連続する畝状の閉塞部7を形成する。この閉塞部7の形成によって、本実施例2に係る包装用容器1の底部1aが完成する(図15参照。)。
【0063】
次に図17に示すように、第一右側板55、各袖片部5A、その上方の側支片部14における各内面に対して第二右側板11aを当接し、前記側支片部14と第二右側板11aとを固着する。また、第一左側板65、各袖片部6A、その上方の側支片部14における各内面に第二左側面11bを当接し、前記側支片部14と第二左側板11bとを固着する。
固着方法は、超音波を用いた接着や、熱溶着等、従来公知の任意の固着方法を使用できる。
【0064】
本実施例2における前記第二右側板11a及び第二左側板11bは共通した形状を有しており、プラスチック段ボールによって構成される。当該プラスチック段ボールは、二枚の対向する構成板110と、該構成板110間に所定間隔で平行して設けられる複数のリブ111によって構成される。前記複数のリブ111間には空間部111aを有する(図17参照。)。
【0065】
また本実施例2における第二右側板11a及び第二左側板11bは、いずれも当該リブ111の長手方向を上下方向とする。そして上部には、補強角部R2を取り付けるための第四の切欠部113及び第二の舌片部114と補強枠部R1を取り付けるための延設部105を有する。延設部105の基端には切込線104を設けてある。当該切込線104は浅目(概ね当該プラスチックダンボールを折り返しできる限度の深さ)の切込としている。
また上部側に把手穴106を設けてある。
【0066】
本実施例2における第二右側板11a及び第二左側板11bの上記固着方法においては、熱溶着によるものとしている。
当該構成により、底面から袖片部5A、6Aの上端までの高さにおいては実施例1と同様に、境界ラインを閉塞する畝状の閉塞部7によって液密性が保持される。
そして当該液密性が確保されたうえで、当該高さを超える高さにおいては、収納量を確保される。
【0067】
第二右側板11a、第二左側板11bを各側支片部14と固着したのち、上端の四隅に、補強角部R2を取着する。
本実施例2に係る補強角部R2は、本体部R20の下方に開口する舌片保持部R22を有し、前記前側板3若しくは後側板4の上端における前記第一の舌片部109と前記第二右側板11a若しくは第二左側板11bの上端における第二の舌片部114を合わせて保持し、且つ、両端部に補強枠部R1を被着可能な接続部R21を備えたものである。前記第三の切欠部107及び第四の切欠部113に前記接続部を嵌合させ、前記前側板3若しくは後側板4の上端と、前記第二右側板11a若しくは第二左側板11bの上端を保持することで、位置決めできる(図16図17参照。)。
【0068】
そして、上端の四隅に補強角部R2を被着した後、当該第二右側板11a及び第二左側板11b、前側板3、後側板4の各縁部に補強枠部R1を取り付ける。補強枠部R1は断面略コの字状の保持部R10を有しており、当該保持部R10の内面に係止爪R11を備えている。当該第二右側板11a及び第二左側板11b、前側板3、後側板4の夫々の上端における延設部103、105を、矢印sで示すように前記切込線102、104を基準に内側へ折曲した状態で、前記補強枠部R1の断面コの字の開口を下方として被着し、折曲された延設部103、105の端部が前記係止爪R11に係止させた状態とする。また補強角部R2の両端は当該補強枠部R1により保持され、補強角部R2が補強枠部R1と共に当該包装用容器1から離脱不能となり、上端部の強度が確保される(図16図18参照。)。
【0069】
上記実施例2においては把手穴106を設けてあるが、当該把手穴106はそのまま使用してもよいし、別途図示されない把手部を取着することもできる。
取着される把手部は把持を容易とすべく開口するものであってもよいし、包装用容器1の上部において閉口するものとすることもできる。
【0070】
また上記実施例2に開示した延設部103に形成する切込線102にあっては、浅目の切込としたが、本発明においては当該切込に限るものではなく、不慮の切断の防止、曲げやすさ、折曲後の反発弾性が確保できれば、押し罫線、リード罫等の他の罫線とすることもできる。
【0071】
また上記実施例2においては、底部1aにおける第一右側板55の内側面と第二右側板11aの外側面、第一左側板65の内側面と第二左側板11bの外側面は当接した構成であるが、本発明は上記実施例2の構成に限定されるものではなく、当該第一右側板55の内側面と第二右側板11aの外側面、及び、第一左側板65の内側面と第二左側板11bの外側面は、超音波溶着等を用いて固着した構成とすることができる。
【0072】
また上記実施例2においては第二右側板11a及び第二左側板11bについてプラスチック段ボールを用いた構成としたが、本発明は上記構成に限定されるものではない。
例えば、軽量な収容物に対して使用するための包装用容器で強度を過度に求めないのであれば、例えば、低発泡合成樹脂シート、若しくは、無発泡合成樹脂シート等を用いたものとすることもできる。
また、上記プラスチック段ボールは、実施例2に示した平行リブを有するものに限らず、
例えば、円錐台形状の山を千鳥格子に配置した二枚のポリプロピレン製プラスチックシートをピンの先端同士で溶着させた後、表面に面板を張り合わせた四層構造のプラスチックシート(商品名「ツインコーン」(登録商標))等、種々の公知のプラスチック段ボールを用いることができる。
【0073】
また、第二右側板11a及び第二左側板11bは、図9(b)に示すように長手中央に幅方向へ連続する折曲部112を設け、折り畳んで二重として用いる構成とすることもできる。当該構成によれば、強度を更に向上させるとともに、中空プラスチックダンボール内への液体の浸入を抑制することもできる。
【0074】
また本発明の畝状の閉塞部7は、境界ラインに沿って隙間を埋めて閉塞するものであれば足り、外形の凹凸や平面の有無等の形状については特に限定するものではない。例えば、幅挟の畝状部分が二本並列した形状であってもよいし、一本の太幅の畝状部分で構成されていてもよい。本発明の畝状とは、いわゆる畝の形状のみを示すものでなく、全体に境界ラインを連続して被覆する形状で足りる。
また上記実施例においては、図6(d)に開示したように内側及び外側の両方から閉塞処理を行う構成を示したが、本発明によれば、内側及び外側のいずれか一方のみから閉塞処理を行う構成とすることもできる。
【0075】
また、一方で、当該閉塞部7は境界ラインからの嵩が低ければ低いほど、他物との接触の可能性が低減され、より好ましい。また、底面側への当該閉塞部7のはみ出しをなくすことによって載置時の水平が保持され安定性を確保できる点で、より好ましい。
【0076】
また本発明の包装用容器1の製造方法の行程中、畝状の閉塞部7を形成する第二工程において、境界ラインの間隙部8を埋めるためにされる押圧操作は、制御機器を用いた押圧手段によって押圧処理するものであってもよいし、耐熱性を有する治具その他の物を用いて作業者による手作業による処理を行うものとすることもできる。
また、当該閉塞部7における充填部71の形成処理は、実施例に示した外側、内側の双方から行うものであるものに限らず、外側、内側のいずれか一方のみから充填処理を行うものも含む。
【0077】
また本発明の包装用容器1は、上記実施例において低発泡合成樹脂シートを開示しているが、具体的には、例えば発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン等を好適な低発泡合成樹脂シートとして用いることができる。また、無発泡合成樹脂シートとすることもできる。
低発泡合成樹脂シートの場合、発泡倍率は、概ね8倍発泡成形品以下であればよく、より好ましくは1.3倍〜5倍発泡成形品であることが望ましい。尚、発泡倍率が8倍を超えた場合には、包装用容器1の強度に問題を生じ破損の虞が高くなるため好ましくない。
【0078】
上記の通り、本発明における液密構造は、基本的に無発泡合成樹脂シート若しくは低発泡合成樹脂シートによる包装用容器によりなされるものであり、中空プラスチックダンボールによるものではない。
【0079】
また、本発明によれば、実施例1における第二の切欠部13のように、仮想ラインの位置決めとして設けることによって、当該仮想ラインに一致させて形成される熱罫線(熱V罫線)から無発泡合成樹脂シート若しくは低発泡合成樹脂シートを折り返す際に、当該切欠部13によって折り返し部分の樹脂材料が外方へ突出した突出部を生じないものとすることができる。
これによって、外観体裁が良好となることに加え、組立作業時において載置位置の位置合わせ等を行う際には、前記突出部によって生じる載置位置の位置合わせの阻害を防止し、より円滑に組立作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0080】
1 包装用容器
1a 底部
1b 中央部
10 容器本体
100 第一の仮想ライン
101 第二の仮想ライン
102 切込線
103 延設部
104 切込線
105 延設部
106 把手穴
107 第三の切欠部
109 第一の舌片
11 第二側板(第二右側板及び第二左側板)
11a 第二右側板
11b 第二左側板
110 構成板
111 リブ
111a 空間部
112 折曲部
113 第四の切欠部
114 第二の舌片
12a 第一の切欠部(V字の切欠部、前側板側)
12b 第一の切欠部(V字の切欠部、後側板側)
13 第二の切欠部
14 側支片部
15 切込
150 先端位置
2 底板
3 前側板
30 傾斜面
31 垂直面
3A 接合端部(実施例1)
4 後側板
40 傾斜面
41 垂直面
4A 接合端部(実施例1)
5 右側板
50 傾斜面
51 垂直面
55 第一右側板
550 傾斜面(実施例2)
551 垂直面(実施例2)
5A 袖片部
5B 接合端部(実施例2)
6 左側板
60 傾斜面
61 垂直面
65 第一左側板
650 傾斜面(実施例2)
651 垂直面(実施例2)
6A 袖片部
6B 接合端部(実施例2)
7 閉塞部
70 余剰部(70a 余剰部(溶融状態))
71 充填部
8 間隙部
L 熱罫線
P 熱板
p1 先端
s 矢印
R1 補強枠部
R10 保持部
R11 係止爪
R2 補強角部
R20 本体部
R21 接続部
R22 舌片保持部
h2 嵩
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18