特許第6670235号(P6670235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6670235可逆的ヘパリン分子、その製法及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6670235
(24)【登録日】2020年3月3日
(45)【発行日】2020年3月18日
(54)【発明の名称】可逆的ヘパリン分子、その製法及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/44 20060101AFI20200309BHJP
   C12P 19/26 20060101ALI20200309BHJP
   C08B 37/10 20060101ALI20200309BHJP
   A61K 31/727 20060101ALI20200309BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20200309BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20200309BHJP
【FI】
   C12P19/44
   C12P19/26
   C08B37/10
   A61K31/727
   A61P7/02
   A61P13/12
【請求項の数】15
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2016-521505(P2016-521505)
(86)(22)【出願日】2014年6月17日
(65)【公表番号】特表2016-523535(P2016-523535A)
(43)【公表日】2016年8月12日
(86)【国際出願番号】US2014042683
(87)【国際公開番号】WO2014204929
(87)【国際公開日】20141224
【審査請求日】2017年6月16日
(31)【優先権主張番号】61/835,875
(32)【優先日】2013年6月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501345323
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL
(73)【特許権者】
【識別番号】502263411
【氏名又は名称】レンセラール ポリテクニック インスティチュート
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116090
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 和彦
(73)【特許権者】
【識別番号】518363255
【氏名又は名称】エヌユーテック ベンチャーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100110249
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 昭
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】ジエン リウ
(72)【発明者】
【氏名】ヤングメイ シュウ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ジェイ リンハート
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ハリス
【審査官】 井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/088416(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0035787(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/116048(WO,A1)
【文献】 Science,2011年,Vol.334,p.498-501
【文献】 The Journal of Biological Chemistry,2010年,Vol.285, No.44,p.34240-34249
【文献】 Proc Natl Acad Sci USA,2012年,Vol.109, No.14,p.5265-5270
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 19/44
C12P 19/26
A61K 31/727
A61P 7/02
A61P 13/12
C08B 37/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) 単糖基質を提供する段階、
(2) 酵素としてN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ及びヘパロサンシンターゼ-2、基質としてグルクロン酸(GlcA)及びN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)を用いて、この単糖基質を六糖に伸長する段階、
(3) N-スルホトランスフェラーゼ(NST)、3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)及び塩基を用いて、この六糖上のN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)残基(複数可)を、N-スルホグルコサミン(GlcNS)残基(複数可)に変換してN−硫酸化六糖を提供する段階、
(4) 該N−硫酸化六糖をC5-エピメラーゼ(C5-epi)を用いてエピマー化する段階、
(5) 得られたエピマー化六糖を2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)と3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化して下式の六糖を提供する段階、
【化40】
(式中、MSは、単糖を表す。)
(6) ヘパロサンシンターゼ-2及び基質グルクロン酸(GlcA)を用いて、この六糖基質を七糖に伸長する段階、
(7) N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ及び基質N-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)を用いて、この七糖基質を八糖に伸長する段階、
(8) 得られた糖をC5-エピメラーゼ(C5-epi)を用いてエピマー化する段階、
(9) 得られた八糖を2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)と3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化する段階、
(10) N-スルホトランスフェラーゼ(NST)、3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)及び塩基を用いて、この八糖上のN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)残基(複数可)を、N-スルホグルコサミン(GlcNS)残基(複数可)に変換して八糖基質を生成する段階、
(11) 下記を下記の順で使用して、この八糖基質を十糖に伸長する段階、
(i) ヘパロサンシンターゼ-2及びグルクロン酸(GlcA)、並びに
(ii) N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ及びN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)
(12) 該十糖をC5-エピメラーゼ(C5-epi)を用いてエピマー化する段階、
(13) 得られたエピマー化十糖を2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)と3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化する段階、
(14) N-スルホトランスフェラーゼ(NST)、3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)及び塩基を用いて、得られた硫酸化十糖上のN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)残基(複数可)を、N-スルホグルコサミン(GlcNS)残基(複数可)に変換して十糖基質を生成する段階、
(15)下記を下記の順で使用して、この十糖基質を十二糖に伸長する段階、
(i) ヘパロサンシンターゼ-2及びグルクロン酸(GlcA)、並びに
(ii) N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ及びN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)又はN-アセチルグルコサミン(NAcGlc)
(16) 該十二糖をC5-エピメラーゼ(C5-epi)を用いてエピマー化する段階、
(17) 下記の反応により、該十二糖を硫酸化する段階、
(i) 2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)及び3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS);
(ii) 6-O-スルホトランスフェラーゼ(6-OST)及び3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS);及び
(iii) 3-O-スルホトランスフェラーゼ(3-OST)及び3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS);
から成るヘパリン化合物を合成する方法。
【請求項2】
(1) 下記構造
【化22】
(式中、Rは、水素原子又は検知可能なタグを表す。)を有する六糖を提供する段階、
(2) ヘパロサンシンターゼ-2及び基質グルクロン酸(GlcUA)を用いて、この六糖基質を七糖に伸長する段階、
(3) N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ及び基質N-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)を用いて、この七糖基質を八糖に伸長する段階、
(4) 該八糖をC5-エピメラーゼ(C5-epi)を用いてエピマー化する段階、
(5) 該八糖を2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)と3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化する段階、
(6) N-スルホトランスフェラーゼ(NST)、3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)及び塩基、任意に水酸化リチウム、を用いて、得られた硫酸化八糖上のN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)残基(複数可)を、N-スルホグルコサミン(GlcNS)残基(複数可)に変換して八糖基質を提供する段階、
(7) ヘパロサンシンターゼ-2及びN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、並びに基質としてグルクロン酸(GlcUA)及びN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)を用いて、この八糖基質を十糖に伸長する段階、
(8) 該十糖をC5-エピメラーゼ(C5-epi)を用いてエピマー化する段階、
(9) 得られたエピマー化十糖を2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)と3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化する段階、
(10) N-スルホトランスフェラーゼ(NST)、3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)及び塩基、任意に水酸化リチウム、を用いて、得られた硫酸化十糖上のN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)残基(複数可)を、N-スルホグルコサミン(GlcNS)残基(複数可)に変換して十糖基質を提供する段階、
(11) ヘパロサンシンターゼ-2及びN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、並びに基質としてグルクロン酸(GlcUA)及びN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)を用いて、この十糖基質を十二糖に伸長する段階、
(12) 該十二糖をC5-エピメラーゼ(C5-epi)を用いてエピマー化する段階、
(13) 下記を用いて、得られたエピマー化十二糖を硫酸化する段階、
(i) 2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)及び3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS);
(ii) 6-O-スルホトランスフェラーゼ(6-OST)及び3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS);及び
(iii) 3-O-スルホトランスフェラーゼ(3-OST)及び3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS);
から成る下記ヘパリン化合物を合成する方法。
【化17】
(式中、Rは、水素原子又は検知可能なタグを表す。)
【請求項3】
前記ヘパリン化合物が、可逆的抗凝固活性を有する合成された低分子量ヘパリン化合物であって、該ヘパリン化合物の抗凝固活性がプロタミンによって可逆的である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
塩基が水酸化リチウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
6-O-スルホトランスフェラーゼ(6-OST)が6-O-スルホトランスフェラーゼ1および/または3(6-OST-1および/または6-OST-3)である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
3-OSTが3-O-スルホトランスフェラーゼ-5(3-OST-5)である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
グリコシルトランスフェラーゼが、Pasteurella multocida由来の大腸菌K5(KfiA)および/またはヘパロサンシンターゼ-2(pmHS2)のN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
塩基が水酸化リチウムである、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
グリコシルトランスフェラーゼが、Pasteurella multocida由来の大腸菌K5(KfiA)および/またはヘパロサンシンターゼ-2(pmHS2)のN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼからなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
検出可能なタグがパラ−ニトロフェニルである、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
下式
【化19】
(式中、Rは、水素原子又は検知可能なタグを表す。)、又は下式
【化18】
(式中、Rは、水素原子又は検知可能なタグを表す。)で表される、可逆的抗凝固活性を有する合成材料である低分子量ヘパリン化合物。
【請求項12】
前記検出可能なタグがパラ−ニトロフェニルである、請求項11に記載のヘパリン化合物。
【請求項13】
ヘパリン化合物から成る、抗凝固療法を必要とする患者を治療するための医薬組成物であって、該ヘパリン化合物が
【化15】
及び
【化16】
(式中、Rは、水素原子又は検知可能なタグである。)から選択され、該ヘパリン化合物の抗凝固活性がプロタミンによって可逆的である、医薬組成物。
【請求項14】
前記患者が静脈血栓塞栓症に苦しむ、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記患者が腎障害である、請求項13に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2013年6月17日に出願された米国仮特許出願61/835,875の優先権を主張し、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
この発明は、国立衛生研究所によって与えられた助成金番号1R01HL094463の下で、米国政府の支援によってなされたものである。そのため米国政府は本発明に一定の権利を有する。
本明細書で開示される主題は、ヘパリン化合物の合成に関する。より具体的には、本明細書で開示される主題は、可逆的抗凝固活性を有する構造的に均質な低分子量ヘパリンの化学酵素的合成法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘパラン硫酸(HS)は、細胞表面及び細胞外マトリックスの至る所にある成分である。ヘパラン硫酸は、胚発生及び血液凝固を含む広い範囲の生理学的及び病態生理学的機能を統制し、ウイルス感染を促進することができる(Esko and Selleck (2002) Annu. Rev. Biochem. 71, 435-471; Liu and Thorp (2002) Med. Res. Rev. 22, 1-25)。ヘパラン硫酸(HS)は、与えられたプロセスに関係する特定のタンパク質と相互作用することによって、その生物学的効果を発揮する(Capila and Lindhardt (2002) Angew. Chem. Int. Ed. 41, 390-412)。ヘパラン硫酸(HS)は、N-スルホ基及びO-スルホ基の両方を含む1→4-結合グルコサミン及びグルクロン酸/イズロン酸単位から成る高度に荷電した多糖である。ヘパラン硫酸(HS)内の特徴的な糖の配列は、その標的タンパク質に対するヘパラン硫酸(HS)の結合特異性を決定することができる(Linhardt (2003) J. Med. Chem.46, 2551-2564)。ヘパラン硫酸(HS)の特殊な形態であるヘパリンは、抗凝固薬として一般的に使用されている。従って、ヘパリン化合物及びヘパラン硫酸(HS)の合成のための新規な方法は、改善された抗凝固薬理学的効果を有する抗凝固薬や他のヘパラン硫酸(HS)関連薬物を開発している人々の大きな関心を集めている。
【0003】
ヘパリンは50年以上にわたって抗凝固薬として用いられてきた(Mackman, 2008)。現在ヘパリンは3つの形で販売されている:分画されていない(UF)ヘパリン(平均分子量:〜14,000Da);低分子量(LMW)ヘパリン(平均分子量:〜6,000Da);及び合成ULMWヘパリン五糖ARIXTRA(R)(分子量:1508.3Da)。UFヘパリンは、その比較的短い半減期及び腎障害のある患者に対する安全性のため、手術や腎臓透析で使用されている(Hirsh et al., 2007)。低分子量ヘパリンとULMWヘパリンARIXTRA(R)は、10年以上前に導入されたが、抗凝固剤の投与量がより予測可能であること、半減が長いこと及び骨粗しょう症のリスクが低いことなどの理由から(Weitz and Linkins, 2007)、高リスク患者の静脈血栓症を防止するためにますます重要な役割を果たしてきている(Tohu et al, 2004; Weitz, 2010)。低分子量ヘパリンに関する最近の研究により、第二世代の低分子ヘパリンであるベミパリンナトリウムがヨーロッパで承認され(Martinez-Gonzalez and Rodriguez, 2010)、一般的な低分子量ヘパリンであるM-エノキサパリンが米国で承認された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
UFヘパリンは、ブタ腸又はウシ肺から単離され、低分子量(LMW)ヘパリンは、この動物源のUFヘパリンの化学的又は酵素的分解により得られる。不純物を含むヘパリンの世界的大流行は、動物源のヘパリン及び低分子量(LMW)ヘパリンの信頼性と安全性に懸念を生じさせている(Guerrini et al., 2008; Liu et al., 2009)。その結果、安価に合成ヘパリンを生産する新しい方法が非常に望まれている(Peterson et al., 2009)。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここでは、本発明のいくつかの実施形態を示し、多くの場合、これらの実施形態の変形例や置換例を示す。これらは、多数の様々な実施形態の単なる例示である。ある実施形態の一又はそれ以上の代表的特徴への言及も同様に例示である。このような実施形態は、典型的には、言及した(複数の)特徴の有無にかかわらず存在することができ、同様に、これらの特徴は、ここに示されているかどうかにかかわらず、ここに開示する本発明の他の実施形態に適用することができる。過度の繰り返しを避けるために、ここでは、これらの特徴の全ての可能な組み合わせを示さない。
【0006】
いくつかの実施形態において、ヘパリン化合物を合成する方法が提供される。このような方法は、いくつかの実施形態において、(1) 糖基質を提供する段階、(2) この糖基質を所望の又は所定の長さの糖に伸長する段階、(3) エピマー化反応を行う段階、及び(4) 一又はそれ以上の硫酸化反応を行い、その結果ヘパリン化合物が合成される段階から成る。いくつかの実施形態において、この伸長段階では、グリコシルトランスフェラーゼを用いることができる。いくつかの実施形態において、このグリコシルトランスフェラーゼは、大腸菌K5のN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(KfiA)及び/又はパスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)由来のヘパロサンシンターゼ-2(pmHS2)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、この伸長段階は、グルクロン酸(GlcA)、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、及びN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)からなる群から選択される一以上の単糖を用いることから成ることができる。
【0007】
いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物を合成する方法は、更に、N-スルホトランスフェラーゼ(NST)と3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて、この六糖又は七糖上のN-スルホトランスフェラーゼ基質残基をN-スルホグルコサミン(GlcNS)残基に変換する段階を含むことができる。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物を合成する方法は、一又はそれ以上の変換反応において、更に、塩基を用い、この塩基は、任意に水酸化リチウム又はトリエチルアミン、CH3OH及び/又はH2Oの混合物であることができる。
【0008】
いくつかの実施形態において、このエピマー化反応は、C5-エピメラーゼ(C5-epi)を用いることを含む。いくつかの実施形態において、この硫酸化反応は、2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)を用いることを含む。いくつかの実施形態において、この硫酸化反応は、6-O-スルホトランスフェラーゼ(6-OST)、任意に6-OST-1及び/又は6-OST-3を用いることを含む。いくつかの実施形態において、この硫酸化反応は、3-O-スルホトランスフェラーゼ(3-OST)、任意に3-OST-1及び/又は3-OST-5を用いることを含む。
【0009】
このヘパリン化合物を合成する方法は、30%以上の収率を有することができる。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される合成方法によって合成されたヘパリン化合物が提供される。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物は、約1500ダルトン(Da)〜約6000ダルトン(Da)の範囲の分子量を有することができる。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物は、抗凝固活性を有することができる。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物は、約5nM〜約30nMの範囲のアンチトロンビンに対する結合親和性を有することができる。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物は、本明細書に記載の条件下でIC50が約10 ngml-1〜約40 ngml-1の範囲の抗Xa活性を有することができる。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物は、検出可能な抗IIa活性を有しないことができる。
【0010】
いくつかの実施形態において、(1) 単糖基質を提供する段階、(2) 酵素としてN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ及びヘパロサンシンターゼ-2、基質としてグルクロン酸(GlcA)及びN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)を用いて、この単糖基質を六糖に伸長する段階、(3) N-スルホトランスフェラーゼ(NST)、3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)及び塩基を用いて、この六糖上のN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)残基(複数可)を、N-スルホグルコサミン(GlcNS)残基(複数可)に変換する段階、(4) 該六糖をC5-エピメラーゼ(C5-epi)を用いてエピマー化する段階、(5) 該六糖を2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)と3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化する段階、(6) 該六糖を6-O-スルホトランスフェラーゼ(6-OST)、任意に6-O-スルホトランスフェラーゼ6-O-スルホトランスフェラーゼ1及び/又は3(6-OST-1及び/又は6-OST-3)、及び3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化する段階、及び(7) 該六糖を3-O-スルホトランスフェラーゼ(3-OST)、任意に3-O-スルホトランスフェラーゼ1(3-OST-1)、及び3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化し、ヘパリン化合物を合成する段階、から成るヘパリン化合物を合成する方法が提供される。いくつかの実施形態において、この単糖基質は、1-O-(パラニトロフェニル)グルクロニド(GlcA-pnp)である。
【0011】
いくつかの実施形態において、この方法により製造されるヘパリン化合物は、抗凝固活性を有する。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物は、このヘパリン化合物は、約5nM〜約9nMの範囲のアンチトロンビンに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物は、本明細書に記載の条件下でIC50が約10 ngml-1〜約20 ngml-1の範囲の、任意に約14 ngml-1の抗Xa活性を有する。
【0012】
(1) 単糖基質を提供する段階、(2) 酵素としてN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ及びヘパロサンシンターゼ-2、基質としてグルクロン酸(GlcA)及びN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)を用いて、この単糖基質を六糖に伸長する段階、(3) N-スルホトランスフェラーゼ(NST)、3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)及び塩基、任意に水酸化リチウム、を用いて、この六糖上のN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)残基(複数可)を、N-スルホグルコサミン(GlcNS)残基(複数可)に変換する段階、(4) 該六糖をC5-エピメラーゼ(C5-epi)を用いてエピマー化する段階、(5) 該六糖を2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)と3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化する段階、(6) N-スルホトランスフェラーゼ(NST)、3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)及び塩基、任意に水酸化リチウム、を用いて、この六糖上のN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)残基(複数可)を、N-スルホグルコサミン(GlcNS)残基(複数可)に変換する段階、(7) ヘパロサンシンターゼ-2及び基質グルクロン酸(GlcA)を用いて、この六糖基質を七糖に伸長する段階、(8) N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ及び基質N-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)を用いて、この七糖基質を八糖に伸長する段階、(9) 該八糖をC5-エピメラーゼ(C5-epi)を用いてエピマー化する段階、(10) 該八糖を2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)と3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化する段階、(11) N-スルホトランスフェラーゼ(NST)、3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)及び塩基、任意に水酸化リチウム、を用いて、この八糖上のN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)残基(複数可)を、N-スルホグルコサミン(GlcNS)残基(複数可)に変換する段階、(12) 該八糖を6-O-スルホトランスフェラーゼ(6-OST)、任意に6-O-スルホトランスフェラーゼ1及び/又は3(6-OST-1及び/又は6-OST-3)、及び3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化する段階、(13) 該八糖を3-O-スルホトランスフェラーゼ(3-OST)、任意に3-O-スルホトランスフェラーゼ1(3-OST-1)、及び3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化し、ヘパリン化合物を合成する段階、から成るヘパリン化合物を合成する方法が提供される。
【0013】
いくつかの実施形態において、この方法により製造されるヘパリン化合物は、抗凝固活性を有する。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物は、このヘパリン化合物は、約5nM〜約11nMの範囲のアンチトロンビンに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物は、本明細書に記載の条件下でIC50が約12 ngml-1〜約22 ngml-1の範囲の、任意に約17 ngml-1の抗Xa活性を有する。
【0014】
(1) 単糖基質を提供する段階、(2) 酵素としてN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ及びヘパロサンシンターゼ-2、基質としてグルクロン酸(GlcA)及びN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)を用いて、この単糖基質を六糖に伸長する段階、(3) N-スルホトランスフェラーゼ(NST)、3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)及び塩基、任意に水酸化リチウム、を用いて、この六糖上のN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)残基(複数可)を、N-スルホグルコサミン(GlcNS)残基(複数可)に変換する段階、(4) 該六糖をC5-エピメラーゼ(C5-epi)を用いてエピマー化する段階、(5) 該六糖を2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)と3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化する段階、(6) N-スルホトランスフェラーゼ(NST)、3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)及び塩基、任意に水酸化リチウム、を用いて、この六糖上のN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)残基(複数可)を、N-スルホグルコサミン(GlcNS)残基(複数可)に変換する段階、(7) ヘパロサンシンターゼ-2及び基質グルクロン酸(GlcA)を用いて、この六糖基質を七糖に伸長する段階、(8) N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ及び基質N-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)を用いて、この七糖基質を八糖に伸長する段階、(9) 該八糖をC5-エピメラーゼ(C5-epi)を用いてエピマー化する段階、(10) 該八糖を2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)と3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化する段階、(11) N-スルホトランスフェラーゼ(NST)、3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)及び塩基、任意に水酸化リチウム、を用いて、この八糖上のN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)残基(複数可)を、N-スルホグルコサミン(GlcNS)残基(複数可)に変換する段階、(12) ヘパロサンシンターゼ-2及びN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、並びに基質としてグルクロン酸(GlcA)及びN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)を用いて、この八糖基質を十糖に伸長する段階、(13) 該十糖をC5-エピメラーゼ(C5-epi)を用いてエピマー化する段階、(14) 該十糖を2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)と3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化する段階、(15) N-スルホトランスフェラーゼ(NST)、3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)及び塩基、任意に水酸化リチウム、を用いて、この十糖上のN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)残基(複数可)を、N-スルホグルコサミン(GlcNS)残基(複数可)に変換する段階、(16) 該十糖を6-O-スルホトランスフェラーゼ(6-OST)、任意に6-O-スルホトランスフェラーゼ1及び/又は3(6-OST-1及び/又は6-OST-3)、及び3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化する段階、及び(17) 該十糖を3-O-スルホトランスフェラーゼ(3-OST)、任意に3-O-スルホトランスフェラーゼ1(3-OST-1)、及び3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化し、ヘパリン化合物を合成する段階、から成るヘパリン化合物を合成する方法が提供される。
【0015】
いくつかの実施形態において、この方法により製造されるヘパリン化合物は、抗凝固活性を有する。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物は、このヘパリン化合物は、約4nM〜約6nMの範囲のアンチトロンビンに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物は、本明細書に記載の条件下でIC50が約10 ngml-1〜約20 ngml-1の範囲の、任意に約15 ngml-1の抗Xa活性を有する。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物は、スタブリン-2(Stablin-2)に媒介されたエンドサイトーシスを受けやすい。なお、15%又はそれ以上の割合でエンドサイトーシスされるヘパリン化合物は、スタブリン-2に媒介されたエンドサイトーシスを受けやすい。
【0016】
(1) 単糖基質を提供する段階、(2) 酵素としてN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ及びヘパロサンシンターゼ-2、基質としてグルクロン酸(GlcA)及びN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)を用いて、この単糖基質を六糖に伸長する段階、(3) N-スルホトランスフェラーゼ(NST)、3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)及び塩基、任意に水酸化リチウム、を用いて、この六糖上のN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)残基(複数可)を、N-スルホグルコサミン(GlcNS)残基(複数可)に変換する段階、(4) 該六糖をC5-エピメラーゼ(C5-epi)を用いてエピマー化する段階、(5) 該六糖を2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)と3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化する段階、(6) N-スルホトランスフェラーゼ(NST)、3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)及び塩基、任意に水酸化リチウム、を用いて、この六糖上のN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)残基(複数可)を、N-スルホグルコサミン(GlcNS)残基(複数可)に変換する段階、(7) ヘパロサンシンターゼ-2及び基質グルクロン酸(GlcA)を用いて、この六糖基質を七糖に伸長する段階、(8) N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ及び基質N-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)を用いて、この七糖基質を八糖に伸長する段階、(9) 該八糖をC5-エピメラーゼ(C5-epi)を用いてエピマー化する段階、(10) 該八糖を2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)と3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化する段階、(11) N-スルホトランスフェラーゼ(NST)、3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)及び塩基、任意に水酸化リチウム、を用いて、この八糖上のN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)残基(複数可)を、N-スルホグルコサミン(GlcNS)残基(複数可)に変換する段階、(12) ヘパロサンシンターゼ-2及びN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、並びに基質としてグルクロン酸(GlcA)及びN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)を用いて、この八糖基質を十糖に伸長する段階、(13) 該十糖をC5-エピメラーゼ(C5-epi)を用いてエピマー化する段階、(14) 該十糖を2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)と3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化する段階、(15) N-スルホトランスフェラーゼ(NST)、3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)及び塩基、任意に水酸化リチウム、を用いて、この十糖上のN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)残基(複数可)を、N-スルホグルコサミン(GlcNS)残基(複数可)に変換する段階、(16) ヘパロサンシンターゼ-2及びN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、並びに基質としてグルクロン酸(GlcA)及びN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)を用いて、この十糖基質を十二糖に伸長する段階、(17) 該十二糖をC5-エピメラーゼ(C5-epi)を用いてエピマー化する段階、(18) 該十二糖を2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)と3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化する段階、(19) 該十二糖を6-O-スルホトランスフェラーゼ(6-OST)、任意に6-O-スルホトランスフェラーゼ1及び/又は3(6-OST-1及び/又は6-OST-3)、及び3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化する段階、及び(20) 該十二糖を3-O-スルホトランスフェラーゼ(3-OST)、任意に3-O-スルホトランスフェラーゼ1(3-OST-1)、及び3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化し、ヘパリン化合物を合成する段階、から成るヘパリン化合物を合成する方法が提供される。
【0017】
いくつかの実施形態において、この方法により製造されるヘパリン化合物は、抗凝固活性を有する。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物は、このヘパリン化合物は、約23nM〜約37nMの範囲のアンチトロンビンに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物は、本明細書に記載の条件下でIC50が約25 ngml-1〜約45 ngml-1の範囲の、任意に約35 ngml-1の抗Xa活性を有する。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物は、15%又はそれ以上の割合で、スタブリン-2(Stablin-2)に媒介されるエンドサイトーシスを受けやすい。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物の抗凝固活性は、プロタミンによって部分的に可逆的であって、20ug/ml又はそれ以下のプロタミンの存在下で、50%又はそれ以上の割合で可逆的な抗凝固活性を有するヘパリン化合物は、部分的に可逆的である。
【0018】
(1) 単糖基質を提供する段階、(2) 酵素としてN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ及びヘパロサンシンターゼ-2、基質としてグルクロン酸(GlcA)及びN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)を用いて、この単糖基質を六糖に伸長する段階、(3) N-スルホトランスフェラーゼ(NST)、3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)及び塩基、任意に水酸化リチウム、を用いて、この六糖上のN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)残基(複数可)を、N-スルホグルコサミン(GlcNS)残基(複数可)に変換する段階、(4) 該六糖をC5-エピメラーゼ(C5-epi)を用いてエピマー化する段階、(5) 該六糖を2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)と3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化する段階、(6) N-スルホトランスフェラーゼ(NST)、3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)及び塩基、任意に水酸化リチウム、を用いて、この六糖上のN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)残基(複数可)を、N-スルホグルコサミン(GlcNS)残基(複数可)に変換する段階、(7) ヘパロサンシンターゼ-2及び基質グルクロン酸(GlcA)を用いて、この六糖基質を七糖に伸長する段階、(8) N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ及び基質N-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)を用いて、この七糖基質を八糖に伸長する段階、(9) 該八糖をC5-エピメラーゼ(C5-epi)を用いてエピマー化する段階、(10) 該八糖を2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)と3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化する段階、(11) N-スルホトランスフェラーゼ(NST)、3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)及び塩基、任意に水酸化リチウム、を用いて、この八糖上のN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)残基(複数可)を、N-スルホグルコサミン(GlcNS)残基(複数可)に変換する段階、(12) ヘパロサンシンターゼ-2及びN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、並びに基質としてグルクロン酸(GlcA)及びN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)を用いて、この八糖基質を十糖に伸長する段階、(13) 該十糖をC5-エピメラーゼ(C5-epi)を用いてエピマー化する段階、(14) 該十糖を2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)と3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化する段階、(15) N-スルホトランスフェラーゼ(NST)、3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)及び塩基、任意に水酸化リチウム、を用いて、この十糖上のN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)残基(複数可)を、N-スルホグルコサミン(GlcNS)残基(複数可)に変換する段階、(16) ヘパロサンシンターゼ-2及びN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、並びに基質としてグルクロン酸(GlcA)及びN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)を用いて、この十糖基質を十二糖に伸長する段階、(17) 該十二糖をC5-エピメラーゼ(C5-epi)を用いてエピマー化する段階、(18) 該十二糖を2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)と3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化する段階、(19) 該十二糖を6-O-スルホトランスフェラーゼ(6-OST)、任意に6-O-スルホトランスフェラーゼ1及び/又は3(6-OST-1及び/又は6-OST-3)、及び3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化する段階、(20) 該十二糖を3-O-スルホトランスフェラーゼ(3-OST)、任意に3-O-スルホトランスフェラーゼ1(3-OST-1)、及び3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化し、ヘパリン化合物を合成する段階、及び(21) 該十二糖を3-O-スルホトランスフェラーゼ(3-OST)、任意に3-O-スルホトランスフェラーゼ1(3-OST-5)、及び3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いて硫酸化し、ヘパリン化合物を合成する段階、から成るヘパリン化合物を合成する方法が提供される。
【0019】
いくつかの実施形態において、この方法により製造されるヘパリン化合物は、抗凝固活性を有する。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物は、このヘパリン化合物は、約12nM〜約44nMの範囲のアンチトロンビンに対する結合親和性を有する。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物は、本明細書に記載の条件下でIC50が約10 ngml-1〜約30 ngml-1の範囲の、任意に約21 ngml-1の抗Xa活性を有する。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物は、15%又はそれ以上の割合で、スタブリン-2(Stablin-2)に媒介されるエンドサイトーシスを受けやすい。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物の抗凝固活性は、20ug/ml又はそれ以下のプロタミンの存在下で、50%又はそれ以上の割合で、プロタミンによって可逆的である。
【0020】
いくつかの実施形態において、治療すべき患者を提供する段階、及びこの患者に抗凝固活性を有するヘパリン化合物を投与する段階から成る患者を治療する方法であって、このヘパリン化合物が、本明細書に開示されたヘパリン化合物から成る、又は可逆的抗凝固活性を有する合成された低分子量ヘパリン化合物から成り、このヘパリン化合物の抗凝固活性がプロタミンによって可逆的であり、この抗凝固活性は1ug/mlのプロタミンの存在下で、50%又はそれ以上が反転される、方法が提供される。いくつかの実施形態において、この患者は静脈血栓塞栓症に苦しんでいてもよい。いくつかの実施形態において、この患者は腎障害であってもよい。いくつかの実施形態において、この患者はヒトであってもよい。
【0021】
いくつかの実施形態において、抗凝固療法を必要とする患者を治療する方法であって、(1) 抗凝固療法を必要とする患者を提供する段階、(2) この患者に抗凝固活性を有するヘパリン化合物を投与する段階、(3) ヘパリンによって誘起される血小板減少症について患者をモニターする段階、及び(4) この患者がヘパリンによって誘起される血小板減少症に苦しむ場合に、このヘパリン化合物の抗凝固活性を反転させるために解毒剤をこの患者に投与する段階から成る方法が提供される。いくつかの実施形態において、この患者は静脈血栓塞栓症に苦しむ。いくつかの実施形態において、この患者は腎障害である。いくつかの実施形態において、この患者はヒトである。いくつかの実施形態において、ヘパリン化合物の抗凝固活性を反転させるための解毒剤はプロタミンである。
【0022】
いくつかの実施形態において、可逆的抗凝固活性を有する合成された低分子量ヘパリン化合物であって、このヘパリン化合物の抗凝固活性がプロタミンによって可逆的であり、この抗凝固活性が1ug/mlのプロタミンの存在下で、約50%又はそれ以上が反転される、ヘパリン化合物が提供される。
いくつかの実施形態において、肝臓に媒介された循環からの除去を受けやすい、合成された低分子量ヘパリン化合物が提供される。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物は、15%又はそれ以上の割合で、スタブリン-2(Stablin-2)に媒介されるエンドサイトーシスを受けやすい。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物は、腎障害の患者への投与に適している。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物は、少なくとも1つの3-O硫酸基を有する。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物はドデカマーである。
従って、本発明の目的は、可逆的抗凝固活性を有する低分子量ヘパリン化合物及びその製法を提供することである。上記の本発明の目的は、本発明によって全体的又は部分的に達成され、他の目的は、以下に記載される添付の図面及び実施例と関連して、説明が進むにつれて明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明は、以下の図面を参照することによって、より良く理解されるであろう。図中の構成要素は、必ずしも縮尺通りではなく、また強調されるものでもなく、本発明の原理を(しばしば図式によって)説明するためのものです。これらの図面において、同様の参照番号は異なる図面についても対応する部分を示す。添付図面で例証される実施形態を参照することによって、本発明はさらに理解されることができる。例証された実施形態は、本発明を実施するためのシステムの単なる例示であるが、本発明の操作の構成及び方法は、両方とも、一般的には、図面及びその記載によって、その目的及び利点とともに、より容易に理解されるであろう。これらの図面は、添付された特許請求の範囲又はその後補正された特許請求の範囲に示される本発明の範囲を限定することを目的としたものではなく、単に本発明を、明確にし、例示するものに過ぎない。
本発明をより完全に理解するために、以下の図面を参照されたい:
【0024】
図1】化合物1〜9の化学構造を示す図である。(図1Aは化合物1、図1Bは化合物2、図1Cは化合物3、図1Dは化合物4、図1Eは化合物5、図1Fは化合物6、図1Gは化合物7、図1Hは化合物8、図1Iは化合物9)
図2】化合物1と6の合成の概略図である。
図3】本明細書に開示される低分子量ヘパリン(LMWH)の合成の概略図である。この合成は、いくつかの態様で、六糖(化合物6)から出発することができ、八糖(化合物7)、十糖(化合物8)及び十二糖(化合物9)に変換されることができ、それぞれ化合物2, 3及び4が合成される。化合物4から化合物5への変換は、3-OST-5修飾によって達成することができる。
図4】合成低分子量ヘパリン(LMWH)の除去、抗第Xa因子活性、及びプロタミン中和の感度についてのデータのグラフを示す。図4Aは、マウスモデルにおいて肝臓に保持された35S標識された合成低分子量ヘパリン(LMWH)の割合のヒストグラムである。化合物1と比較して、試験したすべての化合物は、化合物2及びエノキサパリンを除いて、肝臓において有意に高い保持率を示した(**** P <0.0001)。図4Bは、インビトロ条件下で、異なる濃度のプロタミンの存在下で、合成低分子量ヘパリン(LMWH)の第Xa因子活性をプロットする。図4Cは、ex vivoでの、プロタミンによる抗第Xa因子活性の可逆性のヒストグラムを示す。試験化合物による第Xa因子活性の阻害は、プロタミンの存在下で有意に影響された(* P <0.05及び**** P <0.0001)。図4A〜4Cに示されるデータは、3〜5の平均値である(±s.d)。図4Dは、尾切断後の尾出血時間に対する、化合物5及びプロタミンの効果をプロットする。プロタミンは、化合物5によって誘導された一次出血時間を著しく短縮した(** P <0.01)。各データポイントは、試験群における個々のマウスからの測定値を表す。
図5】Flp-In-293細胞における35S標識された合成低分子量ヘパリン(LMWH)のエンドサイトーシスのヒストグラムである。この細胞を、スタブリン-2(Stablin-2)受容体(190-HARE)を発現するプラスミドで安定的にトランスフェクトした。内部移行値は、35S標識化合物の内部移行値の合計から非特異的内部移行値のバックグラウンドを差し引くことによって算出した。このバックグラウンドは、35S標識化合物を、少なくとも100倍の過剰分子の非標識未分画ヘパリン(UFH)と混合することにより決定した。化合物1と比較すると、全ての試験化合物はエンドサイトーシスが有意に高い傾向がある(**** = P <0.0001)。
図6】化合物1〜5、エノキサパリン及び未分画ヘパリン(UFH)の抗第Xa因子活性を示す折れ線グラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
明細書及び特許請求の範囲の全体を通して、記載された化学式又は名称は、全ての光学異性体及び立体異性体、並びにこの異性体及び混合物が存在する場合にはラセミ混合物を包含するものとする。
【0026】
I.定義
特に断らない限り、本明細書中で使用される成分量、反応条件などを表す全ての数字は全ての場合において用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。
用語「約」は、質量、重量、時間、容積、温度、圧力、濃度又はパーセンテージのような測定可能な値に関して使用される場合、いくつかの実施形態では±20%、いくつかの実施形態では±10%、いくつかの実施形態では±5%、いくつかの実施形態では±1%、及びいくつかの実施形態では±0.5%の変動を包含することを意味するものとし、このような変動は開示された方法を実行するのに適切である。従って、特に断らない限り、本明細書に記載される数値パラメータは、本発明によって得られる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。
【0027】
本明細書で使用される用語「及び/又は」は、物を列挙するときに使用される場合、単独で又は組み合わせて存在する物を示す。従って、例えば、「A、B、C、及び/又はD」という表現は、個別にA、B、C、及びDを含むだけでなく、A、B、C、及びDの任意の及び全ての組み合わせ並びにサブコンビネーションを含む。
用語「comprising(から成る)」は、「including(含む)」、「containing(含む)」又は「characterized by(により特徴付けられる)」と同様に、包含的又は制約が無く、付加的な、非列挙の要素又は方法段階を排除しない。「comprising(から成る)」は、名付けられた要素は存在するが、他の要素も加えることが可能であり、それでも特許請求の範囲の構成物や方法を形成することができることを意味する技術用語である。
用語「consisting of(のみから成る)」は、請求の範囲に明記してない全ての要素、段階又は内容物を除外する。成句「consist of(のみから成る)」が、プレアンブルに直ちに続かないで、請求の範囲の本体に現れる場合、示された要素のみに限定されるが、他の要素は、全体として請求の範囲から排除されない。
用語「consisting essentially of(本質的に、から成る)」は、請求範囲を、明記した材料又は段階に限定して、さらに請求範囲の発明事項の基本的及び新規の特徴に実質的に影響しない材料又は段階を限定する。
用語「comprising(から成る)"、「consisting of(のみから成る)」及び「consisting essentially of(本質的に、から成る)」に関して、これらの3種の用語の1種が本明細書で用いられた時、本発明は、他の2種の用語のいずれかの使用を含めることができる。
【0028】
本明細書で使用する場合、用語「ヘパリン」、「ヘパリン化合物」、「HS」、「HS様化合物」、及び「HS様分子」は、ヘパラン硫酸類の1又はそれ以上の構造的性質及び/又は機能的性質を有する、合成で硫酸化された多糖を指すことが意図されている。いくつかの実施形態において、ヘパリン化合物は、スルホ基の有無にかかわらず、グルクロン酸又はイズロン酸及びグルコサミンを含むことができる。このように、ヘパリン化合物は、合成HS類、硫酸化多糖及びヘパリン類を含むが、これらに限定されるものではない。
【0029】
II.略語
HS: ヘパラン硫酸
LMWH: 低分子量ヘパリン
NST: N-スルホトランスフェラーゼ
PmHS2: パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)由来のヘパロサンシンターゼ−2
KfiA: 大腸菌K5株由来のN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ
C5-epi: グルクロニルC−エピメラーゼ
2-OST: 2-O-スルホトランスフェラーゼ
6-OSTs: 6-O-スルホトランスフェラーゼアイソフォーム1及びアイソフォーム3
3-OST-1: 3-O-スルホトランスフェラーゼアイソフォーム1
3-OST-5: 3-O-スルホトランスフェラーゼアイソフォーム5
NTFA: N-トリフルオロアセチル
GlcNTFA: N-トリフルオロアセチルグルコサミン
GlcA: グルクロン酸
IdoA2S: 2-O-硫酸化イズロン酸
GlcNS: N-スルホグルコサミン
GlcNAc: N-アセチル化グルコサミン
UFH: 未分画ヘパリン
【0030】
III.一般的考察
ヘパラン硫酸(HS)は、哺乳動物細胞の表面及び細胞外マトリックスに大量に存在する高度に硫酸化された多糖である。ヘパラン硫酸(HS)は、1→4-結合グルコサミン及びN-及びO-スルホ基の両方を含むグルクロン酸/イズロン酸単位を含む高度に荷電した多糖である。ヘパラン硫酸(HS)の特殊な形態であるヘパリンは、一般的に使用される抗凝固薬である。従って、「ヘパラン硫酸」は、本明細書中で使用される場合、ヘパリンを含む。
ヘパリンは、いずれもスルホ基を有することができる、イズロン酸(IdoA)又はグルクロン酸(GlcA)及びグルコサミン残基のいずれかの二糖繰り返し単位から成る多糖である。このスルホ基、イズロン酸(IdoA)及びグルクロン酸(GlcA)の位置は、ヘパリンの抗凝固活性を決定する。インビボで、ヘパリンは、ヘパラン硫酸(HS)の一連の生合成酵素(図2)によって合成される。HSポリメラーゼは、多糖主鎖、グルクロン酸(GlcA)の繰り返し二糖、及びN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)の形成を触媒する。次に、この主鎖は、N-デアセチラーゼ/Nスルホトランスフェラーゼ(NDST)、C5-エピメラーゼ(C5-epi)、2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)、6-O-スルホトランスフェラーゼ(6-OST)、及び3-O-スルホトランスフェラーゼ(3-OST)によって修飾される。ヘパラン硫酸(HS)の生合成酵素の組換え形態の可用性は、ヘパリンの多糖及びオリゴ糖を製造するための新たな戦略を提供している。ヘパリンのオリゴ糖は、従来、化学的に長い経路で合成されてきた。いくつかの合成戦略が報告されてきているが、ヘパリンオリゴ糖の化学合成は、特にスルホ基の高い含量を有する八糖よりも大きなオリゴ糖については、非常に困難である。化学酵素法がこの合成を簡単にし、低分子量ヘパリン(LMWH)を製造するための実用的なアプローチを提供している。
【0031】
本発明のヘパリン化合物は、ヘパラン硫酸の一又はそれ以上の構造的及び/又は機能的特性を有する合成硫酸化多糖から成ることができる。特定のヘパリン化合物の例示的実施形態を本明細書に開示したが、本発明はこれらの開示された実施例に限定されるものではなく、むしろ、ヘパリン化合物は、当業者には明らかであるような、すべての同等の合成硫酸化多糖を含む。実際に、当業者は、本開示を検討することにより、開示された方法及び化合物に基づいて、多数のヘパリン化合物を生成することが可能であろう。
【0032】
ヘパリンは、特定の調節タンパク質と相互作用することにより、ウイルス感染の促進、血液凝固及び胚発生の調節、腫瘍の増殖抑制、及び患者の摂食行動の制御など、重要な生物学的プロセスにおいて様々な役割を果たしている(Liu, J., and Thorp, S. C. (2002) Med. Res. Rev. 22:1-25; Rosenberg, R. D., et al., (1997) J. Clin. Invest. 99:2062-2070; Bernfield, M., et al., (1999) Annu. Rev. Biochem. 68:729-777; Alexander, C. M., et al., (2000) Nat. Genet. 25:329-332; Reizes, O., et al., (2001) Cell 106:105-116)。このユニークな硫酸化された糖の配列は、ヘパリンが結合する特定のタンパク質を決定し、それによって多くの生物学的プロセスを調節することができる。
【0033】
ヘパリンの生合成は、ゴルジ体で起こる。それは、最初にD-グルクロニル及びN-アセチル-D-グルコサミニルトランスフェラーゼにより、グルクロン酸とN-アセチルグルコサミンとの共重合体として合成され、続いて様々に修飾される(Lindahl, U., et al., (1998) J. Biol. Chem. 273:24979-24982)。これらの修飾には、グルコサミンのN-脱アセチル化及びN-硫酸化、グルクロン酸のC5エピマー化(イズロン酸残基を生成する)、イズロン酸及びグルクロン酸の2-O硫酸化、グルコサミンの6-O-硫酸化及び3-O硫酸化が含まれる。ヘパラン硫酸(HS)の生合成に関与するいくつかの酵素はクローン化され、特性が明らかにされている(Esko, J. D., and Lindahl, U. (2001) J. Clin. Invest. 108:169-173)。
【0034】
ヘパラン硫酸(HS)の生合成酵素の様々なアイソフォームの発現レベルは、特定の組織中の特定の糖配列の合成に寄与する。ヘパラン硫酸(HS)のN-デアセチラーゼ/Nスルホトランスフェラーゼ、3-O-スルホトランスフェラーゼ、6-O-スルホトランスフェラーゼは、複数のアイソフォームで存在する。各アイソフォームは、特定の硫酸化糖配列を生成するために、修飾部位の周囲の糖配列を認識すると考えられている(Liu, J., et al., (1999) J. Biol. Chem. 274:5185-5192; Aikawa, J.-I., et al., (2001) J. Biol. Chem. 276:5876-5882; Habuchi, H., et al., (2000) J. Biol. Chem. 275:2859-2868)。例えば、ヘパラン硫酸(HS)のD-グルコサミニル3-Oスルホトランスフェラーゼ(3-OST)アイソフォームは、異なる硫酸化イズロン酸残基に連結している3-O-硫酸化グルコサミン残基を生成する。3-OSTアイソフォーム1(3-OST-1)は、グルクロン酸の残基の非還元末端に結合するN硫酸化グルコサミン残基の3-OH位(GlcA-GlcNS±6S)に硫酸基を転送する。しかし、3-OSTアイソフォーム3(3-OST-3)は、2-O硫酸化イズロン酸の非還元末端に連結しているN-非置換グルコサミン残基の3-OH位(IdoUA2S-GlcNH2±6S)に硫酸を転送する(Liu, J., et al., (1999) J. Biol. Chem. 274:38155-38162)。これらの3-OSTの基質特異性の違いは、異なる生物学的機能をもたらす。例えば、3-OST-1によって修飾されたヘパラン硫酸(HS)は、アンチトロンビン(AT)に結合し、抗凝固活性を有する(Liu, J., et al., (1996) J. Biol. Chem. 271:27072-27082)。しかし、3-OST-3(3-OST-3A及び3-OST-3B)によって修飾されたヘパラン硫酸(HS)は、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の糖タンパク質D(GD)に結合し、ウイルスの侵入を仲介する(Shukla, D., et al., (1999) Cell 99:13-22)。
【0035】
細胞表面のヘパラン硫酸(HS)はHSV-1感染を促進する(WuDunn, D., and Spear, P. G. (1989) J. Virol. 63:52-58). One report (Shukla, D., et al., (1999) Cell 99:13-22)。一つのレポートが、特定の3-O硫酸化ヘパラン硫酸(HS)がHSV-1の侵入を促進することに関与することを示唆している(Shukla, D., et al., (1999) Cell 99:13-22)。この3-O硫酸化HSは、3-OST-1ではなく3-OST-3によって生成する。更に、この3-O硫酸化HSは、HSV-1外被の糖タンパク質Dに対する結合部位を提供し、これはHSV-1の侵入に関与する重要なウイルスタンパク質である(Shukla, D., et al., (1999) Cell 99:13-22)。3-OST-3で修飾されたHSは、天然源由来のHSではほとんど発見されていないため、この研究は、HSV-1が特殊な糖構造を認識することを示唆している。実際、gD-結合八糖の構造的特徴を研究した結果、この八糖は特定の糖配列有することが明らかにされた(Liu, J., et al., (2002) J. Biol. Chem. 277:33456-33467)。更に、この3-O-硫酸化HSのgDに対する結合親和性は約2μMである(Shukla, D., et al., Cell 99:13-22)。この親和性は、このタンパク質受容体に対するgDの結合について報告されている親和性と近似しており、このことは、HSV-1は、標的細胞に感染するために、タンパク質及びHS細胞表面受容体の両方を使用することを示唆している(Willis, S. H., et al., (1998) J. Virol. 72:5938-5947; Krummenacher, C., et al., (1999) J. Virol. 73:8127-8137)。gDと3-O硫酸化タンパク質侵入受容体との相互作用は、gB、gH及びgLを含む他のウイルス外被タンパク質の存在下で、ウイルスと細胞との融合をトリガーすると考えられている(Shukla, D., and Spear, P. G. (2001) J. Clin. Invest. 108:503-510)。gD及びヘルペス侵入受容体HveAの共結晶構造の研究は、HveAとgDとの結合が、gDのコンフォメーション変化を誘導することを示唆している(Carfi, A., et al., (2001) Mol. Cell 8:169-179)。
【0036】
ヘパラン硫酸(HS)で調節される抗凝固メカニズムは広く研究されている。現時点で、ヘパリンを含むHSは、セリンプロテアーゼ阻害剤であるアンチトロンビン(AT)と相互作用して、血液凝固カスケードにおいてトロンビンと第Xa因子の活性を阻害することが知られている(Rosenberg, R. D., et al., (1997) J. Clin. Invest. 99:2062-2070)。抗凝固活性のHS(HSact)とヘパリンは、多糖鎖ごとに一つ又はそれ以上のAT結合部位を有する。この結合部位は、−GlcNS(又はAc)6S−GlcA−GlcNS3S(±6S)−IdoUA2S−GlcNS6S−の構造の特定の五糖配列を有する。GlcNS3S(±6S)残基を生成するためのグルコサミンの3-O-硫酸化は、3-OST-1によって行われ、HSactの合成過程で役割を果たしている(Liu, J., et al., (1996) J. Biol. Chem. 271:27072-27082; Shworak, N. W. , et al., (1997) J. Biol. Chem. 272:28008-28019)。
【0037】
IV.ヘパリン化合物
いくつかの実施形態によれば、本発明のヘパリン化合物は、アンチトロンビン(AT)に対して強力な結合親和性を有することができる。非限定的例として、本発明のヘパリン化合物の結合定数(Kd)は、約3nM〜約100nMの範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、本発明のヘパリン化合物の結合定数(Kd)は、約5nM〜約40nMの範囲であってもよい。本開示を見た当業者は、結合親和性を決定するために、如何なる適切なアプローチを使用することができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、本発明のヘパリン化合物は、約1,500ダルトン(Da)〜約6,000Daの範囲の分子量を有してもよい。いくつかの実施形態において、低分子量(LMW)ヘパリンは、3,500〜6,000Daの範囲のサイズと、約12〜20の糖単位を有し、かついくつかの実施形態において、抗凝固活性を有するヘパリン化合物を指すことが意図されている。いくつかの実施形態において、本発明のLMWヘパリンの分子量は、約3,500Da、約4,000Da、約4,500Da、約5,000Da、約5,500Da、又は約6,000Daであってもよい。いくつかの実施形態において、本発明のLMWヘパリンは12、14、16、18又は20の糖単位を有してもよい。いくつかの実施形態において、本発明のLMWヘパリンは、例えばプロタミンのような解毒剤の存在下で可逆的抗凝固活性を有することができる。
【0039】
いくつかの実施形態において、この抗凝固活性は、抗Xa活性及び抗IIa活性を決定することによって測定することができる。いくつかの実施形態において、この抗Xa活性及び抗IIa活性は、アンチトロンビンの存在下で測定してもよい。アンチトロンビン(AT)に対する強い結合親和性及び/又は高い抗凝固活性を有するヘパリン化合物は、高い抗Xa活性及び抗IIa活性を有することができる。いくつかの実施形態において、高い抗凝固活性を有するヘパリン化合物は、約1nM〜約20nMの範囲の抗Xa活性についてのIC50値を有することができる。いくつかの実施形態において、高い抗凝固活性を有するヘパリン化合物は、約1nM〜約10nMの範囲の抗Xa活性についてのIC50値を有することができる。いくつかの実施形態において、高い抗凝固活性を有するヘパリン化合物は、約1nM〜約5nMの範囲の抗Xa活性についてのIC50値を有することができる。いくつかの実施形態において、高い抗凝固活性を有するヘパリン化合物は、本明細書に開示された条件下で、約10ngml-1〜40ngml-1の範囲の抗Xa活性についてのIC50値を有することができる。いくつかの実施形態において、高い抗凝固活性を有するヘパリン化合物は、本明細書に開示された条件下で、約15ngml-1〜35ngml-1の範囲の抗Xa活性についてのIC50値を有することができる。当業者によって理解されるように、IC50値は、測定が行われる条件による。従って、本明細書に示されるIC50値は、測定が行われる条件によるものであり、当業者によって理解されるように、それに応じて調整されることができる。本開示を見た当業者は、抗凝固活性を決定するために、如何なる適切なアプローチを使用することができる。
【0040】
いくつかの実施形態において、本発明のヘパリン化合物は、例えばプロタミンのような反転剤の存在下で可逆的な抗凝固活性を有することができる。いくつかの実施形態において、ヘパリン化合物は、プロタミンの存在下で、完全に可逆的な、実質的に完全に可逆的な、又は少なくとも部分的に可逆的な、抗凝固活性を有することができる。いくつかの実施形態において、20ug/ml又はそれ以下のプロタミンの存在下で、50%又はそれ以上の割合で可逆的である抗凝固活性を有するヘパリン化合物は、部分的に可逆的であるといえる。いくつかの実施形態において、100ug/ml若しくはそれ以下の、50ug/ml若しくはそれ以下の、30ug/ml若しくはそれ以下の、20ug/ml若しくはそれ以下の、15ug/ml若しくはそれ以下の、10ug/ml若しくはそれ以下の、5ug/ml若しくはそれ以下の、又は1ug/ml若しくはそれ以下の、プロタミンの存在下で、50%又はそれ以上の割合で可逆的である抗凝固活性を有するヘパリン化合物は、部分的に可逆的であるといえる。いくつかの実施形態において、本開示を見た当業者によって理解されるように、本発明のヘパリン化合物は、未分画ヘパリン(UFH)と同様の割合で可逆的である可逆的抗凝固活性を有する場合、可逆的抗凝固活性を有すると考えられる。
【0041】
本発明のヘパリン化合物の重要な臨床上の利点は、腎障害の患者に使用することを可能にする、肝臓を介する循環から除去される能力である。未分画ヘパリン(UFH)及び長鎖ヘパリン化合物は、その除去を仲介する肝類洞内皮細胞上に存在するスカベンジャー受容体である、スタブリン-2(Stablin-2)に結合することができる。いくつかの実施形態において、本発明のヘパリン化合物は、細胞ベースのアッセイにおいて測定された、スタブリン-2(Stablin-2)に媒介された顕著なエンドサイトーシスを示した。
【0042】
文献(Pempe et al, 2012)に示されるように、3-O硫酸化ヘパリン化合物は、肝臓によって、より効率的に取り込まれ、除去される。他の文献(Yu et al, 2014)も参照されたい。本発明のいくつかの態様によれば、本発明のヘパリン化合物の硫酸化パターンは肝臓を通じたこのような化合物の除去に影響を与えることができる。従って、いくつかの実施形態において、肝臓に媒介された循環からの除去を受けやすい、合成された低分子量ヘパリン化合物は、3-O硫酸化を含む。いくつかの態様では、ドデカマー以上である本発明の3-O硫酸化を有するヘパリン化合物は、肝臓による除去が強化されている。いくつかの実施形態において、ドデカマー以上の合成オリゴ糖のような、合成された低分子量ヘパリン化合物における、3-O硫酸化パターンのような硫酸化パターンが提供され、それは迅速な肝臓除去の要求に合致する。
【0043】
従って、いくつかの実施形態において、本発明のヘパリン化合物は、スタブリン-2(Stablin-2)に媒介されるエンドサイトーシスを受けやすく、15%又はそれ以上の割合でエンドサイトーシスされたヘパリン化合物は、エンドサイトーシスを受けやすいといえる。いくつかの実施形態において、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、75%、90%又はそれ以上の割合で、エンドサイトーシスされたヘパリン化合物は、スタブリン-2(Stablin-2)に媒介されるエンドサイトーシスを受けやすいといえる。従って、いくつかの実施形態において、肝臓に媒介された循環からの除去を受けやすい、合成された低分子量ヘパリン化合物が提供される。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物は、15%又はそれ以上の割合で、スタブリン-2(Stablin-2)に媒介されるエンドサイトーシスを受けやすい。これらの特性のために、いくつかの態様において、本発明のヘパリン化合物は、腎障害の患者への投与に適していることができる。いくつかの態様では、肝臓に媒介された循環からの除去を受けやすい、このようなヘパリン化合物は、少なくとも一つの3-O硫酸化のような、3-O硫酸化パターンのような硫酸化パターンを有し、いくつかの態様ではドデカマーであってもよい。
【0044】
六糖〜十二糖の5つの均質な低分子量ヘパリン(LMWH)(化合物1〜5、それぞれ図1A〜1Eに示す)合成することができる。化合物1〜4の構造は、その還元末端が異なり、異なる数の−IdoA2S−GlcNS6S−繰り返し単位を含む。十二糖5は、十二糖4とは異なり、3-O-スルホ基を2つ持つ(図1D及び1E)。化合物1の合成は、市販の単糖、1-O-(パラ−ニトロフェニル)グルクロニド(GlcA-pnp)から出発する(図2)。GlcA-pnpから六糖への伸長は、2種のバクテリア性糖転移酵素、KfiA(大腸菌K5株由来のN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ)及びパスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)由来のヘパロサンシンターゼ−2(pmHS2)、を用いて達成することができる。その後のN-硫酸化、O-硫酸化及びエピマー化の段階により、化合物1が合成される。このアプローチはまた、その後の合成のための中間体である、六糖6の合成にも用いることができる。
【0045】
化合物2, 3及び4の合成は、六糖6から出発して、それぞれ中間体7,8及び9を通して合成される(図3)。これらの中間体は、複数の−IdoA2S−GlcNS6S−繰り返し単位を含み、グルクロニルC−エピメラーゼ(C5-epi)の基質特異性による合成に挑む。
図3は、本明細書に開示される低分子量ヘパリン(LMWH)、特に化合物2〜5、の合成の概略図である。これらの合成は六糖(化合物6)から出発することができる。この六糖は、八糖(化合物7)、十糖(化合物8)及び十二糖(化合物9)に変換されることができ、それぞれ化合物2, 3及び4が合成される。化合物4から化合物5への変換は、3-OST-5修飾によって達成することができる。
化合物7, 8及び9を含む中間体の合成は、いくつかの実施形態において、これらの混合物が生成しないように、この段階に従ってもよい。混合物が生成すると、合成効率が劇的に低下する。この合成には多くの段階が関与するので、この合成を表すために一つの記号が提示される。化合物1〜9の化学構造を、それぞれ、図1A〜1Iに示す。
【0046】
高純度及び高収率を達成するために、注意深く設計された酵素段階の配列を採用することができる。GlcAからIdoA2Sへの変換は、2つの段階を含む:GlcAをC−エピメラーゼ(C5-epi)の触媒作用によりエピマー化してIdoAに変換する段階、及び2- OSTによりこのIdoA残基にスルホ基を移す段階。C5-epiは、順方向及び逆方向の両方向の反応を触媒し、GlcAからIdoA2Sへの不完全な変換をもたらし、混合物の生成をもたらす。基質に五糖ドメイン、GlcN−トリフルオロアセチル(TFA)−GlcA−GlcNS−GlcA−GlcNS−、を配置することにより、C5-epiを不可逆的に1つのGlcA残基(下線)とのみ反応するように仕向け、不完全な変換を回避する。C5-epiにより認識される五糖ドメインの化合物を含む化合物6から化合物7への変換は、4段階で完了することができる。六糖6のGlcNTFA残基(残基A)は、まずGlcNS残基に変換されることができる(段階a、図3)。次に、この六糖は、2つの酵素段階により、八糖に伸長され(段階b及びc、図3)、破線ボックスで示す所望の五糖ドメインを得ることができる(図3)。C5-epiと2-OSTにより、GlcA(残基D)をIdoA2Sに変換し、化合物7を得ることができる(段階d、図3)。IdoA2S残基が生成するので、C5-epiによる更なる修飾に向けた反応を避けることができる。これらの段階(段階a〜d、図3)を一度又は二度繰り返して、それぞれ、化合物8と9を得ることができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、開示され例証された反応の生成物は、パラニトロフェニル基(pnp)タグを含んでもよい。このタグは、310 nmに強い吸光度を有し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による純度分析を容易にする。構造は、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)、一次元(1D)及び2次元(2D)核磁気共鳴(NMR)分析によって決定した。ジエチルアミノエチル(DEAE)-HPLC分析は、化合物5が高純度であることを示し、質量分析(MS)は3562.8755の観察質量を示し、これは正確な計算質量3562.9087に非常に近く、C80H121N7O115S17について観察された同位体分布は仮定した分布に合致した。化合物5の1H-NMRスペクトルは、12のアノマープロトンの存在を示す。付加的な1-D NMR及び2-D NMR分析により、正確なグリコシド結合が確認され、化合物5のスペクトル同定をもたらした。MS支援配列分析は3-O-スルホ基を有する残基を突き止めた。
【0048】
未分画ヘパリン(UFH)及び低分子量ヘパリン(LMWH)鎖の重要な臨床上の利点は、腎障害の患者に使用することを可能にする、肝臓を介する循環から除去される能力である。これらが同様の除去プロフィールを示すかどうかを決定するため、合成されたLMWHを調べた。UFHとより大きな鎖であるLMWHは、その除去を仲介する肝類洞内皮細胞上に存在するスカベンジャー受容体である、スタブリン-2(Stablin-2)に結合することが知られている。UFHとラブノックス(LOVENOX)(R)(エノキサパリン)のように、化合物3、4及び5は、細胞ベースのアッセイの測定により、スタブリン-2(Stablin-2)に媒介される顕著なエンドサイトーシスを示した。一方、化合物1及び2は、非常に低い内部移行を示した(図5)。マウスモデルを用いて、合成された均質のLMWHの肝臓における保持を、UFHとラブノックス(R)(エノキサパリン)と比較した(図4A)。より大きい化合物(化合物3、4、5)は肝臓内に保持されたが、より小さいサイズの化合物(化合物1及び2)は肝臓における非常に低いレベルの保持を示した(図4A)。
【0049】
また、合成された低分子量ヘパリン(LMWH)の抗凝固活性を測定した。すべての化合物(化合物1〜5)は、強力なアンチトロンビン(AT)結合親和性を示した(Kd 5〜30nM)(表1)。抗Xa活性アッセイの結果は、化合物1〜5のIC50値が、UFHとラブノックス(R)(エノキサパリン)より低い値を示し、その強力な抗Xa活性を確認した(図6及び表1)。UFHとラブノックス(R)(エノキサパリン)とは異なり、合成されたLMWHは、検出可能な抗IIa活性を有せず、従って、これらの化合物は第Xa因子特異的阻害剤である。欧州医薬品庁(EMA)は最近、「第二世代」低分子量ヘパリン(LMWH)であるベミパリン(Bemiparin)を承認した。ベミパリンは、他のLMWH薬よりも有意に低い抗IIa活性を有するが、他のLMWH薬と非常によく似た臨床的有用性を有し、LMWHの抗IIa活性があまり重要でないことを示唆している。
【0050】
次に、プロタミンによる抗凝固活性の可逆性を測定した。in vitroでのプロタミン可逆性について、5種の合成された低分子量ヘパリン(LMWH)を比較した(図4B)。化合物1,2及び3とは異なり、化合物4の抗凝固活性はプロタミンによって部分的に反転した。また、化合物5は、未分画ヘパリン(UFH)と同程度のプロタミン可逆性を示し、ラブノックス(R)(エノキサパリン)より大きい可逆性を示した(図4B)。ex vivoのマウスモデルを用いて、化合物5が、UFHに近似するプロタミン中和に対する感度を有することが確認された。予想通りにラブノックス(R)(エノキサパリン)のプロタミン中和は部分的にしか観察されなかった(図4C)。最後に、出血マウス尾モデルを用いて、プロタミンが一次出血時間を短縮し、化合物5により誘導された血液の損失を減少することが示され(図4D)、in vivoでプロタミン中和に対する化合物5の感度を確認した。
【0051】
要約すると、図4A〜4Dは化合物3,4及び5が、マウスの肝臓に内部移行されることを示し、インビトロ実験で化合物5の抗Xa活性がプロタミンによって反転され得ること、その一方で、エノキサパリン(ラブノックス(R))を含む他の化合物の抗Xa活性は、プロタミンにより反転されない。未分画ヘパリン(UFH)と化合物5は、プロタミン中和に対して似た感度を持っている。ex vivo実験で、化合物5の抗Xa活性は可逆的である。エノキサパリンは部分的にのみ可逆的であるが、UFHは完全に可逆的である。そして、ex vivo実験で、化合物5の抗Xa活性は反転することができる。
【0052】
ヘパリン及び低分子量ヘパリン(LMWH)は、その生産がまだ不純物の混入や粗悪品に弱い長いサプライチェーンに依存している、現代医薬の実施のために重要である。ヘパリンの不純物の混入危機の後、米国FDA及びEMAはヘパリン薬の純度を監視するための一連の新しいアプローチを実施した。これらの努力が不純物が混入したヘパリンの市場への流入を制止しているが、ヘパリンのサプライチェーンの安全性を確保するための長期的な解決策は、動物源のヘパリンの必要性を排除し、高度に規制されたプロセスの下で合成ヘパリンを製造することである。化学酵素的合成は、この目標のためのアプローチを提供している。均質な低分子量ヘパリン(LMWH)の合成全体は、約20の合成段階を必要とし、潜在的に大規模製造に適している。我々はまた、合成LMWHが薬理学的/臨床的利益を追加したことを示す。LMWHの酵素化学的合成は、ヘパリン治療の次世代の道を提供する。
【0053】
【表1】
注:
1. 純度は、DEAE-HPLC分析により決定した。
2. Kd値は、2又は3の測定の平均である。フォンダパリヌクスのKd値は5.9±1.5 nMと報告されている(Xu, Y.et al., Science334, 498-501, 2011)。
3. IC50は、Xa因子活性の50%阻害濃度を表す。フォンダパリヌクスのIC50値は4.5 ngml-1と報告されている(Xu, Y.et al., Science334, 498-501, 2011)。フォンダパリヌクスで観察されたこの低いIC50値は、これら2つの実験で異なるプロトコルが使用されたことによるものである。
4. 化合物6-9は、アンチトロンビンに対して結合親和性を持たず、Xa因子活性を阻害しない。
【0054】
V.超低分子量ヘパリンの化学酵素的合成
いくつかの実施形態において、本発明は、構造的に均質な低分子量ヘパリンを含むヘパリン化合物への酵素的アプローチを提供する。本発明のヘパリン化合物は、本明細書に開示されるように酵素的アプローチを用いて単糖構成単位から合成されることができる。
いくつかの実施形態において、本発明のヘパリン化合物の合成は、主鎖の伸長及び糖修飾を含むことができる。いくつかの実施形態において、本発明は、(1) 糖基質を提供する段階、(2) この糖基質を所望の又は所定の長さの糖に伸長する段階、(3) エピマー化反応を行う段階、及び(4) 一又はそれ以上の硫酸化反応を行い、その結果ヘパリン化合物が合成される段階、から成るヘパリン化合物を合成する方法を提供する。あるいは、いくつかの実施形態において、本発明は、(1) 単糖又は二糖を提供する段階、(2) この単糖又は二糖を四糖に伸長する段階、(3) この四糖を六糖に伸長する段階、但し、この六糖はN-スルホトランスフェラーゼ基質残基を含み、(3) この六糖上のN-スルホトランスフェラーゼ基質残基をN-スルホグルコサミン(GlcNS)残基に変換する段階、(4) エピマー化反応を行う段階、及び(5) 2-O-硫酸化反応、6-O-硫酸化反応及び3-O-硫酸化反応並びにこれらの組み合わせから選択される一又はそれ以上の硫酸化反応を行う段階、から成るヘパリン化合物を合成する方法を提供する。八糖、十糖及び/又は十二糖を形成して本発明のヘパリンを合成するために、これらの段階を繰り返してもよい。
【0055】
いくつかの実施形態において、この伸長段階は、グリコシルトランスフェラーゼを用いることを含んでもよい。例えば、限定するものではないが、このグリコシルトランスフェラーゼは、大腸菌K5のN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(KfiA)又はパスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)由来のヘパロサンシンターゼ-2(pmHS2)であってもよい。いくつかの実施形態において、この伸長段階は、一又はそれ以上の単糖を用いる段階を含んでもよく、この単糖は、例えば、グルクロン酸(GlcA)、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、及びN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)から成ってもよい。
【0056】
いくつかの実施形態において、この六糖又は七糖上のN-スルホトランスフェラーゼ基質残基をN-スルホグルコサミン(GlcNS)残基に変換する段階は、N-スルホトランスフェラーゼ(NST)と3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を用いることを含むことができる。
更に、いくつかの実施形態において、このエピマー化反応は、C5-エピメラーゼ(C5-epi)を用いることを含むことができ、この2-O硫酸化反応は、2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)を用いることを含むことができ、この6-O-硫酸化反応は6-O-スルホトランスフェラーゼ(OST-6)を用いることを含むことができ、この3-O-硫酸化反応は3-O-スルホトランスフェラーゼ(OST-3)を用いることを含むことができる。
いくつかの実施形態において、この伸長段階は、グリコシルトランスフェラーゼを用いることを含むことができる。いくつかの態様では、このグリコシルトランスフェラーゼは、大腸菌K5のN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(KfiA)であってもよい。
【0057】
いくつかの実施形態において、一連の酵素的段階は、非常に効率的な方法で、本明細書に開示されるような十二糖を合成するために提供される。いくつかの実施形態において、ヘパリン化合物の合成を六糖から開始することができ、いくつかの中間体を介して最終的なヘパリン化合物まで継続することができる。これらの中間体は、複数の−IdoA2S−GlcNS6S−繰り返し単位を含み、C−エピメラーゼ(C5-epi)の基質特異性による合成に挑む。高純度及び高収率を達成するために、注意深く設計された酵素段階の配列を採用することができる。GlcAからIdoA2Sへの変換は、2つの段階を含む:C−エピメラーゼ(C5-epi)の触媒作用によりGlcAをIdoAにエピマー化する段階、及び2- OSTによりこのIdoA残基にスルホ基を移す段階。C5-epiは、順方向及び逆方向の両方向の反応を触媒し、GlcAからIdoA2Sへの不完全な変換をもたらし、混合物の生成をもたらす。このような反応は、かなりの量の副生成物を生成し、その結果このプロセスを非常に非効率的にする。基質に五糖ドメイン、GlcN−トリフルオロアセチル(TFA)−GlcA−GlcNS−GlcA−GlcNS−、を配置することにより、C5-epiを不可逆的に1つのGlcA残基(下線)とのみ反応するように仕向け、不完全な変換を減らす又は回避する。
【0058】
GlcAからIdoA2Sへの変換は、C5-epiと2- OSTにより達成されることができる。八糖、十糖及び十二糖間の伸長段階の間でIdoA2S残基が生成するので、C5-epiによる更なる修飾に向けた反応を避けることができる。これらの段階を繰り返して、十二糖まで伸長して、高効率の合成を維持しながら、本発明の低分子量ヘパリンを合成することができる。本明細書に開示される合成法を用いて、50%、60%、70%、80%、90%又はそれ以上の効率で、例えば、十二糖のヘパリンを合成することができる。これは、ヘパリン化合物を、例えば、十二糖に伸長し、その後それを硫酸化するような、別のアプローチとは対照的であり、この方法では、例えば、2%〜5%のような極めて低い効率しか得られない。
【0059】
いくつかの実施形態において、本発明のヘパリン化合物は、例えば、紫外(UV)光又は可視光の吸光度を有して、検出可能なR基を有してもよい。例えば、紫外(UV)光又は可視光の吸光度を有するR基を有して、検出可能なヘパリン化合物を設計及び合成することは、製品純度の検出及び単離を容易にすることができる。UV又は可視光の「タグ」を有するヘパリン化合物を配合することは、化学酵素反応及び化合物合成のモニタリングを容易にすることができる。当業者によって理解されるように、合成の間又は合成の後に、化合物上のUV又は可視光の「タグ」を検出することは、任意の利用可能な分光装置を用いて達成することができる。いくつかの実施形態において、この「タグ」は、パラニトロフェニル基を含んでもよい。
その代りに又は追加して、いくつかの実施形態において、検出可能なR基は、疎水性のR基であってもよい。当業者によって理解されるように、疎水性のR基は、生成物をC18カラムに結合させ、合成されたヘパリンの精製を可能にすることができる。
いくつかの実施形態において、紫外(UV)光又は可視光の吸光度を有するR基や又は疎水性のR基のようなR基は、ヘパリンの合成が完了したときには、除去可能であってもよい。当業者によって理解されるように、その有用性が達成されたときにR基を除去することは、ヘパリン化合物の最終的な処理を容易にすることができる。例えば、いくつかの態様では、潜在的に毒性機能の基が、ヘパリン薬物化合物に入り込むことを回避するために、R基を除去することが望ましいかもしれない。
【0060】
V.A.ヘパリン化合物の化学酵素的合成に使用する酵素
いくつかの実施形態において、当業者によって理解されるように、本発明は、他の酵素のうち、スルホトランスフェラーゼ、エピメラーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ及び/又はヘパロサンシンターゼを利用することができる。これらの酵素及び当業者によって採用される他の酵素を、「その酵素」、「これらの酵素」及び/又は「酵素」と呼ぶ。いくつかの実施形態において、この化学酵素的合成は,N-スルホトランスフェラーゼ(NST)、C5-エピメラーゼ(C5-epi)、2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)、6-O-スルホトランスフェラーゼアイソフォーム1(6-OST-1)、6-O-スルホトランスフェラーゼアイソフォーム3(6-OST-3)、3-O-スルホトランスフェラーゼアイソフォーム1(3-OST-1)、3-O-スルホトランスフェラーゼアイソフォーム5(3-OST-5)、大腸菌K5株のN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(KfiA)及び/又はヘパロサンシンターゼ-2(pmHS2)を使用することができる。いくつかの実施形態において、化学酵素的合成に用いられるこれらの酵素及び他の酵素は、前述のように、大腸菌で発現させることができ、適切なアフィニティークロマトグラフィーにより精製されることができる(Liu et al., 2010)。
【0061】
いくつかの実施形態において、この変換反応の一又はそれ以上において、当業者によって理解されるように、塩基化合物又はその溶液を使用することができる。このような塩基として、例えば、水酸化リチウム、又はトリエチルアミン、CH3OH及び/又はH2Oの混合物が挙げられる。
いくつかの実施形態において、この化学酵素的合成では、多糖を硫酸化するために、O-スルホトランスフェラーゼ(OST)などのスルホトランスフェラーゼを用いることができる。スルホトランスフェラーゼは、スルホドナー化合物(即ち、SO3ドナー分子)からアクセプター分子へのスルホン酸又はスルフリル基(SO3)の転移を触媒する酵素ファミリーから成る。非限定的な例として、このスルホドナー化合物又はSO3ドナー分子は、補因子3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)であってもよい。これらをスルホン化反応(sulfonation reaction)と呼ぶのがより正確であるが、硫酸化(sulfation)という用語がまだ広く使用されている。従って、本明細書で使用する用語「硫酸化」とは、ある分子から別の分子へ、スルホネート(sulfonate)又はスルフリル基(sulfuryl group)を転移することを指す。
【0062】
スルホトランスフェラーゼは、シグナル伝達及び受容体結合の調整を含む様々な生物学的機能のために、炭水化物、オリゴ糖、ペプチド、タンパク質、フラボノイド及びステロイドのような異なるクラスの基質の硫酸化を媒介する(Bowman et al., (1999) Chem. Biol. 6, R9-R22; and Falany (1997) FASEB J. 11, 1-2)。多くの新規なスルホトランスフェラーゼが特定されクローン化されている(Aikawa et al., (1999) J. Biol. Chem. 274, 2690; Dooley (1998) Chemico-Biol. Interact. 109, 29; Fukuta et al. (1998) Biochim. Biophys. Act. 1399, 57; Habuchi et al., (1998) J. Biol. Chem. 273, 9208; Mazany et al., (1998) Biochim. Biophys. Act. 1407, 92; Nastuk et al. (1998) J. Neuroscience 18, 7167; Ong et al., (1998) J. Biol. Chem. 273, 5190; Ouyang et al., (1998) J. Biol. Chem. 273, 24770; Saeki et al. (1998) J. Biochem. 124, 55; Uchimura et al. (1998) J. Biol. Chem. 273, 22577; and Yoshinari et al., (1998) J. Biochem. 123, 740)。
【0063】
本明細書で使用される用語「O-スルホトランスフェラーゼ(OST)」は、「2-OST」(例えば、マウス2-OST、GENBANK(登録商標)アクセッション番号AAC40135);「3-OST-1」(例えば、ヒト3-OST-1、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NP_005105);「3-OST-3」(例えば、ヒト3-OST-3A、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NP_006033、及びヒト3- OST-3B、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NP_006032)及び「6-OST」(例えば、マウス6-OST-1、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NP_056633、マウス6-OST-2、GENBANK(登録商標)アクセッション番号BAA89247、及びマウス6-OST-3、GENBANK(登録商標)アクセッション番号NP_056635)のような、HS O-スルホトランスフェラーゼをコードするポリペプチド及び核酸を含み、これらは、それぞれ、HS 2-O-スルホトランスフェラーゼ、HS 3-O-スルホトランスフェラーゼアイソフォーム1、HS 3-O-スルホトランスフェラーゼアイソフォーム3、及びHS 6-O-スルホトランスフェラーゼである。いくつかの実施形態において、OSTは、3-O-スルホトランスフェラーゼアイソフォーム5(3-OST-5)を含むことができる。
【0064】
用語「OST」は、このO-スルホトランスフェラーゼの無脊椎動物や脊椎動物のホモログを含む(例えば、哺乳類(ヒトやマウスのような)、昆虫、及び鳥類のホモログ)。このように、本明細書には特定のOSTの例示的な実施形態を開示するが、本発明は、このように開示された例に限定されるものではなく、むしろ特定のOST(例えば、2-OST、3-OST-1、3-OST-3及び6-OST)を含む「OST」は、当業者に知られているすべての同等のOSTを含む。
【0065】
いくつかの実施形態において、本発明の化学酵素的合成は、C5-エピメラーゼ(C5-epi)を使用することができる。このように、特定のエピメラーゼの例示的な実施形態が本明細書に開示されているが、本発明は開示された例に限定されるものではなく、むしろC5-エピメラーゼ(C5-epi)を含む「エピメラーゼ」は、当業者に知られているすべての同等のエピメラーゼを含む。実際、本発明の範囲から逸脱することなく、他のエピメラーゼ又はエピメラーゼ活性を有する化合物を使用することができる。
【0066】
いくつかの実施形態において、本発明の化学酵素的合成は、大腸菌K5株のN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(KfiA)を使用することができる。このように、特定のグルコサミニルトランスフェラーゼの例示的な実施形態が本明細書に開示されているが、本発明は開示された例に限定されるものではなく、むしろN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(KfiA)を含む「グルコサミニルトランスフェラーゼ」は、当業者に知られているすべての同等のグルコサミニルトランスフェラーゼを含む。実際、本発明の範囲から逸脱することなく、他のグルコサミニルトランスフェラーゼ又は同等のトランスフェラーゼ活性を有する化合物を使用することができる。
【0067】
いくつかの実施形態において、本発明の化学酵素的合成は、ヘパロサンシンターゼ−2(PmHS2)を使用することができる。このように、特定のヘパロサンシンターゼの例示的な実施形態が本明細書に開示されているが、本発明は開示された例に限定されるものではなく、むしろヘパロサンシンターゼ−2(PmHS2)を含む「ヘパロサンシンターゼ」は、当業者に知られているすべての同等のヘパロサンシンターゼを含む。実際、本発明の範囲から逸脱することなく、他のヘパロサンシンターゼ又は同等のシンターゼ活性を有する化合物を使用することができる。
【0068】
用語「O-スルホトランスフェラーゼ(OST)遺伝子産物」、「OSTタンパク質」、「OSTポリペプチド」、「エピメラーゼ遺伝子産物」、「エピメラーゼタンパク質」、「エピメラーゼポリペプチド」、「グルコサミニルトランスフェラーゼ遺伝子産物」、「グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質」、「グルコサミニルトランスフェラーゼポリペプチド」、「ヘパロサンシンターゼ遺伝子産物」、「ヘパロサンシンターゼタンパク質」、及び「ヘパロサンシンターゼポリペプチド」とは、対象の生物由来の天然のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、生物学的に活性であるペプチドであって、O-スルホトランスフェラーゼ、エピメラーゼ、グルコサミニルトランスフェラーゼ又はヘパロサンシンターゼのアミノ酸配列の全部又は一部から成り、これら酵素に対して生じた抗体と交差反応し、又はこれら酵素の天然アミノ酸配列又はタンパク質の生物学的活性の全て又は一部を保持するペプチドを指す。このような生物学的活性は、免疫原性を含むことができる。
【0069】
用語「O-スルホトランスフェラーゼ(OST)遺伝子産物」、「OSTタンパク質」、「OSTポリペプチド」、「エピメラーゼ遺伝子産物」、「エピメラーゼタンパク質」、「エピメラーゼポリペプチド」、「グルコサミニルトランスフェラーゼ遺伝子産物」、「グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質」、「グルコサミニルトランスフェラーゼポリペプチド」、「ヘパロサンシンターゼ遺伝子産物」、「ヘパロサンシンターゼタンパク質」、及び「ヘパロサンシンターゼポリペプチド」は、また、酵素の類似体を含む。「類似体(アナログ)」とは、DNA又はペプチド配列が、本明細書に開示される配列に対して改変を含みながらも、これらの配列の生物学的活性の全部又は一部を保持することができることを意味する。類似体は、本発明の若しくは他の生物由来のゲノムヌクレオチド配列から誘導することができる、又は合成して作成することができる。当業者は、これらの酵素の類似体を設計及び/又は作るために、未公開又は未発見のような他の類似体を使用することができることを理解するであろう。
【0070】
「O-スルホトランスフェラーゼ(OST)遺伝子産物」、「OSTタンパク質」、「OSTポリペプチド」、「エピメラーゼ遺伝子産物」、「エピメラーゼタンパク質」、「エピメラーゼポリペプチド」、「グルコサミニルトランスフェラーゼ遺伝子産物」、「グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質」、「グルコサミニルトランスフェラーゼポリペプチド」、「ヘパロサンシンターゼ遺伝子産物」、「ヘパロサンシンターゼタンパク質」、及び「ヘパロサンシンターゼポリペプチド」は、天然酵素の遺伝子産物のアミノ酸配列の全部又は実質的に全部を含む必要はない。より短い又はより長い配列は、本発明において有用であることが予想される。より短い配列は、本明細書では「セグメント」と言及される。従って、用語「O-スルホトランスフェラーゼ(OST)遺伝子産物」、「OSTタンパク質」、「OSTポリペプチド」、「エピメラーゼ遺伝子産物」、「エピメラーゼタンパク質」、「エピメラーゼポリペプチド」、「グルコサミニルトランスフェラーゼ遺伝子産物」、「グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質」、「グルコサミニルトランスフェラーゼポリペプチド」、「ヘパロサンシンターゼ遺伝子産物」、「ヘパロサンシンターゼタンパク質」、及び「ヘパロサンシンターゼポリペプチド」は、また、その酵素タンパク質の配列を含む融合タンパク質又は組換えポリペプチド及びタンパク質を含む。このようなタンパク質の製法は当技術分野で知られている。
【0071】
用語「O-スルホトランスフェラーゼ(OST)遺伝子産物」、「OSTタンパク質」、「OSTポリペプチド」、「エピメラーゼ遺伝子産物」、「エピメラーゼタンパク質」、「エピメラーゼポリペプチド」、「グルコサミニルトランスフェラーゼ遺伝子産物」、「グルコサミニルトランスフェラーゼタンパク質」、「グルコサミニルトランスフェラーゼポリペプチド」、「ヘパロサンシンターゼ遺伝子産物」、「ヘパロサンシンターゼタンパク質」、及び「ヘパロサンシンターゼポリペプチド」は、上記に定義した酵素のアイソフォーム遺伝子産物、タンパク質又はポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列と実質的に同一である任意のDNA配列を指し、また、関連する制御配列の任意の組合せを含むことができる。これらの用語はまた、これらのDNA配列に相補的なRNA又はアンチセンス配列を指す。本明細書で使用する用語「DNAセグメント」は、特定種の全ゲノムDNAから分離されたDNA分子を指す。さらに、これらの酵素のうちの一つのポリペプチドをコードするDNAセグメントは、これらの酵素のうちの一つのコード配列を含み、例えばヒトのような種の全ゲノムDNAから単離された又は精製されたDNAセグメントを指す。用語「DNAセグメント」には、DNAセグメント及びこのようなセグメントのより小さな部分、並びに、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルス等を含む組換えベクターが含まれる。
【0072】
用語「実質的に同一」は、これらの酵素のうちの一つの遺伝子産物、又は酵素遺伝子又は核酸配列のいずれかを定義するために使用される場合には、特定の配列は、天然酵素の配列から1つ又はそれ以上が欠失、置換又は付加されるように変化し、正味の効果は、天然の遺伝子、遺伝子産物又は配列の生物学的活性の少なくとも一部が保持されているものである、ことを意味する。このような配列は、「変異体」配列、又はその生物学的活性はある程度変化するが、元の生物学的活性の少なくとも一部を保持している配列を含む。
【0073】
あるいは、DNA類似体配列は、(a)このDNA類似体配列が、天然の酵素遺伝子のコード領域に由来する、(b)このDNA類似体配列が、ストリンジェントな条件下で(a)のDNA配列とハイブリダイゼーションが可能であり、かつ生物学的に活性な酵素の遺伝子産物をコードする、又は(c)このDNA配列が、(a)及び/又は(b)で定義されたDNA類似体配列とは遺伝子コードが変更された結果縮重している場合には、本明細書に開示される特定のDNA配列に「実質的に同一」である。実質的に同一な類似体タンパク質は、天然タンパク質の対応配列と、約60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%若しくは99%又はそれ以上相同である。より低い相同性を有すが、同等の生物学的活性を有する配列は、同等と考えられる。核酸配列を決定する場合に、実質的に類似するアミノ酸配列をコードすることのできる全ての核酸配列は、生物学的に機能的な等価物を生じる等価なアミノ酸のコドン配列又はその置換における違いに関わらず、参照核酸配列と実質的に同等であると考えられる。
【0074】
DNA又はペプチド配列の相同性は、例えば、ウィスコンシン大学の遺伝学者コンピュータグループから入手可能なGAPコンピュータープログラムを用いて配列情報を比較することにより、決定することができる。このGAPプログラムは、Smith et al. (1981) Adv Appl Math 2:482により改変されたNeedleman et al. (1970) J Mol Biol 48:443のアラインメント法を利用している。このGAPプログラムは、相同性を、類似する整列記号(すなわち、ヌクレオチド又はアミノ酸)の数を、2つの配列の短い方における記号の総数で割ったもの、として定義する。このGAPプログラムの好ましいパラメータは、エンドギャップに対するペナルティを課さないデフォルトのパラメータである。Schwartz et al. (1979) Nuc Acids Res 6(2):745-755; Gribskov et al. (1986) Nuc Acids Res 14(1):327-334を参照されたい。
【0075】
特定の実施形態において、本発明は、その酵素遺伝子又は対応するタンパク質の配列であって、その配列中の必須の配列を含む、酵素遺伝子及び遺伝子産物の使用に関する。例えば、「OST遺伝子の配列として必須の配列」とは、その配列が、OST遺伝子の一部と実質的に同一又は実質的に類似であり、OSTタンパク質又はOST遺伝子の配列と同一ではない又は生物学的に機能的に等価ではない、少数の塩基又はアミノ酸(DNA又は蛋白質のいずれか)を含むことを意味する。「エピメラーゼ遺伝子の配列として必須の配列」、「グリコシルトランスフェラーゼ遺伝子の配列として必須の配列」及び「ヘパロサンシンターゼ遺伝子の配列として必須の配列」は、同様の意味を有する。「生物学的に機能的の等価」は、当技術分野において理解されており、本明細書でさらに詳細に定義される。酵素遺伝子のヌクレオチド配列に対して、ヌクレオチド配列残基の約75%〜約85%又はそれ以上、好ましくは約86%〜約95%又は90%以上、より好ましくは約91%〜約95%、更に好ましくは約96%〜約99%が相同であれば、ヌクレオチド配列は「本質的に同一」である。同様に、酵素ポリペプチドのアミノ酸配列に対して、約60%、70%、80%又は90%、好ましくは90〜95%、より好ましくは96%以上、更に好ましくは95〜98%、最も好ましくは96%、97%、98%又は99%、同一又は機能的に同等又は生物学的に機能的に等価であるペプチド配列は「本質的に同一」な配列である。
【0076】
本発明で採用する酵素の遺伝子産物及び機能的に等価なコドンを有するコード核酸配列もまた本発明に包含される。ここで用いられる用語「機能的に等価なコドン」は、セリンについてACGとAGUコドンのような、同じアミノ酸をコードするコドンを指す。出願人は、本明細書に開示される酵素の同等配列として、表1に記載の機能的に等価なコドンの置換を考慮する。
【0077】
【表2】
【0078】
また、当業者は、アミノ酸配列と核酸配列が、追加のN末端若しくはC末端アミノ酸又は5'若しくは3'核酸配列のような追加の残基を含むことができ、それが、その配列が、タンパク質発現に関して、生物学的タンパク質活性を保持する限り、本明細書中に開示される酵素に包含されることを、理解するであろう。末端配列の付加は、特に、例えばコード領域の5'又は3'部分のいずれかに隣接する種々の非コード配列を含むことができる核酸配列、又は遺伝子内で発生することが知られているイントロンのような様々な内部配列を含むことができる核酸配列に適用される。
【0079】
本発明はまた、本発明の配列に相補的であるヌクレオチドセグメント、一実施形態では、その全長にわたって相補的であるような完全に相補的なセグメント、の使用を包含する。標準的なワトソン−クリック相補性ルールに従った塩基対である核酸配列は、「相補的」である。本明細書で使用する場合、用語「相補的配列」は、上記の同一のヌクレオチドを比較するときの評価のような、実質的に相補的である核酸配列を意味し、又は下記のようにストリンジェントな条件下で問題の核酸セグメントにハイブリダイズすることができるものとして定義される。相補的核酸セグメントの特定の例は、アンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0080】
相補的配列を評価する及び/又は相補的ヌクレオチド配列を単離するための、当該技術分野における一つの技術は、ハイブリダイゼーションである。当業者に容易に理解されるように、核酸のハイブリダイゼーションは、塩基組成、相補鎖の長さ、及びハイブリダイズする核酸間のヌクレオチド塩基のミスマッチの数に加えて、塩濃度、温度又は有機溶媒の種類のような条件によって影響を受ける。ストリンジェントな温度条件は、一般に、約30℃以上、典型的には約37℃以上、好ましくは約45℃以上の温度を含む。ストリンジェントな塩条件は、通常約1,000mM未満、典型的には約500 mM未満、好ましくは約200 mM未満である。しかし、任意の一つのパラメータの大きさよりも、複数のパラメータの組み合わせのほうがはるかに重要である。例えば、Wethmur & Davidson (1968) J Mol Biol 31:349-370.を参照されたい。高レベルの相同性を有する配列を同定及び/又は単離するための適切なハイブリダイゼーション条件を決定することは、当技術分野で周知である。例えば、Sambrook et al. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York.を参照されたい。
【0081】
好ましい高ストリンジェントな条件は、塩濃度が約200mM、温度が約45℃である。このようなストリンジェントな条件の一例では、65℃で4×SSCでハイブリダイゼーションを行い、続いて65℃で0.1×SSCで一時間洗浄する。別の例示的なストリンジェントな条件のハイブリダイゼーションは、50%ホルムアミド、42℃で4×SSCを使用する。「ストリンジェントな条件」の別の例は、例えば、68℃で、6×SSC、0.2%ポリビニルピロリドン、0.2%フィコール、0.2%ウシ血清アルブミン、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、サケ精子DNA 100μg/ml、15%ホルムアミドのような高ストリンジェントの条件を用いる。配列類似性を有する核酸は、50℃で10×SSC(0.9 MのNaCl/0.09 Mのクエン酸ナトリウム)のような低ストリンジェントの条件下でのハイブリダイゼーションにより検出され、55℃で1×SSC中で洗浄しても結合したままである。配列同一性は、例えば、50℃以上で0.1×SSC(9mMのNaCl/0.9 mMのクエン酸ナトリウム)のストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションによって測定することができる。
【0082】
提供された酵素と実質的に同一である核酸は、例えば、対立遺伝子変異体、遺伝子の改変されたバージョン等は、開示されたO-スルホトランスフェラーゼ(OST)にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で結合する。プローブ、特に標識されたDNA配列のプローブを使用することにより、相同遺伝子又は関連遺伝子を単離することができる。相同遺伝子の供給源は、例えば、霊長類、特にヒト;ラットやマウスなどのげっ歯類;イヌ;ネコ;ウシ;ヒツジ;ウマ;昆虫;酵母;線虫;等の任意の種であってもよい。
【0083】
ヒト、マウス及びラットなどの哺乳動物種の間では、相同体は、例えば、ヌクレオチド配列間で少なくとも75%の配列同一性のような、実質的な配列類似性を有する。配列類似性は、保存されたモチーフ、コード領域、隣接領域等のような、より大きな配列のサブセットである参照配列に基づいて計算される。参照配列は、通常、少なくとも約18ヌクレオチド長、更に少なくとも約30ヌクレオチド長であり、比較される完全配列の長さ延長してもよい。配列分析のためのアルゴリズムは、例えば、BLASTなど当技術分野で知られており、Altschul et al. (1990) J Mol Biol 215:403-410に記載されている。本明細書で提供される配列は、データベース検索において、関連する酵素及び相同タンパク質を認識するために不可欠である。
【0084】
生物学的なレベルでは、同一性は、遺伝子ファミリーの所定のファミリーメンバーにおいて同じ相対的位置に同じアミノ酸を持つ、ということである。相同性と類似性は、一般的に、より広い用語として見られている。例えば、生化学的に類似のアミノ酸、例えば、ロイシン及びイソロイシン、又はグルタミン酸/アスパラギン酸は、同じ位置に存在することができ、これらは、それ自体は同一ではないが、生化学的に「類似」である。本明細書に開示するように、これらは、保存的相違、又は保存的置換と呼ばれる。これは、DNAレベルでの保存的変異とは異なる。この保存的変異は、例えば、両方ともセリンをコードするTCCからTCAへの変更のように、コードされたアミノ酸を変更せずにヌクレオチド配列を変化させる。割合(%)が本明細書で言及される場合は、その割合(%)の同一性を意味する。この同一性割合(%)は、プログラムGENEWORKSTM (Oxford Molecular, Inc. of Campbell, California, U.S.A.)及び/又はNCBIウェブサイトのBLASTプログラムを用いたアラインメントによって生成することができる。このほかの一般的に使用されるアラインメントプログラムは、CLUSTAL Wと題され、Thompson et al. (1994) Nucleic Acids Res 22(22):4673-4680に記載されている。
【0085】
用語「遺伝子」は、簡単のために、機能的なタンパク質、ポリペプチド又はペプチドコード単位について使用される。当業者に理解されるように、この機能的用語は、ゲノム配列及びcDNA配列の両方を含む。
上述のように、本明細書に記載されている酵素タンパク質及びペプチドの構造に修飾及び変更することが可能であり、依然として、同様又は他の方法で、所望の特性を有する分子を構成することができる。例えば、あるタンパク質の構造において、例えば、細胞の核の構造と相互作用する能力をかなり損失することなしに、特定のアミノ酸を他のアミノ酸に置換することができる。それは、タンパク質の生物学的機能活性を規定するのはタンパク質の相互作用能力及び性質であるので、同じ特性、強化された特性、又はアンタゴニスト特性を有するタンパク質を得るために、タンパク質配列(又はそれをコードする核酸配列)において、特定のアミノ酸配列の置換を行うことができる、このような特性は、天然タンパク質の正常な標的と相互作用することによって達成することができる。しかしそうである必要はないし、また、本発明の生物学的活性は、特定の作用機構に限定されるものでもない。従って、本発明に従えば、生物学的有用性又は活性の相当な損失なしに、酵素タンパク質及びペプチド又は基礎となる核酸配列の配列中に様々な変更を行うことが可能であると考えられる。
【0086】
本明細書において使用される生物学的に機能的に等価なペプチドにおいて、特定の、しかしほとんど又は全てではない、アミノ酸を置換することができる。従って、出願人は、ここに開示された酵素の配列において、本明細書に記載される生物学的に等価なアミノ酸をコードするコドンを置換することを意図するが、便宜のためにその全体は本明細書に記載されていない。
代替的に、組換えDNA技術を用いて機能的に等価なタンパク質又はペプチドを作成することができる。この組換えDNA技術においては、交換されるアミノ酸の特性を考慮して、タンパク質構造の変化を操作することができる。例えば、タンパク質の抗原性に改良を導入し又は酵素変異体を試験して、分子レベルでの酵素活性又は他の活性を調べるために、部位特異的変異誘発技術を用いて、人間によって設計された変化を導入することができる。
【0087】
本明細書に記載された酵素タンパク質やペプチドの修飾に用いてもよいアミノ酸置換のようなアミノ酸置換は、一般に、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性(例えば、疎水性、親水性、電荷、サイズなど)に基づいている。アミノ酸側鎖置換基のサイズ、形状及び型を分析することにより、アルギニン、リシン及びヒスチジンは全て正に荷電した残基であり、アラニン、グリシン及びセリンのサイズは同様であり、フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは全て一般的に類似の形状を有する、ことが明らかになった。従って、これらを考慮して、アルギニン、リシン及びヒスチジン;アラニン、グリシン及びセリン;並びにフェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン;は生物学的に機能的等価物として定義されている。この他の生物学的に機能的に等価な変更は、当業者によって理解されるであろう。
【0088】
生物学的に機能的等価なアミノ酸置換を行う際に、アミノ酸の疎水性親水性指標を考慮することができる。各アミノ酸は、それらの疎水性及び電荷特性に基づいて疎水性親水性指標が割り当てられている。それらは、イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リシン(-3.9);及びアルギニン(-4.5)である。
タンパク質に相互作用的な生物学的機能を付与する際のアミノ酸の疎水性親水性指標の重要性は、当技術分野で一般に理解されている(Kyte et al. (1982) J Mol Biol 157:105,
これは参照により本明細書に組み込まれる。)。特定のアミノ酸が同等の疎水性親水性指標を有する他のアミノ酸に置換されても、依然として類似の生物学的活性を保持できることが知られている。疎水性親水性指標に基づいて変更を行う際には、疎水性親水性指標が元の値の±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、元の値の±1以内の置換がより好ましく、元の値の±0.5以内の置換がさらに好ましい。
【0089】
また、同様のアミノ酸の置換を、親水性に基づいて効果的に行うことができることが、当技術分野で理解されている。米国特許第4,554,101号(参照により本明細書に組み込まれる。)によれば、隣接するアミノ酸の親水性によって支配されるタンパク質の最大局所平均親水性は、その免疫原性及び抗原性、即ち、タンパク質の生物学的特性と相関する。アミノ酸が類似の親水性値を有する別のアミノ酸に置換されても、依然として生物学的に等価なタンパク質を得ることができることが理解されている。
米国特許第4,554,101号に詳述されているように、以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。
同様の親水性値に基づいて変更を行う際には、親水性値が元の値の±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、元の値の±1以内の置換がより好ましく、元の値の±0.5以内の置換が特に好ましい。
【0090】
以上の議論は、アミノ酸の変更から生じる機能的に等価なポリペプチドに焦点を当ててきたが、これらの変更は、遺伝コードが縮重し、2つ又はそれ以上のコドンが同一のアミノ酸をコードすることができることも考慮して、コードするDNAの改変により影響されることが理解されるであろう。
従って、本発明が、スルホトランスフェラーゼ、エピメラーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、及び/又はヘパロサンシンターゼを含む本明細書に開示された酵素の特定の核酸及びアミノ酸配列に限定されないことが理解されるであろう。従って、組換えベクター及び単離されたDNAセグメントは、(i) 酵素ポリペプチドのコード領域自体を含むことができ、(ii) 基本的なコード領域に選択された変更又は修飾を生じるコード領域を含むことができ、又は(iii) それにもかかわらず、酵素ポリペプチドのコード領域を含む、又はアミノ酸配列を有する生物学的に機能的に等価なタンパク質又はペプチドをコードできる、より大きなポリペプチドを含むことができる。酵素の生物学的活性は、当技術分野で一般に知られている技術、例えば、実施例で開示される技術、を用いて決定することができる。
【0091】
本発明の核酸セグメントは、コード配列自体の長さとは関係なしに、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、追加の制限酵素部位、多重クローニング部位、その他のコードセグメント等のような他のDNA配列と組み合わせて、その全体の長さを大幅に変化させることができる。従って、ほとんど任意の長さの、好ましくは意図された組換えDNAプロトコルにおける調製及び使用の容易さによって制限される全長の、核酸フラグメントを用いることができると考えられる。例えば、本明細書に開示された酵素のいずれかの核酸配列に相補的な約10ヌクレオチドのような短いストレッチを含む核酸断片を調製することができる。この核酸断片の長さは10,000又は5000塩基対までであり、特定の場合には3000のセグメントが好ましい。全長が約4000、3000、2000、1000、500、200、100、及び約50の塩基対を有するDNA断片が有用であると考えられる。
【0092】
組換えベクターは、本発明のさらなる態様を形成する。特に有用なベクターは、DNAセグメントのコード部分がプロモーターの制御下に配置されるものである。このプロモーターは、酵素遺伝子と自然に関連するものであってもよく、それは、例えば、組換えクローニング技術及び/又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術及び/又は当技術分野で公知の他の方法を、本明細書に開示される組成物と共に、利用して、コードセグメント又はエクソンの上流に位置する5''非コード配列を単離することによって得ることができる。
【0093】
他の実施形態において提供されるように、このコードDNAセグメントを、組換え又は異種プロモーターの制御下に配置することにより、特定の利点を得ることができる。本明細書で使用される場合、組換え又は異種プロモーターは、その自然な環境において酵素遺伝子に関連しないプロモーターである。このようなプロモーターは、細菌、ウイルス、真核生物、又は哺乳動物の細胞から単離されたプロモーターを含むことができる。当然のことながら、発現のために選択された細胞型において、DNAセグメントの発現を効果的に指令するプロモーターを用いることが重要である。タンパク質発現のためにプロモーター及び細胞型の組み合わせを使用することは、分子生物学分野の当業者に一般に知られている(例えば、Sambrook et al. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York)。用いられるプロモーターは、構成的又は誘導的であってもよく、組換えタンパク質又はペプチドの大規模生産に有利であるような、導入されたDNAセグメントの高レベルの発現を指令するために適切な条件下で使用することができる。
【0094】
多糖を硫酸化する本発明の方法のいくつかの実施形態において、本発明の酵素(例えば、スルホトランスフェラーゼ、エピメラーゼ、グリコシルトランスフェラーゼ、及び/又はヘパロサンシンターゼ)を基質上に固定化することができる。これは、この結合した酵素を除くすべての反応成分を除去するために、硫酸化反応後に、酵素が結合する基質を洗浄することができるという利点を提供する。このように、この反応を触媒する酵素からこの反応の生成物を容易に分離することができ、かつこの酵素をリサイクルして複数の硫酸化反応に再利用することができる。いくつかの実施形態において、この基質はアガロースである。特定の実施形態では、このアガロース基質は、アガロースビーズであり、酵素はビーズに連結されている。
【0095】
V.B.アデノシン3',5'-二リン酸(PAP)の抑制効果の低減
ヘパリン化合物を合成するための本明細書に開示される方法は、3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)再生酵素及びスルホドナー化合物の使用を含むことができる。PAPS再生酵素は、基質としてスルホドナー化合物を用いて、アデノシン3',5'-二リン酸(PAP)からPAPSの再生を触媒する。例えば、米国特許第6,255,088号及びBurkart et al., (2000) J. Org. Chem. 65, 5565-5574を参照されたい(両者とも本明細書中にその全体が参考として援用される。)。従って、このPAPS再生システムは、一次スルホドナー分子であるPAPSとの反応混合物を常に「充電」しながら、スルホトランスフェラーゼ活性に対するPAPの蓄積の抑制効果を減少させるという、二重の利点を提供する。いくつかの実施形態において、このPAPS再生酵素は、エストロゲンスルホトランスフェラーゼである。
【0096】
従って、本発明のある態様は、多糖基質の硫酸化に連結するスルホドナー化合物(例えば、PAPS)の再生方法に関する。特に、このプロセスは、多糖基質の硫酸化が一又はそれ以上のO-スルホトランスフェラーゼ(OST)などのスルホトランスフェラーゼにより触媒され、3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)がアデノシン3',5'-二リン酸(PAP)に変換されるタイプのものであることができる。この硫酸化プロセスは、PAPからPAPSへの酵素再生と連携することができる。この酵素再生は、触媒としてアリールスルホトランスフェラーゼを、基質としてアリール硫酸を用いることができる。いくつかの実施形態において、この酵素再生は、ヒト又はマウスのエストロゲンスルホトランスフェラーゼ(EST)を含むことができる。本明細書の他の箇所に開示されるように、好ましい炭水化物基質には、例えば、ヘパリンを含むヘパラン硫酸塩のようなグリコサミノグリカン(GAG)が含まれる。
【0097】
3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)再生システムによるスルホトランスフェラーゼで触媒される硫酸化反応と連携して、この反応に利用されるPAPSをアデノシン3',5'-二リン酸(PAP)から直接産生するという更なる利点を提供することができる。すなわち、反応混合物にスルホトランスフェラーゼを添加する前又は同時に、PAPS再生酵素をPAPと組み合わせてこの反応混合物を配合することができる。このPAPS再生酵素は、PAPから、スルホトランスフェラーゼにより使用されるPAPSを生成することができ、それにより、反応混合物により高価で不安定なPAPSを供給する必要性が軽減される。例えば、PAPS再生システムで、スルホドナーとしてPNPSを使用することは、潜在的に硫酸化多糖の合成コストを1,000倍程度低減することができる。
このように、本発明のいくつかの実施形態において、(i) アデノシン3',5'-二リン酸(PAP)、PAPS再生酵素及びスルホドナー化合物(PAPS以外、例えば、PNPS)から成る反応混合物を提供する段階、及び(ii) この反応混合物を、基質としてスルホドナー化合物を用いてPAPS再生酵素がPAPから3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)の産生を触媒するのに十分な時間インキュベートする段階、から成る多糖を硫酸化する方法が提供される。
この方法は、更に、(iii) この反応混合物を、多糖基質及び少なくとも一つのO-スルホトランスフェラーゼ(OST)酵素と共にインキュベートする段階を含む。そこでは、OST酵素によって多糖基質から硫酸化多糖への製造が触媒され、それに伴い、PAPSがPAPに変換され、続いてPAPS再生酵素は、再び基質としてスルホドナー化合物を利用して、PAPからPAPSの再生反応を触媒する。
本明細書には付録が含まれ、本開示の一部であることが意図される。
【0098】
VI.治療法
いくつかの実施形態において、患者に1又はそれ以上の本発明のヘパリン化合物を投与することにより患者を治療する方法が提供される。例えば、いくつかの態様において、(i) 治療すべき患者を提供する段階、及び(ii) 該患者に抗凝固活性を有するヘパリン化合物を投与する段階から成る患者を治療する方法が提供される。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物は下記のいずれかである:
【化1】
及び
【化2】
(式中、Rは、存在してもしなくてもよく、存在する場合には検知可能なタグ、任意にパラニトロフェニル基から成る。)。いくつかの実施形態において、この治療に用いられるヘパリン化合物は、この明細書に開示されるように、可逆的抗凝固活性を有する合成された低分子量ヘパリン化合物から成り、該ヘパリン化合物の抗凝固活性がプロタミンによって可逆的であり、該抗凝固活性が1ug/mlのプロタミンの存在下で、50%又はそれ以上が可逆的である。
【0099】
いくつかの実施形態において、抗凝固療法を必要とする患者を治療する方法が提供される。このような方法は、(i) 抗凝固療法を必要とする患者を提供する段階、(ii) この患者に抗凝固活性を有するヘパリン化合物を投与する段階、(iii) ヘパリンによって誘起される血小板減少症について患者をモニターする段階、及び(iv) この患者がヘパリンによって誘起される血小板減少症に苦しむ場合に、このヘパリン化合物の抗凝固活性を反転させるために解毒剤をこの患者に投与する段階から成る。このような方法において、このヘパリン化合物は、例えば、下記から選択される構造を有するヘパリン化合物から成るヘパリンから成ることができる:
【化3】
及び
【化4】
(式中、Rは、存在してもしなくてもよく、存在する場合には検知可能なタグ、任意にパラニトロフェニル基から成る。)。いくつかの実施形態において、このヘパリン化合物の抗凝固活性を反転させるための解毒剤はプロタミンである。
【0100】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される治療方法のいずれかで治療されるべき患者は、静脈血栓塞栓症に罹患している患者であってもよい。いくつかの実施形態において、治療されるべき患者は、腎障害のある患者であってもよい。いくつかの実施形態において、この患者はヒトである。
【実施例】
【0101】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。
以下の実施例は、例示的実施形態を提供する。本開示及び当業者の一般的なレベルに照らして、当業者は、以下の実施例は例示のみを意図するものであり、本発明の範囲を逸脱することなく、多くの変更、修飾及び変更が採用されうることを理解するであろう。
【0102】
実施例1〜11のための材料と方法
ヘパラン硫酸(HS)生合成酵素の発現
この合成のために、N-スルホトランスフェラーゼ(NST)、グルクロニルC−エピメラーゼ(C5-epi)、2-O-スルホトランスフェラーゼ(2-OST)、6-O-スルホトランスフェラーゼアイソフォーム1(6-OST-1)、6-O-スルホトランスフェラーゼアイソフォーム3(6-OST-3)、3-O-スルホトランスフェラーゼアイソフォーム1(3-OST-1)、3-O-スルホトランスフェラーゼアイソフォーム5(3-OST-5)、大腸菌K5株由来のN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(KfiA)、及びパスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)由来のヘパロサンシンターゼ−2(pmHS2)の合計9つの酵素を使用した。前述のように、全ての酵素を大腸菌で発現させ、適切なアフィニティークロマトグラフィーにより精製した(Liu, R. et al., J Biol Chem 285, 34240-34249, 2010; Xu, D., Moon, A., Song, D., Pedersen, L.C. & Liu, J. Nat Chem Biol 4, 200-202, 2008)。
【0103】
酵素補因子の調製
アデノシンホスホキナーゼ及びATP-スルフリラーゼを用いて、ATP及び硫酸ナトリウムからスルホドナー、3'-ホスホアデノシン-5'-ホスホ硫酸(PAPS)を調製した(Zhou, X., Chandarajoti, K., Pham, T.Q., Liu, R. & Liu, J., Glycobiology 21, 771-780, 2011)。
UDP-GlcNTFAの調製は、グルコサミン(Sigma-Aldrich社)から出発し、文献記載のプロトコルに従って(Liu, R. et al., J Biol Chem 285, 34240-34249, 2010)、S-エチルトリフロロアセテート(Sigma-Aldrich社)と反応させることによって、このグルコサミンをN-トリフルオロアセチルグルコサミン(GlcNTFA)に変換した。得られたGlcNTFAを、N-アセチルヘキソサミン1-キナーゼを用いてGlcNTFA -1-リン酸に変換した(Zhao, G., Guan, W., Cai, L. & Wang, P.G., Nat. Protoc. 5, 636-646, 2010)。N-アセチルヘキソサミン1-キナーゼを発現するプラスミドは、Peng Wang 教授(ジョージア州立大学)から得た。この酵素の発現は、文献記載に従って(Zhao, G., Guan, W., Cai, L. & Wang, P.G., Nat. Protoc. 5, 636-646, 2010)、大腸菌で実施した。文献記載に従って(Liu, R. et al., J Biol Chem 285, 34240-34249, 2010)、グルコサミン-1-リン酸アセチルトランスフェラーゼ/ N-アセチルグルコサミン-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ(GlmU)を用いてGlcNTFA -1-リン酸を変換することにより、UDP-GlcNTFAを合成した。以下説明するように、得られたUDP-GlcNTFA は、KfiAを使用する伸長反応に使用できる。
【0104】
化合物6の合成
出発物質であるGlcA-PNPから化合物6への変換は、5つの伸長段階、1つの脱トリフォロロアセチル化/N-硫酸化段階、及び1つのC5-エピマー化/2-O-硫酸化段階を含む7つの段階から成る。GlcA-PNP(100mg、Sigma-Aldrich社)からGlcA-GlcNTFA-GlcA-GlcNTFA -GlcA-PNPへの伸長は、2つの細菌性グリコシルトランスフェラーゼ、大腸菌K5株由来のN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(KfiA)及びパスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)由来のヘパロサンシンターゼ−2(pmHS2)を用いて、4つの段階で完了した。GlcNTFA残基を導入するために、GlcA-PNP(1.2 mM)を、トリス(25mM、pH7.5)、MnCl2(15 mM)及びUDP-GlcNTFA(1.5mM)を含む緩衝液中で、大腸菌K5株由来のN-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(KfiA)(20μgml-1)と室温で一晩インキュベートした。GlcA残基を導入するために、二糖基質であるGlcNTFA-GlcA-PNP(1.2ミリモル)を、トリス(25mM、pH7.5)、MnCl2(15 mM)及びUDP-GlcA(1.5mM)を含む緩衝液中で、パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida)由来のヘパロサンシンターゼ−2(pmHS2)(20μgml-1)と室温で一晩インキュベートした。各伸長段階の後、生成物を、C18カラム(0.75×20 cm; Biotage)を用いて精製した。即ち、H2O及び0.1%TFA中で、0-100%アセトニトリルの直線勾配で、2 mlmin-1の流速で60分間溶出した。この溶出液を310 nmにおける吸光によってモニターし、生成物の同定を、ESI-MSによって確認した。GlcNTFA及びGlcA残基の付加をもう一回繰り返し、その後N-脱トリフォロロアセチル化/N-硫酸化を行うための五糖骨格を形成した。
【0105】
この五糖骨格を、さらに脱トリフォロロアセチル化し、続いてN-スルホトランスフェラーゼ(NST)を用いてN-硫酸化した。この五糖骨格(280 mg)を乾燥し、氷上で0.1M LiOH 30ml中に2時間再懸濁した。脱トリフォロロアセチル化反応の完了程度を、PAMN-HPLC分析及びESI-MSによりモニターした。脱トリフォロロアセチル化の完了後、反応混合物のpHは7.0に低下した。これを、780 ml中のMES 50mM(pH7.0)、N-スルホトランスフェラーゼ(NST)10μgml-1及びPAPS 0.5 mMと37℃で一晩インキュベーションした。PAPS量はこの五糖中のNH2基の約1.5倍モル量であった。N-硫酸化された生成物を、Qカラムにより精製し、GlcA-GlcNS-GlcA-GlcNS-GlcA-PNPの構造を有する精製物を透析した。
このGlcA-GlcNS-GlcA-GlcNS-GlcA-PNP五糖に、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(KfiA)を用いて、別のGlcNTFAを導入した。以下のその手順を示す。反応を、PAMN-HPLCにより310nmに吸光を有するピークの保持時間のシフトを観察した。反応混合物を、2リットル中のMES 50mM(pH7.0)、CaCl2 2mM、C5-epi 10μgml-1、2-OST 10μgml-1、PAPS 0.2 mM及び六糖基質 0.13 mMと37℃で一晩インキュベーションした。次いで、この反応混合物をQ-セファロースカラムで精製し、化合物6を得た。
【0106】
HPLC分析
DEAE-HPLC及びポリアミンベースのアニオン交換(PAMN)-HPLCの両方を用いて、生成物の純度を分析した。HPLC分析のために溶出条件は、文献に記載されている(Liu, R. et al. J Biol Chem 285, 34240-34249, 2010)。
【0107】
実施例1
化合物1、2、3、4及び5の合成
脱トリフォロロアセチル化/N-硫酸化段階、6-O-硫酸化段階及び3-OST-1酵素による3-O-硫酸化段階を含む同じ反応を行って、化合物6から化合物1へ、化合物7から化合物2へ、及び化合物8から化合物3へ変換した。化合物9から化合物4への変換は、6-O-硫酸化及び3-OST-1硫酸化を含む2段階から成る。化合物4から化合物5への変換は、3-OST-5の酵素を用いて3-O-硫酸化することにより完了した。6-O-硫酸化反応は、20-40ml中のMES 50mM(pH7.0)、PAPS 1.5 mM及び基質 0.3 mM、6-OST-1 0.2mgml-1及び6-OST-3 0.2mgml-1と37℃で一晩インキュベーションすることから成る。この反応の進行度をDEAE-HPLCによりモニターした。3-OST-1及び3-OST-5の硫酸化反応混合物は、MES 50mM(pH7.0)、MnCl2 10mM、MgCl2 5mM、PAPS 0.5 mM、基質 0.25 mM、3-OST-1 10ugml-1又は3-OST-5 10ugml-1を含み、これを37℃で一晩インキュベーションした。この反応の進行度をDEAE-HPLCによりモニターし、この反応物をQ-セファロースカラムで精製した。
【0108】
実施例2
中間体と低分子量ヘパリン(LMWH)化合物のQ-セファロースによる精製
化合物6、7、8及び9並びにその他の初期中間体の精製を、高速流Q-セファロースカラム(15×200mm; GE Health Care, Wauwatosa, Wisconsin, USA)を用いて行った。即ち、pH5.0のNaOAc 20mM中で、20-100% 1M NaClの直線勾配で、2 mlmin-1の流速で2時間溶出した。また高度に硫酸化されたオリゴ糖、すなわちLMWH化合物1-5の精製を、Q-セファロースカラムを用いて行った。即ち、pH5.0のNaOAc 20mM中で、30-100% 2M NaClの直線勾配で、2 mlmin-1の流速で2時間溶出した。
【0109】
インビトロ及びエクスビボの抗Xa活性の測定
この評価は文献に記載の方法に基づく(Zhang, L. et al., J. Biol. Chem. 276, 42311-42321, 2001; Duncan et al., Biochim Biophys Acta 1671, 34-43, 2004)。簡単に述べると、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いてヒト第Xa因子(Enzyme Research Laboratories, South Bend, Indiana, USA)を50 Uml-1に希釈した。一方、発色性基質S-2765 (Diapharma, Westchester, Ohio, USA)を水に1 mgml-1で溶解した。未分画ヘパリン(UFH)(US Pharmacopea)、ラブノックス(R) (エノキサパリン、地元の薬局から入手)及び低分子量ヘパリン(LMWH)化合物1〜5を、種々の濃度(3〜600μgml-1)でPBSに溶解した。ヒト血漿(Sigma-Aldrich, St. Louis, Missouri, USA) 20μl及び試料を含む溶液8μlから成る反応混合物を、室温で5分間インキュベートした。続いてこれに第Xa因子(100μl)を加えた。これを4分間室温でインキュベートした後、S-2765基質 30μlを添加した。反応混合物の405nmの吸光度を5分間連続して測定した。この吸光度を、反応時間に対してプロットした。濃度に対する初期反応速度を用いて、IC50値を計算した。
【0110】
実施例3
35S標識の低分子量ヘパリン(LMWH)化合物の調製
未分画ヘパリン(UFH)(US Pharmacopea)とラブノックス(R)(エノキサパリン、地元の薬局から入手)をN-スルホトランスフェラーゼにより修飾した。この反応は、合計500μl中のMES 50mM(pH7.0)、N-スルホトランスフェラーゼ 0.1 mgml-1及び[35S] PAPS(特異活性: 2.2×104cpm/pmol)0.5 nmol、未分画ヘパリン(UFH)又はラブノックス(R)(エノキサパリン)50μgと37℃で一晩インキュベーションすることから成る。この反応物をDEAEカラムで精製した。35S標識LMWH化合物1〜4を、3-O-スルホ基を有しないLMWH化合物の中間体から調製した。この反応は、合計500μl中のMES 50mM(pH7.0)、MnCl2 10mM、MgCl2 5mM、3-OST-1 0.1mgml-1及び [35S] PAPS(特異活性: 2.2×104cpm/pmol)0.5 nmol、オリゴ糖5μgと37℃で一晩インキュベーションすることから成る。35S標識LMWH化合物5は、化合物4から調整される。この反応は、合計500μl中のMES 50mM(pH7.0)、MnCl2 10mM、MgCl2 5mM、3-OST-5 0.1mgml-1及び [35S] PAPS(特異活性: 2.2×104cpm/pmol)0.5 nmol、オリゴ糖5μgと37℃で一晩インキュベーションすることから成る。35S-標識された化合物5をDEAE-HPLCカラムで精製した。
【0111】
実施例4
アンチトロンビン(AT)に対する低分子量ヘパリン(LMWH)化合物の結合親和性の測定
各試料とATの解離定数(Kd)をアフィニティー共電気泳動を用いて測定した(Lee, M.K. & Lander, A.D., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88, 2768-2772, 1991)。0、8、16、32、60、120、250、500及び1000 nMの濃度のアンチトロンビン(AT)ゾーンに、レーンごとに約1,500〜2,500cpmの35S標識LMWH化合物1〜5を割り当てた。このゲルに300 mAを2時間かけ、乾燥し、ホスホイメージャー(PhosphoImager, Amersham Biosciences, Wauwatosa, Wisconsin, USA, Storm 860)上で分析した。遅延係数を、R=(M0−M)/M0(式中、M0はATなしでゾーン中の多糖の移動度、Mは、各分離ゾーンを通る試料の移動度を表す。)から計算した。続いて、この遅延係数を、ATの各濃度で割った遅延係数に対してプロットした。この直線の傾きは、-1/Kdを表す。
【0112】
実施例5
インビトロでのプロタミンによる低分子量ヘパリン(LMWH)化合物の中和
手順は文献記載の方法に従った(Sundaram, M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 100, 651-656, 2003)。低分子量ヘパリン(LMWH)化合物及び塩化プロタミン(Sigma-Aldrich)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解した。各化合物は、抗Xa活性について異なるIC50値を有するため、各化合物のLMWH試料の濃度は異なる。反応混合物は、ヒト血漿(Sigma-Aldrich)20μl、低分子量ヘパリン(LMWH)化合物の原液(その抗Xa活性のIC50の400倍)2μl及び種々の濃度(0〜90μg/ml)のプロタミン8μlから成り、これを室温で5分間インキュベートした。続いて、上記のようにこの混合物(30μl)の抗Xa活性を測定した。
【0113】
実施例6
マウスにおけるプロタミンによる低分子量ヘパリン(LMWH)化合物の中和
この研究は、8週齢の雄のC57BL/6Jマウス(Jackson Laboratories, Bar Harbor, Maine, USA)に行った(各グループごとにn=4)。このマウスの実験は、UNC動物管理使用委員会によって承認され、国立衛生研究所のガイドラインを遵守した。
イソフルラン麻酔下のマウスの皮下に、プロタミン(15 mgkg-1)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を投与する30分前に、PBS、未分画ヘパリン(UFH)(3 mgkg-1)、ラブノックス(R)(エノキサパリン)(3 mgkg-1)又は化合物5(0.6 mgkg-1)を、眼窩叢の注射を介して静脈内投与し、その5分後に下大静脈から血液試料を採取し、それをクエン酸ナトリウムの3.2%溶液(最終容積比9:1)を予め含むシリンジに入れた。血液試料を4℃で15分間、4,000Gで遠心分離し、マウス血漿を得た。続いて、このマウス血漿を用いて、抗Xa活性を測定した。抗Xa活性のex vivo分析を、上記のin vitroの実験と同様に行った。簡単に述べると、異なるマウスのグループから得た血漿(10μl)を、ヒトXa因子80 nM(10μl)と室温で4分間インキュベートした後、S-2765(1 mgml-1、30μl)を加えた。PBSを注入したマウスから得たマウス血漿中の抗Xa活性を100%とした。双方向ANOVAとBonferroni's post-hoc test (GraphPad Prism Software, La Jolla, California, USA)により、多重比較の統計分析を行った。
【0114】
実施例7
尾から出血のマウスモデル
イソフルラン麻酔下のマウスの皮下に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又はプロタミン(15 mgkg-1)を眼窩叢の注射を介して静脈内投与した30分後に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又は化合物5(0.6 mgkg-1)を投与した。その5分後に、尾の先端部を、端から約3〜4mmのところの一定の直径(1.5mm)で離断した。その結果、動脈と静脈の両方から出血した。この尾を直ちに、予め温めたPBS(37℃)13mlを含む15 mlのファルコンチューブに入れ、血液損失を30分間観察した。一次出血時間を、出血の最初の停止までの時間と定義した。その後、各再開出血の時間も記録し、総出血時間を計算した。化合物5/プロタミングループの中の、不正確なプロタミン注射を行った1匹のマウスを、実験から除外した。PBS中に採取した血液を用いて、全血液損失量を計算した。試料にギ酸を添加し(比率70:30)、405nmの吸光度を測定した。既知量の血液とPBS 13mlを混合することにより標準曲線を作成した。一方向ANOVA (GraphPad Prism Software, La Jolla, California, USA)により、各グループ間の統計的分析を行い、続いてBonferroni多重比較試験を行った。
【0115】
実施例8
質量分析(MS)
Thermo LCQ-Decaで低解像度分析を行った。低分子量ヘパリン(LMWH)化合物とその中間体を200μlのMeOH/H2O(9:1)で直接希釈した。シリンジポンプ(Harvard Apparatus, Holliston, Massachusetts, USA)を用いて、試料を導入した(35μlmin-1)。5 KVと275℃に設定されたエレクトロスプレー源を用いて負イオンモードで実験を行った。硫酸化されたオリゴ糖(1μl)を、70%のアセトニトリル200μl及び10mMイミダゾールを含む異なる溶液に希釈した。硫酸化オリゴ糖の実験は、2 KVと200℃に設定されたエレクトロスプレー源を用いて負イオンモードで実験を行った。自動感度調整装置を、フルスキャン質量分析(MS)のために、1×107に設定した。質量分析(MS)データを取得し、Xcalibur 1.3を用いてデータ処理をした。
【0116】
高分解能エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)を、Thermo LTQ XL Orbitrap (Breman, Germany)上で以下の条件で行った。ルナ親水性液体相互作用クロマトグラフィー(HILIC)カラム(2.0×150mm2、200Å、Phenomenex, Torrance, California, USA)を用いて、オリゴ糖混合物を分離した。移動相Aは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)グレードの水を用いて調製された5 mM酢酸アンモニウムであり、移動相Bは、HPLCグレードの水2%を含む98%HPLCグレードのアセトニトリルで調整された5 mM酢酸アンモニウムである。Agilent 1200オートサンプラーを介してオリゴ糖混合物(1.0μgμL-1)8.0μLを注入した後、HPLCバイナリポンプを用いて、150μLmin-1の流速で40分かけて、35%A〜10%Aの勾配を送達した。LCカラムを、LTQ-オービトラップXLフーリエ変換(FT)質量分析計(MS)(Thermo Fisher Scientific, San-Jose, California, USA)の標準エレクトロスプレーイオン化源にオンラインで接続した。FT-MS検出のためのソースパラメータを、インソースフラグメンテーション及び硫酸塩の損失を最小化し、負イオンモードでの信号/雑音比を最大にするために、Arixtra(R)(薬局で購入)を用いて最適化した。インソースフラグメンテーションを防ぐために使用された最適化パラメータは、噴霧電圧4.2kV、キャピラリー電圧-40 V、チューブレンズ電圧-50 V、キャピラリー温度275℃、シース流速30、及び補助ガスの流量6であった。質量スペクトルの外部較正により、日常的に3 ppmより優れた質量精度をもたらした。すべてのFT質量スペクトルは、300〜2000Daの質量範囲において分解能60,000で取得された。
【0117】
実施例9
NMR分析
低分子量ヘパリン(LMWH)化合物及びその中間体を、1D 1H-NMR及び2D NMRにより分析した(1H-1H COSY, 1H-13C HMQC)。すべてのNMR実験は、Topsin 2.1ソフトウェアを備えたBruker AvanceII 800 MHzスペクトロメータを用いて298 Kで行った。試料(3.0〜6.0mg)を、それぞれD2O(99.996%、Sigma-Aldrich)0.5 mlに溶解し、3回凍結乾燥し、交換可能なプロトンを除去した。これらの試料を、D2O 0.4mlに再溶解し、NMR用マイクロチューブ(OD 5mm、Sigma-AldrichmのNorrell NMRチューブ)に移した。1D 1H NMR実験は、256スキャン及び捕捉時間850ミリ秒で行った。2D 1H-1H COSY実験は、16スキャン、緩和遅延1.5秒、及び取得時間500ミリ秒で行った。2D 1H-13C HMQC実験は、16スキャン、緩和遅延1.5秒、及び取得時間250ミリ秒で行った。
また、低分子量ヘパリン(LMWH)化合物及びその中間体について、VnmrJ 2.2Dソフトウェアを備えたVarian Inova 500 MHzスペクトロメータを用いて、1D 1H NMR、1D 13C NMR及び2D NMR(1H-1H COSY、1H-13C HMQC)による分析を行った。試料(2.0〜5.0mg)を、それぞれD2O(99.996%、Sigma-Aldrich)0.5 mlに溶解し、3回凍結乾燥し、交換可能なプロトンを除去した。これらの試料を、D2O 0.5mlに再溶解し、NMR用マイクロチューブ(OD 5mm、Sigma-AldrichmのNorrell NMRチューブ)に移した。1D 1H NMR実験は、256スキャン及び捕捉時間768ミリ秒で行った。1D 13C NMR 実験は、40,000スキャン、緩和遅延1.0秒、及び取得時間1,000ミリ秒で行った。2D 1H-1H COSY 実験は、48スキャン、緩和遅延1.8秒、及び取得時間204ミリ秒で行った。2D 1H-13C HMQC実験は、48スキャン、緩和遅延1.5秒、及び取得時間256ミリ秒で行った。
【0118】
実施例10
低分子量ヘパリン(LMWH)化合物とスタブリン-2(Stablin-2)の結合の測定
標準的な組織培養インキュベーター中で実験を行う少なくとも2日前に、24ウェルプレート中でDMEM+8%FBS+50μgml-1ハイグロマイシンを用いて、190-HAREを発現するスタブリン-2(Stablin-2)細胞株(Harris et al., J. Biol. Chem. 279, 36201-36209, 2004)を90%コンフルエントまで成長させた。既知量の35S標識LMWH化合物、ラブノックス(R)(エノキサパリン)又は未分画ヘパリン(UFH)を含有するエンドサイトーシス培地(DMEM + 0.05%BSA)を三回同じ方法で各ウェルに添加し、37℃、5%CO2の条件でこの細胞と共に3時間インキュベートした。少なくとも100倍過剰の非標識未分画ヘパリン(UFH)と共に各放射性標識リガンドをインキュベートすることによって、受容体特異的内部移行を評価した。次いで、この細胞をハンクス液(CaCl2 1.26 mM、KCl 5.33 mM、KH2PO4 0.44 mM、MgCl2-6H2O 0.5mM、MgSO4-7H2O 0.41 mM、NaCl 138 mM、NaHCO3 4.0 mM、Na2HPO4 0.3mM、フェノールレッド液、0.3mM、pH7.2)で3回洗浄し、この細胞を0.4 mlの0.3 N NaOHに溶解した。この細胞溶解物混合物0.35 mlを4 mlのシンチレーション液(Perkin Elmer, Waltham, Massachusetts, USA)と混合し、放射能をベックマンコールターLS6500(Beckman Coulter LS6500)シンチレーションカウンターで測定した。残りの細胞溶解物0.05 mlを用いて、ブラッドフォード試薬(Sigma-Aldrich社)を用いてタンパク質レベルを測定した。データは、細胞溶解液タンパク質1μg当たり添加された総量のうち内部移行した特定CPMの割合±標準偏差として算出した。
【0119】
実施例11
インビボでの低分子量ヘパリン(LMWH)化合物の除去の測定
このマウスの実験はネブラスカ大学の動物実験委員会によって承認された。重さが18〜20gの5〜6週齢のBALB/cマウス(Harlan Laboratories, Indianapolis, Indiana, USA)を、4%イソフルランを含む酸素を流した34℃の小部屋の中で麻酔した。マウスが無意識になったら、個別に、その鼻に2%イソフルランを含む酸素を一定に流したノーズコーンを取り付け、加熱パッド上に置いた。特定量の35S標識LMWH化合物、LMWH化合物又は未分画ヘパリン(UFH)を、1mlシリンジに取り付けられた27G1/2針を用いて、尾静脈に横方向に注入した。標識物質を血液中を12分間循環させた。その間マウスは無意識である。腹腔を切開により露出させて肝臓を取り出し、洗浄し、秤量した。そのローブのそれぞれからの約100 mgを、0.75mlの1%NP-40中でホモジナイズした後、12,000×gで2分間遠心分離して不溶性物質をペレット化した。その後、その上清を4 mlのシンチレーション液に加え、浸透しながら30分間混合し、放射能をベックマンコールターLS6500(Beckman Coulter LS6500)シンチレーションカウンターで測定した。データは、全肝臓におけるCPMを総注入CPMで割った割合(%)±リガンドあたり3〜5匹のマウスの標準誤差として提示される。
【0120】
ここに開示した本発明の様々な詳細は、本発明の範囲から逸脱することなく変更できることが理解されるであろう。更に、上記の記述は本発明を例証する目的のためのものであり、本発明を限定する目的のためのものではない。
【0121】
引用文献
以下に挙げた文献及び明細書で引用した全ての文献は、それらが、ここで採用される方法、技術及び/又は組成を、補足し、説明し、その背景を提供し又は教示する限りにおいて、参照により本明細書に組み込まれる。
【0122】
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