特許第6670225号(P6670225)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670225
(24)【登録日】2020年3月3日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】脚フレーム及びそれを用いた椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/00 20060101AFI20200309BHJP
   A47C 4/04 20060101ALI20200309BHJP
   A47C 5/10 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   A47C7/00 A
   A47C4/04 C
   A47C5/10 L
   A47C5/10 K
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-223730(P2016-223730)
(22)【出願日】2016年11月17日
(65)【公開番号】特開2018-79123(P2018-79123A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2019年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】391014114
【氏名又は名称】三惠工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081547
【弁理士】
【氏名又は名称】亀川 義示
(72)【発明者】
【氏名】安田 府佐雄
【審査官】 井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−121383(JP,A)
【文献】 特開2010−154915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 4/04 − A47C 4/50
A47C 5/04 − A47C 5/10
A47C 7/00
A47B 91/00 − A47B 91/16
B21D 7/00 − B21D 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床に接する接床部と、該接床部の端部から連続して直角にわん曲するわん曲部を介して立ち上がる起立部を含む中空パイプ製の脚フレームであって、該脚フレームのパイプ内には、上記わん曲部の内側に位置するパイプ壁と外側に位置するパイプ壁を結ぶ内方リブが形成され、該内方リブは、パイプ壁に連接する連接部と、各連接部から対向するパイプ壁に向かって側方に傾斜して延びる傾斜部を有し、対向する傾斜部の先端は屈曲した関節部で連結されていることを特徴とする脚フレーム。
【請求項2】
上記内方リブはパイプ内に並列して設けられ、上記関節部が上記パイプの仮想中心線上に離れて位置している請求項1に記載の脚フレーム。
【請求項3】
上記請求項1又は2に記載の脚フレームを前脚に用いた椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床に接する接床部の端部から上方に立ち上がる起立部を有する脚フレームに関し、特にその脚フレームを用いた椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属パイプ製の折りたたみ椅子は、基本的に、前脚と、開脚可能に該前脚に連結した後脚と、前脚と後脚に支持された座部を有し、前脚の上方には背凭れが形成されている。上記前脚、後脚を構成する脚フレームは、断面円形、長円形、楕円形等の金属パイプ材料を用いて、床に接する接床部の両端を直角にわん曲し上方に立ち上がる起立部を形成してほぼ略U字形に形成されるが、金属材料として中空のアルミパイプ材料を用いた場合には、加工時に割れやヒケを生じやすく、成形がむずかしい。具体的には、接床部20の両端を直角にわん曲させる際に、わん曲部21に亀裂やヒケを生じたり、凹みを生じたり、全体が少し細くなる現象がみられる(図3参照)。中実の金属材料の場合には屈曲しても形状に大きな相違が生じないが、そのような椅子では重量が増して実用上問題がある。
【0003】
上記のような問題に対して、アルミパイプ材料を曲げ加工する際に曲げ加工に対する強度を高めるため補強手段を中空部内に設けて補強するようにした椅子や、曲げ加工時に生じる外壁の厚さの減厚分を補うよう少なくとも曲げ加工部分の外側部分に厚さの厚い増厚部を設けた椅子が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。上記特許文献1に記載の補強手段は、屈曲部の曲率半径方向に関して対向する2つの平坦部22に対して垂直に直線状に延びるリブ23や円弧形状のリブであり、このリブをパイプの内面に一体的に設けてある。このようなリブでは、パイプを曲げ加工するとき、垂直状のリブに沿って圧縮応力がかかり、応力が大きいと座屈するおそれがあるので、リブ部分の肉厚を厚くして強度を増大させなければならい。そのように構成すると、椅子の重量が増してしまう。また、補強した部分が強くなると、相対的にその周りが弱くなるから、補強部の周囲が図4に示すようにヒケる現象を生じるおそれがある。円弧形状のリブの場合も、リブの外周とパイプの接点は一点となり、接点の部分が強くなるのでその周囲にヒケを生じるおそれがある。さらに、円弧形状のリブでは、大きな圧縮応力が作用したとき、リブのどの部分が変形するのか見込みができず、変形をコントロールすることができない。
【0004】
また、上記特許文献2に記載の椅子のように、曲げ加工の際に肉厚が減少する分に合わせてアルミパイプ材料のパイプ壁の一部の肉厚を増大させることは、正確にコントロールすることがむずかしく、かつ面倒であり、経済的に得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−154915号公報(段落0022、0038、図3図7
【特許文献2】特開2013−121383号公報(請求項1、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決課題は、椅子の脚フレームように、アルミパイプ材料を曲げ加工して脚フレームを成形する際、曲げ部に割れやヒケを生じることがなく、軽量化と強度を増すことができる脚フレーム及びそれを使用した椅子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、床に接する接床部と、該接床部の端部から直角にわん曲するわん曲部を介して立ち上がる起立部を含む中空パイプ製の脚フレームであって、該脚フレームのパイプ内には、上記わん曲部の内側に位置するパイプ壁と外側に位置するパイプ壁を結ぶ内方リブが形成され、該内方リブは、パイプ壁に連接する連接部と、各連接部から対向するパイプ壁に向かって側方に傾斜して延びる傾斜部を有し、対向する傾斜部の先端は屈曲した関節部で連結されていることを特徴とする脚フレーム及びこの脚フレームを使用した椅子が提供され、上記課題が解決される。
【0008】
また、本発明によれば、上記内方リブはパイプ内に並列して設けられ、上記関節部が上記パイプの仮想中心線上に離れて位置している上記脚フレーム及びこの脚フレームを使用した椅子が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記のように構成され、脚フレームのわん屈部の内側に位置するパイプ壁と外側に位置するパイプ壁を結んで内方リブを形成し、内方リブに、パイプ壁に連接する連接部と、各連接部からパイプ壁に対して側方に傾斜して対向する壁に向かって延びる傾斜部を設け、対向する傾斜部の先端を屈曲した関節部で連結したから、脚フレームを曲げ加工する際、パイプの曲げ部に作用する圧縮応力は、内方リブで支承され、大きな応力がかかったときには連接部及び傾斜部を介して関節部に伝達され、該関節部を中心として傾斜部が弾性的に撓むことにより応力を吸収することができる。そのため、内方リブの連接部部分の強度を周囲のパイプ壁の強度よりも強くする必要がなく、パイプの断面形状を維持した状態で割れやヒケを生じさせずに、きれいに曲げ加工することができる。また、このときの応力の吸収作用は、関節部を中心として生じるので、応力吸収の調整は、リブの肉厚を変えることでコントロールすることができる。
【0010】
また、上記内方リブをパイプ内に並列して設け、関節部をパイプの仮想中心線上に離れて位置するように配置すると、内方リブの間に広い間隙を確保することができ、該リブ間に適宜の部材を挿入するような構成にも使用することができるし、リブ自体の変形も自由になって、パイプの変形を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例を示す椅子の斜視図。
図2図1のA−A線拡大断面図。
図3】従来の脚フレームの説明図。
図4】他の従来例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、各種の金属パイプ製の椅子、特に折りたたみ椅子に好適に適用することができる。一実施例を示す図1においては、椅子1は、前脚2と、該前脚2に折りたたみ可能に連結された後脚3および座部4と、前脚の上方に設けた背部5を具備し、公知のように座部4の先部を持って上方に回動すると、前脚2、後脚3を折りたたむことができ、その状態から座部の先部を下方に回動すると、前脚、後脚が開き、座部がほぼ水平状態に展開され、着座することができる。
【0013】
上記前脚、後脚を構成する脚フレーム6は、実施例では中空のアルミパイプ材料で構成され、床に接する接床部7と、該接床部7の端部を曲げ加工して該接床部から連続して直角にわん曲するわん曲部8を介して立ち上がる起立部9を有している。図1に示す実施例では、椅子の前後方向が長径になるように断面楕円形のパイプ材料を用いているが、断面円形や断面長円形のパイプ材料であってもよい。
【0014】
上記前脚2を構成する脚フレーム6のパイプ内には、図2に示すように、上記わん曲部の内側に位置するパイプ壁10と外側に位置するパイプ壁11を結ぶ内方リブ12が形成されている。この内方リブ12は、両端にパイプ壁10、11に連接する連接部13があり、各連接部13から対向するパイプ壁に向かって側方に傾斜する傾斜部14が延びており、対向する傾斜部14の先端は、パイプのほぼ中央を水平に通る仮想中心線15上に位置する屈曲した関節部16で連結されている。上記内方リブは二つのリブを並列して設けてあり、上記関節部16間が側方に離れるように対向状態に設けられている。上記パイプ壁10、11と傾斜部14間の内角及び二つの傾斜部14を連結する屈曲した関節部16の内角は約120度に形成され、図2に示すように二つの内方リブとパイプ壁により、全体として断面ほぼ正六角形をなすように設けられている。なお、内方リブの厚さは、図に示す実施例ではパイプ壁よりも少し薄く形成してあるが、この厚さは、曲げ加工の際の圧縮応力を考慮して適宜にすることができる。
【0015】
上記の構成により上記アルミパイプ材料を曲げ加工して脚フレームを製造するとき、わん曲部8のパイプ壁10、11に作用する圧縮応力は、内方リブで支承され、大きな圧縮応力がかかると、連接部13、傾斜部14を介して関節部16に伝達された応力は、該関節部16の内角が変化する方向に傾斜部14が撓むことにより吸収され、パイプが割れたり、連接部側が突出したり、その周辺のパイプ壁がヒケて凹むということがなく、一様に曲げ加工することができる。
【0016】
上記実施例においては、二つの内方リブを並列して二つ設けてあるが、内方リブの数はパイプの大きさに応じて適宜増減することができ、また傾斜部や関節部の箇所も複数箇所に設けて応力を吸収することもできる。
【0017】
上記実施例においては、椅子に適用した実施例を説明したが、本発明は椅子以外の金属製パイプ材料、特にアルミパイプで脚フレームを構成するテーブル、スタンド類、デスクその他適宜の家具等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0018】
1 椅子
2 前脚
3 後脚
4 座部
6 脚フレーム
7 接床部
8 わん曲部
9 起立部
12 内方リブ
13 連接部
14 傾斜部
16 関節部
図1
図2
図3
図4